説明

車両用空気調和装置

【課題】車両用空気調和装置を提供する。
【解決手段】本発明は、流入ケーシング2と、空気分配ケーシング4と、送風機ケーシング13内に配置されて流入ケーシング2から空気を吸引して空気分配ケーシング4の中へ空気を運ぶための送風機12と、空気分配ケーシング4の内部に配置された蒸発器8と、蒸発器8の下方に配置された、蒸発器8の表面で空気から凝縮された液体を空気調和装置1の周辺へ排出するための排水システム6と、を有し、流入ケーシング2は、この流入ケーシング2の中へ侵入する液体が流入ケーシング2の下部領域で収集され、流入ケーシング2の下部領域と蒸発器8で凝縮された液体の排水システム6との間には、液体が流入ケーシング2から送風機ケーシング13及び蒸発器8を通過して排水システム6の中へ排出可能に液圧接続部5,9が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入ケーシングと、空気分配ケーシングと、送風機ケーシング内に配置されて流入ケーシングから空気を吸引して空気分配ケーシングの中へ空気を運ぶための送風機と、を有する車両用の空気調和装置に関する。
さらに、本発明の空気調和装置は、排水システムを有する。この排水システムは、空気分配ケーシング内に配置された蒸発器の下方に形成されており、この蒸発器の表面で空気から凝縮された水を排出するために設けられている。
【背景技術】
【0002】
従来の技術から、特に冷媒サイクルの蒸発器の通過時に調和される空気が冷却されるときに、空気から凝縮された水が排水システムを通して車両周辺へ排出される空気調和装置が知られている。しかしながら、従来のシステムでは、外部から、例えば新気吸入口を介して空気調和装置の中へ侵入する水は、大抵、排水システムから排出されていない。例えば、洗車中に、新気吸入口から空気調和装置の中へ侵入する水は、流入ケーシングの内部に集まり、そして、車両の客室内へ侵入し得る。車両周辺への非効率的な排出時の客室内への水の侵入は、特に車両内の中心に配置された空気調和装置の場合、冷媒サイクルの蒸発器よりも低く配置された新気吸入口で発生する。
【0003】
空気調和装置の中へ侵入した水が車両客室内への導かれることは、この種のタイプの空気調和装置によって少なくとも部分的に回避される。
【0004】
従来の技術から、空気流入チャネルと、送風機ケーシングを備えた送風機と、空気調和システムのケーシングと、空気流入チャネルを経て侵入し且つ送風機の方向へ輸送される水を空気調和システムの周辺へ排出するための導水部材と、を有する車両空気調和システムの排水のための配置が知られている。空気の流入によって空気流入チャネルの中へ侵入する水が送風機に到達する前にケーシング又は空気流から排出可能である空気流入チャネルの下側での付加的な排水システムの流出開口部の形成は、回避されるべきである。空気調和装置の内部に付加的な排水システムがもたらす費用のほかに、特に車両前壁内にもう1つの開口部を要し、もう1つの前壁シールが必要になる。
【0005】
特許文献1は、吸入チャネル及び二重の吸引スクロールケーシングが設けられた送風機と、空気調和システムケーシングと、を有する車両の二層空気調和装置を開示している。この空気調和システムケーシング内には、送風機から運ばれた空気を冷却するための蒸発器が配置されている。この蒸発器で空気から凝縮された凝縮水は、空気調和ケーシングから蒸発器の下方に配置された排出口を介して排出される。吸気チャネルを介して送風機の中へ導入された水は、排出管及び排出チャネルが設けられた排出システムによって凝縮水用の排出口へ差し向けられる。
排出システムは、この場合すでに送風機を通過した水が後方に吸引されるのを阻止する。送風機の下方に集められた水は、送風機を通過後に初めて排水に差し向けられる。
【0006】
また、特許文献2は、高圧側で流入開口部に接続され、低圧側で流出開口部に接続された送風機と、空気を調和するための蒸発器と、を有する自動車の運転室の空気調和のための装置を開示している。
【0007】
