説明

車両用空調装置

【課題】室外熱交換器21入口側の弁手段25と三方弁30とを統合した一体型の統合弁を持った車両用空調装置を提供する。
【解決手段】室外熱交換器21の入口側と室内凝縮器12の間に設けられた弁手段25を成す電磁弁、弁手段25に並列に設けられた暖房用絞り26、室外熱交換器21の出口側にコモン流路50が設けられた三方弁30を備え、弁手段25、暖房用絞り26、三方弁30、第1切替流路55、及び第2切替流路56を同一のボディ40内に収納して統合弁から成る冷媒流路切替制御弁41を構成した。三方弁30は弁手段25の開閉に伴って圧力が変化することにより弁作動が切り替わる差圧弁からなる。これにより、配管し易く、小型化が可能であり、配線作業も簡素化できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内熱交換器と室外熱交換器とを有し、室内を暖房または冷房し、冷媒の流れる経路を切り替える弁機構を一体化した車両用空調装置に関する。特に、室外用熱交換器に弁機構を一体的に取り付けた車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調システムにおいて、暖房の熱源にエンジン廃熱を利用するのが一般的であったが、近年、暖房に使用できる廃熱が少ないハイブリッド車、電気自動車(以下、EV車という)の開発が盛んになってきており、特にEV車では、暖房で使用できる廃熱は、僅少である。そのため、ヒートポンプシステムを利用した車両用空調装置が増加している傾向にある。
【0003】
このヒートポンプシステムを利用した車両用空調装置として特許文献1に記載の空調装置が知られている。この公知の空調装置は、自動車車室内の空調を行う自動車用空調装置に関するものである。
【0004】
この自動車用空調装置は、エンジン冷却水が充分な熱源とならないようなエンジンを備えた自動車、または電気自動車の如く余剰熱源を全く有さない自動車において、冷凍サイクルを構成する凝縮及び蒸発に伴う熱の変動を巧みに利用して、望ましい空調を行えるようにするものである。
【0005】
そして、ダクト内に配置される熱交換器を、加熱器と室内蒸発器とでその機能を特定しておくことで、単一の熱交換器が加熱器としての機能を果たしたり、室内蒸発器としての機能を果たしたりすることがないようにしている。すなわち、この特許文献1の装置では空気調和の各運転条件の切り替え時においても、多量の水分が蒸発して窓ガラスの曇り等を起すことがないように成されている。
【0006】
また、圧縮機を電動モータにより駆動することで、圧縮機容量を可変制御できるようにし、この圧縮機吐出容量と、加熱器による空気の再加熱とを適宜コントロールすることで、空調を小動力で効率的に行えるようにしている。
【0007】
また、ダクト内に配置された加熱器及び室内蒸発器の能力を補完すべく室外熱交換器を設け、この室外熱交換器への冷媒流れを制御することで、冷房運転もしくは暖房運転をより効率的に行えるようにしている。
【0008】
更に、ダクト内に配置された室内蒸発器及び加熱器をバイパスして流れる空気流れをダンパで可変制御することで、冷房運転、及び暖房運転をより一層効果的に行えるようにしている。
【0009】
より具体的には、図14に示す公知の冷媒回路図のように、ダクト1内には冷凍サイクルを構成する室内蒸発器11が配置されている。そして、この室内蒸発器11の下流側には、同じく冷凍サイクルを構成する室内凝縮器12が配置されている。
【0010】
なお、室内蒸発器11は空調空気と熱交換時空気中より気化熱を奪って空気の冷却を行い、冷却器として作動する。一方、室内凝縮器12は熱交換時空気中に凝縮熱を放出して空気の加熱を行い、加熱器として作動する。
【0011】
また、冷凍サイクルは、図示しない電気モータにより駆動され冷媒を圧縮吐出する圧縮機20を備える。圧縮機20より吐出された高温高圧の冷媒は、室外熱交換器21で凝縮する。上述のダクト1内の室内凝縮器12は、室外熱交換器21と弁手段25をなす電磁弁及び暖房用絞り26を介して冷媒配管によって結ばれている。
【0012】
室外熱交換器21から流出した冷媒は、一方は、冷房用絞り31をなすキャピラリーチューブを介してダクト1内の室内蒸発器11の入口に導かれ、他方は、下流側電磁弁32を介してアキュムレータ35とダクト1内の室内蒸発器11の出口に導かれる。
【0013】
また、エアミックスダンパ16を用いてダクト1内の室内凝縮器12の能力を切り替えるようにしている。即ち、暖房時にはエアミックスダンパ16によって、空気がダクト1内の室内凝縮器12へ流入するようにしている。
【0014】
一方、冷房時には原則としてエアミックスダンパ16が破線のように閉じ、空気が室内凝縮器12へ流れないようにしている。ただ、冷房時であっても吹出温度を可変するダンパとしてエアミックスダンパ16が作動し、必要吹出温度に応じてエアミックスダンパ16の開度が制御され、一部空気を室内凝縮器12で加熱するよう作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特許第3538845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
発明者は、この公知の車両空調装置を使用してEV車用の空調装置を開発したが、開発過程において、図14の室外熱交換器21と室内蒸発器11との間の冷房用絞り31をなすキャピラリーチューブに至る配管経路及び室外熱交換器21とアキュムレータ35間の下流側電磁弁32を図1のように三方弁30に置き換えた。
【0017】
これは、熱効率を考慮した場合に、暖房時に冷房用絞り31をなすキャピラリーチューブを介して室内蒸発器11に漏れる冷媒を完全に遮断したいためである。
【0018】
上記特許文献1の技術から開発過程において案出した図1の空調装置は、室外熱交換器21の周辺に三方弁30、弁手段25を成す電磁弁、及び暖房用絞り26を必要としている。これらの機器が分散して取り付けられると、取り付け作業、配管作業に時間がかかり、好ましくない。よって、更なる工夫を必要とした。また、弁手段25を成す電磁弁の制御と共に三方弁30も制御しなければならないため、電気配線も複雑になる。
【0019】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目して成されたものであり、その目的は、配管本数を削減し、取り付け作業、及び配管作業が容易な車両用空調装置を提供することにある。
【0020】
従来技術として列挙された特許文献の記載内容は、この明細書に記載された技術的要素の説明として、参照によって導入ないし援用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は上記目的を達成するために、下記の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、空調用のダクト(1)内に室内蒸発器(11)と室内凝縮器(12)とを備え、室内蒸発器(11)と室内凝縮器(12)と室外熱交換器(21)とに圧縮機(20)からの冷媒を流すヒートポンプサイクルによる熱交換を行う車両用空調装置であって、室外熱交換器(21)の入口側と室内凝縮器(12)の間に設けられた弁手段(25)、弁手段(25)によって開閉される冷媒の流路に対して並列に冷媒の流れを絞る流路が設けられた暖房用絞り手段(26)、室外熱交換器(21)の出口側に連通したコモン流路(50)が設けられた三方弁(30)、コモン流路(50)からの冷媒が、三方弁(30)を介して冷房運転時に流れる第1切替流路(55)、及びコモン流路(50)からの冷媒が、三方弁(30)を介して暖房運転時に流れる第2切替流路(56)を備え、
弁手段(25)、暖房用絞り手段(26)、三方弁(30)、第1切替流路(55)、及び第2切替流路(56)の少なくとも一部をボディ(40)内に収納して、統合弁から成る冷媒流路切替制御弁(41)を構成していることを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、弁手段(25)、暖房用絞り手段(26)、三方弁(30)の少なくとも3つの機器が、ボディ(40)内に収納されて一体化されているため、冷媒配管はボディ(40)に接続すれば良く、個々の機器に接続しなくても良いため、取り付け作業、及び配管作業が容易になる。
