説明

車両用空調装置

【課題】エンジンのアイドル状態でバッテリの放電過多となっているときに、エアコンが起因するエンジンのアイドルアップを抑える。
【解決手段】エアコンECU60では、負荷判定部100でエンジン46がアイドル状態で、エアコンの電力消費が多いと判定されると、電力収支判定部102でエンジンECU80から取得するオルタネータ状態から、バッテリの放電過多か否かを判定する。電力収支判定部でバッテリの放電過多と判定されると、推定部104で、渋滞情報などからアイドル状態が継続するか否かを推定すると共に、空調負荷が減少するか否かを推定する。これにより、アイドル状態が継続し、空調負荷が減少しないと推定されたときに、エンジンECUに対して、エンジン46のアイドルアップ要求を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられて車室内を空調する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両では、電子化進行によってバッテリの負荷(電気負荷)が増加している。この電気負荷としては、空調装置(以下、エアコンとする)がある。エアコンに対しては、例えば、ナビゲーション装置から取得する走行環境情報、内燃機関(エンジン)を制御するエンジンECUから得られるエンジン回転数などの動作状態、環境条件、動作状態などから、乗員が快適と感じる空調特性が得られるように制御する提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、エアコンでは、エバポレータの温度が低下すると、エンジンによって駆動されるコンプレッサを停止して凍結防止が行われる。このときに、コンプレッサの停止/駆動が頻繁に繰り返されると、エンジン回転数が変動する。
【0004】
ここから、車両の走行速度が所定速度未満の場合、外気温が所定温度以下でかつエバポレータ後温度が所定温度以下であっても、エバポレータの凍結防止制御を禁止することにより、エンジン回転数の変動、燃費悪化を抑える提案がなされている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、カーナビゲーション装置から得られる最短経路、渋滞状況、坂道の有無などの道路状況などの走行環境情報から得られる走行速度、走行負荷などに基づいてエアコンを含み補機の最適な制御パターンを設定することにより、燃費悪化を抑える提案がなされている(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
ところで、エアコンでは、冷房負荷などの空調負荷が増加すると、バッテリの電力に寄って駆動されるブロワモータの回転数を高くして、空調風の吹出し風量(ブロワ風量)を増加している。このブロワ風量の増加は、エアコンでの電力消費を増加させる。
【0007】
特に、近年では、車室内空間が広げられた車両が増加しており、このような車両に設けられるエアコンには、複数のブロワファンが設けられ、車室内の全域を快適な空調状態とするようにしている。
【0008】
このようなエアコンが設けられているときに、冷房負荷が大きくブロワ風量が増加されるようにブロワモータが作動されると、エンジンのアイドル状態では、発電電力より消費電力が大きくなるバッテリの放電過多が生じ易い。このためにエンジンのアイドルアップが行われ、燃費悪化を生じさせてしまう。
【特許文献1】特開2006−192934号公報
【特許文献2】特開平7−69044号公報
【特許文献3】特開平9−324665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、空調が起因してオルタネータの発電電力の不足を補うために内燃機関のアイドルアップが行われるのを抑えることができる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、内燃機関の回転数に応じた電力を発生する発電手段、前記内燃機関のアイドル状態でアイドル回転数を制御するアイドル回転数制御手段及び、前記発電手段によって発電された電力を蓄電する蓄電池を備えた車両に設けられる車両用空調装置であって、空調運転時に前記蓄電池から供給される電力によって作動されて空調負荷に応じた電力を消費する電気負荷と、前記空調負荷に影響する車両環境情報を取得する車両環境情報取得手段と、前記蓄電池から前記電気負荷を含む負荷へ供給される電力が前記発電手段の発電電力を超えているか否かを判定する収支判定手段と、前記電気負荷の消費電力が予め設定された消費電力を超えているか否かを判定する負荷判定手段と、前記車両環境情報取得手段によって取得された前記車両環境情報に基づいて前記空調負荷が減少するか否かを推定する空調負荷推定手段と、前記収支判定手段によって前記内燃機関のアイドル状態で前記蓄電池から出力される電力が前記発電電力を超えていると判定され、前記負荷判定手段によって前記電気負荷の消費電力が予め設定された消費電力を超えていると判定され、前記空調負荷推定手段によって前記空調負荷が減少しないと推定されているときに、前記アイドル回転数制御手段に対して前記内燃機関の前記アイドル回転数を上昇するように要求する要求手段と、を含む。
【0011】
請求項1の発明では、内燃機関がアイドル状態であるときに、発電手段の発電電力が蓄電池から負荷へ供給する電力を超え、空調運転に用いる電気負荷の消費電力が所定電力を超えていると、空調負荷推定手段の推定結果に基づいて、内燃機関のアイドル回転数を上昇するアイドルアップ要求を行う。
【0012】
このときに、空調負荷が減少すると推定されていれば、アイドルアップ要求が行わないが、空調負荷が減少しないと推定されていれば、アイドルアップ要求を行う。
【0013】
これにより、空調負荷が起因する内燃機関のアイドルアップを抑えて、内燃機関の燃費悪化を防止することができる。
【0014】
