説明

車両用空調装置

【課題】効率良く乗員に快適性を付与し得る空調装置を提供する。
【解決手段】車両天井11に設けられる車両用空調装置1であって、車両天井11に通風路を形成する内気用ダクト2と、内気用ダクト2内の空気に冷熱を供給する熱供給体4と、内気用ダクト2内の空気に流れを与える内気用ファン3を有する。内気用ダクト2には、車両10の室内12からダクト2内に空気を取入れ得る内気取入口2a1と、ダクト2内から室内12へ空気を吹出し得る内気吹出し口2b1が形成される。内気取入口2a1と内気吹出し口2b1は、内気吹出し口2b1から室内12に吹出された空気のうちの少なくとも一部が車両天井11に沿って内気取入口2a1に空気が流れ得るような位置および開口向きを有するように設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両天井に設けられる空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両天井に設けられる空調装置は、従来例えばペルティエ素子(特許文献1参照)またはエバポレータを有する(特許文献2参照)。これら空調装置は、冷却した空気を車両天井から室内の広い範囲に吹出し、所定の場所から室内の空気を取入れる。従来、蓄冷材を有する空調装置も知られている。この空調装置は、車両運転時に冷媒装置から供給された冷熱を蓄冷材に蓄える。車両停止時に室内の空気を取入れ、該空気に蓄冷材から冷熱を供給し、仮眠室である室内の一部空間に該空気を吹出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−342731号公報
【特許文献2】実開昭60−55509号公報
【特許文献3】特開2007−112269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし効率良く乗員に快適性を付与し得る空調装置が従来求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明は、各請求項に記載の通りの構成を備える車両用空調装置であることを特徴とする。一つの特徴によると本発明は、車両天井に通風路を形成する内気用ダクトと、内気用ダクト内の空気に冷熱または温熱を供給する熱供給体と、内気用ダクト内の空気に流れを与える内気用ファンを有する。内気用ダクトには、車両の室内からダクト内に空気を取入れ得る内気取入口と、ダクト内から室内へ空気を吹出し得る内気吹出し口が形成される。内気取入口と内気吹出し口は、内気吹出し口から室内に吹出された空気のうちの少なくとも一部が車両天井に沿って内気取入口に空気が流れ得るような位置および開口向きを有するように設置される。
【0006】
したがって熱供給体によって冷やされた空気または温められた空気は、内気吹出し口から室内へ吹出され、車両天井に沿って内気取入口に流れ、内気取入口から取入れられ得る。そのため空気は、車両天井周辺の室内の局部的な領域において循環し、空気が室内全体を循環する場合に比べて空気の循環経路が短くなる。これにより空調装置は、室内全体を所望の温度にする場合に比べて小さなエネルギーによって室内を局部的に所望の温度にすることができる。しかも空調装置は、温度を感じやすい乗員の顔の周辺である車両天井近傍を所望温度にし得る。そのためこの空調装置によると、比較的小さなエネルギーによって乗員に快適性を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】空調装置が設けられた車両の一部断面側面図である。
【図2】空調装置が設けられた車両の一部断面上面図である。
【図3】逆止弁近傍における外気用ダクトの一部断面側面図である。
【図4】外気導入部の一部断面側面図である。
【図5】外気排出口近傍における外気用ダクトの一部断面側面図である。
【図6】他の構成にかかる空調装置の断面側面図である。
【図7】他の構成にかかる空調装置の断面側面図である。
【図8】他の構成の空調装置が設けられた車両の一部断面上面図である。
【図9】他の構成の空調装置が設けられた車両の一部断面上面図である。
【図10】他の構成の空調装置が設けられた車両の一部断面上面図である。
【図11】他の構成の空調装置が設けられた車両の一部断面上面図である。
