説明

車両用空気吹出口部材構造

【課題】主に、不具合等の原因解析を容易化すると共に、発生する抵抗を容易に調整し得るようにする。
【解決手段】空気吹出口部材1が、外筒部材2と、内筒部材3とを有し、この内筒部材3が、外筒部材2の内部に、回転自在に嵌合され、外筒部材2と内筒部材3との間に、外筒部材2に対する内筒部材3の回転抵抗を発生可能な回転抵抗発生機構4が介装され、この回転抵抗発生機構4が、内筒部材3に周方向に沿って形成された摺接部5と、この摺接部5に対応させて外筒部材2の内部に取付けられた抵抗発生用弾性体6とを有し、この抵抗発生用弾性体6と、摺接部5とが圧接した状態で、周方向に摺動可能に配置されることにより、内筒部材3の回転に回転抵抗を発生可能に構成された車両用空気吹出口部材構造であって、外筒部材2に、抵抗発生用弾性体6の組付状態を外部から目視可能な、確認用窓部21を形成するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空気吹出口部材構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部に樹脂製のインストルメントパネル(車室前部内装パネル)が設けられている。このインストルメントパネルには、空気吹出用開口部が形成され、この空気吹出用開口部に対し、空調用空気を吹出可能な空気吹出口部材が取付けられている(例えば、特許文献1参照)。このような空気吹出口部材には、角型のものや丸型のものなどが存在している。
【0003】
このうち丸型の空気吹出口部材1は、図7に示すように、それぞれほぼ円筒状をした外筒部材2と、内筒部材3とを有している。そして、内筒部材3は、外筒部材2の内部に、軸心を中心として回転自在に嵌合されている。外筒部材2と、内筒部材3とは、それぞれ、樹脂製のものとされている。
【0004】
外筒部材2と内筒部材3との間には、外筒部材2に対する内筒部材3の回転抵抗を発生可能な回転抵抗発生機構4が介装されている。
【0005】
この回転抵抗発生機構4は、内筒部材3に周方向に沿って形成された摺接部5と、この摺接部5に対応させて外筒部材2の内部に取付けられた抵抗発生用弾性体6とを有している。そして、この抵抗発生用弾性体6と、摺接部5とが圧接した状態で、周方向に摺動可能に配置されることにより、内筒部材3の回転に回転抵抗を発生可能に構成されている。
【0006】
この場合、丸型の空気吹出口部材1は、ベンチレータグリルなどとされている。この空気吹出口部材1には、内筒部材3の手前側端部に、風向きを変更可能で且つ内筒部材3を閉成可能なルーバー羽根7などの風向変更可能機構が取付けられている。このルーバー羽根7は、二枚構成のものとされている。二枚のルーバー羽根7は、内筒部材3の手前側端部を開閉可能な蓋体としても使用し得るように構成されている。また、二枚のルーバー羽根7の間は、互いに連動して開閉し得るようにするためにリンク部材11で連結されている。また、内筒部材3の手前側端部の周囲は、リング状の化粧枠部材12で覆われている。
【0007】
そして、上記した摺接部5は、規則的で小刻みな凹凸形状を呈している。この凹凸形状をした摺接部5は、内筒部材3の奥側端縁部に設けられている。
【0008】
これに対し、抵抗発生用弾性体6は、図8に示すように、二つの圧接用頂部を有するほぼM字状をした金属製の板バネなどとされている。この抵抗発生用弾性体6は、図9に示すように、回転抵抗発生機構4の一部として、外筒部材2の内部に設けられた弾性体取付部15に取付けられる。この弾性体取付部15には、図10に示すように、反力設定用リブ16などが設けられている。
【0009】
また、弾性体取付部15は、外筒部材2の軸線方向の中間部に形成された段差部分に設けられている。この段差部分は、手前側の大径部と、奥側の小径部との間に構成されている。手前側の大径部は、内筒部材3とほぼ同等の長さ寸法を有している。奥側の小径部は、内筒部材3と同じかまたはそれよりも長くなるように構成されている。そのため、外筒部材2は、全長が比較的長くなるように構成されている。また、抵抗発生用弾性体6は、M字状の脚部が、奥側の小径部に沿って奥側へ比較的長く延びるように構成されている(長脚部)。
【0010】
このような構成によれば、ルーバー羽根7を倒した(寝かせた)状態とすることにより、内筒部材3の手前側端部を閉成(閉蓋)して、空気吹出口部材1の内部が見えないようにすることができる。この状態では、空調用空気が吹出されないようにすることができる。
