説明

車両用空調装置

【課題】熱交換器の外周部を、少なくとも熱交換器の厚さ方向にてケースで挟んで保持する車両用空調装置において、熱交換コア部以外での風洩れの抑制等の目的を達成しつつ、熱交換器の外周部全域に弾性体を配置する場合と比較して、弾性体の使用量を低減する。
【解決手段】蒸発器20の外周部の一部では、蒸発器20の厚さ方向での一方側に、弾性体30を介在させるととともに、蒸発器20の厚さ方向での他方側を、ケース10の保持部16で直接保持し、蒸発器20の外周部のうち一部を除く部分では、蒸発器20の厚さ方向でケース10に対向する平面部28を設け、ケース10のうち蒸発器20の厚さ方向で平面部28に対向する位置に、平面部28に近接して風漏れを抑制する風止め用リブ17を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースの内部で熱交換器を保持する車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような車両用空調装置では、例えば、特許文献1に開示されているように、熱交換器の厚さ方向にて熱交換器をケースで挟んで保持している。また、熱交換器とケースとの間には弾性体が介在しており、弾性体は、熱交換器の外周部のほぼ全域に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−78506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、弾性体を用いる目的は、次の通りである。
【0005】
(1)熱交換器とケースとの間の風洩れを抑制して、熱交換コア部に確実に風を通過させることにより、熱交換性能を確保する。
【0006】
(2)熱交換器からケースへの振動伝達を軽減することで、異音の発生を抑制する。
【0007】
(3)ケースの内部で熱交換器を確実に保持することで、熱交換器のがたつきを防止する。
【0008】
これらの目的達成のためには、熱交換器の外周部全域に弾性体を配置することが好ましいが、この場合、弾性体の使用量が多く、製造コストの増大の要因となる。また、製造コスト低減のために、弾性体の使用自体を取りやめると、上記目的を達成できなくなってしまう。
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、熱交換器の外周部を、少なくとも熱交換器の厚さ方向にてケースで挟んで保持する車両用空調装置において、上記(1)〜(3)の目的を達成しつつ、熱交換器の外周部全域に弾性体を配置する場合と比較して、弾性体の使用量を低減できる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、熱交換器(20)の外周部を、少なくとも熱交換器(20)の厚さ方向にてケース(10)で挟んで保持する車両用空調装置において、
熱交換器(20)の外周部の一部では、熱交換器(20)の厚さ方向での一方側に、弾性体(30)を介在させるととともに、熱交換器(20)の厚さ方向での他方側を、ケース(10)で直接保持、もしくは、剛体部材で直接保持し、
熱交換器(20)の外周部のうち前記一部を除く部分では、熱交換器(20)の厚さ方向での少なくとも片側に平面部(28)を設け、ケース(10)のうち熱交換器(20)の厚さ方向で平面部(28)に対向する位置に、平面部(28)に近接して風漏れを抑制する近接部(17)を設けたことを特徴としている。
【0011】
これによると、熱交換器の外周部のうち弾性体を介在させない部分では、熱交換器に平面部を設けるとともに、この平面部に近接して風漏れを抑制する近接部をケースに設けたので、熱交換器とケースとの間の風漏れを抑制できる。ちなみに、ケースの近接部が熱交換器の平面部に近接するとは、熱交換器の平面部と接触、もしくは熱交換器の平面部との間に微小の隙間を形成することを意味する。
【0012】
ところで、熱交換器の厚さ方向での熱交換器の両側に弾性体を介在させると、弾性体の厚みバラツキや圧縮変形量バラツキにより、熱交換器の厚さ方向におけるケース内部での熱交換器の位置変動が生じ、熱交換器の平面部とケースの近接部との距離が変動してしまう。このため、両者の距離を風漏れが抑制できる距離に設計しても、ケースへの熱交換器の組み付け後において、両者の距離が大きくなって、風漏れが抑制できない恐れがある。
