説明

車両用空調装置

【課題】臭い対策を講じた内外気2層式の車両用空調装置を提供し、特に車両に臭い対策のための新たな排出口及びダクトを設ける必要の無い内外気2層式の車両用空調装置を提供する。
【解決手段】空調ケース1内または車室内の臭いを抑制するために、外気吸込口の1つ(1c)を空気排出口として使用し、車室側空気吐出口開閉手段15,16,17により車室側空気吐出口1e,1f,1gを全て閉鎖し、1つの送風手段7a,21bを作動させかつ他方の送風手段7a,21bを作動させずに、第1空気通路11および第2空気通路12内の空気を空気排出口1cより排出させるように制御する臭い排出制御手段を備えたことを特徴とする内外気2層式車両用空調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器や吹出温度調節手段を収容した空調ケースの内部を、車室内空気(以下、「内気」と言う)が導入される第1空気通路と大気(以下、「外気」と言う)が導入される第2空気通路とを区画形成する仕切り部材を備えた内外気2層式車両用空気調和装置に関し、特に始動時などに熱交換器から発生する臭いや車室内の臭いを抑制することができる空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内外気2層式ではない一般的な車両用空調装置は、空調ケース内にエバポレータを配置し、冷房時には、冷凍サイクルのコンプレッサにより圧縮した冷媒をエバポレータに供給して冷却すると共に、送風機により室内の空気または外気を空調ケース内に吸引し、エバポレータを通過させて室内に冷気を送風する。また、暖房時には、ケース内に配設したヒータコアを通して室内に暖気を送風する。
【0003】
ところで、このような車両用空調装置では、使用中に内気または外気が空調ケース内に導入されるため、空気中に含まれる各種の塵や臭い成分がケース内に侵入してエバポレータに付着し、ある程度の期間が経過すると、それらが不快な臭いを発生し、送風と共にその臭いが車室内に放出される問題があった。
【0004】
特に、ある程度の不使用期間を経た後、空調装置を使用して送風を行なう場合にその不使用期間中に、空調ケース内に配設されたエバポレータやヒータコアの表面に、多数の塵と臭い成分が付着し、適度の温度と湿度の元でそれらの成分等が増殖する。このため、これらの臭い成分が始動時の送風と共に、不快な臭いを車室内に放出することがあった。また、車室内の人体の排出成分や持ち込まれた食品の臭い等により車両の乗員に不快感を感じさせる問題もあった。
【0005】
そこで、従来、特許文献1などにおいて、内外気2層式ではない一般的な車両用空調装置では、エバポレータの下流側に排出通路を設置して、始動時などに空調ケースの通路ドアを切り替えて、ケース内の空気を室外に排出する構造の自動車用空調装置が提案されている。しかしながら、これは、車両に新たな排出口を設ける必要が生じることや、ダクトを配置するための空間が必要となる等のデメリットが発生する。
【0006】
次に、内外気2層式の車両用空調装置(特許文献2、3)を簡単に説明する。
内外気2層ユニット形式の車両用空調装置とは、ディーゼルエンジン搭載車両や電気自動車のように、暖房用熱源の少ない車両に対して暖房能力の向上を図るために考案されたもので、具体的には、図6に示すようなものである。すなわち、空調ケース1内には仕切り板4〜6によって、第1内気導入口1bから車室内吹出口(デフロスタ吹出口1e、フェイス吹出口1f、フット吹出口1g等)へと至る第1空気通路11と、第2外気導入口1cから車室内吹出口1e〜1gへと至る第2空気通路12との2つの空気通路が形成されている。また、両空気通路11、12には、2つの送風機81、82、エバポレータ2およびヒータコア3が設けられており、これらの機器によって両空気通路11、12内の空気が送風、冷却、加熱される。なお、13、14は、外気導入口1a、1cと内気導入口1b、1dを切替える内外気切替ドアであり、15〜17はそれぞれの吹出口1a〜1gを開閉するドアである。送風機81と送風機82は、同一軸に接続されており、各々の送風機はモーター8により同一回転方向に同一回転速度で駆動される。
【0007】
そして、冬季暖房運転時に、外気導入口1cから導入した低湿度の外気を、第2空気通路12を介してデフロスタ吹出口1eから窓ガラスに向けて吹き出すとともに、内気導入口1bから導入した内気を、内気通路11を介してフット吹出口1gから車室内乗員足元に向けて吹き出す吹出モードが選択可能になっている。そして、この吹出モードが選択されると、窓ガラスへは低湿度の外気が吹き出されるので、窓ガラスの曇りが防止されるとともに、既に温められている内気が第1空気通路11内に導入される。したがって、ヒータコア3の暖房負荷が軽減し、その結果、暖房能力が向上するというものである。
