説明

車両用空気調和装置

【課題】車両用空気調和装置において、装置サイズを大型化することなく、サブエアミックスダンパを設置可能とする。
【解決手段】モードダンパ6が、フェイス吹出口を開放する際にフェイス吹出口を閉鎖する遮蔽面6aがバイパス口に対向するように配置され、バイパス口1gから排出された冷風を通過させる通気領域R1を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、車両用空気調和装置では、供給される空気をエバポレータによって冷却して冷風とし、この冷風の加熱割合を調節することによって調和空気を生成している。より詳細には、特許文献1に示すように、エアミックスダンパ(特許文献1においてはエアミックスドア8、11)によってヒータコアが設置された加熱流路への冷風の供給量を調節し、加熱流路に供給されなかった冷風と加熱流路から排出される温風とを混合部で混合することによって調和空気を生成している。
また、車両用空気調和装置は、モードダンパによって開閉される複数の吹出口を備えており、上述のようにして生成された調和空気を、開放された吹出口を介して車両内に供給するように構成されている。
【0003】
ところで、車両用空気調和装置のなかには、より快適な車内環境を形成するために、暖房時において、乗員の顔に対して調和空気を吹き出すフェイス吹出口から吹き出される調和空気の温度を他の吹出口から吹き出される調和空気の温度よりも低くするものがある。
このような車両用空気調和装置は、特許文献1に示すように、上記エアミックスダンパとは別に、フェイス吹出口に直接冷風を供給するバイパス口と、このバイパス口を開閉するサブエアミックスダンパとを備えている。そして、バイパス口を開放することによってフェイス吹出口に直接冷風が供給され、フェイス吹出口から吹き出される調和空気の温度が他の吹出口から吹き出される調和空気の温度よりも低くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−105533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、車両用空気調和装置は、車両内の限られた空間に収容する必要があることから、当然のことながら、小型であることが望まれる。
このような車両用空気調和装置の小型化を実現するにあたり、フェイス吹出口の開閉を行うモードダンパを開放した場合に、当該モードダンパがバイパス口に対向配置するようにモードダンパを設置する構成を採用することが好ましいことがある。
しかしながら、このような構成を採用すると、バイパス口を介してフェイス吹出口に冷風を直接供給しようとする場合に、モードダンパがバイパス口から排出される冷風を遮ることとなり、フェイス吹出口に冷風を直接的に供給することが困難となる。
このため、従来の車両用空気調和装置は、サブエアミックスダンパを設置する場合には、フェイス吹出口の開閉を行うモードダンパの可動範囲をバイパス口に対向する位置から外すように設計されており、これによって装置サイズが大型化している。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、車両用空気調和装置において、装置サイズを大型化することなく、サブエアミックスダンパを設置可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
第1の発明は、乗員の顔に対して調和空気を送風するフェイス吹出口に冷風を直接供給するためのバイパス口と、該バイパス口を開閉するサブエアミックスダンパと、上記フェイス吹出口を開閉するモードダンパとを備える車両用空気調和装置であって、上記モードダンパが、上記フェイス吹出口を開放する際に上記フェイス吹出口を閉鎖する遮蔽面が上記バイパス口に対向するように配置され、上記バイパス口から排出された上記冷風を通過させる通気領域を備えるという構成を採用する。
第2の発明は、上記第1の発明において、上記通気領域が、上記モードダンパの幅方向の端部に形成された切欠き領域であるという構成を採用する。
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記通気領域が、幅方向に左右対称に設けられているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通気領域を介することによって、フェイス吹出口を開閉するモードダンパが上記遮蔽面をバイパス口に対向するように配置された場合であっても、バイパス口から排出された冷風をフェイス吹出口に直接供給することが可能となる。
したがって、本発明によれば、装置サイズを大型化することなく、サブエアミックスダンパを設置可能とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態における車両用空気調和装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における車両用空気調和装置が備えるフェイス吹出口用モードダンパが開放状態である場合のフェイス吹出口用モードダンパとバイパス口との位置関係を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態における車両用空気調和装置が備えるフェイス吹出口用モードダンパが開放状態である場合のフェイス吹出口用モードダンパとバイパス口とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明に係る車両用空気調和装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の車両用空気調和装置S1(HVAC:Heating Ventilation Air Conditioning)の概略構成を示す断面図である。この図に示すように、本実施形態の車両用空気調和装置S1は、ケース1と、エバポレータ2と、エアミックスダンパ装置3と、ヒータコア4と、サブエアミックスダンパ5と、フェイス吹出口用モードダンパ6(本発明のモードダンパ)と、デフロスタ吹出口用モードダンパ7と、フット吹出口用モードダンパ8とを備えている。