請求項2に係る発明は、渋滞情報及び渋滞情報に対する自車位置を含む車両の走行環境情報を取得する走行環境情報取得手段と、前記内燃機関が前記アイドル状態であるときに、前記走行環境情報取得手段によって取得される前記走行環境情報から内燃機関のアイドル状態が継続するかを推定するアイドル状態推定手段と、を含み、前記要求手段が、前記空調負荷推定手段によって前記空調負荷が減少しないと推定され、かつ、前記アイドル状態推定手段によって前記内燃機関のアイドル状態が継続すると推定されたときに、前記アイドル制御手段に対して内燃機関の前記アイドル回転数を上昇するように要求する。
【0015】
請求項2の発明では、渋滞情報などの走行環境情報を用いて、内燃機関のアイドル状態が継続するか否かを推定する。なお、内燃機関のアイドル状態は、連続するものに限らず、断続的にアイドル状態となる場合も含む。
【0016】
要求手段は、空調負荷が減少せずに、かつ、アイドル状態が連続すると推定されるときに、内燃機関のアイドルアップを要求する。これにより、内燃機関がアイドルアップするのをより的確に抑えて、燃費悪化を防止することができる。
【0017】
また、空調風を発生するブロワモータは、空調負荷が増加すると回転数が高くされる。また、複数のブロワモータが設けられている場合、空調装置の消費電力は、このブロワモータの回転数に影響する。
【0018】
ここから、請求項3の発明は、前記電気負荷は、前記空調負荷に応じて空調風の吹出し風量が増加するように作動されるファンモータとすることができる。
【0019】
また、本発明では、前記車両環境情報取得手段が、前記車両環境情報として外気温を検出する外気温検出手段を含んでも良い。また、本発明では、前記車両環境情報取得手段が、前記車両環境情報として日時情報を取得し、前記空調負荷推定手段が前記日時情報から得られる季節及び時刻を含めて前記空調負荷を推定するものであっても良い。
【0020】
すなわち、本発明の走行環境情報は、内燃機関のアイドル状態が継続される走行環境か否かを推定しうる任意の走行環境情報を用いることができる。また、車両環境情報は、日時、外気温、日射量など、空調負荷に影響する環境情報、環境情報の組み合わせを用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、内燃機関がアイドル状態で蓄電池から出力される電力が発電手段の発電電力を超え、かつ、電気負荷の消費電力が所定の電力を超えている状態であるときに、空調負荷が減少しないと推定されるとき、又は、空調負荷が減少せず、かつ、アイドル状態が継続されると推定されるときに、アイドルアップ要求を行う。
【0022】
これにより、空調装置が起因する内燃機関のアイドルアップを抑えて、燃費悪化を防止することができるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。図3には、本実施の形態に係る車両用空調装置(以下、エアコン10とする)の概略構成が示されている。
【0024】
このエアコン10は、コンプレッサ(圧縮機)12、コンデンサ(凝縮器)14、エキスパンションバルブ(膨張弁)16及びエバポレータ(蒸発器)18を含む冷凍サイクルが形成されている。これにより、エアコン10は、コンプレッサ12が回転駆動されることにより冷媒が圧縮、液化されてエバポレータ18へ送り込まれる。エバポレータ18では、この冷媒が気化するときにエバポレータ18を通過する空気の冷却及び除湿が行われる。エキスパンションバルブ16は、このときの冷媒の熱交換効率の向上、エバポレータ18へ送り込む冷媒流量の調整を行う。
【0025】
一方、本実施の形態に適用したエアコン10は、インストルメントパネル(図示省略)内に設けられて車室の前席側の中心とした空調を担うエアコンユニット20と、車室の後席側に設けられて車室の後席側の空調(冷房)を担うリアクーラーユニット22とを備えている。
【0026】
エアコン10では、エバポレータ18として、エアコンユニット20内に配設されるエバポレータ18Aと、リアクーラーユニット22内に配設されるエバポレータ18Bを備え、エキスパンションバルブ16として、エバポレータ18A側のエキスパンションバルブ16Aと、エバポレータ18B側のエキスパンションバルブ16Bを備えている。これにより、エアコン10では、コンデンサ14によって冷却されて液化された冷媒が、エキスパンションバルブ16Aを経てエバポレータ18Aへ送られると共に、エキスパンションバルブ16Bを経てエバポレータ18Bへ送られる。
【0027】
エアコンユニット20には、空気の導入口として、車室内に向けて開口された内気導入口24と、車外へ向けて開口された外気導入口26とが形成され、内気導入口24と外気導入口26を選択的に開閉する切換ドア28及び、送風手段とされるブロワファン30が設けられている。
【0028】
エアコン10では、空調風の生成に用いる空気の導入モードとして、車室内の空気を導入する内気循環モードと、車外の空気を導入する外気導入モードとの設定が可能となっている。エアコンユニット20では、導入モードが設定されることにより、その導入モードに応じて切換ドア28が作動される。また、エアコンユニット20では、駆動手段として設けられているブロワモータ32によってブロワファン30が回転駆動されることにより、内気ないし外気が吸引されてエバポレータ18へ送られる。このときに、ブロワファン30の回転数、すなわち、ブロワモータ32の回転数に応じた風量(ブロワ風量)が得られる。
【0029】
また、エアコン10には、空調風の吹出し口として、フロントウインドガラス(図示省略)などへ向けて開口されたデフロスタ吹出し口34(例えば、センタデフロスタ吹出し口34A、サイドデフロスタ吹出し口34B)、車室内の乗員へ向けて開口されたレジスタ吹出し口36(例えば、センタレジスタ吹出し口36A、サイドレジスタ吹出し口36B)及び、乗員の足元へ向けて開口された足元吹出し口38(例えば、前席足元吹出し口38A、後席足元吹出し口38B)が設けられており、これらの吹出し口を介してエアコンユニット20内が車室内と連通されている。
【0030】
また、エアコンユニット20には、デフロスタ吹出し口34、レジスタ吹出し口36及び足元吹出し口38を選択的に開閉するモード切換ドア40が設けられていると共に、ヒータコア42及びエアミックスドア44が設けられている。