流入開口部から吸引された空気は、蒸発器を流れるときに除湿される。蒸発器表面で凝縮された水及び流入開口部から侵入する水は、排出装置を介してケーシングから排出される。この排出装置は、送風機又はケーシングの高圧側から蒸発器の下方の領域内の低圧側まで延びる導管が設けられている。収集された液体は、低圧側で開口部としてケーシングの底部に形成された排出口を介して排出される。
【0008】
ケーシングの中に形成された導管を通過した水の排出は、システム内部の圧力比に基づいている。第1導管の流入領域は、空気の流れ方向に向って蒸発器の前に、第2導管の流入領域は、蒸発器の下方又は後方に配置されている。従って、流入開口部からケーシングの中へ侵入する水は、送風機によって運ばれ、第1導管から排出され、蒸発器内で発生して凝縮液は、第2導管を経て排出される。この排出装置の排水の水柱は、低圧によって排水されないように阻止され、車両周辺への漏れを低減させる。
【0009】
特許文献3及び特許文献4は、水が空気流入口から送風機ケーシングを介して蒸発器ケーシングへ、そして周辺へ排出される内部排水について開示している。水は送風機を通過後に初めて排水部へ差し向けられる。空気流入口及び送風機ケーシングは、その下部領域内で、空気流入口の下部領域に収集された水が開口部を通して送風機ケーシングの下部領域へ排出されるように互いに接続されている。送風機ケーシングは、下部領域で、空気調和システムのケーシングの上部領域に接続されている。送風機の下方の送風機ケーシングを経て差し向けられた水は、送風機ケーシングの内側に形成された排水溝を介して空気調和システムのケーシングの下部領域へ排出され、そこから周辺へ排出される。従って、排出される水は、蒸発器の上方の蒸発器ケーシングの中へ流入する。空気流入口の領域の最下部は、水の排出を確保するために、送風機ケーシングの下部領域の上方及び蒸発器の上方に配置されていなければならない。
【0010】
空気は送風機によって吸引され、空気調和システムのケーシングの中へ導入される。空気調和システムの空気流入チャネルからケーシングへの空気移動は、送風機ケーシングを経て行われる。送風機は、圧力差によって空気流を発生する。
【0011】
空気調和システムの内部で最小圧力をもつ領域としての空気流入口と、最大圧力をもつ領域としての送風機ケーシングとの間に形成された接続によって、空気調和システムのケーシングの中に導入された空気は、圧力比によって水の進行方向の反対方向へ押される。空気は送風機ケーシングから空気流入口へ排出される。この場合、水は空気流入口からの空気の流れ方向に対向して送風機ケーシングの中に案内されねばならず、これが十分な排水の妨げとなる。この場合、高低差不足のために、反対の圧力差を克服するための水柱を形成することができず、その結果、空気調和システムは遮断状態でのみ満足に機能する。
【0012】
空気の高い圧力と、非常に速い速度の領域に配置された送風機ケーシングから蒸発器への接続によって、さらに強いアコースティックエミッションが発生し得る。
【0013】
なお、排出される水は蒸発器を介して排出され、その結果、蒸発器表面上に水滴が形成され、調和される空気の流れから同時に連れ去られ、車両の客室内へ導入することができる。蒸発器の上方のディフューザの中の水流入の配置は、高い空気調和装置に従って利用を制限し、取付け可能性が限定される。
【0014】
従来の技術で知られている空気調和装置は、空気調和装置のケーシングの中へ流入開口部を通して侵入する水を、排水のために水が排出される前に、送風機によって水が運ばれる性質を持つ。特に、その構造及び発生する圧力差に基づく排水が十分保証されない公知のシステムは、その高さ方向のサイズは制限されるため、空気調和装置を組み込むためにたくさんのスペースが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許第1674310号明細書