【0013】
これに対して、本発明では、熱交換器の厚さ方向での熱交換器の一方側のみに弾性体を介在させ、熱交換器の厚さ方向での熱交換器の他方側をケースもしくは他の剛体部材で直接保持するので、ケース内部での熱交換器の位置変動を無くすことができる。この結果、本発明によれば、熱交換器の平面部と近接部との距離を安定させることができ、確実に、風漏れを抑制できる。
【0014】
また、本発明では、熱交換器の厚さ方向での熱交換器の一方側に弾性体を介在させるので、少なくとも熱交換器の厚さ方向においては、弾性体の圧縮変形に対する反発力によって、熱交換器を抑えることができ、熱交換器のがたつきを防止できる。
【0015】
また、本発明では、ケースもしくは他の剛体部材が直接接触する範囲が、熱交換器の外周部の全域ではないので、熱交換器の外周部の全域がケースと直接接触する場合と比較して、熱交換器からケースへの振動伝達を軽減できる。
【0016】
よって、本発明によれば、上記(1)〜(3)の目的を達成しつつ、熱交換器の外周部全域に弾性体を配置する場合と比較して、弾性体の使用量を低減できる車両用空調装置を提供できる。
【0017】
請求項1に記載の発明においては、例えば、請求項2に記載のように、近接部を、ケース(10)と一体成形され、ケース(10)の内壁から部分的に突出するリブ(17)で構成することができる。
【0018】
また、請求項1、2に記載の発明においては、例えば、請求項3に記載のように、平面部(28)および近接部(17)が、熱交換器(20)の厚さ方向での一方側に設けられている構成を採用したり、請求項4に記載のように、平面部(28)および近接部(17)が、熱交換器(20)の厚さ方向での他方側に設けられている構成を採用したりすることができる。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、熱交換器がケースもしくは他の剛体部材で直接保持される側に、近接部を設けることで、熱交換器の厚さ方向での熱交換器の寸法バラツキが生じても、常に、ケースの近接部と熱交換器の平面部との距離を同じにできる。
【0020】
また、請求項1〜4に記載の発明においては、例えば、請求項5に記載のように、熱交換器(20)は、積層された複数本のチューブ(21)と、複数本のチューブの長手方向両側に配置されたタンク部(23、24)と、複数本のチューブの積層方向両側に配置されたサイドプレート(25、26)とを備えており、
タンク部(23、24)の長手方向全域にわたって、弾性体(30)が配置されており、
弾性体(30)が配置されていないサイドプレート(25、26)の長手方向全域にわたって、平面部(28)および近接部(17)が配置されている構成を採用することができる。
【0021】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の空調ユニットの外観斜視図ある。
【図2】図1の空調ユニットの分解斜視図である。
【図3】図2中の蒸発器の斜視図である。
【図4】図2中のIV−IV位置で切断した空調ユニットの断面図である。
【図5】図2、図4中のV−V位置で切断した空調ユニットの断面図である。
【図6】第3実施形態における蒸発器の斜視図である。
【図7】第3実施形態における空調ユニットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0024】
(第1実施形態)
図1に本実施形態における車両用空調装置の空調ユニットの外観斜視図を示し、図2に図1の空調ユニットの分解斜視図を示す。
【0025】
車両用空調装置は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置される空調ユニット1を備えている。空調ユニット1は、送風機を収容する図示しない送風機ユニットと、熱交換器を収容する図1に示す熱交換器ユニット2とを有している。送風機ユニットと熱交換器ユニット2は、車両左右方向に並んで配置される。