【0023】
請求項2に記載の発明では、三方弁(30)を弁手段(25)の開閉に伴って圧力が変化することにより弁作動が切り替わる差圧弁で構成したことを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、更に、三方弁(30)を差圧弁で構成したから、三方弁(30)のための電気配線が不要となり、配線作業も簡素化できる。
【0025】
請求項3に記載の発明では、ボディ(40)と室外熱交換器(21)との接続は、室外熱交換器(21)に装着された接続部とボディ(40)側に設けられた接続部とを凹凸嵌合させて形成した室外熱交換器(21)の入口側の第1ジョイント部(71)と、室外熱交換器(21)の出口側の第2ジョイント部(72)とで行い、第1ジョイント部(71)が弁手段(25)側に設けられ、第2ジョイント部(72)がコモン流路(50)側に設けられていることを特徴とする。
【0026】
この発明によれば、ボディ(40)と室外熱交換器(21)との接続に配管を必要とせず、単にボディ(40)を直接的に室外熱交換器(21)に接合するだけでよいから、配管接続が不要となり、組み立て作業を簡素化できる。
【0027】
請求項4に記載の発明では、ボディ(40)内に室内凝縮器(12)からの冷媒が流れ込む弁手段入口側流路(44)と、室外熱交換器(21)に冷媒を流し込む弁手段出口側流路(45)とが形成され、弁手段(25)は、弁手段入口側流路(44)と弁手段出口側流路(45)との間に介在し、弁手段出口側流路(45)から室外熱交換器(21)を経由した冷媒が導かれるコモン流路(50)をボディ(40)内に有し、コモン流路(50)に連通する三方弁(30)内のコモン室(51)の一方側にコモン流路(50)と室内蒸発器(11)側とを接続する第1切替流路(55)を有し、コモン室(51)の他方側に圧縮機(20)側に戻る冷媒の流路を成す第2切替流路(56)を有することを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、弁手段(25)は、ボディ(40)内の弁手段入口側流路(44)と弁手段出口側流路(45)との間に介在し、三方弁(30)は、弁手段出口側流路(45)から室外熱交換器(21)を経由した冷媒が導かれるコモン流路(50)をボディ(40)内に有し、コモン流路(50)に連通する三方弁(30)内のコモン室(51)の一方側にコモン流路(50)と室内蒸発器(11)側とを接続する第1切替流路(55)を有し、コモン室(51)の他方側に第2切替流路(56)を有するから、ボディ(40)内に弁手段(25)と三方弁(30)を組み込み、かつ冷媒流路を切替えることができる。
【0029】
請求項5に記載の発明では、三方弁(30)は、第1切替流路(55)と第2切替流路(56)との間を往復動する往復弁体(60)を有し、往復弁体(60)の動きに応じて、三方弁(30)はコモン流路(50)を第1切替流路(55)と第2切替流路(56)のいずれかに連通させ、三方弁(30)は、弁手段入口側流路(44)から往復弁体(60)の一方側に圧力導入路(42)を介して導入された圧力とコモン流路(50)の圧力との差圧で往復動する差圧弁から構成されていることを特徴とする。
【0030】
この発明によれば、往復弁体(60)は弁手段入口側流路(44)から往復弁体(60)の一方側に導入された圧力とコモン流路(50)の圧力との差圧で往復動する。つまり、三方弁(30)は差圧弁から構成されている。このため、三方弁(30)を制御するための専用の電気配線が不要となり、配線作業が簡単になる。
【0031】
請求項6に記載の発明では、弁手段入口側流路(44)から往復弁体(60)の一方側に導入された圧力は、ボディ(40)内に形成された圧力導入路(42)を介して導入されることを特徴とする。
【0032】
この発明によれば、三方弁(30)を差圧弁として構成するための、弁手段入口側流路(44)から往復弁体(60)の一方側に導入される圧力を、ボディ(40)内に形成された圧力導入路(42)によって導いているから、三方弁(30)を制御するための専用の電気配線が不要となり、配管上に圧力導入路(42)を別途設ける場合に比べ小型化することができる。
【0033】
請求項7に記載の発明では、三方弁(30)は、往復弁体(60)の一方側に導入された圧力とコモン流路(50)の圧力との差圧と、往復弁体(60)の他方側に設けられたばね部材(63)の弾性力とで、往復弁体(60)が往復動することによって往復弁体(60)の一部が第1弁座(65)及び第2弁座(66)に当接する一対のポペット弁部を有することを特徴とする。
【0034】
この発明によれば、三方弁(30)は、往復弁体(60)の一方側に導入された圧力とコモン流路(50)の圧力との差圧と、ばね部材(63)の弾性力とで往復動する一対のポペット弁部を有するから、スプール弁で構成する場合に比較すると、往復動のストロークを短くすることができ、三方弁(30)部分を小型に構成できる。
【0035】
請求項8に記載の発明では、一対のポペット弁部は、一対のポペット弁部のうちの一方のポペット弁部と、該一方のポペット弁部に一端が固定された連結部材(60c)とを有し、一対のポペット弁部のうちの他方のポペット弁部に連結部材(60c)の他端が挿入され、連結部材(60c)を介して一対のポペット弁部が少なくとも所定方向に連動することを特徴とする。
【0036】
この発明によれば、連結部材(60c)が一対のポペット弁部のうちの他方のポペット弁部に挿入され、この連結部材(60c)を介して一対のポペット弁部が連動するから、往復弁体(60)の一方側に導入された圧力とコモン流路(50)の圧力との差圧と、往復弁体(60)の他方側に設けられたばね部材(63)の弾性力とで一対のポペット弁部が連動する三方弁(30)を構成することができる。
【0037】
請求項9に記載の発明では、暖房用絞り手段(26)は、弁手段(25)と並列に形成された細径流路から成り、該細径流路は、弁手段内を冷媒が流れる流路よりも細径のボディ(40)内に形成された流路からなることを特徴とする。
【0038】
この発明によれば、弁手段(25)は、弁手段入口側流路(44)と弁手段出口側流路(45)との間に介在し、暖房用絞り手段(26)はボディ(40)内に形成された細径流路からなるから、ボディ(40)内に暖房用絞り手段(26)を作り込むことができ、配管上に暖房用絞り手段を別途形成する場合に比べると、小型化することができる。
【0039】
請求項10に記載の発明では、弁手段(25)によって開閉される冷媒の流路に対して並列に冷媒の流れを絞る流路が設けられた暖房用絞り手段(26)は、弁手段(25)を完全に閉弁せずに微小隙間を残して閉弁動作する弁手段(25)閉弁後の隙間流路からなることを特徴とする。
【0040】
この発明によれば、暖房用絞り手段(26)を弁手段(25)の閉弁後の漏れ流路となる隙間流路から形成するから、特別に暖房用絞り手段を弁手段(25)の外部に形成する場合に比し、製造コストを削減し易い。
【0041】
請求項11に記載の発明では、微小隙間を残して閉弁する弁手段は、微小隙間の大きさである閉弁後の弁の開度を調整できる弁手段からなることを特徴とする。
【0042】
この発明によれば、微小隙間の大きさである弁の開度を調整できるから、冷媒サイクルの運転状態に適した開度に暖房用絞り手段(26)の絞り開度を設定することができる。
【0043】
請求項12に記載の発明では、閉弁動作後の弁の開度を調整できる弁手段(25)は電動弁からなることを特徴とする。
【0044】
この発明によれば、暖房用絞り手段(26)の絞り開度を、冷媒サイクルの運転状態に適した開度に、電動弁からなる弁手段(25)で容易に設定することができる。
【0045】
