説明

車両用空調システム

【課題】車両用空調システムにおいて、空調の開始時刻の適正化を図ることで、乗車前の空調による電力消費を抑制することにある。
【解決手段】入力装置15,45の操作を通じて、乗車予定時刻が入力される。例えば、電気自動車2の入力装置45により乗車予定時刻が入力された場合、車載制御部21は、乗車予定時刻に基づき開始予定時刻を算出する。車載制御部21は、時間の計測を開始し、このときから開始予定時刻までの時間に達したとき、位置確認信号の送信を通じて、電子キー10との通信が成立するか否か、すなわち、ユーザに携帯される電子キー10が通信エリアに存在するか否かを判断する。車載制御部21は通信が成立しない場合、ユーザに携帯される電子キー10が通信エリア内に存在しない、すなわち、乗車予定時刻に乗車できないとして、開始予定時刻を延期する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗車の事前に空調を行う車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用の空調システムは、車載バッテリを電力源として、車室内の冷暖房、換気等の空調を行っていた。この車載バッテリの電力は、空調システムのみならず様々な用途に使用されている。特に、近年、電気自動車やハイブリッド車のように、車載バッテリの電力を走行に利用する技術が注目されている。このように、車載バッテリの電力への需要は高まっているものの、車載バッテリの容量には限界があるため、消費できる電力量にも制限がある。
【0003】
ここで、乗車した直後である走行開始時においては、現在の室温と設定室温との温度差が最も大きいため、ユーザの快適性の観点から急速な冷暖房が望まれる。しかし、電気自動車等の走行開始時においては、車載バッテリの電力は、冷暖房のみならず走行を開始するためにも費やされるため、冷暖房に十分な電力を費やせず、急速な冷暖房が困難な場合が想定される。従って、室温等の調整により車内の快適性が確保されるまで長時間要する場合がある。また、走行に必要とされる車載バッテリの電力が冷暖房に費やされるため、電気自動車の航続可能距離が減少する。
【0004】
そこで、特許文献1には、乗車前の車載バッテリの充電中に空調を行う電気自動車用の事前空調システムが開示されている。具体的には、車載バッテリの充電中において、例えば、電子キー等のキー操作により車両に事前の空調の要求が無線通信を通じてなされると、乗車予定時に空調が完了するように、事前に空調が開始される。これにより、乗車時には、快適な車内の空気環境が実現されている。よって、乗車直後のユーザの暑さ又は寒さに伴う不快感を低減することができる。また、乗車時に快適な車内の空気環境が実現されているところ、乗車後の空調に要する車載バッテリの電力消費を抑制できる。これにより、より多くの車載バッテリの電力を走行に費やせるため、電気自動車の航続可能距離を伸ばすことができる。また、特に走行開始時の空調による電気自動車の走行への影響を最小限に抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−268036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1に記載の事前空調システムにおいて、事前の空調が完了した際、すなわち、快適な車内の空気環境が実現された際に乗車できない場合がある。例えば、
ユーザが電子キーを使用して乗車予定時に空調が完了するように予約したものの、ユーザの都合により乗車予定時に乗車できない場合がある。このような場合には、事前の空調に費やした車載バッテリの電力は無駄になってしまう。
【0007】
ここで、ユーザがキー操作により事前空調の予約を解除することも可能である。しかし、ユーザが乗車予定時に乗車できない状況においては、携帯機を携帯するユーザが車両から遠く離れて、携帯機及び車両間の通信が不能な場合が多く、事前空調の予約の解除は困難である。
【0008】
なお、こうした問題は電気自動車に限らず事前空調システムを搭載した車両全般に共通して生じうる。
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、空調の開始時刻の適正化を図ることで、乗車前の空調による電力消費を抑制することができる車両用空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、ユーザに携帯される携帯機と車両との間での通信により車内の空気環境を整える制御を実行する車両用空調システムにおいて、前記車両及び前記携帯機の少なくとも一方に設けられ、ユーザの操作によって乗車予定時刻が入力される入力装置と、前記車両及び前記携帯機に設けられ、ユーザが乗車予定時刻に乗車可能な前記携帯機及び前記車両間の距離を基準に設定される通信エリア内での無線信号の送受信を通じて、前記携帯機及び前記車両間で通信を行うとともに、前記入力装置を通じて入力される乗車予定時刻に基づき車内の空気環境を整える制御の開始予定時刻を算出する制御装置と、を備え、前記入力装置が設けられる前記車両又は前記携帯機における制御装置は、前記開始予定時刻に達したとき、前記車両及び前記携帯機間で通信を行い、通信が成立したときユーザが乗車予定時刻に乗車できるとして車内の空気環境を整えるべく制御が開始され、通信が成立しないときユーザが乗車予定時刻に乗車できないとして車内の空気環境を整える制御の実行が中止又は前記開始予定時刻が延期されることをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、車両又は携帯機の入力装置の操作を通じて、乗車予定時刻が入力される。例えば、車両の入力装置により乗車予定時刻が入力された場合、車両の制御装置は、乗車予定時刻に基づき開始予定時刻を算出する。当該制御装置は、開始予定時刻に達したとき、無線信号の送信を通じて、携帯機との通信が成立するか否か、すなわち、ユーザに携帯される携帯機が通信エリアに存在するか否かを判断する。ここで、通信エリアは、ユーザが乗車予定時刻に乗車可能な携帯機及び車両間の距離を基準に設定されている。当該制御装置は、通信が成立した場合、ユーザに携帯される電子キーが通信エリア内にいて乗車予定時刻に乗車できるとして、空調制御を実行する。また、当該制御装置は通信が成立しない場合、ユーザが通信エリア内に存在しない、すなわち、乗車予定時刻に乗車できないとして、空調制御を中止、又は開始予定時刻を延期する。
【0011】
