車両用空調装置
【課題】この発明は、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様と、混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることを可能にする車両用空調装置を提供することを目的とする。
【解決手段】ヒータコア24下流の空気流路を形成する第1、第2のケース部80、80′が、ケース本体21と分割構成されて、該ケース本体21に対し選択的に装着可能とされ、第1のケース部80は、開口部80dが形成され、混合空調風を調整するエアミックスドア51を介して温風を供給する温風ダクト90がリアベントダクト70に着脱可能に接続された状態では、開口部80dが温風ダクト90を介してリアベントダクト70と接続されるように構成される一方、第2ケース部80′は、開口部が閉塞された形状をなし、温風ダクト90の取外し状態では、リアベントダクト70との接続が遮断されるように構成される。
【解決手段】ヒータコア24下流の空気流路を形成する第1、第2のケース部80、80′が、ケース本体21と分割構成されて、該ケース本体21に対し選択的に装着可能とされ、第1のケース部80は、開口部80dが形成され、混合空調風を調整するエアミックスドア51を介して温風を供給する温風ダクト90がリアベントダクト70に着脱可能に接続された状態では、開口部80dが温風ダクト90を介してリアベントダクト70と接続されるように構成される一方、第2ケース部80′は、開口部が閉塞された形状をなし、温風ダクト90の取外し状態では、リアベントダクト70との接続が遮断されるように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のインストルメントパネル内に設置され、空気を導入して空調風を生成する空調ユニットと、上記空調ユニットから車室の運転席よりも後方の後席側に向けて延設するリアベントダクトとを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車等の車両のインストルメントパネル内には、車両用空調装置の空調ユニットが設置されている。この空調ユニットのケースには、空調用空気を導入するための導入口と空調風の導出口とが形成され、このケース内には導入口から導出口まで延びる空気流路が形成されている。
【0003】
この空気流路には、空気流れ方向に順に、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器が配置されている。ケースの導入口から空気流路に導入された空気は、上記冷却用熱交換器や加熱用熱交換器を通過して温度調節がなされ、その後、ケースの導出口を介してインストルメントパネルに形成された吹出口から車室前部の運転席及び助手席の乗員に向けて供給されるようになっている。
【0004】
また、車両用空調装置の中には、例えば、下記特許文献1に開示されているように、上記空調ユニットから車室の運転席よりも後方の後席側に向けて延設するリアベントダクトを備え、後席側に形成された後席用吹出開口部へ空調風を供給して後席の快適性向上を図ったものがある。
【特許文献1】特開2003−104039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1では、空調ユニット内に複数の空気流路と、エア流れの方向を切り替えるドア部材とを備えており、このドア部材の切り替えにより、冷却用熱交換器によって冷却された冷風のみを上記リアベントダクトに導いたり、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器によって冷却、加熱された冷風、温風を混合して混合空調風を生成し、これをリアベントダクトに導いたりすることが可能になっている。
【0006】
しかしながら、年間を通じて気温が比較的高い地域では、後席側に対して冷風のみが導かれるようになっていればよく、混合空調風の供給が不要とされる場合もある。従って、上記特許文献1に開示された構成では、ドア部材の切り替え機能が無駄になってしまう場合がある。
【0007】
このような理由から、車両用空調装置においては、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様に応じたもの、混合空調風を導く車種仕様に応じたものを個別に提供できるようにするのが好ましいと考えられる。
【0008】
しかしながら、そのようにすると、複数の生産ラインが必要となり、結果的に製造コストの増大を招いてしまう。
【0009】
この発明は、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様と、混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることを可能にする車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両用空調装置は、車両のインストルメントパネル内に設置され、空気を導入して空調風を生成する空調ユニットと、上記空調ユニットから車室の運転席よりも後方の後席側に向けて延設するリアベントダクトとを備えた車両用空調装置であって、上記空調ユニットは、空気を導入する導入口及び空調風を上記インストルメントパネルに設けられた吹出口へ導出する導出口を有するケース本体と、該ケース本体内に形成され、上記導入口から上記導出口まで延びる空気流路と、該空気流路に配置されて上記導入口から導入された空気を冷却する冷却用熱交換器と、上記空気流路の、上記冷却用熱交換器よりも空気流れ下流側に配置されて上記導入口から導入された空気を加熱する加熱用熱交換器とを備え、上記リアベントダクトは、少なくとも冷却用熱交換器を通過後の冷風を導くように構成されるとともに、上記加熱用熱交換器下流の空気流路を形成する第1、第2のケース部が、上記ケース本体と分割構成されて、該ケース本体に対し選択的に装着可能とされ、上記第1のケース部は、開口部が形成され、混合空調風を調整するエアミックスドアを介して温風を供給する温風ダクトが上記リアベントダクトに着脱可能に接続された状態では、上記開口部が上記温風ダクトを介して上記リアベントダクトと接続されるように構成される一方、上記第2ケース部は、上記開口部が閉塞された形状をなし、上記温風ダクトの取外し状態では、上記リアベントダクトとの接続が遮断されるように構成されるものである。
【0011】
この構成によれば、第1、第2のケース部がケース本体と分割構成され、かつケース本体に対して選択的に装着可能とされることにより、ケース部を付け替えるだけで、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様と、混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記リアベントダクトに装着された上記エアミックスドアを温風側開口部を閉じる閉位置に固定する固定機構を備えたものである。
【0013】
この構成によれば、固定機構によってエアミックスドアを閉位置に固定することで、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様では、この冷風を洩れなく後席側に供給することができる。この場合、エアミックスドアは、混合空調風を導く車種仕様においては混合空調風調整機能を有する一方で、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様においては冷風漏れ防止機能を有するため、結果的にリアベントダクトを両車種仕様において共用化させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記ケース本体と、上記第1、第2のケース部との間に、インパネメンバが貫通配置されるものである。
【0015】
この構成によれば、車両用空調装置及びインパネメンバの組付けの際には、空調ユニット(ケース本体)に対し、インパネメンバ、ケース部の順番で組付けを行うことができるため、その組付け性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、第1、第2のケース部がケース本体と分割構成され、かつケース本体に対して選択的に装着可能とされることにより、ケース部を付け替えるだけで、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様と、混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1(a)は、本発明に係る車両用空調装置Aにおいて温風ダクト90が取付けられた場合を示す斜視図であり、図1(b)は、車両用空調装置Aを構成するケース部80を示す斜視図である。また、図2は、開口部80d、温風ダクト90等を含む位置で図1に示す車両用空調装置Aを切断した時の側断面図である。
【0018】
インストルメントパネル1は主に樹脂材により形成され、図2にて二点鎖線で示すように、エンジン(図示せず)が収容されたエンジンルームR1と車室R2とを区画するダッシュパネル2の車両後方側(すなわち車室R2側)に設けられている。
【0019】
この自動車は所謂左ハンドル車であり、車室前部の左側に運転席(図示せず)、右側に助手席(図示せず)がそれぞれ配設されている。また、図示しないが、車室の運転席及び助手席の後方には、後部座席としての2列目の座席が配設され、さらに、この2列目の座席の後方には、3列目の座席が配設されている。つまり、この自動車は、車両前後方向に並ぶ3列の座席を有している。
【0020】
なお、以下の説明では特に説明しない場合、「前」及び「後」はそれぞれ「車両前後方向前」及び「車両前後方向後」、「左」及び「右」は、それぞれ車体を基準とした「車幅方向左」及び「車幅方向右」を意味している。また、図中において矢印(Fr)は車両前方、矢印(R)は車両後方を示す。
【0021】
