説明

車両用空調装置

【課題】バイレベルモードにおいて、乗員の顔及び足元近傍への送風温度の差を大きく確保しつつ、ヒートデフモードにおいて、前記乗員の足元近傍への送風とフロントウィンドウ近傍への送風との間の温度差を小さくすることができ、しかも、前記車室内に送風する送風ダクトを限られたスペース内で効率的に搭載する。
【解決手段】車両用空調装置400は、空気の各通路を構成するケーシング402の上部にベント開口部492及びデフロスタ開口部524を有し、ベント開口部492がデフロスタ開口部524よりも車両の前方に設けられている。一対のデフロスタダクト550が、デフロスタ開口部524のサイド部534からそれぞれ左右方向へ延在することにより、センター用ベントダクト546は、ベント開口部492から、一対のデフロスタダクト550の間を車両の後方を指向して直線的に配設され、車室内のみで開口する。また、バイレベルモードでは、エバポレータ408の下流側に設けられた第3フロント通路484は、上方を指向して直線的に配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用空調装置は、送風機であるブロアによって内外気をケース内へと取り込み、冷却手段である蒸発器(熱交換器)により冷却された空気と、加熱手段であるヒータコア(熱交換器)により加熱された空気とを前記ケース内で所望の混合比率で混合した後、車室内に設けられたデフロスタ吹出口、フェイス吹出口又はフット吹出口から送風することによって前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている。
【0003】
一般的に、上述したような車両用空調装置では、デフロスタ吹出口が、車両におけるフロントウィンドウ近傍、すなわち、車両前方側に設けられ、該デフロスタ吹出口からの送風によって前記フロントウィンドウの曇りの除去が行われ、一方、前記車室内の乗員に向かって送風するベント吹出口が前記デフロスタ吹出口に対して車両後方側に配置され、該ベント吹出口からの送風によって乗員の顔近傍を冷却することとしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−220820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両用空調装置では、車室内において乗員の顔及び足元近傍に送風を行うバイレベルモードでは、乗員の顔近傍に臨むベント吹出口からの送風温度と、前記乗員の足元近傍への送風温度との温度差を大きく確保することが理想的であるが、空調ケース内に設けられた通路及び空気の流通状態を切り換えるための切換ドア等のレイアウトの関係によって、車室内における乗員の顔近傍への送風温度と足元近傍への送風温度との温度差を大きく確保することが困難である。
【0006】
また、車室内において乗員の足元近傍及びフロントウィンドウの曇りを除去するためにデフロスタ吹出口から前記フロントウィンドウ近傍へと送風を行うヒートデフモードでは、乗員の足元近傍への送風温度と、フロントウィンドウ近傍への送風温度を均等にすることが求められているが、加熱手段(熱交換器)によって加熱された空気が、前記乗員の足元近傍に送風する通路へと比較的流れやすく、一方、冷却手段(熱交換器)によって冷却され、前記加熱手段を通過しない空気は、デフロスタ吹出口へと流れやすい配置となっている。そのため、加熱手段によって加熱された温風と、冷却手段によって冷却された冷風との混合が不十分なまま、乗員の足元近傍及びフロントウィンドウへと送風されてしまい、その結果、乗員の足元近傍への送風温度と、フロントウィンドウ近傍への送風温度との間に温度差が生じてしまい、例えば、前記フロントウィンドウにおける曇りの除去を十分に行うことができない。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、バイレベルモードにおいて、乗員の顔及び足元近傍への送風温度の差を大きく確保しつつ、ヒートデフモードにおいて、前記乗員の足元近傍への送風とフロントウィンドウ近傍への送風との間の温度差を小さくすることができ、しかも、前記車室内に送風する送風ダクトを限られたスペース内で効率的に搭載することが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、空気の流通する複数の通路を有するケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、前記空気を熱交換する熱交換器と、前記通路における前記空気の流通状態を切り換えるダンパ機構とを有する車両用空調装置において、
前記ケーシングには、車室内においてフロントウィンドウ近傍に開口したデフロスタ吹出口へ前記空気の送風を行うデフロスタ開口部と、
前記車室内において乗員の顔近傍に開口したベント吹出口に前記空気を送風するベント開口部と、
前記デフロスタ開口部と前記デフロスタ吹出口とを接続する第1送風ダクトと、
前記ベント開口部と前記ベント吹出口とを接続する第2送風ダクトと、
を備え、
前記ケーシングにおいて、前記デフロスタ開口部を前記ベント開口部に対して車両後方側に配置すると共に、前記第1送風ダクトの下流側を前記車両前方側に向かって延在させ、且つ、前記第2送風ダクトの下流側を前記車両後方側に向かって延在させることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、複数の通路を有したケーシングにおいて、ベント開口部を、デフロスタ開口部に対して車両前方側に設けると共に、前記デフロスタ開口部と前記デフロスタ吹出口とを第1送風ダクトで接続し、その下流側を前記車両前方側に向かって延在させ、一方、前記ベント開口部と前記ベント吹出口とを第2送風ダクトで接続し、その下流側を車両後方側に向かって延在させている。
【0010】
また、第1送風ダクトは、デフロスタ開口部に接続された部位の下流側において二股状に分岐し、該第1送風ダクトにおける一方の分岐部位と他方の分岐部位との間に、前記第2送風ダクトを配置するとよい。
【0011】
さらに、第2送風ダクトは、ベント開口部における車室内の中央部近傍に送風するセンターベント部に接続されたセンター用ダクトと、前記ベント開口部における前記車室内の運転席側及び助手席側に送風する一組のサイドベント部に接続されたサイド用ダクトと、を備え、前記第1送風ダクトの分岐部位の間に配置される第2送風ダクトを、前記センター用ダクトとするとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0013】
すなわち、ベント開口部を、ケーシングにおいてデフロスタ開口部に対して車両前方側に設けると共に、前記デフロスタ開口部と前記デフロスタ吹出口とを第1送風ダクトで接続し、その下流側を前記車両前方側に向かって延在させ、一方、前記ベント開口部と前記ベント吹出口とを第2送風ダクトで接続し、その下流側を車両後方側に向かって延在させることにより、バイレベルモードでは熱交換器からベント開口部に至るまでの通路の距離を短くすることができ、前記熱交換器で冷却された冷風を迅速にベント開口部へと供給することができるため、該熱交換器によって加熱された温風との間で温度差を大きく確保することができる。一方、ヒートデフモードでは、冷風と温風とがケーシング内で混合してから、デフロスタ開口部とヒート開口部に至るまでの通路の距離を長くすることで、前記冷風と温風とが混合するのに十分な距離を確保しつつ、乗員の足元近傍への送風温度と、フロントウィンドウ近傍への送風温度との温度差を小さくすることができる。その結果、車室内における乗員の快適性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の外観斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】第1分割ケーシングを内側から見た側面図である。
【図5】第2分割ケーシングを内側から見た側面図である。
【図6】第1分割ケーシングと連結されてエバポレータを固定する連結ダクト(エバポホルダ)の拡大斜視図である。
【図7】第2分割ケーシングの内壁面に設けられたエバポホルダの拡大斜視図である。
【図8】第1分割ケーシングの内壁面に保持されたエバポレータを示す一部省略平面図である。
【図9】図8のエバポレータの部分拡大側面図である。
【図10】第1分割ケーシングの内壁面に設けられたヒータホルダの拡大斜視図である。
【図11】エバポレータの平面図である。
【図12】図11のエバポレータがエバポホルダに保持され、且つ、第1及び第2仕切部材が装着された状態を示す拡大側面図である。
【図13】図12に示す第1及び第2仕切部材の一部省略斜視図である。
【図14】第1仕切部材と第2仕切部材とが組み合わされる途中の状態を示す一部省略斜視図である。
【図15】図14に示す第1仕切部材と第2仕切部材とが完全に組み合わされたエバポレータ装着状態を示す一部省略斜視図である。
【図16】第1仕切部材と第2仕切部材とがエバポレータに装着された状態の一部省略断面図である。
