説明

車両用空調装置

【課題】前席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気との間に温度差が生じてしまうことを抑制可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】回転軸21a、21bの軸方向外側に配置された前席用フット開口部11cと回転軸21a、21bの径方向外側に配置された後席用フット開口部11dとの双方を同時に開閉するロータリドアからなるフットドア21の外周ドア面部21cと後席用フット開口部11dとの間に、送風空気をフットドア21の側壁面部21dよりも軸方向外側に導いた後に、後席用フット開口部11d側へ導く仕切壁11gを配置する。これにより、前席用フット開口部11cから流出する送風空気の温度と後席用フット開口部11dから流出する送風空気の温度との温度差を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風空気の吹出開口部をロータリドアによって開閉する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内へ送風される送風空気の空気通路を形成するケースに形成された送風空気の吹出開口部を、ロータリドアによって開閉する車両用空調装置が知られている。ここで、ロータリドアとは、回転軸、この回転軸の径方向外周側に配置されて回転軸と一体的に回転変位する外周ドア面部、外周ドア面部の回転軸方向両端部に配置されて回転軸と外周ドア面と連結する略扇形状の側壁面部等を有して構成されるドアである。
【0003】
この種のロータリドアでは、外周ドア面部を送風空気流れに直交する方向に変位させて吹出開口部を開閉することができるので、いわゆる片持ち板ドアあるいはバタフライドアのように吹出開口部を開閉する際にドア面部を送風空気流れに対向する方向に変位させる必要がない。従って、ロータリドアを採用することによって、片持ち板ドア等を採用する場合に対して、吹出開口部を開閉する際の回転軸の回転操作力を低減できる。
【0004】
さらに、特許文献1には、2つのロータリドアを備え、それぞれのロータリドアによって異なる吹出開口部を開閉する車両用空調装置が開示されている。これにより、特許文献1では、1つのロータリドアによって複数の吹出開口部を開閉する車両用空調装置に対して、それぞれの吹出開口部のレイアウトの設計自由度を向上させるとともに、それぞれのロータリドアの小型化を図ることで、車両用空調装置全体としての大型化を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4089390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の車両用空調装置では、2つのロータリドアのうち、第1ロータリドアによって前席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気を流出させる前席用フット開口部および後席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気を流出させる後席用フット開口部の双方を開閉し、第2ロータリドアによって車両窓ガラスに向かって吹き出される送風空気を流出させるデフロスタ開口部および乗員の上半身に向けて吹き出される送風空気を流出させるフェイス開口部の双方を開閉する構成を採用している。
【0007】
より具体的には、第1ロータリドアは、第2ロータリドアよりもケース内の空気流れ上流側に配置されており、前席用フット開口部および後席用フット開口部の双方を同時に開閉する機能を果たしている。さらに、前席用フット開口部は第2ロータリドアの側壁面部よりも軸方向外側の2箇所に配置されており、後席用フット開口部は第2ロータリドアの軸方向略中央部の径方向外側に配置されている。
【0008】
ところが、前席用フット開口部および後席用フット開口部が特許文献1のように配置されていると、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気の温度との間に温度差が生じてしまう。その理由は、第1ロータリドアの上流側に配置されて送風空気の温度調整を行う温度調整手段としての熱交換器では、必ずしも均等に送風空気の温度を調整できず、熱交換器から吹き出される送風空気には、温度分布が生じてしまうからである。
【0009】
また、特許文献1の車両用空調装置のように第1ロータリドアが第2ロータリドアよりもケース内の空気通路の上流側に配置されていると、第2ロータリドアがフェイス開口部を開口し、かつ、第1ロータリドアが前席用フット開口部および後席用フット開口部の双方を開口させた際に、温風よりも密度が高く慣性力の高い冷風が、フェイス開口部よりも前席用フット開口部および後席用フット開口部へ流れ込みやすくなってしまう。
【0010】
このように、冷風がフェイス開口部よりも前席用フット開口部および後席用フット開口部へ流れ込みやすくなっていると、乗員の上半身に向かって吹き出される送風空気の温度と乗員の足下に向かって吹き出される送風空気の温度との温度差がつきにくく、頭寒足熱型の快適な空調を実現できなくなってしまう。
【0011】
上記点に鑑み、本発明は、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気との間に温度差が生じてしまうことを抑制可能な車両用空調装置を提供することを第1の目的とする。
【0012】
また、本発明は、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気との間に温度差が生じてしまうことを抑制しつつ、快適な空調を実現可能な車両用空調装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内へ向かって空気が流れる空気通路を形成するケース(11)と、ケース(11)内に配置され、空気の温度を調整する温度調整手段(13、15、16)と、ケース(11)に形成されて空気を流出させる複数の吹出開口部(11c、11d、11f)を開閉する吹出開口部開閉手段(21、31)とを備え、吹出開口部開閉手段は、回転軸(21a、21b、31a、31b)、回転軸(21a…31b)の径方向外周側に配置されて回転軸と一体的に回転変位する外周ドア面部(21c、31c)、および、外周ドア面部(21c、31c)の回転軸方向両端部に配置されて回転軸(21a…31b)と外周ドア面部(21c、31c)とを連結する側壁面部(21d、31d)を有するロータリドア(21、31)で構成されており、複数の吹出開口部として、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気を流出させる前席用フット開口部(11c)、および、後席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気を流出させる後席用フット開口部(11d)が設けられている車両用空調装置であって、