【0026】
図1に示すように、熱交換器ユニット2は、ユニットケース10の内部で蒸発器20を保持している。
【0027】
ユニットケース10は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、組み付け時に加わる応力では圧縮変形しない強度を有する樹脂で成形されている。また、図2に示すように、ユニットケース10は、蒸発器20を保持する部位で、上側の第1ケース11と、下側の第2ケース12とに分割されている。
【0028】
蒸発器20は、その内部を流通する冷媒と送風機ユニットからの送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。蒸発器20は、図示しない圧縮機、凝縮器、膨張弁等とともに、冷凍サイクルを構成している。
【0029】
ここで、図3に、図2中の蒸発器20の斜視図を示す。蒸発器20は、冷媒通路を構成する複数の偏平なチューブ21と、この複数のチューブ21間に接合されたコルゲートフィン22と、チューブ21の長手方向両端部に設けられ、複数のチューブ21相互間の冷媒通路を連通させるタンク部23、24と、チューブ21の積層方向の両側に設けられたサイドプレート25、26と、蒸発器20と冷媒配管とを接続するための接続部27とを有している。複数のチューブ21とコルゲートフィン22とによって、熱交換コア部が構成されている。蒸発器20を構成する各部材は、アルミニウム等の熱伝導の良好な金属材で構成されており、これらの一体ろう付け等によって蒸発器20が形成される。
【0030】
蒸発器20は、図1〜3に示すように、ユニットケース10に保持された状態では、一方のタンク部23よりも他方のタンク部24が下側に位置するように、熱交換面が水平面より所定の微小角度だけ傾斜している。なお、熱交換面とは、蒸発器20のうち送風空気が流出入する面である。
【0031】
本明細書では、図3に示すように、チューブ21の長手方向を蒸発器20の高さ方向と呼び、タンク部23、24の長手方向を蒸発器20の幅方向と呼び、高さ方向および幅方向の両方向に垂直な方向を蒸発器20の厚さ方向と呼ぶ。また、蒸発器20の厚さ方向は、蒸発器20を通過する空気流れ方向であり、熱交換面に垂直な方向でもある。
【0032】
図1に示すように、ユニットケース10の下部の側壁には、送風機ユニットと接続される接続口13が設けられている。熱交換器ユニット2では、図1中の矢印のように、接続口13から流入した送風機ユニットからの送風空気が、蒸発器20を下から上に向かって通過した後、各吹出口に連通する各開口部14、15に向かってユニットケース10の内部を流れるようになっている。
【0033】
また、ユニットケース10の内部には、蒸発器20の空気流れ下流側に図示しないヒータコアが配置されるとともに、蒸発器20とヒータコアとの間に板状のスライド式エアミックスドアが車両前後方向にスライド可能に配置されている。このスライド式エアミックスドアは、ヒータコアを通過後の温風と、ヒータコアを迂回した冷風との風量割合を調整して車室内への吹出空気温度を調整する温度調整手段である。
【0034】
また、ユニットケース10の内部には、各吹出口に連通する各開口部14、15の上流側に、各開口部14、15の開閉を切り替える図示しない吹出口モード切替ドアが設けられている。エアミックスドアおよび吹出口モード切替ドアが制御されることによって、所望温度の空調風が所望の吹出口から車室内へ吹き出される。
【0035】
次に、ユニットケース10における蒸発器20の保持構造について説明する。図4に、図2中のIV−IV位置で切断した空調ユニットの断面図を示す。また、図5に、図2、図4中のV−V位置で切断した空調ユニットの断面図を示す。
【0036】
図4、5に示すように、ユニットケース10の第1ケース11と第2ケース12との分割面10aは、ユニットケース10のうち蒸発器20を保持する部位に位置している。そして、本実施形態では、下記の通り、蒸発器20の外周部が、蒸発器20の厚さ方向にて、第1ケース11と第2ケース12とに挟まれて保持される構造となっている。
【0037】