【図12】他の構成にかかる空調装置の断面側面図である。
【図13】他の構成にかかる空調装置の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一つの実施の形態を図1〜5にしたがって説明する。図1,2に示すように車両10の車両天井11には、空調装置1が設けられる。空調装置1は、熱供給体4と内気用ダクト2と外気用ダクト5を有する。
【0009】
熱供給体4は、図1,2に示すように車両天井11において車幅方向に延出し、車両天井11に複数列設けられる。熱供給体4は、ぺルティエ素子等のヒートポンプであって、電気を流すことで熱を放散する放熱部4aと、熱を吸収する吸熱部4bを有する。放熱部4aと吸熱部4bには、熱伝導率の高い金属材料から形成されるフィン7,8が当接される。
【0010】
内気用ダクト2は、図1,2に示すように車両天井11に通風路を形成する部材であって、内気導入部2aと内気熱移動部2cと内気排出部2bを有する。内気熱移動部2cは、熱供給体4の下側に位置し、複数の熱供給体4の下側面を覆い得る板状の底面2c2を有する。内気熱移動部2cの上部には、熱供給体4の吸熱部4bを露出する開口部が形成される。吸熱部4bに当接されるフィン8は、開口部から内気熱移動部2c内に突出して内気熱移動部2cに内設される。
【0011】
内気導入部2aは、図1,2に示すように内気熱移動部2cの後左部と後右部に設けられる。内気導入部2aには、室内12から空気を取入れ得る内気取入口2a1が形成される。内気取入口2a1は、下方でかつ前方に開口している。内気取入口2a1には複数の羽板2a2が角度調整不能または角度調整可能に設けられる。羽板2a2は、車両天井11から下前方に延出するように配向、または該方向に調整されて配向され得る。
【0012】
内気排出部2bは、図1,2に示すように内気熱移動部2cの前左部と前右部に設けられる。内気排出部2bには、室内12へ空気を排出し得る内気吹出し口2b1が形成される。内気吹出し口2b1は、下方でかつ後方に開口している。内気吹出し口2b1には複数の羽板2b2が角度調整不能または角度調整可能に設けられる。羽板2b2は、車両天井11から下後方に延出するように配向、または該方向に調整されて配向され得る。
【0013】
内気導入部2aには、図1,2に示すように内気用ファン3が設けられる。内気用ファン3は、図示省略のモータによって回転して、室内12の空気を内気導入部2aに取入れ、該空気を内気導入部2aから内気熱移動部2cに送る。内気熱移動部2c内において空気は、フィン8を通過し、この時、空気に含まれる熱がフィン8を介して吸熱部4bによって奪われる。すなわち空気は、熱供給体4から供給された冷熱によって温度が低くなる。温度の低い空気は、内気吹出し口2b1から室内12へ下後方に排出される。該空気は、シートに着座する乗員の首または胸よりも上側において、車両天井11に沿って流れ、内気導入部2aから内気用ダクト2に取入れられる。
【0014】
なお空気が車両天井11に沿って流れるとは、車両天井11に接触しながら流れる場合に限定されず、空気が車両天井11から少し離れた位置において車両天井11と略平行に流れる場合も含む。さらに、内気吹出し口2b1から吹出された空気の一部が室内12の広い範囲に広がらずに、かつ乗員に当たらずに車両天井11と略平行に流れ、内気取入口2a1に取込まれる場合も含む。
【0015】
外気用ダクト5は、図1,2に示すように車両天井11に通風路を形成する部材であって、外気導入部5aと外気熱移動部5cと外気排出部5bを有する。外気熱移動部5cは、熱供給体4の上側に位置し、複数の熱供給体4の上側面を覆い得る大きさを有する。外気熱移動部5cによって形成される通風路5c1には放熱部4aに当接されるフィン7が設置される。
【0016】
外気導入部5aは、図1,2に示すように外気熱移動部5cから前方に延出する第一外気導入部5a1と第二外気導入部5a3を有する。第一外気導入部5a1は、外気熱移動部5cの前左部と前右部から車両天井11の左右縁に沿って前方に延出し、端部に外気取入口5a2を有する。外気取入口5a2は、車両10の前方に開口し、車両10の走行時に生じる風圧によって車両10の外側から空気を第一外気導入部5a1内に取入れ得る。第一外気導入部5a1は、内気用ダクト2の内気排出部2bと上下に重ならないように、内気導入部2aよりも車幅方向外側に位置する。