【0012】
ケース1は、本実施形態の車両用空気調和装置S1の外形を形作り、エバポレータ2が設置される冷却流路1aと、ヒータコア4が設置される加熱流路1bと、冷風と温風とが混合されて調和空気とされる混合部1cとを内部に有する。また、ケース1には、外部に露出すると共に混合部1cと接続される複数の吹出口(フェイス吹出口1d、デフロスタ吹出口1e及びフット吹出口1f)が設けられている。
フェイス吹出口1dは、乗員の顔に対して調和空気を供給するための開口である。また、デフロスタ吹出口1eは、ウィンドウに対して調和空気を供給するための開口である。また、フット吹出口1fは、乗員の足元に対して調和空気を供給するための開口である。
【0013】
また、ケース1の内部には、エバポレータ2が設置される冷却流路1aから直接フェイス吹出口1dに冷風を供給するバイパス口1gと、エバポレータ2が設置される冷却流路1aから混合部1cに冷風を供給する冷風用開口1hと、冷却流路1aから加熱流路1bに冷風を供給する加熱用開口1iとがフェイス吹出口1d側から並んで配置されている。
【0014】
エバポレータ2は、車両に搭載される冷凍サイクルの一部であり、冷却流路1aの内部に配置されている。このエバポレータ2は、不図示のブロワにより冷却流路1a内に供給された空気を冷却して冷風を生成する。
【0015】
エアミックスダンパ装置3は、エバポレータ2の下流側に配置されており、エバポレータ2にて生成された冷風の加熱流路1bへの供給量を調節するものである。より詳細には、エアミックスダンパ装置3は、冷風用開口1hと加熱用開口1iとの間でスライド可能とされたエアミックスダンパを備えており、このエアミックスダンパによって冷風用開口1hと加熱用開口1iとの開口割合を調節することによって加熱流路1bへの冷風の供給量を調節している。この結果、混合部1cにおける冷風と温風との混合割合が調節されて調和空気の温度が調節される。
【0016】
ヒータコア4は、加熱流路1bの内部に配置されており、加熱用開口1iを介して供給される冷風を加熱することによって温風を生成するものである。
【0017】
サブエアミックスダンパ5は、バイパス口1gを開閉するためのダンパであり、冷却流路1a側に回動可能に構成されている。
【0018】
フェイス吹出口用モードダンパ6は、フェイス吹出口1dの開閉を行うダンパであり、バイパス口1gに対向する開放状態と、フェイス吹出口1dを閉塞する閉鎖状態との間で回動可能に構成されている。このフェイス吹出口用モードダンパ6は、表裏面がフェイス吹出口1dを閉鎖する遮蔽面6aとされている。
そして、本実施形態の車両用空気調和装置S1においては、図2に示すように、フェイス吹出口用モードダンパ6の幅方向(水平方向)における両側の端部に矩形状の切欠き領域R1(通気領域)が形成されており、フェイス吹出口用モードダンパ6の見かけ上の幅が、バイパス口1gの幅よりも狭く構成されている。
また、フェイス吹出口用モードダンパ6の両側の端部に形成された切欠き領域R1は同一形状であり、結果、切欠き領域R1がフェイス吹出口用モードダンパ6の幅方向に左右対称に設けられている。
なお、フェイス吹出口1dは、フェイス吹出口用モードダンパ6によって閉塞される必要があるため、その幅がフェイス吹出用モードダンパ6の見かけ上の幅と略同一に設定されている。
【0019】
図1に戻り、デフロスタ吹出口用モードダンパ7は、デフロスタ吹出口1eの開閉を行うダンパであり、ケース1内において回動可能に構成されている。
フット吹出口用モードダンパ8は、デフロスタ吹出口1eの開閉を行うダンパであり、ケース1内において回動可能に構成されている。
【0020】
なお、エアミックスダンパ装置3と、サブエアミックスダンパ5と、フェイス吹出口用モードダンパ6と、デフロスタ吹出口用モードダンパ7と、フット吹出口用モードダンパ8とは、不図示のモータから動力を供給される。
【0021】
このような構成を有する本実施形態の車両用空気調和装置S1において、車内を暖房し、かつフェイス吹出口1dから乗員の顔に対して調和空気を供給する場合には、フェイス吹出口用モードダンパ6及びサブエアミックスダンパ5が開放状態とされる。
この際、フェイス吹出口用モードダンパ6の遮蔽面6aがバイパス口1gに対向するように配置されるが、本実施形態においてはフェイス吹出口用モードダンパ6に形成された切欠き領域R1を介して、バイパス口1gを介して排出される冷風が、フェイス吹出口1dに直接供給される。
一方で、エアミックスダンパ装置3によって開口割合が調節された冷風用開口1hと加熱用開口1iに分岐された冷気は、一方が冷風として混合部1cに供給され、他方が温風として混合部1cに供給され、さらには混合部1cにて再度混合されて調和空気とされ、その後、開放されているフェイス吹出口1d、デフロスタ吹出口1e及びフット吹出口1fに分配される。
そして、本実施形態の車両用空気調和装置S1においては、フェイス吹出口1dにバイパス口1gを介して直接冷風が供給されることから、フェイス吹出口1dから吹き出される調和空気の温度が他の吹出口(デフロスタ吹出口1e及びフット吹出口1f)から吹き出される調和空気の温度よりも低くなる。
【0022】
以上のように本実施形態の車両用空気調和装置S1によれば、切欠き領域R1を介することによって、フェイス吹出口1dを開閉するフェイス吹出口用モードダンパ6の遮蔽面6aがバイパス口1gに対向ように配置された場合であっても、バイパス口1gから排出された冷風をフェイス吹出口1dに直接供給することが可能となる。
したがって、本実施形態の車両用空気調和装置S1によれば、装置サイズを大型化することなく、サブエアミックスダンパ5を設置可能とすることが可能となる。
【0023】