具体的には、図4に示すように、蒸発器20のタンク部23、24のうち蒸発器20の厚さ方向での一方側である下面23a、24aに弾性体30が貼り付けられており、タンク部23、24と第2ケース12との間に弾性体30が介在している。
【0038】
一方、タンク部23、24の蒸発器20の厚さ方向での他方側である上面23b、24bには、弾性体30が貼り付けられておらず、タンク部23、24の上面23b、24bが、第1ケース11に設けられた保持部16に直接保持されている。
【0039】
なお、図3、4に示すように、蒸発器20の高さ方向での両側であるタンク部23、24の側面23c、24cや、蒸発器20の幅方向での両側であるタンク部23、24の側面23d、24dには、弾性体30は貼り付けられていない。
【0040】
弾性体30は、ユニットケース10による蒸発器20を挟む応力で圧縮変形するものであり、ウレタン発泡材で構成されるパッキンである。ウレタン発泡材以外にも、弾性体30として、他の発泡材料やゴム等で構成されたものが採用可能である。
【0041】
弾性体30は、蒸発器20の外周部の一部に配置されている。本実施形態では、図2に示すように、弾性体30は、タンク部23、24の長手方向での両端側に配置されており、蒸発器20の外周部のうち4箇所に配置されている。
【0042】
保持部16は、第1ケース11の内壁から部分的に突出するリブであり、第1ケース11と同一材料で一体成形されたものである。本実施形態では、保持部16をなすリブは、タンク部23、24の長手方向に直交する方向に線状に延びており、リブの頂部がタンク部23、24の上面23b、24bと線接触している。
【0043】
保持部16は、蒸発器20の厚さ方向で、弾性体30に対応する位置に配置されており、本実施形態では、図2に示すように、蒸発器20の外周部に対向する領域のうち4箇所に配置されている。
【0044】
また、図4、5に示すように、蒸発器20の外周部のうち弾性体30を配置していない部分では、風洩れを抑制する構造となっている。
【0045】
具体的には、図5に示すように、蒸発器20の外周部に位置するサイドプレート26のうち蒸発器20の厚さ方向での一方側である下側に平面部28が設けられている。図5中に示されていないが、サイドプレート25においても同様に平面部28が設けられている。そして、第2ケース12のうち蒸発器20の厚さ方向で平面部28に対向する位置に、風止め用リブ17が設けられている。
【0046】
風止め用リブ17は、第2ケース12の内壁から部分的に突出しており、第1ケース11と同一材料で一体成形されたものである。この風止め用リブ17は、蒸発器20の平面部28に近接して風漏れを抑制する近接部であり、本実施形態では、蒸発器20の平面部28との間に風洩れを抑制できる微小隙間G1を形成している。なお、この隙間G1の大きさは、蒸発器20の体格等に応じて、適宜決定すれば良い。
【0047】
図2、4に示すように、蒸発器20の外周部のうち弾性体30が貼り付けられていないサイドプレート26では、サイドプレート26長手方向全域にわたって風止め用リブ17が配置されている。
【0048】
また、図2に示すように、蒸発器20の外周部のうちタンク部23、24では、その長手方向両端側に位置する弾性体30と弾性体30との間に、風止め用リブ17が配置されている。そして、タンク部23、24の下面23a、24aの一部が、風止め用リブ17に対向する平面部を構成している。
【0049】
次に、ユニットケース10への蒸発器20の組み付けについて説明する。
【0050】
図3に示すように、弾性体30を貼り付けた蒸発器20を用意する。そして、図2に示すように、ユニットケース10が第1ケース11と第2ケース12とに分割されている位置に蒸発器20を配置して、第1ケース11と第2ケース12とを合わせる。
【0051】
これにより、蒸発器20の厚さ方向で、第1ケース11と第2ケース11とに挟まれて、蒸発器20がユニットケース10に保持される。このとき、弾性体30が第1、第2ケース11、12に挟まれる際に圧縮され、この反作用として発生する弾性体30の反発力により、蒸発器20が保持部16に押し付けられた状態となる。
【0052】
次に、本実施形態の主な特徴について説明する。