図1に示すように、運転席の前方にステアリングホイール3が配置されている。このステアリングホイール3の前方に位置するインストルメントパネル1の左寄りの部位には、速度メータ等を収容するクラスター4が配設され、左右方向の中央部付近には、車両用空調装置A(以下、空調装置Aと略記する)のコントローラ(図示せず)に接続された操作ダイヤル5、5、…が配設されている。
【0022】
また、その操作ダイヤル5、5、…の下方近傍から車室内方に向かって膨出するように形成されたセンターコンソール1aの前寄りの部位には、シフトレバー6の延びる変速操作部7が、車体フロアF(図2にて二点鎖線で示す)から所定の高さ位置に設けられている。ここで所定の高さとは、乗員がシフトレバー6を操作し易いように設定された高さのことを言う。センターコンソール1aの後側には、上記フロアコンソール15が連設されている。
【0023】
上記操作ダイヤル5、5、…の上方には、図示しないが、オーディオやナビゲーション装置等が設置されるようになっている。このオーディオ等の設置スペースの左右両側に近接して、インストルメントパネル1の略中央部には、左右一対の縦長のベンチレータ8、8が設けられており、ここから乗員の上半身近傍に向けて空調風が吹出すようになっている。
【0024】
また、インストルメントパネル1の左右両端部にも、略中央部のものと同様の縦長のベンチレータ8、8が設けられており、それぞれ運転席及び助手席乗員の上半身に向けて空調風が吹出すようになっている。さらに、インストルメントパネル1の上面の前端部には、フロントウインドG(図2にて二点鎖線で示す)用のデフロスト9、9、…が設けられている。
【0025】
尚、本実施形態のインストルメントパネル1は、その内部を左右方向に延びて左右両端がそれぞれ車体に支持された鋼製パイプからなる強度部材18(以下、インパネメンバと呼ぶ)を備えている。このインパネメンバ18は、インストルメントパネル1内部の下部近傍に位置している。
【0026】
上記空調装置Aは、空気を吸い込むインテークボックス19と、空調ユニット20と、該空調ユニット20から運転席よりも後方の後席側に向けて延設されるリアベントダクト(後部空調用ダクト)70と、ケース部80と、該ケース部80に接続された温風ダクト90とを備えている。
【0027】
空調ユニット20は、上記インストルメントパネル1の内部における左右方向の略中央部に収容されている。図2に示すように、インストルメントパネル1内の空調ユニット20の上部には、ベントダクト10及びデフロストダクト11が配設されている。ベントダクト10の下流端は、ベンチレータ8、8、…に接続され、デフロストダクト11の下流端は、デフロスト9、9、…に接続されている。
【0028】
さらに、リアベントダクト70の空調ユニット20側の端部は、該空調ユニット20の下部に位置付けられ、内部の空気流路Sと連通している。
【0029】
上記フロアコンソール15は、上記センターコンソール1aの後端部から運転席及び助手席間を通って後側へ向かって延びている。フロアコンソール15の後端部は、運転席及び助手席よりも後側に位置しており、この後端部には、上記リアベントダクト70の後端部が位置している。このリアベントダクト70の後端部に設けられた空調開口部70aから空調風が2列目座席の乗員に向かって吹出すようになっている。
【0030】
図2に示すように、空調ユニット20は、ケース本体21と、このケース本体21に収容された送風ファン22とを備えていて、該送風ファン22によりインテークボックス19を介して車室R2外または車室R2内から導入した空気から空調風を生成し、これを後述する導出口57、58等を通じてベンチレータ8、デフロスト9等に導出するように構成されている。すなわち、上記空調ユニット20は、遠心式ファンで構成された送風ファン22により送給される空気をエバポレータ23によって冷却したり、該エバポレータ23の空気流れ下流側に配置されるヒータコア24により加熱したりして、所要の温度及び湿度状態の空調風を生成するものである。このケース本体21において、その上部の前側には、図2に示すように、スクロール形状のファンハウジング25が形成されている。
【0031】
このファンハウジング25には、上記送風ファン22がその軸心を左右方向に向けた状態で収容されている。ファンハウジング25の右側壁には、空気をケース本体21内に導入するための導入口26が形成されている。この導入口26に上記インテークボックス19が接続されている。
【0032】
図2に示すように、上記ファンハウジング25内の送風ファン22の周りには、送風ファン22から吹出した空気の流れを集合させて下方へ送る空気流路30が形成されている。この空気流路30はケース本体21内の上側から下側へ延びており、その下流端に、冷却用熱交換器としての上記エバポレータ23が配置されている。
【0033】
このエバポレータ23は、導入口26から導入された空気を冷却すべく、詳細は図示しないが、例えばアルミニウム合金製のチューブと伝熱フィンとが交互に並べられて一体化されており、チューブの延びる方向が上下方向となるように縦置き配置されている。エバポレータ23には、図示しないが、クーラ配管を介してエンジンルームR1内の冷媒回路から膨張弁を経て減圧された冷媒が流入するようになっている。このチューブ内を流通する冷媒と、導入口26から導入された空気とが熱交換して該空気が冷却されるようになっている。
【0034】
ケース本体21の底壁の前半部は、後方へ向かって下降傾斜している。この底壁の前半部には、上記エバポレータ23の下端部を保持する保持部40が上方へ突出するように設けられている。
【0035】
上記ケース本体21内のエバポレータ23よりも下流側には、該エバポレータ23を通過した空気を、加熱用熱交換器としての上記ヒータコア24に導く下側流路31と、該ヒータコア24をバイパスして上方に向かう上側流路32とが、区画壁33により区画形成され、共に空気流路30に連通している。
【0036】
上記ヒータコア24は、下側流路31の途中において、インパネメンバ18の直下から後方に向かい下方に傾斜して延びるように配置されており、このヒータコア24の空気通過面は、ケース本体21の底壁と対向している。ヒータコア24は、エンジン側から高温の冷却液が導入されるようになっており、ヒータコア24のチューブ内を流通する高温のエンジン冷却水と、導入口26から導入された空気とが熱交換して、該空気が加熱されるようになっている。
【0037】
また、ヒータコア24の上方には、ケース部80が配設され、ヒータコア24下流の空気通路となる空気流路81、82が形成されている。このケース部80は、空調ユニット20のケース本体21と分割構成されている。
【0038】
また、ケース本体21の区画壁33及びケース部80の前壁部には、図2に示すように、それぞれ凹部33a、80aが形成されており、この凹部33a、80aにより、断面略円形状の挿通孔Hが形成されている。インパネメンバ18は、この挿通孔Hに挿通されて、ケース本体21とケース部80との間において左右方向に貫通配置されている。
【0039】
また、ケース部80においてその上下端には、開口部80b、80cが形成されており、この開口部80b、80cにより、上側流路32をバイパスしてヒータコア24経由で上方に向かう空気流路81が形成されている。ここで、本実施形態では、流路30〜32及び流路81により、導入口26から各導出口57、58まで延びる空気流れが形成されている。
【0040】
また、ケース部80の右側後部には、空気流路81から後方に分岐する第2の空気流路82が形成されるとともに、その後端には開口部80dが形成され、後述する温風ダクト90が接続されている。
【0041】
さらに、ケース部80には、ヒータコア24の後部から上方に離間した位置に、開口部80dに向かって後方に延びる温風ガイド面80eが形成されており、この温風ガイド面80eが空気流路82の天井部を構成している。
【0042】
ところで、リアベントダクト70は、ケース本体21の後部に形成された接続ダクト部50から後側に向かって延びている。リアベントダクト70は、前後方向の中途部で上流側ダクト部材70bと、フロアコンソール15の後端部で上側に折れ曲がる下流側ダクト部材70cとに分割されている。
【0043】
上流側ダクト部材70bには、接続ダクト部50の後端に接続され、後方に延びる冷風用流路70dと、該冷風用流路70dの上方に位置して、前端が温風ダクト90の後端に着脱可能に接続される温風用流路70eとを有している。そして、これら冷風用流路70dと温風用流路70eとは、互いに後端側で合流するように形成されている。
【0044】
このため、本実施形態では、エバポレータ23通過後の空気が後席側の開口部70aに供給されるルートとして、接続ダクト部50、冷風用流路70dを流れて冷風のまま下流側ダクト部材70cに至る第1のルートと、ヒータコア24の加熱によって温風となり、空気流路82、温風ダクト90、温風用流路70eを流れて下流側ダクト部材70cに至る第2のルートとがある。
【0045】
図3(a)は、アクチュエータ52周辺の構造を示す要部拡大斜視図であり、図3(b)は、図3(a)の分解斜視図である。上流側ダクト部材70bには、冷風用流路70dと温風用流路70eとの合流部において、図2、図3に示すように、エアミックスドア51が設けられ、空気流路31、接続ダクト部50、及び冷風用流路70dを経由して流入する冷風量と、空気流路82、温風ダクト90、及び温風用流路70eを経由して流入する温風量との混合割合を調整することを可能にしている。
【0046】
このエアミックスドア51は、図3に示すように、冷風用流路70dや温風用流路70e後端の連通口部分の開口面に沿って延びる平坦な板状の閉塞板部51aと、この閉塞板部51aの前縁部から左右方向に突出する支軸51bとを備えている。
【0047】
支軸51bの一端側(ここでは左端部)は、上流側ダクト部材70bの左側壁に形成された貫通孔70f(図3(b)参照)に回動可能に挿通支持され、これにより、閉塞板部51aは、支軸51bを中心にして前側が上下方向に回動する。
【0048】