【図17】第1仕切部材と第2仕切部材とがエバポレータに装着された状態の一部断面正面図である。
【図18】図17の第1及び第2仕切部材の代わりに、仕切板が装着された変形例に係るエバポレータの平面図である。
【図19】図18の仕切板にチューブが保持された状態を示す一部省略拡大斜視図である。
【図20】図20Aは、エバポレータの製造工程において、仕切板の挿通孔にチューブが挿通された仮組み状態を示し、図20Bは、図20Aの状態から挿通孔がチューブ側に押圧されて該チューブが保持された状態を示す断面図である。
【図21】ヒータコアの平面図である。
【図22】図21に示すヒータコアの概略断面図である。
【図23】図21のXXIII−XXIII線に沿った断面図である。
【図24】図24Aは、図21のヒータコアの側面図であり、図24Bは、ヒータコアを構成するバッフルプレートとハウジングとの加締部位を示す一部省略拡大断面図である。
【図25】断面十字状のバッフルプレートを用いた変形例に係るヒータコアの概略断面図である。
【図26】図26Aは、図25のXXVIA−XXVIA線に沿った一部省略断面図であり、図26Bは、図25のXXVIB−XXVIB線に沿った一部省略断面図である。
【図27】ケーシング内に設けられたセンタープレート及び分離パネルを示す一部切欠斜視図である。
【図28】第1及び第2分割ケーシングからカバーを取り外し、デフロスタダンパ及びサブデフロスタダンパを取り出した状態を示す分解斜視図である。
【図29】第1ベント吹出口及びデフロスタ吹出口にベントダクト及びデフロスタダクトがそれぞれ接続された状態を示す車両用空調装置の概略斜視図である。
【図30】図29の車両用空調装置を示す平面図である。
【図31】ケーシングの下部に形成された第1リア通路と第3リア通路近傍を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号400は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。なお、この車両用空調装置400は、例えば、その進行方向に沿って3列の座席を有した車両に搭載され、以下、前記車両の車室内において1列目の座席を前席、2列目の座席を中間席、3列目の座席を後席として説明する。
【0016】
また、車両用空調装置400は、図2に示される右側(矢印A方向)が車両の前方側となり、左側(矢印B方向)が該車両の後方側となるように搭載されるため、以下、矢印A方向を前方とし、矢印B方向を後方として説明する。
【0017】
さらに、図2は、車両用空調装置400の幅方向に沿った中央部(図1中、II−II線)における断面図であり、図3は、前記中央部から若干だけずれた第2分割ケーシング418側となる部位(図1中、III−III線)の断面図である。
【0018】
なお、以下の実施の形態では、ケーシングの内部に複数のダンパ等の回動部材が設けられ、これらの回動部材はモータ等の回動駆動源によって作動する。ここでは簡略化のために、これらの回動駆動源についての図示及び説明は省略する。
【0019】
この車両用空調装置400は、図1〜図5に示されるように、空気の各通路を構成するケーシング402と、前記ケーシング402の側部に連結ダクト404を介して連結され、車両における前席に送風するための第1ブロアユニット406と、前記ケーシング402の内部に配設され、前記空気を冷却するエバポレータ(熱交換器)408と、該空気を加熱するヒータコア(熱交換器)410と、前記ケーシング402の下部に連結され、車両の中間席、後席に送風するための第2ブロアユニット412と、前記各通路内を流通する空気の流れを切り換えるダンパ機構414とを含む。
【0020】
ケーシング402は、略対称形状の第1及び第2分割ケーシング416、418と、該第1分割ケーシング416と第2分割ケーシング418との間に設けられたセンタープレート420(図27参照)とから構成され、該第1分割ケーシング416の下側部には、連結ダクト404が連結されて第1ブロアユニット406から第1取入口422を介して空気が供給される。前記第1取入口422は、エバポレータ408の上流側に設けられた第1フロント通路(第1通路)424と連通している。図1から容易に諒解される通り、前記第2ブロアユニット412はケーシング402を構成する略対称形状の第1分割ケーシング416と第2分割ケーシング418の接合部位、すなわちケーシング402の中央部に膨出して配設されている。また、前記第2ブロアユニット412は図示しない車両のセンターコンソールの内部に位置することになる。
【0021】
第1及び第2分割ケーシング416、418には、図2〜図5に示されるように、断面長方形状のエバポレータ408を保持するためのエバポホルダ426が形成される。エバポホルダ426は、第1取入口422に臨むケーシング402の下方に設けられ、該ケーシング402の前方側(矢印A方向)に設けられエバポレータ408の一端部を保持する第1保持部428と、前記ケーシング402の後方側(矢印B方向)に設けられ、該エバポレータ408の他端部を保持する第2保持部430とを有する。この第1及び第2保持部428、430は、互いに対向して開口した断面U字状に形成され、ケーシング402の幅方向に沿って第1分割ケーシング416の内壁面から第2分割ケーシング418の内壁面まで延在している。
【0022】
また、第1保持部428は、第2保持部430に対向し、且つ、該第2保持部430に対して下方に設けられているため、該第1及び第2保持部428、430によって保持されるエバポレータ408は、車両の前方(矢印A方向)側となる一端部が他端部に対して下方となるように所定角度だけ傾斜して配設される。
【0023】
第1分割ケーシング416の内壁面には、図6に示されるように、第1保持部428と第2保持部430の間となる位置に、該内壁面より所定高さだけ突出した第1リブ432が形成され、前記第1リブ432がエバポレータ408の一側面に当接する。一方、図7に示されるように、第2分割ケーシング418の内壁面には、第1リブ432と対向し、第1保持部428と第2保持部430の間となる位置に、該内壁面より所定高さだけ突出した第2リブ434が形成され、前記エバポレータ408における他側面に当接する。
【0024】
第1及び第2リブ432、434は、それぞれ十字状に形成され、第1保持部428から第2保持部430まで延在する水平リブ432a、434aが、エバポレータ408を厚さ方向に2分割した略中央に当接する。一方、前記水平リブ432a、434aと直交する鉛直リブ432b、434bが、前記エバポレータ408において第1ブロアユニット406から供給される空気の通過する第1冷却部436と、第2ブロアユニット412から供給される空気の通過する第2冷却部438との境界部分に当接する(図8参照)。この鉛直リブ432b、434bは、第1フロント通路424及び第1リア通路570からエバポレータ408へと供給される空気の送風方向と略平行に設けられる。換言すれば、水平リブ432a、434aは、第1フロント通路424及び第1リア通路570に臨み、空気の供給される上流側となるエバポレータ408の下面(供給面)と略平行に形成される。また、第1リブ432は、第2リブ434と比較して第1分割ケーシング416の内壁面からの高さが高く設定され、水平リブ432a及び鉛直リブ432bが前記内壁面に対して直交するように形成される。
【0025】
すなわち、第1及び第2リブ432、434の水平リブ432a、434aをエバポレータ408の側面に当接させることにより、第1及び第2分割ケーシング416、418の内壁面とエバポレータ408との間を通じて空気が下流側へと流通してしまうことを防止する。一方、第1及び第2リブ432、434の鉛直リブ432b、434bを、第1冷却部436と第2冷却部438との境界部分に当接させることにより、第1ブロアユニット406から供給された空気が、第2ブロアユニット412の停止時に第2冷却部438側に流通することを防止し、反対に、前記第2ブロアユニット412から供給された空気が、第1ブロアユニット406の停止時に第1冷却部436側に流通することを防止する。
【0026】
さらに、第1分割ケーシング416の内壁面には、鉛直リブ432bと略平行な複数の補強用リブ(補強部)440が形成される。補強用リブ440は、水平リブ432aの上面及び下面側にそれぞれ設けられ、内壁面から離間する方向に向かって先細となる断面略三角形状に形成される(図6及び図9参照)。
【0027】
また、第1及び第2分割ケーシング416、418には、図2及び図3に示されるように、断面長方形状のヒータを保持するためのヒータホルダ442が形成される。ヒータホルダ442は、エバポホルダ426の上方に設けられ、該ケーシング402の前方側(矢印A方向)に設けられヒータコア410の一端部を保持する第1保持部444と、前記ケーシング402の後方側(矢印B方向)に設けられ、該ヒータコア410の他端部を保持する第2保持部446とを有する。なお、第1保持部444は、ヒータコア410の一端部を覆うように形成され、第2保持部446は、前記ヒータコア410の他端部の下半分のみを覆うように形成される。そして、第1及び第2保持部444、446は、ケーシング402の幅方向に沿って第1分割ケーシング416の内壁面から第2分割ケーシング418の内壁面まで延在している。