請求項13に記載の発明では、ヒートポンプサイクルは、更にアキュムレータ(35)と冷房用絞り(31)と第1切替配管(55a)と第2切替配管(56a)とを有し、コモン流路(50)からの冷媒を冷房運転時に流す第1切替流路(55)は、第1切替配管(55a)と冷房用絞り(31)とを介して室内蒸発器(11)に冷媒を流し、暖房運転時に冷媒を流す第2切替流路(56)は、第2切替配管(56a)とアキュムレータ(35)とを介して圧縮機(20)に冷媒を戻すことを特徴とする。
【0046】
この発明によれば、第1切替流路(55)を介して冷房運転を行うことができ、第2切替流路(56)を介して暖房運転を行うことができる。
【0047】
なお、特許請求の範囲および上記各手段に記載の括弧内の符号ないし説明は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を分かり易く示す一例であり、発明の内容を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1実施形態及び開発段階としてのEV車用のヒートポンプサイクルを使用した車両用空調装置における冷媒回路図である。
【図2】図1の冷媒配管図を更に詳細に書いた実体冷媒配管図である。
【図3】図2に示したボディ内に収納された弁手段をなす電磁弁、絞り手段を成す暖房用絞り、及び三方弁から成る冷房状態での冷媒流路切替制御弁の具体的構成を示した一部断面図である。
【図4】図3の電磁弁が閉弁し室外熱交換器からの冷媒がアキュムレータに向かう暖房状態での冷媒流路切替制御弁の具体的構成を示した一部断面図である。
【図5】図4の冷媒流路切替制御弁の右側面図である。
【図6】図3の矢印Z6−Z6線に沿う一部断面図である。
【図7】図3の矢印Z7−Z7線に沿う一部断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態を示す三方弁としてスプール弁を採用した冷媒流路切替制御弁の具体的構成を示した一部断面図である。
【図9】図8の状態から往復弁体が右方向へ移動した状態を示すスプール弁を採用した冷媒流路切替制御弁の具体的構成を示した一部断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態を示す電動弁を採用した冷媒流路切替制御弁の具体的構成を示した電動弁全開時の一部断面図である。
【図11】図10の電動弁が、微小開度の漏れ通路を残して閉弁した状態を示した一部断面図である。
【図12】その他の実施形態を示す三方弁の要部を模式的に示した模式図である。
【図13】その他の実施形態を示し、室外熱交換器と冷媒流路切替制御弁との結合状態を示す図5に対応する右側面図である。
【図14】公知の車両用空調装置における冷媒回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。
【0050】
各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示していなくても実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0051】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図7を用いて詳細に説明する。まず作動を含め構成を全体的に説明した後、改めて作動を冷房と暖房に分けて説明する。図1は、上記第1実施形態としてのEV車用のヒートポンプサイクルを使用した車両用空調装置における冷媒回路図である(この詳細でない冷媒回路図自体では、開発過程のものと同一である)。図1中1は空気通路をなすダクトで、車室内に配置されている。
【0052】
このダクト1の一方にはファンケース2が接続され、ファンケース2内にはシロッコファン3から成る送風機4が配置されている。この送風機4はその中央部に配置された送風機モータ5によって回転駆動される。さらに、ファンケース2には内外気切替部6が接続され、この内外気切替部6には内気導入口7と外気導入口8とが開口している。
【0053】
また内外気切替部6には内外気切替ダンパ9が配置されており、この内外気切替ダンパ9により、ダクト1に導入される空気を室内空気と車外空気とで切り替えることができる。ダクト1の図1上方には空調された空気を車室内に向けて吹出す図示しない吹出口が形成されている。
【0054】
この吹出口は、乗員の頭胸部に向けて主に冷風を吹出すフェイス吹出口と、乗員の脚元に向けて主に暖風を吹出すフット吹出口と、窓ガラスに向けて主に暖風を吹出すデフ吹出口とが形成されている。そして、各吹出口にはそれぞれ吹出口への空気流を制御するフェイスダンパ、フットダンパ及びデフダンパが設けられている。
【0055】
また、ダクト1内には冷凍サイクルを構成する室内蒸発器11が配置されている。そして、この室内蒸発器11の下流側には、同じく冷凍サイクルを構成する室内凝縮器12が配置されている。なお、室内蒸発器11は、空調空気と熱交換時に空気中より気化熱を奪って空気の冷却を行い、冷却器として作動する。
【0056】
一方、室内凝縮器12は、熱交換時に空気中に凝縮熱を放出して空気の加熱を行い、加熱器として作動する。そして、室内蒸発器11と室内凝縮器12とで室内熱交換器11、12を構成している。
【0057】
ダクト1内の室内凝縮器12の側方にはバイパス通路15が配置されており、ダクト1内にはこのバイパス通路15を流れる空気の風量と、室内凝縮器12を流れる空気の風量との割合を連続的に可変制御するエアミックスダンパ16が一端を中心に回動自在に配置されている。
【0058】
なお、冷凍サイクルは、図示しない電気モータにより駆動され冷媒を圧縮吐出する圧縮機20を備える。この圧縮機20は、電動モータと一体的に密封ケース内に配置されるため、その設置場所は特に限定されない。
【0059】
ただ、保守点検等の要求より自動車の車室以外の部位に圧縮機20が配置されることが望まれる。室外熱交換器21は、車外空気と良好な熱交換が行えるよう、自動車の進行方向前方に配置される。
【0060】
即ち、室外熱交換器21は、自動車走行時には走行風を受け、冷媒と空気の熱交換が良好に行えるようになっている。上述のダクト1内の室内凝縮器12は、特に、パイロット式電磁弁から成る弁手段25を成す電磁弁及び暖房用絞り26を介して、室外熱交換器21と冷媒配管によって結ばれている。
【0061】
図示しない操作パネルは、車室内の乗員の視認し易い位置に配置される。操作パネル内には、送風機モータ5の回転数を制御するファンレバー、エアミックスダンパ16の開度を制御する温度調節レバー、各吹出口ダンパを制御するモード切替レバー、内外気切替ダンパ9を切替制御する操作レバー、空調装置の作動を開始するエアコンスイッチ、空調装置を省動力運転するエコノミースイッチ、空調装置の作動を停止するオフスイッチ等が設けられている。
【0062】
室内蒸発器11の出口側の空気温度を検出する図示しない温度センサからの信号に基づき、室内蒸発器11出口側温度が3度ないし4度になるように圧縮機20の回転数が制御される。但し、上記エコノミースイッチが投入された時には、上記温度センサからの信号に基づき、室内蒸発器11出口側の空気温度が10ないし11度となるように圧縮機20の回転数が可変制御される。
【0063】
図示しないエアコンスイッチの投入及びファンスイッチをLO、MID、もしくはHI状態にすることで、圧縮機20が回転起動し、かつ送風機モータ5が選択された回転数で回転する。
【0064】
車室内冷房時においては、圧縮機20より吐出された高温高圧の冷媒は、室内凝縮器12を通り、弁手段25から室外熱交換器21に流入して凝縮する。三方弁30が冷房用絞り31側に冷媒を流すように切り替わっており、室外熱交換器21で凝縮した冷媒が冷媒用絞り31を成す固定絞りを介してダクト1内の室内蒸発器11を通過した後、アキュムレータ35内で気液分離され、圧縮機20に供給される。
【0065】
冷房用絞り31で断熱膨張し、低温低圧の霧状となった冷媒が室内蒸発器11に供給される。この室内蒸発器11で送風機4より供給された空気と熱交換する。すなわち空気中より気化熱を奪い、冷媒は低圧のまま蒸発する。そして蒸発した冷媒は再び圧縮機20に吸入される。
