説明

車両用空調装置

【課題】装置構成に要する費用の増大を防止ししつつ外気導入時に湿気臭が発生することを抑制する。
【解決手段】車両用空調装置10は、空調装置本体10aに外気を導入可能な外気ドア22aと、内気を導入可能な内気ドア21aと、外気および内気を冷却するエバポレータ14と、エバポレータ14に圧縮した冷媒を導入するコンプレッサー31と、を備える。制御装置18は、コンプレッサー31の作動を許可するエバポレータ14の温度(例えば、エバポレータ出口空気温度Te)を作動許可温度として、外気ドア22aから外気を導入する状態での作動許可温度を、内気ドア21aから内気を導入する状態での作動許可温度よりも低く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両用空調装置の冷凍サイクルの停止直後の相対湿度の急激な上昇に起因する悪臭の発生を抑制するために、空調ダクトのエバポレータを迂回するようにエバポレータの上流側と下流側とを連通するバイパス通路を設けた車両用空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この車両用空調装置では、冷凍サイクルの停止が指示されたときに所定時間だけ停止を遅延させ、高温多湿の外気をバイパス通路を介してエバポレータ通過直後の低温低湿の空気に徐々に混入させることで、吹出空気の相対湿度を徐々に上昇させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2787621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る車両用空調装置においては、悪臭の発生を抑制するための特別な構成としてバイパス通路を設ける必要があり、装置構成が複雑化すると共に装置構成に要する費用が嵩むという問題が生じる。
また、例えばエバポレータ出口空気湿度などを検出する湿度センサを設けて、この湿度センサの出力に応じて冷凍サイクルの動作を制御する場合には、車両用空調装置に湿度センサを追加することに伴い、装置構成に要する費用が嵩むという問題が生じる。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、装置構成に要する費用の増大を防止ししつつ外気導入時に湿気臭が発生することを抑制することが可能な車両用空調装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両用空調装置(例えば、実施の形態での車両用空調装置10)は、空調装置本体(例えば、実施の形態での空調装置本体10a)に外気を導入可能な外気ドア(例えば、実施の形態での外気ドア22a)と、前記空調装置本体に内気を導入可能な内気ドア(例えば、実施の形態での内気ドア21a)と、前記外気ドアから導入される外気および前記内気ドアから導入される内気を冷却するエバポレータ(例えば、実施の形態でのエバポレータ14)と、前記エバポレータに圧縮した冷媒を導入するコンプレッサー(例えば、実施の形態でのコンプレッサー31)と、前記エバポレータの温度(例えば、実施の形態でのエバポレータ出口空気温度Te)により前記コンプレッサーの作動を制御する制御手段(例えば、実施の形態での制御装置18)と、を備える車両用空調装置であって、前記制御手段は、前記コンプレッサーの作動を許可する前記エバポレータの温度を作動許可温度として、前記外気ドアから外気を導入する状態での前記作動許可温度を、前記内気ドアから内気を導入する状態での前記作動許可温度よりも低く設定する。
【0007】
さらに、本発明の請求項2に係る車両用空調装置では、前記制御手段は、車両の内燃機関のアイドル停止時に前記コンプレッサーの作動を許可する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1に係る車両用空調装置によれば、空調装置本体への外気導入に伴って湿度が上昇する場合であっても、コンプレッサーの作動を許可する作動許可温度を内気導入時よりも低く設定していることで、コンプレッサーが作動し易くなり、エバポレータを通過する空気を冷却することができる。
これにより、エバポレータを通過した空気の湿気による悪臭(湿気臭)が発生することを抑制することができ、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0009】
しかも、例えば新たな湿度センサや新たな通風路などの新たな構成要素を追加する必要無しに、既存の装置構成によって車室内への送風の湿気臭の発生を抑制することができ、装置構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
【0010】
さらに、本発明の請求項2に係る車両用空調装置によれば、内燃機関のアイドル停止時であっても、エバポレータの温度に応じて、例えばエバポレータの温度が作動許可温度以上となる場合などにおいて、コンプレッサーの作動を許可することにより、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る車両用空調装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る外気導入時と内気導入時とにおけるエバポレータ出口空気温度に応じた湿気臭度合いの変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用空調装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両用空調装置10は、例えば図1に示すように、内燃機関11から出力される駆動力によって走行する車両(図示略)に搭載されており、通風ダクト12の上流側に設けられた空気導入口12aから下流側に設けられた空気吹出口12bに向かい、順次、送風機13と、エバポレータ14と、ダンパー15と、ヒータコア16とを備えて構成されている。