前席用フット開口部(11c)および後席用フット開口部(11d)のうち、一方の開口部(11c)は側壁面部(21d、31d)よりも回転軸(21a…31b)の軸方向外側に配置されており、他方の開口部(11d)は外周ドア面部(21c、31c)よりも回転軸(21a…31b)の径方向外側に配置されており、
さらに、ロータリドア(21、31)と他方の開口部(11d)との間に配置されて、ロータリドア(21、31)が前席用フット開口部(11c)および後席用フット開口部(11d)を開口させた際に、温度調整手段(13…16)にて温度調整された空気を側壁面部(21d、31d)よりも回転軸(21a…31b)の軸方向外側に導いた後に、他方の開口部(11d)側へ導く仕切壁(11g)を備えることを特徴とする。
【0014】
これによれば、仕切壁(11g)によって温度調整手段(13…16)にて温度調整された空気をロータリドア(21、31)の側壁面部(21d、31d)よりも回転軸(21a…31b)の軸方向外側へ導いた後に、他方の開口部(11d)側へ導くので、温度調整手段(13…16)にて温度調整された空気に温度分布が生じていても、一方の開口部(11c)から流出する空気と同等の温度の空気を他方の開口部(11d)へ導く事ができる。
【0015】
従って、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気との間に温度差が生じてしまうことを抑制できる。
【0016】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の車両用空調装置において、さらに、複数の吹出開口部として、乗員の上半身に向かって吹き出される空気を流出させるフェイス開口部(11f)が設けられおり、フェイス開口部(11f)は、前席用フット開口部(11c)および後席用フット開口部(11d)よりも空気流れの下流側に配置されており、ロータリドア(31)は、外周ドア面部(31c)として、回転軸(31a、31b)の軸方向中央側に位置付けられる中央側ドア面部(31h)および回転軸(31a、31b)の軸方向両端側に位置付けられる端部側ドア面部(31i)を有し、回転軸(31a、31b)の軸中心から中央側ドア面部(31h)へ至る径方向距離は、回転軸(31a、31b)の軸中心から前記端部側ドア面部(31i)へ至る径方向距離よりも長くなっていることを特徴とする。
【0017】
ここで、ロータリドア(21、31)の外周ドア面部(21c、31c)と仕切壁(11g)との間に形成される隙間空間(F)には、後述の実施形態にて説明するように、温度の低い空気が流入しやすい。従って、この隙間空間(F)に流入した空気をフェイス開口部(11f)へ導くことで、乗員の上半身に向かって吹き出される空気の温度を、乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度よりも低下させることができる。
【0018】
本請求項に記載の発明によれば、回転軸(21a、21b、31a、31b)の軸中心から中央側ドア面部(31h)へ至る径方向距離と回転軸(21a、21b、31a、31b)の軸中心から端部側ドア面部(31i)へ至る径方向距離が異なっているので、隙間空間(F)の容積を容易に変更できる。
【0019】
つまり、隙間空間(F)からフェイス開口部(11f)へ導かれる冷風量を調整して、乗員の上半身に向かって吹き出される空気の温度と乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度との温度差を容易に調整できる。
【0020】
その結果、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気との間に温度差が生じてしまうことを抑制しつつ、乗員の上半身に向かって吹き出される空気の温度と乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度との温度差を適切に確保して、頭寒足熱型の快適な空調を実現することができる。
【0021】
さらに、請求項3に記載の発明のように、中央側ドア面部(31h)の軸方向端部と端部側ドア面部(31i)の軸方向端部は、側壁面部(31d)と平行に拡がる第2側壁面部(31j)によって連結されていてもよい。そして、請求項4に記載の発明のように、仕切壁(11g)の軸方向両端部には、第2側壁面部(31j)に平行に拡がる両端側壁部(11h)が設けられていてもよい。
【0022】
これによれば、ロータリドア(31)と仕切壁(11g)との間に形成される隙間空間(F)から空気が軸方向外側へ流出してしまうことを抑制して、フェイス開口部(11f)へ導きやすくなる。従って、乗員の上半身に向かって吹き出される空気の温度と乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度との温度差を容易に調整できる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明のように、回転軸(31a、31b)の軸中心から端部側ドア面部(31i)へ至る径方向距離は、回転軸方向端部側へ向かうに伴って徐々に縮小していてもよい。そして、請求項6に記載の発明のように、仕切壁(11g)の両端側には、端部側ドア面部(31i)に沿って拡がる両端側壁部(11h)が設けられていてもよい。
【0024】
これによれば、請求項4に記載の発明と同様に、乗員の上半身に向かって吹き出される空気の温度と乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度との温度差を容易に調整できる。
【0025】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】第1実施形態の空調ユニットのフェイスモード時の断面図である。
【図2】第1実施形態の空調ユニットのバイレベルモード時の断面図である。
【図3】第1実施形態の空調ユニットのフットモード時の断面図である。
【図4】第1実施形態の空調ユニットのデフロスタモード時の断面図である。
【図5】第1実施形態の空調ユニットのフット−デフモード時の断面図である。
【図6】第1実施形態の空調ユニットのフットドアの外観斜視図である。
【図7】図1〜図5の模式的なD−D断面図である。
【図8】(a)は、第1実施形態の車両用空調装置におけるエアミックスドアの開度変化に対する車室内前席側温度および車室内後席側温度の変化を示すグラフであり、(b)は、従来技術の同等のグラフである。