また、携帯機の入力装置により乗車予定時刻が入力された場合、携帯機の制御装置は、上記同様に、乗車予定時刻に基づき開始予定時刻を算出する。当該制御装置は、開始予定時刻に達したとき、無線信号の送信を通じて、車両との通信が成立するか否か、すなわち通信エリア内に車両が存在するか否かを判断する。通信が成立した場合、上記同様に、車両の制御装置は空調制御を実行する。通信が成立しない場合、車両の制御装置は、そもそも開始予定時刻に達したことを認識できないため空調制御を実行しない。これにより、結果的に開始予定時刻に開始が予定されていた制御が中止される。
【0012】
このように、乗車予定時刻にユーザが乗車できない場合には、開始予定時刻における空調の実行を中止したり、空調の開始予定時刻を延期したりすることで、乗車予定時刻の適正化が図られる。従って、ユーザが乗車しないにも関わらず予め入力された乗車予定時刻に合わせて、空調が行われることが抑制される。これにより、乗車前の空調による電力消費を抑制することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用空調システムにおいて、車両は電気エネルギを利用して走行可能であって、商用電源からの電力に基づき前記車両を充電する充電装置を備え、前記入力装置が設けられる前記車両における制御装置は、前記開始予定時刻に達したときであって、前記車両と通信が成立した場合に、前記充電装置からの電力を使用して車内の空気環境を調整する制御を実行することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、乗車前、すなわち開始予定時刻における空調は、商用電源からの電力により実行される。よって、乗車前の空調による車載バッテリの電力消耗を防止できる。さらに、車両の走行開始時においては、すでに空調は完了しているため空調に費やす車載バッテリの電力を低減することができる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用空調システムにおいて、前記携帯機及び車両に設けられ、衛星を介して自身の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記携帯機及び前記充電装置に設けられ、ネットワークを介してサーバと無線通信を行うネット通信部と、前記車両及び前記充電装置間で電力が送電される充電ケーブルと、前記車両及び前記充電装置に設けられ、前記充電ケーブルに供給される電力に情報信号を重畳、及び電力に重畳された情報を復調することで前記車両及び前記充電装置間で電力線搬送通信を可能とするPLCモデムと、を備え、前記入力装置が設けられる前記携帯機における制御装置は、前記開始予定時刻に達したときであって前記車両との通信が成立しない場合、前記携帯機の前記位置情報取得部を通じて携帯機の位置情報を取得して、この取得した位置情報を前記携帯機の前記ネット通信部から前記サーバを通じて前記充電装置の前記ネット通信部に送信し、前記充電装置は、前記ネット通信部を通じて取得した前記位置情報を電力線搬送通信にて前記車両に送信し、前記入力装置が設けられる前記車両における制御装置は、前記開始予定時刻に達したときであって前記携帯機との通信が成立しない場合、前記車両の前記位置情報取得部を通じて車両の位置情報を取得して、この取得した位置情報を、電力線搬送通信を通じて前記充電装置に送信し、前記充電装置は、取得した前記車両の位置情報を前記充電装置の前記ネット通信部から前記サーバを通じて前記携帯機の前記ネット通信部を介して前記携帯機に送信し、前記車両又は前記携帯機の制御装置は、前記携帯機及び前記車両の位置情報に基づき、乗車予定時刻を中止又は延期することをその要旨としている。
【0016】
車両及び携帯機間での通信は、無線信号を利用して行われるため、通信距離には限度がある。上記構成によれば、開始予定時刻において車両及び携帯機間の通信が成立しないとき、携帯機及び車両の位置情報に基づき、乗車予定時刻に乗車できない旨判断される場合、乗車予定時刻が中止又は延期される。
【0017】
このように、車両及び携帯機間で通信が成立しない場合であれ、携帯機の位置が認識可能であるため、携帯機の位置に適して乗車予定時刻が中止又は延期される。よって、さらなる乗車予定時刻の適正化、ひいては乗車前の空調による電力消費を抑制することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の車両用空調システムにおいて、前記充電装置は乗車予定時刻を入力する入力装置と、前記入力装置を通じて入力される乗車予定時刻に基づき車内の空気環境を整える制御の開始予定時刻を算出する制御装置と、を備え、前記充電装置の前記制御装置は、前記開始予定時刻に達したとき、前記電力線搬送通信にて、その旨を前記車両に伝達し、前記車両の前記制御装置は、前記開始予定時刻に達した旨認識すると、車内の空気環境を整える制御を開始することをその要旨としている。
【0019】
同構成によれば、充電装置における入力装置にて乗車予定時刻が入力されると、充電装置の制御装置により同乗車予定時刻に基づき開始予定時刻が算出される。この開始予定時刻に達したとき、電力線搬送通信にて車両にその旨が伝達され、車両にて空調が開始される。このように、車両及び携帯機のみならず、充電装置にて乗車予定時刻の入力が可能となることで、利便性が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、車両用空調システムにおいて、空調の開始時刻の適正化を図ることで、乗車前の空調による電力消費を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両用空調システムの構成図。
【図2】車両を中心とした通信エリアを示す上面図。
【図3】開始予定時刻の算出態様を示す室温及び時間のグラフ。
【図4】車両の位置及び電子キーの位置を示す上面図。
【図5】車両、電子キー及び充電スタンドの通信態様を示す説明図。
【図6】車載制御部が実行する制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図7】キー制御部が実行する制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図8】充電制御部が実行する制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した車両用空調システムの一実施形態について図1〜図8を参照して説明する。
図1に示すように、車両用空調システムは、電気自動車2と、電子キー10と、充電スタンド30と、サーバ60とを備える。
【0023】
電子キー10は、電気自動車2に搭載される車載機20との無線通信を通じて、電気自動車2の車両ドアの施解錠を可能とする。
具体的には、電子キー10は、キー制御部11を備える。キー制御部11には施錠スイッチ17と、解錠スイッチ16と、送信部13と、受信部12とが電気的に接続されている。
【0024】
