説明

車両用空調装置

【課題】複数の空気通路から安定して空気を吹出することができる車両用空調装置を提供する。
【解決手段】本発明の車両用空調装置は、空調ケース2の下流部おいて第1空気通路9と第2空気通路10とが分岐して形成されており、第2空気通路10はデフロスタ通路14とセンターフェイス通路12とサイドフェイス通路13とに分岐している。第1空気通路9は乗員の足元に送風するフット通路であり、第1空気通路9および第2空気通路10は第1開閉手段11により選択的に開閉される。第1開閉手段11は第1空気通路9を全開した状態において、空調ケース2と当接する部分にシール部材16が設けられている。この状態において、空調ケース2とシール部材16と第1開閉手段11とにより微少隙間17が形成され、微少隙間17を介して第1開閉手段11の上流側の空間と下流側の空間とが連通するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の空気通路を備えた車両用空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、空調ケースの下流部おいて第1空気通路と第2空気通路とが分岐して形成されており、さらに第2空気通路は車室内フロントガラスの内面に向けて空気を導くデフロスタ通路と、車室内中央部から車室内乗員の頭胸部に向けて空気を導くセンターフェイス通路と、車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて空気を導くサイドフェイス通路と、に分岐している車両用空調装置が開示されている。第1空気通路は、車室内乗員の下半身に空気を導くフット通路である。
【0003】
さらに、この車両用空調装置は第1空気通路と第2空気通路とを選択的に開閉する第1開閉手段と、デフロスタ通路とセンターフェイス通路とを選択的に開閉する第2開閉手段と、を有する。各開閉手段は、それぞれ空調ケースに回転可能に支持された軸部と、これらの軸部が回転することによって各空気通路を開閉する本体部と、を有する。
【0004】
特許文献1の車両用空調装置では、第1開閉手段と第2開閉手段とを開閉させることにより、複数の空気通路から所定の風量配分で吹き出すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−25944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の車両用空調装置では、第1空気通路から大半の空気を吹き出し、残りの微少量の空気をデフロスタ通路およびサイドフェイス通路から吹き出すフットモード時に、第1本体部が第1空気通路を全開して第2空気通路を微少隙間で開口し、第2本体部がデフロスタ通路およびサイドフェイス通路を全開してセンターフェイス通路を全閉する。このとき、第1本体部は、空調ケースから微少隙間離れた位置で停止させる。この場合、第1本体部は風の影響により微妙に変動してしまう。従って、デフロスタ通路へ流入する風量が変動してしまい、ひいては窓ガラスの防曇に悪影響を及ぼすことがあった。
【0007】
そこで本発明は、上記問題を解決すべく、フットモード時において、デフロスタ通路およびサイドフェイス通路への吹出風量を安定させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、車室内への空気通路をなす空調ケース(2)と、空調ケース(2)内に設けられて空気を加熱する加熱用熱交換器(4)と、を有し、空調ケース(2)内には、加熱用熱交換器(4)の下流側の部位から第1空気通路(9)と第2空気通路(10)とが分岐して形成されているとともに、第1空気通路(9)は、車室内乗員の下半身に空気を導くフット通路として構成されており、第2空気通路(10)は、車室内中央部から車室内乗員の頭胸部に向けて空気を導くセンターフェイス通路(12)と、車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて空気を導くサイドフェイス通路(13)と、車室内フロントガラスの内面に向けて空気を導くデフロスタ通路(14)と、に分岐しており、第1空気通路(9)と第2空気通路(10)とを選択的に開閉する第1開閉手段(11)と、センターフェイス通路(12)とデフロスタ通路(14)とを選択的に開閉する第2開閉手段(15)とが設けられ、第1開閉手段(11)は、空調ケース(2)に回転可能に支持された第1軸部(11a)と、第1軸部(11a)に連結され、第1軸部(11a)が回転することによって第1空気通路(9)の入口部(9a)と第2空気通路(10)の入口部(10a)とに沿ってスライド移動する第1本体部(11b)とを有し、第2開閉手段(15)は、空調ケース(2)に回転可能に支持された第2軸部(15a)と、第2軸部(15a)に連結され、第2軸部(15a)が回転することによってセンターフェイス通路(12)とデフロスタ通路(14)とを選択的に開閉する第2本体部(15b)とを有し、デフロスタ通路(14)は、第1本体部(11b)のスライド移動の方向においてセンターフェイス通路(12)に隣接配置されているとともに、サイドフェイス通路(13)は、第1軸部(11a)の軸方向においてセンターフェイス通路(12)の両側に隣接配置され、デフロスタ通路(14)の第2軸部(15a)の軸方向における幅は、当該方向における2つのサイドフェイス通路(13)の両端部間の幅よりも短く構成されており、第2本体部(15b)は、デフロスタ通路(14)およびセンターフェイス通路(12)を全閉できる大きさであるとともに、第2軸部(15a)の軸方向における幅が、当該方向における2つのサイドフェイス通路(13)の両端部間の幅よりも短く構成され、サイドフェイス通路(13)は、第2本体部(15b)によるデフロスタ通路(14)およびセンターフェイス通路(12)の選択的な開閉に係らず、常に開口するように構成された車両用空調装置において、