【図9】第2実施形態の空調ユニットのフットドアの外観斜視図である。
【図10】第2実施形態における図1〜図5の模式的なD−D断面図である。
【図11】(a)は、第2実施形態の車両用空調装置におけるフットドアと仕切壁との径方向距離を5mmとした時の温度差を示すグラフであり、(b)は、径方向距離を3mmとした時の温度差を示すグラフである。
【図12】第3実施形態の空調ユニットのフットドアの外観斜視図である。
【図13】第3実施形態における図1〜図5の模式的なD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1実施形態)
図1〜図8により、本発明の第1実施形態について説明する。図1〜図5は、本実施形態の車両用空調装置の室内ユニットのうち、空調ユニット10の断面図であって、それぞれ異なる吹出モードにおける断面図を示している。なお、図1〜図5の上下、前後の各矢印は、空調ユニット10の車両搭載状態における各方向を示している。このことは、以下の図面における左右の矢印等についても同様である。
【0028】
吹出モードは、後述する複数の吹出開口部11c〜11fの開閉状態により決定され、具体的には、図1に示すフェイスモード、図2に示すバイレベルモード、図3に示すフットモード、図4に示すデフロスタモードおよび図5に示すフット−デフモードがある。各吹出モードの詳細については後述する。
【0029】
車両用空調装置の室内ユニットは、図1〜図5に示す空調ユニット10および空調ユニット10へ空気を送風する送風機ユニット(図示せず)に大別される。この空調ユニット10は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側のうち、車両幅方向(左右方向)の略中央部に配置されている。これに対し、送風機ユニットはインストルメントパネルの内側のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されている。
【0030】
送風機ユニットは、外気(車室外空気)と内気(車室内空気)とを切替導入する内外気切替箱、および、この内外気切替箱を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機を有して構成される。この送風機は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、後述する空調制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
【0031】
空調ユニット10は、空調ユニット10の外殻を形成するとともに、内部に車室内へ向かって流れる空気(以下、送風空気と表現する)が流れる空気通路を形成するケース11を有している。このケース11は、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。
【0032】
さらに、ケース11は、複数の分割パーツによって構成されており、その内部に後述する蒸発器13、エアミックスドア19、ヒータコア15、PTCヒータ16、フットドア21、フェイス−デフロスタドア22等を収容した状態で、金属バネクリップやネジなどの締結手段によって一体に結合されている。
【0033】
まず、ケース11の車両最下方側の部位には、図1〜図5の破線で示すように、空気入口空間12が形成されている。この空気入口空間12は、前述の送風機ユニットの送風機から送風された送風空気が空調ユニット10へ流入する流入空間である。
【0034】
空気入口空間12の空気流れ下流側直後となる空気入口空間12の上方側には、蒸発器13が配置されている。蒸発器13は、図示しない蒸気圧縮式冷凍サイクルを構成する構成機器の1つであり、冷凍サイクル内の低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させることによって、送風空気を冷却する温度調整手段として機能する冷却用熱交換器である。
【0035】
この蒸発器13は、その熱交換コア面(送風空気の流入面あるいは流出面)の車両後方側が車両前方側よりも下方に位置付けられるように傾斜配置されている。また、ケース11のうち蒸発器13の下方側かつ車両後方側には、蒸発器13で発生した凝縮水(ドレン水)を排出するためのドレン水排出口11aが設けられている。
【0036】
さらに、蒸発器13の空気流れ下流側となる車両上方側には、蒸発器13通過後の冷風を流す、加熱用冷風通路14aおよび冷風バイパス通路14bが形成されている。加熱用冷風通路14aは、蒸発器13通過後の冷風を矢印A方向(車両下方側から車両上方側)へ流してヒータコア15へ導く空気通路であり、蒸発器13の車両上方側かつ車両前方側に形成されている。
【0037】
ヒータコア15は、図示しないエンジン冷却水回路を循環する高温のエンジン冷却水を内部に流入させ、エンジン冷却水と蒸発器13通過後の冷風とを熱交換させて、冷風を再加熱する温度調整手段として機能する加熱用熱交換器である。さらに、ヒータコア15は、蒸発器13と同様に、その熱交換コア面の車両後方側が車両前方側よりも下方に位置付けられるように傾斜配置されている。
【0038】
ヒータコア15の空気流れ下流側となる車両上方側には、ヒータコア15を通過した温風をさらに加熱するPTCヒータ16が配置されている。PTCヒータ16は、PTC素子(正特性サーミスタ)を有し、空調制御装置からPTC素子に電力が供給されることによって発熱し、ヒータコア15通過後の空気をさらに加熱する温度調整手段として機能する電気ヒータである。
【0039】
より具体的には、PTCヒータ16は、PTC素子を保持する保持プレート、PTC素子に電力を供給する電極板、PTC素子と送風空気との熱交換を促進させる熱交換フィン等を順次積層配置して略矩形状に形成されている。さらに、保持プレート、電極板および熱交換フィンの積層方向が、ヒータコア15の熱交換コア面と略平行になるように配置されている。
【0040】
PTCヒータ16の空気流れ下流側となる車両上方側には、ケース11に一体的に形成されて車両前方側から車両後方側かつ下方側へ向かって延びるガイド壁11bが配置されている。このガイド壁11bは、ヒータコア15あるいはPTCヒータ16を通過した温風を矢印B方向(車両前方側から車両後方側かつ下方側)へ流して混合空間18へ導く温風通路17を形成しており、ケース11内の車両幅方向全域に亘って配置されている。
【0041】
混合空間18は、温風通路17を通過した温風と冷風バイパス通路14bを通過した冷風とを混合する空間であって、温風通路17の車両後方側かつ下方側に配置されている。さらに、この混合空間18は、車室内へ吹き出される送風空気をケース11内から流出させる複数の吹出開口部11c〜11fに連通している。複数の吹出開口部11c〜11fについては後述する。