また、本実施形態の車両用空気調和装置S1においては、切欠き領域R1がフェイス吹出口用モードダンパ6の幅方向に左右対称に設けられている。
このため、フェイス吹出口1dにバイパス口1gから供給される冷風が幅方向に分散され、偏った切欠き領域を介して冷風を通気する場合と比較して、フェイス吹出口1dから吹き出される調和空気の温度分布を均一化することができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略あるいは簡略化する。
【0025】
図3は、本実施形態の車両用空気調和装置が備えるフェイス吹出口用モードダンパ10が開放状態である場合のフェイス吹出口用モードダンパ10とバイパス口1gと示す図である。
【0026】
この図に示すように、本実施形態の車両用空気調和装置が備えるフェイス吹出口用モードダンパ10は、バイパス口1gと同一の幅に形成されており、幅方向に左右対称の櫛歯状の切欠き領域R2が形成されている。
そして、切欠き領域R2において各櫛歯の幅は、通気した冷風が乱流となる幅に設定されている。
【0027】
このような構成を有する本実施形態の車両用空気調和装置においては、図1に示すように、フェイス吹出口用モードダンパ10の遮蔽面10aがバイパス口1gに対向するように配置された場合でも、フェイス吹出口用モードダンパ10に形成された切欠き領域R2を介して、バイパス口1gを介して排出される冷風が、フェイス吹出口1dに直接供給される。
したがって、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、上記第1実施形態の車両用空気調和装置と同様に、装置サイズを大型化することなく、サブエアミックスダンパ5を設置可能とすることが可能となる。
【0028】
また、本実施形態の車両用空気調和装置においては、切欠き領域R2がフェイス吹出口用モードダンパ10の幅方向に左右対称とされている。
このため、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、上記第1実施形態の車両用空気調和装置S1と同様に、偏った切欠き領域を介して冷風を通気する場合と比較して、フェイス吹出口1dから吹き出される調和空気の温度分布を均一化することができる。
【0029】
また、本実施形態の車両用空気調和装置においては、切欠き領域R2において各櫛歯の幅は、通気した冷風が乱流となる幅に設定されている。つまり、切欠き領域R2が通過する冷風が乱流となるように形状設定されている。
このため、バイパス口1gから排出されてフェイス吹出口1dに供給される冷風と混合部1cから供給される調和空気との混合を促進し、フェイス吹出口1dから吹き出される調和空気の温度分布をより均一化することができる。
【0030】
なお、本実施形態の車両用空気調和装置においては、フェイス吹出口用モードダンパ10に櫛歯状の切欠き領域R2が形成されているため、フェイス吹出口1dの形状は、当該フェイス吹出口1dがフェイス吹出口用モードダンパ10によって閉鎖可能なように、櫛歯状の領域を有する形状とされる。
【0031】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0032】
例えば、上記実施形態においては、本発明の通気領域がフェイス吹出口用モードダンパに形成された矩形状の切欠き領域R1あるいは櫛歯状の切欠き領域R2である構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば通気領域がフェイス吹出口用モードダンパに形成される複数あるいは単数の貫通孔であっても良い。
【0033】
また、上記第2実施形態においては、切欠き領域R2の櫛歯の幅を、冷風が乱流となる幅に設定することによって、当該乱流を形成する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、上記第1実施形態のフェイス吹出口用モードダンパ6の幅方向の端面が冷風の通過方向に傾斜させたり凹凸形状となるように切欠き領域R1を形状設定することによって、上記乱流を形成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0034】
5……サブエアミックスダンパ、6,10……フェイス吹出口用モードダンパ(モードダンパ)、6a,10a……遮蔽面、1d……フェイス吹出口、1g……バイパス口、R1,R2……切欠き領域(通気領域)、S1……車両用空気調和装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の顔に対して調和空気を送風するフェイス吹出口に冷風を直接供給するためのバイパス口と、該バイパス口を開閉するサブエアミックスダンパと、前記フェイス吹出口を開閉するモードダンパとを備える車両用空気調和装置であって、
前記モードダンパは、前記フェイス吹出口を開放する際に前記フェイス吹出口を閉鎖する遮蔽面が前記バイパス口に対向するように配置され、前記バイパス口から排出された前記冷風を通過させる通気領域を備えることを特徴とする車両用空気調和装置。
【請求項2】
前記通気領域は、前記モードダンパの幅方向の端部に形成された切欠き領域であることを特徴とする請求項1記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
前記通気領域は、幅方向に左右対称に設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の車両用空気調和装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−20518(P2011−20518A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165948(P2009−165948)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】