【0031】
エアコン10では、空調風の吹出しモードとして、デフロスタ吹出し口34から空調風を吹き出すDEFモード、レジスタ吹出し口36から吹き出すFACEモード、足元吹出し口38から吹き出すFOOTモード、デフロスタ吹出し口34と足元吹出し口38から吹き出すFOOT/DEFモード及び、レジスタ吹出し口36と足元吹出し口38から吹き出すBI−LEVELモードが設定可能となっている。エアコンユニット20では、吹出しモードが設定されると、設定された吹出しモードに応じてモード切換ドア40が作動される。
【0032】
エアコン10が設けられる車両には、走行用の駆動源として内燃機関(以下、エンジン46とする。図2参照)が設けられている。エアコン10では、このエンジン46とヒータコア42(図3参照)との間で循環されるようになっている。図3に示されるエアコンユニット20では、この冷却水とヒータコア42を通過する空気との間で熱交換が行われることにより、ヒータコア42を通過する空気が加熱される。
【0033】
エアミックスドア44は、エバポレータ18(エバポレータ18A)を通過した空気を、ヒータコア42を通過する空気と、ヒータコア42をバイパスする空気とに分ける。エアコンユニット20では、ヒータコア42を通過した空気とヒータコア42をバイパスした空気が混合されて空調風が生成される。これにより、エアコン10では、エアミックスドア44の開度が制御されることにより、所望の温度の空調風が生成される。
【0034】
一方、リアヒータユニット22には、車室内に開口された導入口48が形成されると共に、エバポレータ18Bと導入口48との間にブロワファン50が設けられている。リアヒータユニット22では、ブロワモータ52によってブロワファン50が回転駆動されることにより、導入口48から車室内の空気が導入される。このときに、ブロワモータ52の回転数に応じたブロワ風量が得られるように車室内の空気が導入される。
【0035】
また、リアクーラーユニット22には、吹出し口54が形成され、ブロワモータ52の作動によって吸引された空気が、エバポレータ18Bを通過することにより冷却され、吹出し口54から車室内に吹き出される。
【0036】
このリアクーラーユニット22は、例えば、車室後部側で、車幅方向の一端側のサイドトリム、デッキサイドトリム内などに設けられ、吹出し口54としては、該サイドトリムに開口されて形成された吹出し口54Aと、車幅方向に沿って延設されたダクト56を介して他端側のサイドトリムに開口されて形成された吹出し口54Bとが設けられている。これにより、リアクーラーユニット22が、吹出し口54A、54Bから吹き出される空調風(冷却風)によって車室後部を冷却する。
【0037】
すなわち、本実施の形態に適用したエアコン10では、車室内の暖房をエアコンユニット20で行い、車室内の冷房を、前席側がエアコンユニット20で行い、後席側をリアクーラーユニット22で行うようになっている。
【0038】
一方、エアコン10には、空調運転の作動を制御するエアコンコントローラ(以下、エアコンECU60とする)が設けられている。このエアコンECU60は、CPU、ROM、RAM等がバスによって構成されたマイクロコンピュータ、各種の入出力インターフェイス及び駆動回路(何れも図示省略)等を備えた一般的構成となっている。
【0039】
コンプレッサ12は、エンジン46の駆動力によって回転駆動されるようになっており、コンプレッサ12とエンジン46との間には、コンプレッサ12へのエンジン駆動力を断続するマグネットクラッチ62が設けられている。エアコンECU60には、このマグネットクラッチ62が接続されており、エアコンECU60は、マグネットクラッチ62のオン/オフによってコンプレッサ12の運転/停止を行う。また、エアコンECU60は、コンプレッサ12の運転中(マグネットクラッチ62のオン時)に、コンプレッサ12の冷媒吐出圧を制御することにより、冷房能力を制御している。
【0040】
エアコンECU60には、ブロワモータ32と共に、切換ドア28を操作するアクチュエータ64A、モード切換ドア40を操作するアクチュエータ64B及び、エアミックスドア44を制御するアクチュエータ64Cが接続されている。また、エアコンECU60には、車室内の温度(室温)を検出する室温センサ66、車外の温度(外気温)を検出する外気温センサ68、日射量を検出する日射センサ70、エバポレータ18(エバポレータ18A)を通過した空気の温度(エバポレータ後温度)を検出するエバポレータ後温度センサ72及び、エンジン冷却水の水温を検出する水温センサ74などの各種センサが接続されている。
【0041】
さらに、エアコン10は、各種の操作スイッチ及び運転状態を表示するディスプレイが設けられた操作パネル76が、例えば、インストルメントパネルなどに設けられており、この操作パネル76がエアコンECU60に接続されている。
【0042】
エアコンECU60は、操作パネル76のスイッチ操作によって設定温度などの運転条件が設定されて空調運転の開始が指示されると、設定された運転条件を読み込むと、各種のセンサによって環境状態及び動作状態を検出しながら空調運転の制御を行う。
【0043】
このとき、エアコンECU60では、車室内を設定温度とするための空調風の温度(目標吹出し温度TAO)を演算し、この目標吹出し温度TAOの空調風が得られるように制御する。この目標吹出し温度TAOは、設定温度TSET、室温Tr、外気温Ta、日射量STから一般的演算式を用いて演算することができる。
【0044】
AO=K・TSET−K・Tr−K・Ta−K・ST+C
(ただし、K〜K及びCは、予め設定されている定数)
エアコンECU60は、目標吹出し温度TAOを演算すると、この目標吹出し温度TAOの空調風が得られるようにエアミックスドア44の開度制御を行う。また、エアコンECU60は、オートモードでの空調運転が設定されていると、目標吹出し温度TAOに基づいて、吹出しモード、ブロワ風量等の運転条件を設定し、設定した運転条件で空調運転が行われるようにしている。なお、ブロワ風量は、例えば、最大風量と最小風量が設定されており、エアコンECU60は、ブロワモータ32を供給する電圧のデューティ比を制御することにより、ブロワ風量を制御する。また、このようなエアコンECU60の制御は、公知の一般的構成を適用することができる。
