説明

車両用照明灯具

【課題】シェードを備えたプロジェクタ型の車両用照明灯具において、灯具コストを抑えた上で、車両前方路面の近距離領域の視認性を高める。
【解決手段】シェード20として、その上端縁20a1を内周縁の一部として形成された開口部20aを有する構成とする。これにより、上端縁20a1から上方に大きく離れた位置を通過するリフレクタ14からの反射光を、開口部20aの上方部分20dにおいて遮蔽して、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎないようにする。また、リフレクタ14として、その反射面14aにおける左右両端部14a1が、シェード20の開口部20aを貫通して該シェード20よりも前方まで延びるように延長形成された構成とする。これにより、左右両端部14a1からの反射光もロービーム用配光パターンを形成するための光として利用して、車両前方路面の近距離領域における左右両側の部分を明るく照射するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、シェードを備えたプロジェクタ型の車両用照明灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プロジェクタ型の車両用照明灯具は、投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源からの光をリフレクタにより投影レンズへ向けて反射させるように構成されている。
【0003】
このようなプロジェクタ型の車両用照明灯具において、上端部にカットオフラインを有する配光パターンを形成する際には、例えば「特許文献1」〜「特許文献3」に記載されているように、上端縁が投影レンズの後側焦点またはその近傍を通るように配置されたシェードにより、リフレクタからの反射光の一部を遮蔽する構成となっている。
【0004】
その際、「特許文献1」に記載された車両用照明灯具のシェードは、その上端縁を内周縁の一部として形成された開口部を有する構成となっている。
【0005】
一方、「特許文献2」に記載された車両用照明灯具は、そのシェードの上方前方に左右1対の第2リフレクタが配置された構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−156106号公報
【特許文献2】特開2009−104790号公報
【特許文献3】特開2010−33740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、プロジェクタ型の車両用照明灯具からの照射光により形成される配光パターンは、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎる一方、その左右両側部分が暗くなってしまう傾向にある。
【0008】
これに対し、上記「特許文献1」に記載されたシェードのように、その上端縁を内周縁の一部として形成された開口部を有する構成とすれば、リフレクタからの反射光のうちシェードの上端縁から上方に大きく離れた位置を通過する光を、その開口部の上方部分において遮蔽することが可能となる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎないようにすることができるので、その左右両側部分が相対的に見えにくくなってしまうのを未然に防止することができる。
【0009】
しかしながら、このような構成を採用した場合においても、車両前方路面の近距離領域における左右両側部分の明るさを積極的に増大させることはできない、という問題がある。
【0010】
一方、上記「特許文献2」に記載された車両用照明灯具のように、シェードの上方前方に左右1対の第2リフレクタが配置された構成とすれば、リフレクタからの反射光に第2リフレクタからの反射光が付加されるので、車両前方路面の近距離領域の左右両側部分の明るさを積極的に増大させることが可能となる。
【0011】
しかしながら、このような構成を採用した場合においては、シェードの上端縁から上方に大きく離れた位置を通過するリフレクタからの反射光によって車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎてしまうのを阻止することはできない、という問題がある。
【0012】
しかも、このような構成を採用した場合には、リフレクタの他に左右1対の第2リフレクタが必要となるので、その分だけ灯具コストが上昇してしまう、という問題がある。
【0013】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、シェードを備えたプロジェクタ型の車両用照明灯具において、灯具コストを抑えた上で、車両前方路面の近距離領域の視認性を高めることができる車両用照明灯具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、リフレクタの反射面の構成に工夫を施すことにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0015】
すなわち、本願発明に係る車両用照明灯具は、
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、上端縁が上記投影レンズの後側焦点またはその近傍を通るように配置され、上記リフレクタからの反射光の一部を遮蔽するシェードと、を備えてなる車両用照明灯具において、
