説明

車両用空調装置

【課題】伝熱管同士の間の風路が着霜によって閉塞されることを抑制でき、かつ、着霜が生じたとしても暖房能力の低下を抑制できる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置10Aは、室外熱交換器13を含むヒートポンプ回路2と、ヒートポンプ回路3に流れる冷媒の流れ方向を冷房運転時と暖房運転時とで切り換える切換手段12Aと、室外熱交換器13を介して外気を吸い込むファン17と、を備えている。室外熱交換器13は、水平方向に延びる一対のヘッダおよびそれらの間に配列された複数本の伝熱管を有している。前記一対のヘッダのそれぞれの内部には、前記複数本の伝熱管を冷媒の流れ方向が交互に逆になる複数の伝熱管群に分ける1つまたは複数の仕切り板が設けられている。ファン17は、前記複数の伝熱管群のうちの蒸発下流伝熱管群の占有領域内に当該ファン17の中心が位置するように、配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の冷房および暖房を行う車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばガソリンエンジンを備える自動車では、冷房にヒートポンプが用いられる一方、暖房にエンジンの廃熱が利用されていた。近年では、エンジンの廃熱量が少ないハイブリッド車、およびエンジンの廃熱が利用できない電気自動車が普及してきており、これに合わせて冷房だけでなく暖房にもヒートポンプを用いるようにした車両用空調装置が開発されてきている。
【0003】
例えば特許文献1には、図7に示すような、ヒートポンプを用いつつ、暖房にエンジン150の廃熱を利用する車両用空調装置100が開示されている。具体的に、車両用空調装置100は、圧縮機111、四方弁112、室外熱交換器113、膨張弁114および室内熱交換器115を含むヒートポンプ回路110を備えている。圧縮機111は、エンジン150によって駆動される。冷房運転時には、圧縮機111で圧縮された冷媒が破線矢印Cの向きに流され、室外熱交換器113が凝縮器として機能し、室内熱交換器115が蒸発器として機能する。一方、暖房運転時には、圧縮機111で圧縮された冷媒が実線矢印Hの向きに流され、室内熱交換器115が凝縮器として機能し、室外熱交換器113が蒸発器として機能する。
【0004】
室外熱交換器113には、ファン121によって車室外の空気が供給される。一般的に、ファン121は、室外熱交換器113に車両の走行によって生じる風が直接的に当たるように室外熱交換器113の裏側に配置される。すなわち、ファン121は、室外熱交換器113を介して車室外の空気を吸い込む。
【0005】
ところで、特許文献2には、車両用の凝縮器として、縦型であって水平方向に引き延ばされた形状の凝縮器が開示されている。この凝縮器は、当該凝縮器の長手方向に延びる一対のヘッダと、この一対のヘッダの間に配列された、鉛直方向に延びる複数本の伝熱管とを有している。一対のヘッダのそれぞれの内部には1つまたは複数の仕切り板が設けられており、これにより複数本の伝熱管が冷媒の流れ方向が交互に逆になる複数の伝熱管群に分けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−127632号公報
【特許文献2】特開2004−347158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された凝縮器は冷媒の流れ方向が一方向であることを前提としたものであるが、この凝縮器を冷媒の流れ方向が暖房運転と冷房運転とで反転する室外熱交換器113として用いることが考えられる。この場合、通常の設計思想からすれば、伝熱管同士の間の風路を通過する車室外空気の風速を均一化するために、ファン121は室外熱交換器113の中央に配置される。
【0008】