【0045】
エアコン10では、エアコンECU60によってリアクーラーユニット22の作動を制御するようにしており、エアコンECU60には、ブロワモータ52及び、リアクーラーユニット22のオン/オフ及びブロワ風量の設定が可能な操作パネル78が接続されている。なお、本実施の形態では、エアコンECU60がリアクーラーユニット20の作動を制御するように説明するが、エアコンECU60と別に、リアエアコンユニット用のコントローラを設けて、このコントローラにエアコンECU60と共に、ブロワモータ50及び操作パネル78を接続しても良い。
【0046】
エアコンECU60は、例えば、エアコンユニット20による空調運転が行われているときに、操作パネル76又は操作パネル78のスイッチ操作によってリアクーラーユニット22がオンされると、操作パネル76又は操作パネル78で設定されている運転条件(ブロワ風量)でブロワファン50(ブロワモータ52)を作動する。これにより、リアクーラーユニット22を用いた車室後部側の空調運転(冷房運転)が行われる。なお、リアクーラーユニット22による空調運転は、公知の一般的構成を適用することができる。
【0047】
一方、エアコン10が設けられる車両には、エンジン46の作動を制御するエンジンECU80、エンジン46の駆動力によって発電するオルタネータ82及び、オルタネータ82の発電電力を蓄積して各補機、エアコン10(エアコンECU60)を含む各種の電装部品等に作動用の電力を供給する蓄電池(以下、「バッテリ84」とする)が設けられている。
【0048】
エンジンECU80は、CPU、ROM、RAM等がバスによって接続されたマイクロコンピュータ、各種の入出力インターフェイス及び駆動回路等を含む一般的構成となっている。エンジンECU80には、エンジン46への吸入空気量を制御するスロットルモータ86及びアイドルモータ88が接続されている。
【0049】
エンジンECU80は、各種のセンサによって運転操作状態、エンジン46の作動状態などを検出しながらスロットルモータ86を作動することにより、運転操作に応じた回転数でエンジン46が駆動されるように制御する。また、エンジンECU80は、車両が停止したときなどで、スロットルバルブが閉じられた状態のときに、エンジン46の回転数が予め設定されている回転数(以下、アイドル回転数とする)となるようにアイドルモータ88を作動する。
【0050】
また、エンジンECU80は、バッテリ84の負荷(電気負荷)の作動状態、バッテリ電圧、バッテリ電流、バッテリ電流の積算値(入力電流と出力電流の積算値)などから、バッテリ84の充電が必要か否かを含むバッテリ状態を判定する。
【0051】
オルタネータ82は、エンジン46によって回転駆動することにより交流電力を発生(発電)する。また、オルタネータ82は、レギュレータ(図示省略)を備えており、発電電力を所定電圧となるように整流して出力する。
【0052】
このオルタネータ82は、エンジンECU80に接続されており、エンジンECU80は、オルタネータ82へ出力電圧指示を出力する。オルタネータ82は、この出力電圧指示に応じた電圧を出力する。このときに、エンジンECU80は、例えば、バッテリ状態からバッテリ84の充電が必要であるか否かを判定し、バッテリ84の充電が必要であると、出力電圧を高くするように出力電圧指示をオルタネータ82へ出力する。これにより、オルタネータ82の出力電圧がバッテリ84のバッテリ電圧より高くなることにより、オルタネータ82の発電電力によるバッテリ84の充電が行なわれる。
【0053】
一方、エンジン46がアイドル回転状態(アイドル状態)であると、オルタネータ82の回転数も下がり、発電電力も低下する。このときに、車両での電力消費が多いと、オルタネータ84の発電電力も、電装部品などの負荷で消費される。
【0054】
ここで、オルタネータ82は、発電状態として、例えば、出力電圧の応じた信号(出力電圧信号)を出力する。オルタネータ82の出力電力が、負荷となっている電装部品で消費されることによりオルタネータ82の出力電圧が低下する。ここから、エンジンECU80では、出力電圧指示とオルタネータ82の出力電圧信号から、車両での電力消費が大きく、オルタネータ82で発電を行なっているにもかかわらず、バッテリ84からの放電が行なわれている(以下、放電過多とする)か否かを判断可能となっている。なお、バッテリ84が放電過多となっているか否かの判定は、これに限らず、公知の任意の方法を適用することができる。
【0055】
エンジンECU80は、バッテリ電流の積算値からバッテリ84の残用量の判定が可能となっており、エンジンECU80は、バッテリ84の残容量が少なくなっている状態でかつエンジン46がアイドル状態であるときに、バッテリ84の放電過多となっていると、アイドルモータ88を作動して、エンジン46のアイドル回転数を、予め設定している所定値まで上昇させる(以下、アイドルアップとする)。なお、このようなエンジンECU80によるオルタネータ82の基本制御は、公知の一般的構成を適用することができる。
【0056】
ところで、エアコンECU60は、通信線90を介してエンジンECU80に接続されている。また、本実施の形態に適用した車両には、走行環境情報取得手段及び車両環境情報取得手段とされるナビゲーション装置92が設けられている。このナビゲーション装置92は、通信線90を介して、エアコンECU60と接続されている。
【0057】
ナビゲーション装置92としては、公知の一般的構成が適用可能であり、日時情報、位置情報を取得して、取得した情報と地図情報に基づいた自車位置の表示、目的地への走行経路の表示・案内などを行なう。また、ナビゲーション装置92は、例えば、VICS(Vehicle Information Communication System)等で提供される渋滞情報などの道路情報を取得し、取得した道路情報の表示、取得した道路情報に基づいた走行経路の表示・案内等が可能となっている。