【特許文献2】欧州特許第1790511号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第2000338号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第2062762号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、空気流入口を通して空気調和装置のケーシングの中へ侵入する水を、蒸発器で凝縮される水のための既存の排水システムの中へ効率的に排出することができ、その結果、空気調和システム用の排水システムを提供することである。この空気調和システムの構成は、別のコンポーネントなしにコスト面で効果的に製造可能であり、かつ保守を少なくするべきである。さらに、水は排水システムを利用して送風機、ディフューザ及び蒸発器よりも低く配置された流入ケーシングで空気調和装置のケーシングから確実に排出可能にすべきである。空気調和装置全体は、少ないスペースのみを要求するべきである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、本発明の車両用の空気調和装置によって解決される。空気調和装置は、流入ケーシングと、空気分配ケーシングと、送風機ケーシング内に配置されて流入ケーシングから空気を吸引して空気分配ケーシングの中へ空気を運ぶための送風機と、を有する。空気分配ケーシングの内部には、蒸発器が配置されている。この蒸発器の下方には、蒸発器の表面で空気から凝縮された液体を空気調和装置の周辺へ排出するための排水システムが構成されている。空気から凝縮された液体、特に水は、蒸発器の表面で重力によって下方へ流れ、排水システムの中へ排出される。
【0018】
本発明によれば、流入ケーシング及び送風機ケーシングは、送風機によって吸引された空気が空気調和装置の中へ侵入後に移行部を通過して送風機ケーシングの中へ流れ込み、他方、流入ケーシングの中へ侵入する液体は、流入ケーシングの下部領域に収集されるように互いに差し向けられ且つ接続されている。流入ケーシングと送風機ケーシングとの間の移行部は、流入ケーシングの中に侵入する液体の流出を阻止する。この液体は、特に水である。
【0019】
上記移行部は、例えば、縁部もしくは段部、又は門口の形態に形成されており、これがその高さによって侵入する水をせき止める。変形例として上記移行部は、流入ケーシングの下部領域が垂直方向に、すなわち空気調和装置の高さ方向に、送風機ケーシングの下方に配置されることによって形成されている。
【0020】
本発明による空気調和装置は、流入ケーシングの中に侵入する液体を排出するための液圧接続部を有する。この液圧接続部は、この場合流入ケーシングの下部領域から、蒸発器で凝縮された液体を排出するための排水システムまで延びる。液圧接続部を利用して、流入ケーシングの中へ侵入する水は、有利にも流入ケーシングから排水システムの中へ排出可能であり、この場合、水が送風機ケーシング及び蒸発器を通過する。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態では、液圧接続部は、空気分配ケーシングの壁に配置された導管として形成されている。この導管は、壁の一体成形部として形成されており、それによって壁に組み込まれた構成要素である場合に特に有利である。
【0022】
導管は、好ましくは、U字形の断面と開放側面を有する導水路として形成されている。U字形の形成に対する変形例として、断面の開放側が、例えばV字形、W字形、又は四角形の断面を有する。
【0023】
本発明の第1実施形態では、導管が空気分配ケーシングの壁の内側に配置され、それに応じて、以下、「内側導管」とも呼ばれる。導管の開放側は、空気分配ケーシングによって取り囲まれた空間の方向に差し向けられている。空気分配ケーシングによって取り囲まれた空間内には、例えば、空気の調和用の空気調和装置の冷媒サイクルの蒸発器も配置されている。
【0024】
導管の開放した設計によって、導管は、流入ケーシング内の低圧領域を空気分配ケーシング内のより高い圧力の領域と接続する。空気流の圧力差は、低圧によって空気を流入ケーシングから吸引し、より高い密度で空気分配ケーシングの中へ運ぶ送風機の運転によって発生する。