さらに、車両用空調装置10は、エバポレータ14に接続された冷凍サイクル17と、制御装置18と、エバポレータセンサ19と、エンジン水温センサ20とを備えて構成されている。
【0013】
通風ダクト12の空気導入口12aは、内気(車室内空気)および外気(車室外空気)を空調装置本体10a内に導入可能に設けられ、この空気導入口12aには、例えば、通風ダクト12に内気を導入可能な内気導入ダクト21と、通風ダクト12に外気を導入可能な外気導入ダクト22とが接続されている。
【0014】
なお、内気導入ダクト21は、例えば制御装置18の制御により開閉駆動される内気ドア21aを備え、この内気ドア21aの開状態で内気を空調装置本体10a内に導入可能である。
また、外気導入ダクト22は、例えば制御装置18の制御により開閉駆動される外気ドア22aを備え、この外気ドア22aの開状態で外気を空調装置本体10a内に導入可能である。
【0015】
そして、通風ダクト12の空気吹出口12bは、空調装置本体10a内から車室内へ空気を送風可能に設けられている。
【0016】
送風機13は、例えば制御装置18の制御により印加される駆動電圧(ファン電圧)Vに応じて駆動し、空気導入口12aから導入された空気(内気および外気)を通風ダクト12の上流側から下流側の空気吹出口12bに向かい、つまりエバポレータ14およびヒータコア16に向けて送風する。
【0017】
エバポレータ14は冷凍サイクルに17に接続されている。
冷凍サイクル17は、電磁クラッチ(図示略)などを介して遮断可能に内燃機関11に機械的に連結されたコンプレッサー31と、コンデンサー32と、コンデンサーファン33と、レシーバー34と、膨張弁35とを備えて構成されている。
【0018】
コンプレッサー31は、内燃機関11あるいはモータ(図示略)から出力される駆動力によって駆動し、エバポレータ14から冷媒を吸入し、この冷媒を圧縮してコンデンサー32に吐出する。
コンデンサー32は、内部に流入した冷媒をコンデンサーファン33の送風により冷却する。
レシーバー34は、コンデンサー32から流出して内部に流入した冷媒の気液を分離する。
膨張弁35は、レシーバー34から流出する液冷媒を低圧に減圧し、低圧の気液2相状態を形成し、この低圧冷媒をエバポレータ14に吐出する。
エバポレータ14は、内部に流入した低圧冷媒が蒸発する際の吸熱によって、通風ダクト12内の空気を冷却する。
【0019】
エバポレータセンサ19は、通風ダクト12内のエバポレータ14の下流側の位置に配置され、エバポレータ14を通過した空気の温度(エバポレータ出口空気温度Te)を検出し、この検出結果の信号を制御装置18に出力する。
【0020】
ダンパー15は、例えば制御装置18の制御により駆動するモータMによって回動可能とされ、送風機13の送風によってエバポレータ14を通過した空気の風量のうち、ヒータコア16に導入される風量と、ヒータコア16を迂回する風量との風量割合を、開度(例えば、ヒータコア16に向かう通風路に対する開度)により調整する。
【0021】
ヒータコア16は、内燃機関11を冷却することで暖められる冷却水を熱源として、内燃機関11から流出して内部に流入した冷却水の放熱によって、通風ダクト12内のうちヒータコア16に向かう通風路内の空気を加熱する。
【0022】
エンジン水温センサ20は、内燃機関11内を流通する冷却水の温度(エンジン水温Tw)を検出し、この検出結果の信号を制御装置18に出力する。
【0023】
制御装置18は、エンジン水温センサ20から出力される検出結果に応じて、内燃機関11からヒータコア16に送水された冷却水の水温、つまりヒータコア16の内部の冷却水の水温(コア内部水温)Tcwを算出する。そして、コア内部水温Tcwは、ヒータコア16を通過した空気の温度(ヒータコア出口空気温度Th)にほぼ等しい(Th≒Tcw)として、ヒータコア出口空気温度Thを算出する。
【0024】
そして、制御装置18は、エバポレータセンサ19から出力される検出結果に応じたエバポレータ出口空気温度Teと、エンジン水温センサ20から出力される検出結果に応じたヒータコア出口空気温度Thとに基づき、空調装置本体10aから車室内への送風の吹出し温度を目標吐気温度Taoに一致させるようにしてダンパー15の開度を調整することによって、吹出し温度の変化を抑制する制御を行なう。
【0025】
また、制御装置18は、エバポレータ14の温度(例えば、エバポレータ出口空気温度Teなど)により、冷凍サイクル17のコンプレッサー31の作動を制御しており、例えば、コンプレッサー31の作動を許可するエバポレータ14の温度を作動許可温度として、外気ドア22aから外気を導入する状態での作動許可温度を、内気ドア21aから内気を導入する状態での作動許可温度よりも低く設定する。
そして、例えば内燃機関11のアイドル停止時などのような冷凍サイクル17のコンプレッサー31の停止状態において、例えばエバポレータ出口空気温度Teが作動許可温度以上であれば、コンプレッサー31の作動を許可し、コンプレッサー31を作動させる。
【0026】
本実施の形態による車両用空調装置10は上記構成を備えており、次に、車両用空調装置10の動作、特に、冷凍サイクル17のコンプレッサー31を作動させる動作について説明する。
【0027】
先ず、例えば図2に示すステップS01においては、車両用空調装置10の作動を指示する作動スイッチがONであるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS01の判定処理を繰り返し実行する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS02に進む。
【0028】