施錠スイッチ17及び解錠スイッチ16がユーザによって操作されると、その旨の操作信号がキー制御部11に出力される。キー制御部11は、解錠スイッチ16が操作された旨の操作信号を認識すると、解錠要求信号を送信部13に出力する。解錠要求信号には、メモリ11aに記憶されるIDコードが含まれる。そして、送信部13は、解錠要求信号をUHF帯の無線信号に変調して、同解錠要求信号を送信する。同様に、キー制御部11は、施錠スイッチ17が操作された旨の操作信号を認識した場合、送信部13を通じて、IDコードを含むUHF帯の施錠要求信号を送信する。また、キー制御部11は、後述する事前空調の開始予定時刻t1までの時間T11に達したか否かを測定するタイマ11bを備える。
【0025】
車載機20は、車載制御部21を備える。車載制御部21には、車載受信部22と、車載送信部23と、ドアロック装置28とが電気的に接続されている。
車載制御部21は、IDコード等が記憶されるメモリ21aと、後述する事前空調の開始予定時刻t1までの時間T11に達したか否かを測定するタイマ21bとを備える。車載制御部21は、車載受信部22を通じて、解錠要求信号を受信すると、自身のメモリ21aに記憶されるIDコードと、解錠要求信号に含まれるIDコードとの照合を行い、この照合が成立したとき、ドアロック装置28を通じて車両ドアを解錠する。施錠要求信号を受信した場合も同様に、車載機20は、同様IDコード照合を行い、この照合が成立したときにドアロック装置28を通じて車両ドアを施錠する。
【0026】
また、車載機20は、電子キー10との無線通信を通じて、電子キー10の電気自動車2に対する位置を確認することができる。すなわち、車載制御部21は、事前空調の開始予定時刻t1までの時間T11に達したとき、車載送信部23を通じて、UHF帯の無線信号である位置確認信号S1を送信する。この位置確認信号S1は、図2に示すように、ユーザに携帯される電子キー10の位置を確認するべく、電気自動車2を中心に円形に形成される半径50m〜100m程度の通信エリア90内に送信される。この通信エリアの形状及び大きさは、通信環境により変化する。電子キー10が通信エリア90に存在する場合、キー制御部11は、受信部12を通じて位置確認信号S1を受信する。キー制御部11は、受信信号が位置確認信号S1である旨認識すると、送信部13を通じてUHF帯の無線信号である位置確認信号S2を送信する。このように、両位置確認信号S1,S2のやり取りによる通信が成立したとき、通信エリア90に電子キー10が存在する旨判断される。
【0027】
ここで、図2に示すように、充電スタンド30は、住宅において、例えば、駐車場に設置される。充電スタンド30と電気自動車2との間を充電ケーブル37により接続することで、電気自動車2が充電可能状態となる。この状態において、充電スタンド30から充電ケーブル37を介して電気自動車2に電力が供給されて、電気自動車2が充電される。このように、充電スタンド30は住宅に設けられるところ、充電可能状態における電気自動車2が形成する通信エリア90は住宅も含むことになる。よって、ユーザが住宅内にいる場合には、位置確認信号S2が返信され、電子キー10が車両周辺に存在する旨判断される。
【0028】
また、電気自動車2には、HVAC(Heating Ventilating Air Conditioning)システム27が搭載されている。HVACシステム27は、冷房、暖房及び換気等の空調を通して、車内の空気環境を調整するシステムである。具体的には、HVACシステム27は、HVACコントローラ41と、温度センサ43と、入力装置45と、空調部42とからなる。なお、HVACコントローラ41は車載制御部21の一部として機能する。
【0029】
入力装置45は、例えば、運転席からユーザによって操作可能な複数のスイッチからなり、これらスイッチ操作に応じて操作信号がHVACコントローラ41に出力される。ユーザは、入力装置45の操作を通じて、事前空調の予約を行う。ここで、事前空調とは、ユーザの乗車前から冷房、暖房及び換気等を開始することである。この事前空調によれば、乗車時に快適な車内の空気環境を提供することが可能となる。電気自動車2が充電可能状態のとき、図1に示すように、事前空調は充電スタンド30の電力供給源である商用電源39の電力を利用して行われる。このため、事前空調により車載されるバッテリユニット29の電力が消耗することはない。
【0030】
事前空調の予約の際には、乗車予定時刻t2及び希望室温T1の入力を行う。温度センサ43は、現在の室温Tnを検出するとともに、検出結果をHVACコントローラ41に出力する。HVACコントローラ41は、入力装置45からの操作信号に基づき、乗車予定時刻t2及び希望室温T1を認識し、温度センサ43の検出結果に基づき現在の室温Tnを認識する。HVACコントローラ41は、乗車予定時刻t2に室温Tnを希望室温T1とするための事前空調の開始予定時刻t1を算出する。
【0031】
具体的には、図3に示すように、現在の室温Tnから希望室温T1とするためには、所定時間T10を要する。この所定時間T10はHVACシステム27の冷暖房能力等に基づき変わる。HVACシステム27の冷暖房能力が高いほど、短時間で希望室温T1とすることができるため所定時間T10は短くなる。乗車予定時刻t2から所定時間T10だけ差し引くことで、事前空調の開始予定時刻t1を算出することが可能となる。なお、図3には、事前の冷房が行われる場合を示したが、事前の暖房が行われる場合も同様である。ここで、開始予定時刻t1及び乗車予定時刻t2は、現在を基準とした時刻であり、例えば、乗車予定時刻t2が現在から2時間後に設定され、所定時間T10が30分間であった場合、開始予定時刻t1が現在から1時間30分後であると算出される。この場合、現在から開始予定時刻t1までの時間T11が1時間30分となる。
【0032】
そして、車載制御部21は、タイマ21bを通じて時間T11に達するまで待機する。前述のように、車載制御部21は、図5の左側に示すように、時間T11となったときに、車載送信部23を通じて、位置確認信号S1を送信する。これにより、電気自動車2の周辺に電子キー10が存在するか否か判断される。すなわち、位置確認信号S2の返信があった場合、電気自動車2の周辺に電子キー10が存在する旨判断され、位置確認信号S2の返信がない場合、電気自動車2の周辺に電子キー10が存在しない旨判断される。HVACコントローラ41は、位置確認信号S2の返信があった場合、乗車予定時刻t2に室温Tnを希望室温T1にするべく、空調部42を通じて空調を開始する。
【0033】
車載制御部21は、位置確認信号S2の受信がない場合、すなわち通信が不成立の場合、図5の右側に示すように、充電スタンド30を介して電子キー10の位置情報であるキー位置Pkを取得する。ここで、充電スタンド30は住宅に備えつけられている。また、事前空調の予約は、電気自動車2が充電可能状態のときに行われる。