また、上流側ダクト部材70bの外面には、上記エアミックスドア51を駆動するためのアクチュエータ52が配置されている。このアクチュエータ52は、締結片52aの挿通孔52b(図3(b)参照)、及び上流側ダクト部材70bの外面に形成されたボス部70gの孔部にボルトBが挿通されることで、上流側ダクト部材70bの外面に締結固定されている。
【0049】
このアクチュエータ52の出力軸には、回動アーム53が取付けられており、その先端部のピン53a(図3(b)参照)がリンク機構54の長孔54a内を摺動可能に配置されている。そして、このリンク機構54の一端側には、略D字型をなす挿通孔54bが穿設され、この挿通孔54bに支軸51bが挿通されていることで、エアミックスドア51の支軸51bの左端部が、回動アーム53及びリンク機構54を介してアクチュエータ52に連結されている。
【0050】
このアクチュエータ52は、後述するコントローラに接続されており、アクチュエータ52によって回動アーム53を回動させることで、ピン53aを長孔54aに沿って摺動させながら、リンク機構54を回動させることが可能になっている。そして、図示のように支軸51bの一端部及び挿通孔54bの形状が略D字型をなして両者が嵌合していることにより、両者は一体的に回転する。このため、エアミックスドア51では、回動アーム53及びリンク機構54を介してアクチュエータ52の駆動力が伝達されると、支軸51bが回転し、その結果閉塞板部51aを回動させることができるようになっている。
【0051】
エアミックスドア51では、閉塞板部51aを、上記連通口部分の一方を閉塞する閉塞位置に保持したり、上記連通口部分の両者を開放する開放位置に切り替えたりすることが可能である。上記連通口部分の両者を開放する状態においては、支軸51bつまりはエアミックスドア51の回動位置を適宜調節することによって、冷風用流路70dから流れる冷風と温風用流路70eから流れる温風との分配割合を変更することが可能になっている。なお、図3中に示す部位70h、70iについては、後述する。
【0052】
ところで、図2に示すように、上記上側流路32及び空気流路81の下流端は、それぞれ、ケース本体21内の上部後側に形成されたエアミックス空間55に下側から連通しており、このエアミックス空間55の下方には、空気流路81から流入する温風量と上側流路32から流入する冷風量との混合割合を調整するエアミックスドア56が設けられている。図示しないが、このエアミックスドア56は、ケース本体21の外面に固定されたアクチュエータにより駆動されるようになっている。
【0053】
一方、上記エアミックス空間55の上部には、ベント導出口57と、デフロスト導出口58とが前後に並んで開口し、それら各導出口57、58には通路開口面積を調節可能なベントドア59及びデフロストドア60が配設されている。ベント導出口57には、インストルメントパネル1内のベントダクト10の上流端が接続され、デフロスト導出口58には、デフロストダクト11の上流端が接続されている。
【0054】
上記ケース本体21の後側には、エアミックス空間55の後側下部に連通する導出ダクト部61が後方へ斜め下向きに延びるように形成されている。導出ダクト部61の上流端部には、エアミックス空間55との連通部分の通路断面積を調節可能なフットドア62が配設されている。導出ダクト部61の下端には、エアミックス空間55において温度調整された空調風を後席へと導くためのリヤダクト12が接続されている。導出ダクト部61の左右両側には、運転席及び助手席用のフットダクト(図示せず)の上流端が連通している。
【0055】
上記ベントドア59、デフロストドア60及びフットドア62は、図示しないが、ケース本体21の外面に固定されたアクチュエータによりリンク機構を介して駆動されるようになっている。これらドア59、60、62の開閉状態により、吹出モードが、バイレベルモード、デフフットモード、ベントモード、デフロストモード及びフットモードの中からいずれか1つに切り替えられるようになっている。
【0056】
上記バイレベルモードとは、デフロスト導出口58を閉じ、かつ、ベント導出口57及び導出ダクト部61を開いたモードであり、また、デフフットモードとは、ベント導出口57を閉じ、かつデフロスト導出口58及び導出ダクト部61を開いたモードであり、また、ベントモードとは、デフロスト導出口58及び導出ダクト部61を閉じ、ベント導出口57を開いたモードであり、また、デフロストモードとは、ベント導出口57及び導出ダクト部61を閉じ、かつ、デフロスト導出口58を開いたモードであり、また、フットモードとは、ベント導出口57及びデフロスト導出口58を閉じ、かつ、導出ダクト部61を開いたモードである。
【0057】
上記ベントドア59、デフロストドア60及びフットドア62の開度調整や、エアミックスドア51、56の回動位置は、乗員による操作ダイヤル5の操作に応じて設定された運転モードや吹出モードに基づいて、コントローラにより行われる。このコントローラは、空調ユニット20の運転モードが冷房モードとされると、エアミックスドア51が冷風用流路70d後端の連通口部分を開放するまでアクチュエータ52を作動させ、一方、暖房モードとされると、エアミックスドア51が温風用流路70e後端の連通口部分を閉塞するまでアクチュエータ52を作動させるように構成されている。
【0058】
次に、上記のように構成された空調装置Aの動作について説明する。上記空調ユニット20においては、送風ファン22により空気流路30に送られた空気が、上側から下側へ流れ、エバポレータ23を通過することによって冷却されて冷風になる。この冷風は、エアミックスドア56の回動位置によって決まる風量の分配割合に応じて下側流路31側と上側流路32側とに分かれて流れ、下側流路31側に向かった冷風はヒータコア24を通過することによって温められる。そうして一旦、下側流路31及び上側流路32に分かれた空気はエアミックス空間55で合流するとともに混合されて、所定の温度及び湿度の空調風となる。そして、上記エアミックス空間55で混合された空調風は、ベントドア59、デフロストドア60及びフットドア62により設定された吹出モードに応じて車室R2の各部へと供給されるようになる。
【0059】
例えば、夏場の炎天下に放置した後の自動車においては室内温度が上昇しているため、乗員は、操作ダイヤル5を操作して空調ユニット20の運転モードを強い冷房、即ち、フルコールドモードとする。コントローラは、運転モードがフルコールドモードとされているときには、吹出モードをベントモードにするとともに、空気流路81の下流端及び温風用流路70e後端の連通口部分を、エアミックスドア56及び51により全閉にする。
【0060】
上記エバポレータ23で冷却された冷風の一部は、上側流路32を通ってエアミックス空間55へと流れてベント導出口57から吹出し、残りの冷風は、下側流路31を通って接続ダクト部50を介してリアベントダクト70の冷風用流路70d内へと流れる。つまり、このリアベントダクト70には、エバポレータ23を通過する空気のうち、ヒータコア24を通過していない冷風が流入することになる。このため、冷風を後席まで導いてリアベントダクト70の空調開口部70aから後席に供給することが可能になり、後席を効率良く冷房することが可能になる。
【0061】
一方、乗員が暖房を望むときには、上記コントローラは、運転モードを暖房モードとして、上側流路32の下流端及び冷風用流路70d後端の連通口部分をエアミックスドア56及び51により全閉にする。これにより、エバポレータ23を通過した冷風は、上側流路32には流れずに全量が下側流路31へと流れて加熱されて、車室に供給される。
【0062】
また、運転モードが暖房モードにあるときには、乗員の設定温度により、エアミックスドア56の回動位置が変更されて、エバポレータ23を通過した冷風の一部が上側流路32を通ってエアミックス空間55に流れ込み、温風と混合されて車室に供給される場合もある。
【0063】
また、本実施形態では、図1、図2、及び図4に示すように、開口部80dが形成されたケース部80をケース本体21に装着するとともに、開口部80dを温風ダクト90を介してリアベントダクト70に接続した場合、乗員の設定温度により、エアミックスドア51の回動位置が変更されて、冷風と温風とが混合されて後席側に供給される場合もある。なお、図4は、ケース部80を取付けた時の空気流れを模式的に示す図である。
【0064】
この場合、具体的には、エバポレータ23を通過した冷風の一部が、図4にて矢印Xで示すように、下側流路31、接続ダクト部50を通ってリアベントダクト70の冷風用流路70d内へ流れ込むとともに、ヒータコア24を通過した温風の一部が、その上昇時に矢印Yで示すように温風ガイド面80eに衝突して空気流路82側に案内され、温風ダクト90を通ってリアベントダクト70の温風用流路70e内に流れ込む。
【0065】
この場合、エアミックスドア51の回動位置を調整することで、冷風用流路70dから流れる冷風と温風用流路70eから流れる温風との分配割合によって所望の温度の空調風を後席側に供給することが可能になる。
【0066】
ところで、本実施形態に係る空調装置Aでは、温風ダクト90がケース部80と分割構成されていることで、温風ダクト90の取外し状態では、ケース部80の代わりに、図5、図6に示すような、開口部80dに対応する部分が形成されていないケース部80′を取付けることが可能である。
【0067】
なお、図5(a)は、本発明に係る空調装置Aにおいて温風ダクト90が取外された場合を示す斜視図であり、図5(b)は、空調装置Aを構成するケース部80′を示す斜視図である。また、図6は、図5に示す空調装置Aの側断面図である。
【0068】
ケース部80′は、ケース部80と同様、その前壁部に凹部80a′が形成され、ケース本体21の区画壁33の凹部33aとによってインパネメンバ18貫通配置用の挿通孔H′を形成するとともに、上下端には開口部80b′、80c′が形成され、空気流路81′を形成している。ここで、ケース部80′を取付けた場合においても、ケース部80を取付けた場合と同様、流路30〜32及び流路81′により、導入口26から各導出口57、58まで延びる空気流れが形成されている。
