説明

車両用空調装置

【課題】車両用空調装置において、高温多湿環境下や車両のフロントウィンドウが凍結した場合におけるデフロスタモード時に乗員の快適性をより一層高める。
【解決手段】車両用空調装置10では、高温多湿時等においてデフロスタモードに切り換える際、ダンパ機構20によってクールベントダンパ40を回動させ、第2フロント通路32と第3フロント通路34とを連通させ、且つ、ベント開口部をベントダンパ44の回動作用下に開放させる。これにより、デフロスタ開口部60を通じて供給される温風が車両のフロントウィンドウ近傍へと送風されると同時に、車室内における乗員の顔近傍に第1ベント開口部42から供給された冷風が送風される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、熱交換器によって温度調整のなされた空気を車室内へと送風して車室内の温度調整を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される車両用空調装置は、送風機によって内外気をケース内へと取り込み、冷却手段である蒸発器により冷却された空気と、加熱手段であるヒータコアにより加熱された空気とを前記ケース内で所望の混合比率で混合した後、車室内に設けられたデフロスタ吹出口、フェイス吹出口又はフット吹出口から送風することによって前記車室内の温度及び湿度の調整を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−146049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような車両用空調装置においては、例えば、梅雨等の高温多湿時において、車両のフロントウィンドウの曇りを除去するためにデフロスタモードに切り換えた際、デフロスタ開口部から前記フロントウィンドウに対して温風のみが送風されるため、該温風によって乗員の顔近傍が加熱されて不快となることがある。また、冬季における氷点下の環境において、凍りついたフロントウィンドウを融解するために、高温の温風をデフロスタ開口部へと送風する際にも同様に、乗員の顔近傍が必要以上に加熱されてしまい不快となることがある。
【0005】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、上記の環境下におけるデフロスタモードの使用時において、乗員の快適性をより一層高めることが可能な車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するために、本発明は、空気の流通する複数の通路を有するケーシングと、前記ケーシングに接続され該ケーシング内に前記空気を供給する送風機と、該ケーシングの内部に設けられ、空気を冷却して冷風を供給する冷却手段と、前記空気を加熱して温風を供給する加熱手段と、前記冷却手段の下流に設けられ前記加熱手段が配置される温風通路と、前記加熱手段をバイパスして冷風を流通させる冷風通路と、前記冷風通路と温風通路への送風割合を調整するエアミックスダンパと、車室内において乗員の顔近傍へ送風するベント開口部を開閉するベントダンパと、前記車室内においてフロントウィンドウ近傍に送風するデフロスタ開口部を開閉するデフロスタダンパとを有する車両用空調装置において、
前記冷却手段の下流には、前記冷風通路の連通状態を切り換えるクールベントダンパを備え、
前記エアミックスダンパが、前記温風通路側を開放して前記温風を前記デフロスタ開口部へと送風する際、前記クールベントダンパを開放し、前記冷風通路を通じて前記冷風を前記ベント開口部へと供給することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、高温多湿の環境下やフロントウィンドウが凍りついた氷点下の環境下において車両のフロントウィンドウの曇りや凍結を除去するためにデフロスタモードを使用する場合に、デフロスタダンパによってデフロスタ吹出口を開放させると同時に、クールベントダンパを切り換えて冷風通路を連通状態とする。これにより、加熱手段で加熱された温風がデフロスタ開口部を通じて車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風されると共に、冷却手段で冷却された冷風が、前記冷風通路を経てベント開口部から車室内における乗員の顔近傍へと送風される。その結果、高温多湿時や車両のフロントウィンドウが凍結した場合にデフロスタモードを使用した際に、乗員の顔近傍が加熱され不快となることが回避され、車室内における快適性を向上させることができる。
【0008】
また、ケーシングには、冷風通路から供給された冷風と温風通路から供給された温風とが混合される混合部と、
前記混合部及び前記温風通路に対してそれぞれ連通するデフロスタ通路と、