【0028】
また、第1保持部444は、第2保持部446と対向し、且つ、前記第2保持部446に対して下方に設けられているため、該第1及び第2保持部444、446によって保持されるヒータコア410は、車両の前方(矢印A方向)側となる一端部が他端部に対して下方となるように所定角度だけ傾斜して配設される。
【0029】
さらに、図10に示されるように、第1分割ケーシング416の内壁面には、第1保持部444と第2保持部446の間となる位置に、該内壁面より所定高さだけ突出したリブ448が形成され、前記リブ448がヒータコア410の一側面に当接する。このリブ448は、略十字状に形成され、第1保持部444から第2保持部446まで延在する水平リブ448aが、ヒータコア410を厚さ方向に2分割する略中央に当接する。一方、前記水平リブ448aと直交する鉛直リブ448bが、前記ヒータコア410において第1ブロアユニット406から供給される空気の通過する第1加熱部450と、第2ブロアユニット412から供給される空気の通過する第2加熱部452との境界部分に当接する(図4参照)。なお、第2分割ケーシング418は、ヒータコア410に臨む部位が開口している。
【0030】
すなわち、リブ448の水平リブ448aをヒータコア410の側面に当接させることにより、第1分割ケーシング416の内壁面とヒータコア410との間を通じて空気が下流側へと流通してしまうことを防止する。同時に、鉛直リブ448bを、第1加熱部450と第2加熱部452との境界部分に当接させることにより、第1ブロアユニット406から供給された空気が、第2ブロアユニット412の停止時に第2加熱部452側に流通することを防止し、反対に、前記第2ブロアユニット412から供給された空気が、第1ブロアユニット406の停止時に第1加熱部450側に流通することを防止する。
【0031】
また、ケーシング402の底部には、図2〜図5に示されるように、第1フロント通路424に臨み、第1ドレンポート454a、454bに隣接した前方側(矢印A方向)に第1ガイドパネル456が形成される。この第1ガイドパネル456は、第1フロント通路424の延在方向に沿って立設し、その上端部が、エバポレータ408の下面近傍まで延在すると共に、後述するエバポレータ408を保持するためのエバポホルダ426から離間する方向(矢印B方向)に湾曲している。
【0032】
これにより、エバポレータ408は、例えば、内部を通過する空気を冷却する際に凝縮水が発生するが、その一端部側が下方となるように所定角度傾斜して設けられているため、前記エバポレータ408内で発生した水分を、該エバポレータ408の下面に沿って一端部側、すなわち、車両の前方側(矢印A方向)へと移動させることができる。
【0033】
エバポレータ408は、図11に示されるように、例えば、アルミニウム等の薄板からチューブ458a、458bが形成され、積層されたチューブ458a、458bの間に蛇行するように波状に折曲されたフィン460がそれぞれ設けられる。このフィン460には、該フィン460の平面に対して所定角度傾斜するように切り欠かれた複数のルーバー462が形成され、チューブ458a、458bの内部に冷媒を流通させることにより、前記ルーバー462を通じてフィン460の間を流通する空気が前記冷媒で冷却されて下流側に冷風として供給される。なお、このエバポレータ408では、その厚さ方向に一対のチューブ458a、458bが並設されて2層に配置されている。
【0034】
また、エバポレータ408は、第1ブロアユニット406から供給される空気を冷却する第1冷却部436と、第2ブロアユニット412から供給される空気を冷却する第2冷却部438とを有する。そして、第1冷却部436がケーシング402の前方(矢印A方向)となるように配置されると共に、前記第2冷却部438が前記ケーシング402の後方(矢印B方向)となるように配置される。
【0035】
この第1冷却部436と第2冷却部438との境界部位には、図16に示されるように、該第1冷却部436と第2冷却部438との間の空気の連通を遮断する一組の第1及び第2仕切部材464、466が装着される。第1及び第2仕切部材464、466は、図13〜図15に示されるように、例えば、樹脂製材料から形成され、一直線状に形成されたベース部468a、468bと、該ベース部468a、468bの下面から所定長さで突出した複数の封止部470a、470bとを備え、前記封止部470a、470bの長さ方向に沿った中央部には、該長さ方向と直交方向に突出した突部472a、472bが形成される。この封止部470a、470bは、同一長さで形成され、ベース部468a、468bに沿って互いに等間隔離間するように設けられる。また、突部472a、472bは、封止部470a、470bに対して同一方向に突出している。
【0036】
そして、図12に示されるように、第1仕切部材464が、上流側となるエバポレータ408の下面側から装着され、その封止部470aがエバポレータ408における積層されたチューブ458a、458bの間となるように挿入されると共にベース部468aが前記下面に当接する。一方、第2仕切部材466は、下流側となるエバポレータ408の上面側から装着され、その封止部470bが前記チューブ458a、458bの間となるように前記第1仕切部材464の反対側から挿入され、ベース部468bが前記上面に当接する。
【0037】
この際、第1仕切部材464の封止部470aと第2仕切部材466の封止部470bとが、図16に示されるように、ベース部468a、468bの延在方向(矢印C方向)に沿ってオフセットし、且つ、該チューブ458a、458bの延在方向に重なり合う。この互いに重なり合った2本の封止部470a、470bによって同一層内で隣接するチューブ458a、458bの間がそれぞれ閉塞される。次に、第1仕切部材464の突部472aと、第2仕切部材466の突部472bが、隣り合うチューブ458aとチューブ458bとの間に挿入されるよう、前記第1仕切部材464と第2仕切部材466をベース468a、468bの延在方向(矢印C方向)に沿ってそれぞれスライドさせる。
【0038】
これにより、第1仕切部材464の突部472aと第2仕切部材466の突部472bが、チューブ458a、458bの延在方向に重なり合って、上面側に設けられた一方の458aと下面側に設けられたチューブ458bとの間に生じる間隙を閉塞する(図17参照)。
【0039】
以上により、第1冷却部436と第2冷却部438との間に装着された第1及び第2仕切部材464、466によって2層に設けられたチューブ458a、458bの間を通じた空気の流通が遮断されるため、前記第1冷却部436と第2冷却部438との間での空気の流通が阻止される(図16及び図17参照)。
【0040】
なお、第1及び第2仕切部材464、466は、エバポレータ408に装着された状態で、そのベース部468a、468bがケーシング402に形成されたベースホルダ578、588にそれぞれ保持される(図12参照)。
【0041】
また、エバポレータ408における第1冷却部436と第2冷却部438との間の空気の連通を遮断する手段は、上述した第1及び第2仕切部材464、466に限定されるものではなく、例えば、図18に示されるように、前記第1及び第2仕切部材464、466の代わりに、プレート状の仕切板474を境界部位に設けるようにしてもよい。
【0042】
この仕切板474は、図18及び図19に示されるように、チューブ458a、458bの挿通される複数の挿通孔476を有し、この挿通孔476の開口部には、該挿通孔476の中心に向かって仕切板474から所定角度傾斜した押え部478が形成される。押え部478は、挿通孔476を中心として断面ハ字状に形成され、仕切板474との接合部位を支点として該挿通孔476の半径方向に傾動自在に弾性を有している。
【0043】
そして、例えば、第1冷却部436と第2冷却部438との境界となるフィン460aに、切れ目を設け、仕切板474を前記フィン460aの間に挿入した後、前記仕切板474の挿通孔476にそれぞれチューブ458a、458bを挿通させる(図20A参照)。このように仮組みされた状態で、図20Bに示されるように、複数のチューブ458a、458bが互いに接近する方向へと左右からそれぞれ押圧力Pを付与し、加熱しながら溶接(例えば、ロウ付け)を行うことにより前記チューブ458a、458b、フィン460a及び仕切板474が互いに接合されてエバポレータ408が製造される(図18参照)。
【0044】
この際、仕切板474の押え部478が、押圧力Pによってチューブ458a、458bの側面に接触し、さらに、その弾性力によって前記チューブ458a、458bが保持されるため、前記仕切板474とチューブ458a、458bとを互いに位置決めした状態とすることができ、この位置決めされた状態で溶接を行うことにより、例えば、溶接後に熱収縮が生じて前記仕切板474とチューブ458a、458bとの間に隙間が生じてしまうことが防止される。