【0025】
導管は、空気の流れ方向に蒸発器の下流又は上流に配置されており、その結果、空気調和装置を通過する空気流は、蒸発器を通過前又は通過後に導管を通過する。蒸発器の通過時の圧力損失によって、空気流は、空気の流れ方向に向って蒸発器の後よりも前の方が高い圧力を有する。流入ケーシング内の導管内への入口の圧力は、送風機の吸引圧力に等しいが、空気分配ケーシング内の圧力は異なる。従って、導管の開放した設計によって、それぞれ空気の流れ方向の配置に応じて蒸発器の前又は後で導管の全長にわたり異なる圧力差が生じる。導管内への入口と空気分配ケーシングの内部との間の圧力差は、導管が空気の流れ方向へ蒸発器の後に配置された場合の方が、導管が蒸発器の前に配置された場合よりも小さく、これが液体の排水に影響する。圧力差は可能な限り小さくするべきである。
【0026】
本発明の更なる実施形態によれば、導管の開放側を閉鎖するための部材が設けられている。この部材は、開放した導管を閉鎖するシールとして形成されている。それによって、有利にも、閉じた内側導管が形成される。この閉じた設計によって、流入ケーシングの下方領域内の導管への入口の圧力と排水システムへの出口の圧力は、僅かな差しかないか、又は、全く差がない。導管内部の小さな圧力差は、流入ケーシングから排水システム内への水の排出をサポートする。
【0027】
シールは、好ましくは、蒸発器シールとして形成されている。従来の蒸発器シールは、蒸発器を空気分配ケーシングの壁に対して封止する。本発明の有利な一実施形態によれば、蒸発器シールは、流入ケーシングの中へ侵入する水を排出するための導管を閉鎖するように形成されている。
【0028】
本発明の第2実施形態によれば、導管は、開放した内側導管を備えた第1実施形態と異なり、空気分配ケーシングの壁の外側に閉じた導管として配置されている。
【0029】
本発明の他の有利な更なる実施形態は、流入ケーシングの下部領域に流入ケーシングの下側と導管との間の接続部としての収容領域が設けられている。この収容領域は、好ましくは、パン(平なべ)形又は漏斗形に形成され、最下点又は最下部を形成している。導管は、最下部で収容領域と液圧式に接続されている。流入ケーシング内に収集される液体は、重力によってパン(平なべ)形又は漏斗形の収容領域内の最下部に集められ、流入開口部から導管の中へ通過する。
【0030】
本発明による解決策は幾つかの長所を有する。
流入ケーシングの中に侵入する水を蒸発器の排水システム内に排出することによって、車両側では、他の追加のコンポーネントなしに流入する、及び空気調和装置内で凝縮される水のために、排水部が1カ所だけ必要となる。シールによって閉鎖された導管又は閉じられ状態に形成された導管のそれぞれ、及び排水槽の底部付近への導管の流出開口部の配置によって、導管入口と導管出口との間のより少ない圧力差、及び槽の傾斜部での水の排出が確保され、これが排水及び水はけを最適化する。蒸発器シールを利用した導管形成の概念に基づいて、蒸発器の下方に流出口が生じる。水の流れ方向と逆に向けられた水の流入口と流出口の間の圧力差は、発生する水柱によって解消される。
開放した、蒸発器シールを利用して閉じられた導管の構成により、コンポーネントを追加するのではなく、ケーシング壁の内部を離型方向に対応して成形するだけであることから、空気調和装置のコスト面で効果的な製造を可能にする。
導管内部の小さい圧力差の結果、発生する垂直の水柱は高い圧力でも水の好適な排出を保証する。
排水システム内の導管出口に、すなわち、蒸発器と排水システムの入口との間の導管の開放した領域を覆うものとして配置されるカバーにより、空気調和装置の中へ侵入する汚れ粒子を排水の中へ排出可能である。有利にもU字形に形成されたカバーは、排水槽との接続部で閉じられた導管部分を形成する。水の中に一緒に持ち込まれた汚れ粒子は、客室のために調和される空気と接触することなく、蒸発器で凝縮される水の最初の排水の中へ排出される。カバーの配置なしで導管区間の開放した設計の場合、ゆるやかに流れる水で下部シェルの中で汚れ粒子が沈殿し、空気の乾燥後に一緒に連れ去られ、及び/又は不快な臭気を生じ得る。カバーを利用して排水システムの中の入口まで完全に閉じた導管によって、汚れ粒子は一方で水から排出される。つぎに、この汚れ粒子を取り除くとき、空気と直接接触させることなく客室に供給され、臭気を拡散しない。