【0034】
図4に示すように、車載制御部21は、電気自動車2の位置Pnにキー位置Pkを照らして、乗車予定時刻t2に乗車できるか否か判断する。なお、キー位置Pk及び電気自動車2の位置Pnの取得方法については後述する。
【0035】
車載制御部21は、キー位置Pk及び電気自動車2の位置Pn間の距離Dを開始予定時刻t1から乗車予定時刻t2までの所定時間T10で割ることで、ユーザが乗車予定時刻t2に乗車するために必要とされる平均速度Vaを算出する。すなわち、キー位置Pkにいるユーザが平均速度Vaで電気自動車2の位置Pnに向かった場合、乗車予定時刻t2に乗車することができる。車載制御部21は、平均速度Vaがメモリ21aに記憶されるしきい値Vthを超えるか否か判断する。しきい値Vthは、想定されるユーザの移動速度に基づき設定されている。例えば、平均的な歩行速度は2km/h〜4km/hであることから、歩行の場合、5km/hの速度で歩行することは想定しにくい。このため、歩行を想定した場合、例えば、しきい値Vthを5km/hに設定する。
【0036】
車載制御部21は、平均速度Vaがしきい値Vthを超える場合には、乗車予定時刻t2に乗車できないとして、乗車予定時刻t2を延期する。なお、本例では、乗車予定時刻t2の延期期間は、平均速度Vaに関わらず一定期間である。また、乗車予定時刻t2が延期された場合、延期された乗車予定時刻t2に基づき、再び、開始予定時刻t1が算出され、算出された開始予定時刻t1に電気自動車2及び電子キー10間で通信が試みられる。車載制御部21は、平均速度Vaがしきい値Vth以下の場合には、乗車予定時刻t2に乗車できるとして、空調部42を通じて室温Tnを希望室温T1とする空調を開始する。
【0037】
以上により、乗車予定時刻t2に乗車しないのにも関わらず、乗車予定時刻t2に合わせて空調が開始されることが抑制される。よって、事前空調に関する無駄な電力消費を抑制することができる。また、乗車時にユーザに快適な車内の空気環境を提供するとともに、電気自動車2の走行開始時には空調によるバッテリユニット29の電力消費を低減することができる。
【0038】
さらに、キー制御部11には、入力装置15と、GPS(Global Positioning System)受信部18と、ネット通信部14とが電気的に接続されている。GPS受信部18は、複数の人工衛星から発信されるGPS情報を取得し、同GPS情報をキー制御部11に出力する。キー制御部11は、GPS情報に基づき、キー位置Pkを判断する。
【0039】
ネット通信部14は、例えばIP(Internet Protocol)通信網や携帯電話通信網等の外部の通信ネットワーク61を介してサーバ60と無線によるネットワーク通信が可能となっている。ネット通信部14は、一定時間毎にキー位置Pkを、通信ネットワーク61を通じてサーバ60に送信する。サーバ60はキー位置Pkに関する情報を記憶する。また、ネット通信部14は、通信ネットワーク61を通じてサーバ60に記憶される住宅が存在する地域の温度情報を取得し、取得した温度情報をキー制御部11に出力する。キー制御部11は、温度情報に基づき電気自動車2の室温Tnを推算する。
【0040】
入力装置15は、HVACシステム27に備えられる入力装置45と同様に、ユーザの操作により乗車予定時刻t2及び希望室温T1の入力操作が行われる。また、キー制御部11は、車載制御部21と同様に、乗車予定時刻t2、希望室温T1及び室温Tnに基づき事前空調の開始予定時刻t1を算出する。開始予定時刻t1に達したとき、キー制御部11は、送信部13を介して、位置確認信号S2を送信する。すなわち、この位置確認信号S2により電子キー10を中心として、通信エリア90が形成される。そして、キー制御部11は、位置確認信号S2に対して車載機20からの位置確認信号S1を受信することで通信が成立したとき、電気自動車2が電子キー10の周辺に存在する旨判断する。このとき、キー制御部11は、送信部13を通じて、希望室温T1を含む空調制御要求信号を送信する。車載機20は、空調制御要求信号を受信すると、空調部42を通じて室温Tnを希望室温T1とする空調を開始する。これにより、乗車予定時刻t2に室温Tnが希望室温T1となる。
【0041】
さらに、車載制御部21には、GPS受信部48が電気的に接続されている。GPS受信部48は、複数の人工衛星から発信されるGPS情報を取得し、同GPS情報を車載制御部21に出力する。車載制御部21は、GPS情報に基づき、電気自動車2の位置Pnを判断する。
【0042】
また、電子キー10は電気自動車2が充電可能状態であるか否かを認識できる。すなわち、充電ケーブル37の抜き差しを通じて、充電可能状態となるとき、若しくは充電可能状態でなくなるとき、車載制御部21は、車載送信部23を通じて、その旨を含む信号を送信する。ここで、状態の切り替えは、充電ケーブル37の接続により行われるため、このときには電子キー10を携帯するユーザが車両周辺にいることが予想される。よって、同ユーザが携帯する電子キー10は充電可能状態となった、若しくは充電可能状態でなくなった旨の信号を受信することにより、充電可能状態であるか否かを認識できる。
【0043】
充電スタンド30は、充電制御部31と、ネット通信部34と、入力装置35と、PLC(Power Line Communication)モデム36とを備える。
ネット通信部34は、電子キー10に備えられるネット通信部14と同様に、通信ネットワーク61を介してサーバ60と無線によるネットワーク通信が可能となっている。ネット通信部34は、通信ネットワーク61を介してサーバ60に記憶されているキー位置Pkを取得し、取得したキー位置Pkを充電制御部31に出力する。これにより、充電制御部31は、キー位置Pkを認識することができる。
【0044】
電気自動車2と充電スタンド30との間では、電力の授受のみならず、電力線を通信回線として利用するPLC通信(電力線搬送通信)が可能である。PLCモデム36は、商用電源39からの交流電力が供給される電力線38に接続される。PLCモデム36は、電力線38に充電制御部31からの情報を変調した高周波信号を交流電力に重畳するとともに、交流電力に重畳される高周波信号を復調し、この復調した信号を充電制御部31に出力する。
【0045】