【0042】
一方、冷風バイパス通路14bは、蒸発器13通過後の冷風を、ヒータコア15およびPTCヒータ16を迂回するように矢印C方向(車両下方側から車両上方側かつ後方側)へ流して、混合空間18へ流入させる空気通路であり、蒸発器13の車両上方側であって、かつ、ヒータコア15およびPTCヒータ16の車両後方側に形成されている。
【0043】
さらに、図1〜図5に示すように、蒸発器13の空気流れ下流側であって、かつ、ヒータコア15の上流側には、加熱用冷風通路14aを通過させる冷風量と冷風バイパス通路14bを通過させる冷風量との風量割合を調整するエアミックスドア19が配置されている。このエアミックスドア19は、円弧状に湾曲して延びる板状部19aを、ギア機構19bを介して、図示しないエアミックスドア駆動用のサーボモータによって板状部19aの湾曲方向に駆動変位させるスライドドアで構成されている。
【0044】
より具体的には、本実施形態のエアミックスドア19では、板状部19aを車両前方側に移動(スライド)させることによって、冷風バイパス通路14b側の開度を増加させるとともに、加熱用冷風通路14a側の開度を減少させることができる。逆に、板状部19aを車両後方側に移動させることによって、冷風バイパス通路14b側の開度を減少させるとともに、加熱用冷風通路14a側の開度を増加させることができる。
【0045】
そして、このエアミックスドア19の開度調整によって、混合空間18へ流入する冷風冷風(矢印C)および温風(矢印B)の風量割合が調整され、混合空間18にて混合された空調風の温度が調整される。なお、エアミックスドア駆動用のサーボモータは、空調制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0046】
次に、ケース11の空気流れ最下流側には、混合空間18にて温度調整された送風空気をケース11内から流出させる各種吹出開口部11c〜11fが形成されている。
【0047】
具体的には、混合空間18の直上のケース11の車両幅方向両側面には、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気を流出させる前席用フット開口部11cが形成されて、混合空間18の直後のケース11の車両後方面の車両幅方向の略中央部には、後席側の乗員の足下に向かって吹き出される送風空気を流出させる後席用フット開口部11dが形成されている。
【0048】
これらの前席用、後席用フット開口部11c、11dは、それぞれ図示しない前席用、後席用フットダクトを介して、前席側、後席側フット吹出口に接続されている。そして、これらの前席側、後席側フット吹出口から、それぞれ前席側乗員および後席側乗員の足下に向けて空調風が吹き出される。
【0049】
また、ケース11の上面の車両最前方側には、車両窓ガラスに向かって吹き出される送風空気を流出させるデフロスタ開口部11eが形成されている。このデフロスタ開口部11eは、図示しないデフロスタダクトを介して車室内に配置されたデフロスタ吹出口に接続されており、このデフロスタ吹出口から車両窓ガラスの内面に向けて空調風が吹き出される。
【0050】
さらに、ケース11の上面のデフロスタ開口部11eの車両後方側には、乗員の上半身に向けて吹き出される送風空気を流出させるフェイス開口部11fがデフロスタ開口部11eに隣接するように形成されている。このフェイス開口部11fは、図示しないフェイスダクトを介して車室内に配置されたフェイス吹出口に接続されており、このフェイス吹出口から乗員の上半身に向けて空調風が吹き出される。
【0051】
以上の説明から明らかなように、混合空間18はケース11内に形成される空気通路のうち温風通路17等に対して車両後方側に配置され、さらに、前席用、後席用フット開口部11c、11dは、混合空間18の近傍に配置されている。一方、デフロスタ開口部11eおよびフェイス開口部は、ケース11の上面の車両前方側に形成されている。
【0052】
そのため、デフロスタ開口部11eおよびフェイス開口部11fは、前席用、後席用フット開口部11c、11dよりも混合空間18から遠い位置に形成されていることになる。換言すると、本実施形態のデフロスタ開口部11eおよびフェイス開口部11fは、前席用、後席用フット開口部11c、11dに対して、ケース11内の通気通路において空気流れ下流側に配置されている。
【0053】
そこで、本実施形態では、ガイド壁11bとケース11上面部との間に、混合空間18からデフロスタ開口部11eおよびフェイス開口部11fへ空調風を導く空調風通路20を形成している。
【0054】
次に、ケース11内の前席用、後席用フット開口部11c、11dの空気流れ上流側には、前席用、後席用フット開口部11c、11dを開閉するとともに、空調風通路20の入口部を開閉するフットドア21が配置されている。さらに、デフロスタ開口部11eおよびフェイス開口部11fの空気流れ上流側には、デフロスタ開口部11eおよびフェイス開口部11fを開閉するフェイス−デフロスタドア22が配置されている。
【0055】
フットドア21およびフェイス−デフロスタドア22は、吹出モードを切替える吹出モードドアを構成する吹出開口部開閉手段であって、図示しないリンク機構を介して、吹出モードドア駆動用のサーボモータに連結されて連動して回転操作される。なお、吹出モードドア駆動用のサーボモータは、空調制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される。
【0056】
具体的には、例えば、図3に示すように、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを全開状態とすると、空調風通路20の入口部が全閉状態となる。従って、この状態では、空調風は、前席用、後席用フット開口部11c、11dから流出し、混合空間18からデフロスタ開口部11eおよびフェイス開口部11f側へ流れることはない。
【0057】
逆に、例えば、図1、図4に示すように、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを全閉状態とすると、空調風通路20の入口部が全開状態となる。従って、この状態では、空調風は混合空間18からデフロスタ開口部11eおよびフェイス開口部11f側へ流れ、前席用、後席用フット開口部11c、11dから流出することはない。
【0058】