【0069】
その一方で、ケース部80の後部には、略全面に渡って上方に延びる温風ガイド面80e′が形成されており、これにより、開口部80dに対応する部分が閉塞され、リアベントダクト70の温風用流路70eとの接続が遮断された構成となっている。
【0070】
図7(a)は、固定部材52′周辺の構造を示す要部拡大斜視図であり、図7(b)は、図7(a)の分解斜視図である。空調装置Aにおいてケース部80′を取付けた場合、上流側ダクト部材70bには、エアミックスドア51を駆動するアクチュエータ52等を設ける代わりに、温風用流路70e後端の連通口部分を閉塞する閉塞位置にエアミックスドア51を固定する固定部材52′を備えることが可能になっている。
【0071】
固定部材52′は、側面視で略く字状をなし、その上端に略D字型に穿設された挿通孔52a′にエアミックスドア51の支軸51bが嵌合している。さらに、固定部材52′の高さ方向略中央部及び下端部には、第2、第3の挿通孔52b′、52c′(図7(b)参照)が穿設されている。
【0072】
また、上流側ダクト部材70bには、図3、図7に示すように、上流側ダクト部材70bの外面にて外方に突出するように係止ピン70h及びボス部70iが一体形成されている。
【0073】
図7においては、挿通孔52′及びボス部70iの孔部に挿通されたボルトB′により、固定部材52′が上流側ダクト部70bの外面に締結固定されるとともに、挿通孔52c′に係止ピン70hが挿通されることで、固定部材52′の回転が規制された状態となっている。
【0074】
この場合、上述したように支軸51bの一端部及び挿通孔52b′の形状が略D字型をなして両者が嵌合していることにより、固定部材52′によって支軸51bの回転を規制して、上記閉塞位置にエアミックスドア51を固定することができるようになっている。
【0075】
このため、ケース部80′及び固定部材52′を取付けた場合、エバポレータ23を通過した冷風は、図8にて矢印Zで示すように、下側流路31、接続ダクト部50を通ってリアベントダクト70の冷風用流路80d内に流れ込む一方、ヒータコア24を通って加熱された温風は、ケース部80′において開口部が閉塞されていることによりリアベントダクト70に供給されないようになっている。
【0076】
従って、ケース部80′の場合には、図1〜図4に示す場合のように、リアベントダクト70内で冷風、温風が混合されることはなく、空調装置Aは後席を冷房する機能のみを有することになる。なお、図8は、ケース部80′を取付けた時の空気流れを模式的に示す図である。
【0077】
このようにケース部80′を取付ける構成は、後席側に対して冷風のみを導く車種仕様に対応させる場合に好適であり、例えば、年間を通じて気温が比較的高い地域で使用される場合特に好適である。
【0078】
このように、本実施形態に係る空調装置Aでは、リアベントダクト70が少なくともエバポレータ23通過後の冷風を導くように構成されるとともに、ヒータコア24下流の空気流路を構成するケース部80、80′がケース本体21と分割構成され、これらがケース本体21に対して選択的に装着可能とされている。
【0079】
そして、ケース部80には、開口部80dが形成され、これが温風ダクト90を介してリアベントダクト70と接続される一方で、第2ケース部80′では、温風ダクト90の取外し状態において、リアベントダクト70側との接続が遮断されるようになっている。これにより、ケース部80、80′を付け替えるだけで、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様と混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることができる。
【0080】
また、第2ケース部80′取付け時においては、固定部材52′によって温風用流路70e後端の連通口部分を閉塞する閉塞位置にエアミックスドア51を固定できるようにしたことで、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様では、この冷風を洩れなく後席側に供給することができる。この場合、エアミックスドア51は、混合空調風を導く車種仕様においては混合空調風調整機能を有する一方で、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様における冷風漏れ防止機能を有するため、結果的にリアベントダクト70を両車種仕様において共用化させることができる。
【0081】
また、ケース本体21とケース部80(またはケース部80′)とを分割構成とするとともに、インパネメンバ18を、ケース本体21とケース部80との間に貫通配置したことで、空調装置A及びインパネメンバ18の組付けの際には、空調ユニット20(ケース本体21)に対し、インパネメンバ18、ケース部80の順番で組付けを行うことができ、その組付け性を高めることができる。
【0082】
なお、上述した実施形態では、エアミックスドア51により、リアベントダクト70を両車種仕様において共用化することとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様とした場合、該仕様にのみ対応する上流側ダクト170bを接続してもよい。
【0083】
また、図10に示すように、ケース部80の開口部80dの縁部に、孔部80fを形成し、開口部80dを閉塞する蓋部80gをビス80h等で適宜固定できるようにしてもよい。この場合、リアベントダクト70に混合空調風を導く車種仕様の時には、蓋部80gを取付けずに開口部80dを開放状態にすることで、リアベントダクト70側への温風の流れ込みを許容する一方、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様の時には、蓋部80gで開口部80dを閉塞することで、リアベントダクト70側への温風の流れ込みを遮断することができる。従って、図10に示す実施形態では、両車種仕様においてケース部の共用化を図ることができる。
【0084】
ここで、本発明において、開口部が閉塞された形状とは、単に開口部80dが形成されない形状に限らず、図10に示すように、開口部80dからの温風の供給を遮断する構成全般を含むものとする。
【0085】
また、上述した実施形態では、車両は左ハンドル車とされているが、これに限ったものではなく、右ハンドル車としてもよいのは勿論のことである。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の吹出口は、ベンチレータ8及びデフロスト9に対応し、
以下同様に、
冷却用熱交換器は、エバポレータ23に対応し、
加熱用熱交換器は、ヒータコア24に対応し、
第1のケース部は、ケース部80に対応し、
第2のケース部は、ケース部80′に対応し、
固定機構は、固定部材52′、ボルトB′、係止ピン70h、及びボス部70iに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】(a)この発明の実施形態に係る車両用空調装置において温風ダクトが取付けられた場合を示す斜視図、(b)(a)に示す車両用空調装置を構成するケース部を示す斜視図。
【図2】開口部、温風ダクト等を含む位置で図1に示す車両用空調装置を切断した時の側断面図。
【図3】(a)アクチュエータ周辺の構造を示す要部拡大斜視図。(b)(a)の分解斜視図。
【図4】ケース部を取付けた時の空気流れを模式的に示す図。
【図5】(a)この発明の実施形態に係る車両用空調装置において温風ダクトが取外された場合を示す斜視図、(b)(a)に示す車両用空調装置を構成するケース部を示す斜視図。
【図6】図5に示す車両用空調装置の側断面図。
【図7】(a)固定部材周辺の構造を示す要部拡大斜視図。(b)(a)の分解斜視図。
【図8】ケース部を取付けた時の空気流れを模式的に示す図。
【図9】この発明の他の実施形態に係る車両用空調装置を示す側断面図。
【図10】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用空調装置のケース部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0088】
1…インストルメントパネル
8…ベンチレータ
9…デフロスト
18…強度部材(インパネメンバ)
20…空調ユニット
21…ケース本体
23…エバポレータ
24…ヒータコア
26…導入口
30、81…空気流路
31…下側流路
32…上側流路
51…エアミックスドア
52′…固定部材
57…ベント導出口
58…デフロスト導出口
70…リアベントダクト
70h…係止ピン
70i…ボス部
80、80′…ケース部
80d…開口部
90…温風ダクト
A…車両用空調装置
B′…ボルト
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のインストルメントパネル内に設置され、空気を導入して空調風を生成する空調ユニットと、上記空調ユニットから車室の運転席よりも後方の後席側に向けて延設するリアベントダクトとを備えた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば自動車等の車両のインストルメントパネル内には、車両用空調装置の空調ユニットが設置されている。この空調ユニットのケースには、空調用空気を導入するための導入口と空調風の導出口とが形成され、このケース内には導入口から導出口まで延びる空気流路が形成されている。
【0003】
この空気流路には、空気流れ方向に順に、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器が配置されている。ケースの導入口から空気流路に導入された空気は、上記冷却用熱交換器や加熱用熱交換器を通過して温度調節がなされ、その後、ケースの導出口を介してインストルメントパネルに形成された吹出口から車室前部の運転席及び助手席の乗員に向けて供給されるようになっている。
【0004】