しかしながら、室外熱交換器113には暖房運転時に霜が付着することがあるため、この着霜によって伝熱管同士の間の風路が閉塞されることがある。その結果、ファン121による車室外空気の吸い込みが阻害されて、暖房能力が大きく低下する。特に、エンジンの廃熱が利用できない場合には、室外熱交換器113での熱交換量(吸熱量)が増大するため、そのような傾向が顕著になる。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑み、伝熱管同士の間の風路が着霜によって閉塞されることを抑制でき、かつ、着霜が生じたとしても暖房能力の低下を抑制できる車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、車室内の冷房および暖房を行う車両用空調装置であって、水平方向に延びる一対のヘッダおよびそれらの間に配列された複数本の伝熱管によって第1流通口から第2流通口に至る流路が形成された室外熱交換器を含むヒートポンプ回路と、前記ヒートポンプ回路に流れる冷媒の流れ方向を、冷房運転時には冷媒が前記室外熱交換器内を前記第1流通口から前記第2流通口に流れる第1方向に切り換え、暖房運転時には冷媒が前記室外熱交換器内を前記第2流通口から前記第1流通口に流れる第2方向に切り換える切換手段と、前記室外熱交換器を介して車室外の空気を吸い込むファンと、を備え、前記室外熱交換器は、前記一対のヘッダが延びる方向に引き延ばされた形状を有しており、前記一対のヘッダのそれぞれの内部には、前記複数本の伝熱管を冷媒の流れ方向が交互に逆になる複数の伝熱管群に分ける1つまたは複数の仕切り板が設けられており、前記ファンは、前記複数の伝熱管群のうちの前記第1流通口に最も近い蒸発下流伝熱管群の占有領域内に当該ファンの中心が位置するように、配置されている、車両用空調装置を提供する。
【発明の効果】
【0011】
上記の構成によれば、ファンによって伝熱管同士の間の風路を通過させられる車室外空気の風速を、暖房運転時に冷媒が過熱(スーパーヒート)される蒸発下流伝熱管群で最大とすることができる。この速い風速とスーパーヒートの相乗効果により、蒸発下流伝熱管群には霜が付着し難くなるため、蒸発下流伝熱管群では伝熱管同士の間の風路が着霜によって閉塞されることを抑制することができる。その結果、他の伝熱管群に着霜が生じたとしても、蒸発下流伝熱管群では依然として良好な熱交換を実現できるため、暖房能力の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置の構成図
【図2】(a)は図1の車両用空調装置に用いられる室外熱交換器の模式的な縦断面図、(b)は同室外熱交換器とファンとの位置関係を示す図
【図3】(a)は熱交換器ユニットのモデルAにおける室外熱交換器とファンとの位置関係を示す図、(b)は熱交換器ユニットのモデルBにおける室外熱交換器とファンとの位置関係を示す図
【図4】本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置の構成図
【図5】本発明の第3実施形態に係る車両用空調装置の構成図
【図6】(a)および(b)は代替案の切換手段の構成図
【図7】従来の車両用空調装置の構成図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る車両用空調装置10Aの構成図である。この車両用空調装置10Aは、図略の車室内の冷房および暖房を行うものであり、冷媒を循環させるヒートポンプ回路2を備えている。なお、冷媒としては、R134a、R410A、HFO−1234yf、HFO−1234ze、CO2などに加え、他のHFC系、HC系などが利用できる。
【0015】
ヒートポンプ回路2は、圧縮機11、四方弁12A、室外熱交換器13、膨張弁14、および室内熱交換器15を含んでいる。これらの機器11〜15は、第1流路21〜第6流路26によって循環的に接続されている。
【0016】
四方弁12Aは、本発明の切換手段として機能するものであり、ヒートポンプ回路2に流れる冷媒の流れ方向を、冷房運転時には破線矢印Cで示す第1方向に切り換え、暖房運転時には実線矢印Hで示す第2方向に切り換える。第1方向は、圧縮機11から吐出された冷媒が室外熱交換器13、膨張弁14および室内熱交換器15をこの順に通過して圧縮機11に戻る方向であり、第2方向は、圧縮機11から吐出された冷媒が室内熱交換器15、膨張弁14および室外熱交換器13をこの順に通過して圧縮機11に戻る方向である。
【0017】
圧縮機11は、図略の電動モータにより駆動されるものであり、吸入口11aから吸入した冷媒を圧縮して吐出口11bから吐出する。電動モータは、圧縮機11の内部に配置されていてもよいし、外部に配置されていてもよい。圧縮機11の吐出口11bは第1流路21を介して四方弁12Aの第1ポートに接続されており、圧縮機11の吸入口11aは第6流路26を介して四方弁12Aの第4ポートに接続されている。また、四方弁12Aの第2ポートは第2流路22を介して室外熱交換器13に接続されており、四方弁12Aの第3ポートは第5流路25を介して室内熱交換器15に接続されている。