また、例えば、図4、図5に示すように、フェイス−デフロスタドア22がデフロスタ開口部11eを全開状態とすると、フェイス開口部11fが全閉状態となり、空調風は、デフロスタ開口部11eから流出し、フェイス開口部11fから流出することはない。逆に、例えば、図1、図2に示すように、フェイス−デフロスタドア22がデフロスタ開口部11eを全閉状態とすると、フェイス開口部11fが全開状態となり、空調風はフェイス開口部11fから流出し、デフロスタ開口部11eから流出することはない。
【0059】
フットドア21およびフェイス−デフロスタドア22の詳細構成については、図6を用いて説明する。なお、フットドア21およびフェイス−デフロスタドア22は、それぞれ詳細寸法は異なるものの、その基本的構成は同等である。そこで、図6では、フットドア21の外観斜視図を示し、以下の説明では、フットドア21の構成について説明する。
【0060】
フットドア21は、車両幅方向両端部に互いに同軸状に配置される回転軸21a、21b、これら回転軸21a、21bの径方向外周側に配置されて回転軸21a、21bと一体的に回転変位する外周ドア面部21c、および、外周ドア面部21cの回転軸方向両端部に配置されて回転軸21a、21bと外周ドア面21cとを連結する側壁面部21dとを有するロータリドアで構成されている。
【0061】
側壁面部21dは、それぞれ回転軸方向から見たときに、略扇形状に形成されており、回転軸21a、21bは、それぞれ側壁面部21dの中心位置(扇の要の位置)に連結されている。さらに、回転軸21a、21bは、側壁面部21dから軸方向外側に突出して、それぞれケース11のケース11の車両幅方向両側面に形成された軸受穴(図示せず) に回転自在に支持されている。
【0062】
外周ドア面部21cは、軸方向垂直断面が略円弧状に形成されており、回転軸21a、21bの軸中心から外周ドア面部21cへ至る径方向距離は、軸方向の全域に亘って略一定に形成されている。さらに、外周ドア面部21cの軸方向両端部の内周側には、側壁面部21dの外周側が連結されている。これにより、外周ドア面部21cの内側空間に回転軸を貫通させないようにして、外周ドア面部21cの内側空間を流通する送風空気の通風抵抗を抑制している。
【0063】
なお、本実施形態では、図6に示すように、側壁面部21dをそれぞれ回転軸方向の内側へ若干量湾曲させることによって、側壁面部21dの強度を向上させている。また、外周ドア面部21cの回転方向(変位方向)両端部には、外周ドア面部21cの形状に沿って、回転方向から見たときにコの字状のリップシール21f、21gが接合されている。
【0064】
このリップシール21f、21gは、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを全開あるいは全閉する際に、ケース11に設けられた当接リブ部と接触して、フットドア21とケース11との当接部から送風空気が漏れることを防止するためのシール部材である。
【0065】
また、本実施形態では、回転軸21a、21b、外周ドア面部21cおよび側壁面部21dを、ケース11と同様の樹脂(例えば、ポリプロピレン)で形成し、リップシール21f、21gを、高温では熱可塑性樹脂のように成形可能であり常温ではゴム弾性を示す熱可塑性エラストマで形成している。
【0066】
そして、回転軸21a、21b、外周ドア面部21c、側壁面部21dおよびリップシール21f、21gを射出成形により一体に成形することによって、フットドア21を形成している。これらの基本的構成については、フェイス−デフロスタドア22についても同様である。そこで、図6では、フェイス−デフロスタドア22における各構成の符号を括弧内に記載している。
【0067】
次に、図7を用いて、フットドア21と前席用、後席用フット開口部11c、11dとの位置関係を説明する。
【0068】
図7は、図1〜図5の模式的なD−D断面図である。前述の如く、前席用フット開口部11cは、ケース11の車両幅方向両側面に形成されているので、フットドア21の側壁面部21dよりも軸方向外側に配置されている。また、後席用フット開口部11dは、ケース11の車両後方面の車両幅方向(軸方向)の略中央部に形成されて、フットドア21の外周ドア面部21cよりも径方向外側に配置されている。
【0069】
さらに、ケース11内のフットドア21の車両後方側には、空調風を混合空間18から後席用フット開口部11dを介して流出させる際に、空調風を側壁面部21dよりも回転軸21a、21bの軸方向外側へ導いた後に、後席用フット開口部11d側(軸方向の中央部側)へ導く仕切壁11gが配置されている。
【0070】
この仕切壁11gは、ケース11に一体的に形成されて、図1、図4等に示すように、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを閉塞した際に、フットドア21の外周ドア面部21cの下方側の外周側に配置され、車両幅方向に延びるように形成されている。
【0071】
また、図7に示すように、仕切壁11gの車両幅方向両端側には、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを開いた際に、混合空間18と後席用フット開口部11dとを連通させる連通隙間11hが形成されている。従って、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを開口させた際には、図7の矢印Eに示すように空調風が流れる。
【0072】
ここで、混合空間18における空調風の温度分布について説明する。混合空間18では、互いに異なる方向から流入する蒸発器13通過後の冷風およびヒータコア15あるいはPTCヒータ16通過後の温風を混合させるので、冷風と温風とを均一に混合させることは難しい。そのため、混合空間18内の空調風には温度分布が生じてしまう。
【0073】
さらに、本発明者の試験検討によれば、混合空間18内では、車両幅方向両端側の空調風の温度が中央側の空調風の温度よりも高くなる温度分布が生じることが判っている。その理由は、冷風は温風に対して密度が高く慣性力が高いからである。つまり、温風よりも慣性力が高く直進性の強い冷風が、車両幅方向両端側へ温風を即方へ押し出すように進行するために、車両幅方向両端側の空調風の温度が中央側の空調風の温度よりも高くなる。
【0074】
次に、本実施形態の車両用空調装置の電気制御部について説明する。空調制御装置(図示せず)は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された送風機ユニットの電動モータ、エアミックスドア駆動用のサーボモータおよび吹出モードドア駆動用のサーボモータ等の各種電気式アクチュエータの作動を制御する。
【0075】