【0053】
(1)本実施形態では、蒸発器20の外周部のうち弾性体30を配置しない部分では、蒸発器20の外周部に平面部28を設けるとともに、この平面部28との間に微小の隙間G1を形成する風止め用リブ17をユニットケース10に設けたので、蒸発器20とケーユニットケース10との間の風漏れを抑制できる。
【0054】
(2)ところで、本実施形態と異なり、蒸発器20の厚さ方向での蒸発器20の両側に弾性体30を配置すると、弾性体30の厚みバラツキや圧縮変形量バラツキにより、蒸発器20の厚さ方向におけるユニットケース10内部での蒸発器20の位置変動が生じ、蒸発器20の平面部28と風止め用リブ17との隙間G1の大きさが変動してしまう。このため、両者の隙間G1を風漏れが抑制できる距離に設計しても、蒸発器20のユニットケース10への組み付け後において、隙間G1が大きくなって、風漏れが抑制できない恐れがある。
【0055】
これに対して、本実施形態では、蒸発器20の厚さ方向での蒸発器20の一方側のみに弾性体30を介在させ、蒸発器20の厚さ方向での蒸発器20の他方側を第1ケース11に設けた保持部16に直接保持させている。この保持部16は、第1ケース11の一部であり、組み付け時に加わる応力では圧縮変形しない強度を有している。
【0056】
これにより、組み付け時に、蒸発器20が保持部16に押し付けられて、保持部16によって蒸発器20が位置決めされるので、ユニットケース10内部での蒸発器20の位置変動を無くすことができる。この結果、本実施形態によれば、蒸発器20の厚みが所望寸法であれば、蒸発器20の平面部28と風止め用リブ17との隙間G1を安定させることができ、確実に、風漏れを抑制できる。
【0057】
なお、本実施形態では、蒸発器20の厚み寸法のバラツキが生じる場合であっても、蒸発器20の厚み寸法のバラツキを考慮して、隙間G1を設定することで、隙間G1の大きさを風洩れを抑制できる範囲内に安定させることができる。
【0058】
(3)本実施形態では、蒸発器20の平面部28と風止め用リブ17とが、蒸発器20の厚さ方向で対向して配置されている。
【0059】
これにより、蒸発器20の幅方向や高さ方向で、蒸発器20の位置ずれが生じたとしても、蒸発器20の平面部28と風止め用リブ17との隙間G1の大きさは変わらない。このことからも、本実施形態によれば、蒸発器20の平面部28と風止め用リブ17との隙間G1を安定させることができ、確実に、風漏れを抑制できると言える。
【0060】
なお、蒸発器20の幅方向や高さ方向で蒸発器20の位置ずれが生じても、蒸発器20の平面部28と風止め用リブ17とが対向するように、蒸発器20の平面部28の設置範囲を風止め用リブ17の設置範囲よりも広くしておくことが好ましい。
【0061】
また、本実施形態によれば、蒸発器20の厚さ方向で、蒸発器20の一方側を弾性体30で保持し、蒸発器20の他方側を保持部16で保持しており、さらに、蒸発器20の平面部28と風止め用リブ17とが、蒸発器20の厚さ方向で対向して配置された構造としているので、部品管理値を1方向に限定でき、部品構造的、コスト的に有利となる。
【0062】
すなわち、本実施形態によれば、蒸発器20の平面部28と風止め用リブ17との隙間G1の大きさを一定値とするために、蒸発器20の厚さ、弾性体30の厚さ、保持部16の高さおよび風止め用リブ17の高さという寸法をすべて同じ方向で管理すれば良く、2方向や3方向で寸法管理する場合よりも、寸法管理が容易となる。
【0063】
(4)本実施形態では、蒸発器20の厚さ方向での蒸発器20の一方側に弾性体30を配置するので、蒸発器20の厚さ方向においては、弾性体30の圧縮変形に対する反発力によって、蒸発器20を抑えることができ、蒸発器20のがたつきを防止できる。
【0064】
(5)本実施形態では、第1ケース11に設けた保持部16が蒸発器20に直接接触しているため、冷媒の膨張、収縮等による蒸発器20の振動がユニットケース10に伝達することとなる。
【0065】
しかし、本実施形態によれば、保持部16による接触範囲が、蒸発器20の外周部の全域ではなく、外周部の一部なので、蒸発器20の外周部の全域がユニットケース10と直接接触する場合と比較して、蒸発器20からユニットケース10への振動伝達を軽減できる。