【0066】
エアミックスダンパ16に関して図1中破線で示したのは、エアミックスダンパ16が全閉となった状態である。すなわち、この全閉状態では室内凝縮器12には、空気流が導入されない。従って、冷媒の凝縮は室外熱交換器21でなされることになる。
【0067】
そして、破線に示したように、エアミックスダンパ16を全閉とした状態では、室内凝縮器12によるエンタルピの損失が無視できるため、室内蒸発器11の冷却機能をそのまま冷房用に用いることができる。
【0068】
次に、この際の空気の流れ状態につき説明する。内外気切替ダンパ9により選択的に供給された空気は送風機4より室内蒸発器11に供給される。ここで室内蒸発器11通過時に冷媒の気化によって冷却され、出口側空気温度が3度ないし4度となった状態でバイパス通路15及び室内凝縮器12へ向かう。
【0069】
この空気流はエアミックスダンパ16によって適宜選択される。すなわち最大冷房が要求される状態ではエアミックスダンパ16が室内凝縮器12を閉じ、冷却された空気をそのまま吹出口側へ導く。
【0070】
冷房が効きすぎるので、吹出し空気の温度を高めたい時には、圧縮機の回転数を下げる。そして圧縮機の回転数を下げても充分に温度が上がらない場合に、エアミックスダンパ16を開き、空気の一部を室内凝縮器12へ流す。この室内凝縮器12へ流れた空気は、室内凝縮器12下流のエアミックスチャンバーでバイパス通路15を通過した冷気と混合される。
【0071】
混合された空気は、各吹出口への空気流を制御する周知のフェイスダンパ、フットダンパ及びデフダンパの切り替えにより車室内に吹出される。図示しない操作パネルのモードスイッチがフェイスモードの時はフェイスダンパのみ開き、他のフットダンパ及びデフダンパは閉じる。従って、冷風が主に乗員の頭胸部に向けて吹出されることになる。
【0072】
モードスイッチをバイレベルモードとした時には、デフダンパが閉じ、フェイスダンパ及びフットダンパが開く。
【0073】
モードスイッチをフットモードとした時にはフットダンパのみ開き、他のフェイスダンパ及びデフダンパは閉じる。その結果、室内凝縮器12を通過した空気がフット吹出口より乗員の足元部に吹出される。
【0074】
モードスイッチをデフモードとした場合にはデフダンパのみ開き、他のフェイスダンパ及びフットダンパは閉じる。その結果、空気がデフ吹出口より自動車の窓ガラスに向けて吹出される。
【0075】
上述の例では、エアミックスダンパ16の開度や送風機モータ5の回転数及び圧縮機20の回転数を乗員のマニュアル操作により行うようにしても、自動操作とするようにしてもよい。
【0076】
なお、圧縮機20の吐出容量を減少させるときは、実際の温度の方が目標とする温度より低い場合のように、冷凍装置としての車両用空調装置の能力が過剰となっている状態であり、インバータの周波数を下げ、圧縮機20を駆動する回転速度を低下させて圧縮機20の吐出容量を減少する。
【0077】
なお、図1に示すように、この第1実施形態では冷凍サイクルがアキュムレータサイクルとなっている。すなわち室内蒸発器11の出口側で圧縮機20の吸入側に冷媒を溜めるアキュムレータ35が設置され、一方、減圧手段としては、冷房用絞り31となるキャピラリーチューブを用いている。
【0078】
以下において、冷房暖房の切替が可能なEV車に搭載された第1実施形態の車両用空調装置において、主として空調装置内の制御弁に関して説明する。以下、制御弁として、特にパイロット電磁弁から成る弁手段25と三方弁30を成す差圧弁とを同一ボディ40内に配置した冷媒流路切替制御弁41を採用した例について述べる。
【0079】
図2は、図1の冷媒配管図を、更に詳細に、実体に即して書いた実体冷媒配管図である。図2において、ダクト1内の室内凝縮器12は、室外熱交換器21と電磁弁から成る弁手段25及び暖房用絞り26を介して冷媒配管によって結ばれている。また、三方弁30が設けられている。
【0080】
図2において、上記電磁弁から成る弁手段25、暖房用絞り26、及び三方弁30は同一のつまり共通のボディ40内に収納されている。すなわち、室外熱交換器21と室内凝縮器12の間の弁手段25及び、この弁手段25に対して流路が並列に設けられた暖房用絞り手段を成す暖房用絞り26、更に室外熱交換器21に接続された三方弁30を同一の金属より成るボディ40内に一体に収納している。なお、弁手段25の一例として電磁弁、特に、パイロット式電磁弁を採用している。
【0081】
電磁弁から成る弁手段25の開閉に伴って弁作動が切り替わる差圧弁から三方弁30を形成している。詳細は後述するが、電磁弁から成る弁手段25が閉弁すると、三方弁30の弁体の一方の圧力である圧力導入路42の圧力と三方弁30内の弁体の他方の圧力との差圧、及びばね力との関係で弁体が駆動されて三方弁30が作動する。
【0082】
ボディ40内に室内凝縮器12からの冷媒が流れる弁手段入口側流路44と室外熱交換器21に冷媒を流す弁手段出口側流路45とが形成されている。弁手段25は、弁手段入口側流路44と弁手段出口側流路45との間に介在している。
【0083】
暖房用絞り26は、弁手段25を介さずに、弁手段入口側流路44と弁手段出口側流路45との間を橋絡している細径流路からなる。この細径流路から成る暖房用絞り26は、弁手段入口側流路44と弁手段出口側流路45より細径でボディ40内に形成されている。
【0084】
弁手段出口側流路45から室外熱交換器21を経由した冷媒が導かれる三方弁30のコモン流路50をボディ40内に有する。コモン流路50に連通する三方弁30内のコモン室51の一方側と他方側に、第1切替流路55と第2切替流路56とを同一のボディ40内に有する。第1切替流路55と第2切替流路56には、第1切替配管55aと第2切替配管56aが夫々接続されている。
【0085】
図3は、図2に示したボディ40内に収納された弁手段25、絞り手段を成す暖房用絞り26(図3では見えない)、及び三方弁30から成る、冷媒流路切替制御弁41の具体的構成を示した一部断面図である。
【0086】
図3において、弁手段25は特にパイロット式電磁弁である。三方弁30は、第1切替流路55と第2切替流路56との間を往復動する往復弁体60の動きに応じてコモン流路50を第1切替流路55と第2切替流路56のいずれかに連通させる。
【0087】
往復弁体60は、弁手段入口側流路44から圧力導入路42を介して往復弁体60の一方側の圧力室61に導入された圧力とコモン流路50に連通したコモン室51の圧力との差圧で往復動する。つまり三方弁30は、差圧弁から構成されている。
【0088】
三方弁30は、往復弁体60の一方側の圧力室61に導入された圧力とコモン流路50ないしコモン室51の圧力との差圧と、往復弁体60の他方側のばね収納室62に設けられたばね部材となる単一のコイルスプリング63の弾性力とで往復弁体60が往復動する。
【0089】
往復弁体60の往復運動方向と直交方向に第1切替流路55の始端と第2切替流路56の始端が存在する。往復弁体60は一対の第1往復弁体部60a及び第2往復弁体部60bと、これらの第1、第2往復弁体部60a、60b間を橋絡する連結棒から成る連結部材60cとから構成されている。
【0090】
コモン流路50が連通するコモン室51には円筒形状の第1弁座65を構成する第1突起と、第2弁座66を成す第2突起が形成されている。往復弁体60の動きによって第1往復弁体部60aが第1弁座65と対面し、第1往復弁体部60aのシール部60a1が第1弁座65に圧接されて、コモン流路50と第1切替流路55との連通状態を遮断することが可能である。
【0091】
一方、往復弁体60の動きによって第2往復弁体部60bが第2弁座66と図3のように対面し第2往復弁体部60bのシール部60b1が第2弁座66に圧接されて、コモン流路50と第2切替流路56との連通状態を遮断することが可能である。
【0092】
このように、電磁弁から成る弁手段25のON/OFFに応じて差圧弁を成す三方弁30が所定位置に移動する事で冷房回路と暖房回路とに切り替わる。往復弁体60の第1往復弁体部60a、第2往復弁体部60b、第1弁座65、及び第2弁座66によって一対のポペット弁部60a、60b、65、66を構成している。