また、空調制御装置の入力側には、車室内気温を検出する内気温センサ、車室外気温を検出する外気温センサ、日射量を検出する日射センサ等の各種空調用センサ群(図示せず)、および、車室内前部の計器盤付近に配置される操作パネル(図示せず)が接続されており、各種空調用センサ群の検出信号および各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。
【0076】
次に、上記構成における本実施形態の作動を説明する。車両作動状態において、操作パネルから車両用空調装置の作動信号が入力されると、空調制御装置が空調制御プログラムを実行する。空調制御プログラムが実行されると、前述の空調用センサ群により検出された検出信号および操作パネルの操作信号が読込まれ、これらの信号に基づいて、車室内吹出空気の目標吹出温度TAOが算出される。
【0077】
さらに、空調制御装置が目標吹出温度TAOに基づいて、送風機ユニットの電動モータ、エアミックスドア駆動用のサーボモータおよび吹出モードドア駆動用のサーボモータ等の制御状態を決定し、決定した制御状態が得られるように各種アクチュエータに制御信号を出力する。そして、再び、検出信号および操作信号の読込み→TAOの算出→新たな制御状態の決定→制御信号の出力といったルーチンを繰り返す。
【0078】
具体的には、送風機ユニットの電動モータについては、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)で電動モータへ出力する制御電圧を最大として、車室内送風空気量を最大量付近に制御し、TAOが中間温度域に近づくに伴って、車室内送風空気量を減少させる。PTCヒータ16については、外気温が予め定めた基準外気温以下となっているときに通電する。
【0079】
エアミックスドア駆動用のサーボモータについては、目標吹出温度TAOと空調用センサ群により検出された検出信号のうち、蒸発器吹出空気温度Te、エンジン冷却水温度Tw等に基づいて、エアミックスドア19の目標開度を決定する。吹出モードドア駆動用のサーボモータについては、TAOが低温域から高温域へと上昇するにつれて吹出モードをフェイスモード→バイレベルモード→フットモードへと順次切替える。
【0080】
フェイスモードは、フェイス吹出口から乗員の上半身側に向けて空調風を吹き出すモードであって、主に夏期の冷房時に選択される吹出モードである。このフェイスモードでは、図1に示すように、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを全閉状態とし、フェイス−デフロスタドア22がデフロスタ開口部11eを全閉状態とするとともに、フェイス開口部11fを全開状態とする。
【0081】
バイレベルモードは、フェイス吹出口から乗員の上半身側に向けて空調風を吹き出すと同時に前席側、後席側フット吹出口から乗員の足元側に向けて空調風を吹き出すモードであって、主に春秋の中間温度季に選択される吹出モードである。このバイレベルモードでは、図2に示すように、前席用、後席用フット開口部11c、11dおよび空調風通路20を開く半開状態として、フェイス−デフロスタドア22がデフロスタ開口部11eを全閉状態とするとともに、フェイス開口部11fを全開状態とする。
【0082】
フットモードは、前席側、後席側フット吹出口から乗員の足元側に向けて空調風を吹き出すモードであって、主に冬期の暖房時に選択される吹出モードである。このフットモードでは、図3に示すように、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを全開状態とする。
【0083】
さらに、本実施形態の車両用空調装置では、乗員が操作パネルのデフロスタスイッチを投入(ON)することによって、デフロスタモードおよびフット−デフモードへ切り替えることができる。
【0084】
デフロスタモードは、デフロスタ吹出口から車両窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すことで、窓曇りを防止するための吹出モードである。デフロスタモードでは、図4に示すように、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを全閉状態とし、フェイス−デフロスタドア22がデフロスタ開口部11eを全開状態とするとともに、フェイス開口部11fを全閉状態とする。
【0085】
フット−デフモードは、外気温が所定の温度よりも低い場合等のように車室内の暖房が要求されている状態で窓曇りを防止するために、前席側、後席側フット吹出口およびデフロスタ吹出口から空調風を吹き出す吹出モードである。フット−デフモードでは、図5に示すように、フットドア21が前席用、後席用フット開口部11c、11dを半開状態とし、フェイス−デフロスタドア22がデフロスタ開口部11eを全開状態とするとともに、フェイス開口部11fを全閉状態とする。
【0086】
以上の如く、本実施形態の車両用空調装置では、各種空調用センサ群の検出信号および各種空調操作スイッチからの操作信号に応じて、種々の吹出モードの切り替えることによって、適切な車室内空調を実現することができる。また、フットドア21およびフェイス−デフロスタドア22としてロータリドアを採用しているので、片持ち板ドア等を採用する場合に対して、吹出開口部を開閉する際の回転軸の回転操作力を低減できる。
【0087】
また、2つのロータリドアによって、複数(本実施形態では、4つ)の吹出開口部11c〜11fを開閉しているので、1つのロータリドアによって複数の吹出開口部を開閉する車両用空調装置に対して、それぞれの吹出開口部のレイアウトの設計自由度を向上させるとともに、それぞれのロータリドアの小型化を図ることで、車両用空調装置全体としての大型化を抑制することができる。
【0088】
さらに、本実施形態の車両用空調装置では、バイレベルモード時、フットモード時、フット−デフモード時に、仕切壁11gによって混合空間18内の温度調整された空気を、フットドア21の側壁面部21dよりも回転軸21a、21bの軸方向外側(すなわち、前席用フット開口部11c側)へ導いた後に、後席用フット開口部11d側へ導くことができる。
【0089】
従って、混合空間18内の空気に温度分布が生じていても、前席用フット開口部11cから流出する空気と同等の温度の空気を後席用フット開口部11dへ導くことができ、図8に示すように、従来技術に対して、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気との間に温度差が生じてしまうことを抑制できる。
【0090】
なお、図8(a)は、本実施形態の車両用空調装置がフットモードとなっている際に、エアミックスドア19の開度SWの変化に対する車室内前席側温度および車室内後席側温度の変化を示したグラフであり、(b)は、従来技術の同等のグラフである。