【0045】
一方、エバポレータ408の下流側には、図2に示されるように、第1冷却部436を通過した空気の供給される第2フロント通路482が形成され、該第2フロント通路482の上方には第3フロント通路484と第4フロント通路486とが分岐するように形成される。また、第2フロント通路482には、第3フロント通路484及び第4フロント通路486の分岐部に臨むように第1エアミックスダンパ488が回動自在に設けられる。
【0046】
そして、第1エアミックスダンパ488を回動させることによってエバポレータ408を通過した冷風の第3フロント通路484及び第4フロント通路486への送風状態及び送風量を調整する。第3フロント通路484は、ケーシング402における前方側(矢印A方向)、第4フロント通路486が後方側(矢印B方向)となるように配置され、該第4フロント通路486の下流側にはヒータコア410が配設される。
【0047】
この第3フロント通路484の上流側には、第2フロント通路482に臨む下方に、クールベントダンパ490が設けられ、前記第2フロント通路482と第3フロント通路484との連通状態を切り換えている。すなわち、クールベントダンパ490は、エバポレータ408近傍に配置されているため、その切換作用下に前記エバポレータ408によって冷却された冷風を直接的に第3フロント通路484へと供給するために設けられる。
【0048】
また、第3フロント通路484は、上方に向かって延在し、その下流側となる上部にはベント開口部492が開口すると共に、ベントダンパ494が回動自在に設けられている。ベントダンパ494は、第3フロント通路484を流通する空気がベント開口部492、後述する第6フロント通路520へ送風される際の送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整可能に設けられている。
【0049】
ヒータコア410は、第1分割ケーシング416と第2分割ケーシング418との間に跨るように配置され、車両の前方(矢印A方向)側となる一端部が、後方側となる他端部に対して下方となるよう所定角度だけ傾斜して配設されると共に、第1ブロアユニット406から供給される空気を加熱する第1加熱部450と、第2ブロアユニット412から供給される空気を加熱する第2加熱部452とを有し、前記第1加熱部450がケーシング402の前方となるように配置される。
【0050】
このヒータコア410は、図21に示されるように、例えば、アルミニウム等の薄板から一対のチューブ496a、496bが形成され、積層されたチューブ496a、496bの間を蛇行するように波状に折曲されたフィン(図示せず)がそれぞれ設けられる。このフィンには、該フィンの平面に対して所定角度傾斜するように切り欠かれた複数のルーバーが形成され、チューブ496a、496bの内部に温水を流通させることにより、ルーバーを通じてフィンの間を流通する空気が前記温水によって加熱されて下流側に温風として供給される。なお、このヒータコア410は、その厚さ方向にチューブ496a、496bが並設されて2層に配置されている。
【0051】
このチューブ496a、496bの両端部には、それぞれ中空状のタンク部503a、503bが接続され、該チューブ496a、496b内を流通する温水が保持される。そして、ヒータコア410の側面となる一方のタンク部503aには、図21及び図22に示されるように、外部から温水の供給される供給配管498と、該ヒータコア410の内部を循環した前記温水が排出される排出配管500とが接続され、前記排出配管500が、ケーシング402の後方且つ上方となる角部近傍に配置され、前記供給配管498が、前記排出配管500と並列で隣接するように配置される。
【0052】
一方、このタンク部503aの内部には、断面略L字状のバッフルプレート502が設けられ、前記供給配管498及び排出配管500の延在方向(矢印E方向)に沿って所定幅で延在し、前記バッフルプレート502が、一方のチューブ496aと他方のチューブ496bとの間となるように配設される。そして、図23に示されるように、バッフルプレート502によって一対のチューブ496a、496bがタンク部503a内において分離される。
【0053】
バッフルプレート502は、図22に示されるように、ヒータコア410の厚さ方向の中央部に配置される平面部504と、該平面部504の端部で直角に折曲された折曲部506とからなり、前記折曲部506が、排出配管500と供給配管498との間に配置される。
【0054】
また、バッフルプレート502は、ヒータコア410の長手方向(矢印E方向)に沿った両端部に、複数の加締用凸部507(図24A参照)がそれぞれ設けられ、タンク部503a、503bの側面に形成された孔部に挿入されて外部に突出した後、その突出部位が図示しない工具等によって押し潰される(図24B参照)。なお、加締用凸部507は、断面略長方形状に形成され、平面部504及び折曲部506の側面に互いに所定間隔離間するように設けられると共に、前記平面部504に臨む孔部が、タンク部503aにおける厚さ方向の中央部に設けられ、且つ、折曲部506に臨む孔部が、供給配管498と排出配管500との間となる位置に設けられている(図24A参照)。
【0055】
これにより、バッフルプレート502が、ヒータコア410に設けられたタンク部503aに対して確実に固定される。
【0056】
そして、供給配管498から供給された温水が、一方のタンク部503aを介して上側に設けられた一方のチューブ496aへと供給され、該チューブ496aを通じてヒータコア410の他端部側へと流通した後、前記ヒータコア410の他端部に設けられたタンク部503bの内部で反転し、下側に設けられた他方のチューブ496bを通じてヒータコア410の一端部側へとバッフルプレート502の下面側に沿って流通して排出配管500から排出される。
【0057】
この際、排出配管500が、所定角度傾斜して設けられたヒータコア410の上方角部411(後方)に接続されているため、該ヒータコア410内でエア溜りが生じた場合でも、該エア溜りが発生する上方角部411に接続された排出配管500を通じてエアが確実に外部へと排出される。換言すれば、排出配管500は、所定角度傾斜するようにケーシング402内に配置されたヒータコア410において最も上部となる位置に接続されている。
【0058】
また、ヒータコア410の内部に設けられるバッフルプレート502は、上述した断面略L字状のものに限定されることはなく、例えば、図25に示されるように、ヒータコア410aに断面十字状のバッフルプレート508を用いるようにしてもよい。
【0059】
このバッフルプレート508は、図25に示されるように、平面部510と、該平面部510に対して直角に交差した鉛直部512とを有し、前記平面部510が、前記ヒータコア410aの厚さ方向の中央部に配置されると共に、前記鉛直部512が、排出配管500と供給配管498との間に配置される。
【0060】
また、図26Aに示されるように、ヒータコア410aの下面側となる鉛直部512には、循環した温水が流通可能な流通孔512aが開口し、さらに、図26Bに示されるように、排出配管500に臨む平面部510には前記温水が流通可能な流通孔510aが開口している。そして、このバッフルプレート508を採用したヒータコア410aでは、供給配管498から供給された温水が、一方のタンク部503aの内部に供給され、バッフルプレート508の上面側に沿って流通して一方のチューブ(図示せず)へと供給される。そして、ヒータコア410aの他端部側に設けられたタンク部503bで反転した後、前記バッフルプレート508の下面側に沿って流通し、鉛直部512の流通孔512aから平面部510の流通孔510aへと流通した後、タンク部503aを介して排出配管500から排出される。
【0061】
この際にも、排出配管500が、所定角度傾斜して設けられたヒータコア410aの上方角部411a(後方)に接続されているため、該ヒータコア410a内でエア溜りが生じた場合でも、該エア溜りが発生する上方角部411aに接続された排出配管500を通じてエアが確実に外部へと排出される。
【0062】
図3に示されるように、このヒータコア410の下流側には、第5フロント通路514が形成され、該第5フロント通路514が前方(矢印A方向)に向かって延在し、第3フロント通路484と合流する部位に温度コントロールダンパ516が設けられると共に、ヒータコア410に臨む上方にはサブデフロスタダンパ518a、518bが設けられている。温度コントロールダンパ516の回動作用下に第5フロント通路514と第3フロント通路484との連通状態を切り換えると共に、前記第5フロント通路514から第3フロント通路484へと供給される温風の送風方向を偏向させる。
【0063】