第1本体部(11b)のうち、第1開閉手段(11)が第2空気通路(10)を全閉したときに空調ケース(2)と対向する部位、または空調ケース(2)のうち、第1開閉手段(11)が第2空気通路(10)を全閉したときに第1本体部(11b)と対向する部位には、弾性を有するシール部材(16)が設けられており、
このシール部材(16)は、第1本体部(11b)の第1軸部(11a)の軸方向長さよりも短く形成されるとともに、第1開閉手段(11)が第2空気通路(10)を全閉したときに、第1本体部(11b)の第1軸部(11a)の軸方向における両側部に、第1本体部(11b)と空調ケース(2)との間に微少隙間(17)が形成されるように設けられており、
さらに、上記シール部材(16)は、第1本体部(11b)が第1空気通路(9)を全開するとともに第2空気通路(10)を全閉し、第2本体部(15b)がデフロスタ通路(14)を全開するとともにセンターフェイス通路(12)を全閉するフットモード時に、第1本体部(11b)と空調ケース(2)とにより押圧されるようになっており、
フットモード時に、加熱用熱交換器(4)で加熱された空気が、第1空気通路(9)へ導かれるとともに、微少隙間(17)を介してデフロスタ通路(14)およびサイドフェイス通路(13)へ導かれるように構成されたことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、フットモード時において、第1本体部(11b)はシール部材(16)を介して空調ケース(2)に押し当てられた状態で所定位置に停止するので、第1本体部(11b)の停止位置は安定する。よって、微少隙間(17)を通過する空気の量を安定させることができ、デフロスタ通路(14)およびサイドフェイス通路(12)への吹出風量を安定させることができる。
【0010】
また、シール部材(16)は、第1本体部(11b)の第1軸部(11a)の軸方向長さよりも短く形成されるとともに、第1開閉手段(11)が第2空気通路(10)を全閉したときに、第1軸部(11a)の軸方向における両側部に、第1本体部(11b)と空調ケース(2)との間に微少隙間(17)が形成されるように設けられている。一方、サイドフェイス通路(13)は、第1軸部(11a)の軸方向においてセンターフェイス通路(12)の両側に隣接配置されている。
【0011】
従って、微少隙間(17)に流入した空気はデフロスタ通路(14)のみならず、サイドフェイス通路(13)にも導かれ易くなり、両通路(13、14)に導かれる風量の偏りを少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1実施形態の車両用空調装置であって、フットモード時の状態を示す断面図である。
【図2】第1実施形態の車両用空調装置であって、フットモード時におけるセンターフェイス通路、サイドフェイス通路、デフロスタ通路の位置関係を示す平面図である。
【図3】第1実施形態の車両用空調装置であって、第1本体部に対するシール部材の取り付け形態を示す斜視図である。
【図4】他の実施形態の車両用空調装置であって、第1本体部に対するシール部材の取り付け形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は本実施形態の車両用空調装置であって、フットモード時の状態を示す断面図である。本実施形態の車両用空調装置の通風系は、大別して、空調ユニット1と図示しない送風機ユニットとの2つの部分に分かれている。図2は本実施形態の車両用空調装置であって、フットモード時におけるセンターフェイス通路、サイドフェイス通路、デフロスタ通路の位置関係を示す平面図である。
【0014】
送風機ユニットは、周知の如く内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切換導入する内外気切換箱と、この内外気切換箱から導入される空気を送風する送風機とから構成されている。この送風機は周知の遠心多翼ファンを電動モータにて回転駆動するものである。空調ユニット1は、空調ケース2内にエバポレータ3(冷却用熱交換器)とヒータコア4(加熱用熱交換器)とを、両方とも一体的に内蔵するタイプのものである。
【0015】
空調ケース2はポリプロピレンのような、ある程度弾性を有し、強度的にも優れた樹脂の成形品からなり、図1の上下方向(車両上下方向)に分割面を有する左右2分割の左右ケースと、図1の左右方向(車両水平方向)に分割面を有し左右ケースと嵌合する下ケースとからなる。これらのケースは、ヒータコア4と後述のドアなどの機器とを収納した後に、金属バネクリップやねじなどの締結手段により一体に結合されて空調ケース2を構成する。
【0016】