上記シェードが、該シェードの上端縁を内周縁の一部として形成された開口部を有しており、
上記リフレクタの反射面における左右両端部が、上記開口部を貫通して上記シェードよりも前方まで延びるように延長形成されている、ことを特徴とするものである。
【0016】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、放電バルブの発光部やハロゲンバルブのフィラメント等が採用可能である。
【0017】
上記「シェード」は、その上端縁を内周縁の一部として形成された開口部を有していれば、その具体的な構成は特に限定されるものではない。また、この「シェード」は、固定シェードとして構成されていてもよいし、その一部が可動シェードとして構成されていてもよい。
【0018】
上記「リフレクタ」は、その反射面における左右両端部が、シェードの開口部を貫通して該シェードよりも前方まで延びるように延長形成されていれば、そのシェードからの前方突出量や前方突出形状等の具体的な構成は特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0019】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用照明灯具は、プロジェクタ型の車両用照明灯具として構成されており、そのリフレクタからの反射光の一部を、上端縁が投影レンズの後側焦点またはその近傍を通るように配置されたシェードにより遮蔽する構成となっているが、このシェードは、その上端縁を内周縁の一部として形成された開口部を有しているので、リフレクタからの反射光のうちシェードの上端縁から上方に大きく離れた位置を通過する光を、その開口部の上方部分において遮蔽することができる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎないようにすることができるので、その左右両側部分が相対的に見えにくくなってしまうのを未然に防止することができる。
【0020】
また、本願発明に係る車両用照明灯具は、そのリフレクタの反射面における左右両端部が、シェードの開口部を貫通して該シェードよりも前方まで延びるように延長形成されているので、このリフレクタの反射面における左右両端部からの反射光についても、これらを配光パターンを形成するための光として利用することができる。その際、このリフレクタの反射面における左右両端部からの反射光は、投影レンズを透過した後、左右両側へ向かう光となるので、車両前方路面の近距離領域における左右両側の部分を明るく照射することができる。しかもこれを、従来のように左右1対の第2リフレクタを新たに配置することなく実現することができる。
【0021】
このように本願発明によれば、シェードを備えたプロジェクタ型の車両用照明灯具において、灯具コストを抑えた上で、車両前方路面の近距離領域の視認性を高めることができる。
【0022】
上記構成において、シェードが板状部材で構成されたものとすれば、これをプレス加工等により安価に製作することができる。その上で、このシェードが、その開口部の周囲においてリフレクタまたは投影レンズを保持するレンズホルダに固定された構成とすれば、その剛性を十分に確保することができる。
【0023】
上記構成において、投影レンズ、光源、リフレクタおよびシェードを収容するランプボディを備えた構成とした上で、シェードが、その開口部の上下両側においてランプボディに対して左右方向に回動可能に支持された構成とすれば、シェードを利用した安価なスイブル機構を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具が組み込まれたヘッドランプを示す側断面図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】図2のIII 方向矢視図
【図4】上記車両用照明灯具の主要構成要素を示す斜視図
【図5】上記車両用照明灯具から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用配光パターンを透視的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用照明灯具10が組み込まれたヘッドランプ50を示す側断面図である。
【0027】
同図に示すように、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、プロジェクタ型の灯具ユニットであって、ランプボディ52と、このランプボディ52の前端開口部に取り付けられた透光カバー54とで形成される灯室内に配置されている。
【0028】
図2は、車両用照明灯具10を示す図1のII−II線断面図であり、図3は、そのIII
方向矢視図である。また、図4は、車両用照明灯具10の主要構成要素を示す斜視図である。
【0029】
これらの図にも示すように、車両用照明灯具10は、光源バルブ12と、リフレクタ14と、レンズホルダ16と、投影レンズ18と、シェード20とを備えた構成となっている。
【0030】