導管の設計により、空気流入口の低い位置決めと、特に空気調和装置の高さ方向への省スペース及びコンパクトな構造を可能にする。
このような構造によって、非常に小さいアコースティックエミッションのみが発生する。
【0031】
本発明のその他の詳細、特徴及び長所は、添付図面を参照して以下の実施例の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1のa)は、流入ケーシングと空気分配ケーシングとの間の接続、並びにこの空気分配ケーシングの中に配置された導管を有する空気調和装置の正面図であり、図1のb)は、空気の流れ方向に向って蒸発器の後に配置された内側導管を有する図1のa)の空気調和装置の側面図であり、図1のc)は、空気の流れ方向に向って蒸発器の前に配置された内側導管を有する図1のa)の空気調和装置の側面図である。
【図2】図2のa)は、空気分配ケーシングの外部に配置された導管を有する空気調和装置の正面図であり、図2のb)は、外側導管を有する図2のa)の空気調和装置の側面図であり、図2のc)は、外側導管を有する図2のa)の空気調和装置の斜視図である。
【図3】空気分配ケーシングの壁の内部の導管を示す。
【図4】蒸発器シールによって閉鎖された、ケーシング壁の内部のU字形の溝としての導管を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1のa)は、正面図における空気の流入ケーシング2と空気分配ケーシング4との間に付加的な接続部と、空気分配ケーシング4内に配置された導管5とを有する空気調和装置1を示す。
【0034】
空気調和装置1は、調和される空気が空気調和装置1の中へ吸引される流入開口部を備えた流入ケーシング2を有する。空気の流入ケーシング2は、送風機12の低圧側に形成されている。送風機12は、吸引された空気を流れ方向15に、ディフューザ4とも呼ばれる空気分配ケーシング4の中へ送出する。空気分配ケーシング4の内部には、車両の空気調和装置の冷媒サイクルの蒸発器8が空気の冷却及び/又は除湿のために配置されている。空気は、蒸発器8の通過後、付加的な熱交換器及びガイド部材のような空気調和装置の別のコンポーネントを介して案内され、個々の空気出口16へ排出される。送風機12は、上縁部7が図1のa)に示された蒸発器8の上方に配置されている。
【0035】
空気が蒸発器8を通過し、冷却されて除湿されるときに、空気の水分が熱交換器8の表面で凝縮する。この水分は、排水システム6を介して空気調和装置から排出される。排水システム6は、蒸発器8の下方に配置されており、その結果、水分を重力の方向へ排出することができる。
【0036】
空気中の水分のほかに、雨水、雪又は自動洗車装置の水のような別の水分が流入開口部を通して流入ケーシング2の中へ入る。このような水分が空気流を介して車両の客室へ到達することを防ぐために、流入ケーシング2の下部領域で収集される水分を排出しなければならない。
【0037】
収集される水分に関して下縁部3によって制限された流入ケーシング2の下部領域は、コンパクトかつ省スペースの空気調和装置1の構造によって空気分配ケーシング4の中に配置された蒸発器8の上縁部の高さに調整されている。それによって、有利にも、空気調和装置1の高さを最小限に抑制することができる。送風機ケーシング13が流入ケーシング2の上方に配置されているので、収集される液体は、従来の空気調和装置のように、、送風機ケーシング13を介してディフューザ4を経て、蒸発器8の排水システム6の中へは排出されない。
【0038】