前記温風通路と前記デフロスタ通路との連通状態を切り換えるサブデフロスタダンパと、
を備えるとよい。
【0009】
さらに、温風通路と混合部との間に設けられ、該温風通路と前記混合部との連通状態を切り換える温度コントロールダンパを備えるとよい。
【0010】
さらにまた、ベントダンパは、ベント開口部を開放すると共に、混合部からデフロスタ通路への連通を遮断するとよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0012】
すなわち、高温多湿の環境下やフロントウィンドウが凍りついた氷点下の環境下において車両のフロントウィンドウの曇りや凍結を除去するためにデフロスタモードを使用する場合に、デフロスタダンパによってデフロスタ吹出口を開放させると共に、クールベントダンパを切り換えて冷風通路を連通状態とすることにより、温風をデフロスタ開口部から前記フロントウィンドウ近傍へと送風すると同時に、冷風通路を通じて冷風をベント開口部から車室内における乗員の顔近傍へと送風することができる。その結果、高温多湿時や車両のフロントウィンドウが凍結した場合にデフロスタモードを使用した際に、乗員の顔近傍が加熱され不快となることが回避され、車室内における快適性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の全体断面図である。
【図2】図1の車両用空調装置における第1エアミックスダンパ及びクールベントダンパ近傍の拡大図である。
【図3】図2に示すクールベントダンパが第3フロント通路から離間する方向に回動し、前記第3フロント通路と第2フロント通路とが連通した状態を示す拡大図である。
【図4】図4Aは、図3に対して第1エアミックスダンパがヒータコア側へ回動し、且つ、クールベントダンパが前記第3フロント通路側へと回動した状態を示す説明図であり、図4Bは、図4Aに示す第1エアミックスダンパがさらにヒータコア側へ回動し、且つ、前記クールベントダンパが前記第3フロント通路から離間する方向に回動した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る車両用空調装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0015】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る車両用空調装置を示す。なお、車両用空調装置10は、図1に示される右側(矢印A方向)が車両の前方側となり、左側(矢印B方向)が該車両の後方側となるように搭載されるため、以下、矢印A方向を前方とし、矢印B方向を後方として説明する。
【0016】
この車両用空調装置10は、図1に示されるように、空気の各通路を構成するケーシング12と、前記ケーシング12の側部に図示しない連結ダクトを介して連結され、車両における前席に送風するための第1送風機(図示せず)と、前記ケーシング12の内部に配設され、前記空気を冷却するエバポレータ(冷却手段)14と、該空気を加熱するヒータコア(加熱手段)16と、前記ケーシング12の下部に連結され、車両の中間席、後席に送風するための第2送風機18と、前記各通路内を流通する空気の流れを切り換えるダンパ機構20とを含む。
【0017】
ケーシング12の内部には、幅方向中央部にセンタープレート22が設けられると共に、ケーシング12の下側部には、連結ダクトの連結される第1取入口24が形成され、第1送風機から空気が供給される。この第1取入口24は、エバポレータ14の上流側に設けられた第1フロント通路26と連通している。
【0018】
また、ケーシング12の内部には、第1フロント通路26に臨むようにエバポレータ14が設けられ、該エバポレータ14は、第1送風機から供給される空気を冷却する第1冷却部28と、第2送風機18から供給される空気を冷却する第2冷却部30とを有し、前記第1冷却部28がケーシング12の前方(矢印A方向)、前記第2冷却部30が前記ケーシング12の後方(矢印B方向)となるように配置される。なお、第1冷却部28と第2冷却部30との境界部位には、互いの空気の連通を遮断する仕切手段(図示せず)が装着される。
【0019】
一方、エバポレータ14の下流側には、第1冷却部28を通過した空気の供給される第2フロント通路32が形成され、該第2フロント通路32の上方には第3フロント通路(冷風通路)34と第4フロント通路(温風通路上流側)36とが分岐するように形成される。第3フロント通路34は、ケーシング12における前方側(矢印A方向)、第4フロント通路36が後方側(矢印B方向)となるように配置される。また、第2フロント通路32には、第3フロント通路34及び第4フロント通路36の分岐部位に臨むように第1エアミックスダンパ38が回動自在に設けられる。