【0008】
このような内外気2層式の車両用空調装置において、臭い対策を講じることを記載した文献は見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−175159号公報
【特許文献2】特開平9−240248号公報
【特許文献3】特開平10−217752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、臭い対策を講じた内外気2層式の車両用空調装置を提供することであり、特に車両に臭い対策のための新たな排出口及びダクトを設ける必要の無い内外気2層式の車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1形態によれば、内外気2層式車両用空調装置は、
(a)一端側に内気吸込口(1b,1d)および複数の外気吸込口(1a,1c)が形成され、他端側に車室側空気吐出口(1e,1f,1g)が形成された空調ケース(1)と、
(b)この空調ケース(1)の内部を、前記内気吸込口(1b)から車室側空気吐出口(1e,1f,1g)へ通じる第1空気通路(11)と、前記外気吸込口(1c)から車室側空気吐出口(1e,1f,1g)へ通じる第2空気通路(12)とを区画形成する仕切り部材(4,5,6)と、
(c)前記空調ケース(1)内において空気流を発生させる2つの送風手段(7a,7b;21a,22a)と、
(d)前記第1空気通路(11)内を流れる空気および前記第2空気通路(12)内を流れる空気を加熱または冷却する空調用熱交換器(2,3)と、
(e)前記内気吸込口(1b)から前記第1空気通路(11)に車室内空気を導入し、かつ前記外気吸込口(1c)から前記第2空気通路(12)に外気を導入する内外気2層モードと前記外気吸込口(1a,1c)から前記第1空気通路(11)および前記第2空気通路(12)に外気を導入する外気導入モードとを切り替える内外気切替手段(13,14)と、
(f)前記車室側空気吐出口を開閉する車室側空気吐出口開閉手段(15,16,17)と、
(g)前記空調ケース(1)内または車室内の臭いを抑制するために、前記外気吸込口の1つ(1c)を空気排出口として使用し、前記車室側空気吐出口開閉手段(15,16,17)により前記車室側空気吐出口(1e,1f,1g)を全て閉鎖し、1つの送風手段(7a,21b)を作動させかつ他方の送風手段(7a,21b)を作動させずに、前記第1空気通路(11)および前記第2空気通路(12)内の空気を前記空気排出口(1c)より排出させるように制御する臭い排出制御手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の内外気2層式車両用空調装置は、前記空調ケース内または車室内の臭いを抑制するために、前記外気吸込口の1つを空気排出口として使用し、前記車室側空気吐出口開閉手段により前記車室側空気吐出口を全て閉鎖し、1つの送風手段を作動させかつ他方の送風手段を作動させずに、前記第1空気通路および前記第2空気通路内の空気を前記空気排出口より排出させる。このため、車両に臭い対策のための新たな排出口及びダクトを設ける必要が無くなる。このため、車両側の構造変更の必要が無くなり、臭い対策のためのコスト増加を抑制することが可能となる。
【0013】
本発明の第2形態によれば、内外気2層式車両用空調装置は、
前記臭い排出制御手段は、前記空調ケース(1)内および車室内の臭いを抑制するために、前記内気吸込口(1b)を開放して、車室内と前記第1空気通路と前記第2空気通路内の空気を前記空気排出口(1c)より排出させるように制御することを特徴とする。空調ケース内および車室内の臭いを抑制する具体的構成を明示したものである。
【0014】
本発明の第3形態によれば、内外気2層式車両用空調装置は、前記2つの送風手段(7a,7b)は、同軸に配列されて1つのモーター(8)と接続されており、1つの前記送風手段(7a)と他方の前記送風手段(7b)との間に、前記2つの送風手段(7a,7b)の間の接続と接続解除を切換える接続切換え手段(9)が配置されていることを特徴とする。この構造により、従来の(臭い対策の無い)内外気2層式車両用空調装置の送風手段とほぼ同等の体積の送風手段とすることができ、従来の送風手段と同等の送風量を得ることができる。
【0015】