収集された水分は、むしろ流入ケーシング2の下側で収容領域14を介して排出される。パン(平なべ)形(pan-shaped)又は漏斗形に形成された収容領域14は、その最下部で導管5として形成された液圧接続部5の中へ入る。導管5は、図1のa)に従って内側導管5である。この場合、内側導管の「内側」とは、空気分配ケーシング4内に設けられた導管5の配置を意味する。さらに、導管5は、蒸発器8を取り囲む空気分配ケーシング4の側面に配置されており、収容領域14から空気調和装置排水6の領域まで延びる。それによって、導管5は、収容領域14と組み合わせて送風機ケーシング13のほかに空気の流入ケーシング2、ディフューザ4、排水システム6の間の付加的な接続部をなす。空気調和装置1の中に侵入する水は、送風機12の周りを、すなわち送風機12のバイパスとして通過し、低圧側から高圧側へ排出される。
【0039】
収容領域14は、空気調和装置1が水平に取付けられるときに、流入ケーシング2を導管5に結合する部材として、流入ケーシング2及び導管5に対して密閉接続されている。
【0040】
従って、例えば雨水、雪又は自動洗浄装置の水として流入開口部を通して流入ケーシング2の中へ侵入する水分は、空気流入口から蒸発器8の下方の空気調和装置排水6の領域へ排出される。水は蒸発器8を通過して案内される。
【0041】
車両側にとっては有利なことに、外部から空気調和装置1の中へ侵入し、空気調和装置1の内部で凝縮される水用の排水システム6だけが必要である。排水システム6の中への導管5の水流出開口部の配置によって、導管5の中の流入口としての収容領域14と流出口の間のより少ない圧力差が保証され、これが水の排出プロセスを最適化する。
【0042】
図1のb)は、流入ケーシング2と空気分配ケーシング4との間の接続部ならびに空気分配ケーシング4の中に配置された内側導管5をもつ図1のa)の空気調和装置1の側面図を示す。導管5は、空気の流れ方向15に向かって蒸発器8の後に形成されている。
【0043】
空気の流入ケーシング2の中へ侵入する水は、収容領域14を介して一緒に案内しながら導管5の中へ導入される。導管5は、例えば、開放した導水路としてU字形の凹部の形態で空気分配ケーシング4の中に形成されており、それによって流入ケーシング2の低圧側の領域からディフューザ4内のより高い圧力の領域まで延びる。導管5を空気の流れ方向15に蒸発器8の後方に配置し、それによって蒸発器8の貫流時に圧力が損失することによって、導管5全体にわたって生じる高圧と低圧との間の圧力差が小さくなる。
【0044】
蒸発器8を通過して案内された水は、U字形の凹部を通して空気分配ケーシング4内へ差し向けられ、それによって空気流の外部でケーシング壁で排水システム6の中へ排出され、その結果、排出される水が空気流によって車両の客室の中へ一緒に持ち込まれることはない。
【0045】
図1のc)は、図1のa)の内側導管5を有し且つ図1のb)の側面図に対する他の実施形態による空気調和装置1を示す。導管5は、空気の流れ方向15に向って蒸発器8の前に形成されている。
同様に、例えば開放した導水路としてU字形の凹部の形態で空気分配ケーシング4の中に形成された導管5は、流入ケーシング2の中の低圧領域からディフューザ4内の高圧領域まで延びる。空気の流れ方向15に向かって蒸発器8の前の導管5の配置によって、導管5を介して生じる高圧と低圧との間の圧力差は、図1のb)の流れ方向15に向かって蒸発器8の後の導管5の形成時よりも大きくなる。
【0046】
図2のa)は、外部から空気分配ケーシング4に配置された導管9を備えた空気調和装置1の正面図を示す。
【0047】
図1のa)、図1のb)及び図1のc)に対する変形例としての空気調和装置1の実施形態では、流入ケーシング2の下側で収集された液体は、パン(平なべ)形又は漏斗形の収容領域14を介して外側導管9として形成された液圧接続部9の中へ排出される。外側導管の「外側」とは、空気分配ケーシング4の外部に設けられた導管9の配置を意味する。導管9は、この場合、同様に空気分配ケーシング4に組み込まれた構成要素であり、収容領域14から空気調和装置排水6の領域まで延びる。空気調和装置1の中へ侵入する水は、送風機ケーシング13に達する前に空気流を案内する空気調和装置1のケーシングから排出される。