【0066】
さらに、本実施形態では、保持部16を線状に延びるリブによって構成し、保持部16とタンク部23、24の上面23b、24bとを線接触させているので、両者が面接触する場合と比較して、蒸発器20からユニットケース10への振動伝達を軽減できる。なお、保持部16とタンク部23、24の上面23b、24bとの接触が、線接触ではなく、点接触となるように、保持部16の形状を変更しても良い。
【0067】
また、本実施形態では、蒸発器20の外周部の一部が、弾性体30および保持部16と接触しているだけであり、蒸発器20の外周部のうち弾性体30が配置されていない部分は、何も接触していない。ここで、弾性体30は振動低減の効果を有するものの、蒸発器20とユニットケース10との間に弾性体30が介在すると、弾性体30を介して、ユニットケース10へ振動が伝達してしまう
したがって、本実施形態によれば、弾性体30を蒸発器20の外周部の全域に配置する場合と比較して、蒸発器20がユニットケース10と間接的もしくは直接接触する面積が小さいので、振動伝達の軽減効果が大きい。
【0068】
(6)本実施形態によれば、蒸発器20の外周部全域に弾性体30を配置せず、外周部の一部に弾性体30を配置しているので、蒸発器20の外周部全域に弾性体30を配置する場合と比較して、弾性体30の使用量を低減できる。
【0069】
ここで、蒸発器20の外周部全域に弾性体30を配置した場合では、弾性体30が発泡材料で構成されていると、車両用空調装置が車両に搭載されているときに、弾性体30の吸湿によって臭いが発生してしまう。また、蒸発器20をユニットケース10に組み付ける際に、蒸発器20における弾性体30の位置ずれや剥がれなどといった製品不良を防止するための手間がかかり、品質コストの増加を招いてしまう。
【0070】
これに対して、本実施形態によれば、蒸発器20の外周部全域に弾性体30を配置する場合と比較して、弾性体30の使用量が少ないので、吸湿による臭い発生を低減できるとともに、弾性体30の位置ずれや剥がれなどといった製品不良を防止するための手間を低減できる。
【0071】
(第2実施形態)
第1実施形態では、蒸発器20の下側を弾性体30で保持し、蒸発器20の上側をケース側の保持部16で直接保持したが、それとは反対に、重力負荷の関係では、蒸発器20の上側を弾性体30で保持し、蒸発器20の下側をケース側の保持部16で直接保持する構成が好ましい。ただし、蒸発器20からユニットケース10への振動伝達を最小限に留めるという観点では、第1実施形態の構成の方が好ましい。
【0072】
また、本実施形態では、保持部16と同じ側である蒸発器20の下側に平面部28を設け、第2ケース12のうち平面部28に対向する位置に風止め用リブ17を設ける。
【0073】
ここで、第1実施形態では、図4に示すように、弾性体30と風止め用リブ17とが、どちらも、蒸発器20の下側に配置されていたので、蒸発器20の厚さ方向において、蒸発器20に寸法バラツキが生じると、風止め用リブ17と蒸発器20の平面部28との隙間G1の大きさが変動してしまう。
【0074】
これに対して、風止め用リブ17を保持部16と同じ側に配置すれば、蒸発器20の厚さ方向で蒸発器20に寸法バラツキが生じても、蒸発器20の平面部28の位置を常に同じ位置に固定でき、風止め用リブ17と蒸発器20の平面部28との隙間G1の大きさを安定させることができる。
【0075】
なお、第1実施形態において、本実施形態と同様に、風止め用リブ17を保持部16と同じ側に配置しても良い。
【0076】
(第3実施形態)
図6に、本実施形態における蒸発器の斜視図を示す。また、図7に本実施形態における空調ユニットの断面図を示す。本実施形態は、第1実施形態に対して、弾性体30の形状を変更したものであり、以下では、この点について説明する。
【0077】
図6、7に示すように、本実施形態では、一本の棒状の弾性体30を、一方のタンク部23において、その長手方向全域における下面23aと蒸発器20の高さ方向での側面23cとの角部および蒸発器20の幅方向での側面23dにわたって配置している。