【0018】
室外熱交換器13は、例えば自動車のフロントに配置され、車両の走行およびファン17により供給される外気(車室外の空気)と冷媒との間で熱交換を行う。室外熱交換器13は、第3流路23を介して膨張弁14に接続されている。
【0019】
室外熱交換器13は、当該室外熱交換器13の裏側に配置されたシュラウド18およびファン17と共に熱交換器ユニット6を構成する。シュラウド18は、ファン31の周囲で室外熱交換器13の背面を覆っており、ファン31は、室外熱交換器13を介して外気を吸い込む。換言すれば、シュラウド18は、室外熱交換器13の全域からファン31に外気を導く役割を果たす。
【0020】
膨張弁14は、冷媒を膨張させる膨張機構の一例である。なお、膨張機構としては、膨張する冷媒から動力を回収する容積型の膨張機等を採用してもよい。膨張弁14は、第4流路24を介して室内熱交換器15に接続されている。
【0021】
室内熱交換器15は、ダクト32内に配置され、ブロワ31によって車室内に送られる空気と冷媒との間で熱交換を行う。本実施形態では、ダクト32内に、ブロワ31により車室内の空気が流される。すなわち、車室内の空気は、ダクト32を通じて循環する。なお、ブロワ31によりダクト32内に流される空気は、必ずしも車室内空気100%である必要はなく、車室内換気用の外気をある程度含んでいてもよいし、全て外気としてもよい。
【0022】
ブロワ31は、図1に示すようにダクト32の入口側に配置されていてもよいし、ダクト32の出口側に配置されていてもよい。また、ブロワ31としては、ファンを用いてもよい。
【0023】
次に、図2(a)および(b)を参照して、熱交換器ユニット6の構成を詳細に説明する。
【0024】
室外熱交換器13は、水平方向に引き延ばされた形状を有している。具体的に、室外熱交換器13は、当該室外熱交換器13の長手方向に延びる一対のヘッダ4A,4Bと、この一対のヘッダ4A,4Bの間に配列された複数本の伝熱管5とを有している。なお、図示は省略するが、伝熱管5同士の間の風路には、複数のフィンが配置されている。
【0025】
伝熱管5は、水平方向に対して角度を持つ方向に延びていることが好ましい。例えば、その角度は30度であってもよい。本実施形態では、その角度が90度になっている。換言すれば、伝熱管5が鉛直方向に延びていて、室外熱交換器13が縦型になっている。
【0026】
また、室外熱交換器13は、一対の外部接続口である第1流通口41および第2流通口42を有している。これらの第1流通口41および第2流通口42は、一対のヘッダ4A,4Bのどちらかに、一方が室外熱交換器13の長手方向(換言すれば、伝熱管5の配列方向)の一方側に位置し、他方が室外熱交換器13の長手方向の他方側に位置するように設けられている。すなわち、一対のヘッダ4A,4Bおよび伝熱管5は、第1流通口41から第2流通口42に至る流路を形成する。本実施形態では、第1流通口41が上方に位置するヘッダ4Aに設けられており、第2流通口42が下方に位置するヘッダ4Bに設けられている。なお、第1流通口41および第2流通口42は、ヘッダ(4Aまたは4B)に、鉛直方向に開口するように設けられていてもよいし、水平方向に開口するように設けられていてもよい。
【0027】
第1流通口41には第2流路22が接続されており、第2流通口42には第3流路23が接続されている。このため、室外熱交換器13が凝縮器として機能する冷房運転時には、第1流通口41が流入口の役割を果たすとともに第2流通口42が流出口の役割を果たし、室外熱交換器41内を冷媒が第1流通口41から第2流通口42に流れる。一方、室外熱交換器13が蒸発器として機能する暖房運転時には、第2流通口42が流入口の役割を果たすとともに第1流通口41が流出口の役割を果たし、室外熱交換器41内を冷媒が第2流通口42から第1流通口41に流れる。
【0028】
一対のヘッダ4A,4Bのそれぞれの内部には1つまたは複数の仕切り板45が設けられており、これにより伝熱管5が冷媒の流れ方向が交互に逆になる複数の伝熱管群51〜53に分けられている。なお、図2(a)では、暖房運転時の冷媒の流れ方向のみを実線矢印で示している。
【0029】