【0011】
反対に、ルーバー羽根7を起した状態とすることにより、内筒部材3の手前側端部を開成(開蓋)して、空調用空気を吹出し得るようにすることができる。そして、ルーバー羽根7の角度を調節することにより、空調用空気の吹出方向を調整することができる。更に、外筒部材2に対して内筒部材3を、その軸心を中心として回転させることにより、空調用空気の吹出方向を360゜変更することが可能となる。
【0012】
このように、外筒部材2に対して内筒部材3を、軸心を中心として回転させる際には、両者間に介装された回転抵抗発生機構4が、内筒部材3に回転抵抗を発生させる。これにより、内筒部材3を所要の操作感を有して回転させると共に、任意の位置で停止させることができる。
【0013】
この回転抵抗は、外筒部材2の内部に取付けられた抵抗発生用弾性体6が、内筒部材3に周方向に沿って形成された摺接部5に圧接した状態で、内筒部材3が回転する(抵抗発生用弾性体6に対して摺接部5が摺動する)ことによって発生されるようになっている。
【特許文献1】特開2003−11658号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記車両用空気吹出口部材構造には、以下のような問題があった。
【0015】
即ち、抵抗発生用弾性体6は、外筒部材2の内部に取付けられているため、外筒部材2に対して内筒部材3を組付けた後では、抵抗発生用弾性体6が外部から隠れてしまうため、抵抗発生用弾性体6の設置状況や作動状況を目視し、確認することができなかった。そのため、回転抵抗が適正でないなどの不具合等が発生した場合に、原因の解析にかなりの手間や工数を要していた。
【0016】
また、外筒部材2の弾性体取付部15は、発生する抵抗を調整できない構造となっていたため、抵抗の調整を行う度に、成形用の金型を修正しなければならず、即ち、反力設定用リブ16の形状を修正、変更しなければならず、金型修正費用がかかっていた。
【0017】
しかも、上記したような構造であったため、空気吹出口部材1は、発生する抵抗を個別に調整することができなかった。そのため、空気吹出口部材1ごとに、発生する抵抗にバラ付きが生じるのを避けられなかった。
【0018】
なお、上記した以外にも、本発明に至る過程で新たな問題やその他の問題などが発生することも考えられるが、そのようなものについては、本発明の実施例の中で説明することによって、この欄での記載に代えることができるものとする。但し、必要な場合には、この欄に流用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、空調用空気を吹出可能な空気吹出口部材が設けられ、該空気吹出口部材が、それぞれほぼ円筒状をした外筒部材と、内筒部材とを有し、該内筒部材が、外筒部材の内部に、軸心を中心として回転自在に嵌合され、外筒部材と内筒部材との間に、外筒部材に対する内筒部材の回転抵抗を発生可能な回転抵抗発生機構が介装され、該回転抵抗発生機構が、内筒部材に周方向に沿って形成された摺接部と、該摺接部に対応させて外筒部材の内部に取付けられた抵抗発生用弾性体とを有し、該抵抗発生用弾性体と、前記摺接部とが圧接した状態で、周方向に摺動可能に配置されることにより、内筒部材の回転に回転抵抗を発生可能に構成された車両用空気吹出口部材構造において、前記外筒部材に、抵抗発生用弾性体の組付状態を外部から目視可能な、確認用窓部を形成したことを特徴としている。
【0020】
請求項2に記載された発明は、上記において、回転抵抗発生機構が、発生する抵抗を設定または変更可能な抵抗可変部を備えたことを特徴としている。
【0021】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記抵抗可変部が、前記外筒部材に設けられた複数の弾性体取付部を備えると共に、複数の弾性体取付部が、摺接部に対する距離が段階的に異なるように位置をズラせて設けられることにより、前記摺接部に対する抵抗発生用弾性体の圧接力を変更可能に構成されたことを特徴としている。
【0022】
請求項4に記載された発明は、上記において、前記確認用窓部が、前記抵抗発生用弾性体を、外方から前記複数の弾性体取付部のいずれかに付替可能に構成されたことを特徴としている。
【0023】