【0058】
エアコンECU60は、通信線90を介してエンジンECU80及びナビゲーション装置92と接続されていることにより、エンジンECU80からエンジン46の動作状態、オルタネータ82の動作状態を取得できるようになっていると共に、ナビゲーション装置92から日時情報、渋滞情報などの取得が可能となっている。これと共に、エアコンECU60では、エンジンECU80に対して、エンジン46のアイドルアップ要求が可能となっている。
【0059】
図1に示されるように、エアコンECU60には、負荷判定部100、電力収支判定部102、推定部104及びアイドルアップ要求部106が形成されている。
【0060】
エアコン10では、バッテリ84の電力によって作動される電気負荷としてエアコンユニット20にブロワモータ32が設けられ、リアクーラーユニット22にブロワモータ52が設けられている。このブロワモータ32、52は、空調負荷が大きいと回転数が高くされ、これによりエアコン10での電力消費が増加する。
【0061】
ここで、負荷判定部100では、ブロワモータ32、52の消費電力が、予め設定した所定電力を超えているか否かを判定する。この判定は、例えば、ブロワモータ32、52が最大回転数で駆動されているときに所定電力を超えていると判定しても良く、車両でのバッテリ84の負荷に基づいて基準電力を設定し、設定した電力を超えているか否かで判定しても良い。このときの基準値は、ブロワモータ32、52に対する駆動電圧として設定しても良く、ブロワモータ32,52の回転数を電圧のデューティ制御で行うときには、デューティ比として設定しても良い。なお、以下では、一例としてブロワモータ32、52が最大回転数で駆動されているときに、消費電力が高くなっていると判定するものとして説明する。
【0062】
例えば、エアコンECU60は、エンジン46がアイドル状態であるときに負荷判定部100で、例えば、冷房負荷が大きくブロワモータ32、52の回転数が高くなるなどして消費電力が多くなっているか否かを判定する。空調負荷が大きく、ブロワモータ32、52が最大回転数(ブロワ風量が最大)で駆動されているか否かから、消費電力が多くなっているか否かを判定する。
【0063】
エアコンECU60は、エンジン46がアイドル状態で負荷判定部100によって消費電力が大きいと判定していると、電力収支判定部102で、エンジンECU80からオルタネータ状態などを取得する。電力収支判定部102では、このオルタネータ状態からオルタネータ82の発電電力よりも車両の電力消費が多くなっているか否かを判定する。すなわち、バッテリ84が放電過多となっているか否かを確認する。
【0064】
このときに、電力収支判定部102で、オルタネータ82の発電電力よりも車両での消費電力が多くバッテリ84の放電過多となっていると判定されると、推定部104では、車両環境情報ないし走行環境情報を取得して、バッテリ84の放電過多状態が継続するか否かを推定する。このときに、推定部104では、車両環境情報に基づいて、空調負荷が減少せずにエアコン10での消費電力が高い状態が継続するかを推定すると共に、走行環境情報に基づいて、エンジン46のアイドル状態が継続するかを推定し、消費電力が高い状態が継続し、かつ、アイドル状態が継続すると推定されるときに、バッテリ64の放電過多状態が継続すると推定するようにしている。
【0065】
この車両環境情報としては、エアコンECU60に設けられている図示しないタイマやナビゲーション装置92から取得される日時(季節及び時刻)、外気温センサ68によって検出される外気温、日射センサ70によって検出される日射量などを用いることができる。例えば、夏季の昼下がり、外気温が高いとき、日射量が多いときなどでは、空調負荷(冷房負荷)の大きい状態が継続すると判断できる。また、冬季の夜間、外気温が低いときなどでは、空調負荷(暖房負荷)の大きい状態が継続すると判断できる。
【0066】
走行環境情報としては、ナビゲーション装置92から取得できる自車位置、渋滞情報、案内経路等を用いることができる。このときに、推定部104では、自車位置が渋滞中の道路上であるときや、案内経路上で渋滞が目立つときなどは、エンジン46のアイドル状態が連続的又は断続的に継続する可能性が高いと推定する。
【0067】
アイドルアップ要求部106は、推定部104でバッテリ64の放電過多状態が継続すると推定されると、エンジン46のアイドルアップが必要であると判定し、エンジンECU80に対して、エンジン46のアイドルアップを要求する。また、アイドルアップ要求部106は、バッテリ64の放電過多状態が継続すると推定されないときには、アイドル状態で放電過多であっても、エンジンECU80に対して、エンジン46のアイドルアップ要求を行わないようにしている。
【0068】
以下に、本実施の形態の作用として、エアコンECU60でのエンジン46のアイドルアップ要求処理を説明する。
【0069】
エアコンECU60は、操作パネル76のスイッチ操作によって設定温度などの運転条件が設定されて空調運転の開始が指示されると、室温を設定温度とするように空調運転を開始する。このときに、冷房負荷があると、コンプレッサ12が駆動されて冷房運転が行われる。また、操作パネル76又は操作パネル78のスイッチ操作によってリアクーラーユニット22の作動が指示されることにより、エアコンECU60は、ブロワモータ52を駆動して冷房運転を行う。
【0070】
一方、エンジンECU80は、バッテリ状態を検出して、バッテリ84の残容量が低下しているときに、エンジン46がアイドリング状態で、かつ、バッテリ84が放電過多となっていると、アイドルアップを行って発電電量の増加を図るようにしている。
【0071】
ところで、エアコンECU60には、負荷判定部100、電力収支判定部102及び推定部104が形成されており、エンジン46のアイドル状態ないし空調状態(空調負荷)の変化の可能性を推定してアイドルアップ要求を行うことにより、エンジン46のアイドルアップを抑えるようにしている。