充電スタンド30と電気自動車2とは、充電ケーブル37を介して着脱可能に接続される。商用電源39からの交流電力は、充電ケーブル37を通じて電気自動車2に送電される。電気自動車2は、PLCモデム36との間でPLC通信を行うPLCモデム26と、充電ケーブル37を通じて送電される電力を充電するバッテリユニット29とを備える。PLCモデム26は、充電ケーブル37を通じて、電力が供給される車内の電力線49に接続されている。そして、PLCモデム26は、車載制御部21からの情報を変調した高周波信号を交流電力に重畳するとともに、PLCモデム36により重畳された高周波信号を復調し、この復調した信号を車載制御部21に出力する。また、電力線49にはバッテリユニット29が接続されている。バッテリユニット29は、交流電力及び直流電力間の双方向で電力変換するコンバータを備えるとともに、同変換した直流電力を充電する。このバッテリユニット29に充電された電力は、電気自動車2の走行及び走行中における空調等に費やされる。
【0046】
車載制御部21は、温度センサ43が検出した室温Tnを、両PLCモデム26,36を介したPLC通信にて充電制御部31に送信する。充電制御部31は、室温Tnを自身のメモリ31aに記憶する。また、充電制御部31は、事前空調の開始予定時刻t1までの時間T11に達したか否かを測定するタイマ31bを備える。
【0047】
入力装置35は、HVACシステム27に備えられる入力装置45と同様に、ユーザの操作により乗車予定時刻t2及び希望室温T1の入力操作が行われる。また、充電制御部31は、車載制御部21と同様に、乗車予定時刻t2、希望室温T1及び現在の室温Tnに基づき事前空調の開始予定時刻t1を算出する。そして、充電制御部31は、開始予定時刻t1までの時間T11に達したとき、PLC通信を通じて、電気自動車2にその旨を伝達する。
【0048】
充電スタンド30及び電気自動車2間で充電ケーブル37が接続された時点で、PLC通信が可能となる。このため、車載制御部21及び充電制御部31は、PLC通信が可能となることで、充電可能状態を認識することができる。
【0049】
以上のように、電気自動車2、電子キー10及び充電スタンド30にはそれぞれ入力装置15,35,45が備えられている。この入力装置15,35,45の操作に基づき電気自動車2、電子キー10及び充電スタンド30は、各自の制御プログラムに従って、互いに通信を行いつつ、事前空調の開始予定時刻t1が適正であるかを判断する。
【0050】
各入力装置15,35,45により乗車予定時刻t2及び希望室温T1が入力された場合に、電気自動車2、電子キー10及び充電スタンド30(正確にはそれらの制御部11,21,31)が実行する各制御プログラムについて順番に説明する。なお、各制御プログラムは、充電ケーブル37を通じて充電スタンド30及び電気自動車2が接続されている充電可能状態のとき実行される。
【0051】
まず、車載制御部21が実行する制御プログラムについて、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。当該制御プログラムは、メモリ21aに格納されている。
入力装置45からの操作信号を通じて、乗車予定時刻t2及び希望室温T1が認識される(S101)。次に、温度センサ43を通じて現在の室温Tnが認識される(S102)。乗車予定時刻t2、希望室温T1及び現在の室温Tnに基づき、事前空調の開始予定時刻t1が算出される(S103)。そして、タイマ21bを通じて、時間tの計測が開始される(S104)。この時間tが同時間tの計測を開始した時刻から開始予定時刻t1までの時間T11に達するのを待って(S105でNO)、時間tが時間T11に達したとき(S105でYES)、位置確認信号S1が送信される(S106)。そして、この位置確認信号S1に対して、電子キー10から送信される位置確認信号S2の受信があるか否かが判断される(S107)。
【0052】
位置確認信号S2の受信があった場合(S107でYES)には、乗車予定時刻t2に室温Tnを希望室温T1とするべく、事前空調が開始される(S108)。この事前空調には、充電ケーブル37を通じて商用電源39から供給される電力が使用される。従って、事前空調によりバッテリユニット29の電力が消費されることはない。そして、事前空調が開始された旨の情報信号が電子キー10に送信される(S109)。これにより、電子キー10は事前空調が開始された旨を認識できる。これにて、制御プログラムが終了される。
【0053】
一方、位置確認信号S2の受信がない場合(S107でNO)には、充電スタンド30を通じてキー位置Pk及びGPS受信部48を通じて電気自動車2の位置Pnが取得される(S110)。キー位置Pk及び電気自動車2の位置Pnに基づき、両位置Pk,Pn間の距離D、さらに距離Dを所定時間T10で割ることでの平均速度Vaが算出される(S111)。そして、平均速度Vaがしきい値Vthを超えるか否か判断される(S112)。平均速度Vaがしきい値Vth以下の場合(S112でNO)、乗車予定時刻t2に乗車できるとして、ステップS108の処理に移行して、事前空調の制御が開始される。平均速度Vaがしきい値Vthを超える場合(S112でYES)、乗車予定時刻t2に乗車できないとして、乗車予定時刻t2が延期される(S113)。そして、延期された旨を含む情報信号が電子キー10に送信される(S109)。これにより、電子キー10は乗車予定時刻t2が延期された旨を認識できる。これにて、制御プログラムが終了される。
【0054】
以上の制御プログラムによれば、乗車予定時刻t2に乗車しないのにも関わらず、乗車予定時刻t2に合わせて、開始予定時刻t1に空調が開始されることが抑制される。よって、事前空調に関する無駄な電力消費を抑制することができる。
【0055】
また、電気自動車2及び電子キー間の距離Dではなく、平均速度Vaをしきい値Vthと比較することで、より正確に乗車予定時刻t2にユーザが乗車できるか否かが判断できる。具体的には、室温Tnと希望室温T1との温度差が大きくなるにつれて、事前空調に要する所定時間T10は大きくなるところ、時間T11に達するタイミングが早くなる。従って、乗車予定時刻t2に乗車する意思があるものの、このタイミングにおいては、ユーザは電気自動車2から遠く離れている状況も想定される。このため、電気自動車2及び電子キー間の距離Dでは、乗車予定時刻t2にユーザが乗車できるか否かの判断が正しくできない場合がある。この点、本例では距離Dを所定時間T10で割ることで算出される平均速度Vaに基づき判断されるため、正確な判断が可能となる。
【0056】
次に、キー制御部11が実行する制御プログラムについて、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。当該制御プログラムは、メモリ11aに格納されている。