なお、上記は、それぞれ、所要の作用効果を発揮するための必要最小限の構成であり、上記構成の詳細や、上記されていない構成については、それぞれ自由度を有しているのは勿論である。そして、上記構成の記載から読取ることが可能な事項については、特に具体的に記載されていない場合であっても、その範囲内に含まれるのは勿論である。また、上記以外の構成を追加した場合には、追加した構成による作用効果が加わることになるのは勿論である。
【発明の効果】
【0024】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、外筒部材に対して内筒部材を組付けた後であっても、確認用窓部を通して、抵抗発生用弾性体の組付状態を外部から目視し、確認することができるため、回転抵抗が適正でないなどの不具合等が発生した場合であっても、容易に原因の解析を行うことが可能となる。これにより、原因解析のために要していた手間や工数を削減することが可能となる。
【0025】
請求項2に記載された発明は、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、回転抵抗発生機構に備えられた抵抗可変部によって、発生する抵抗を設定または設定変更することが可能となる。これにより、発生する抵抗の調整のために成形用の金型を修正する必要がなくなり、金型修正費用を削減することができる。
【0026】
請求項3に記載された発明は、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、摺接部に対する距離が段階的に異なるように位置をズラせて外筒部材に設けられた複数の弾性体取付部のいずれかに対して、抵抗発生用弾性体を取付けることによって、抵抗生形状部に対する抵抗発生用弾性体の圧接力を個別に変更することができる。これにより、簡単な構成で有効に機能する抵抗可変部を得ることができる。
【0027】
請求項4に記載された発明は、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、確認用窓部を介して、抵抗発生用弾性体を、複数の弾性体取付部のいずれかに付替えることにより、外筒部材と内筒部材との組付後であっても、発生する抵抗を簡単に最適に設定、調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、主に、不具合等の原因解析を容易化すると共に、発生する抵抗を容易に調整し得るようにすることを目的としている。
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0030】
なお、以下の実施例は、上記した背景技術や発明が解決しようとする課題などと密接な関係があるので、必要が生じた場合には、互いに、記載を流用したり、必要な修正を伴って流用したりすることができるものとする。
【実施例】
【0031】
図1〜図6は、この発明の実施例を示すものである。
【0032】
<構成>まず、構成について説明する。
【0033】
自動車などの車両には、車室内の前部に樹脂製のインストルメントパネル(車室前部内装パネル)が設けられている。このインストルメントパネルには、空気吹出用開口部が形成され、この空気吹出用開口部に対し、図1に示すような、空調用空気を吹出可能な空気吹出口部材1が取付けられている。このような空気吹出口部材1には、角型のものや丸型のものなどが存在している。
【0034】
このうち丸型の空気吹出口部材1は、それぞれほぼ円筒状をした外筒部材2と、内筒部材3とを有している。そして、内筒部材3は、外筒部材2の内部に、軸心を中心として回転自在に嵌合されている。内筒部材3は、外筒部材2に対して手前側から嵌合されている。外筒部材2と、内筒部材3とは、それぞれ、樹脂製のものとされている。
【0035】
外筒部材2と内筒部材3との間には、外筒部材2に対する内筒部材3の回転抵抗を発生可能な回転抵抗発生機構4が介装されている。
【0036】
この回転抵抗発生機構4は、内筒部材3に周方向に沿って形成された摺接部5と、この摺接部5に対応させて外筒部材2の内部に取付けられた抵抗発生用弾性体6とを有している。そして、この抵抗発生用弾性体6と、摺接部5とが圧接した状態で、周方向に摺動可能に配置されることにより、内筒部材3の回転に回転抵抗を発生可能に構成されている。
【0037】