一方、サブデフロスタダンパ518a、518bは、第5フロント通路514の上方に形成された第6フロント通路520との連通状態を切換可能に設けられ、該サブデフロスタダンパ518a、518bを回動させて前記第5フロント通路514と第6フロント通路520とを連通させること、すなわち該第5フロント通路514から該第6フロント通路520までの流路が短縮されることにより、流路の通気抵抗が減少した状態で、ヒータコア410で加熱された温風を、第3フロント通路484を流通させることなく直接的に前記第6フロント通路520へと供給することができる。
【0064】
そのため、乗員の足元近傍に送風するヒートモードや、車両のフロントウィンドウ近傍に送風するデフロスタモードが選択された場合に、送風量を増加させて急速に加温することができる。
【0065】
換言すれば、第1ブロアユニット406の回転を増大させることなく、ヒートモード、デフロスタモード時における送風量を増加させることが可能である。
【0066】
第6フロント通路520は、前方に設けられた開口部を通じて第3フロント通路484の下流側と連通すると共に、後方に設けられた開口部を通じて後述する第7フロント通路522と連通している。この第6フロント通路520の上方には、デフロスタ開口部524が開口し、該デフロスタ開口部524に臨むように一組のデフロスタダンパ526a、526bが回動自在に設けられる。
【0067】
デフロスタダンパ526a、526bは、第6フロント通路520へ供給された空気が、デフロスタ開口部524から送風される際の送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整可能に設けられている。
【0068】
また、第6フロント通路520の下流側には、バタフライ弁からなる一組のヒートダンパ528が回動自在に設けられ(図2参照)、その回動作用下に第6フロント通路520から供給される空気が、後述する第7及び第8フロント通路522、540やデフロスタ開口部524へ送風される際の送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整可能に設けられている。
【0069】
また、第6フロント通路520は、図27に示されるように、ケーシング402における幅方向の中央に設けられたセンタープレート420で2分割され、さらに、第1及び第2分割ケーシング416、418のそれぞれの幅方向の略中央に設けられた一組の分割パネル530a、530bでそれぞれ分割される。そして、第6フロント通路520において、センタープレート420と分割パネル530a、530bとの間に一組のヒートダンパ528が設けられ、該センタープレート420と分割パネル530a、530bとの間を流通する空気が、ヒートダンパ528の回動作用下に後述する第1ヒート通路538へ導出される。
【0070】
一方、分割パネル530a、530bと第1及び第2分割ケーシング416、418の内壁面との間にデフロスタダンパ526a、526bがそれぞれ設けられ、該分割パネル530a、530bと第1及び第2分割ケーシング416、418の内壁面との間を流通する空気が、その回動作用下に前記デフロスタ開口部524のサイド部534からそれぞれ導出される。
【0071】
すなわち、第6フロント通路520は、一組の分割パネル530a、530bとセンタープレート420によってケーシング402内で4分割されており、デフロスタ開口部524から送風される送風状態及び送風量を、デフロスタダンパ526a、526bによって切り換えている。
【0072】
このデフロスタダンパ526a、526b及びサブデフロスタダンパ518a、518bは、図28に示されるように、第1及び第2分割ケーシング416、418において、前記デフロスタダンパ526a、526b及びサブデフロスタダンパ518a、518bの側方に設けられたカバー536a、536bをそれぞれ取り外すことにより、その交換又は回動開度の調整等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0073】
第7フロント通路522は、車室内における前席の乗員の足元近傍に送風するための第1ヒート通路538を介して第1ヒート吹出口(図示せず)に連通し、第8フロント通路540は、下方に向かって湾曲するように延在し、第2ブロアユニット412の上方において、前記車室内における中間席の乗員の足元近傍に送風するための図示しない第2ヒート通路を介して第2ヒート吹出口(図示せず)に連通する。
【0074】
このケーシング402において、ベント開口部492及びデフロスタ開口部524が、該ケーシング402の上方に開口し、且つ、前記ベント開口部492が前方側(矢印A方向)、前記デフロスタ開口部524が、該ベント開口部492に対して後方(矢印B方向)となるケーシング402の略中央に配置される(図3参照)。
【0075】
このベント開口部492には、図29及び図30に示されるように、車両の後方側(矢印B方向)に向かって湾曲するように延在し、該ベント開口部492から車室内における前席の乗員の顔近傍に臨むベント吹出口(図示せず)へと混合風を供給するベントダクト(第2送風ダクト)544が接続される。すなわち、ベントダクト544は、ケーシング402に形成されたベント開口部492と車室内に設けられたベント吹出口(図示せず)とを接続するように設けられる。ベントダクト544を構成する一組のセンター用ベントダクト546が、ベント開口部492の中央部に接続されて前記前席の中央へと送風すると共に、該ベント開口部492の両端に接続された一組のサイド用ベントダクト548が、前記前席における左右方向に延在して運転席及び助手席側へと送風する。
【0076】
一方、デフロスタ開口部524には、車両の前方側(矢印A方向)に向かって湾曲するように延在し、該デフロスタ開口部524から車室内におけるフロントウィンドウ近傍に臨むデフロスタ吹出口(図示せず)へと混合風を供給するデフロスタダクト(第1送風ダクト)550が接続される。すなわち、デフロスタダクト550は、ケーシング402に形成されたデフロスタ開口部524と車室内に設けられたデフロスタ吹出口(図示せず)とを接続するように設けられる。デフロスタダクト550は、デフロスタ開口部524の上方に延在するセンター用ベントダクト546を回避するように二股状に分岐し、図示しないフロントウィンドウまで延在するセンター用デフロスタダクト552と、該センター用デフロスタダクト552と直交してサイド用ベントダクト548と共に左右方向に延在するサイド用デフロスタダクト554から構成される。これらによって、それぞれのダクトを収納する部位が、その体積を増やすことがないため、車両用空調装置400の小型化に適する。なお、前記センター用デフロスタダクト552は、サイド用ベントダクト548の上方を跨ぐように前方側(矢印A方向)に延在している。
【0077】
すなわち、前方側に設けられたベント開口部492にベントダクト544を接続し、車室内側となる後方(矢印B方向)に向かって延在させると共に、後方側に設けられたデフロスタ開口部524にデフロスタダクト550を接続し、該ベントダクト544と交差させるようにフロントウィンドウ側となる前方(矢印A方向)に向かって延在させている。
【0078】
このように、ベント開口部492を、ケーシング402の前方側に配置することにより、エバポレータ408の下流側と該ベント開口部492とを連通する第3フロント通路484が、上方を指向して直線的に配設することができると共に、デフロスタ開口部524をヒータコア410の上方に配置することができる。
【0079】
この場合、デフロスタダクト550を構成するセンター用デフロスタダクト552及びサイド用デフロスタダクト554が、デフロスタ開口部524のサイド部534からそれぞれ延在することで、センター用ベントダクト546を、デフロスタ開口部524より前方(矢印A方向)に設けられたベント開口部492から、後方(矢印B方向)を指向して延在させることができる。
【0080】
第1ブロアユニット406は、外気を導入するためのダクト(図示せず)が接続される外気取入口556及び内気を導入するための内気取入口558が配置され、内外気の切り換えを行うインテークダンパ(図示せず)と、取り込んだ空気をケーシング402内へと供給する第1ブロアファン(第1送風機)560とを有し、前記第1ブロアファン560の収容されるブロアケース562が、第1取入口422に接続された連結ダクト404を介してケーシング402の内部と連通している。なお、第1ブロアファン560は、図示しない回転制御装置の制御作用下に駆動するファンモータ(図示せず)によって回転制御される。
【0081】
一方、ケーシング402の下部には、図2及び図3に示されるように、第1取入口422と直交した後方側に第2ブロアユニット412から空気の供給される第2取入口568が形成される。この第2取入口568は、エバポレータ408の上流側となる位置に開口し、第1リア通路(第2通路)570と連通すると共に、前記第1リア通路570と共に第1分離壁572を介して第1取入口422に隣接して形成される。