まず、先の図6に示したステップS101〜S105と同じ処理が実行される。なお、本プログラムにおけるステップS102においては、室温Tnは取得された温度情報に基づき推算されることで認識される。ステップS105において、時間tが同時間tの計測を開始した時刻から開始予定時刻t1までの時間T11に達したとき(S105でYES)、位置確認信号S2が送信され(S121)、電気自動車2から送信される位置確認信号S1の受信があるか否かが判断される(S122)。位置確認信号S1を受信した場合(S122でYES)、空調制御要求信号が送信される(S123)。空調制御要求信号を受信した車載機20は室温Tnを希望室温T1とする空調を開始する。これにて、制御プログラムが終了される。
【0057】
位置確認信号S1を受信しない場合(S122でNO)、図6のステップS110以降の処理を要求する旨の指令信号がネット通信部14を通じて充電スタンド30に送信される(S124)。これにて、制御プログラムが終了される。当該指令信号は、充電スタンド30からPLC通信を通じて電気自動車2の車載制御部21に送信される。車載制御部21は、キー制御部11からの指令信号を受けて、図6のステップS110以降の処理を実行する。これにより、上述した車載制御部21が実行する制御プログラムと同様の効果が得られる。
【0058】
次に、充電制御部31が実行する制御プログラムについて、図8のフローチャートを参照しつつ説明する。当該制御プログラムは、メモリ31aに格納されている。なお、本プログラムにおけるステップS102においては、室温TnはPLC通信を通じて認識される。
【0059】
まず、先の図6に示したステップS101〜S105と同じ処理が実行される。ステップS105において、時間tが時間T11に達したとき(S105でYES)、PLC通信を通じて電気自動車2に時間T11に達した旨通知され(S131)、制御プログラムが終了される。当該通知を受けた電気自動車2における車載制御部21は、図6のステップS106以降の処理を開始する。これにより、上述した車載制御部21が実行する制御プログラムと同様の効果が得られる。
【0060】
さらに、パソコン、携帯電話等の外部通信装置により事前空調の予約が可能である。具体的には、ユーザは、外部通信装置からサーバ60にアクセスして、乗車予定時刻t2及び希望室温T1を入力する。サーバ60は、乗車予定時刻t2、希望室温T1及び現在の室温Tnに基づき事前空調の開始予定時刻t1を算出する。そして、サーバ60は、時間T11に達した時点で通信ネットワーク61を通じて、その旨を充電スタンド30に伝える。充電制御部31は時間T11に達した旨を認識すると、PLC通信を通じてその旨を電気自動車2に伝える。車載制御部21は、その旨を認識すると、電子キー10を携帯するユーザが電気自動車2の周辺に存在するか否か両位置確認信号S1,S2の送受信により認識する。すなわち、図6のステップS106以降と同様の処理を行う。これにより、上述した車載制御部21が実行する制御プログラムと同様の効果が得られる。
【0061】
以上のように、電気自動車2、電子キー10、充電スタンド30及び外部通信装置、何れからでも事前空調の予約ができるため、利便性が高い。
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
【0062】
(1)入力装置15,45の操作を通じて、乗車予定時刻t2が入力される。例えば、電気自動車2の入力装置45により乗車予定時刻t2が入力された場合、車載制御部21は、乗車予定時刻t2等に基づき開始予定時刻t1を算出する。車載制御部21は、時間T11に達したとき、位置確認信号S1の送信を通じて、電子キー10との通信が成立するか否か、すなわち、ユーザに携帯される電子キー10が通信エリア90に存在するか否かを判断する。ここで、通信エリア90は、ユーザが乗車予定時刻t2に乗車可能な電子キー10及び電気自動車2間の距離Dを基準に設定されている。車載制御部21は、通信が成立した場合、ユーザが通信エリア90内にいて乗車予定時刻t2に乗車できるとして、空調制御を実行する。また、車載制御部21は通信が成立しない場合、ユーザに携帯される電子キー10が通信エリア90内に存在しない、すなわち、乗車予定時刻t2に乗車できないとして、開始予定時刻t1を延期する。
【0063】
このように、乗車予定時刻t2にユーザが乗車できない場合には、開始予定時刻t1における空調の開始予定時刻t1を延期することで、乗車予定時刻t2の適正化が図られる。従って、ユーザが乗車しないにも関わらず予め入力された乗車予定時刻t2に合わせて、空調が行われることが抑制される。これにより、乗車前の空調による電力消費を抑制することができる。
【0064】
(2)事前空調は、商用電源39からの電力により実行される。よって、事前空調によるバッテリユニット29の電力消耗を防止できる。さらに、電気自動車2の走行開始時においては、すでに空調は完了しているため空調に費やすバッテリユニット29の電力を低減することができるため、空調による電力消費が電気自動車2の走行に与える影響を最小限にすることができる。
【0065】
(3)開始予定時刻t1において電気自動車2及び電子キー10間の通信が成立しないとき、サーバ60を通じて取得されるキー位置PkとGPS受信部48を通じて取得される電気自動車2の位置Pnとに基づき、乗車予定時刻t2に乗車できない旨判断される場合、乗車予定時刻t2が延期される。
【0066】
このように、電気自動車2及び電子キー10間で通信が成立しない場合であれ、電子キー10の位置が認識可能であるため、電子キー10の位置に適して乗車予定時刻t2が延期等される。よって、さらなる乗車予定時刻t2の適正化、ひいては乗車前の空調による電力消費を抑制することができる。
【0067】
(4)充電スタンド30における入力装置35にて乗車予定時刻t2が入力されると、充電制御部31により同乗車予定時刻t2等に基づき開始予定時刻t1が算出される。そして、時間tを計測し、同時間tの計測を開始した時刻から開始予定時刻t1までの時間T11に達したとき、PLC通信にて電気自動車2にその旨が伝達され、電気自動車2にて空調が開始される。このように、電気自動車2及び電子キー10のみならず、充電スタンド30にて乗車予定時刻t2の入力が可能となることで、利便性が向上する。
【0068】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、現在の室温Tn及び希望室温T1に基づき、事前空調の開始予定時刻t1が算出されていた。しかし、さらに、車室外の温度を取得して、現在の室温Tn、希望室温T1及び車室外の温度に基づき、開始予定時刻t1が算出されてもよい。従って、例えば、前回乗車時における空調により、室温Tnと車室外の温度との間に大きな温度差がある場合であっても、それを加味して開始予定時刻t1が算出される。これにより、開始予定時刻t1の精度を向上させることができる。車室外の温度は温度センサ43を通じて取得されてもよいし、ネット通信部14,34を通じて取得された温度情報に基づき推算されてもよい。