本発明の第4形態によれば、内外気2層式車両用空調装置は、前記2つの送風手段(21a,22a)の各々が、モーター(21b,22b)を備えていることを特徴とする。別の送風手段の構成を表したものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態の内外気2層式車両用空調装置の車室臭い抑制モードにおける模式図である。
【図2】本発明の第1実施形態の内外気2層式車両用空調装置の空調ケース内臭い抑制モードにおける模式図である。
【図3】本発明の第1実施形態の内外気2層式車両用空調装置の内外気導入冷房運転モードにおける模式図である。
【図4】本発明の第1実施形態の内外気2層式車両用空調装置の外気導入運転モードにおける模式図である。
【図5】本発明の第2実施形態の内外気2層式車両用空調装置の臭い排出状態における模式図である。
【図6】従来の内外気2層式車両用空調装置の内外気導入暖房運転モードにおける模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の通風系の全体を概略的に示した構成図であり、送風機を除いて、従来の技術欄で述べた通風系と同じものである。1は空気の通路を形成する空調ケースで、この空調ケース1の一端側には、外気を導入する第1外気導入口1a、第2外気導入口1c、内気を導入する第1内気導入口1bおよび第2内気導入口1dが形成されている。そして、この空調ケース1内には、第1外気導入口1aと第1内気導入口1bとを選択的に開閉する第1内外気切換ドア13と、第2外気導入口1cと第2内気導入口1dとを選択的に開閉する第2内外気切換ドア14とが設けられている。
【0018】
また、内外気切換ドア13、14は、回転軸周りに揺動することによってそれぞれの外気導入口と内気導入口とを開閉する回転ドアであり、これら各ドア13、14は、それぞれの駆動手段(例えばサーボモータ)によって駆動されている。また、導入口1a〜1dの空気下流側の空調ケース1内には、第1空気通路11および第2空気通路12に空気を送風する送風機7が設けられており、この送風機7は、第1空気通路11に送風する第1ファン7aと第2空気通路12に送風する第2ファン7bと、両ファンを回転駆動する1つのブロワモータ8とから構成されている。第1ファン7aは、主に、フット開口部1gに向けて送風し、第2ファン7bは、主にデフロスタ開口部1eまたはフェイス開口部1fに向けて送風する。
【0019】
第1ファン7aと第2ファン7bは、同軸に接続されており、第1ファン7aと第2ファン7bの間には電磁クラッチ9が介在している。電磁クラッチ9がオフのときは、各々の送風機は相互に接続されて、モーターMにより同一回転方向に同一回転速度で駆動される。一方、電磁クラッチ9がオンのときは、各々の送風機の相互接続は解除されて、第2ファン7bはモーターMとの接続が解除されるため、モーターMの回転力は第1ファン7aにのみ伝達され、第2ファン7bへは伝達されない。このため、第1ファン7aは所定速度で回転するが、第2ファン7bは自身による能動的回転は停止する。なお、このとき、第2ファン7bは、第2ファン7bを通過する空気流により受動的な回転をすることはある。
【0020】
なお、電磁クラッチ9がオンのときに、各々の送風機が相互に接続されてモーターMにより同一回転方向に同一回転速度で駆動され、電磁クラッチ9がオフのときに、各々の送風機の相互接続が解除されて、第2ファン7bのモーターMとの接続が解除される設計にすることも、勿論可能である。
また、電磁クラッチに代えて空圧クラッチや油圧クラッチその他の接続切換え手段にすることも可能である。要するに、2つの送風ファン7a、7bの間の接続と接続解除を切換える接続切換え手段が設置されていれば良いのである。
【0021】
また、空調ケース1の内部において、両ファン7a、7bの空気下流側に、両空気通路11、12内を流れる空気を冷却するエバポレータ2が設けられている。このエバポレータ2は、空調ケース1内の空気の全てがこのエバポレータ2を通過するように、空調ケース1内に設けられている。このエバポレータ2は、圧縮機、コンデンサ、減圧器等(図示せず)とともに周知の冷凍サイクルを構成する熱交換器である。
【0022】
また、空調ケース1内のうちエバポレータ2の空気下流側には、エバポレータ2を通過した空気を加熱するヒータコア3が設けられている。このヒータコア3は、空調ケース1内の空気がこのヒータコア3をバイパスするバイパス通路(ヒータコア3の紙面裏側に位置するため、図1には図示されない)が形成されるようにして、空調ケース1内に設けられており、内部にエンジンの冷却水が循環し、この冷却水を熱源として空調ケース1内の空気を加熱するものである。
【0023】