この場合、丸型の空気吹出口部材1は、ベンチレータグリルなどとされている。この空気吹出口部材1には、内筒部材3の手前側端部に、風向きを変更可能で且つ内筒部材3を閉成可能なルーバー羽根7が取付けられている。このルーバー羽根7は、二枚構成のものとされている。二枚のルーバー羽根7は、内筒部材3の手前側端部を開閉可能な蓋体としても使用し得るように構成されている。また、二枚のルーバー羽根7の間は、互いに連動して開閉し得るようにするためにリンク部材11で連結されている。また、内筒部材3の手前側端部の周囲は、リング状の化粧枠部材12で覆われている。また、二枚のルーバー羽根7と内筒部材3との側部間には、軸受部材や、スペーサ部材13などが設けられる。
【0038】
そして、上記した摺接部5は、規則的で小刻みな凹凸形状を呈している。この凹凸形状をした摺接部5は、内筒部材3の奥側端縁部に設けられている。この奥側端縁部は、内筒部材3の軸線方向と垂直な面の上に位置されている。
【0039】
これに対し、抵抗発生用弾性体6は、二つの圧接用頂部を有するほぼM字状をした板バネなどとされている。この抵抗発生用弾性体6は、回転抵抗発生機構4の一部として、外筒部材2の内部に設けられた弾性体取付部15に取付けられる。
【0040】
なお、以上の構成は、上記した従来例のものとほぼ同様である。
【0041】
ここで、摺接部5は、内筒部材3の奥側端縁部の全周に対して設けられている。但し、内筒部材3の回動範囲を規制する場合には、摺接部5は、必要な回動範囲の部分に亘って設けるようにすれば良い。また、抵抗発生用弾性体6は、この場合には、樹脂製の板バネとされている。
【0042】
そして、以上のような基本構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えるようにしている。
【0043】
(1)図2に示すように、外筒部材2に、抵抗発生用弾性体6の組付状態を外部から目視可能な、確認用窓部21を形成する。
【0044】
(2)回転抵抗発生機構4が、発生する抵抗を設定または変更可能な抵抗可変部22を備えるようにする。
【0045】
(3)抵抗可変部22が、外筒部材2に設けられた複数の弾性体取付部15を備えるようにする(弾性体取付部15a〜15c)。そして、複数の弾性体取付部15が、摺接部5に対する(軸線方向の)距離が段階的に異なるように(軸線方向に)位置をズラせて設けられることにより、摺接部5に対する抵抗発生用弾性体6の圧接力を変更可能に構成されるようにする(図3の軸線方向取付位置23〜25参照)。
【0046】
(4)そして、確認用窓部21が、抵抗発生用弾性体6を、外方から複数の弾性体取付部15のいずれかに付替可能となるように構成する(弾性体付替可能窓部)。
【0047】
(5)以下に、上記のより詳細な構成を説明する。
【0048】
弾性体取付部15は、外筒部材2の奥側端部近傍に設けられている。そして、外筒部材2は、内筒部材3とほぼ同等の長さ寸法を有している。そのため、外筒部材2は、全長が短くなるように構成されている。また、抵抗発生用弾性体6は、M字状の脚部が、奥側へ向けて比較的短く延びるように構成されている(短脚部)。
【0049】
そして、確認用窓部21は、弾性体取付部15に対応させるために、外筒部材2の奥側端部近傍の弾性体取付部15が設けられている部分に形成されている。
【0050】
抵抗可変部22を構成する複数の弾性体取付部15a〜15cは、この場合には、圧接力が3段階に切換可能となるように設けられている。このうち、圧接力が最も弱くなるよう設定された弾性体取付部15aは、図4に示すように、抵抗発生用弾性体6が摺接部5に対して最も遠くなる位置に設けられている。圧接力が中間となるよう設定された弾性体取付部15bは、図5に示すように、抵抗発生用弾性体6が摺接部5に対して中間となる位置に設けられている。圧接力が最も強くなるよう設定された弾性体取付部15cは、図6に示すように、抵抗発生用弾性体6が摺接部5に対して最も近くなる位置に設けられている。弾性体取付部15a〜15cは、弾性体取付部15a、弾性体取付部15b、弾性体取付部15cの順に設けられている。なお、圧接力については、弾性体取付部15の設置個数によって、2段階以上に切換可能とすることができる。
【0051】
また、抵抗発生用弾性体6は、確認用窓部21を通して、外方から着脱し得るように構成されている。
【0052】
