説明

車両用空調装置

【課題】熱交換器をケースに収容する場合に、長期間経過しても熱交換器の振動がケースに伝達されにくくして異音の発生を抑制し、乗員の快適性を向上させる。
【解決手段】車両用空調装置は、熱交換媒体が流通する熱交換器10と、該熱交換器10を収容するケースとを備えている。車両用空調装置は、ケースに導入された空気を熱交換器10により温度調節して車両の室内に供給するように構成されている。熱交換器10は、熱交換媒体の流路を構成するチューブ35と、熱交換媒体の流路以外の部分を構成するエンドプレート40とを備えている。エンドプレート40がケースに支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される空調装置に関し、特に熱交換媒体が流通する熱交換器を備えた構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の車両用空調装置として、例えば、特許文献1に開示されているように、熱交換器と、熱交換器を収容するケースとを備えたものが知られている。ケースには、空気の導入口が形成されるとともに、吹出口が形成されている。ケース内の導入口と吹出口との間に熱交換器が配置されており、導入口から導入された空気が熱交換器を通過して温度調節された後、吹出口から吹き出すように構成されている。
【0003】
熱交換器は、冷凍回路の一要素を構成するエバポレータであり、内部には熱交換媒体が流通するようになっている。この熱交換器は、ケースの内面に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−258551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、熱交換器の外周部には、ケースの内面との間をシールするための発泡樹脂製のシール材が設けられることがあり、このシール材によって空気が熱交換器とケースの内面との間から洩れて下流側へ流れてしまうのを抑制することが可能になる。
【0006】
また、熱交換器を流通している熱交換媒体には脈動が生じていることがある。また、熱交換器を流通している熱交換媒体の流れが熱交換器の流路内壁に衝突するようになることもある。これらのことにより、熱交換器の流路を構成する部材が加振されて振動してしまう。
【0007】
一方、熱交換器のシール材は経年変化によってへたりが生じることがある。シール材がへたると、熱交換器における熱交換媒体の流通に起因する振動がケースに伝達されやすくなり、ケースが振動してしまう。ケースが振動すると異音となって乗員に届くことになるので、不快感を与えてしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、熱交換器をケースに収容する場合に、長期間経過しても熱交換器の振動がケースに伝達されにくくして異音の発生を抑制し、これにより、乗員の快適性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、熱交換器の熱交換媒体が流通しない部分をケースで支持するようにした。
【0010】
第1の発明は、熱交換媒体が流通する熱交換器と、
上記熱交換器を収容するケースとを備え、
上記ケースに導入された空気を上記熱交換器により温度調節して車両の室内に供給するように構成された車両用空調装置において、
上記熱交換器は、熱交換媒体の流路を構成する流路構成部材と、熱交換媒体の流路以外の部分を構成する非流路構成部材とを備え、
上記非流路構成部材が上記ケースに支持されることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、ケースに収容された熱交換器は、非流路構成部材がケースに支持されることになる。非流路構成部材は、流路構成部材と異なり、熱交換媒体の流路を構成していないので、熱交換媒体の脈動によって直接加振されることはなく、また、熱交換媒体の衝突によって直接加振されることもない。このように直接加振されない部分をケースで支持することで、熱交換器の振動がケースに伝達されにくくなる。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、
熱交換器は、伝熱用のフィンと、該フィンを保護するための保護プレートとを備え、
上記保護プレートがケースに支持される非流路構成部材であることを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、熱交換器をケースに支持するための部材を熱交換器にわざわざ設けることなく、フィンを保護する保護プレートを利用して熱交換器をケースに支持することが可能になる。また、保護プレートがフィンを保護するためのものなので、剛性が高く、熱交換器がしっかりと支持される。