【0017】
第二外気導入部5a3は、図2に示すように外気熱移動部5cの前中央部から前方に延出し、端部に外気取入口5a4を有する。第二外気導入部5a3は、内気用ダクト2の内気排出部2bと上下に重ならないように、一対の内気排出部2bの間に位置する。第二外気導入部5a3には外気用ファン6が設けられる。外気用ファン6は、制御手段によって制御されるモータによって回転する。制御手段は、車両10が停止時等においてモータを駆動し外気用ファン6を回転させる。外気用ファン6は、回転することで、車両10の外側からの空気を外気取入口5a4から第二外気導入部5a3に取入れる。
【0018】
第一外気導入部5a1には、図2,3に示すように空気の流れを一方向に規制し得る逆止弁(ダンパ)9が設けられる。逆止弁9は、弁部材9aとストッパ9bを有する。弁部材9aは、一端部9a1が回転可能に第一外気導入部5a1に取付けられ、重力あるいは図示省略の付勢部材によって先端部9a2がストッパ9bに当接される。
【0019】
車両10が走行して第一外気導入部5a1内の圧力が外気熱移動部5c内の圧力よりも高くなると、逆止弁9が開き、第一外気導入部5a1から外気熱移動部5cに向けて空気が流れる。車両10が停止している時に外気用ファン6が回転した場合は、外気熱移動部5c内の圧力が第一外気導入部5a1内の圧力よりも高くなる。これにより弁部材9aがストッパ9bに当接して逆止弁9が閉じる。そのため空気が外気熱移動部5cから第一外気導入部5a1に排出されることが逆止弁9によって防止され得る。
【0020】
図4に示すように第一外気導入部5a1と第二外気導入部5a3には、水トラップ5a9とパイプ5a5とフィルター5a6が設けられる。水トラップ5a9は、外気導入部5aの底面を貫通する孔5a7と、底面に対して起立する壁5a8を有し、外気導入部5aから外気熱移動部5cに向けて水が流れることを防止する。パイプ5a5は、水トラップ5a9の孔5a7から延出し、水トラップ5a9に浸入した水を車両10の外側へ排出し得る。
【0021】
外気排出部5bは、図1,2に示すように内気熱移動部2cから後方に延出する首部5b2と、首部5b2から後方に延出する後部5b3を有する。首部5b2は、内気用ダクト2の内気導入部2aと内気用ファン3に対して上下に重ならないように、一対の内気導入部2aの間に位置する。後部5b3は、内気用ダクト2よりも後方において、首部5b2よりも車幅方向に幅が広い。後部5b3の後端部には外気排出口5b1が形成される。外気排出口5b1は、図5に示すように後方向に開口するとともに車両の前進時に生じる走行風14が流れる位置に開口する。例えば車両外面における車両後方を向いた面に対して開口する。
【0022】
図1,2に示すように車両10が走行することで、第一外気導入部5a1から空気が取入れられ、空気がフィン7を通過する。あるいは車両10の停止時等において外気用ファン6が回転して、第二外気導入部5a3から空気が取入れられ、空気がフィン7を通過する。フィン7を通過することで、熱供給体4の放熱部4aから放散した熱がフィン7を介して空気に移動する。これにより放熱部4aから放出された熱が空気とともに外気用ダクト5から車両10の外側へ排出される。
【0023】
図1に示すように内気用ダクト2と外気用ダクト5の間には、熱の移動の少ない材料から形成される断熱材が設けられる。外気用ダクト5の上面にも、断熱材が設けられ、好ましくは内気用ダクト2の下面にも断熱材が設けられる。
【0024】
以上のように内気用ダクト2には、図1に示すように内気取入口2a1と内気吹出し口2b1が形成される。内気取入口2a1と内気吹出し口2b1は、内気吹出し口2b1から室内12に吹出された空気が車両天井11に沿って内気取入口2a1に空気が流れるような位置および開口向きを有するように設置される。
【0025】