投影レンズ18は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、その光軸Axが車両前後方向に延びるようにして配置されている。そして、この投影レンズ18は、その後側焦点面(すなわち投影レンズ18の後側焦点Fを含む焦点面)上に形成される光源像を、灯具前方に配置された仮想鉛直スクリーン上に反転像として投影するようになっている。
【0031】
光源バルブ12は、放電発光部を光源12aとする放電バルブであって、リフレクタ14の後頂部に形成された開口部14bに後方側から挿入固定されている。この光源バルブ12の光源12aは、光軸Axと略同軸で延びる線分光源として構成されており、投影レンズ18の後側焦点Fよりも後方側に配置されている。
【0032】
リフレクタ14は、光源12aからの光を投影レンズ18へ向けて反射させる反射面14aを有している。
【0033】
この反射面14aは、光軸Axを含む平面に沿った断面形状が略楕円形に設定されており、その離心率は鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そしてこれにより、この反射面14aで反射した光源12aからの光を、鉛直断面内においては後側焦点F近傍に略収束させるとともに、水平断面内においてはその収束位置を後側焦点Fの前方側へ変位させるようになっている。
【0034】
このリフレクタ14には、その反射面14aの前端縁から前方へ向けて延びる4つのアーム部14cが、周方向に所定間隔をおいて形成された構成となっており、これら各アーム部14cの前端部には、径方向外方へ折れ曲がるようにしてフランジ部14dが形成されている。
【0035】
レンズホルダ16は、リフレクタ14の前方に配置されており、その前端部において投影レンズ18を固定支持している。このレンズホルダ16は、その前端部から後方へ向けて延びる4つのアーム部16aが周方向に所定間隔をおいて形成された構成となっており、これら各アーム部16aの後端部には、径方向外方へ折れ曲がるようにしてフランジ部16bが形成されている。
【0036】
シェード20は、その上端縁20a1が投影レンズ18の後側焦点Fの上方近傍を通るように配置されており、リフレクタ14からの反射光の一部を遮蔽するようになっている。
【0037】
このシェード20は、金属製の板状部材からなるプレス加工品として構成されており、投影レンズ18の後側焦点Fにおいて光軸Axと直交する鉛直面に沿って配置されている。
【0038】
このシェード20の上端縁20a1は、光軸Axよりも左側(灯具正面視では右側、以下同様)に位置する部分が、光軸Axを含む水平面よりもやや上方において光軸Axから左方向へある程度水平に延びた後、斜め下方へ延びるように形成されており、一方、光軸Axよりも右側に位置する部分が、光軸Axから右方向へ向けて斜め下方へ僅かに延びた後、ある程度水平に延び、さらに斜め下方へ延びるように形成されている。
【0039】
このシェード20は、その上端縁20a1を内周縁の一部として形成された開口部20aを有している。これを実現するため、このシェード20は、その上端縁20a1の左右両側から上方側に延長形成されており、その開口部20aの上方において互いに連結された構成となっている。その際、この開口部20aの上方に位置する上方部分20dは、その下端縁が光軸Axを含む水平面から所定距離(例えば15〜25mm程度)上方において水平方向に延びるように形成されている。
【0040】
また、このシェード20は、略横長矩形状の外周縁形状を有しており、その外周縁部には後方へ折れ曲がるようにしてフランジ部20bが全周にわたって形成されている。
【0041】
このシェード20は、その開口部20aの周囲において、リフレクタ14およびレンズホルダ16に固定されている。具体的には、このシェード20は、光軸Axを中心にして、その開口部20aの左右斜め上方および左右斜め下方の4箇所において、リフレクタ14における各アーム部14cのフランジ部14dと、レンズホルダ16における各アーム部16aのフランジ部16bとで挟まれた状態で、それぞれネジ30によって共締めされている。これを実現するため、シェード20には4箇所にネジ挿通孔20cが形成されており、また、レンズホルダ16の各フランジ部16bにも図示しないネジ挿通孔が形成されており、そして、リフレクタ14の各フランジ部14dには、図示しないネジ孔が形成されている。
【0042】
車両用照明灯具10は、そのシェード20における開口部20aの上下両側において、ランプボディ52に対して左右方向に回動可能に支持されている。
【0043】
これを実現するため、このシェード20の前面における開口部20aの上下両側の位置には、回動支持部材32、34がそれぞれ取り付けられている。これら回動支持部材32、34は、ランプボディ52の上下両面壁に取り付けられた受け具56およびアクチュエータ58に対して、光軸Axを通るようにして鉛直方向に延びる鉛直軸線Ax1を中心にして回動可能に支持されている。
【0044】
なお、回動支持部材32の上面には、受け具56に挿入されるピン32aが形成されており、また、回動支持部材34の下面には、アクチュエータ58の出力軸(図示せず)と係合する係合穴(図示せず)が形成されている。
【0045】
そして、車両用照明灯具10は、アクチュエータ58の駆動により左右方向に回動するようになっており、これによりスイブル機構が構成されている。
【0046】