また、車両用空調装置の中には、例えば、下記特許文献1に開示されているように、上記空調ユニットから車室の運転席よりも後方の後席側に向けて延設するリアベントダクトを備え、後席側に形成された後席用吹出開口部へ空調風を供給して後席の快適性向上を図ったものがある。
【特許文献1】特開2003−104039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1では、空調ユニット内に複数の空気流路と、エア流れの方向を切り替えるドア部材とを備えており、このドア部材の切り替えにより、冷却用熱交換器によって冷却された冷風のみを上記リアベントダクトに導いたり、冷却用熱交換器及び加熱用熱交換器によって冷却、加熱された冷風、温風を混合して混合空調風を生成し、これをリアベントダクトに導いたりすることが可能になっている。
【0006】
しかしながら、年間を通じて気温が比較的高い地域では、後席側に対して冷風のみが導かれるようになっていればよく、混合空調風の供給が不要とされる場合もある。従って、上記特許文献1に開示された構成では、ドア部材の切り替え機能が無駄になってしまう場合がある。
【0007】
このような理由から、車両用空調装置においては、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様に応じたもの、混合空調風を導く車種仕様に応じたものを個別に提供できるようにするのが好ましいと考えられる。
【0008】
しかしながら、そのようにすると、複数の生産ラインが必要となり、結果的に製造コストの増大を招いてしまう。
【0009】
この発明は、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様と、混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることを可能にする車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の車両用空調装置は、車両のインストルメントパネル内に設置され、空気を導入して空調風を生成する空調ユニットと、上記空調ユニットから車室の運転席よりも後方の後席側に向けて延設するリアベントダクトとを備えた車両用空調装置であって、上記空調ユニットは、空気を導入する導入口及び空調風を上記インストルメントパネルに設けられた吹出口へ導出する導出口を有するケース本体と、該ケース本体内に形成され、上記導入口から上記導出口まで延びる空気流路と、該空気流路に配置されて上記導入口から導入された空気を冷却する冷却用熱交換器と、上記空気流路の、上記冷却用熱交換器よりも空気流れ下流側に配置されて上記導入口から導入された空気を加熱する加熱用熱交換器とを備え、上記リアベントダクトは、少なくとも冷却用熱交換器を通過後の冷風を導くように構成されるとともに、上記加熱用熱交換器下流の空気流路を形成する第1、第2のケース部が、上記ケース本体と分割構成されて、該ケース本体に対し選択的に装着可能とされ、上記第1のケース部は、開口部が形成され、混合空調風を調整するエアミックスドアを介して温風を供給する温風ダクトが上記リアベントダクトに着脱可能に接続された状態では、上記開口部が上記温風ダクトを介して上記リアベントダクトと接続されるように構成される一方、上記第2ケース部は、上記開口部が閉塞された形状をなし、上記温風ダクトの取外し状態では、上記リアベントダクトとの接続が遮断されるように構成されるものである。
【0011】
この構成によれば、第1、第2のケース部がケース本体と分割構成され、かつケース本体に対して選択的に装着可能とされることにより、ケース部を付け替えるだけで、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様と、混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記リアベントダクトに装着された上記エアミックスドアを温風側開口部を閉じる閉位置に固定する固定機構を備えたものである。
【0013】
この構成によれば、固定機構によってエアミックスドアを閉位置に固定することで、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様では、この冷風を洩れなく後席側に供給することができる。この場合、エアミックスドアは、混合空調風を導く車種仕様においては混合空調風調整機能を有する一方で、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様においては冷風漏れ防止機能を有するため、結果的にリアベントダクトを両車種仕様において共用化させることができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記ケース本体と、上記第1、第2のケース部との間に、インパネメンバが貫通配置されるものである。
【0015】
この構成によれば、車両用空調装置及びインパネメンバの組付けの際には、空調ユニット(ケース本体)に対し、インパネメンバ、ケース部の順番で組付けを行うことができるため、その組付け性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、第1、第2のケース部がケース本体と分割構成され、かつケース本体に対して選択的に装着可能とされることにより、ケース部を付け替えるだけで、リアベントダクトに冷風のみを導く車種仕様と、混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1(a)は、本発明に係る車両用空調装置Aにおいて温風ダクト90が取付けられた場合を示す斜視図であり、図1(b)は、車両用空調装置Aを構成するケース部80を示す斜視図である。また、図2は、開口部80d、温風ダクト90等を含む位置で図1に示す車両用空調装置Aを切断した時の側断面図である。
【0018】
インストルメントパネル1は主に樹脂材により形成され、図2にて二点鎖線で示すように、エンジン(図示せず)が収容されたエンジンルームR1と車室R2とを区画するダッシュパネル2の車両後方側(すなわち車室R2側)に設けられている。
【0019】
この自動車は所謂左ハンドル車であり、車室前部の左側に運転席(図示せず)、右側に助手席(図示せず)がそれぞれ配設されている。また、図示しないが、車室の運転席及び助手席の後方には、後部座席としての2列目の座席が配設され、さらに、この2列目の座席の後方には、3列目の座席が配設されている。つまり、この自動車は、車両前後方向に並ぶ3列の座席を有している。
【0020】
なお、以下の説明では特に説明しない場合、「前」及び「後」はそれぞれ「車両前後方向前」及び「車両前後方向後」、「左」及び「右」は、それぞれ車体を基準とした「車幅方向左」及び「車幅方向右」を意味している。また、図中において矢印(Fr)は車両前方、矢印(R)は車両後方を示す。
【0021】
図1に示すように、運転席の前方にステアリングホイール3が配置されている。このステアリングホイール3の前方に位置するインストルメントパネル1の左寄りの部位には、速度メータ等を収容するクラスター4が配設され、左右方向の中央部付近には、車両用空調装置A(以下、空調装置Aと略記する)のコントローラ(図示せず)に接続された操作ダイヤル5、5、…が配設されている。
【0022】
また、その操作ダイヤル5、5、…の下方近傍から車室内方に向かって膨出するように形成されたセンターコンソール1aの前寄りの部位には、シフトレバー6の延びる変速操作部7が、車体フロアF(図2にて二点鎖線で示す)から所定の高さ位置に設けられている。ここで所定の高さとは、乗員がシフトレバー6を操作し易いように設定された高さのことを言う。センターコンソール1aの後側には、上記フロアコンソール15が連設されている。
【0023】
上記操作ダイヤル5、5、…の上方には、図示しないが、オーディオやナビゲーション装置等が設置されるようになっている。このオーディオ等の設置スペースの左右両側に近接して、インストルメントパネル1の略中央部には、左右一対の縦長のベンチレータ8、8が設けられており、ここから乗員の上半身近傍に向けて空調風が吹出すようになっている。
【0024】
また、インストルメントパネル1の左右両端部にも、略中央部のものと同様の縦長のベンチレータ8、8が設けられており、それぞれ運転席及び助手席乗員の上半身に向けて空調風が吹出すようになっている。さらに、インストルメントパネル1の上面の前端部には、フロントウインドG(図2にて二点鎖線で示す)用のデフロスト9、9、…が設けられている。
【0025】
尚、本実施形態のインストルメントパネル1は、その内部を左右方向に延びて左右両端がそれぞれ車体に支持された鋼製パイプからなる強度部材18(以下、インパネメンバと呼ぶ)を備えている。このインパネメンバ18は、インストルメントパネル1内部の下部近傍に位置している。
【0026】
上記空調装置Aは、空気を吸い込むインテークボックス19と、空調ユニット20と、該空調ユニット20から運転席よりも後方の後席側に向けて延設されるリアベントダクト(後部空調用ダクト)70と、ケース部80と、該ケース部80に接続された温風ダクト90とを備えている。
【0027】
空調ユニット20は、上記インストルメントパネル1の内部における左右方向の略中央部に収容されている。図2に示すように、インストルメントパネル1内の空調ユニット20の上部には、ベントダクト10及びデフロストダクト11が配設されている。ベントダクト10の下流端は、ベンチレータ8、8、…に接続され、デフロストダクト11の下流端は、デフロスト9、9、…に接続されている。
【0028】
さらに、リアベントダクト70の空調ユニット20側の端部は、該空調ユニット20の下部に位置付けられ、内部の空気流路Sと連通している。
【0029】
上記フロアコンソール15は、上記センターコンソール1aの後端部から運転席及び助手席間を通って後側へ向かって延びている。フロアコンソール15の後端部は、運転席及び助手席よりも後側に位置しており、この後端部には、上記リアベントダクト70の後端部が位置している。このリアベントダクト70の後端部に設けられた空調開口部70aから空調風が2列目座席の乗員に向かって吹出すようになっている。