したがって熱供給体4によって冷やされた空気は、内気吹出し口2b1から室内12へ吹出され、車両天井11に沿って内気取入口2a1に流れ、内気取入口2a1から取入れられ得る。そのため空気は、車両天井11周辺の室内12の局部的な領域において循環し、空気が室内12全体を循環する場合に比べて空気の循環経路が短くなる。したがって空調装置1は、室内12全体を所望の温度にする場合に比べて小さなエネルギーによって室内12の温度を局部的に所望の温度にすることができる。しかも空調装置1は、温度を感じやすい乗員の顔の周辺である車両天井11近傍を所望温度にし得る。そのためこの空調装置1によると、比較的小さなエネルギーによって乗員に快適性を提供することができる。
【0026】
また内気吹出し口2b1は、図1に示すように車両天井11から下側にかつ内気取入口2a1へ向けて開口する。内気取入口2a1は、下側にかつ内気吹出し口2b1へ向けて開口する。したがって内気吹出し口2b1から吹出された空気は、内気取入口2a1に向けて吹出され、車両天井11に沿って流れ易く、かつ内気取入口2a1によって取込まれ易い。
【0027】
図1に示すように内気吹出し口2b1から吹出される全ての空気は、下側でかつ内気取入口2a1の方向に吹出される。そのため内気用ダクト2から吹出される空気の一部が他の方向へ吹出される場合等に比べて、小さなエネルギーによって室内12を局部的に所定の温度にすることができる。
【0028】
また内気用ダクト2は、図1に示すように熱供給体4の下側にて吸熱部4bが露出または吸熱部4bに当接するフィン8が内設される通風路を形成する内気熱移動部2cを有する。外気用ダクト5は、熱供給体4の上側にて放熱部4aが露出または放熱部4aに当接するフィン7が内設される通風路を形成する外気熱移動部5cを有し、かつ図2に示すように内気用ファン3と内気吹出し口2b1と内気取入口2a1に対応する位置において内気用ダクト2と水平方向に隣接する部分を有する。好ましくは内気用ダクト2と上下位置を回避しつつ内気用ダクト2と水平方向に隣接する部分を有する。
【0029】
したがって熱供給体4に対応する場所では、内気用ダクト2と外気用ダクト5が上下に重なる。そのため内気用ダクト2と外気用ダクト5は、熱供給体4との間で比較的広い面積にて熱移動が可能であり、これにより空調装置1のエネルギー効率を高くすることができる。一方、内気用ダクト2と外気用ダクト5は、内気用ファン3と内気吹出し口2b1と内気取入口2a1と外気用ファン6に対応する位置において上下に重ならず水平方向に隣接する。上下に重ならず水平方向に隣接する。
【0030】
そのためこれら位置では、車両天井11の厚みを厚くすることなく、内気用ファン3と内気吹出し口2b1と内気取入口2a1に対応する内気用ダクト2の断面積を十分に大きくすることができる。かくして車両天井11の厚みを厚くすることなく、十分な大きさの内気用ファン3または外気用ファン6を設置し得る。あるいは内気吹出し口2b1と内気取入口2a1における内気用ダクト2の断面積を大きくすることで、圧力損失が少なくなる。これにより空調装置1のエネルギー効率を高くすることができる。また車両天井11の厚みの増大を抑制することで、車両高さが高くなることを抑制でき、かつ室内12の高さが低くなることも抑制できる。
【0031】
また外気用ダクト5には、図4に示すように外気導入部5aと外気熱移動部5cとの間に水を受け止め得る水トラップ5a9が設けられる。水トラップ5a9には車両外側に開口した開口部を有するパイプ5a5が連通される。したがって外気熱移動部5c側の部材が水によって錆びたり、あるいは故障したりすることが低減され得る。
【0032】
また外気用ダクト5の外気排出口5b1は、図5に示すように車両10の前進時に生じる走行風14の流れる位置に開口する。あるいは外気排出口5b1は、車両外面における車両後方を向いた面に対して開口する。したがって車両10が前進すると、外気排出口5b1の近傍に負圧が生じ、負圧によって外気用ダクト5内の空気が外気排出口5b1から吸い出され得る。そのため外気用ダクト5を流れ得る空気の量が増加して、外気用ダクト5内の空気と熱供給体4との間における熱の移動量が多くなる。
【0033】
また内気用ダクト2は、図1に示すように複数列のシートを備える車両10において最前列の上方に位置する。そのため空調装置1は、最前列の乗員、例えば運転者の上部周辺を少ないエネルギーによって所望温度にすることができる。
【0034】
(他の実施の形態)