複数の伝熱管群51〜53は、第1流通口41に最も近い蒸発下流伝熱管群51と、第2流通口42に最も近い蒸発上流伝熱管群52と、それらの間にある1つまたは複数の中間伝熱管群53とからなる。上述した第2流通口42は、一対のヘッダ4A,4Bが延びる方向において蒸発上流伝熱管群52の略中央に配置されている。伝熱管群51〜53の数は、例えば3以上6以下である。
【0030】
本実施形態では、第1流通口41と第2流通口42とが異なるヘッダに設けられているために、一対のヘッダ4A,4Bの内部に仕切り板45が1つずつ設けられていて、伝熱管群51〜53の数が奇数の3つになっている。ただし、伝熱管群51〜53の数が偶数になっていて、第1流通口41と第2流通口42とが同じヘッダに設けられていてもよい。
【0031】
伝熱管群51〜53のそれぞれを構成する伝熱管5の本数は、蒸発上流伝熱管群52から蒸発下流伝熱管群51にかけて段階的に増加することが好ましい。例えば、本実施形態のように伝熱管群51〜53の数を3つとする場合は、蒸発上流伝熱管群52を19本の伝熱管5で構成し、中間伝熱管群53を21本の伝熱管5で構成し、蒸発下流伝熱管群51を22本の伝熱管で構成することができる。なお、図2(a)は、室外熱交換器13を僅かな本数の伝熱管5で模式的に表したものである。
【0032】
さらに、本実施形態では、図2(b)に示すように、室外熱交換器13に外気を供給するファン17が、蒸発下流伝熱管群51の占有領域R1内に当該ファン17の中心Cが位置するように、配置されている。ここで、「伝熱管群の占有領域」とは、一対のヘッダ4A,4B間の熱交換面積A(ヘッダの離間距離D×ヘッダの長さL)が隣り合う伝熱管群の間の中央で区切られた個々の領域R1〜R3のことをいう。
【0033】
例えば、ファン17の投影面積と蒸発下流伝熱管群51の占有領域R1とのラップ率(図2(b)中のハッチング面積)は、ファン17の投影面積の60%以上82%以下である。
【0034】
以上説明した本実施形態の車両用空調装置1Aでは、ファン17の中心が蒸発下流伝熱管群51の占有領域R1内に位置しているので、ファン17によって伝熱管5同士の間の風路を通過させられる外気の風速を、暖房運転時に冷媒が過熱(スーパーヒート)される蒸発下流伝熱管群51で最大とすることができる。この速い風速とスーパーヒートの相乗効果により、蒸発下流伝熱管群51には霜が付着し難くなるため、蒸発下流伝熱管群51では伝熱管5同士の間の風路が着霜によって閉塞されることを抑制することができる。その結果、他の伝熱管群52,53に着霜が生じたとしても、蒸発下流伝熱管群51では依然として良好な熱交換を実現できるため、暖房能力の低下を抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態では、暖房運転時に流出口の役割を果たす第1流通口41が上方に位置するヘッダ4Aに設けられているので、冷媒のスーパーヒートが蒸発下流伝熱管群51内で始まる条件下では、蒸発下流伝熱管群51の下方に液相冷媒が溜まるプール沸騰によって熱交換効率を向上させることができる。
【0036】
さらに、本実施形態では、一対のヘッダ4A,4Bが延びる方向において蒸発上流伝熱管群52の略中央に第2流通口42が配置されているので、蒸発上流伝熱管群52を構成する伝熱管5に均一に冷媒を流すことができる。
【0037】
次に、ファン17の位置による効果を確認するために行ったシミュレーション結果を説明する。まず、図3(a)に示すような熱交換器ユニットのモデルAと、図3(b)に示すような熱交換器ユニットのモデルBを設定した。
【0038】
モデルAおよびモデルBは、同一の構成の縦型の室外熱交換器13を有する。この室外熱交換器13では、伝熱管群の数が4である。蒸発上流伝熱管群51は、28本の伝熱管5で構成され、その隣の中間伝熱管群53は、15本の伝熱管5で構成されている。蒸発下流伝熱管群52およびその隣の中間伝熱管群53は、それぞれ14本の伝熱管5で構成されている。また、第1流通口41および第2流通口42は、下方に位置するヘッダ4Bに設けられている。
【0039】
モデルAでは、ファン17の中心Cが蒸発下流伝熱管群51の占有領域R1内に位置しており、ファン17の投影面積と蒸発下流伝熱管群51のラップ率がファン17の投影面積の70%となっている。一方、モデルBでは、ファン17の中心Cが熱交換面積Aの中心に位置している。
【0040】
シミュレーションでは、外気温度条件を2℃/1℃とし、伝熱管5同士の間の風路が着霜によって70%閉塞されたときの暖房能力を算出した。
【0041】