【0078】
同様に、他方のタンク部24においても、その長手方向全域における下面24aと蒸発器20の高さ方向での側面24cとの角部および蒸発器20の幅方向での側面24dにわたって、一本の棒状の弾性体30を配置している。
【0079】
これにより、本実施形態によれば、蒸発器20の厚さ方向だけでなく、蒸発器20の高さ方向および幅方向においても、弾性体30を圧縮した際の反発力を利用して、蒸発器20を抑えて保持することができ、蒸発器20のがたつきを防止できる。
【0080】
ところで、蒸発器20の厚さ方向、高さ方向および幅方向の3方向において、蒸発器20を抑えて保持する保持力を得るためには、タンク部23、24の下面23a、24aと、蒸発器20の高さ方向での側面23c、24cと、蒸発器20の幅方向での側面23d、24dとの3面に、それぞれ、弾性体30を貼り付ける必要がある。
【0081】
これに対して、本実施形態によれば、一本の弾性体30で3方向の保持力を得るので、タンク部23、24の各面に別体の弾性体30を貼り付ける場合と比較して、弾性体30の必要枚数を少なくでき、生産性を高めることができる。
【0082】
特に、本実施形態では、タンク部23における下面23aと蒸発器20の高さ方向での側面23cとの角部に弾性体30を配置するので、タンク部23における下面23aと蒸発器20の高さ方向での側面23cとにまたがって、L字状に折り曲げた弾性体30を貼り付ける場合と比較して、弾性体30の設置面積を小さくできる。
【0083】
なお、本実施形態では、風止め用リブ17が、蒸発器20の外周部のうちサイドプレート26側のみに配置され、タンク部23、24側には配置されない構造となる。
【0084】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、蒸発器20を直接保持する保持部16が、ユニットケース10の内壁から部分的に突出するリブであったが、平坦な内壁面であっても良い。また、上述の各実施形態では、保持部16がユニットケース10と同一材料で一体成形されていたが、ユニットケース10と別体に成形されたものをユニットケース10の内壁に固定しても良い。
【0085】
また、ユニットケース10の内部に配置された剛体部材を、蒸発器20を直接保持する保持部16としても良い。ここでいう剛体部材とは、ユニットケース10が蒸発器20を挟む応力で圧縮変形しない部材を意味する。剛体部材としては、板状のスライド式エアミックスドアを支える枠部材が挙げられる。このように、蒸発器20の近傍に位置し、ユニットケース10の他に車両用空調装置を構成する構成部品を、保持部16として用いることが可能である。
【0086】
(2)上述の各実施形態では、蒸発器20の平面部28に近接して風漏れを抑制する近接部を、ユニットケース10の内壁から部分的に突出した風止め用リブ17で構成したが、ユニットケース10の平坦な内壁面で構成しても良い。
【0087】
また、上述の各実施形態では、ユニットケース10の近接部である風止め用リブ17と蒸発器20の平面部28との間に、風洩れを抑制できる微小隙間G1を形成したが、近接部である風止め用リブ17と蒸発器20の平面部28とを接触させても良い。
【0088】
(3)上述の各実施形態では、蒸発器20の厚さ方向での片側に、平面部28および近接部である風止め用リブ17を設けたが、熱交換器の厚さ方向での両側に、平面部28および近接部である風止め用リブ17を設けても良い。
【0089】
(4)上述の各実施形態では、蒸発器20の構造が、複数のチューブ21と、複数のチューブ21の両端部と連通するタンク部23、24と、チューブ21の積層方向の両側に設けられたサイドプレート25、26とを備える構造であったが、他の構造の蒸発器を用いた場合においても、本発明の適用が可能である。
【0090】
(5)上述の各実施形態では、ユニットケース10が第1ケース11と第2ケース12とに分割されており、第1ケース11と第2ケース12とによって蒸発器20を挟み込む構造であったが、本発明は、このような構造に限られない。蒸発器20の厚さ方向にて、ユニットケース10で蒸発器20を挟んで保持する構造であれば、ユニットケース10に蒸発器20を差し込む構造においても、本発明の適用が可能である。