【0030】
図2に示すように、空調ユニット20は、ケース本体21と、このケース本体21に収容された送風ファン22とを備えていて、該送風ファン22によりインテークボックス19を介して車室R2外または車室R2内から導入した空気から空調風を生成し、これを後述する導出口57、58等を通じてベンチレータ8、デフロスト9等に導出するように構成されている。すなわち、上記空調ユニット20は、遠心式ファンで構成された送風ファン22により送給される空気をエバポレータ23によって冷却したり、該エバポレータ23の空気流れ下流側に配置されるヒータコア24により加熱したりして、所要の温度及び湿度状態の空調風を生成するものである。このケース本体21において、その上部の前側には、図2に示すように、スクロール形状のファンハウジング25が形成されている。
【0031】
このファンハウジング25には、上記送風ファン22がその軸心を左右方向に向けた状態で収容されている。ファンハウジング25の右側壁には、空気をケース本体21内に導入するための導入口26が形成されている。この導入口26に上記インテークボックス19が接続されている。
【0032】
図2に示すように、上記ファンハウジング25内の送風ファン22の周りには、送風ファン22から吹出した空気の流れを集合させて下方へ送る空気流路30が形成されている。この空気流路30はケース本体21内の上側から下側へ延びており、その下流端に、冷却用熱交換器としての上記エバポレータ23が配置されている。
【0033】
このエバポレータ23は、導入口26から導入された空気を冷却すべく、詳細は図示しないが、例えばアルミニウム合金製のチューブと伝熱フィンとが交互に並べられて一体化されており、チューブの延びる方向が上下方向となるように縦置き配置されている。エバポレータ23には、図示しないが、クーラ配管を介してエンジンルームR1内の冷媒回路から膨張弁を経て減圧された冷媒が流入するようになっている。このチューブ内を流通する冷媒と、導入口26から導入された空気とが熱交換して該空気が冷却されるようになっている。
【0034】
ケース本体21の底壁の前半部は、後方へ向かって下降傾斜している。この底壁の前半部には、上記エバポレータ23の下端部を保持する保持部40が上方へ突出するように設けられている。
【0035】
上記ケース本体21内のエバポレータ23よりも下流側には、該エバポレータ23を通過した空気を、加熱用熱交換器としての上記ヒータコア24に導く下側流路31と、該ヒータコア24をバイパスして上方に向かう上側流路32とが、区画壁33により区画形成され、共に空気流路30に連通している。
【0036】
上記ヒータコア24は、下側流路31の途中において、インパネメンバ18の直下から後方に向かい下方に傾斜して延びるように配置されており、このヒータコア24の空気通過面は、ケース本体21の底壁と対向している。ヒータコア24は、エンジン側から高温の冷却液が導入されるようになっており、ヒータコア24のチューブ内を流通する高温のエンジン冷却水と、導入口26から導入された空気とが熱交換して、該空気が加熱されるようになっている。
【0037】
また、ヒータコア24の上方には、ケース部80が配設され、ヒータコア24下流の空気通路となる空気流路81、82が形成されている。このケース部80は、空調ユニット20のケース本体21と分割構成されている。
【0038】
また、ケース本体21の区画壁33及びケース部80の前壁部には、図2に示すように、それぞれ凹部33a、80aが形成されており、この凹部33a、80aにより、断面略円形状の挿通孔Hが形成されている。インパネメンバ18は、この挿通孔Hに挿通されて、ケース本体21とケース部80との間において左右方向に貫通配置されている。
【0039】
また、ケース部80においてその上下端には、開口部80b、80cが形成されており、この開口部80b、80cにより、上側流路32をバイパスしてヒータコア24経由で上方に向かう空気流路81が形成されている。ここで、本実施形態では、流路30〜32及び流路81により、導入口26から各導出口57、58まで延びる空気流れが形成されている。
【0040】
また、ケース部80の右側後部には、空気流路81から後方に分岐する第2の空気流路82が形成されるとともに、その後端には開口部80dが形成され、後述する温風ダクト90が接続されている。
【0041】
さらに、ケース部80には、ヒータコア24の後部から上方に離間した位置に、開口部80dに向かって後方に延びる温風ガイド面80eが形成されており、この温風ガイド面80eが空気流路82の天井部を構成している。
【0042】
ところで、リアベントダクト70は、ケース本体21の後部に形成された接続ダクト部50から後側に向かって延びている。リアベントダクト70は、前後方向の中途部で上流側ダクト部材70bと、フロアコンソール15の後端部で上側に折れ曲がる下流側ダクト部材70cとに分割されている。
【0043】
上流側ダクト部材70bには、接続ダクト部50の後端に接続され、後方に延びる冷風用流路70dと、該冷風用流路70dの上方に位置して、前端が温風ダクト90の後端に着脱可能に接続される温風用流路70eとを有している。そして、これら冷風用流路70dと温風用流路70eとは、互いに後端側で合流するように形成されている。
【0044】
このため、本実施形態では、エバポレータ23通過後の空気が後席側の開口部70aに供給されるルートとして、接続ダクト部50、冷風用流路70dを流れて冷風のまま下流側ダクト部材70cに至る第1のルートと、ヒータコア24の加熱によって温風となり、空気流路82、温風ダクト90、温風用流路70eを流れて下流側ダクト部材70cに至る第2のルートとがある。
【0045】
図3(a)は、アクチュエータ52周辺の構造を示す要部拡大斜視図であり、図3(b)は、図3(a)の分解斜視図である。上流側ダクト部材70bには、冷風用流路70dと温風用流路70eとの合流部において、図2、図3に示すように、エアミックスドア51が設けられ、空気流路31、接続ダクト部50、及び冷風用流路70dを経由して流入する冷風量と、空気流路82、温風ダクト90、及び温風用流路70eを経由して流入する温風量との混合割合を調整することを可能にしている。
【0046】
このエアミックスドア51は、図3に示すように、冷風用流路70dや温風用流路70e後端の連通口部分の開口面に沿って延びる平坦な板状の閉塞板部51aと、この閉塞板部51aの前縁部から左右方向に突出する支軸51bとを備えている。
【0047】
支軸51bの一端側(ここでは左端部)は、上流側ダクト部材70bの左側壁に形成された貫通孔70f(図3(b)参照)に回動可能に挿通支持され、これにより、閉塞板部51aは、支軸51bを中心にして前側が上下方向に回動する。
【0048】
また、上流側ダクト部材70bの外面には、上記エアミックスドア51を駆動するためのアクチュエータ52が配置されている。このアクチュエータ52は、締結片52aの挿通孔52b(図3(b)参照)、及び上流側ダクト部材70bの外面に形成されたボス部70gの孔部にボルトBが挿通されることで、上流側ダクト部材70bの外面に締結固定されている。
【0049】
このアクチュエータ52の出力軸には、回動アーム53が取付けられており、その先端部のピン53a(図3(b)参照)がリンク機構54の長孔54a内を摺動可能に配置されている。そして、このリンク機構54の一端側には、略D字型をなす挿通孔54bが穿設され、この挿通孔54bに支軸51bが挿通されていることで、エアミックスドア51の支軸51bの左端部が、回動アーム53及びリンク機構54を介してアクチュエータ52に連結されている。
【0050】
このアクチュエータ52は、後述するコントローラに接続されており、アクチュエータ52によって回動アーム53を回動させることで、ピン53aを長孔54aに沿って摺動させながら、リンク機構54を回動させることが可能になっている。そして、図示のように支軸51bの一端部及び挿通孔54bの形状が略D字型をなして両者が嵌合していることにより、両者は一体的に回転する。このため、エアミックスドア51では、回動アーム53及びリンク機構54を介してアクチュエータ52の駆動力が伝達されると、支軸51bが回転し、その結果閉塞板部51aを回動させることができるようになっている。
【0051】
エアミックスドア51では、閉塞板部51aを、上記連通口部分の一方を閉塞する閉塞位置に保持したり、上記連通口部分の両者を開放する開放位置に切り替えたりすることが可能である。上記連通口部分の両者を開放する状態においては、支軸51bつまりはエアミックスドア51の回動位置を適宜調節することによって、冷風用流路70dから流れる冷風と温風用流路70eから流れる温風との分配割合を変更することが可能になっている。なお、図3中に示す部位70h、70iについては、後述する。
【0052】
ところで、図2に示すように、上記上側流路32及び空気流路81の下流端は、それぞれ、ケース本体21内の上部後側に形成されたエアミックス空間55に下側から連通しており、このエアミックス空間55の下方には、空気流路81から流入する温風量と上側流路32から流入する冷風量との混合割合を調整するエアミックスドア56が設けられている。図示しないが、このエアミックスドア56は、ケース本体21の外面に固定されたアクチュエータにより駆動されるようになっている。
【0053】
一方、上記エアミックス空間55の上部には、ベント導出口57と、デフロスト導出口58とが前後に並んで開口し、それら各導出口57、58には通路開口面積を調節可能なベントドア59及びデフロストドア60が配設されている。ベント導出口57には、インストルメントパネル1内のベントダクト10の上流端が接続され、デフロスト導出口58には、デフロストダクト11の上流端が接続されている。
【0054】