シミュレーションの結果、モデルBでは、冷媒の蒸発温度が一定であるときの暖房能力が約50%低下した。暖房能力を着霜前と同程度に保つには、冷媒の高圧と低圧の圧力差を大きくして冷媒の蒸発温度を低下させればよいが、その場合には低圧に対する高圧の圧力比を約29%上昇させる必要がある。
【0042】
これに対し、モデルAでは、冷媒の蒸発温度が一定であるときの暖房能力の低下を約28%と、モデルBに比べて約22%改善できた。また、冷媒の高圧と低圧の圧力差を大きして暖房能力を着霜前と同程度に保つためには、低圧に対する高圧の圧力比を約16%上昇させればよく、モデルBに比べて上昇させる圧力比を約13%低減可能である。
【0043】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る車両用空調装置10Bの構成図である。なお、本実施形態では、第1実施形態と同じ構成部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。この点は、後述する第3実施形態でも同様である。
【0044】
本実施形態では、第1流路21に、ブロワ31によって車室内に送られる空気と冷媒との熱交換を行う副室内熱交換器16が設けられている。この副室内熱交換器16は、ダクト32内で室内熱交換器15の風下側に配置されている。なお、車両用空調装置10Bのその他の構成は、第1実施形態の車両用空調装置10Aと同じである。
【0045】
具体的に、副室内熱交換器16は、ダクト32内で当該副室内熱交換器16を経由する第1風路と当該副室内熱交換器16を経由しない第2風路とが層をなすように配置されている。これを実現するには、例えば、副室内熱交換器16の脇から室内熱交換器15がダクト32の出口側に露出するように、換言すれば副室内熱交換器16の脇に副室内熱交換器16をバイパスする空気が流れる一定の空間が確保されるように、副室内熱交換器16をダクト52の壁面近くに片寄せて配置してもよい。あるいは、ダクト32における副室内熱交換器16を取り囲む部分の一部を膨らませて、その膨らませた部分に副室内熱交換器16をバイパスする空気を流すようにしてもよい。
【0046】
なお、本実施形態では、ダクト32内に、上記第1風路と上記第2風路とを仕切る仕切り板、および上記第1風路を流れる風量と上記第2風路を流れる風量の比率を調整するダンパが設けられていることが好ましい。
【0047】
このような構成では、室内熱交換器15で加熱された車室内循環空気を副室内熱交換器16でさらに加熱することができるので、暖房能力を高める効果を得ることができる。なお、車両用空調装置10Bでも、第1実施形態の車両用空調装置10Aと同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0048】
(第3実施形態)
図5は、本発明の第3実施形態に係る車両用空調装置10Cの構成図である。本実施形態では、第6流路26に、ブロワ31によって車室内に送られる空気と冷媒との熱交換を行う副室内熱交換器16が設けられている。この副室内熱交換器16は、ダクト32内で室内熱交換器15の風上側に配置されている。なお、車両用空調装置10Cのその他の構成は、第1実施形態の車両用空調装置10Aと同じである。
【0049】
具体的に、副室内熱交換器16は、ダクト32内で当該副室内熱交換器16を経由する第1風路と当該副室内熱交換器16を経由しない第2風路とが層をなすように配置されている。これを実現するには、例えば、副室内熱交換器16の脇から室内熱交換器15がダクト32の入口側に露出するように、換言すれば副室内熱交換器16の脇に副室内熱交換器16をバイパスする空気が流れる一定の空間が確保されるように、副室内熱交換器16をダクト32の壁面近くに片寄せて配置してもよい。あるいは、ダクト32における副室内熱交換器16を取り囲む部分の一部を膨らませて、その膨らませた部分に副室内熱交換器16をバイパスする空気を流すようにしてもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、ダクト32内に、上記第1風路と上記第2風路とを仕切る仕切り板、および上記第1風路を流れる風量と上記第2風路を流れる風量の比率を調整するダンパが設けられていることが好ましい。
【0051】
このような構成では、冷房運転時には2つの熱交換器15,16で車室内循環空気を冷却することができ、暖房運転時には副室内熱交換器16で車室内循環空気を除湿することができる。なお、車両用空調装置10Cでも、第1実施形態の車両用空調装置10Aと同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0052】