【0014】
第3の発明は、第2の発明において、
保護プレートは、フィンにのみ接合されていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、保護プレートが流路構成部材に接合されなくなるので、流路構成部材の振動が保護プレートに伝達されにくくなる。
【0016】
第4の発明は、第1から3のいずれか1つの発明において、
非流路構成部材には、ケースに嵌合する嵌合部が設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、非流路構成部材の嵌合部をケースに嵌合させることにより、熱交換器がケースに固定される。
【0018】
第5の発明は、第4の発明において、
嵌合部は非流路構成部材に一体成形されていることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、嵌合部が別部材を設けることなく得られるので、部品点数が削減される。また、嵌合部の熱交換器本体に対する位置ずれも防止される。
【0020】
第6の発明は、第4の発明において、
嵌合部は、非流路構成部材とは別部材で構成され、該非流路構成部材に取り付けられていることを特徴とするものである。
【0021】
この構成によれば、嵌合部の材質を非流路構成部材と異ならせることができるので、振動伝達を効果的に抑制することが可能になる。
【0022】
第7の発明は、第6の発明において、
嵌合部は、振動吸収材であることを特徴とするものである。
【0023】
この構成によれば、振動がより一層伝達しにくくなる。
【0024】
第8の発明は、第4から7のいずれか1つの発明において、ケースには、嵌合部が嵌る凹部又は凸部が形成されていることを特徴とするものである。
【0025】
この構成によれば、ケースに凹部又は凸部が形成されることで、熱交換器がしっかりと固定されるとともに、該凹部又は凸部がリブのように機能することになり、ケースの剛性が向上する。
【発明の効果】
【0026】
第1の発明によれば、熱交換器の熱交換媒体の流路以外の部分を構成する非流路構成部材をケースに支持するようにしたので、熱交換媒体によって直接加振されない部分をケースで支持することができる。これにより、熱交換器における熱交換媒体の流通に起因する振動がケースに伝達されにくくなる。従って、従来のように熱交換器とケースとの間のシール材を利用して振動伝達の抑制を図る場合のようにシール材のへたりによる影響を受けにくく、騒音の発生を長期間に亘って抑制でき、乗員の快適性を向上できる。
【0027】
第2の発明によれば、熱交換器のフィンを保護する保護プレートをケースに支持するようにしたので、部品点数の増加を抑制しながら、熱交換器のケースへの振動伝達を抑制できる。さらに、保護プレートは高い剛性を持っているので、熱交換器をしっかりと支持でき、熱交換器自体の振動も抑制できる。
【0028】
第3の発明によれば、保護プレートをフィンにのみ接合するようにしたので、熱交換器における熱交換媒体の流通に起因する振動がケースに一層伝達されにくくなり、騒音をより低減できる。
【0029】
第4の発明によれば、非流路構成部材に、ケースに嵌合する嵌合部を設けたので、嵌合部をケースに嵌合させることによって、振動伝達を抑制しながら、熱交換器をケースに固定することができる。
【0030】
第5の発明によれば、嵌合部を非流路構成部材に一体成形したので、部品点数を削減して低コスト化を図ることができるとともに、嵌合部の位置ずれを防止して熱交換器を所定位置に固定できる。
【0031】
第6の発明によれば、嵌合部を非流路構成部材とは別部材で構成して該非流路構成部材に取り付けるようにしたので、嵌合部を、振動伝達の抑制可能な材質で構成することができる。これにより、騒音をより低減できる。
【0032】
第7の発明によれば、嵌合部を振動吸収材としたので、熱交換器の振動がケースに一層伝達されにくくなり、騒音を低減できる。
【0033】
第8の発明によれば、ケースに嵌合部が嵌る凹部又は凸部を形成したので、熱交換器をしっかりと固定できるとともに、ケースの剛性を向上させることができ、騒音をより低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態1にかかる車両用空調装置の内部構造を説明する図である。
【図2】エバポレータの正面図である。
【図3】シール材を貼り付ける前のエバポレータの正面図である。
【図4】シール材を貼り付ける前のエバポレータの側面図である。
【図5】ケースに収容したエバポレータのエンドプレート近傍の拡大図である。
【図6】実施形態2にかかる図5相当図である。
【図7】実施形態3にかかる図5相当図である。