【0091】
(6)上述の各実施形態では、ユニットケース10の内部において、蒸発器20が傾斜して配置されていたが、蒸発器20が垂直置きもしくは水平置きの車両用空調装置においても、本発明の適用が可能である。なお、垂直置きでは、蒸発器20の熱交換面が鉛直方向に平行となり、水平置きでは、蒸発器20の熱交換面が水平方向に平行となる。
【0092】
(7)上述の各実施形態では、空調ユニットが熱交換器ユニットと送風機ユニットとに分けられた構成であったが、空調ユニットが熱交換器ユニットと送風機ユニットとに分けられておらず、1つの空調ユニットとして構成されていても良い。
【0093】
(8)上述の各実施形態では、ユニットケース10における蒸発器20の保持構造に、本発明を適用していたが、加熱用熱交換器であるヒータコアの保持構造にも、本発明の適用が可能である。
【0094】
(9)上述の各実施形態を実施可能な範囲で組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0095】
1 車両用空調装置
2 空調ユニット
10 ユニットケース
11 第1ケース
12 第2ケース
16 保持部
17 風止め用リブ(近接部)
20 蒸発器(熱交換器)
28 平面部
30 弾性体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器(20)の外周部を、少なくとも前記熱交換器(20)の厚さ方向にてケース(10)で挟んで保持する車両用空調装置において、
前記熱交換器(20)の外周部の一部では、前記熱交換器(20)の厚さ方向での一方側に、前記ケース(10)による前記熱交換器(20)を挟む応力で圧縮変形する弾性体(30)を介在させるととともに、前記熱交換器(20)の厚さ方向での他方側を、前記ケース(10)で直接保持、もしくは、前記ケースの内部に配置された前記応力で圧縮変形しない剛体部材で直接保持し、
前記熱交換器(20)の外周部のうち前記一部を除く部分では、前記熱交換器(20)の厚さ方向での少なくとも片側に平面部(28)を設け、前記ケース(10)のうち前記熱交換器(20)の厚さ方向で前記平面部(28)に対向する位置に、前記平面部(28)に近接して風漏れを抑制する近接部(17)を設けたことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記近接部は、前記ケース(10)と一体成形され、前記ケース(10)の内壁から部分的に突出するリブ(17)であることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記平面部(28)および前記近接部(17)は、前記熱交換器(20)の厚さ方向での前記一方側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記平面部(28)および前記近接部(17)は、前記熱交換器(20)の厚さ方向での前記他方側に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記熱交換器(20)は、積層された複数本のチューブ(21)と、前記複数本のチューブの長手方向両側に配置されたタンク部(23、24)と、前記複数本のチューブの積層方向両側に配置されたサイドプレート(25、26)とを備えており、
前記タンク部(23、24)の長手方向全域にわたって、前記弾性体(30)が配置されており、
前記弾性体(30)が配置されていない前記サイドプレート(25、26)の長手方向全域にわたって、前記平面部(28)および前記近接部(17)が配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−116213(P2012−116213A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264936(P2010−264936)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】