【0020】
そして、第1エアミックスダンパ38を回動させることによってエバポレータ14を通過した冷風の第3フロント通路34及び第4フロント通路36への送風状態及び送風量が調整される。
【0021】
この第3フロント通路34の上流側には、第2フロント通路32に臨む下方に、クールベントダンパ40が設けられ、前記第2フロント通路32と第3フロント通路34との連通状態を切り換えている。すなわち、クールベントダンパ40は、エバポレータ14近傍に配置されているため、その切換作用下に前記エバポレータ14によって冷却された冷風を直接的に第3フロント通路34へと供給するために設けられる。
【0022】
また、第3フロント通路34は、上方に向かって延在し、その下流側となる上部には第1ベント開口部(ベント開口部)42が開口すると共に、ベントダンパ44が回動自在に設けられている。ベントダンパ44は、第3フロント通路34を流通する空気(冷風)が第1ベント開口部42、後述する第6フロント通路(デフロスタ通路)56へ送風される際の送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整可能に設けられている。
【0023】
ヒータコア16は、第4フロント通路36の下流側に設けられ、第1送風機から供給される空気を加熱する第1加熱部46と、第2送風機18から供給される空気を加熱する第2加熱部48とを有し、前記第1加熱部46がケーシング12の前方(矢印A方向)となるように配置される。
【0024】
このヒータコア16の下流側には、第5フロント通路(温風通路下流側)50が形成され、該第5フロント通路50が前方(矢印A方向)に向かって延在し、第3フロント通路34と合流する部位に温度コントロールダンパ52が設けられる。また、ヒータコア16に臨む上方には、サブデフロスタダンパ54が設けられている。そして、温度コントロールダンパ52の回動作用下に第5フロント通路50と第3フロント通路34との連通状態を切り換えると共に、前記第5フロント通路50から第3フロント通路34へと供給される温風の送風方向を偏向させる。
【0025】
一方、サブデフロスタダンパ54は、第5フロント通路50の上方に形成された第6フロント通路56との連通状態を切換可能に設けられ、該サブデフロスタダンパ54を回動させて前記第5フロント通路50と第6フロント通路56とを連通させる、すなわち、第5フロント通路50から該第6フロント通路56までの流路が短縮することによって流路の通気抵抗が減少した状態とし、ヒータコア16で加熱された温風を、第3フロント通路34を流通させることなく直接的に前記第6フロント通路56へと供給可能に設けられている。
【0026】
第6フロント通路56は、前方に設けられた開口部を通じて第3フロント通路34の下流側と連通すると共に、後方に設けられた開口部を通じて後述する第7フロント通路58と連通している。また、第6フロント通路56の上方には、デフロスタ開口部60が開口し、該デフロスタ開口部60に臨むようにデフロスタダンパ62が回動自在に設けられる。
【0027】
デフロスタダンパ62は、第6フロント通路56へ供給された空気が、デフロスタ開口部60から送風される際の送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整可能に設けられている。
【0028】
第7フロント通路58は、車室内における前席の乗員の足元近傍に送風するための第1ヒート通路66を介して第1ヒート吹出口(図示せず)に連通し、第8フロント通路64は、下方に向かって湾曲するように延在し、第2送風機18の上方において、前記車室内における中間席の乗員の足元近傍に送風するための図示しない第2ヒート通路を介して第2ヒート吹出口(図示せず)に連通する。
【0029】
一方、ケーシング12の下部には、第1取入口24の後方側に第2送風機18から空気の供給される第2取入口70が形成される。この第2取入口70は、エバポレータ14の上流側となる位置に開口し第1リア通路72と連通する。
【0030】
第2送風機18は、取り込んだ空気をケーシング12内へと供給する第2送風ファン74を有し、前記第2送風ファン74の収容される送風機ケース76がケーシング12の第2取入口70に連結される。
【0031】
この第1リア通路72の下流側には、エバポレータ14の第2冷却部30が設けられ、該エバポレータ14の下流側には第2リア通路78が形成される。なお、第2リア通路78は、分離壁によって第2フロント通路32と分離される。
【0032】
第2リア通路78は、ヒータコア16に臨むと共に、冷風及び温風を所定の混合比率で混合して混合風とする第2エアミックスダンパ80が回動自在に設けられる。この第2エアミックスダンパ80は、第2リア通路78とヒータコア16の下流側に接続される第3リア通路82の上流側又は下流側との連通状態を切り換える。