(その他の実施形態)
前記各実施形態では、切換手段として四方弁12Aが用いられていたが、本発明の切換手段はこれに限られるものではない。例えば、切換手段は、図6(a)に示すような、第1流路21および第6流路26と接続された2つの三方弁121が一対の配管122によってループ状に接続され、それらの配管122に第2流路22および第5流路25が接続された回路12Bであってもよい。あるいは、切換手段は、図6(b)に示すようないわゆるブリッジ回路12Cであってもよい。
【0053】
また、圧縮機11は、必ずしも電動機によって駆動されるものである必要はなく、エンジンによって駆動されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1A〜1C 車両用空調装置
12A 四方弁(切換手段)
12B 回路(切換手段)
12C ブリッジ回路(切換手段)
13 室外熱交換器
17 ファン
2 ヒートポンプ回路
4A,4B ヘッダ
41 第1流通口
42 第2流通口
45 仕切り板
5 伝熱管
51 蒸発下流伝熱管群
52 蒸発上流伝熱管群
53 中間伝熱管群
R1〜R3 占有領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の冷房および暖房を行う車両用空調装置であって、
水平方向に延びる一対のヘッダおよびそれらの間に配列された複数本の伝熱管によって第1流通口から第2流通口に至る流路が形成された室外熱交換器を含むヒートポンプ回路と、
前記ヒートポンプ回路に流れる冷媒の流れ方向を、冷房運転時には冷媒が前記室外熱交換器内を前記第1流通口から前記第2流通口に流れる第1方向に切り換え、暖房運転時には冷媒が前記室外熱交換器内を前記第2流通口から前記第1流通口に流れる第2方向に切り換える切換手段と、
前記室外熱交換器を介して車室外の空気を吸い込むファンと、を備え、
前記室外熱交換器は、前記一対のヘッダが延びる方向に引き延ばされた形状を有しており、前記一対のヘッダのそれぞれの内部には、前記複数本の伝熱管を冷媒の流れ方向が交互に逆になる複数の伝熱管群に分ける1つまたは複数の仕切り板が設けられており、
前記ファンは、前記複数の伝熱管群のうちの前記第1流通口に最も近い蒸発下流伝熱管群の占有領域内に当該ファンの中心が位置するように、配置されている、車両用空調装置。
【請求項2】
前記ファンの投影面積と前記蒸発下流伝熱管群の占有領域とのラップ率は、前記ファンの投影面積の60%以上82%以下である、請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記複数本の伝熱管は、水平方向に対して角度を持つ方向に延びており、
前記第1流通口は、前記一対のヘッダのうちの上方に位置するヘッダに設けられている、請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記複数本の伝熱管は、水平方向に対して角度を持つ方向に延びており、
前記第2流通口は、前記一対のヘッダのうちの下方に位置するヘッダに設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記第2流通口は、前記一対のヘッダが延びる方向において、前記複数の伝熱管群のうちの前記第2流通口に最も近い蒸発上流伝熱管群の略中央に配置されている、請求項4に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記複数の伝熱管群の数は、3以上6以下である、請求項1〜5に記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記複数の伝熱管群のそれぞれを構成する伝熱管の本数は、前記複数の伝熱管群のうちの前記第2流通口に最も近い蒸発上流伝熱管群から前記蒸発下流伝熱管群にかけて段階的に増加する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記ヒートポンプ回路は、電動モータによって駆動される圧縮機を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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