このヒータコア3の空気上流側には、ヒータコア3を通過する風量とバイパス通路を通過する風量との風量割合を調節するエアミックスドア(図示せず)が配設されている。また、空調ケース1の最下流端には、デフロスタ開口部1e、フェイス開口部1f、およびフット開口部1gが形成されており、以下、これらの開口部を総称して車室側空気吐出口とよぶ。
【0024】
そして、デフロスタ開口部1eには、デフロスタダクト(図示せず)が接続されており、このデフロスタダクト内に導入された空調風は、このデフロスタダクトの下流端であるデフロスタ吹出口から、車両フロントガラスの内面に向けて吹き出される。また、フェイス開口部1fには、フェイスダクト(図示せず)が接続されている。フェイスダクト内に導入された空調風は、このフェイスダクトの下流端であるフェイス吹出口から、車室内乗員の上半身に向けて吹き出される。
【0025】
また、フット開口部1gには、図示しないフットダクトが接続されており、このフットダクト内に導入された空調風は、このフットダクトの下流端であるフット吹出口から、車室内乗員の足元に向けて吹き出される。そして、上記各開口部1e〜1gの上流側部位には、デフロスタドア15、フェイスドア16、およびフットドア17が設けられている。デフロスタドア15は、デフロスタダクトへの空気流入路を開閉するドアであり、フェイスドア16は、センタフェイスダクトへの空気流入路を開閉するドアであり、フットドア17は、上記フットダクトへの空気流入路を開閉するドアである。
なお、これらのドア15〜17は、それぞれの駆動手段(例えばサーボモータ)によって駆動される。
【0026】
また、空調ケース1内の空間を、第1内気導入口1bまたは第1外気導入口1aから車室側空気吐出口1e〜1gに至る第1空気通路11と、第2外気導入口1cまたは第2内気導入口1dから車室側空気吐出口1e〜1gに至る第2空気通路12とに区画する仕切り板4〜6が、空調ケース1内に設けられている。そして、仕切板6の車室側空気吐出口の近傍には、両空気通路11、12を連通する連通開口1hが形成されている。この連通開口1hの開閉の制御を、開閉ドアにより行うことも可能である。
【0027】
また、上述のサーボモータ、ブロワモータ8および電磁クラッチ9等は、空調制御装置(ECU;図示せず)によって制御されており、この空調制御装置には、室内温度センサ、室外温度センサ等のセンサ群からの信号と、乗員が希望する室内温度を設定する温度設定手段からの信号と、室内への空気の吹出モードを手動で選択するための吹出モード設定手段と、導入空気を選択する導入空気モード設定手段からの信号とが入力される。
【0028】
まず簡単に、第1実施形態に係る空調装置の通常の空調作動の代表的なモード(空調ケース1内の空気流れ)を述べる。
1.内外気導入冷房運転モード(図3)
内気および外気の両空気を導入するモードが選択された状態で冷房運転がされると、図3に示すように、第1内外気切替ドア13により第1外気導入口1aを閉じ、第1内気導入口1bを開き、第2内外気切替ドア14により第2外気導入口1cを開き、第2内気導入口1dを閉じる。これにより、第1内気導入口1bおよび第2外気導入口1cが開口状態となる。これにより、第1内気導入口1bおよび第2外気導入口1cの両導入口から空気が導入される。
【0029】
また、車室内乗員の上半身に向けて集中的に冷風を吹き出すべく、フェイス開口部1fはドア16により開かれて、デフロスタ開口部1eおよびフット開口部1gは、各ドア15、17にとよって閉じられている。
【0030】
その後、両空気通路11、12内を流れる空気は、それぞれエバポレータ2にて冷却され、フェイス開口部1f近傍で合流して混合され、フェイス開口部1fから車室内に向けて吹き出す。なお、冷房運転時は通常、上述の如くフェイス開口部1fのみが開口状態となっている場合が多いので、本実施形態では、フェイス開口部1fが開口している例で説明したが、その他の開口部(フット開口部1g、デフロスタ開口部1e等)のみが開口している状態でもこのモードを適用することができる。
【0031】
2.外気導入運転モード(図4)
外気導入モードが選択されると、図4に示すように、冷房運転時、暖房運転時を問わず、第1内外気切替ドア13により第1内気導入口1bを完全に閉じ、第2内外気切替ドア14により第2内気導入口1dを完全に閉じる。これにより、第1外気導入口1aおよび第2外気導入口1cが開口状態となる。送風機7の電磁クラッチ9はオフになっているので、第1ファン7aと第2ファン7bは接続されて同一回転方向に同一回転速度で回転する。したがって、外気は送風機7(第1ファン7aと第2ファン7b)によって両空気通路11、12を経て車室側空気吐出口1e〜1gに向けて送風される。