【0082】
第2ブロアユニット412は、取り込んだ空気をケーシング402内へと供給する第2ブロアファン(第2送風機)574を有し、前記第2ブロアファン574の収容されるブロアケース576がケーシング402の第2取入口568に連結され、第1リア通路570と連通している。なお、第2ブロアファン574は、第1ブロアファン560と同様に、図示しない回転制御装置の制御作用下に駆動するファンモータ(図示せず)によって回転制御される。
【0083】
この第1リア通路570の下流側には、第2冷却部438が第1リア通路570に臨むようにエバポレータ408が設けられ、該第1リア通路570と第1フロント通路424との間に形成された第1分離壁572が、前記エバポレータ408に装着された第1及び第2仕切部材464、466まで延在し、その端部に設けられたベースホルダ578に前記第1仕切部材464が保持される。
【0084】
すなわち、第1分離壁572が、エバポレータ408に装着された第1及び第2仕切部材464、466まで延在しているため、第1リア通路570を通じてエバポレータ408へと流通する空気が、第1フロント通路424を通じて前記エバポレータ408へと流通する空気と混じることが回避される。
【0085】
また、第1リア通路570には、第1分離壁572と所定間隔離間し、エバポレータ408から排出される水分をケーシング402の底部へとガイドする第2ガイドパネル580が形成される。この第2ガイドパネル580は、上端部が第1分離壁572に設けられたベースホルダ578近傍まで延在し、該ベースホルダ578から所定間隔離間するように後方側に湾曲している(図7参照)。
【0086】
そして、エバポレータ408の第2冷却部438で発生した水分が、該エバポレータ408の下面に沿って前方側(矢印A方向)へと流れ、第1仕切部材464及びベースホルダ578に当たって溜まった場合、若しくは、前記水分が第2ガイドパネル580の上端部に接触した際、前記第2ガイドパネル580に沿って下方へと流れるように導かれる。この水分は、第1分離壁572と第2ガイドパネル580との間に設けられた第2ドレンポート582を通じてケーシング402の外部に排出される。この場合、第2ガイドパネル580の上端部が、ベースホルダ578から所定間隔離間するように後方側(矢印B方向)に屈曲乃至湾曲していることで(図2参照)、第1仕切部材464及びベースホルダ578へ達する空気の量が軽減される。これによって、第1仕切部材464及びベースホルダ578に当たって溜まった水分が、再度第2冷却部438に付着することが防止され、しかも、第2ドレンポート582から水分を確実に排出することが可能となる。
【0087】
これにより、エバポレータ408で発生した凝縮水が、該エバポレータ408内に溜まって凍結してしまうことが防止される。
【0088】
このエバポレータ408の下流側には、エバポレータ408の第2冷却部438を通過した空気の供給される第2リア通路584が形成され、第2分離壁586によって第2フロント通路482と分離されると共に、前記第2分離壁586の端部に設けられたベースホルダ588に第2仕切部材466が保持される。すなわち、第2分離壁586が、エバポレータ408に装着された第2仕切部材466まで延在しているため、前記エバポレータ408の下流側においても、第1リア通路570を通じてエバポレータ408の第2冷却部438へ流通した空気と、第1フロント通路424を通じて前記エバポレータ408の第1冷却部436へと流通した空気とが互いに混じることがない。
【0089】
第2リア通路584は、ヒータコア410に臨むと共に、冷風及び温風を所定の混合比率で混合して混合風とする第2エアミックスダンパ590が回動自在に設けられる。この第2エアミックスダンパ590は、第2リア通路584と、ヒータコア410の下流側に接続される第3リア通路592の上流側又は下流側との連通状態を切り換える。これにより、エバポレータ408により冷却されて第2リア通路584へ供給された冷風と、ヒータコア410によって加熱されて第3リア通路592へと流通した温風とを、第2エアミックスダンパ590の回動作用下に前記第3リア通路592内において所定の混合比率で混合して送風する。
【0090】
換言すれば、第3リア通路592が、車両における中間席及び後席に送風される冷風及び温風を混合する混合部として機能する。
【0091】
また、第3リア通路592は、図2に示されるように、ヒータコア410の他端部を迂回するように湾曲した後、下方に向かって延在し、その途中に第2リア通路584と連通した開口部が形成されると共に、該開口部から下方へと延在した下流側において、図31に示されるように、第1リア通路570を中心としてケーシング402の幅方向に分岐するように二股状に分岐し、該第1リア通路570の両側に回避するように延在した後、該第1リア通路570の下方で再び合流するように形成される。換言すれば、第3リア通路592が、第1リア通路570と交差するように形成されている。
【0092】
第3リア通路592の下流側には、図2及び図3に示されるように、第4及び第5リア通路594、596が連通し、その分岐部位にモード切換ダンパ598が回動自在に設けられ、該第3リア通路592と分岐した前記第4及び第5リア通路594、596への送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整する。
【0093】
第4及び第5リア通路594、596は、車両の後方に向かって延在し、該第4リア通路594は、車室内における中間席の乗員の顔近傍に送風するためのベント吹出口(図示せず)に連通している。一方、第5リア通路596は、中間席及び後席の乗員の足元近傍に送風するための第2及び第3ヒート吹出口(図示せず)に連通している。
【0094】
すなわち、第2ブロアユニット412から供給された空気が、第2取入口568を通じてケーシング402内へと導入され、第1〜第5リア通路570、584、592、594、596を通じて車両における中間席及び後席に臨むように配置されたベント吹出口、第2及び第3ヒート吹出口へと選択的に供給される。
【0095】
なお、上述した第2〜第7フロント通路482、484、486、514、520、522は、センタープレート420によってケーシング402の略中央部で2分割されているため、第1及び第2分割ケーシング416、418内において、前記第2〜第7フロント通路482、484、486、514、520、522がそれぞれ設けられている。
【0096】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置400は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。
【0097】
先ず、車両用空調装置400が始動されると、第1ブロアユニット406の第1ブロアファン560は回転制御装置(図示せず)の制御作用下に回転され、ダクト等を通じて取り込まれた空気(外気又は内気)が連結ダクト404を通じてケーシング402の第1フロント通路424へと供給されると同時に、第2ブロアユニット412の第2ブロアファン574が図示しない回転制御装置の制御作用下に回転されることによって取り込まれた空気(内気)がブロアケース576から第2取入口568を通じて第1リア通路570へと供給される。ここでは、第1ブロアファン560によってケーシング402内に供給される空気を第1エアとし、第2ブロアファン574によって前記ケーシング402内に供給される空気を第2エアとして説明する。
【0098】
このケーシング402内に供給された第1エア及び第2エアは、それぞれエバポレータ408の第1及び第2冷却部436、438をそれぞれ通過することによって冷却され、冷風として第1及び第2エアミックスダンパ488、590の設けられた第2フロント通路482及び第2リア通路584へとそれぞれ流通する。この場合、エバポレータ408の内部が、図示しない仕切手段によって第1冷却部436と第2冷却部438とに分離されているため、第1エアと第2エアとが混じることがない。
【0099】
ここで、例えば、車室内のコントローラ(図示せず)によって、乗員によって該乗員の顔近傍に送風を行うベントモードが選択された場合には、第2フロント通路482と第4フロント通路486との連通を第1エアミックスダンパ488によって遮断することにより、第1エア(冷風)が、第2フロント通路482から第3フロント通路484へと流通する。この場合、温度コントロールダンパ516は、第5フロント通路514と第3フロント通路484との連通を遮断している。そして、第3フロント通路484へと流通した第1エア(冷風)は、ベントダンパ494が第3フロント通路484と第6フロント通路520との連通を遮断する位置へと回動するため、開口したベント開口部492からベントダクト544を介して車室内における前席に乗車した乗員の顔近傍へと送風される。
【0100】