そのために、抵抗発生用弾性体6は、上記したようにM字状の両脚部が、確認用窓部21から出入りし得る程度の比較的短いものとされる(窓出入可能脚部)。また、抵抗発生用弾性体6は、M字状の両脚部の端部に外側へ向かう、係止爪部31をそれぞれ有している。これに対し、各弾性体取付部15a〜15cは、上記した係止爪部31が係止可能な各一対の爪係止部とされている。そして、この爪係止部は、例えば、確認用窓部21の縁部や確認用窓部21の内部などに対して、周方向に位置をズラせて設けられる。例えば、確認用窓部21は、側面視ほぼ図示するような凸型に構成され、この凸型の両入隅部分に、一方の弾性体取付部15aと、他方の弾性体取付部15cとがそれぞれ設けられている。また、残りの弾性体取付部15a〜15cは、一方の弾性体取付部15aと、他方の弾性体取付部15cとの間の位置に設けられる。これら残りの弾性体取付部15a〜15cは、例えば。L型リブなどとされている。これらのL型リブは、確認用窓部21の内部に一体に設けられた段差状内側壁部分32に対して一体形成されている。
【0053】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0054】
ルーバー羽根7を倒した(寝かせた)状態とすることにより、内筒部材3の手前側端部を閉成(閉蓋)して、空気吹出口部材1の内部が見えないようにすることができる。この状態では、空調用空気が吹出されないようにすることができる。
【0055】
反対に、ルーバー羽根7を起した状態とすることにより、内筒部材3の手前側端部を開成(開蓋)して、空調用空気を吹出し得るようにすることができる。そして、ルーバー羽根7の角度を調節することにより、空調用空気の吹出方向を調整することができる。更に、外筒部材2に対して内筒部材3を、その軸心を中心として回転させることにより、空調用空気の吹出方向を360゜変更することが可能となる。
【0056】
このように、外筒部材2に対して内筒部材3を、軸心を中心として回転させる際には、両者間に介装された回転抵抗発生機構4が、内筒部材3に回転抵抗を発生させる。これにより、内筒部材3を所要の操作感を有して回転させると共に、任意の位置で停止させることができる。
【0057】
この回転抵抗は、外筒部材2の内部に取付けられた抵抗発生用弾性体6が、内筒部材3に周方向に沿って形成された摺接部5に圧接した状態で、内筒部材3が回転する(抵抗発生用弾性体6に対して摺接部5が摺動する)ことによって発生されるようになっている。
【0058】
そして、この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0059】
(1)空調用空気を吹出可能な空気吹出口部材1が設けられ、この空気吹出口部材1が、それぞれほぼ円筒状をした外筒部材2と、内筒部材3とを有し、この内筒部材3が、外筒部材2の内部に、軸心を中心として回転自在に嵌合され、外筒部材2と内筒部材3との間に、外筒部材2に対する内筒部材3の回転抵抗を発生可能な回転抵抗発生機構4が介装され、この回転抵抗発生機構4が、内筒部材3に周方向に沿って形成された摺接部5と、この摺接部5に対応させて外筒部材2の内部に取付けられた抵抗発生用弾性体6とを有し、この抵抗発生用弾性体6と、摺接部5とが圧接した状態で、周方向に摺動可能に配置されることにより、内筒部材3の回転に回転抵抗を発生可能に構成された車両用空気吹出口部材構造において、外筒部材2に、抵抗発生用弾性体6の組付状態を外部から目視可能な、確認用窓部21を形成したことによって、以下のような作用効果を得ることができる。
【0060】
即ち、外筒部材2に対して内筒部材3を組付けた後であっても、確認用窓部21を通して、抵抗発生用弾性体6の組付状態を外部から目視し、確認することができるため、回転抵抗が適正でないなどの不具合等が発生した場合であっても、容易に原因の解析を行うことが可能となる。これにより、原因解析のために要していた手間や工数を削減することが可能となる。
【0061】
(2)上記において、回転抵抗発生機構4が、発生する抵抗を設定または変更可能な抵抗可変部22を備えたことによって、以下のような作用効果を得ることができる。
【0062】
即ち、回転抵抗発生機構4に備えられた抵抗可変部22によって、発生する抵抗を設定または設定変更することが可能となる。これにより、発生する抵抗の調整のために成形用の金型を修正する必要がなくなり、金型修正費用を削減することができる。
【0063】