【0093】
この一対のポペット弁部60a、60b、65、66は、一対のポペット弁部60a、60b、65、66のうちの一方のポペット弁部60a、65に固定された上記連結部材60cを成す連結棒が、他方のポペット弁部60b、66に挿入されているため、連結部材60cを介して一方と他方のポペット弁部相互間が連結されている。
【0094】
このように一対のポペット弁部60a、60b、65、66を使用することによって、往復弁体60のスライド距離が小さくても、大きな開口面積の流路の開閉が可能となり、弁の小型化が可能となる。また、高いシール性能を確保できるため、選択されなかった流路に冷媒が漏れることがない。
【0095】
図2において、室外熱交換器21とボディ40とは第1ジョイント部71、及び第2ジョイント部72を介して接続されている。ボディ40内の弁手段入口側流路44と冷媒配管としての弁手段入口配管44aとは、第3ジョイント部73によって接続されている。
【0096】
更に、ボディ40内の第1切替流路55と冷媒配管としての第1切替配管55aとは、第4ジョイント部74によって接続されている。ボディ40内の第2切替流路56と冷媒配管としての第2切替配管56aとは、第5ジョイント部75によって接続されている。
【0097】
このように、ボディ40には5つのジョイント部(配管接続口)71、72、73、74、75が取り付けられており、大きく分けて上部の電磁弁から成る弁手段25部分のジョイント部71、73と下部の三方弁30部分のジョイント部72、74、75より成り立っている。
【0098】
図4は、図3の冷媒流路切替制御弁41がコモン流路50と第1切替流路55とを遮断した状態の具体的構成を示した一部断面図である。図4においては、電磁弁から成る弁手段25はOFF(閉成)している。
【0099】
電磁弁から成る弁手段25はOFF(閉成)により、弁手段25の下流側(二次側)の圧力が低下し、圧力導入路42を通して流れる圧力室61内の圧力とコモン室51の圧力との差圧で、第1往復弁体部60aが第1弁座65に当接して、コモン流路50と第1切替流路55との連通状態を遮断する。一方、第2往復弁体部60bが第2弁座66から離間して、コモン流路50と第2切替流路56との連通状態を形成する。
【0100】
図4において、弁手段入口側流路44から電磁弁から成る弁手段25内に入った冷媒は、ボディ40内の弁手段出口側流路45を通り図2の第1ジョイント部71を介して室外熱交換器21に流れ込む。図5は、図4の冷媒流路切替制御弁41の右側面図である。図2の室外熱交換器21と室内凝縮器12の間の弁手段25に並列に設けられた絞り手段を成す暖房用絞り26が図5のように設けられている。
【0101】
この暖房用絞り26は、電磁弁から成る弁手段25を完全に閉弁しても微小の冷媒がバイパスして流れる細径流路から形成される。図5のように暖房用絞り26を成す細径流路は、ボディ40内に形成され、電磁弁から成る弁手段25の弁座の上流側から冷媒を弁手段出口側流路45側に漏らすバイパス用の隙間流路を構成している。
【0102】
また、図5に示されているように、ボディ40には第1ジョイント部71と第2ジョイント部72とが設けられ、これらの第1ジョイント部71と第2ジョイント部72には、図2に示すように室外熱交換器21が配管を介さず直接取付けられている。
【0103】
すなわち、図5の第1ジョイント部71と第2ジョイント部72は、雌型ジョイントしか図示していないが、この雌型ジョイントに室外熱交換器21と一体化された図示しない雄型ジョイントが直接結合される。これにより配管の本数が少なくなっている。
【0104】
以下、上記実施形態の作動について説明する。冷房、暖房それぞれについて冷媒の流れを追って説明する。
【0105】
<冷房時>
図2において、圧縮機20から吐出された高温高圧冷媒は室内凝縮器12に流入する。ただし、HVACを構成するダクト1内のエアミックスダンパ16は、破線の位置であるMAX COOL位置に保持されているため、ダクト1内空気と室内凝縮器12との熱交換は行われない。
【0106】
室内凝縮器12からの冷媒は、統合弁を成す冷媒流路切替制御弁41の第3ジョイント部73を成す配管接続口に流入する。冷房時は電磁弁から成る弁手段25が開くように図示しない制御回路からの信号で弁手段25が駆動されるため、冷媒は、高温高圧冷媒のまま弁手段出口側流路45から第1ジョイント部71を通り室外熱交換器21へ流入する。
【0107】
室外熱交換器21で凝縮した高圧液冷媒は、第2ジョイント部72より再び冷媒流路切替制御弁41内に流入する。ここで、図3における差圧弁から成る三方弁30の往復弁体60には、右向きの力F1=S1(P1−P2)と、左向きの力F2=kΔX
(S1:往復弁体60の受圧面積、P1:第1往復弁体部60aの左側に印加される単位面積あたりの圧力、P2:第1往復弁体部60aの右側に印加される単位面積あたりの圧力、k:コイルスプリング63のばね定数、ΔX:コイルスプリング63のたわみ長)が印加されている。なお、第2往復弁体60bには、後述する均圧孔67が設けられているため、第2往復弁体60bの左右両側から印加される圧力は略等しくなる。
【0108】
ここで、上述のように電磁弁から成る弁手段25が開いているときは、F1<F2となるようにコイルスプリング63を選定しているため、往復弁体60は、図3のように左に移動している。
【0109】
よって、図2の室外熱交換器21から図3のコモン流路50に流れてきた高圧液冷媒は、矢印Y3のように、第1切替流路55及び図2の第1切替配管55aを通って、冷房用絞り31へと流れる。
【0110】
この固定絞りから成る冷房用絞り31により減圧された低圧2相冷媒は、室内蒸発器11で蒸発する。室内蒸発器11を通過した冷媒は、アキュムレータ35から圧縮機20へと流れる。
【0111】
<暖房時>
圧縮機20から吐出された高温高圧冷媒は、室内凝縮器12に流入する。室内凝縮器12の熱は送風機4からのブロア風と熱交換する。室内凝縮器12からの冷媒は、図2の統合弁から成る冷媒流路切替制御弁41の第3ジョイント部73を成す配管接続口に流入する。
【0112】
暖房時は、電磁弁から成る弁手段25が閉じるように図示しない制御装置からの制御信号により弁手段25が制御されているため、冷媒は暖房用絞り26にて減圧され、低圧2層冷媒となり、第1ジョイント部71を通り室外熱交換器21へ流入する。そして、室外熱交換器21で蒸発した低圧ガス冷媒は、第2ジョイント部72より再び統合弁から成る冷媒流路切替制御弁41内に流入する。
【0113】
上述のように、電磁弁から成る弁手段25が閉じていることにより、図4の弁手段25の下流側の圧力が低下し、第1往復弁体部60aの左側に印加される単位面積当たりの圧力P1と第1往復弁体部60aの右側に印加される単位面積当たりの圧力P2の差圧が右向きの力F1>左向きの力F2となり、往復弁体60は右に移動する。
【0114】
よって、図2の室外熱交換器21から流れてきた低圧ガス冷媒は、図4のコモン流路50から矢印Y4のように第2切替流路56及び図2の第2切替配管56aを通り、アキュムレータ35から圧縮機20へと流れる。
【0115】
以上より、1つの電磁弁から成る弁手段25への制御信号で冷房回路と暖房回路との切替が可能となる。差圧弁から成る三方弁30を2つのポペット弁部(図4の第1往復弁体部60a、第2往復弁体部60b、連結部材60c、第1弁座65、及び第2弁座66)で構成したことにより、往復弁体60のスライド距離(弁体が移動するストローク)が小さくても、大きな流路開口面積での開閉が可能となる。したがって、この第1実施形態は、後述するスプール弁を用いる実施形態よりも統合弁から成る冷媒流路切替制御弁41のボディ40の小型化が可能である。次に各部の寸法及び構造について更に説明する。
【0116】
(1)暖房用絞りの一体化