【0033】
これにより、エバポレータ14により冷却されて第2リア通路78へ供給された冷風と、ヒータコア16によって加熱されて第3リア通路82へと流通した温風とを、第2エアミックスダンパ80の回動作用下に前記第3リア通路82内において所定の混合比率で混合して送風する。
【0034】
第3リア通路82の下流側には、第4及び第5リア通路84、86が連通し、その分岐部位にモード切換ダンパ87が回動自在に設けられ、該第3リア通路82と分岐した前記第4及び第5リア通路84、86への送風状態を切り換え、且つ、その送風量を調整する。
【0035】
第4及び第5リア通路84、86は、車両の後方に向かって延在し、該第4リア通路84は、車室内における中間席の乗員の顔近傍に送風するための第2ベント吹出口(図示せず)に連通している。一方、第5リア通路86は、中間席及び後席の乗員の足元近傍に送風するための第2及び第3ヒート吹出口(図示せず)に連通している。
【0036】
次に、ダンパ機構20は、図3〜図4に示されるように、通電作用下に回転駆動する駆動源(図示せず)と、該駆動源の回転駆動力を各ダンパへと伝達する駆動力伝達機構88とを含み、前記駆動源の回転駆動力が、前記駆動力伝達機構88を介して各ダンパへと伝達され、各ダンパが所定角度だけ回動動作する。なお、ダンパ機構20では、複数の駆動源及び駆動力伝達機構88によって各ダンパを駆動させている。
【0037】
ここでは、第1エアミックスダンパ38及びクールベントダンパ40を駆動させるための駆動源及び駆動力伝達機構88について説明する。この駆動源は、例えば、アクチュエータからなり、ケーシング12の外壁面に装着される。また、駆動力伝達機構88は、図3に示されるように、駆動源の駆動軸94と連結される回転プレート90と、前記回転プレート90に軸支されるリンクアーム92とを含み、前記回転プレート90及びリンクアーム92も、駆動源と同様にケーシング12の外壁面に設けられる。なお、駆動源及び駆動力伝達機構88は、ケーシング12において第1エアミックスダンパ38及びクールベントダンパ40に臨む位置に配置される。
【0038】
回転プレート90は、円形状に形成され、その中央部に駆動源の駆動軸94が連結され、該駆動軸94を中心としてケーシング12に対して回転自在に支持される。
【0039】
リンクアーム92は、第1エアミックスダンパ38の支軸に連結される第1アーム96と、前記第1アーム96の端部に第1リンクピン98を介して回動自在に支持される第2アーム100とを備え、前記第2アーム100の端部が第2リンクピン102を介して回転プレート90に支持される。なお、回転プレート90には、駆動軸94に対して略円周方向に溝部(図示せず)が形成されており、該溝部に第2リンクピン102が係合され、前記回転プレート90が回転することで前記第2リンクピン102は前記溝部に沿って摺動する。この溝部は、駆動軸94に対して半径が変化するように形成されているため、回転プレート90が回転すると、第2リンクピン102は溝部に合わせて該回転プレート90の半径方向に移動し、それに伴って、第2アーム100、第1アーム96及び第1エアミックスダンパ38が応動して駆動する。
【0040】
また、リンクアーム92は、クールベントダンパ40の支軸に連結される第3アーム104と、前記第3アーム104の端部に第3リンクピン106を介して回動自在に支持される第4アーム108とを備え、前記第4アーム108の端部が第4リンクピン110を介して回転プレート90に支持される。なお、第4リンクピン110も、上述した第2リンクピン102と同様に、回転プレート90に形成された別の溝部(図示せず)に係合し、該回転プレート90の回転に応動して第4アーム108、第3アーム104及びクールベントダンパ40が駆動する。
【0041】
本発明の実施の形態に係る車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に車両におけるフロントウィンドウの曇りを除去するために該フロントウィンドウ近傍のみに送風を行うデフロスタモードにおける動作並びに作用効果について説明する。
【0042】
この場合、図1及び図2に示されるように、第1エアミックスダンパ38及びクールベントダンパ40が、第2フロント通路32と第3フロント通路34との連通をそれぞれ遮断するのと同時に、ベントダンパ44は、第1ベント開口部42を閉塞し、該第1ベント開口部42と第3フロント通路34との連通を遮断し、温度コントロールダンパ52は、第5フロント通路50と第3フロント通路34とを連通させる(図1中、二点鎖線形状)。
【0043】
一方、サブデフロスタダンパ54及びデフロスタダンパ62は、第5フロント通路50、第6フロント通路56及びデフロスタ開口部60を連通させるように回動している。