本発明は、上記実施の形態に限定されず、以下の形態等であっても良い。例えば、図1に示す内気用ダクト2に代えて、図6に示す内気用ダクト20を有していても良い。内気用ダクト20は、内気導入部20aと内気熱移動部20cと内気排出部20bを有する。
【0035】
内気導入部20aは、図6に示すように内気用ダクト20の前後方向の両端部に設けられる。内気導入部20aの端部には内気取入口20a1が形成され、内気取入口20a1は、下方向にかつ内気用ダクト20の中央に向いて開口する。内気取入口20a1には、複数の羽板20a2が設けられる。
【0036】
内気熱移動部20cは、図6に示すように各内気導入部20aよりも内気用ダクト20の中央側において各内気導入部20aに隣接する。内気熱移動部20c内には、熱供給体4と当接するフィン8が設置される。内気排出部20bは、一対の内気熱移動部20cの間に設けられる。内気排出部20bには下方に開口する内気吹出し口20b1が形成される。内気吹出し口20b1には複数の羽板20b2が設けられる。
【0037】
以上のように内気吹出し口20b1は、図6に示すように二つの内気取入口20a1の間に位置する。二つの内気取入口20a1は、車両天井11から下側にかつ内気吹出し口20b1に向けて開口する。したがって内気吹出し口20b1から吹出された空気は、その両側に位置する二つの内気取入口20a1から取入れられ得る。しかも内気取入口20a1は、内気吹出し口20b1に向いているため、内気吹出し口20b1から吹出された空気は、車両天井11に沿って流れ易く、かつ内気取入口20a1から取入れられ易い。
【0038】
また空調装置1は、図1に示す内気用ダクト2に代えて、図7に示す内気用ダクト30を有していても良い。図7に示す内気用ダクト30は、中央位置に内気導入部30aを有し、前後部に内気排出部30bを有し、内気導入部30aと各内気排出部30bの間に内気熱移動部30cを有する。内気導入部30aには、下側にかつ前方の内気排出部30bに向けて開口する内気取入口30a1と、下側にかつ後方の内気排出部30bに向けて開口する内気取入口30a2が形成される。内気取入口30a1,30a2のそれぞれには複数の羽板30a3,30a4が設けられる。
【0039】
各内気熱移動部30cには、図7に示すように熱供給体4と当接するフィン8が内設される。各内気排出部30bには、下方にかつ内気導入部30aに向けて開口する内気吹出し口30b1が形成される。内気吹出し口30b1には複数の羽板30b2が設けられる。内気排出部30bには、内気排出部30bから室内へ空気を排出し得る内気用ファン3が設けられる。
【0040】
以上のように図7に示す空調装置1は、二つ(または二つ以上)の内気吹出し口30b1を有し、内気取入口30a1,30a2は、二つの内気吹出し口30b1の間に位置する。二つの内気吹出し口30b1は、車両天井11から下側にかつ内気取入口30a1,30a2に向けて開口する。
【0041】
したがって各内気吹出し口30b1から吹出された空気は、車両天井11に沿って流れ易く、かつ内気取入口30a1,30a2から取入れられ易い。また二つの内気吹出し口30b1から吹出された空気は、その間に位置する内気取入口30a1,30a2から取入れられ得る。そのため内気吹出し口30b1から吹出された空気が乗員等に当たった場合であっても、二つの内気吹出し口30b1の間に位置する内気取入口30a1,30a2によって該空気が取入れられ易い。
【0042】
また外気用ダクト5は、図2に示す外気導入部5aに代えて図8に示す外気導入部5aを有していても良い。図8に示す外気導入部5aは、図2に示す第二外気導入部5a3と外気用ファン6と逆止弁9とを有していない点において図2に示す外気導入部5aと異なる。そのため図8に示す外気導入部5aは、図2に示す外気導入部5aよりも簡易に構成され得る。
【0043】
また外気用ダクト5に図9に示す外気用ファン21を設けても良い。図9に示す外気用ダクト5は、図8に示す外気用ダクト5と同様に形成される。外気用ファン21は、外気用ダクト5の外気排出部5bの首部5b2に設けられる。外気用ファン21は、内気用ファン3と同軸上に設置され、これらファン3,21が車両天井11に設けられた同一のモータによって回転され得る。かくしてモータを共通に使用し得る。
【0044】