【図8】実施形態4にかかる図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0036】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる車両用空調装置1を示すものである。この車両用空調装置1は、自動車の車室前端部に配設されたインストルメントパネル内に収容されている。尚、この実施形態では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。
【0037】
車両用空調装置1は、図示しない送風ユニットと、空調ユニット3(図1に示す)とを備えている。空調ユニット3は、車幅方向略中央部に配置され、送風ユニットは、助手席側(左側)に配置されている。送風ユニットは、車室外又は車室内の空気を取り入れて送風するように構成されている。
【0038】
空調ユニット3は、エバポレータ(冷却用熱交換器)10と、ヒータコア(加熱用熱交換器)11と、温度調節ダンパ12と、デフロスタダンパ13と、ベントダンパ14と、フットダンパ15と、これらを収容するケース16とを備えている。
【0039】
ケース16は、左側の略半分を構成する左側部材(図示せず)と、右側の略半分を構成する右側部材16aとを備えている。ケース16の左側壁の前部には、空気導入口20が形成されている。空気導入口20は、送風ユニットに接続されており、送風ユニットから送風された空気が導入されるようになっている。
【0040】
また、ケース16の上部には、インストルメントパネルのデフロスタノズルに接続されるデフロスタ吹出口21が形成されている。ケース16の後壁上部には、インストルメントパネルのベントノズルに接続されるベント吹出口22が形成されている。ケース16の後壁下部には、フットダクトに接続されるフット吹出口23が形成されている。
【0041】
ケース16の内部には、空気導入口20に接続される冷風通路R1が設けられている。冷風通路R1には、エバポレータ10が該通路R1を横切るようにして配置されている。冷風通路R1の下流側には、温風通路R2とエアミックス空間R3とが接続されている。温風通路R2には、ヒータコア11が該通路R2を横切るようにして配置されている。温風通路R2の下流側は、エアミックス空間R3に接続されている。温度調節ダンパ12は、冷風通路R1の下流端開口の開度と、温風通路R2の下流端開口の開度とを変更するように構成されている。
【0042】
また、ケース16の内部には、エアミックス空間R3に連通してデフロスタ吹出口21まで延びるデフロスタ通路R4と、エアミックス空間R3に連通してベント吹出口22まで延びるベント通路R5と、エアミックス空間R3に連通してフット吹出口23まで延びるフット通路R6とが形成されている。
【0043】
デフロスタダンパ13は、デフロスタ通路R4を開閉するものである。また、ベントダンパ14は、ベント通路R5を開閉するものである。また、フットダンパ15は、フット通路R6を開閉するものである。
【0044】
図2に示すように、エバポレータ10は、冷凍回路の蒸発器を構成するものであり、外部の圧縮機で圧縮された冷媒(熱交換媒体)が膨脹弁を介して導入されるようになっている。導入される冷媒は、気相冷媒と液相冷媒とが混合した気液2相冷媒である。
【0045】
図3に示すように、エバポレータ10は、コア30と、上部ヘッダタンク31と、下部ヘッダタンク32とを備えている。コア30は、上下方向に延びるチューブ35及びフィン36を左右方向に交互に並べて構成されており、チューブ35及びフィン36の並び方向両端部にはエンドプレート(保護プレート)40,40が設けられている。このエンドプレート40もコア30の一部を構成するものである。
【0046】
上部ヘッダタンク31と、下部ヘッダタンク32と、チューブ35とは、内部に冷媒の流れる流路を有しており、従って、上部ヘッダタンク31と、下部ヘッダタンク32と、チューブ35とは、本発明の冷媒の流路を構成する流路構成部材である。一方、フィン36と、エンドプレート40とは、流路を有しておらず、従って、フィン36と、エンドプレート40とは、本発明の冷媒の流路以外の部分を構成する非流路構成部材である。
【0047】
チューブ35は、空気の流れ方向に長い断面形状を有する偏平チューブであり、図4に示すように、空気流れ方向に2列並んでいる。フィン36は、図2や図3に示すように、空気の流れ方向から見て上下方向に連続する波形を有するコルゲートフィンである。チューブ35及びフィン36は、アルミニウム合金製である。チューブ35の側面に、フィン36における波形の頂部がろう付け接合されている。また、コア30におけるチューブ35及びフィン36の並び方向両端部(左右両端部)には、それぞれフィン36,36が位置しており、これらフィン36,36にエンドプレート40,40がろう付け接合されている。
【0048】