【0072】
ここで、冷房運転を例に、本実施の形態に適用したエアコンECU60でのアイドルアップ要求処理を説明する。図4のフローチャートは、エアコン10が空調運転を行っているときに所定の時間間隔で実行され、最初のステップ120では、エアコン10での消費電力を判定する。
【0073】
エアコン10では、冷房負荷(空調負荷)に応じてブロワ風量が設定され、冷房負荷が大きいとブロワ風量を増加するために、ブロワモータ32、52の回転数が高くされる。これにより、エアコン10では、消費電力も大きくなる。特に、ブロワモータ32と共にブロワモータ52が高い回転数で駆動されると電力消費も増加する。
【0074】
ステップ120では、一例としてブロワモータ32、52が最高回転数で駆動されているか否かから、消費電力を判定する。なお、冷房負荷などの空調負荷が大きい状態では、ブロワ風量が増加されることから、冷房負荷(空調負荷)から消費電力を判定するようにしても良い。
【0075】
ここで、消費電力が大きいと判断されるときには、ステップ120で肯定判定してステップ122へ移行する。なお、ブロワモータ52が停止していたり、ブロワモータ32、52が最高回転数でないなど、消費電力が予め設定された基準値より少ないと判断されるときには、ステップ120で否定判定されてこの処理を一旦終了する。
【0076】
ステップ122では、エンジンECU80からエンジン46の動作状態を取得し、ステップ124では、このエンジン46の動作状態からエンジン46がアイドル状態であるか否かを確認する。このときに、エンジン46がアイドル状態であると、ステップ124で肯定判定してステップ126へ移行する。このステップ126では、エンジンECU80がオルタネータ82の出力電圧信号からバッテリ84の放電過多と判断されているか否かを確認する。
【0077】
ここで、バッテリ84が放電過多状態であると、ステップ126で肯定判定してステップ128へ移行する。このステップ128では、推定処理を行う。すなわち、アイドルアップ要求が必要か否かの判定を行なう。
【0078】
図5には、推定処理の一例を示している。このフローチャートでは、最初のステップ140で、車両環境情報の一つとする日時情報(日付情報及び時刻情報)を取得する。この日時情報は、ナビゲーション装置92から取得するものであっても良く、また、エアコンECU60にカレンダー機能及びタイマ機能を備えているときには、この情報を用いるものであっても良い。
【0079】
次のステップ142では、日時情報(日付情報)から冷房負荷の高い季節(夏季)として設定されている日付(例えば、7月から10月半ば)か否かを確認する。また、ステップ144では、日時情報(時刻情報)から得られる現在時刻が、冷房負荷の大きいと設定されている時間帯(例えば、午前11時から午後3時など)であるか否かを確認する。
【0080】
ここで、冷房負荷が大きい日時(季節及び時間帯)に該当するときには、ステップ142、ステップ144で肯定判定されてステップ146へ移行する。このステップ146では、ナビゲーション装置92から走行環境情報として自車位置、渋滞情報を取得し、ステップ148では、自車位置が渋滞している道路上(渋滞中)か否かを確認する。
【0081】
このときに、車両位置が渋滞中の道路上であると、アイドル状態が断続的にでも継続すると推定できるので、ステップ148で肯定判定する。なお、アイドル状態が継続するか否かは、自車が渋滞を抜けるまでの距離、予想時間などを求めて、予め設定した時間以上を要すると判断しうるときに、アイドル状態が継続すると推定しても良い。
【0082】
ステップ148で肯定判定されるとステップ150へ移行する。このステップ150では、車両環境情報として外気温センサ68によって検出される外気温を読込み、次のステップ152では、この外気温が予め設定された温度以上であるか否かを確認する。すなわち、外気温が高くて冷房負荷が大きい状態であるか否かを確認する。このときの基準温度としては、例えば、ブロワ風量が最大となると判断しうる温度を適用することができる。
【0083】
ここで、外気温が高いと冷房負荷が大きく、電力消費が低下する可能性が低い。言い換えれば、外気温が高い環境下では、冷房負荷が大きいので電力消費が高い状態が継続すると推定される。
【0084】
これにより、外気温が所定の温度(予め設定している基準温度)より高いとステップ152で肯定判定されてステップ154へ移行する。このステップ154では、エンジン46のアイドル状態が継続すると共に、冷房負荷が高い状態が継続するために、バッテリ84の放電過多状態が継続すると推定しうることから、アイドルアップ要求が必要であるとする。なお、ステップ142、144、148、152の何れかで否定判定されたときには、エンジン46がアイドル状態でなくなるか、冷房負荷が減少すると推定されるため、バッテリ84の放電過多状態が解消されると推定でき、ステップ156へ移行して、アイドルアップ要求は不要であるとする。
【0085】
このようにして、推定処理が行われると、図4のフローチャートでは、ステップ130でアイドルアップ要求が必要か否かを確認する。ここで、アイドルアップ要求が必要であるときには、ステップ130で肯定判定してステップ132へ移行し、エンジンECU80に対してエンジン46のアイドルアップ要求を行う。
【0086】
これにより、エンジンECU80がエンジン46のアイドル回転数を上昇させると、オルタネータ82の発電電力が増加され、バッテリ84の放電が抑制される。
【0087】
これに対して、エアコンECU60は、エンジン46がアイドル状態でかつバッテリ46が放電過多状態であっても、エアコン10の電力消費が少なくなるか、エンジン46の回転数が上昇(アイドル状態が解消)する可能性のあるときには、アイドルアップ要求を行わない。
【0088】
これにより、エンジン46のアイドル回転数が上昇されて燃費が悪化するのを防止することができる。また、エンジン46のアイドルアップを抑えることにより、騒音抑制、エミッション抑制等が可能となる。
【0089】