(3)上記において、抵抗可変部22が、外筒部材2に設けられた複数の弾性体取付部15を備えると共に、複数の弾性体取付部15が、摺接部5に対する距離が段階的に異なるように位置をズラせて設けられることにより、抵抗生形状部に対する抵抗発生用弾性体6の圧接力を変更可能に構成されたことによって、以下のような作用効果を得ることができる。
【0064】
即ち、摺接部5に対する距離が段階的に異なるように位置をズラせて外筒部材2に設けられた複数の弾性体取付部15のいずれかに対して、抵抗発生用弾性体6を取付けることによって、抵抗生形状部に対する抵抗発生用弾性体6の圧接力を個別に変更することができる。これにより、簡単な構成で有効に機能する抵抗可変部22を得ることができる。
【0065】
(4)上記において、抵抗発生用弾性体6が、確認用窓部21を介して、複数の弾性体取付部15のいずれかに付替可能に構成されたことによって、以下のような作用効果を得ることができる。
【0066】
即ち、確認用窓部21を介して、抵抗発生用弾性体6を、複数の弾性体取付部15のいずれかに付替えることにより、外筒部材2と内筒部材3との組付後であっても、発生する抵抗を簡単に最適に設定、調整することができる。
【0067】
以上をまとめると、この実施例によれば、不具合等の原因解析を容易化すると共に、発生する抵抗を容易に調整することができる。
【0068】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施例にかかる車両用空気吹出口部材構造の分解斜視図である。
【図2】図1の回転抵抗発生機構の拡大斜視図である。
【図3】図2の拡大側面図である。
【図4】図2の回転抵抗発生機構の使用状態を示す側面図である。
【図5】図4とは別の使用状態を示す側面図である。
【図6】図5とは別の使用状態を示す側面図である。
【図7】従来例にかかる車両用空気吹出口部材構造の分解斜視図である。
【図8】図7の回転抵抗発生機構または抵抗発生用弾性体などを示す部分拡大斜視図である。
【図9】図8とは異なる方向から回転抵抗発生機構を見た斜視図である。
【図10】図9の部分拡大図である。
【符号の説明】
【0070】
1 空気吹出口部材
2 外筒部材
3 内筒部材
4 回転抵抗発生機構
5 摺接部
6 抵抗発生用弾性体
15 弾性体取付部
15a 弾性体取付部
15b 弾性体取付部
15c 弾性体取付部
21 確認用窓部
22 抵抗可変部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気を吹出可能な空気吹出口部材が設けられ、
該空気吹出口部材が、それぞれほぼ円筒状をした外筒部材と、内筒部材とを有し、
該内筒部材が、外筒部材の内部に、軸心を中心として回転自在に嵌合され、
外筒部材と内筒部材との間に、外筒部材に対する内筒部材の回転抵抗を発生可能な回転抵抗発生機構が介装され、
該回転抵抗発生機構が、内筒部材に周方向に沿って形成された摺接部と、該摺接部に対応させて外筒部材の内部に取付けられた抵抗発生用弾性体とを有し、
該抵抗発生用弾性体と、前記摺接部とが圧接した状態で、周方向に摺動可能に配置されることにより、内筒部材の回転に回転抵抗を発生可能に構成された車両用空気吹出口部材構造において、
前記外筒部材に、抵抗発生用弾性体の組付状態を外部から目視可能な、確認用窓部を形成したことを特徴とする車両用空気吹出口部材構造。
【請求項2】
回転抵抗発生機構が、発生する抵抗を設定または変更可能な抵抗可変部を備えたことを特徴とする請求項1記載の車両用空気吹出口部材構造。
【請求項3】
前記抵抗可変部が、前記外筒部材に設けられた複数の弾性体取付部を備えると共に、
複数の弾性体取付部が、摺接部に対する距離が段階的に異なるように位置をズラせて設けられることにより、前記摺接部に対する抵抗発生用弾性体の圧接力を変更可能に構成されたことを特徴とする請求項2記載の車両用空気吹出口部材構造。
【請求項4】
前記確認用窓部が、前記抵抗発生用弾性体を、外方から前記複数の弾性体取付部のいずれかに付替可能に構成されたことを特徴とする請求項3記載の車両用空気吹出口部材構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−12919(P2010−12919A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174312(P2008−174312)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】