【0044】
これにより、ヒータコア16を通過した温風が、第5フロント通路50から第6フロント通路56を経て開口したデフロスタ開口部60へと供給され、車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風される。
【0045】
次に、梅雨等の高温多湿の環境下や車両のフロントウィンドウが凍結した場合において、デフロスタモードを使用する場合について説明する。
【0046】
この場合には、上述した通常のデフロスタモードに対して、図3に示されるように、ダンパ機構20における駆動源及び駆動力伝達機構88の駆動作用下に回転プレート90を時計回りに所定角度だけ回転させ、クールベントダンパ40を回動させ、第2フロント通路32と第3フロント通路34とを連通させると共に、図示しない別のダンパ機構20によってベントダンパ44を回動させ第1ベント開口部42を開放する。これにより、通常のデフロスタモードと同様に、温風がデフロスタ開口部60を通じて車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風されると同時に、エバポレータ14で冷却された冷風が、第2フロント通路32、第3フロント通路34を経て第1ベント開口部42から車室内における乗員の顔近傍へと送風される。その結果、高温多湿時や高温の温風をデフロスタ開口部60へと送風した際に、乗員の顔近傍が加熱され不快となることが回避され、車室内における快適性を向上させることができる。
【0047】
また、通常のデフロスタモード時からダンパ機構20における駆動源及び駆動力伝達機構88の駆動作用下に回転プレート90を反時計回りに所定角度だけ回転させ、図4Aに示されるように、第1エアミックスダンパ38を中間位置とし、且つ、クールベントダンパ40を第3フロント通路34側へと回動させて第2フロント通路32と前記第3フロント通路34との連通を遮断することにより、エバポレータ14によって冷却された冷風と、ヒータコア16で加熱された温風とが所定の割合で混合され、例えば、第1ベント開口部42やヒート開口部を通じて車室内における乗員の顔及び足元近傍へ所望の温度で送風されるバイレベルモードとなる。
【0048】
さらに、ダンパ機構20における駆動源及び駆動力伝達機構88の駆動作用下に回転プレート90を反時計回りに所定角度だけ回転させ、図4Bに示されるように、第1エアミックスダンパ38をヒータコア16側に回動させる。これにより、エバポレータ14で冷却された冷風が、第2フロント通路30から第3フロント通路34を通じて第1ベント開口部42へと供給されるため、図示しないベント吹出口を経て車室内における乗員の顔近傍へと冷風が送風され、車室内の温度を急速に低下させることが可能となるベントモードとなる。
【0049】
すなわち、回転プレート90を時計回りに所定角度回転させるたびに、ベントモード、バイレベルモード、通常のデフロスタモード、高温多湿時等のデフロスタモードとなるように第1エアミックスダンパ38及びクールベントダンパ40が応動する。
【0050】
以上のように、本実施の形態では、高温多湿環境下や車両のフロントウィンドウが凍結した場合におけるデフロスタモードにおいて、クールベントダンパ40を回動させ、第2フロント通路32と第3フロント通路34とを連通させると共にベントダンパ44の切換作用下に第1ベント開口部42を開放することにより、通常のデフロスタモードと同様に、温風がデフロスタ開口部60を通じて車両におけるフロントウィンドウ近傍に送風されると同時に、エバポレータ14で冷却された冷風が、第2フロント通路32、第3フロント通路34を経て第1ベント開口部42を通じて車室内における乗員の顔近傍へと送風される。その結果、高温多湿時や車両のフロントウィンドウが凍結した場合にデフロスタモードを使用した際に、乗員の顔近傍が加熱され不快となることが回避され、車室内における快適性を向上させることが可能となる。
【0051】
また、ヒータコア16の下流側に設けられた第5フロント通路50と該第5フロント通路50のさらに下流側に設けられた第6フロント通路56との間にサブデフロスタダンパ54を設け、温風をデフロスタ開口部60へと導く際に、前記サブデフロスタダンパ54の切換作用下に第5フロント通路50と第6フロント通路56とを連通させておくことにより、前記温風が、第3フロント通路34から前記第6フロント通路56側に流通する冷風と混合されることが防止されると共に、前記温風のデフロスタ開口部60までの流路を短縮することができる。その結果、温風の温度低下が防止されると共に、デフロスタ開口部60から送風される前記温風の送風量を増加させることが可能となる。
【0052】