上記ケース本体21の後側には、エアミックス空間55の後側下部に連通する導出ダクト部61が後方へ斜め下向きに延びるように形成されている。導出ダクト部61の上流端部には、エアミックス空間55との連通部分の通路断面積を調節可能なフットドア62が配設されている。導出ダクト部61の下端には、エアミックス空間55において温度調整された空調風を後席へと導くためのリヤダクト12が接続されている。導出ダクト部61の左右両側には、運転席及び助手席用のフットダクト(図示せず)の上流端が連通している。
【0055】
上記ベントドア59、デフロストドア60及びフットドア62は、図示しないが、ケース本体21の外面に固定されたアクチュエータによりリンク機構を介して駆動されるようになっている。これらドア59、60、62の開閉状態により、吹出モードが、バイレベルモード、デフフットモード、ベントモード、デフロストモード及びフットモードの中からいずれか1つに切り替えられるようになっている。
【0056】
上記バイレベルモードとは、デフロスト導出口58を閉じ、かつ、ベント導出口57及び導出ダクト部61を開いたモードであり、また、デフフットモードとは、ベント導出口57を閉じ、かつデフロスト導出口58及び導出ダクト部61を開いたモードであり、また、ベントモードとは、デフロスト導出口58及び導出ダクト部61を閉じ、ベント導出口57を開いたモードであり、また、デフロストモードとは、ベント導出口57及び導出ダクト部61を閉じ、かつ、デフロスト導出口58を開いたモードであり、また、フットモードとは、ベント導出口57及びデフロスト導出口58を閉じ、かつ、導出ダクト部61を開いたモードである。
【0057】
上記ベントドア59、デフロストドア60及びフットドア62の開度調整や、エアミックスドア51、56の回動位置は、乗員による操作ダイヤル5の操作に応じて設定された運転モードや吹出モードに基づいて、コントローラにより行われる。このコントローラは、空調ユニット20の運転モードが冷房モードとされると、エアミックスドア51が冷風用流路70d後端の連通口部分を開放するまでアクチュエータ52を作動させ、一方、暖房モードとされると、エアミックスドア51が温風用流路70e後端の連通口部分を閉塞するまでアクチュエータ52を作動させるように構成されている。
【0058】
次に、上記のように構成された空調装置Aの動作について説明する。上記空調ユニット20においては、送風ファン22により空気流路30に送られた空気が、上側から下側へ流れ、エバポレータ23を通過することによって冷却されて冷風になる。この冷風は、エアミックスドア56の回動位置によって決まる風量の分配割合に応じて下側流路31側と上側流路32側とに分かれて流れ、下側流路31側に向かった冷風はヒータコア24を通過することによって温められる。そうして一旦、下側流路31及び上側流路32に分かれた空気はエアミックス空間55で合流するとともに混合されて、所定の温度及び湿度の空調風となる。そして、上記エアミックス空間55で混合された空調風は、ベントドア59、デフロストドア60及びフットドア62により設定された吹出モードに応じて車室R2の各部へと供給されるようになる。
【0059】
例えば、夏場の炎天下に放置した後の自動車においては室内温度が上昇しているため、乗員は、操作ダイヤル5を操作して空調ユニット20の運転モードを強い冷房、即ち、フルコールドモードとする。コントローラは、運転モードがフルコールドモードとされているときには、吹出モードをベントモードにするとともに、空気流路81の下流端及び温風用流路70e後端の連通口部分を、エアミックスドア56及び51により全閉にする。
【0060】
上記エバポレータ23で冷却された冷風の一部は、上側流路32を通ってエアミックス空間55へと流れてベント導出口57から吹出し、残りの冷風は、下側流路31を通って接続ダクト部50を介してリアベントダクト70の冷風用流路70d内へと流れる。つまり、このリアベントダクト70には、エバポレータ23を通過する空気のうち、ヒータコア24を通過していない冷風が流入することになる。このため、冷風を後席まで導いてリアベントダクト70の空調開口部70aから後席に供給することが可能になり、後席を効率良く冷房することが可能になる。
【0061】
一方、乗員が暖房を望むときには、上記コントローラは、運転モードを暖房モードとして、上側流路32の下流端及び冷風用流路70d後端の連通口部分をエアミックスドア56及び51により全閉にする。これにより、エバポレータ23を通過した冷風は、上側流路32には流れずに全量が下側流路31へと流れて加熱されて、車室に供給される。
【0062】
また、運転モードが暖房モードにあるときには、乗員の設定温度により、エアミックスドア56の回動位置が変更されて、エバポレータ23を通過した冷風の一部が上側流路32を通ってエアミックス空間55に流れ込み、温風と混合されて車室に供給される場合もある。
【0063】
また、本実施形態では、図1、図2、及び図4に示すように、開口部80dが形成されたケース部80をケース本体21に装着するとともに、開口部80dを温風ダクト90を介してリアベントダクト70に接続した場合、乗員の設定温度により、エアミックスドア51の回動位置が変更されて、冷風と温風とが混合されて後席側に供給される場合もある。なお、図4は、ケース部80を取付けた時の空気流れを模式的に示す図である。
【0064】
この場合、具体的には、エバポレータ23を通過した冷風の一部が、図4にて矢印Xで示すように、下側流路31、接続ダクト部50を通ってリアベントダクト70の冷風用流路70d内へ流れ込むとともに、ヒータコア24を通過した温風の一部が、その上昇時に矢印Yで示すように温風ガイド面80eに衝突して空気流路82側に案内され、温風ダクト90を通ってリアベントダクト70の温風用流路70e内に流れ込む。
【0065】
この場合、エアミックスドア51の回動位置を調整することで、冷風用流路70dから流れる冷風と温風用流路70eから流れる温風との分配割合によって所望の温度の空調風を後席側に供給することが可能になる。
【0066】
ところで、本実施形態に係る空調装置Aでは、温風ダクト90がケース部80と分割構成されていることで、温風ダクト90の取外し状態では、ケース部80の代わりに、図5、図6に示すような、開口部80dに対応する部分が形成されていないケース部80′を取付けることが可能である。
【0067】
なお、図5(a)は、本発明に係る空調装置Aにおいて温風ダクト90が取外された場合を示す斜視図であり、図5(b)は、空調装置Aを構成するケース部80′を示す斜視図である。また、図6は、図5に示す空調装置Aの側断面図である。
【0068】
ケース部80′は、ケース部80と同様、その前壁部に凹部80a′が形成され、ケース本体21の区画壁33の凹部33aとによってインパネメンバ18貫通配置用の挿通孔H′を形成するとともに、上下端には開口部80b′、80c′が形成され、空気流路81′を形成している。ここで、ケース部80′を取付けた場合においても、ケース部80を取付けた場合と同様、流路30〜32及び流路81′により、導入口26から各導出口57、58まで延びる空気流れが形成されている。
【0069】
その一方で、ケース部80の後部には、略全面に渡って上方に延びる温風ガイド面80e′が形成されており、これにより、開口部80dに対応する部分が閉塞され、リアベントダクト70の温風用流路70eとの接続が遮断された構成となっている。
【0070】
図7(a)は、固定部材52′周辺の構造を示す要部拡大斜視図であり、図7(b)は、図7(a)の分解斜視図である。空調装置Aにおいてケース部80′を取付けた場合、上流側ダクト部材70bには、エアミックスドア51を駆動するアクチュエータ52等を設ける代わりに、温風用流路70e後端の連通口部分を閉塞する閉塞位置にエアミックスドア51を固定する固定部材52′を備えることが可能になっている。
【0071】
固定部材52′は、側面視で略く字状をなし、その上端に略D字型に穿設された挿通孔52a′にエアミックスドア51の支軸51bが嵌合している。さらに、固定部材52′の高さ方向略中央部及び下端部には、第2、第3の挿通孔52b′、52c′(図7(b)参照)が穿設されている。
【0072】
また、上流側ダクト部材70bには、図3、図7に示すように、上流側ダクト部材70bの外面にて外方に突出するように係止ピン70h及びボス部70iが一体形成されている。
【0073】
図7においては、挿通孔52′及びボス部70iの孔部に挿通されたボルトB′により、固定部材52′が上流側ダクト部70bの外面に締結固定されるとともに、挿通孔52c′に係止ピン70hが挿通されることで、固定部材52′の回転が規制された状態となっている。
【0074】
この場合、上述したように支軸51bの一端部及び挿通孔52b′の形状が略D字型をなして両者が嵌合していることにより、固定部材52′によって支軸51bの回転を規制して、上記閉塞位置にエアミックスドア51を固定することができるようになっている。
【0075】
このため、ケース部80′及び固定部材52′を取付けた場合、エバポレータ23を通過した冷風は、図8にて矢印Zで示すように、下側流路31、接続ダクト部50を通ってリアベントダクト70の冷風用流路80d内に流れ込む一方、ヒータコア24を通って加熱された温風は、ケース部80′において開口部が閉塞されていることによりリアベントダクト70に供給されないようになっている。
【0076】
従って、ケース部80′の場合には、図1〜図4に示す場合のように、リアベントダクト70内で冷風、温風が混合されることはなく、空調装置Aは後席を冷房する機能のみを有することになる。なお、図8は、ケース部80′を取付けた時の空気流れを模式的に示す図である。
【0077】
このようにケース部80′を取付ける構成は、後席側に対して冷風のみを導く車種仕様に対応させる場合に好適であり、例えば、年間を通じて気温が比較的高い地域で使用される場合特に好適である。
【0078】
このように、本実施形態に係る空調装置Aでは、リアベントダクト70が少なくともエバポレータ23通過後の冷風を導くように構成されるとともに、ヒータコア24下流の空気流路を構成するケース部80、80′がケース本体21と分割構成され、これらがケース本体21に対して選択的に装着可能とされている。