また外気用ダクト5に図10に示すピラーダクト22が接続されても良い。図10に示す外気用ダクト5は、図9に示す外気用ダクト5と同様に形成される。ピラーダクト22は、車両10のピラー15に沿って上下方向に延出する。ピラー15は、車両天井11の前部から下前方向に延出する。ピラーダクト22の上部には、外気用ダクト5の外気導入部5aに連通される接続部22aが設けられる。ピラーダクト22の下部には、車両10の外側から空気を取入れ得る外気取入口22bが形成される。外気取入口22bは、エンジンが収納されるエンジンルーム内などにおいて開口する。
【0045】
以上のように空調装置1は、図10に示すように外気導入部5aに連通されかつ車両10のピラー15に沿って下方に延出するピラーダクト22を有する。ピラーダクト22の下部に空気を取入れ得る外気取入口22bが形成される。したがって空気は、ピラーダクト22の下部からピラー15に沿って上方へ流れる。そのため空気とともに水と異物がピラーダクト22の下部から浸入した場合、水と異物が重力によってピラーダクト22の上方へ移動することが抑制され得る。その結果、外気用ダクト5に水と異物が浸入することが抑制され得る。
【0046】
また外気用ダクト5に図11に示すピラーダクト23が接続されても良い。図11に示す外気用ダクト5は、図9に示す外気用ダクト5と同様に形成される。ピラーダクト23は、第一部23aと第二部23bを有する。第一部23aは、車両天井11の左右部に沿って前後方向に延出する。第一部23aの前部には、外気用ダクト5の外気導入部5aに連通される接続部23cが形成される。第二部23bは、第一部23aからピラー16に沿って上下方向に延出する。ピラー16は、車両天井11の後部から下後方向に延出する。第二部23bの下部には、車両10の外側から空気を取入れ得る外気取入口23dが形成される。
【0047】
また空調装置1は、図1に示す内気用ダクト2と熱供給体4に代えて、図12,13に示す内気用ダクト24と熱供給体25,28を有しても良い。図12,13に示す内気用ダクト24は、内気導入部24aと内気熱移動部24cと内気排出部24bを有する。内気導入部24aは、内気用ダクト24の後部に設けられ、内気導入部24aには車両室内12から空気を取入れ得る内気取入口24a1が形成される。内気取入口24a1には内気取入口24a1を開閉し得る複数の羽板24a2が設けられる。内気取入口24a1は、羽板24a2によって下方でかつ前方に開口され得る。
【0048】
図12,13に示すように内気排出部24bは、内気用ダクト24の前部に設けられ、内気排出部24bには車両室内12へ空気を排出し得る内気吹出し口24b1が形成される。内気吹出し口24b1には内気吹出し口24b1を開閉し得る複数の羽板24b2が設けられる。内気排出部24bは、羽板24b2によって下方でかつ後方に開口され得る。内気排出部24bには、内気用ダクト24内の空気に流れを与え得る内気用ファン29が設けられる。
【0049】
図12,13に示す熱供給体25は、ペルティエ素子を有し、放熱部25aと吸熱部25bを有する。一方、熱供給体28は、冷熱または温熱を蓄え得る蓄熱材を有し、内気熱移動部24c内に設けられる。放熱部25aに当接されるフィン27は、外気用ダクト5内に設置される。吸熱部25bに当接されるフィン26は、内気用ダクト24内に設置される。
【0050】
図12に示すように羽板24a2によって内気取入口24a1を閉じ、羽板24b2によって内気吹出し口24b1を閉じ、内気用ファン29をモータによって回転させると、空気が内気用ダクト24内において熱供給体(蓄熱材)28の回りを流れる。熱供給体(ペルティエ素子)25に電流を流すことで、吸熱部25bがフィン26を介して内気用ダクト24内の空気から熱を吸収する。これにより内気用ダクト24内の空気が冷やされ、該空気から冷熱が熱供給体(蓄熱材)28に伝わり、熱供給体28に冷熱が蓄えられる。熱供給体(ペルティエ素子)25の吸熱部25bから放出された熱は、フィン27を介して外気用ダクト5を流れる空気に伝わり、空気とともに車両の外側へ排出される。
【0051】