【0069】
また、室温Tn及び車室外の温度は刻々と変化するため、それら温度を所定周期毎(例えば1時間毎)に取得し、開始予定時刻t1を修正することで、開始予定時刻t1の精度をより高めることができる。
【0070】
さらに、ネット通信部14,34を介して季節、日射状況及び天気予報などの情報を取得し、その情報を加味して開始予定時刻t1を算出することで、開始予定時刻t1の精度をいっそう高めることができる。
【0071】
・上記実施形態においては、電気自動車2の位置Pnは、GPS受信部48を通じて、取得されていた。しかし、電気自動車2の位置Pnは予め設定されていてもよい。ここで、事前空調は電気自動車2が充電可能状態のときに行われる。これに鑑みて、電気自動車2の位置Pnを充電スタンド30又は住宅の位置に設定することができる。この場合、GPS受信部48を省略することができる。
【0072】
・上記実施形態においては、歩行を想定して、しきい値Vthは5km/hに設定されていた。しかし、しきい値Vthは、移動手段に応じて大きく異なるところ、予想される移動手段に応じて設定することが好ましい。
【0073】
・上記実施形態においては、電子キー10はサーバ60に記憶される住宅が存在する地域の温度情報に基づき、電気自動車2の室温Tnを推算していた。しかし、電子キー10は電気自動車2からの室温Tnを含む情報信号の送信により、室温Tnを認識してもよい。
【0074】
・上記実施形態においては、PLC通信にて電気自動車2及び充電スタンド30間の通信が行われていたが、電気自動車2及び充電スタンド30間で通信可能であればPLC通信でなくてもよい。充電ケーブル37において、電力供給線と、信号線とを分けて設けて、信号線にて電気自動車2及び充電スタンド30間の通信を行ってもよい。
【0075】
・上記実施形態においては、車載制御部21が平均速度Vaを算出して、同平均速度Vaとしきい値Vthとの比較を行っていた。しかし、キー制御部11が平均速度Vaを算出し、同平均速度Vaとしきい値Vthとの比較を行って、乗車予定時刻t2の延期等の判断をしてもよい。この判断結果は、充電スタンド30を通じて、電気自動車2に伝えられる。
【0076】
・上記実施形態においては、現在の室温Tn及び希望室温T1に基づき事前空調に要する所定時間T10を算出していた。しかし、現在の室温Tn及び希望室温T1に関わらず、乗車予定時刻t2の一定時間前に事前空調を開始してもよい。この場合、現在の室温Tnの取得が不要になるとともに、開始予定時刻t1の算出に係る処理を低減することができる。
【0077】
・上記実施形態においては、事前の空調を予約する機能が車両ドアの施解錠を可能とする電子キー10に搭載されていたが、車両用空調システムにおいて電子キーとは別に事前の空調を予約する携帯機を備えていてもよい。
【0078】
・上記実施形態においては、電気自動車2が形成する通信エリア90に電子キー10が存在するか否かのみが判断されていた。しかし、通信エリア90内において、電子キー10の位置を位置確認信号S2の信号強度に基づき判断してもよい。この場合、例えば、通信エリア90内であっても、位置確認信号S2の信号強度が弱いとき、ユーザが電気自動車2から遠く離れていると判断できるため、乗車予定時刻t2に乗車できない等、より正確な判断が可能となる。なお、電子キー10が形成する通信エリア90において電気自動車2が送信する位置確認信号S1についても同様に信号強度に基づき、電気自動車2の位置を判断可能である。
【0079】
・上記実施形態においては、電気自動車2は充電スタンド30にて充電されていた。しかし、充電スタンド30ではなく一般的な住宅用のコンセントから充電されてもよい。この場合、例えば、PLCモデム36、充電制御部31、ネット通信部34及び入力装置35が一体化されたモジュールをコンセントに差し込み、同モジュールから充電ケーブル37を通じて電気自動車2に充電可能とされることで、充電スタンド30と同様の構成となり、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0080】
・上記実施形態においては、乗車予定時刻t2の延期期間は一定であったが、平均速度Vaに応じて、延長期間を決定してもよい。すなわち、平均速度Vaが大きいほど、延期期間は長く設定される。
【0081】
・上記実施形態においては、平均速度Vaがしきい値Vthを超える場合、乗車予定時刻t2が延期されていた。しかし、しきい値Vthより大きい新たなしきい値を設定して、新たなしきい値を超える場合には、事前空調を中止してもよい。この新たなしきい値は、乗車予定時刻t2を延期したとしても、延期した乗車予定時刻t2にも乗車が不能なことが予想される平均速度Vaを基準に設定される。これにより、乗車予定時刻t2の延期が繰り返すことが防止され、それに係る処理を省略できる。
【0082】
・上記実施形態においては、キー位置Pk及び電気自動車2の位置Pn間の距離Dを所定時間T10で割った平均速度Vaに基づき、乗車予定時刻t2に乗車できるか否か判断されていた。しかし、乗車予定時刻t2に乗車できるか否かの判断手法は平均速度Vaに限らない。例えば、キー位置Pk及び電気自動車2の位置Pn間の距離Dを基準に判断してもよいし、キー位置Pkにおける場所、例えば、会社にいる等判断して、そこから交通機関等の移動手段を使った所要時間で乗車予定時刻t2に乗車できるか否か判断してもよい。また、予め場所と、その場所から電気自動車2が駐車されている住宅までの所要時間とを設定しておいてもよい。
【0083】
また、例えば、車載制御部21は、充電スタンド30を通じて、電子キー10の位置情報を所定時間毎に取得して、ユーザの行動を記憶してもよい。この場合には、過去のユーザの行動パターンに基づき、ユーザが乗車予定時刻t2に乗車できるか否かが判断される。
【0084】
・上記実施形態においては、車両用空調システムは、電気自動車2と、電子キー10と、充電スタンド30と、サーバ60とを備えていた。しかし、充電スタンド30と、サーバ60とを省略してもよい。この場合であっても、時間T11に達したとき、電気自動車2及び電子キー10間で位置確認信号S1,S2の送受信による通信が成立するか否かで事前空調を延期するか否かが判断される。ここで、例えば、電子キー10の入力装置15にて乗車予定時刻t2が入力された場合に、開始予定時刻t1に電気自動車2との通信が成立しないときには、乗車予定時刻t2が延期された旨を電気自動車2に伝達する手段はない。しかし、電気自動車2はそもそも乗車予定時刻t2も認識していないところ、事前空調を実行することはない。また、延期された乗車予定時刻t2に基づき算出される開始予定時刻t1に電子キー10が電気自動車2との通信を試みて、通信が成立したときに事前空調が実行されればよい。これにより、上記実施形態と同様、事前空調による電力消費を抑制することができる。なお、本構成においては、電気自動車2は、ガソリンで走行する車両であってもよく、また、電子キー10において、GPS受信部18及びネット通信部14を、車両においてPLCモデム26及びバッテリユニット29を省略可能である。さらに、電気自動車2及び電子キー10からなるシステムにおいて、入力装置15,45の何れか一方を省略してもよい。