リフレクタ14は、その反射面14aにおける左右両端部14a1が、シェード20の開口部20aを貫通してシェード20よりも前方まで延びるように延長形成されている。その際、これら左右両端部14a1は、シェード20に対して5〜20mm程度(例えば10mm程度)前方へ突出するように形成されている。
【0047】
これら左右両端部14a1で反射して投影レンズ18に入射した光源12aからの光は、投影レンズ18から左右両方向へ大きい偏向角度で出射することとなる。
【0048】
図5は、車両用照明灯具10から前方へ照射される光により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム配光パターンPLを透視的に示す図である。
【0049】
このロービーム用配光パターンPLは、左配光のロービーム用配光パターンであって、その上端縁に右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びるように形成されている。その際、V−V線よりも右側の対向車線側カットオフラインCL1は、その略全長にわたって水平方向に延びるように形成されており、一方、V−V線よりも左側の自車線側カットオフラインCL2は、対向車線側カットオフラインCL1の左端位置から傾斜部を介して段上がりになった後に水平方向に延びるように形成されている。
【0050】
このロービーム用配光パターンPLは、リフレクタ14の反射面14aで反射した光源12aからの光によって投影レンズ18の後側焦点面上に形成された光源12aの像を、投影レンズ18により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、その左右段違いのカットオフラインCL1、CL2は、可動シェード20の上端縁20a1の反転投影像として形成されるようになっている。
【0051】
このロービーム用配光パターンPLにおいて、対向車線側カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。これは、シェード20の上端縁20a1における光軸Axよりも左側に位置する部分が、光軸Axを含む水平面よりもやや上方において光軸Axから左方向へ水平に延びていることによるものである。そして、このロービーム用配光パターンPLにおいては、エルボ点Eを囲むようにして高光度領域であるホットゾーンHZが形成されている。
【0052】
なお、同図において、2点鎖線で輪郭を示すロービーム用配光パターンPL´は、仮に、シェード20として、その上端縁20a1よりも上方に位置する部分を有していない構成であるとした場合で、かつ、リフレクタ14の反射面14aに、シェード20よりも前方へ突出する左右両端部14a1が形成されていないとした場合に形成される配光パターンである。
【0053】
このロービーム用配光パターンPL´は、その下端縁がV−V線の近傍部分においてはかなり低い位置まで膨らむように形成されているので、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎてしまい、一方、その下端縁におけるV−V線の近傍部分の左右両側に位置する部分は上方側に抉れているので、車両前方路面の近距離領域の左右両側部分が暗いものとなっている。
【0054】
これに対し、ロービーム用配光パターンPLは、その下端縁がさほど低くない位置において略水平方向に延びるように形成されているので、そのV−V線の近傍部分の下方への膨らみがなくなり、これにより車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎてしまうことはなく、一方、その下端縁におけるV−V線の近傍部分の左右両側に位置する部分は、ロービーム用配光パターンPL´の場合に比して左右斜め下方に膨らむように形成されており、上方側への抉れが解消されているので、車両前方路面の近距離領域の左右両側部分は明るいものとなっている。
【0055】
その際、このロービーム用配光パターンPLにおいて、その下端縁がさほど低くない位置において略水平方向に延びているのは、シェード20の上方部分20dの下端縁が水平方向に延びるように形成されており、この上方部分20dにおいてリフレクタ14からの反射光のうちシェード20の上端縁20a1から上方に大きく離れた位置を通過する光が遮蔽されることによるものである。
【0056】
また、このロービーム用配光パターンPLにおいて、その下端縁におけるV−V線の近傍部分の左右両側に位置する部分が左右斜め下方に膨らんでいるのは、リフレクタ14の反射面14aにおける左右両端部14a1で反射した光源12aからの光が、投影レンズ18から左右両方向へ大きい偏向角度で出射することによるものである。
【0057】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
【0058】
本実施形態に係る車両用照明灯具10は、プロジェクタ型の灯具ユニットとして構成されており、そのリフレクタ14からの反射光の一部を、上端縁20a1が投影レンズ18の後側焦点Fの上方近傍を通るように配置されたシェード20により遮蔽する構成となっているが、このシェード20は、その上端縁20a1を内周縁の一部として形成された開口部20aを有しているので、リフレクタ14からの反射光のうちシェード20の上端縁20a1から上方に大きく離れた位置を通過する光を、その開口部20aの上方部分20dにおいて遮蔽することができる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域の正面部分が明るくなり過ぎないようにすることができるので、その左右両側部分が相対的に見えにくくなってしまうのを未然に防止することができる。
