説明

車両用空調システム

【課題】電極間の水による電気短絡を防止し、短絡による電極間のスパーク現象とそれによる放電ノイズとを防止することができる車両用空調システムを提供する。
【解決手段】空調ケースの内部通路にイオン発生器が装備され、イオン発生器の第1放電電極と第2放電電極が、互いに離隔されてイオン発生器本体から内部通路に突出形成され、第1放電電極と第2放電電極が水により電気短絡することを防止する短絡防止手段が設置されている自動車車両用空調システムであって、短絡防止手段は、第1放電電極と第2放電電極の間で、内部通路に向けて設置される遮断バッフルであり、第1放電電極と第2放電電極の間の水の流れを遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調システムに係り、より詳細には、イオン発生器の電極間における水による短絡を防止した車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車には、通常、室内の空気温度を調節するための空調システムが設けられており、その空調システムは、空調ケースに送風ファンが設けられ、上流部にある内気導入口と外気導入口の一方あるいは両方から空気を取入れ、下流部にあるエバポレータで温度調整された後室内に吹き出させて室内を快適な温度に維持させている。
【0003】
このとき、空調ケース内にイオン発生器を取り付け、空気中にイオン、特に陰イオンを増加させて情緒や自律神経の安定、疲労の回復などの効果を高めて室内環境の快適性を向上させることがしばしば行われる。例えば、空調ダクト内の流通空気中に陰イオンを発生させて陰イオンを含む空気を車内へ吹き出すようにした車両用空調装置〔特許文献1参照〕、空調ダクト内に針状電極を配置し、針状電極にマイナス高電圧を印加してコロナ放電を発生させることにより、低電圧でも多くの陰イオンを発生させることができるようにした陰イオン発生装置〔特許文献2参照〕が提案されており、その他、発生したイオンの車両室内への放出効率を高める改善提案〔特許文献3、4参照〕もなされている。
【0004】
しかし、従来の空調システムでは、内部に導入された空気の湿度が高いとき、イオン発生器の放電電極の周りに水が凝縮し、凝縮した水が電極間に水膜を形成して電気的に短絡し、電極間に電流が流れ、両電極の間にスパーク現象を誘発させ、その結果、放電ノイズを発生させるという問題点が指摘されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−315141号公報
【特許文献2】特開2000−247141号公報
【特許文献3】特開2004−148884号公報
【特許文献4】特開2004−142691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したイオン発生器の電極周囲に水が凝縮して両電極間に水膜を形成して電気的に短絡するという問題点に鑑み、本発明の目的は、両電極間の水による電気短絡を防止し、短絡による電極間のスパーク現象とそれによる放電ノイズとを防止することができる車両用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を果たすための本発明の車両用空調システムは、空調ケースの内部通路にイオン発生器が装備され、イオン発生器の第1放電電極と第2放電電極が、互いに離隔されてイオン発生器本体から内部通路に突出形成され、第1放電電極と第2放電電極が水により電気短絡することを防止する短絡防止手段が設置されている自動車車両用空調システムであって、短絡防止手段が、第1放電電極と第2放電電極の間で、内部通路に向けて設置される遮断バッフルであり、第1放電電極と第2放電電極の間の水の流れを遮断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、イオン発生器の両放電電極間に水膜形成が根本的に遮断され、両電極間の電気短絡が回避され、電極間のスパーク現象、放電ノイズの発生を防止することができ、自動車の乗車感を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の車両用空調システムを表わす断面図である。
【図2】図1のII−II線の断面図である。
【図3】本発明の好ましい実施形態に係る車両用空調システムにおける放電電極、及び遮断バッフルが設置された例の状態を表わす断面図である。
【図4】図3の斜視図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態の変形例であり、第1放電電極46と第2放電電極48が突出している天井面16bに遮断バッフルが一体に形成された状態を表わす断面図である。
【図6】図5の分解斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明による車両用空調システムを、添付した図面を参照しつつ詳しく説明する。
先ず、従来の車両用空調システムの構造を説明する。図1は、従来の車両用空調システムの断面図、図2は、図1のII−II線における断面図である。
空調システムは、空調ケース10を備え、送風機20が設置されている。送風機20は、送風ファン22と、送風ファン22を駆動させる送風モータ24とからなり、空調ケース10の外気導入口12から外気を、内気導入口14から内気をそれぞれ選択的に、あるいは両方から吸い込み、空調ケース10の内部通路16に送り込んでいる。
内部通路16の下流側にはエバポレータ30が設置され、エバポレータ30にはチューブ(図示せず)に冷媒が流れて内部通路16を通過する空気を冷却している。冷却された空気は、車両室内に吹き出して室内の温度を快適な状態に維持させている。
【0011】