電磁弁から成る弁手段25の外側のボディ40内に図5に示したように、直径0.8mm〜1.0mmの細径流路から成る暖房用絞り26を構成している。暖房時に、主弁となる電磁弁から成る弁手段25が閉じた際、冷媒は、この暖房用絞り26で減圧されて弁手段出口側流路45から室外熱交換器21へと流れる。暖房用絞り26をボディ40内に一体化することで配管接続部が減少し、システムの簡素化、コストダウンが可能となる。
【0117】
(2)室外熱交換器に冷媒流路切替制御弁を直接取付ける構造
図2及び図5に示すように、ボディ40には第1ジョイント部71及び第2ジョイント部72が設けられている。第1ジョイント部71及び第2ジョイント部72は、室外熱交換器21と一体の図示しない一対の雄型ジョイントに、図5の弁手段出口側流路45とコモン流路50を内部に形成する一対の雌型ジョイントを結合してボディ40と室外熱交換器21とを一体化している。
【0118】
この構造にすることにより、省スペース、及び接続配管の削減が可能となる。なお、雌型ジョイントに雄型ジョイントを嵌合して結合し、嵌合部分はOリングでシールしている。
【0119】
(3)スライド弁部(一対のポペット弁部)の構造に関して
図3に示すように、例えば、水平方向の同一直線状に、対となる第1、第2弁座65、66と第1、第2往復弁体部60a、60bを配置し、第1、第2往復弁体部60a、60bがスライドする円筒状のコモン室51を形成している。このコモン室51からボディ40の外側へ冷媒通路となる第1切替通路55と第2切替通路56とを設けている。
【0120】
図6は、図3の矢印Z6−Z6線に沿う一部断面図、図7は、図3の矢印Z7−Z7線に沿う一部断面図である。これらの図6、図7から判明するように、コモン室51内で円筒形の第1弁座65、第2弁座66が設けられ、この第1弁座65、第2弁座66内に連結部材60cが延在している。また、コモン室51に連通するコモン流路50と第1切替流路55及び第2切替流路56とは90度回転させている。
【0121】
図3の第1、第2往復弁体部60a、60bを有する往復弁体60は、ばね部材と成るコイルスプリング63により第2往復弁体部60bが第2弁座66に対して閉弁する方向に力を発生させているが、このコイルスプリング63のばね力を調整螺子64により容易に変更可能としている。
【0122】
(4)第2往復弁体60bに微小貫通孔から成る均圧孔67を開けた構造
この微小貫通孔から成る均圧孔67によって、コイルスプリング63が存在するばね収納室62に冷媒が押し込められ、ばね収納室62の内圧が上がることで、往復弁体60の作動である弁動作が不安定になるのを回避している。
【0123】
かつ、電磁弁から成る弁手段25のOFFからONの切替時に、差圧弁を成す往復弁体60の作動である弁動作が一気に切り替わることによる振動、及び騒音を低減可能である。なお、往復弁体60には弁座用のシール部60a1、60b1及びピストンリング60a2、60b2が設けられている。
【0124】
また、可動弁体を成す往復弁体60を主として第1、第2往復弁体60a、60bの2部品で構成し、一方の弁体60aにはロッドから成る連結部材60cが一体部品となっており、他方の弁体60bには連結部材60cを受ける穴を設けた構造を採用している。この形状にすることで、ボディ40内に差圧弁の構成部品である第1、第2往復弁体60a、60b及び連結部材60cを挿入可能になる。
【0125】
以上のように、この実施形態に言う統合弁となる冷媒流路切替制御弁41は、室外熱交換器21への流路の選択(大口径の電磁弁から成る弁手段25を通過するか暖房用絞り26を通過するかの選択)を行う作用と、室外熱交換器21出口側の流路の選択(冷房時であって冷房用絞り31から室内蒸発器11への流路、あるいは暖房時であってアキュムレータ35への流路の選択)作用とを単一の弁用のボディ40内に組み込んだ装置である。
【0126】
このように、三方弁30、及び弁手段25を有する冷媒流路切替制御弁41を同一のボディ40内に収納し一体化した統合弁としているため、小型化することができ、配管の接続部及び分岐部が減少する。このため、システムの構造が簡素化され、コストダウン及び省スペース化が達成できる。
【0127】
なお、電磁弁には、直動型とパイロット式があり、直動型は、電磁石の吸引力だけで作動を切り替えるが、大きな弁をバネに逆らって動かすために駆動電流が大きい。このように、直接ソレノイドの電磁力で冷媒通路を開閉する直動型の電磁弁でなく、ソレノイドの電磁力でパイロット通路と呼ばれる小さな通路の開閉状態を切替え、それによって大きな冷媒通路開閉用弁体を駆動するパイロット式電磁弁が周知である。
【0128】
この実施形態では、パイロット式電磁弁を電磁弁から成る弁手段25として使用している。こうすることにより、弁手段25を小型化することができる。このパイロット式電磁弁の例は、特開2003−254467号公報及び特開平9−264449号公報に開示されている。
【0129】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。
【0130】
図8は、本発明の第2実施形態を示す三方弁30としてスプール弁を採用した冷媒流路切替制御弁41の具体的構成を示した一部断面図である。図8において、25は弁手段を成す特にパイロット式電磁弁である。
【0131】
第1切替流路55と第2切替流路56との間を往復動する往復弁体60の動きに応じて三方弁30は、図2の室外熱交換器21からのコモン流路50からの冷媒を第1切替流路55と第2切替流路56のいずれかに連通させる。
【0132】
図8の弁手段入口側流路44から圧力導入路42を介して往復弁体60の一方側の圧力室61に導入された圧力とコモン流路50に連通したコモン室51の圧力との差圧を利用して往復弁体60が往復動する。つまり三方弁30は、差圧弁から構成されている。
【0133】
三方弁30は、往復弁体60の一方側の圧力室61に導入された圧力とコモン室51の圧力との差圧と、ばね部材となる単一のコイルスプリング63の弾性力とで往復弁体60が往復動する。
【0134】
往復弁体60の往復運動方向と直交方向に第1切替流路55の始端と第2切替流路56の始端が存在する。往復弁体60は一対の第1往復弁体部60a及び第2往復弁体部60bと、これらの第1、第2往復弁体部60a、60b間を橋絡する連結部材60cとから構成されている。
【0135】
連結部材60cは、円筒形の弁体の外周を一部切削して、室外熱交換器21からコモン流路50を介して流れこんだ冷媒が、ばね収納室を兼ねるコモン室51の内部と第2往復弁体部60bの内部を通過して、全方向に冷媒を吹出すことが可能とされた部分からなる。
【0136】
図8では、往復弁体60の動きによって第2往復弁体部60bが第2切替流路56と対面し、第2切替流路56を閉塞している。この時、第1往復弁体部60aは第1切替流路55を閉塞しておらず、コモン流路50からの冷媒は第1切替流路55に矢印Y8のように流れる。
【0137】
図9は、図8の状態から往復弁体60が右方向へ移動した状態を示すスプール弁を採用した冷媒流路切替制御弁41の具体的構成を示した一部断面図である。
【0138】
このように、電磁弁から成る弁手段25が閉弁し、弁手段25の下流側の圧力が低下して、往復弁体60の図9右方向への動きによって、第2往復弁体部60bが第2切替流路56を開放し、第1往復弁体部60aが第1切替流路55を閉塞すると、図2の室外熱交換器21からのコモン流路50と第1切替流路55とが遮断され、コモン流路50と第2切替流路56とが連通する。
【0139】
このように、電磁弁から成る弁手段25のON/OFFに応じて、差圧弁を成す三方弁30のスプール弁を構成する往復弁体60が所定位置に移動する事で冷房回路と暖房回路とに切り替わる。
【0140】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、以降の各実施形態においては、上述した第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成および特徴について説明する。
【0141】