なお、図4では、エアコン10の電気負荷、エンジン46がアイドル状態か、バッテリ84が放電過多状態か、の順で確認するようにしたが、これに限らず、アイドル状態、放電過多状態か否かの確認を行ない、アイドル状態でかつ放電過多状態のときにエアコン10の電気負荷を確認するなど、任意の順序に設定することができる。
【0090】
また、図5では、日付(季節)、時刻、渋滞情報、外気温の順で確認するようにしたが、確認順序はこれに限るものではなく、例えば、道路情報、日付、時刻、外気温の順とするなど任意の順序を適用することができる。
【0091】
さらに、ここでは、走行環境情報として自車位置と渋滞情報を用い、車両環境情報として日時、外気温を用いるようにしたが、これに限らず、走行環境情報として自車位置と渋滞情報を用い、車両環境情報として外気温を用いるようにしてもよい。
【0092】
図6(A)には、このときのアイドルアップ判定の一例を示している。なお、図6(A)では、図5と同一の処理に対して同一のステップ番号を付与している。
【0093】
このフローチャートでは、最初のステップ146で、ナビゲーション装置92から渋滞情報を取得し、ステップ148では、この渋滞情報から、エンジン46のアイドル状態が断続的にでも継続しうるか否か(渋滞中か否か)を確認する。
【0094】
このときに、エンジン46のアイドル状態が継続すると推定されるときは、ステップ148で肯定判定してステップ150へ移行する。このステップ150では、外気温センサ68によって検出される外気温を読み込み、ステップ152では、外気温が所定の温度よりも高いか否かを確認する。
【0095】
このときに、気象条件が急激に変化しなければ外気温の変化が少ないので、外気温が高いときには、冷房負荷が大きい状態が継続し、消費電力も低くなることがない推定できるので、ステップ152で肯定判定して、ステップ156へ移行し、アイドルアップが必要と判断する(「アイドルアップが必要」に設定する)。また、渋滞中でないか、外気温が比較的低いときには、アイドル状態が解消されるか消費電力が少なくなると推定できる。ここから、ステップ148又はステップ152で否定判定されてステップ156へ移行し、アイドルアップの必要はないと判断する(「アイドルアップの必要なし」に設定する)。
【0096】
このように、バッテリ84の放電過多状態を推定して、アイドルアップを行うことにより、頻繁にエンジン46のアイドルアップが行われて、燃費が悪化するのを防止することができる。
【0097】
一方、以上の説明では、車両環境情報及び走行環境情報に基づいてアイドルアップ要求が必要であるか(アイドルアップが必要であるか)を推定するようにしたが、エアコン10の消費電力が減少しない環境下では、エンジン46がアイドル状態となるごとに、アイドルアップの必要が生じる可能性がある。
【0098】
ここから、少なくとも車両環境情報からアイドルアップを行うか否かを判断するようにしても良い。すなわち、車両環境情報から消費電力が減少する可能性を推定し、この推定結果に基づいて、アイドルアップ要求を行うか否かを判断するようにしても良い。図6(B)には、このときの処理の一例を示している。なお、図6(B)では、図5と同一の処理には、同一のステップ番号を付与している。
【0099】
このフローチャートでは、最初のステップ140で、車両環境情報の一つとする日時情報(日付情報及び時刻情報)を取得し、次のステップ142では、日時情報(日付情報)から冷房負荷の高い季節として設定されている日付か否かを確認し、ステップ144では、日時情報(時刻情報)から得られる現在時刻が、冷房負荷の大きいと設定されている時間帯であるか否かを確認する。
【0100】
ここで、冷房負荷が大きい日時に該当するときには、ステップ142、ステップ144で肯定判定されてステップ150へ移行する。このステップ150では、車両環境情報として外気温センサ68によって検出される外気温を読込み、次のステップ152では、この外気温が予め設定された温度以上であるか否かを確認する。すなわち、外気温が高くて冷房負荷が大きい状態であるか否かを確認する。
【0101】
ここで、外気温が高いと、冷房負荷が大きく、電力消費が低下する可能性が低い。言い換えれば、外気温が高い環境下では、冷房負荷が大きいので電力消費が高い状態が継続すると推定される。
【0102】
これにより、外気温が高いと冷房負荷が大きい状態が継続するために、エアコン10での電力消費が多い状態が継続すると推定しうることから、ステップ152で肯定判定されると、ステップ154へ移行してアイドルアップ要求が必要であるとする。
【0103】
また、ステップ142、144、152の何れかで否定判定されたときには、消費電力が低くなる可能性があるので、ステップ156へ移行して、アイドルアップ要求は不要であると設定される。
【0104】
このように、少なくとも車両環境情報を用いることによりエアコン10の電力消費が多い状態が継続するか否かを推定できるので、消費電力が多い状態が継続すると推定されるときには、エンジン46がアイドル状態となるごとに、バッテリ84が放電過多となると推定できるので、エンジン46のアイドルアップ要求を行うようにしても良い。
【0105】
なお、以上説明した本実施の形態では、車両の走行環境情報として自車位置と渋滞情報を用いたが、この走行環境情報としては、エンジン46のアイドル状態が断続的にでも連続するか否かを推定しうる情報であれば、任意の情報を用いることができる。
【0106】
また、車両環境情報としては、消費電力の多い状態が継続するか否かを推定しうるものであれば、任意の情報を用いることができ、例えば、日時情報、外気温に加えて日射センサ70によって検出される日射量を加えても良く、また、日射量と外気温を用いるなど、任意の車両環境情報及び車両環境情報の組み合せを用いることができる。
【0107】
なお、本実施の形態では、エアコンユニット20とリアクーラーユニット22を備えたエアコン10を例に説明したが、本発明が適用される空調装置の構成は、これに限るものではない。例えば、空調装置としては、リアクーラーユニット22を備えていないが、エアコンユニット内に、運転席側用のブロワファン及びブロワモータと、助手席側のブロワファン及びブロワモータを備えたものであっても良い。