【0091】
また、図8において、エアミックスドア19の開度SW=0(%)は、冷風バイパス通路14b側を全開とし、加熱用冷風通路14a側を全閉とする最大冷房位置であり、開度SW=100(%)は、冷風バイパス通路14b側を全閉とし、加熱用冷風通路14a側を全開とする最大暖房位置である。
【0092】
さらに、図8では、本実施形態の車両用空調装置による温度差抑制効果を確実に検証するため、車室内前席側、後席側温度をそれぞれ運転席側の2箇所と助手席側の2箇所で計測している。
【0093】
また、本実施形態の車両用空調装置では、バイレベルモード時に、前席用フット開口部11cおよび後席用フット開口部11dから流出する空調風が、混合空間18内の車両幅方向両端側の比較的温度の高い空調風となり、フェイス開口部11fから流出する空調風が、混合空間18内の車両幅方向中央側の比較的温度の低い空調風となる。従って、頭寒足熱型の適切な空調を実現することができる。
【0094】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、図9に示すように、フットドア31の構成を変更するとともに、図10に示すように、仕切壁11gの形状を変更した例を説明する。なお、図9は、本実施形態のフットドア31の外観斜視図であって、第1実施形態の図6に対応する図面であり、図10は、本実施形態の空調ユニット10の模式的なD−D断面図であって、第1実施形態の図7に対応する図面である。
【0095】
具体的には、本実施形態のフットドア31は、図9に示すように、第1実施形態のフットドア21と同様の回転軸31a、31b、外周ドア面部31c、側壁面部31d、および、リップシール31f、31g等を有して構成されるロータリドアである。
【0096】
さらに、フットドア31の外周ドア面部31cは、軸方向中央側に位置付けられる中央側ドア面部31hおよび軸方向両端側に位置付けられる端部側ドア面部31iを有しており、この中央側ドア面部31hの軸方向端部と端部側ドア面部31iの軸方向端部は、第2側壁面部31jによって連結されている。
【0097】
中央側ドア面部31hおよび端部側ドア面部31iは、それぞれ軸方向垂直断面が略円弧状に形成されており、回転軸31a、31bの軸中心から中央側ドア面部31hへ至る径方向距離は、回転軸31a、31bの軸中心から端部側ドア面部31iへ至る径方向距離よりも長く形成されている。さらに、中央側ドア面部31hと端部側ドア面部31iとを連結する第2側壁面部31jは、側壁面部31dと平行に拡がっている。
【0098】
一方、図10に示すように、ケース11の仕切壁11gの車両幅方向両端側には、第2側壁面部31jに平行に拡がる両端側壁部11iが設けられている。従って、ケース11内には、中央側ドア面部31h、第2側壁面部31j、仕切壁11g(両端側壁部11i)に囲まれた隙間空間Fが形成されている。
【0099】
その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置によれば、種々の吹出モードの切り替えることによって、適切な車室内空調を実現することができる。すなわち、バイレベルモード時、フットモード時、フット−デフモード時に、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気との間に温度差が生じてしまうことを抑制できる。
【0100】
さらに、本実施形態の車両用空調装置では、バイレベルモード時に、前席用フット開口部11cおよび後席用フット開口部11dから流出する空調風とフェイス開口部11fから流出する空調風との温度差を容易に調整することができ、より一層、適切な頭寒足熱型の空調を実現することができる。
【0101】
つまり、前述の如く、混合空間18内の空調風には、車両幅方向両端側の温度が中央側の空調風の温度よりも高くなる温度分布が生じている。このため、混合空間18内の比較的温度の低い空調風は、フットドア31の外周ドア面部31cの内側空間および隙間空間Fへ流入しやすい。
【0102】
この際、本実施形態の仕切壁11gには、両端側壁部11iが設けられているので、フットドア31と仕切壁11gとの間に形成される隙間空間Fから空気が回転軸31a、31bの軸方向外側へ流出してしまうことを抑制して、隙間空間Fへ流入した空調風を確実にフェイス開口部11f側へ導くことができる。
【0103】
さらに、隙間空間Fの容積を調整することによって、フェイス開口部11f側へ導かれる冷風量を容易に調整できる。そこで、本実施形態では、回転軸31a、31bの軸中心から中央側ドア面部31hへ至る径方向距離と端部側ドア面部31iへ至る径方向距離を異なる寸法として、隙間空間Fの容積を容易に変更できるようにしている。
【0104】
その結果、隙間空間Fからフェイス開口部11f側へ導かれる比較的温度の低い空調風の風量を調整することが可能となり、ユーザのニーズに適合する適切な頭寒足熱型の空調を実現することができる。
【0105】
例えば、図11(a)に示すように、中央側ドア面部31hの外周面から仕切壁11gの内周面に至る径方向距離Xを5mm程度とすれば、図11(b)に示すように、径方向距離Xを3mmとした場合に対して、乗員の足下側に向かって吹き出される空気の温度と乗員の上半身側に向かって吹き出される空気との間の温度差を4℃〜5℃程度拡大することができる。
【0106】
(第3実施形態)
本実施形態では、第2実施形態に対して、図12に示すように、フットドア31の端部側ドア面部31iの形状を変更するとともに、図13に示すように、仕切壁11gの形状を変更した例を説明する。なお、図12は、本実施形態のフットドア31の外観斜視図であって、第1実施形態の図6に対応する図面であり、図13は、本実施形態の空調ユニット10の模式的なD−D断面図であって、第1実施形態の図7に対応する図面である。
【0107】
具体的には、本実施形態のフットドア31では、図12に示すように、外周ドア面部32cの端部側ドア面部32iを、回転軸32a、32bの軸中心から端部側ドア面部32iへ至る径方向距離が回転軸方向端部側へ向かって徐々に縮小する形状(いわゆるテーパ形状)に形成している。
【0108】
一方、図13に示すように、ケース11の仕切壁11gの車両幅方向両端側には、端部側ドア面部32bに沿って拡がる形状(すなわち、端部側ドア面部32iと同様のテーパ形状)の両端側壁部11iが設けられている。
【0109】
その他の構成および作動は、第2実施形態と同様である。従って、本実施形態の車両用空調装置によれば、種々の吹出モードの切り替えることによって、適切な車室内空調を実現することができる。すなわち、バイレベルモード時、フットモード時、フット−デフモード時に、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気の温度と後席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気との間に温度差が生じてしまうことを抑制できる。