図10は、本発明の第3実施形態を示す。この第3実施形態では弁手段として電動弁を採用している。図10は、冷媒流路切替制御弁41の具体的構成を示した電動弁全開時の一部断面図である。また、図11は、図10の電動弁が微小開度の漏れ通路を残して閉弁した状態を示した一部断面図である。図10、図11において、25は弁手段をなす電動弁であり、モータ部分にステップモータを採用している。
【0142】
弁手段入口側通路44からは、例えば1.7MPa程度の圧力の冷媒が冷媒流路切替制御弁41内に導かれる。この弁手段入口側通路44と、図2の室外熱交換器21に向かう弁手段出口側流路45との間に、冷媒通路を開閉する電動弁から成る弁手段25の弁体と弁座を有する。
【0143】
この弁体が動くストロークは、電動弁から成る弁手段25内のステップモータの回転角度によって制御される。従って、電動弁から成る弁手段25の弁体と弁座とは可変ストローク弁を形成し、弁手段25を成す電動弁の開度を冷凍サイクルの運転状態に見合った理想的なポイントに設定できる。
【0144】
図11は、図9の電動弁から成る弁手段25を採用した冷媒流路切替制御弁41が少し開いた状態を保つ位置まで弁手段25の弁体が弁座に接近した位置で停止した状態を示した一部断面図である。この電動弁から成る弁手段25は、全開機能付き電子膨張弁とも称されるものであり、冷媒が流れる弁口径として直径10mm程度の寸法を有する。
【0145】
この電動弁から成る弁手段25は、冷房時には図10のように全開して図2の室内凝縮器12からの冷媒を圧力降下最小の状態で室外熱交換器21へと流す。この時、弁手段25の下流側の圧力が高くなる。一方、弁手段入口側流路44から圧力導入路42を介して往復弁体60の一方側の圧力室61に導入される圧力は弁手段25の開閉であまり変化しない。
【0146】
また、ばね手段をなすコイルスプリング63の設定圧は0.3〜0.2MPa付近に設定されている。このため、図10のように往復弁体60は左に移動する。これにより図2の室外熱交換器21を通過した冷媒は、第1切替流路55を流れて図2の室内蒸発器11に向かう。
【0147】
一方、暖房時に、電動弁から成る弁手段25は、図11のように、内部のステップモータが弁開度を微小開度に調整し、図2の室内凝縮器12からの高圧冷媒を減圧して室外熱交換器21へと流す。
【0148】
このときの状態は、図11のように、電動弁から成る弁手段25が閉弁した時の漏れ流路から暖房用絞り26が形成されている。すなわち、図11においては電動弁から成る弁手段25の弁体が弁座に完全に接触せず、接近した位置で停止することによって、暖房用絞り26を成す細径流路と同様の漏れ通路が形成できるようになっている。
【0149】
電動弁から成る弁手段25が、暖房用絞り26を成す細径流路と同様の漏れ通路を残して閉弁したときに、電動弁から成る弁手段25の下流側の圧力が低下する。このときの差圧弁から成る三方弁30は、弁手段入口側流路44から圧力導入路42を介して往復弁体60の一方側の圧力室61に導入された圧力とコモン流路50に連通したコモン室51の圧力との差圧が大きくなる。
【0150】
従って、往復弁体60は右に移動する。これにより図2の室外熱交換器21を通過した冷媒は、コモン流路50に連通したコモン室51と第2切替流路56を流れて図2の第2切替配管56aからアキュムレータ35に向かう。
【0151】
このように、暖房用絞り26を構成する微小隙間を残して閉弁する弁手段25を成す電動弁は、微小隙間の大きさである弁の開度を調整できる。また、微小隙間の大きさである弁の開度を調整できるから、冷媒サイクルの運転状態に適した開度に暖房用絞り26を弁手段25を成す電動弁で設定することができる。
【0152】
このため、暖房用絞り26を可変絞りとして構成することができる。このように、さまざまな運転条件に応じて暖房用絞り26の微小隙間の大きさを最適値に制御できる構造を提供できることで、第1、第2実施形態のような固定暖房用絞りに比べ空調性能を向上させることができる。
【0153】
車両用空調装置は、車室内温度が設定温度よりかなり低く車室内温度と設定温度の偏差が大きいときは暖房負荷が大きくなる。固定暖房用絞りでは、暖房負荷が高い時に微小隙間が小さ過ぎて室内凝縮器12でのサブクールが極大になり空調装置の必要入力が増加してエネルギー効率が悪化する。
【0154】
一方、暖房負荷が低い時には、固定暖房用絞りの場合、微小隙間が大き過ぎて、室外熱交換器で冷媒が充分に蒸発できず、アキュムレータ35に冷媒が溜まる運転となり、室内凝縮器12でのサブクールが極小となることによる性能低下等の問題を生じる。しかし、上述のように暖房用絞り26を可変絞りとして構成することにより、このような問題は解消でき、空調性能を向上させることができる。
【0155】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、次のように変形または拡張することができる。図12は、その他の実施形態を示す三方弁の要部を模式的に示した模式図である。
【0156】
図12において、第1、第2往復弁体部60a、60b間を橋絡する連結棒から成る連結部材60cの一端側は、第1往復弁体部60aと一体の材料から製作され、かつストッパ部60dも一体に形成されている。
【0157】
ストッパ部60dは、第1往復弁体部60aが左に行きすぎて圧力導入路42の出口を閉じないように第1往復弁体部60aの動きに制限を設けている。この場合、第1往復弁体部60aが、冷房時において、図12の(a)部分の位置にある。
【0158】
万一、冷房時において、第1往復弁体部60aが最も左側に移動しても、図12の(b)部分のように、連結部材60cの他端が第2往復弁体部60bの穴60b3から抜けないようにされ、かつ、ストッパ部60dが第1往復弁体部60aの動きに制限を設け、圧力導入路42の出口を閉じないようにしている。
【0159】
次に、暖房時においては、図12の(c)部分のように、第1往復弁体部60aが第1弁座65に当接し、第2往復弁体部60bが第2弁座66から離間する。この離間寸法Lsは、3mmから4mm程度でよい。
【0160】
次に、図5ないし図7において、冷媒通路を形成する第1切替流路55と第2切替流路56とは、図中下側に向かって延在するように構成したが、図6及び図7の連結部材60cの中心を中心として、図6においては反時計回りに、図7においては時計回りに、90度回転させた位置に第1切替流路55と第2切替流路56とが延在するようにしても良い。
【0161】
次に、第1実施形態を示す図5において説明したように、ボディ40には第1ジョイント部71と第2ジョイント部72とが設けられ、これらの第1ジョイント部71と第2ジョイント部72には、室外熱交換器21が配管を介さない直接取付け構造によって結合されている。
【0162】
図13は、上記直接取付け構造のその他の実施形態を示し、室外熱交換器21と冷媒流路切替制御弁41との結合状態を示す側面図である。つまり、図13は、冷媒流路切替制御弁41を室外熱交換器21に第1ジョイント部71及び第2ジョイント部72を介して結合した状態を示す冷媒流路切替制御弁41と室外熱交換器21との右側面図である。
【0163】
室外熱交換器21の入口及び出口に溶接またはロウ付けした雄型ジョイント23m、24mに、雌型ジョイント23f、24fを結合してスルーボルト22で螺子締めして取付ける。この構造にすることにより、省スペース、及び接続配管の削減が可能となる。なお、雌型ジョイント23f、24fに雄型ジョイント23m、24mを嵌合して結合し、嵌合部分はOリングでシールしている。このような構造を採用することにより、配管本数を削減することが出来る。
【符号の説明】
【0164】
1 ダクト
11 室内蒸発器
12 室内凝縮器
11、12 室内熱交換器
15 バイパス通路
16 エアミックスダンパ
20 圧縮機
21 室外熱交換器
23m、24m 雄型ジョイント
23f、24f 雌型ジョイント
25 弁手段
26 暖房用絞り
30 三方弁
31 冷房用絞り
35 アキュムレータ
40 ボディ
41 冷媒流路切替制御弁
42 圧力導入路
44 弁手段入口側流路