【0079】
そして、ケース部80には、開口部80dが形成され、これが温風ダクト90を介してリアベントダクト70と接続される一方で、第2ケース部80′では、温風ダクト90の取外し状態において、リアベントダクト70側との接続が遮断されるようになっている。これにより、ケース部80、80′を付け替えるだけで、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様と混合空調風を導く車種仕様とに容易に対応させることができる。
【0080】
また、第2ケース部80′取付け時においては、固定部材52′によって温風用流路70e後端の連通口部分を閉塞する閉塞位置にエアミックスドア51を固定できるようにしたことで、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様では、この冷風を洩れなく後席側に供給することができる。この場合、エアミックスドア51は、混合空調風を導く車種仕様においては混合空調風調整機能を有する一方で、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様における冷風漏れ防止機能を有するため、結果的にリアベントダクト70を両車種仕様において共用化させることができる。
【0081】
また、ケース本体21とケース部80(またはケース部80′)とを分割構成とするとともに、インパネメンバ18を、ケース本体21とケース部80との間に貫通配置したことで、空調装置A及びインパネメンバ18の組付けの際には、空調ユニット20(ケース本体21)に対し、インパネメンバ18、ケース部80の順番で組付けを行うことができ、その組付け性を高めることができる。
【0082】
なお、上述した実施形態では、エアミックスドア51により、リアベントダクト70を両車種仕様において共用化することとしたが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すように、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様とした場合、該仕様にのみ対応する上流側ダクト170bを接続してもよい。
【0083】
また、図10に示すように、ケース部80の開口部80dの縁部に、孔部80fを形成し、開口部80dを閉塞する蓋部80gをビス80h等で適宜固定できるようにしてもよい。この場合、リアベントダクト70に混合空調風を導く車種仕様の時には、蓋部80gを取付けずに開口部80dを開放状態にすることで、リアベントダクト70側への温風の流れ込みを許容する一方、リアベントダクト70に冷風のみを導く車種仕様の時には、蓋部80gで開口部80dを閉塞することで、リアベントダクト70側への温風の流れ込みを遮断することができる。従って、図10に示す実施形態では、両車種仕様においてケース部の共用化を図ることができる。
【0084】
ここで、本発明において、開口部が閉塞された形状とは、単に開口部80dが形成されない形状に限らず、図10に示すように、開口部80dからの温風の供給を遮断する構成全般を含むものとする。
【0085】
また、上述した実施形態では、車両は左ハンドル車とされているが、これに限ったものではなく、右ハンドル車としてもよいのは勿論のことである。
【0086】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の吹出口は、ベンチレータ8及びデフロスト9に対応し、
以下同様に、
冷却用熱交換器は、エバポレータ23に対応し、
加熱用熱交換器は、ヒータコア24に対応し、
第1のケース部は、ケース部80に対応し、
第2のケース部は、ケース部80′に対応し、
固定機構は、固定部材52′、ボルトB′、係止ピン70h、及びボス部70iに対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】(a)この発明の実施形態に係る車両用空調装置において温風ダクトが取付けられた場合を示す斜視図、(b)(a)に示す車両用空調装置を構成するケース部を示す斜視図。
【図2】開口部、温風ダクト等を含む位置で図1に示す車両用空調装置を切断した時の側断面図。
【図3】(a)アクチュエータ周辺の構造を示す要部拡大斜視図。(b)(a)の分解斜視図。
【図4】ケース部を取付けた時の空気流れを模式的に示す図。
【図5】(a)この発明の実施形態に係る車両用空調装置において温風ダクトが取外された場合を示す斜視図、(b)(a)に示す車両用空調装置を構成するケース部を示す斜視図。
【図6】図5に示す車両用空調装置の側断面図。
【図7】(a)固定部材周辺の構造を示す要部拡大斜視図。(b)(a)の分解斜視図。
【図8】ケース部を取付けた時の空気流れを模式的に示す図。
【図9】この発明の他の実施形態に係る車両用空調装置を示す側断面図。
【図10】この発明のさらに他の実施形態に係る車両用空調装置のケース部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0088】
1…インストルメントパネル
8…ベンチレータ
9…デフロスト
18…強度部材(インパネメンバ)
20…空調ユニット
21…ケース本体
23…エバポレータ
24…ヒータコア
26…導入口
30、81…空気流路
31…下側流路
32…上側流路
51…エアミックスドア
52′…固定部材
57…ベント導出口
58…デフロスト導出口
70…リアベントダクト
70h…係止ピン
70i…ボス部
80、80′…ケース部
80d…開口部
90…温風ダクト
A…車両用空調装置
B′…ボルト
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネル内に設置され、空気を導入して空調風を生成する空調ユニットと、
上記空調ユニットから車室の運転席よりも後方の後席側に向けて延設するリアベントダクトとを備えた車両用空調装置であって、
上記空調ユニットは、空気を導入する導入口及び空調風を上記インストルメントパネルに設けられた吹出口へ導出する導出口を有するケース本体と、
該ケース本体内に形成され、上記導入口から上記導出口まで延びる空気流路と、
該空気流路に配置されて上記導入口から導入された空気を冷却する冷却用熱交換器と、
上記空気流路の、上記冷却用熱交換器よりも空気流れ下流側に配置されて上記導入口から導入された空気を加熱する加熱用熱交換器とを備え、
上記リアベントダクトは、少なくとも冷却用熱交換器を通過後の冷風を導くように構成されるとともに、
上記加熱用熱交換器下流の空気流路を形成する第1、第2のケース部が、上記ケース本体と分割構成されて、該ケース本体に対し選択的に装着可能とされ、
上記第1のケース部は、開口部が形成され、混合空調風を調整するエアミックスドアを介して温風を供給する温風ダクトが上記リアベントダクトに着脱可能に接続された状態では、上記開口部が上記温風ダクトを介して上記リアベントダクトと接続されるように構成される一方、
上記第2ケース部は、上記開口部が閉塞された形状をなし、上記温風ダクトの取外し状態では、上記リアベントダクトとの接続が遮断されるように構成される
車両用空調装置。
【請求項2】
上記リアベントダクトに装着された上記エアミックスドアを温風側開口部を閉じる閉位置に固定する固定機構を備えた
請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
上記ケース本体と、上記第1、第2のケース部との間に、インパネメンバが貫通配置される
請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項1】
車両のインストルメントパネル内に設置され、空気を導入して空調風を生成する空調ユニットと、
上記空調ユニットから車室の運転席よりも後方の後席側に向けて延設するリアベントダクトとを備えた車両用空調装置であって、
上記空調ユニットは、空気を導入する導入口及び空調風を上記インストルメントパネルに設けられた吹出口へ導出する導出口を有するケース本体と、
該ケース本体内に形成され、上記導入口から上記導出口まで延びる空気流路と、
該空気流路に配置されて上記導入口から導入された空気を冷却する冷却用熱交換器と、
上記空気流路の、上記冷却用熱交換器よりも空気流れ下流側に配置されて上記導入口から導入された空気を加熱する加熱用熱交換器とを備え、
上記リアベントダクトは、少なくとも冷却用熱交換器を通過後の冷風を導くように構成されるとともに、
上記加熱用熱交換器下流の空気流路を形成する第1、第2のケース部が、上記ケース本体と分割構成されて、該ケース本体に対し選択的に装着可能とされ、
上記第1のケース部は、開口部が形成され、混合空調風を調整するエアミックスドアを介して温風を供給する温風ダクトが上記リアベントダクトに着脱可能に接続された状態では、上記開口部が上記温風ダクトを介して上記リアベントダクトと接続されるように構成される一方、
上記第2ケース部は、上記開口部が閉塞された形状をなし、上記温風ダクトの取外し状態では、上記リアベントダクトとの接続が遮断されるように構成される
車両用空調装置。
【請求項2】
上記リアベントダクトに装着された上記エアミックスドアを温風側開口部を閉じる閉位置に固定する固定機構を備えた
請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
上記ケース本体と、上記第1、第2のケース部との間に、インパネメンバが貫通配置される
請求項1記載の車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−23640(P2010−23640A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186822(P2008−186822)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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