【0048】
外側導管9は、ディフューザ4の外側で流入ケーシング2から閉じた導管9として排水システム6まで延び、空気調和装置1又は空気流の高圧領域に対する開放側をもたない。従って、収容領域14及び排水システム6によって形成される導管9の開放側に非常に小さい圧力差のみが生じる。このより小さい圧力差が空気調和装置排水6の中への水の好適な排出を可能にする。
【0049】
図2のb)及び図2のc)は、図2aに記載の外部から空気分配ケーシング4に配置された導管9を有する空気調和装置1の側面図及び斜視図をそれぞれ示す。
導管9は、図1a、図1b又は図1cの何れか1つに示されている内側導管5と異なる外部の配置によって空気流から独立して配置可能である。
【0050】
空気の流入ケーシング2の中へ侵入する水は、収容領域14を介して一緒に案内されて導管9の中へ導入され、次いで閉じた導管9の内部の空気分配ケーシング4の外側で蒸発器8の排水システム6へ案内される。その際に排出される水は、車両の客室に供給される空気流との接触なしで輸送される。
【0051】
図3は、空気分配ケーシング4の壁の内部に配置された導管5、すなわち図1のa)、図1のb)及び図1のc)による内側導管5を備える空気調和装置1の斜視図を示す。図4は、ディフューザ4の壁の内部にシール11によって閉鎖されたU字形の溝としての導管5を示す。
【0052】
図3及び図4に示されている形態は、図1のa)、図1のb)及び図1のc)の開放した内側導管5の長所を、図2のa)、図2のb)及び図2のc)の閉じた外側導管9の長所と組合わせる。空気分配ケーシング4の壁の内部に開放した導水路としてU字形の凹部の形に形成された導管5は、有利にも閉鎖可能であり、それによって空気調和装置1の内部の圧力差にまったくさらされず、又は非常に小さい圧力差のみにさらされる。ディフューザ4のプラスチックケーシングの離型方向によって、カバー等の形態で付加的な部材が必要になるが、これは空気調和装置1の製造及び取付けを困難にし、それによってコスト高になる影響を及ぼす。
【0053】
しかしながら、空気調和装置排水6の中へ侵入する水を適切に排出させるための、開放して形成された内側導管5は、同様に蒸発器シール11によって覆うことができ又は閉鎖可能である。蒸発器8とケーシング壁との間の漏れ流を回避するために蒸発器8をケーシング壁に対して取り囲みながらシールする従来の蒸発器シール11は、それに応じて拡大して形成されており、導管5よりも大きい幅を有する。付属のシール11を有する蒸発器8の組込み後、閉じた内側導管5が形成される。
【0054】
蒸発器シール11は、それによってケーシング壁に対して蒸発器8をシールし、同時に空気調和装置1の中に侵入する水を排出するために導管5を閉鎖する。
【0055】
開放した、蒸発器シール11によって閉鎖された導管5の使用によって、空気調和装置1のコスト的に有利な形成が可能である。導管5は、離型方向へのディフューザ4のケーシング壁内の形状に従って形成され、その結果、空気調和装置1のその他のコンポーネント及び変形による付加的な排水システム6は不要である。空気調和装置1は、バイパスとしての導管5の形成によってコンパクトかつ省スペースに構成可能である。空気調和装置1の高さは最小限にすることができる。
【0056】
排出される水は、蒸発器8に及びそれによって車両の客室に対して調和される空気流を通過して排出される。導管5の中の流入口としての収容領域14と排出口との間の圧力差が最小限に抑制され、その結果、水の排出過程が最適化される。
【符号の説明】
【0057】
1 空気調和装置
2 流入ケーシング
3 流入ケーシングの下縁部
4 空気分配ケーシング、ディフューザ
5 液圧接続部、内側導管、導管
6 空気調和装置排水、排水システム
7 蒸発器の上縁部
8 蒸発器
9 液圧接続部、外側導管、導管
10 ケーシング壁
11 シール、蒸発器シール
12 送風機
13 送風機ケーシング
14 収集領域
15 空気の流れ方向