左右のエンドプレート40、40は同じ形状であるため、一方のエンドプレート40について詳細に説明する。エンドプレート40は、コア30の側面に沿って該コア30の上部から下部に亘って延びている。また、エンドプレート40の幅は、コア30の空気流れ方向の寸法と略同じに設定されており、フィン36がエンドプレート40で覆われる。
【0049】
エンドプレート40の肉厚は、チューブ35やフィン36の肉厚よりも厚く設定されている。従って、エンドプレート40は、チューブ35やフィン36に比べて高剛性に構成されている。このエンドプレート40によってコア30の外端部のフィン36が保護されるようになっている。
【0050】
エンドプレート40は、フィン36における波形の頂部にのみろう付け接合されている。エンドプレート40の上端部及び下端部は、上部ヘッダタンク31及び下部ヘッダタンク32と接触しておらず、これらヘッダタンク31,32にはろう付けされていない。また、エンドプレート40は、チューブ35にも接触していない。
【0051】
エンドプレート40の上下方向中央部近傍には、コア30の外方へ突出する突出部41が設けられている。この突出部41は、ケース16の側壁に支持されるものであり、エンドプレート40にプレス成形等によって一体成形されている。
【0052】
突出部41の上面部41aは、突出方向先端に行くほど下に位置するように傾斜した平坦面で構成されている。また、突出部41の下面部41bは、突出方向先端に行くほど上に位置するように傾斜した平坦面で構成されている。従って、突出部41は、突出方向先端に近づくほど上下方向の寸法が短くなる先細形状の断面を有している。
【0053】
上部ヘッダタンク31は、チューブ35及びフィン36の並び方向に長い略矩形の箱状に形成されている。上部ヘッダタンク31は、コア30側に位置するヘッダプレート31aと、コア30と反対側に位置するタンクプレート31bとを組み合わせて構成されている。上部ヘッダタンク31の左端部及び右端部には、それぞれ、右側キャップ31c及び左側キャップ31dが設けられている。ヘッダプレート31a、タンクプレート31b及びキャップ31c,31dは、アルミニウム合金製であり、互いにろう付け接合されている。
【0054】
ヘッダプレート31aには、チューブ35の上端部が挿入されるチューブ挿入孔(図示せず)が形成されている。チューブ35の上端部は、チューブ挿入孔に挿入された状態でチューブ挿入孔の周縁部にろう付けされている。
【0055】
また、図4に示すように、右側キャップ31cにおける空気流れ方向(白抜き矢印で示す)の下流側には、冷媒の供給管(図示せず)が接続される供給側接続管31eが設けられ、右側キャップ31cの空気流れ上流側には、冷媒の排出管(図示せず)が接続される排出側接続管31fが設けられている。
【0056】
図3に示すように、下部ヘッダタンク32は、上部ヘッダタンク31と同様な形状とされ、ヘッダプレート32aと、タンクプレート32bと、右側キャップ32cと、左側キャップ32dとを備えている。
【0057】
また、上部ヘッダタンク31及び下部ヘッダタンク32の内部には、複数の仕切板38(図4に一部のみ示す)が配設されており、空気流れ下流側のチューブ35によって3つのパスが形成され、空気流れ上流側のチューブ35によって3つのパスが形成されている。また、下流側のパスと上流側のパスとは適当な部位で連通している。従って、供給管から上部ヘッダタンク31の空気流れ下流側の空間に流入した冷媒は、まず、下流側の3つのパスを順に流れた後、上流側の3つのパスを流れて上部ヘッダタンク31の空気流れ上流側の空間に集合して排出管から外部に排出される。
【0058】
また、図2に示すように、上記エバポレータ10には、発泡樹脂材からなるシール材49が設けられている。シール材49は、弾性を有する材料が好ましく、例えば、ウレタン等が挙げられる。シール材49は、上部ヘッダタンク31の外面、下部ヘッダタンク32の外面、エンドプレート40,40の外面に連続するように貼り付けられている。このシール材49は、熱交換器1とケース16の内面との間をシールして空気が下流側へ洩れてしまうのを抑制するためのものである。
【0059】
一方、図5に示すように、上記エバポレータ10を収容するケース16の左右両側壁には、上下方向中間部に、エンドプレート40、40の突出部41,41の形成位置に対応するように、凹部50(左側のもののみ示す)が形成されている。凹部50には、突出部41が嵌合し、この状態で支持されるようになっている。
【0060】
凹部50は、ケース16に一体成形されている。凹部50の内面のうち、上側の面50aは、エンドプレート40の突出部41の上面部41aと略平行に延びている。また、凹部50の内面のうち、下側の面50bは、エンドプレート40の突出部41の下面部41bと略平行に延びている。凹部50が形成されることでケース16の剛性が向上する。