一方、第2エア(冷風)は、第2エアミックスダンパ590によってヒータコア410の第2加熱部452への流通が遮断されているため、第2リア通路584から第3リア通路592を通じて下流側へと流通する。そして、第2エア(冷風)は、モード切換ダンパ598の切換作用下に第4リア通路594を通じてベント吹出口(図示せず)から車室内における中間席の乗員の顔近傍へと送風される。
【0101】
また、例えば、このベントモードにおいて、急速に車室内を冷却する場合には、クールベントダンパ490は、第2フロント通路482と第3フロント通路484とを連通される。これにより、第2フロント通路482から第3フロント通路484へと流通する第1エア(冷風)の風量が増加するため、ベント開口部492からベントダクト544を介して送風される第1エアによって、車室内を急速に冷却することが可能となる。
【0102】
この場合、第5フロント通路514に供給された温風を、第3フロント通路484の冷風に対して混合する必要がないことから、温度コントロールダンパ516は、前記第3フロント通路484と略平行となるように回動させて第5フロント通路514と前記第3フロント通路484との連通を遮断する。これにより、第3フロント通路484内の冷風を温度上昇させることなくベント開口部492へと供給することができ、しかも、温度コントロールダンパ516が、第3フロント通路484内を冷風が流通する際の流路抵抗となることが抑制されるため、第1ブロアファン560の省電力化が図れると共に騒音が軽減される。
【0103】
次に、車室内のコントローラ(図示せず)によって、車室内における乗員の顔及び足元近傍に送風を行うバイレベルモードが選択された場合には、第1エアミックスダンパ488は、第3フロント通路484と第4フロント通路486との間となるような中間位置へと回動し、前記第3フロント通路484と第4フロント通路486の両方に第1エアをそれぞれ流通させる。さらに、温度コントロールダンパ516を回動させ、ヒータコア410の第1加熱部450で加熱された温風を第5フロント通路514から第3フロント通路484へと供給する。この際、ベントダンパ494は、ベント開口部492と第6フロント通路520の開口部との間となる中間位置に位置した状態にあると共に、デフロスタダンパ526a、526bによってデフロスタ開口部524が閉塞され、サブデフロスタダンパ518a、518bによって第5フロント通路514から第6フロント通路520への連通口が閉塞されて連通が遮断されている。
【0104】
ここで、第1エア(冷風)は、第2フロント通路482から第3フロント通路484へと流通する。この場合、温度コントロールダンパ516は第5フロント通路514と第3フロント通路484との連通口から離間する方向であって、その先端部が第3フロント通路484の上流側に向かうように回動する。すなわち、第1エア(冷風)は、ヒータコア410の第1加熱部450によって加熱され、第5フロント通路514を介して第3フロント通路484へと流通した第1エア(温風)と少量混合されるのみで、直線的にベント開口部492からベントダクト544を介して車室内における前席に乗車した乗員の顔近傍へと送風される。
【0105】
この場合、温度コントロールダンパ516は、その先端部が第3フロント通路484の上流側に向かうように回動し、該第3フロント通路484側に突出した状態にあるため、温風が、温度コントロールダンパ516に沿って第3フロント通路484の上流側へ案内され、冷風との混合を促進することができる。また、バタフライ弁からなるヒートダンパ528は、支軸を中心とした一端部側が第6フロント通路520側(矢印A方向)に突出し、他端部側が第7フロント通路522側(矢印B方向)に突出するように回動している。
【0106】
これにより、第3フロント通路484において冷風と混合された温風は、第6フロント通路520から第7フロント通路522を通じて第1ヒート通路538へと流通して車室内における前席の乗員の足元近傍に送風されると共に、第8フロント通路540から、第2ヒート通路(図示せず)を介して前記車室内における中間席の乗員の足元近傍へと送風される。
【0107】
なお、サブデフロスタダンパ518a、518bを回動させ、第5フロント通路514と第6フロント通路520とを連通させるようにしてもよい。これによって、ヒータコア410の第1加熱部450を通過し、第3フロント通路484を経由して第6フロント通路520へ供給された第1エアに加えて、該第6フロント通路520に対して温風の第1エアを直接供給することができる。そのため、流路の通気抵抗が低減され、第1ヒート吹出口(図示せず)から車室内における前席の乗員の足元近傍へ送風される温風の送風量を増加させることが可能となる。換言すれば、乗員の足元近傍へ送風される温風を、より安定した温度で供給することができる。
【0108】
一方、第2エア(冷風)は、第2エアミックスダンパ590が、その中間位置へと回動し、ヒータコア410の第2加熱部452へと流通すると共に、第2リア通路584と連結した第3リア通路592へと流通する。すなわち、第2エアは、エバポレータ408の第2冷却部438で冷却された後に第2エアミックスダンパ590によって分流し、その一方は冷風のまま第3リア通路592へと案内されると共に、他方はヒータコア410の第2加熱部452で加熱された後に、第3リア通路592へと送風される。これにより、第2エアは、第3リア通路592において、好適な温度へと温度調整される。
【0109】
なお、第2エアミックスダンパ590の回動角度は、車室内における乗員が所望する温度によって自在に変動可能となっており、換言すれば、第2エアミックスダンパ590は、車室内のコントローラによる入力と連動して回動可能となっている。第3リア通路592を通じて下流側へと流通した第2エアは、モード切換ダンパ598が所定の位置へと回動することにより、第4リア通路594及び第5リア通路596への流通量の比率を調整されて流通する。この結果、前記第2エアは、ベント吹出口(図示せず)から、車室内における中間席の乗員の顔近傍へと送風されるか、又は、第2ヒート吹出口及び第3ヒート吹出口(図示せず)から、車室内における中間席及び後席の乗員の足元へと送風される。ここで、モード切換ダンパ598の所定位置とは、乗員が車室内のコントローラによって入力した設定温度やモードに従うものであり、該設定温度又はモードは、前席からの入力以外に、中間席又は後席からの入力が可能であっても良い。
【0110】
次に、車室内のコントローラ(図示せず)によって、車室内において乗員の足元近傍に送風を行うヒートモードが選択された場合には、バイレベルモードの場合と比較して、第1エアミックスダンパ488が、さらに第3フロント通路484側に回動している。また、温度コントロールダンパ516が若干だけ回動し、第3フロント通路484と第5フロント通路514とが連通している。さらに、クールベントダンパ490が第2フロント通路482と第3フロント通路484との連通を遮断すると共に、ベントダンパ494及びデフロスタダンパ526a、526bがそれぞれ回動してベント開口部492及びデフロスタ開口部524を閉塞する。
【0111】
この際、上述したバイレベルモードと同様に、バタフライ弁からなるヒートダンパ528は、支軸を中心とした一端部側が第6フロント通路520側(矢印A方向)に突出し、他端部側が第7フロント通路522側(矢印B方向)に突出するように回動している。
【0112】
これにより、ヒータコア410の第1加熱部450を通過した温風の第1エアが、第5フロント通路514から第3フロント通路484へ供給される。第3フロント通路484において第2フロント通路482から流通してきた第1エア(冷風)と第1エア(温風)とが混合されて、第6フロント通路520及び第7フロント通路522を通じて後方へと流通する。そして、第1ヒート通路538に供給された後、図示しない第1ヒート開口部から車室内における前席に乗車している乗員の足元近傍に送風されるとともに、第8フロント通路540から、図示しない第2ヒート通路を介して前記車室内における中間席の乗員の足元近傍へと送風される。
【0113】
この場合、温度コントロールダンパ516は、その先端部が第3フロント通路484の上流側に向かうように回動し、該第3フロント通路484側に突出した状態にあるため、温風が、温度コントロールダンパ516に沿って第3フロント通路484の上流側へ案内され、冷風との混合を促進することができる。
【0114】
なお、サブデフロスタダンパ518a、518bを回動させ、第5フロント通路514と第6フロント通路520とを連通させるようにしてもよい。これによって、ヒータコア410の第1加熱部450を通過し、第3フロント通路484を経由して第6フロント通路520へ供給された第1エアに加えて、該第6フロント通路520に対して温風の第1エアを直接供給することができる。そのため、第1ヒート開口部(図示せず)から車室内における前席の乗員の足元近傍へ送風される温風の送風量を増加させることが可能となる。換言すれば、乗員の足元近傍へ送風される温風を、より安定した温度で供給することができる。
【0115】