【0032】
3.内気導入運転モード(図示せず)
内気導入モードが選択されると、冷房運転時、暖房運転時を問わず、第1内外気切替ドア13により第1内気導入口1bを開くとともに第1外気導入口1aを閉じる。さらに、第2内外気切替ドア14により第2内気導入口1dを開くとともに第2外気導入口1cを閉じる。
【0033】
これにより、第1内気導入口1bから導入された内気は、第1空気通路11を経て車室側空気吐出口1e〜1gに向けて送風され、第2内気導入口1dから導入された内気は、第2空気通路12を経て車室側空気吐出口1e〜1gに向けて送風される。
4.内外気導入暖房運転モード(図6)
このモードの作動は、背景技術で図6を用いて説明した作動と同じである。
以上に記載した運転モードの他に、各種の運転モードを実行することが可能であるが、その詳細は省略する。
【0034】
次に、第1実施形態に係る空調装置の臭い抑制の空調作動(空調ケース1内の空気流れ)を述べる。
【0035】
5.空調ケース内および車室内の臭いを抑制するモード(車室臭い抑制モード;図1)
図1に示すように、「空調ケース内および車室内の臭いを抑制するモード」が自動的にまたは手動により、選択されると、空調制御手段は、電磁クラッチ9をオンにする。電磁クラッチ9がオンのときは、第2ファン7bはモーターMとの接続が解除されるため、モーターMの回転力は第1ファン7aにのみ伝達され、第2ファン7bへは伝達されず、第1ファン7aは所定速度で回転するが、第2ファン7bは自身による能動的回転は停止する。
【0036】
そして、第1内外気切替ドア13により第1内気導入口1bを開くとともに第1外気導入口1aを閉じる。さらに、第2内外気切替ドア14により第2内気導入口1dを閉じるとともに第2外気導入口1cを開く。デフロスタ開口部1e、フェイス開口部1f、フット開口部1gは、各開閉ドア15〜17により、全て閉鎖しておく。
【0037】
この状態で、空調制御手段は、モーター8をオンにして第1ファン7aの回転を開始する。すると、車室内空気は、第1内気導入口1bより空調ケース1内に流入し、空調ケース1内の空気とともに、第1空気通路11、連通開口1h、第2空気通路12を経て「車外へ空気を排出する開口」となった第2外気導入口(空気排出口)1cより、車外へ空気を排出する。
【0038】
この空調作動により、車室内の臭いを持った空気および空調ケース1内の空気を車外へ空気を排出することが可能となる。なお、臭い抑制モードは、始動時に用いられることが望ましいが、これに限らず、乗員が必要と感じたときに手動で実行することも可能である。
【0039】
6.空調ケース内のみの臭いを抑制するモード(空調ケース内臭い抑制モード;図2)
図2に示すように、「空調ケース内のみの臭いを抑制するモード」が自動的にまたは手動により、選択されると、空調制御手段は、電磁クラッチ9をオンにする。電磁クラッチ9がオンのときは、第2ファン7bはモーターMとの接続が解除されるため、モーターMの回転力は第1ファン7aにのみ伝達され、第2ファン7bへは伝達されず、第1ファン7aは所定速度で回転するが、第2ファン7bは自身による能動的回転は停止する。
【0040】
そして、第1内外気切替ドア13により第1内気導入口1bを閉じるとともに第1外気導入口1aを開く。さらに、第2内外気切替ドア14により第2内気導入口1dを閉じるとともに第2外気導入口1cを開く。デフロスタ開口部1e、フェイス開口部1f、フット開口部1gは、各開閉ドア15〜17により、全て閉鎖しておく。
【0041】
この状態で、空調制御手段は、モーター8をオンにして第1ファン7aの回転を開始する。すると、外気は、第1外気導入口1aより空調ケース1内に流入し、空調ケース1内の空気とともに、第1空気通路11、連通開口1h、第2空気通路12を経て「車外へ空気を排出する開口」となった第2外気導入口1cより、車外へ空気を排出する。
【0042】
この空調作動により、空調ケース1内の臭いを持った空気を車外へ排出することが可能となる。
【0043】
(第2実施形態)
図5に第2実施形態を示す。第2実施形態では、送風機が完全に独立した2個の送風機となっている。第1送風機21は第1ファン21aと第1ブロワモータ21bを備えて、第1空気通路11の入口に配置される。第2送風機22は第2ファン22aと第2ブロワモータ22bを備えて、第2空気通路12の入口に配置される。他の構成は、第1実施形態と同じであるので、その説明を省略する。
【0044】