図13に示すように羽板24a2によって内気取入口24a1を開き、羽板24b2によって内気吹出し口24b1を開き、内気用ファン29をモータによって回転させると、室内12の空気が内気取入口24a1から内気用ダクト24に取入れられる。該空気は、熱供給体(蓄熱材)28の上下両側を流れて、熱供給体28から冷熱を受けて冷やされる。冷やされた空気は、内気吹出し口24b1から内気取入口24a1に向けて室内12へ吹出される。該空気は、車両天井11の下面に沿って流れて、内気吹出し口24b1に向く内気取入口24a1によって内気用ダクト24に取入れられる。
【0052】
また図1,12に示す熱供給体4は、ペルティエ素子を有するが、他の熱交換機であってあっても良い。図1,12に示す熱供給体4は、室内12の空気を冷却するために下側に吸熱部4b,25bを有し、上側に放熱部4a,25aを有する。しかし室内の空気を暖かくするために熱供給体が下側に放熱部を有し、上側に吸熱部を有するように熱供給体に電気を流しても良い。図12に示す空調装置1は、熱供給体(ペルティエ素子)25と熱供給体(蓄熱材)28を有する。しかし空調装置が熱供給体として蓄熱材を有し、蓄熱材がエンジンルームに設けられた他の空調装置等から供給された冷熱または温熱を蓄えても良い。また図12,13に示す熱供給体(蓄熱体)28の表面にフィンを設けても良い。なおフィンの高さは通路高さより低い高さとして空気の流れを阻害しないようにすることが好ましい。
【0053】
また図2に示す外気用ダクト5は、内気用ファン3と内気吹出し口2b1と内気取入口2a1に対応する位置のすべてにおいて内気用ダクト2と上下に重ならず、車両天井11において内気用ダクト2に対して水平方向に隣接する部分を有する。しかし外気用ダクトが、内気用ファンと内気吹出し口と内気取入口のいずれか一つまたは二つに対応する位置において内気用ダクトと上下に重ならず車両天井において内気用ダクトに対して水平方向に隣接する部分を有していても良い。
【0054】
図1,6に示す内気用ファン3は、内気導入部2a,20aに設けられる。しかし内気用ファンが内気排出部に設けられ、ファンによって空気が内気排出部から室内へ吹出されても良い。図9〜10に示す外気用ファン21は、外気熱移動部5cの下流側に設けられる。しかし外気用ファンが外気熱移動部の上流側に設けられても良い。
【0055】
図1,6,7等に示す空調装置1は、空気が前後方向に流れ得るように前後方向に並べられる内気吹出し口と内気取入口を有する。しかし空調装置は、空気が左右方向に流れ得るように左右方向に並べられる内気吹出し口と内気取入口を有していても良い。図7に示す空調装置1は、内気吹出し口30b1を二つ有する。しかし空調装置が内気吹出し口を三つ以上有し、これら内気吹出し口の中間位置あるいは真ん中位置に内気取入口を有していても良い。
【0056】
図1等に示す空調装置1は、内気吹出し口と内気取入口を所定の場所に有する。しかし空調装置が図1等に示す内気吹出し口と内気取入口を入れ替えた場所において内気吹出し口と内気取入口を有していても良い。これによって図1等の空気の流れる方向と逆方向の空気の流れが形成され得る。図1等に示す内気取入口は、下側にかつ内気吹出し口に向けて開口する。しかし内気取入口が下側のみを向いて開口していても良い。図1等に示す外気用ダクト5は、天井またはピラー等において開口して空気を取入れ得る外気取入口を有する。しかし外気用ダクトが車両の走行時の走行風により空気を取入得る他の場所に形成された外気取入口を有していても良い。
【符号の説明】
【0057】
1…空調装置
2,20,24…内気用ダクト
2a,20a,24a,30a…内気導入部
2a1,20a1,24a1,30a1,30a2…内気取入口
2b,20b,24b,30b…内気排出部
2b1,20b1,24b1,30b1…吹出し口
2c,20c,24c,30c…内気熱移動部
3,29…内気用ファン
4,25,28…熱供給体
4a,25a…放熱部
4b,25b…吸熱部
5…外気用ダクト
5a…外気導入部
5a1…第一外気導入部
5a2,5a4,22b,23d…外気取入口
5a3…第二外気導入部
5a5…パイプ
5a9…水トラップ
5b…外気排出部
5b1…外気排出口
5c…外気熱移動部
6…外気用ファン
7,8,26,27…フィン
9…逆止弁
10…車両
11…車両天井
12…室内
15,16…ピラー
21…外気用ファン
22,23…ピラーダクト