一方、第2エアミックスダンパ590が、バイレベルモードの場合と比較し、ヒータコア410から離間する方向に若干回動し、ヒータコア410の第2加熱部452に直通した第2エアが、第3リア通路592を通じて下流側へと流通し、モード切換ダンパ598が第4リア通路594を遮断する位置へと回動することにより、第5リア通路596を通じて第2ヒート開口部及び第3ヒート開口部(図示せず)から、車室内における中間席及び後席の乗員の足元へと送風される。
【0116】
次に、車室内のコントローラ(図示せず)によって、車室内において乗員の足元近傍及びフロントウィンドウの曇りを除去するために該フロントウィンドウ近傍に送風を行うヒートデフモードについて説明する。
【0117】
このヒートデフモードが選択された場合には、バタフライ弁からなるデフロスタダンパ526a、526bが支軸を中心として、デフロスタ開口部524から離間する方向に回動すると共に、ベントダンパ494によってベント開口部492が閉塞される(図3中、破線形状)。これにより、第3フロント通路484で混合された第1エア(混合風)の一部が、デフロスタ開口部524を通じて車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風される。また、第1エア(混合風)の一部が、第6及び第7フロント通路520、522を経て第1ヒート通路538を介して車室内における前席の乗員の足元近傍に送風されると共に、第8フロント通路540から、図示しない第2ヒート通路を介して前記車室内における中間席の乗員の足元近傍へと送風される。
【0118】
また、このヒートデフモードにおいて、第2エアを車室内の中間席及び後席に送風する場合には、上述したヒートモードと同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0119】
最後に、車両におけるフロントウィンドウの曇りを除去するために該フロントウィンドウ近傍のみに送風を行うデフロスタモードについて説明する。この場合には、第1エアミックスダンパ488及びクールベントダンパ490が、第2フロント通路482と第3フロント通路484との連通をそれぞれ遮断する。同時に、ベントダンパ494は、ベント開口部492を閉塞し、ベントダクト544と第3フロント通路484との連通を遮断し、温度コントロールダンパ516は、第5フロント通路514と第3フロント通路484とを連通させる。また、バタフライ弁からなるヒートダンパ528は、支軸を中心として一端部側が第8フロント通路540を、他端部側が第7フロント通路522を、それぞれ閉塞するように回動している。
【0120】
一方、バタフライ弁からなるサブデフロスタダンパ518a、518b及びデフロスタダンパ526a、526bは、第5フロント通路514と、第6フロント通路520と、デフロスタ開口部524とを連通するように回動している。
【0121】
これにより、ヒータコア410を通過した温風の第1エアが、第5フロント通路514から第6フロント通路520を経て開口したデフロスタ開口部524へと供給され、車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風される。この場合、第2ブロアユニット412を駆動させることなく、第1ブロアユニット406から供給される第1エアのみを送風する。
【0122】
以上のように、本発明の実施の形態では、ケーシング402において、ベント開口部492が、デフロスタ開口部524に対して車両における前方(矢印A方向)に設けられているため、デフロスタ開口部524及び第1ヒート通路538(第1ヒート開口部)と第3フロント通路484との距離を長くすることができ、且つ、前記デフロスタ開口部524と前記第1ヒート通路538(第1ヒート開口部)との距離を短くすることができる。すなわち、ヒートデフモードでは、冷風と温風とが第3フロント通路484で混合してから、デフロスタ開口部524と第1ヒート通路538(第1ヒート開口部)へ送風されるまでの距離を長くできることで、冷風と温風とが混合するのに十分な距離を確保しつつ、乗員の足元近傍へ送風される空気の温度と、フロントウィンドウ近傍へ送風される空気の温度との間の温度差を可及的に小さくすることができる。
【0123】
また、エバポレータ408の下流側に設けられた第3フロント通路484を、ベント開口部492のみで開口するように上方を指向して直線的に配設することができる。これにより、バイレベルモードにおいて、エバポレータ408で冷却された冷風を、第3フロント通路484を通じて迅速にベント開口部492へと供給することができるため、該ベント開口部492に接続されたベントダクト544を通じて車室内のベント吹出口(図示せず)から乗員の顔近傍へと送風することが可能となるため、ヒータコア410によって加熱された温風と前記冷風とが混合されることが回避され、前記ベント吹出口(図示せず)から車室内に供給される送風と、前記車室内の第1ヒート吹出口(図示せず)を通じて乗員の足元近傍に供給される送風との温度差を大きくすることができる。その結果、車室内において、乗員の顔近傍をより一層涼しく足元近傍をより一層暖かくすることが可能となり、前記乗員の快適性を向上させることが可能となる。
【0124】
さらに、該ベント開口部492に接続されたセンター用ベントダクト546を、一対のセンター用デフロスタダクト552、552及びサイド用デフロスタダクト554の間に、後方(矢印B方向)を指向して直線的に配設して、車室内のみで開口することができる。すなわち、バイレベルモードでは、エバポレータ408において冷却された冷風が、温風と混合することがなく、さらに、エバポレータ408の下流側から乗員の顔に至るまでの通路である第3フロント通路484は、ベント開口部492のみで開口し、センター用ベントダクト546は、車室内のみで開口することで、該冷風が熱を得る機会を可及的に減少させることができる。
【0125】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0126】
400…車両用空調装置 402…ケーシング
404…連結ダクト 406…第1ブロアユニット
408…エバポレータ 410、410a…ヒータコア
412…第2ブロアユニット 414…ダンパ機構
416…第1分割ケーシング 418…第2分割ケーシング
420…センタープレート 436…第1冷却部
438…第2冷却部 492…ベント開口部
524…デフロスタ開口部 544…ベントダクト
546…センター用ベントダクト 548…サイド用ベントダクト
550…デフロスタダクト 552…センター用デフロスタダクト
554…サイド用デフロスタダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流通する複数の通路を有するケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、前記空気を熱交換する熱交換器と、前記通路における前記空気の流通状態を切り換えるダンパ機構とを有する車両用空調装置において、
前記ケーシングには、車室内においてフロントウィンドウ近傍に開口したデフロスタ吹出口へ前記空気の送風を行うデフロスタ開口部と、
前記車室内において乗員の顔近傍に開口したベント吹出口に前記空気を送風するベント開口部と、
前記デフロスタ開口部と前記デフロスタ吹出口とを接続する第1送風ダクトと、
前記ベント開口部と前記ベント吹出口とを接続する第2送風ダクトと、
を備え、
前記ケーシングにおいて、前記デフロスタ開口部を前記ベント開口部に対して車両後方側に配置すると共に、前記第1送風ダクトの下流側を前記車両前方側に向かって延在させ、且つ、前記第2送風ダクトの下流側を前記車両後方側に向かって延在させることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記第1送風ダクトは、前記デフロスタ開口部に接続された部位の下流側において二股状に分岐し、該第1送風ダクトにおける一方の分岐部位と他方の分岐部位との間に、前記第2送風ダクトが配置されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2記載の車両用空調装置において、
前記第2送風ダクトは、前記ベント開口部における前記車室内の中央部近傍に送風するセンターベント部に接続されたセンター用ダクトと、
前記ベント開口部における前記車室内の運転席側及び助手席側に送風する一組のサイドベント部に接続されたサイド用ダクトと、
を備え、
前記第1送風ダクトの分岐部位の間に配置される第2送風ダクトが、前記センター用ダクトであることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2011−16525(P2011−16525A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154754(P2010−154754)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】