【0061】
上記のように構成された車両用空調装置1では、エバポレータ10をケース16に組み付けると、左右のエンドプレート40,40の突出部41,41がそれぞれケース16の凹部50に入り込んで嵌合する。これにより、エバポレータ10の左右両側がケース16に支持される。
【0062】
そして、エバポレータ10に冷媒が供給されると、上部ヘッダタンク31、チューブ35及び下部ヘッダタンク32を流通する。冷媒には、脈動が起こっていることがあり、この脈動によって上部ヘッダタンク31、チューブ35及び下部ヘッダタンク32が直接加振されることがある。また、例えば、冷媒が供給管から上部ヘッダタンク31に流入する際に、上部ヘッダタンク31の内壁に衝突して上部ヘッダタンク31が直接加振されることがある。
【0063】
このとき、本実施形態では、エバポレータ10のエンドプレート40をケース16に支持している。エンドプレート40は非流路構成部材であるため、冷媒によって直接加振されることはない。このように冷媒によって直接加振されない部材をケース16に支持したことで、上部ヘッダタンク31、チューブ35及び下部ヘッダタンク32の振動がケース16に伝達されにくくなる。
【0064】
また、エンドプレート40は、上部ヘッダタンク31、チューブ35及び下部ヘッダタンク32にろう付け接合されておらず、これら部材に接触していない。このことにより、上部ヘッダタンク31、チューブ35及び下部ヘッダタンク32の振動がケース16により一層伝達されにくくなる。
【0065】
また、エバポレータ10のエンドプレート40を利用してケース16に支持するようにしたので、ケース16に支持するための部材をエバポレータ10にわざわざ設けることなく、エンドプレート40を利用してエバポレータ10をケース16に支持することができる。また、エンドプレート40はフィン35を保護するためのものなので、剛性が高く、エバポレータ40がしっかりと支持される。
【0066】
また、組み付けられたエバポレータ10の重量は、エンドプレート40の突出部41,41にかかることになり、ケース16の左右両側壁で受けることになる。よって、シール材49のうち、特に下部ヘッダタンク32に貼り付けられている部分には、エバポレータ10の重量が殆どかからない。よって、シール材49の最もへたりやすい部分のへたりを抑えることが可能になる。これにより、シール材49のシール性を長期間に亘って確保することが可能になる。
【0067】
以上説明したように、この実施形態1にかかる車両用空調装置1によれば、エバポレータ10の冷媒の流路以外の部分を構成するエンドプレート40をケース16に支持するようにしたので、冷媒によって直接加振されない部分をケース16で支持することができる。これにより、エバポレータ10における冷媒の流通に起因する振動がケース16に伝達されにくくなる。従って、従来のようにエバポレータ10とケース16との間のシール材49を利用して振動伝達の抑制を図る場合のようにシール材49のへたりによる影響を受けにくく、騒音の発生を長期間に亘って抑制でき、乗員の快適性を向上できる。
【0068】
また、エバポレータ10のフィン35を保護するエンドプレート40をケース16に支持するようにしたので、部品点数の増加を抑制しながら、エバポレータ10のケース16への振動伝達を抑制できる。さらに、エンドプレート40は高い剛性を持っているので、エバポレータ10をしっかりと支持でき、エバポレータ10自体の振動も抑制できる。
【0069】
また、エンドプレート40をフィン35にのみ接合するようにしたので、エバポレータ10における冷媒の流通に起因する振動がケース16に一層伝達されにくくなり、騒音をより低減できる。
【0070】
また、突出部41をエンドプレート40に一体成形したので、部品点数を削減して低コスト化を図ることができるとともに、突出部41の位置ずれを防止してエバポレータ10を所定位置に固定できる。
【0071】
また、ケース16に突出部41が嵌る凹部50を形成したので、ケース16の剛性を向上させることができ、このことによってもケース16の振動を抑制できる。
【0072】
尚、エンドプレート40の突出部41の数は、1つに限られるものではなく、2つ以上であってもよい。この場合、ケース16には、突出部41の数に対応した数の凹部50を形成する。
【0073】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2にかかるものである。この実施形態2では、エバポレータ10のケース16への支持構造が実施形態1のものと異なるだけで他の部分が同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0074】