次に、ステップS02においては、空調装置本体10a内に外気が導入される状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS03に進み、このステップS03においては、作動許可温度に所定の第1温度T1を設定して、ステップS05に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、ステップS04に進み、このステップS04においては、作動許可温度に所定の第2温度T2を設定して、ステップS05に進む。
なお、所定の第1温度T1は、所定の第2温度T2よりも低い値である。
【0029】
そして、ステップS05においては、冷凍サイクル17のコンプレッサー31は停止状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
【0030】
そして、ステップS06においては、エバポレータ14の温度、例えばエバポレータ出口空気温度Teは作動許可温度以上であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
そして、ステップS07においては、コンプレッサー31を作動させて、エンドに進む。
【0031】
なお、コンプレッサー31の作動を許可するエバポレータ14の温度である作動許可温度は、例えば図3に示すような所定のデータ、つまり予め実施される試験などによって得られるデータであって、コンプレッサー31の停止状態における、エバポレータ14の温度(例えば、エバポレータ出口空気温度Teなど)の変化と、エバポレータ14を通過した空気の湿気臭度合いの変化との対応関係を示すデータなどに基づき設定されている。
【0032】
例えば図3に示す湿気臭度合いは、湿気臭を感じる人の累積割合に応じた値であって、内気導入時と外気導入時とにおいて、例えば、湿気臭度合いが所定の許容閾値A以上となる場合のエバポレータ14の下限温度(例えば、内気導入時のエバポレータ出口空気温度Te=約17℃と、外気導入時のエバポレータ出口空気温度Te=約13.5℃となど)が作動許可温度とされている。
なお、所定の許容閾値Aは、湿気臭の発生度合い、つまり湿度に関連する値であって、例えば所定湿度(100%など)に対応する値などである。
【0033】
上述したように、本実施の形態による車両用空調装置10によれば、空調装置本体10aへの外気導入に伴って湿度が上昇する場合であっても、コンプレッサー31の作動を許可する作動許可温度を内気導入時よりも低く設定していることで、コンプレッサー31が作動し易くなり、エバポレータを14通過する空気を冷却することができる。
これにより、エバポレータ14を通過した空気の湿気による悪臭(湿気臭)が発生することを抑制することができ、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0034】
しかも、例えば新たな湿度センサや新たな通風路などの新たな構成要素を追加する必要無しに、既存の装置構成によって車室内への送風の湿気臭の発生を抑制することができ、装置構成に要する費用が嵩むことを防止することができる。
【0035】
さらに、内燃機関11のアイドル停止時であっても、エバポレータ14の温度に応じて、例えばエバポレータ14の温度が作動許可温度以上となる場合などにおいて、コンプレッサー31の作動を許可することにより、車室内の所望の快適性を容易に確保することができる。
【0036】
なお、上述した実施の形態においては、エバポレータ14の温度(例えば、エバポレータ出口空気温度Teなど)が所定の作動許可温度以上となった場合に、例えば内燃機関11のアイドル停止に伴って停止状態とされているコンプレッサー31の作動を許可するとしたが、これに限定されず、例えば、車両の走行中(つまり、内燃機関11の運転中)において、エネルギー消費の削減の観点からコンプレッサー31の作動が停止されている状態などであっても、エバポレータ14の温度(例えば、エバポレータ出口空気温度Teなど)が所定の作動許可温度以上となった場合に、車室内の所望の快適性を確保する観点からコンプレッサー31の作動を許可してもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 車両用空調装置
10a 空調装置本体
11 内燃機関
14 エバポレータ
18 制御装置(制御手段)
21 内気導入ダクト
21a 内気ドア
22 外気導入ダクト
22a 外気ドア
31 コンプレッサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調装置本体に外気を導入可能な外気ドアと、前記空調装置本体に内気を導入可能な内気ドアと、
前記外気ドアから導入される外気および前記内気ドアから導入される内気を冷却するエバポレータと、
前記エバポレータに圧縮した冷媒を導入するコンプレッサーと、
前記エバポレータの温度により前記コンプレッサーの作動を制御する制御手段と、を備える車両用空調装置であって、
前記制御手段は、前記コンプレッサーの作動を許可する前記エバポレータの温度を作動許可温度として、
前記外気ドアから外気を導入する状態での前記作動許可温度を、前記内気ドアから内気を導入する状態での前記作動許可温度よりも低く設定する
ことを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記制御手段は、車両の内燃機関のアイドル停止時に前記コンプレッサーの作動を許可することを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−218634(P2012−218634A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88196(P2011−88196)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】