そして、車室臭い抑制モード、ケース臭い抑制モードのいずれにおいても、第1内外気切替ドア13、第2内外気切替ドア14の導入口の開閉状態は、第1実施形態と同じである。そして、車室臭い抑制モード、ケース臭い抑制モードのいずれにおいても、第1ブロワモータ21bをオンして第1ファン21aを回転させて送風させ、第2ブロワモータ22bをオフして第2ファン22aを停止させる。
この空調作動により、車室内の臭いを持った空気および空調ケース内の空気を車外へ排出することが可能となる。
【0045】
(その他)
本発明は空調停止時に異臭放出が必要と判断された時、もしくは乗員の求めに応じて臭い抑制の空調作動を行うものである。臭い抑制の空調作動は、停車後もしくは乗員の不在の場合などに作動させる。また、空調ケース内に異臭が溜まることを考慮してタイマーにより間欠作動させたり、一定時間経過後に作動させたりしても良い。リモートキーで乗員が乗車することを検知して、空調装置作動直前に臭い抑制の空調作動を行っても良い。空調起動したとき一定時間、臭い抑制の空調作動させた後、通常の空調制御にしても良い。
【0046】
以上のように、臭い対策を講じた内外気2層式の車両用空調装置、特に車両に臭い対策のための新たな排出口及びダクトを設ける必要の無い内外気2層式の車両用空調装置を提供することが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一端側に内気吸込口(1b,1d)および複数の外気吸込口(1a,1c)が形成され、他端側に車室側空気吐出口(1e,1f,1g)が形成された空調ケース(1)と、
(b)この空調ケース(1)の内部を、前記内気吸込口(1b)から前記車室側空気吐出口(1e,1f,1g)へ通じる第1空気通路(11)と、前記外気吸込口(1c)から前記車室側空気吐出口(1e,1f,1g)へ通じる第2空気通路(12)とを区画形成する仕切り部材(4,5,6)と、
(c)前記空調ケース(1)内において空気流を発生させる2つの送風手段(7a,7b;21a,22a)と、
(d)前記第1空気通路(11)内を流れる空気および前記第2空気通路(12)内を流れる空気を加熱または冷却する空調用熱交換器(2,3)と、
(e)前記内気吸込口(1b)から前記第1空気通路(11)に車室内空気を導入し、かつ前記外気吸込口(1c)から前記第2空気通路(12)に外気を導入する内外気2層モードと前記外気吸込口(1a,1c)から前記第1空気通路(11)および前記第2空気通路(12)に外気を導入する外気導入モードとを切り替える内外気切替手段(13,14)と、
(f)前記車室側空気吐出口を開閉する車室側空気吐出口開閉手段(15,16,17)と、
(g)前記空調ケース(1)内または車室内の臭いを抑制するために、前記外気吸込口の1つ(1c)を空気排出口として使用し、前記車室側空気吐出口開閉手段(15,16,17)により前記車室側空気吐出口(1e,1f,1g)を全て閉鎖し、1つの送風手段(7a,21b)を作動させかつ他方の送風手段(7a,21b)を作動させずに、前記第1空気通路(11)および前記第2空気通路(12)内の空気を前記空気排出口(1c)より排出させるように制御する臭い排出制御手段と、
を備えたことを特徴とする内外気2層式車両用空調装置。
【請求項2】
前記臭い排出制御手段は、前記空調ケース(1)内および車室内の臭いを抑制するために、前記内気吸込口(1b)を開放して、車室内と前記第1空気通路と前記第2空気通路内の空気を前記空気排出口(1c)より排出させるように制御することを特徴とする請求項1に記載の内外気2層式車両用空調装置。
【請求項3】
前記2つの送風手段(7a,7b)は、同軸に配列されて1つのモーター(8)と接続されており、1つの前記送風手段(7a)と他方の前記送風手段(7b)との間に、前記2つの送風手段(7a,7b)の間の接続と接続解除を切換える接続切換え手段(9)が配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内外気2層式車両用空調装置。
【請求項4】
前記2つの送風手段(21a,22a)の各々が、モーター(21b,22b)を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の内外気2層式車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201236(P2012−201236A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68107(P2011−68107)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】