【0110】
さらに、本実施形態の車両用空調装置では、第2実施形態と同様に、バイレベルモード時に、前席用フット開口部11cおよび後席用フット開口部11dから流出する空調風とフェイス開口部11fから流出する空調風との温度差を容易に調整することができ、ユーザのニーズに適合する適切な頭寒足熱型の空調を実現することができる。
【0111】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、以下のように種々変形可能である。
【0112】
上述の実施形態では、エアミックスドア駆動用のサーボモータによってエアミックスドア19を回転操作し、吹出モードドア駆動用のサーボモータによってフットドア21およびフェイス−デフロスタドア22を回転操作しているが、もちろん、これらのドアを乗員の手動操作力によって直接回転操作するマニュアル方式を採用してもよい。
【0113】
また、上述の第2、第3実施形態では、フェイス−デフロスタドア22について言及していないが、第1実施形態と同様のフェイス−デフロスタドア22を採用してもよいし、フットドア31と同様の形状のフェイス−デフロスタドア22を採用してもよい。
【0114】
さらに、上述の実施形態では、温度調整手段として蒸発器13、ヒータコア15、PTCヒータ16を採用した例を説明したが、温度調整手段は、これに限定されない。例えば、PTCヒータ16を廃止して、エンジン冷却水とは異なる熱媒体と熱源とする加熱用熱交換器を設けてもよいし、PTCヒータ16を廃止してもよい。
【符号の説明】
【0115】
11 ケース
11c 前席用フット開口部
11d 後席用フット開口部
11f フェイス開口部
11g 仕切壁
11h 両端側壁部
13 蒸発器
15 ヒータコア
16 PTCヒータ
21、31 フットドア
21a、21b、31a、31b 回転軸
21c、31c 外周ドア面部
21d、31d 側壁面部
31h 中央側ドア面部
31i 端部側ドア面部
31j 第2側壁面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内へ向かって空気が流れる空気通路を形成するケース(11)と、
前記ケース(11)内に配置され、前記空気の温度を調整する温度調整手段(13、15、16)と、
前記ケース(11)に形成されて前記空気を流出させる複数の吹出開口部(11c、11d、11f)を開閉する吹出開口部開閉手段(21、31)とを備え、
前記吹出開口部開閉手段は、回転軸(21a、21b、31a、31b)、前記回転軸(21a…31b)の径方向外周側に配置されて回転軸と一体的に回転変位する外周ドア面部(21c、31c)、および、前記外周ドア面部(21c、31c)の回転軸方向両端部に配置されて前記回転軸(21a…31b)と前記外周ドア面部(21c、31c)とを連結する側壁面部(21d、31d)を有するロータリドア(21、31)で構成されており、
前記複数の吹出開口部として、前席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気を流出させる前席用フット開口部(11c)、および、後席側の乗員の足下に向かって吹き出される空気を流出させる後席用フット開口部(11d)が設けられている車両用空調装置であって、
前記前席用フット開口部(11c)および前記後席用フット開口部(11d)のうち、一方の開口部(11c)は前記側壁面部(21d、31d)よりも前記回転軸(21a…31b)の軸方向外側に配置されており、他方の開口部(11d)は前記外周ドア面部(21c、31c)よりも前記回転軸(21a…31b)の径方向外側に配置されており、
さらに、前記ロータリドア(21、31)と前記他方の開口部(11d)との間に配置されて、前記ロータリドア(21、31)が前記前席用フット開口部(11c)および前記後席用フット開口部(11d)を開口させた際に、前記温度調整手段(13…16)にて温度調整された空気を前記側壁面部(21d、31d)よりも前記回転軸(21a…31b)の軸方向外側に導いた後に、前記他方の開口部(11d)側へ導く仕切壁(11g)を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
さらに、前記複数の吹出開口部として、乗員の上半身に向かって吹き出される空気を流出させるフェイス開口部(11f)が設けられおり、
前記フェイス開口部(11f)は、前記前席用フット開口部(11c)および前記後席用フット開口部(11d)よりも前記空気流れの下流側に配置されており、
前記ロータリドア(31)は、前記外周ドア面部(31c)として、前記回転軸(31a、31b)の軸方向中央側に位置付けられる中央側ドア面部(31h)および前記回転軸(31a、31b)の軸方向両端側に位置付けられる端部側ドア面部(31i)を有し、
前記回転軸(31a、31b)の軸中心から前記中央側ドア面部(31h)へ至る径方向距離は、前記軸中心から前記端部側ドア面部(31i)へ至る径方向距離よりも長くなっていることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記中央側ドア面部(31h)の軸方向端部と前記端部側ドア面部(31i)の軸方向端部は、前記側壁面部(31d)と平行に拡がる第2側壁面部(31j)によって連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記仕切壁(11g)の両端部には、前記第2側壁面部(31j)に平行に拡がる両端側壁部(11h)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記回転軸(31a、31b)の軸中心から前記端部側ドア面部(31i)へ至る径方向距離は、前記回転軸方向端部側へ向かって徐々に縮小していることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記仕切壁(11g)の両端側には、前記端部側ドア面部(31i)に沿って拡がる両端側壁部(11h)が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−153331(P2012−153331A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16471(P2011−16471)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】