16 空気出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の空気調和装置(1)であって、
流入ケーシング(2)と、空気分配ケーシング(4)と、送風機ケーシング(13)内に配置されて上記流入ケーシング(2)から空気を吸引して空気分配ケーシング(4)の中へ空気を運ぶための送風機(12)と、上記空気分配ケーシング(4)の内部に配置された蒸発器(8)と、この蒸発器(8)の下方に配置されて上記蒸発器(8)の表面で空気から凝縮された液体を空気調和装置(1)の周辺へ排出するための排水システム(6)と、を有し、
上記流入ケーシング(2)は、この流入ケーシング(2)の中へ侵入する液体が上記流入ケーシング(2)の下部領域に収集されるように形成され、
上記流入ケーシング(2)の下部領域と上記蒸発器(8)で凝縮された液体の上記排水システム(6)との間には、液体が上記流入ケーシング(2)から上記送風機ケーシング(13)及び上記蒸発器(8)を通過して上記排水システム(6)の中へ排出可能に液圧接続部(5、9)が形成されていることを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
上記液圧接続部(5、9)は、上記空気分配ケーシング(4)の壁に導管(5、9)として配置されている請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
上記導管(5、9)は、上記壁の成形部であることを特徴とする請求項2に記載の空気調和装置(1)。
【請求項4】
上記導管(5、9)は、U字形の断面を備えた溝である請求項2又は3に記載の空気調和装置(1)。
【請求項5】
上記導管(5)は、内側導管(5)として空気分配ケーシング(4)の壁の内側に配置され、開放側が、空気分配ケーシング(4)によって取り囲まれた空間へ差し向けられている請求項2乃至4の何れか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項6】
上記導管(5)は、空気の流れ方向(15)に向かって上記蒸発器(8)の後又は前に配置されていることを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項7】
上記導管(5)の開放側を閉鎖するための部材には、閉鎖された内側導管(5)が形成されるように、開放した導管(5)を閉鎖するシール(11)として配置された部材が設けられている請求項4又は6に記載の空気調和装置(1)。
【請求項8】
上記シール(11)は、蒸発器シール(11)として、蒸発器(8)を空気分配ケーシング(4)の壁に対してシールし、同時に、流入ケーシング(2)に侵入する液体を排出するための導管(5)を閉鎖する請求項7に記載の空気調和装置(1)。
【請求項9】
上記導管(9)は、閉じた導管(9)として形成されており、空気分配ケーシング(4)の壁の外側に外側導管(9)として配置されている請求項1乃至4の何れか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項10】
上記下部領域の流入ケーシング(2)には、流入ケーシング(2)の下側と上記導管(5、9)との間の接続部として収容領域(14)が設けられ、この収容領域(14)は、パン(平なべ)形又は漏斗形に形成され、その最下点まで差し向けられ、上記導管(5、9)は、上記最下点で上記収容領域(14)と液圧式に接続されている請求項1乃至9の何れか1項に記載の空気調和装置(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−116476(P2012−116476A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264875(P2011−264875)
【出願日】平成23年12月2日(2011.12.2)
【出願人】(505450755)ビステオン グローバル テクノロジーズ インコーポレイテッド (140)
【Fターム(参考)】