【0085】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項3又は4に記載の車両用空調システムにおいて、前記充電装置は車両が保管される場所に設けられ、自車両の位置は充電装置の位置に設定される車両用空調システム。
【0086】
同構成によれば、充電装置は住宅や会社等の車両が通常保管される場所に設置されることが多い。よって、充電装置が設置される位置を自車両の位置として、同位置と携帯機の位置とに基づき、乗車予定時刻に乗車できるか否かの判断、ひいては開始予定時刻の適正化が可能となる。
【0087】
(ロ)請求項1〜4、(イ)に記載の車両用空調システムにおいて、前記入力装置が設けられる前記車両は現在の室温を検出する温度センサを備え、前記入力装置にて乗車時における希望室温を入力し、前記制御装置は、現在の室温と希望室温とに基づき、開始予定時刻を算出する車両用空調システム。
【0088】
同構成によれば、現在の室温及び希望室温に基づき開始予定時刻が算出されるため、開始予定時刻が正確となり、より事前空調による電力消費を低減できる。
【符号の説明】
【0089】
2…電気自動車、10…電子キー(携帯機)、11…キー制御部(制御装置)、14、34…ネット通信部、15、35、45…入力装置、18、48…GPS受信部(位置情報取得部)、20…車載機、21…車載制御部(制御装置)、26、36…PLCモデム、27…HVACシステム、29…バッテリユニット、30…充電スタンド(充電装置)、31…充電制御部(制御装置)、37…充電ケーブル、39…商用電源、41…HVACコントローラ、43…温度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに携帯される携帯機と車両との間での通信により車内の空気環境を整える制御を実行する車両用空調システムにおいて、
前記車両及び前記携帯機の少なくとも一方に設けられ、ユーザの操作によって乗車予定時刻が入力される入力装置と、
前記車両及び前記携帯機に設けられ、ユーザが乗車予定時刻に乗車可能な前記携帯機及び前記車両間の距離を基準に設定される通信エリア内での無線信号の送受信を通じて、前記携帯機及び前記車両間で通信を行うとともに、前記入力装置を通じて入力される乗車予定時刻に基づき車内の空気環境を整える制御の開始予定時刻を算出する制御装置と、を備え、
前記入力装置が設けられる前記車両又は前記携帯機における制御装置は、前記開始予定時刻に達したとき、前記車両及び前記携帯機間で通信を行い、通信が成立したときユーザが乗車予定時刻に乗車できるとして車内の空気環境を整えるべく制御が開始され、通信が成立しないときユーザが乗車予定時刻に乗車できないとして車内の空気環境を整える制御の実行が中止又は前記開始予定時刻が延期される車両用空調システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調システムにおいて、
車両は電気エネルギを利用して走行可能であって、
商用電源からの電力に基づき前記車両を充電する充電装置を備え、
前記入力装置が設けられる前記車両における制御装置は、前記開始予定時刻に達したときであって、前記車両と通信が成立した場合に、前記充電装置からの電力を使用して車内の空気環境を調整する制御を実行する車両用空調システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調システムにおいて、
前記携帯機及び車両に設けられ、衛星を介して自身の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記携帯機及び前記充電装置に設けられ、ネットワークを介してサーバと無線通信を行うネット通信部と、
前記車両及び前記充電装置間で電力が送電される充電ケーブルと、
前記車両及び前記充電装置に設けられ、前記充電ケーブルに供給される電力に情報信号を重畳、及び電力に重畳された情報を復調することで前記車両及び前記充電装置間で電力線搬送通信を可能とするPLCモデムと、を備え、
前記入力装置が設けられる前記携帯機における制御装置は、前記開始予定時刻に達したときであって前記車両との通信が成立しない場合、前記携帯機の前記位置情報取得部を通じて携帯機の位置情報を取得して、この取得した位置情報を前記携帯機の前記ネット通信部から前記サーバを通じて前記充電装置の前記ネット通信部に送信し、
前記充電装置は、前記ネット通信部を通じて取得した前記位置情報を電力線搬送通信にて前記車両に送信し、
前記入力装置が設けられる前記車両における制御装置は、前記開始予定時刻に達したときであって前記携帯機との通信が成立しない場合、前記車両の前記位置情報取得部を通じて車両の位置情報を取得して、この取得した位置情報を、電力線搬送通信を通じて前記充電装置に送信し、
前記充電装置は、取得した前記車両の位置情報を前記充電装置の前記ネット通信部から前記サーバを通じて前記携帯機の前記ネット通信部を介して前記携帯機に送信し、
前記車両又は前記携帯機の制御装置は、前記携帯機及び前記車両の位置情報に基づき、乗車予定時刻を中止又は延期する車両用空調システム。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用空調システムにおいて、
前記充電装置は乗車予定時刻を入力する入力装置と、前記入力装置を通じて入力される乗車予定時刻に基づき車内の空気環境を整える制御の開始予定時刻を算出する制御装置と、を備え、
前記充電装置の前記制御装置は、前記開始予定時刻に達したとき、前記電力線搬送通信にて、その旨を前記車両に伝達し、
前記車両の前記制御装置は、前記開始予定時刻に達した旨認識すると、車内の空気環境を整える制御を開始する車両用空調システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−148325(P2011−148325A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8884(P2010−8884)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】