すなわち、上記実施形態1では、エンドプレート40の突出部41の形状を断面三角形状にしているが、本実施形態2では、突出部52を矩形断面を有する形状としている。突出部52の上面部52aは、エンドプレート40の突出部52以外の部分に対して略垂直に延びている。また、突出部52の下面部52bは、上面部52aと略平行に延びている。突出部52の縦面部52cは、上面部52aの先端縁と下面部52bの先端縁とを連結するように上下方向に延びている。
【0075】
一方、実施形態2のケース16の凹部53は、突出部52の形状に対応しており、矩形断面を有している。
【0076】
また、実施形態2では、突出部52に別体の弾性材(嵌合部)54が取り付けられている。弾性材54は、例えば、ゴム等で構成されており、突出部52が挿入される挿入用凹部54aと、ケース16の凹部53に嵌合する凸部54bとを有している。この凸部54bがケース16の凹部53に嵌合した状態でエバポレータ10がケース16に支持される。
【0077】
したがって、この実施形態2では、実施形態1と同様に、エバポレータ10の冷媒の流路以外の部分を構成するエンドプレート40をケース16に支持するようにしたので、エバポレータ10における冷媒の流通に起因する振動がケース16に伝達されにくくなる。従って、騒音の発生を長期間に亘って抑制でき、乗員の快適性を向上できる。
【0078】
また、エンドプレート40の突出部52とケース16の凹部53との間に弾性材54が介在することで、振動伝達がより一層抑制される。このとき、弾性材54がエンドプレート40と別体であり、材質の選定が自由に行えるので、振動吸収性の優れた材質にすることができ、振動伝達の抑制効果が十分に得られる。
【0079】
尚、弾性材54は、ゴム以外の樹脂材であってもよい。また、弾性材54は省略してもよい。
【0080】
また、エンドプレート40の突出部52の形状は、上記した形状に限られるものではなく、例えば、円弧状断面を有する突出部であってもよい。
【0081】
(実施形態3)
図7は、本発明の実施形態3にかかるものである。この実施形態3では、エバポレータ10のケース16への支持構造が実施形態1のものと異なるだけで他の部分は同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0082】
すなわち、上記実施形態1では、エンドプレート40の突出部41をケース16の凹部50に嵌合させているが、本実施形態3では、ケース16に突出部60を形成し、エンドプレート40に孔部61を形成し、突出部60を孔部61に挿入して嵌合させるようにしている。
【0083】
突出部60は、ケース16の左右側壁の内面に一体成形されており、ケース16内へ突出している。
【0084】
孔部61は、エンドプレート40を貫通するように形成されており、突出部60の外形状よりも大きく開口している。また、エンドプレート40の孔部61周りの部分は、他の部分に比べて、チューブ35及びフィン36の並び方向外側に位置しており、フィン36から離れている。
【0085】
突出部60の外周面と孔部61との間には、弾性材63が介在している。弾性材63はリング状に形成されており、材質は実施形態2の弾性材54と同様なものである。
【0086】
突出部60を凹部61に嵌合させることにより、エバポレータ10がケース16に支持される。
【0087】
したがって、この実施形態3では、実施形態1と同様に、エバポレータ10の冷媒の流路以外の部分を構成するエンドプレート40をケース16に支持するようにしたので、エバポレータ10における冷媒の流通に起因する振動がケース16に伝達されにくくなる。従って、騒音の発生を長期間に亘って抑制でき、乗員の快適性を向上できる。
【0088】
また、エンドプレート40の孔部61とケース16の突出部60との間に弾性材63が介在することで、振動伝達がより一層抑制される。
【0089】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4にかかるものである。この実施形態4では、エバポレータ10のケース16への支持構造が実施形態1のものと異なるだけで他の部分は同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0090】
すなわち、上記実施形態1では、エンドプレート40の突出部41をケース16の凹部50に嵌合させているが、本実施形態4では、ケース16に差し込まれる差し込み部材70を用いてエバポレータ10をケース16に支持するようにしている。
【0091】
ケース16の左右側壁には、差し込み部材70を差し込むためのケース側貫通孔71が形成されている。
【0092】
エンドプレート40には、ケース側貫通孔71に対応する部位にプレート側貫通孔72が形成されている。
【0093】