22a,23c…接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両天井に設けられる車両用空調装置であって、
前記車両天井に通風路を形成する内気用ダクトと、前記内気用ダクト内の空気に冷熱または温熱を供給する熱供給体と、前記内気用ダクト内の空気に流れを与える内気用ファンを有し、
前記内気用ダクトには、前記車両の室内から前記ダクト内に空気を取入れ得る内気取入口と、前記ダクト内から前記室内へ空気を吹出し得る内気吹出し口が形成され、
前記内気取入口と前記内気吹出し口は、前記内気吹出し口から前記室内に吹出された空気のうちの少なくとも一部が前記車両天井に沿って前記内気取入口に空気が流れ得るような位置および開口向きを有するように設置される車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置であって、
前記内気吹出し口は、前記車両天井から下側にかつ前記内気取入口へ向けて開口し、
前記内気取入口は、前記車両天井から下側にかつ前記内気吹出し口へ向けて開口する車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用空調装置であって、
前記内気吹出し口は、二つ以上設けられ、
前記内気取入口は、前記二つ以上の前記内気吹出し口の間に位置し、
前記二つ以上の内気吹出し口は、前記車両天井から前記下側にかつ前記内気取入口に向けて開口する車両用空調装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載の車両用空調装置であって、
前記内気吹出し口から吹出される全ての空気は、下側でかつ前記内気取入口の方向に吹出される車両用空調装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載の車両用空調装置であって、
前記熱供給体は、熱を吸収する吸熱部と、熱を放散する放熱部の両熱部を有し、
前記内気用ダクトは、前記熱供給体の下側にて前記両熱部の一つが露出または該一つに当接するフィンが内設される通風路を形成する内気熱移動部を有し、
前記車両天井には、前記車両の外側から空気を取入れ得る外気取入口と、前記車両の外側に開口する外気排出口とが形成された外気用ダクトが設けられ、
前記外気用ダクトは、前記熱供給体の上側にて前記両熱部の他の一つが露出または該一つに当接するフィンが内設される通風路を形成する外気熱移動部を有し、かつ前記内気用ファンと前記内気吹出し口と前記内気取入口の少なくとも一つに対応する位置において前記内気用ダクトと水平方向に隣接する部分を有する車両用空調装置。
【請求項6】
請求項5に記載の車両用空調装置であって、
前記外気用ダクトには前記外気取入口と前記外気熱移動部との間に水を受け止め得る水トラップが設けられ、前記水トラップには車両外側に開口した開口部を有するパイプが連通される車両用空調装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の車両用空調装置であって、
前記外気用ダクトの前記外気取入口に連通されかつ前記車両のピラーに沿って下方に延出するピラーダクトを有し、前記ピラーダクトの下部に空気を取入れ得る外気取入口が形成される車両用空調装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一つに記載の車両用空調装置であって、
前記外気用ダクトの前記外気排出口は、車両外面における車両後方を向いた面に対して開口する車両用空調装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の車両用空調装置であって、
前記内気用ダクトは、複数列のシートを備える車両において少なくとも最前列の上方に位置する車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−195016(P2011−195016A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63841(P2010−63841)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】