さらに、ヒータコア16の下流側において、第5フロント通路50と第3フロント通路34とが合流する部位に温度コントロールダンパ52を設け、前記第5フロント通路50を通じて温風をデフロスタ開口部60へと導く際、前記温度コントロールダンパ52を前記第5フロント通路50側に回動させ、該第5フロント通路50と前記第3フロント通路34との連通を遮断することにより、前記温風が冷風通路となる前記第3フロント通路34側へと漏出することが防止される。これにより、第1ベント開口部42から乗員の顔近傍へと送風される冷風の温度上昇を防止することが可能となる。
【0053】
なお、温度コントロールダンパ52を、第3フロント通路34側へと若干だけ回動させ、第3フロント通路34から第1ベント開口部42へと供給される冷風に対して温風を混合させ送風温度の調整を行うようにしてもよい。
【0054】
さらにまた、ヒータコア16で加熱された温風をデフロスタ開口部60へと供給する際、ベントダンパ44を回動させ第1ベント開口部42を開放すると共に、前記ベントダンパ44によって第3フロント通路34と第6フロント通路56との連通を遮断することにより、該第3フロント通路34を流通する冷風が第6フロント通路56側に流通することが阻止される。その結果、デフロスタ開口部60に温風を供給するための温風通路と、第1ベント開口部42に冷風を供給するための冷風通路とを完全に分離することができるため、温度差を有した温風と冷風とをそれぞれ同時、且つ、該温度差を維持したままの状態で送風することが可能となる。
【0055】
なお、本発明に係る車両用空調装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0056】
10…車両用空調装置 12…ケーシング
14…エバポレータ 16…ヒータコア
20…ダンパ機構 26…第1フロント通路
32…第2フロント通路 34…第3フロント通路
36…第4フロント通路 38…第1エアミックスダンパ
40…クールベントダンパ 44…ベントダンパ
50…第5フロント通路 52…温度コントロールダンパ
54…サブデフロスタダンパ 56…第6フロント通路
60…デフロスタ開口部 62…デフロスタダンパ
80…第2エアミックスダンパ 88…駆動力伝達機構
90…回転プレート 92…リンクアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気の流通する複数の通路を有するケーシングと、前記ケーシングに接続され該ケーシング内に前記空気を供給する送風機と、該ケーシングの内部に設けられ、空気を冷却して冷風を供給する冷却手段と、前記空気を加熱して温風を供給する加熱手段と、前記冷却手段の下流に設けられ前記加熱手段が配置される温風通路と、前記加熱手段をバイパスして冷風を流通させる冷風通路と、前記冷風通路と温風通路への送風割合を調整するエアミックスダンパと、車室内において乗員の顔近傍へ送風するベント開口部を開閉するベントダンパと、前記車室内においてフロントウィンドウ近傍に送風するデフロスタ開口部を開閉するデフロスタダンパとを有する車両用空調装置において、
前記冷却手段の下流には、前記冷風通路の連通状態を切り換えるクールベントダンパを備え、
前記エアミックスダンパが、前記温風通路側を開放して前記温風を前記デフロスタ開口部へと送風する際、前記クールベントダンパを開放し、前記冷風通路を通じて前記冷風を前記ベント開口部へと供給することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用空調装置において、
前記ケーシングには、前記冷風通路から供給された前記冷風と前記温風通路から供給された前記温風とが混合される混合部と、
前記混合部及び前記温風通路に対してそれぞれ連通するデフロスタ通路と、
前記温風通路と前記デフロスタ通路との連通状態を切り換えるサブデフロスタダンパと、
を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用空調装置において、
前記温風通路と前記混合部との間に設けられ、該温風通路と前記混合部との連通状態を切り換える温度コントロールダンパを備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両用空調装置において、
前記ベントダンパは、前記ベント開口部を開放すると共に、前記混合部から前記デフロスタ通路への連通を遮断することを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−187968(P2012−187968A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51670(P2011−51670)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】