【0108】
また、空調装置としては、リアクーラーユニット22に替えて、後席側の空調(冷暖房)を行うエアコンユニットを備えたものであっても良い。また、冷房運転を例に説明したが、暖房運転時にも適用することができる。
【0109】
エアコンユニット20に後席側のエアコンユニットを備えた車両で、暖房運転に適用するときには、車両環境情報から、暖房負荷が大きい季節として冬季(地域によって異なるが、例えば、11月半ばから3月)を設定し、時刻としては、暖房負荷が減少することがないと判断しうる時間帯(例えば、夕方から朝方までの時間対)を設定し、外気温が予め設定された温度よりも低いときに、暖房負荷が減少する可能性が少なく、消費電力が減少しないと推定するようにしても良い。
【0110】
また、以上説明した本実施の形態では、電気負荷として比較的消費電力の大きいブロワモータ32、52を例に説明したが、これらに限らず、各種の電気負荷を適用することができる。
【0111】
例えば、加熱手段としてPCTヒータなどの電気ヒータが設けられている空調装置に対して、暖房負荷に基づいてアイドルアップ要求を行うか否かを判断するときには、電気負荷として電気ヒータを加えればよい。
【0112】
このように、本発明は、車両に設けられる任意の構成の空調装置に適用でき、空調装置での電力消費が起因するエンジン46のアイドルアップを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の概略を示す機能ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係るエアコンの制御系を示す概略構成図である。
【図3】エアコンの概略構成図である。
【図4】本発明に係るアイドルアップ制御の一例を示す流れ図である。
【図5】アイドルアップ要求のための推定処理の一例を示す流れ図である。
【図6】(A)及び(B)のそれぞれは、図5と異なるアイドルアップ要求のための推定処理を示す流れ図である。
【符号の説明】
【0114】
10 エアコン(車両用空調装置)
20 エアコンユニット
22 リアクーラーユニット
32、52 ブロワモータ(電気負荷)
46 エンジン(内燃機関)
60 エアコンECU
68 外気温センサ(外気温検出手段、車両環境情報検出手段)
80 エンジンECU(アイドル回転数制御手段)
82 オルタネータ(発電手段)
84 バッテリ(蓄電池)
88 アイドルモータ
92 ナビゲーション装置(走行環境情報検出手段、車両環境情報検出手段)
100 負荷判定部(負荷判定手段)
102 電力収支判定部(収支判定手段)
104 推定部(空調負荷推定手段、アイドル状態推定手段)
106 アイドルアップ要求部(要求手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の回転数に応じた電力を発生する発電手段、前記内燃機関のアイドル状態でアイドル回転数を制御するアイドル回転数制御手段及び、前記発電手段によって発電された電力を蓄電する蓄電池を備えた車両に設けられる車両用空調装置であって、
空調運転時に前記蓄電池から供給される電力によって作動されて空調負荷に応じた電力を消費する電気負荷と、
前記空調負荷に影響する車両環境情報を取得する車両環境情報取得手段と、
前記蓄電池から前記電気負荷を含む負荷へ供給される電力が前記発電手段の発電電力を超えているか否かを判定する収支判定手段と、
前記電気負荷の消費電力が予め設定された消費電力を超えているか否かを判定する負荷判定手段と、
前記車両環境情報取得手段によって取得された前記車両環境情報に基づいて前記空調負荷が減少するか否かを推定する空調負荷推定手段と、
前記収支判定手段によって前記内燃機関のアイドル状態で前記蓄電池から出力される電力が前記発電電力を超えていると判定され、前記負荷判定手段によって前記電気負荷の消費電力が予め設定された消費電力を超えていると判定され、前記空調負荷推定手段によって前記空調負荷が減少しないと推定されているときに、前記アイドル回転数制御手段に対して前記内燃機関の前記アイドル回転数を上昇するように要求する要求手段と、
を含む車両用空調装置。
【請求項2】
渋滞情報及び渋滞情報に対する自車位置を含む車両の走行環境情報を取得する走行環境情報取得手段と、
前記内燃機関が前記アイドル状態であるときに、前記走行環境情報取得手段によって取得される前記走行環境情報から内燃機関のアイドル状態が継続するかを推定するアイドル状態推定手段と、
を含み、前記要求手段が、前記空調負荷推定手段によって前記空調負荷が減少しないと推定され、かつ、前記アイドル状態推定手段によって前記内燃機関のアイドル状態が継続すると推定されたときに、前記アイドル回転数制御手段に対して内燃機関の前記アイドル回転数を上昇するように要求する請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記電気負荷は、前記空調負荷に応じて空調風の吹出し風量が増加するように作動されるファンモータである請求項1又は請求項2の車両用空調装置。
【請求項4】
前記車両環境情報取得手段が、前記車両環境情報として外気温を検出する外気温検出手段を含む請求項1から請求項3の何れか1項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記車両環境情報取得手段が、前記車両環境情報として日時情報を取得し、前記空調負荷推定手段が前記日時情報から得られる季節及び時刻を含めて前記空調負荷を推定する請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−274694(P2009−274694A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130626(P2008−130626)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】