【0059】
また、本実施形態に係る車両用照明灯具10は、そのリフレクタ14の反射面14aにおける左右両端部14a1が、シェード20の開口部20aを貫通して該シェード20よりも前方まで延びるように延長形成されているので、このリフレクタ14の反射面14aにおける左右両端部14a1からの反射光についても、これらをロービーム用配光パターンPLを形成するための光として利用することができる。その際、このリフレクタ14の反射面14aにおける左右両端部14a1からの反射光は、投影レンズ18を透過した後、左右両側へ向かう光となるので、車両前方路面の近距離領域における左右両側の部分を明るく照射することができる。しかもこれを、従来のように左右1対の第2リフレクタを新たに配置することなく実現することができる。
【0060】
このように本実施形態によれば、シェード20を備えたプロジェクタ型の車両用照明灯具10において、灯具コストを抑えた上で、車両前方路面の近距離領域の視認性を高めることができる。
【0061】
その際、本実施形態においては、シェード20が板状部材で構成されているので、これをプレス加工等により安価に製作することができる。そして、このシェード20は、その開口部20aの周囲においてリフレクタ14および投影レンズ18を保持するレンズホルダ16に固定されているので、その剛性を十分に確保することができる。
【0062】
しかも、このシェード20は、その開口部20aの上下両側においてランプボディ52に対して左右方向に回動可能に支持されているので、シェード20を利用した安価なスイブル機構を実現することができる。
【0063】
上記実施形態においては、車両用照明灯具10が、ロービーム用配光パターンPLとして、左配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されているものとして説明したが、右配光のロービーム用配光パターンを形成するように構成されている場合においても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより同様の作用効果を得ることができ、さらに、フォグランプ用の配光パターン等を形成するように構成されている場合においても、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0064】
なお、上記実施形態において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【符号の説明】
【0065】
10 車両用照明灯具
12 光源バルブ
12a 光源
14 リフレクタ
14a 反射面
14a1 左右両端部
14b、20a 開口部
14c、16a アーム部
14d、16b、20b フランジ部
16 レンズホルダ
18 投影レンズ
20 シェード
20a1 上端縁
20c ネジ挿通孔
20d 上方部分
30 ネジ
32、34 回動支持部材
32a ピン
50 ヘッドランプ
52 ランプボディ
54 透光カバー
56 受け具
58 アクチュエータ
Ax 光軸
Ax1 鉛直軸線
CL1 対向車線側カットオフライン
CL2 自車線側カットオフライン
E エルボ点
F 後側焦点
HZ ホットゾーン
PL ロービーム用配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置された光源と、この光源からの光を上記投影レンズへ向けて反射させるリフレクタと、上端縁が上記投影レンズの後側焦点またはその近傍を通るように配置され、上記リフレクタからの反射光の一部を遮蔽するシェードと、を備えてなる車両用照明灯具において、
上記シェードが、該シェードの上端縁を内周縁の一部として形成された開口部を有しており、
上記リフレクタの反射面における左右両端部が、上記開口部を貫通して上記シェードよりも前方まで延びるように延長形成されている、ことを特徴とする車両用照明灯具。
【請求項2】
上記シェードが、板状部材で構成されており、上記開口部の周囲において、上記リフレクタおよび/または上記投影レンズを保持するレンズホルダに固定されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用照明灯具。
【請求項3】
上記投影レンズ、光源、リフレクタおよびシェードを収容するランプボディを備えており、
上記シェードが、上記開口部の上下両側において、上記ランプボディに対して左右方向に回動可能に支持されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用照明灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97874(P2013−97874A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236696(P2011−236696)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】