差し込み部材70は、ケース側貫通孔71及びプレート側貫通孔72に差し込まれる柱状部70aと、柱状部70aの一端部から径方向に延出する鍔部70bとを有している。鍔部70bの外径は、ケース側貫通孔71の径よりも大きく設定されている。柱状部70aをケース側貫通孔71及びプレート側貫通孔72に差し込むと、柱状部70aがプレート側貫通孔72に嵌合し、これにより、エバポレータ10がケース16に支持される。このとき、鍔部70bによってケース側貫通孔71がケース16の外側から閉塞されることになる。
【0094】
したがって、この実施形態4では、実施形態1と同様に、エバポレータ10の冷媒の流路以外の部分を構成するエンドプレート40をケース16に支持するようにしたので、エバポレータ10における冷媒の流通に起因する振動がケース16に伝達されにくくなる。従って、騒音の発生を長期間に亘って抑制でき、乗員の快適性を向上できる。
【0095】
尚、上記実施形態では、エバポレータ10のエンドプレート40をケース16に支持するようにしたが、これに限らず、例えば、ヘッダタンク31,32やエンドプレート40、フィン36にブラケットを設け、このブラケットをケース16に支持するようにしてもよい。
【0096】
また、エンドプレート40に凹部を形成し、ケース16に凸部を形成し、この凸部を凹部に嵌合させてエバポレータ10を支持するようにしてもよい。
【0097】
また、実施形態1〜4の構造を1つのエバポレータ10に組み合わせて設けてもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、エバポレータ10をケース16に支持する場合について説明したが、これに限らず、ヒータコア11を同様にしてケース16に支持するようにしてもよい。
【0099】
また、車両用空調装置1の構造は上記した構造に限られるものではなく、例えば、送風ファン及び熱交換器を1つのケースに収容した、いわゆるフルセンタタイプに本発明を適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
以上説明したように、本発明にかかる車両用空調装置は、例えば、エバポレータを備えているものに適している。
【符号の説明】
【0101】
1 車両用空調装置
10 エバポレータ(冷却用熱交換器)
11 ヒータコア(加熱用熱交換器)
16 ケース
31 上部ヘッダタンク(流路構成部材)
32 下部ヘッダタンク(流路構成部材)
35 チューブ(流路構成部材)
36 フィン(非流路構成部材)
40 エンドプレート(非流路構成部材)
41 突出部(嵌合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換媒体が流通する熱交換器と、
上記熱交換器を収容するケースとを備え、
上記ケースに導入された空気を上記熱交換器により温度調節して車両の室内に供給するように構成された車両用空調装置において、
上記熱交換器は、熱交換媒体の流路を構成する流路構成部材と、熱交換媒体の流路以外の部分を構成する非流路構成部材とを備え、
上記非流路構成部材が上記ケースに支持されることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
熱交換器は、伝熱用のフィンと、該フィンを保護するための保護プレートとを備え、
上記保護プレートがケースに支持される非流路構成部材であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
保護プレートは、フィンにのみ接合されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
非流路構成部材には、ケースに嵌合する嵌合部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用空調装置において、
嵌合部は非流路構成部材に一体成形されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項6】
請求項4に記載の車両用空調装置において、
嵌合部は、非流路構成部材とは別部材で構成され、該非流路構成部材に取り付けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用空調装置において、
嵌合部は、振動吸収材であることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1つに記載の車両用空調装置において、
ケースには、嵌合部が嵌る凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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