45 弁手段出口側流路
50 コモン流路
51 コモン室
55 第1切替流路
56 第2切替流路
55a 第1切替配管
56a 第2切替配管
60 往復弁体
61 圧力室
62 ばね収納室
63 コイルスプリング
60a 第1往復弁体部
60a、60b、65、66 一対のポペット弁部
60a、65 一方のポペット弁部
60b、66 他方のポペット弁部
60b 第2往復弁体部
60c 連結部材
60d ストッパ部
64 調整螺子
65 第1弁座
66 第2弁座
67 均圧孔
71 第1ジョイント部
72 第2ジョイント部
73 第3ジョイント部
74 第4ジョイント部
75 第5ジョイント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用のダクト(1)内に室内蒸発器(11)と室内凝縮器(12)とを備え、前記室内蒸発器(11)と前記室内凝縮器(12)と室外熱交換器(21)とに圧縮機(20)からの冷媒を流すヒートポンプサイクルによる熱交換を行う車両用空調装置であって、
前記室外熱交換器(21)の入口側と前記室内凝縮器(12)の間に設けられた弁手段(25)、
前記弁手段(25)によって開閉される前記冷媒の流路に対して並列に前記冷媒の流れを絞る流路が設けられた暖房用絞り手段(26)、
前記室外熱交換器(21)の出口側に連通したコモン流路(50)が設けられた三方弁(30)、
前記コモン流路(50)からの前記冷媒が、前記三方弁(30)を介して冷房運転時に流れる第1切替流路(55)、及び
前記コモン流路(50)からの前記冷媒が、前記三方弁(30)を介して暖房運転時に流れる第2切替流路(56)を備え、
前記弁手段(25)、前記暖房用絞り手段(26)、前記三方弁(30)、前記第1切替流路(55)、及び前記第2切替流路(56)の少なくとも一部を前記ボディ(40)内に収納して統合弁から成る冷媒流路切替制御弁(41)を構成したことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記三方弁(30)を前記弁手段(25)の開閉に伴って圧力が変化することにより弁作動が切り替わる差圧弁で構成したことを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記ボディ(40)と前記室外熱交換器(21)との接続は、前記室外熱交換器(21)に装着された接続部と前記ボディ(40)側に設けられた接続部とを凹凸嵌合させて形成した前記室外熱交換器(21)の入口側の第1ジョイント部(71)と、前記室外熱交換器(21)の出口側の第2ジョイント部(72)とで行い、前記第1ジョイント部(71)が前記弁手段(25)側に設けられ、前記第2ジョイント部(72)が前記コモン流路(50)側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記ボディ(40)内に前記室内凝縮器(12)からの前記冷媒が流れ込む弁手段入口側流路(44)と、前記室外熱交換器(21)に前記冷媒を流し込む弁手段出口側流路(45)とが形成され、
前記弁手段(25)は、前記弁手段入口側流路(44)と前記弁手段出口側流路(45)との間に介在し、
前記弁手段出口側流路(45)から前記室外熱交換器(21)を経由した前記冷媒が導かれる前記コモン流路(50)を前記ボディ(40)内に有し、
前記コモン流路(50)に連通する前記三方弁(30)内のコモン室(51)の一方側に前記コモン流路(50)と前記室内蒸発器(11)側とを接続する前記第1切替流路(55)を有し、前記コモン室(51)の他方側に前記圧縮機(20)側に戻る前記冷媒の流路を成す前記第2切替流路(56)を有することを特徴とする請求項1ないし3のうちいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記三方弁(30)は、前記第1切替流路(55)と前記第2切替流路(56)との間を往復動する往復弁体(60)を有し、
前記往復弁体(60)の動きに応じて、前記三方弁(30)は前記コモン流路(50)を前記第1切替流路(55)と前記第2切替流路(56)のいずれかに連通させ、
前記三方弁(30)は、前記弁手段入口側流路(44)から前記往復弁体(60)の一方側に圧力導入路(42)を介して導入された圧力と前記コモン流路(50)の圧力との差圧で往復動する差圧弁から構成されていることを特徴とする請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記弁手段入口側流路(44)から前記往復弁体(60)の一方側に導入された圧力は、前記ボディ(40)内に形成された前記圧力導入路(42)を介して導入されることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記三方弁(30)は、前記往復弁体(60)の一方側に導入された圧力と前記コモン流路(50)の圧力との差圧と、前記往復弁体(60)の他方側に設けられたばね部材(63)の弾性力とで、前記往復弁体(60)が往復動することによって前記往復弁体(60)の一部が第1弁座(65)及び第2弁座(66)に当接する一対のポペット弁部を有することを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記一対のポペット弁部は、前記一対のポペット弁部のうちの一方のポペット弁部と、該一方のポペット弁部に一端が固定された連結部材(60c)とを有し、前記一対のポペット弁部のうちの他方のポペット弁部に前記連結部材(60c)の他端が挿入され、前記連結部材(60c)を介して前記一対のポペット弁部が少なくとも所定方向に連動することを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記暖房用絞り手段(26)は、前記弁手段(25)と並列に形成された細径流路から成り、該細径流路は、前記弁手段内を前記冷媒が流れる流路よりも細径の前記ボディ(40)内に形成された流路からなることを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記弁手段(25)によって開閉される前記冷媒の流路に対して並列に前記冷媒の流れを絞る流路が設けられた前記暖房用絞り手段(26)は、前記弁手段(25)を完全に閉弁せずに微小隙間を残して閉弁動作する前記弁手段(25)閉弁後の隙間流路からなることを特徴とする請求項1ないし8のうちいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記微小隙間を残して閉弁する前記弁手段は、前記微小隙間の大きさである前記閉弁後の弁の開度を調整できる弁手段からなることを特徴とする請求項10に記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記閉弁動作後の弁の開度を調整できる弁手段(25)は電動弁からなることを特徴とする請求項11に記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記ヒートポンプサイクルは、更にアキュムレータ(35)と冷房用絞り(31)と第1切替配管(55a)と第2切替配管(56a)とを有し、前記コモン流路(50)からの前記冷媒を冷房運転時に流す前記第1切替流路(55)は、前記第1切替配管(55a)と前記冷房用絞り(31)とを介して前記室内蒸発器(11)に前記冷媒を流し、暖房運転時に冷媒を流す前記第2切替流路(56)は、前記第2切替配管(56a)と前記アキュムレータ(35)とを介して前記圧縮機(20)に前記冷媒を戻すことを特徴とする請求項1ないし12のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−235753(P2011−235753A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108610(P2010−108610)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】