本発明が対象とするイオン発生器40は、内部通路16のエバポレータ30の上流側に設けられ、イオン発生器本体42の一面(電極据付面)に第1放電電極46と第2放電電極48が互いに離れて並び、それぞれ内部通路16に向けて突出形成されている。また、第1放電電極46は、その先端部が突出するように第1保護管44に囲まれて一体となり、第2放電電極48は、その先端部が突出するように第2保護管45に囲まれて一体となり、空調ケース10に形成された貫通孔17を抜けて内部通路16の内側壁16aから内部に向けて延びるように設置される。
【0012】
第1放電電極46と第2放電電極48の間に電圧が印加されるとイオンを発生する。発生した陰、陽イオンは、内部通路16を流れる空気に付加されて流れ、エバポレータ30においてはエバポレータ30に生息する細菌やカビの微生物を死滅させ、室内に吹き出されたときには、空気中の微生物を死滅させ、悪臭成分を分解して脱臭することで空気の清浄度を高め、室内環境を快適にすることができる。
【0013】
本発明の好ましい実施形態は、イオン発生器40が内部通路16の天井面16bに設けられ、第1放電電極46と第2放電電極48がそれぞれ下きに突出している例である。図3と図4にその状況が図示されている。
本発明の好ましい実施形態では、第1放電電極46と第2放電電極48との間に遮断バッフル(Baffle)60を短絡防止手段50として装備している。
第1放電電極46と第2放電電極48は、共に下向きに並んで空調ケース10の貫通孔17を通過して内部通路16に出ており、遮断バッフル60は、第1放電電極46と第2放電電極48の間に位置して、イオン発生器本体42に一体に形成されている。そして、イオン発生器本体42を取付けるに際して、好ましくは遮断バッフル60が空気の流れ方向と平行になるようにして空気抵抗を少なくする。
遮断バッフル60は、下向きに延びており、これにより第1放電電極46と第2放電電極48間に流動する水を下方に誘導して排出させることができる。
【0014】
図5と図6には、本発明の好ましい実施形態の変形例を示している。この例では、第1放電電極46と第2放電電極48はそれぞれ独立した貫通孔17を通して空調ケース10から内部通路16の内部に向けて延びていて、遮断バッフル60は、第1放電電極46と第2放電電極48の間となる位置に空調ケース10の天井面16bに一体に設置されている。
【0015】
以上、本発明の好ましい実施の形態を説明したが、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、この他特許請求の範囲に記載の範疇内で適切に変更可能である。本発明によれば、第1放電電極46と第2放電電極48の間の水流れ経路を遮断することができ、これによって第1放電電極46と第2放電電極48との間に水膜が形成されることが防止され、水膜による第1放電電極46と第2放電電極48の間の電気短絡、及び短絡によるスパーク現象と放電ノイズの発生とを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の車両用空調システムは、放電電極間のスパーク現象、放電ノイズの発生を防止し、自動車の乗車感を大きく向上させることができる。
【符号の説明】
【0017】
10:空調ケース
16:内部通路
16a:(内部通路の)内側壁
16b:(内部通路の)天井面
16c:(内部通路内側壁に設けた排水リブの)収容溝
16d:(内部通路の)傾斜面
20:送風機
30:エバポレータ
40:イオン発生器
42:イオン発生器本体
44:第1保護管
44a:(第1保護管の)下側面
45:第2保護管
45a:(第2保護管の)下側面
46:第1放電電極
48:第2放電電極
50:短絡防止手段
60:遮断バッフル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調ケース(10)の内部通路(16)にイオン発生器(40)が装備され、前記イオン発生器(40)の第1放電電極(46)と第2放電電極(48)が、互いに離隔されてイオン発生器本体(42)から前記内部通路(16)に突出形成され、前記第1放電電極(46)と前記第2放電電極(48)が水により電気短絡することを防止する短絡防止手段(50)が設置されている自動車車両用空調システムであって、
前記短絡防止手段(50)は、前記第1放電電極(46)と前記第2放電電極(48)の間で、内部通路(16)に向けて設置される遮断バッフル(60)であり、前記第1放電電極(46)と前記第2放電電極(48)の間の水の流れを遮断することを特徴とする車両用空調システム。
【請求項2】
前記遮断バッフル(60)は、前記第1放電電極(46)と前記第2放電電極(48)の間に位置して、イオン発生器本体(42)に一体に設置されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調システム。
【請求項3】
前記遮断バッフル(60)は、前記第1放電電極(46)と前記第2放電電極(48)に位置する場所で、前記空調ケース(10)の天井面(6b)に一体に突設されることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調システム。
【請求項4】
前記遮断バッフル(60)は、空気の流れ方向と平行に形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−126540(P2011−126540A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76218(P2011−76218)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【分割の表示】特願2008−100371(P2008−100371)の分割
【原出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(598078735)漢拏空調株式会社 (23)
【住所又は居所原語表記】1689−1 Sinil−dong, Daedeok−gu, Daejeon−si 306−230 KR
【Fターム(参考)】