空調ユニット1は、車室内の計器盤下方部の略中央部に、車両の前後および上下方向に対して図1に示す形態で配置されている。そして、空調ケース2の下方部位には空気流入口5が配設されており、この空気流入口5には、前述の送風機ユニットから送風される空気が流入する。尚、この空気流入口5は助手席前方の部位に配置される送風機ユニットの空気出口部に接続するため、空調ケース2のうち助手席側の側面に開口している。
【0017】
空調ケース2内において、空気流入口5直後(本実施形態では直上)の部位には、エバポレータ3が空気通路の全域を横切るように配置されている。このエバポレータ3は、周知の如く冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調用空気から吸熱して、空調用空気を冷却するものである。ここでエバポレータ3は、図1に示すように、車両上下方向には薄型で、車両左右方向に長手方向が向く形態で空調ケース2内に設置されている。
【0018】
また、エバポレータ3は周知の積層型のものであり、アルミニウムなどの金属薄板を2枚張り合わせて構成した偏平チューブ間にコルゲートフィンを介在して多数積層配置し、一体ろう付けしたものである。そして、エバポレータ3の空気流れ下流側(車両上方側)に、所定の間隔を開けてヒータコア4が隣接配置されている。
【0019】
このヒータコア4は、エバポレータ3を通過した冷風を加熱するものであり、その内部に高温のエンジン冷却水(温水)が流れ、このエンジン冷却水を熱源として空気を加熱するものである。このヒータコア4もエバポレータ3と同様に、車両上下方向には薄型で、車両左右方向に長手方向が向く形態で空調ケース2内に設置されている。
【0020】
また、ヒータコア4は周知のものであり、アルミニウムなどの金属薄板を溶接などにより断面偏平状に接合してなる偏平チューブ間にコルゲートフィンを介在して多数積層配置し、一体ろう付けしたものである。また、空調ケース2内で、ヒータコア4の車両後方側部位には、このヒータコア4をバイパスして空気(冷風)が流れる冷風バイパス通路7が形成されている。
【0021】
また、空調ケース2内で、エバポレータ3とヒータコア4との間には、ヒータコア4で加熱される温風と、ヒータコア4をバイパスする冷風(すなわち、冷風バイパス通路7を流れる冷風)との風量割合を調整する風量割合調整手段を成す薄板状のエアミックス用フィルムドア6(以下、フィルムドア6と略す)が配置されている。このフィルムドア6は、プラスチックのような可撓性を有するフィルム部材や薄板などの膜状部材で形成されている。空調ケース2を形成する左右ケースの内部には、ガイド溝が形成されている。フィルムドア6の両端部がこのガイド溝に嵌ることにより、フィルムドア6が、エバポレータ3とヒータコア4との間において車両の前後方向にスライドするようになっている。
【0022】
このフィルムドア6は、通風用開口部を有し、上記風量割合の調整により空気温度を調整する温度調整手段となっている。尚、フィルムドア6の駆動機構については様々な方法があるため、ここでの具体的な説明は省略する。そして、図示しない空調装置の制御装置により、位置が制御されるようになっている。
【0023】
また、空調ケース2内において、ヒータコア4の空気下流側(車両上方側の部位)には、ヒータコア4を通過した空気が通る温風通路4aが形成されており、この温風通路4aが冷風バイパス通路7に通ずるように空調ケース2が形成されている。具体的には、温風通路4aはヒータコア4の直後から冷風バイパス通路7の下流側へ向かうように形成され、下流側で冷風バイパス通路7と合流し、冷風と温風との混合を行う冷温風混合空間8を形成している。
【0024】
空調ケース2内の冷温風混合空間8から、第1空気通路9と第2空気通路10とが分岐して形成されているとともに、第1空気通路9の入口部分である第1空気通路入口部9aと第2空気通路の入口部分である第2空気通路入口部10aとを選択的に開閉する第1開閉手段である第1ロータリードア11が設けられている。
【0025】
ここで第1空気通路9とは、車室内乗員の足元に向けて空気を吹き出すフット通路である。
【0026】
第2空気通路10は、車室内中央部から車室内乗員の頭胸部に向けて空気を導くセンターフェイス通路12と、車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて空気を導くサイドフェイス通路13と、車室内フロントガラスの内面に向けて空気を導くデフロスタ通路14とに分岐している。
【0027】
また、センターフェイス通路12の入口部であるセンターフェイス入口部12aと、デフロスタ通路14の入口部であるデフロスタ通路入口部14aとを選択的に開閉する第2開閉手段である第2ロータリードア15が設けられている。
【0028】
第1ロータリードア11は、空調ケース2に回転可能に支持された第1軸部11aと、第1軸部11aに連結され、第1軸部11aが回転することによって第1空気通路入口部9aと第2空気通路入口部10aとに沿ってスライド移動する第1本体部11bとを有する。
【0029】
第2ロータリードア15は、空調ケース2に回転可能に支持された第2軸部15aと、第2軸部15aに連結され、第2軸部15aが回転することによってセンターフェイス通路入口部12aとデフロスタ通路入口部14aとに沿ってスライド移動する第2本体部15bとを有する。
【0030】
各軸部11a、15aは、図示しないリンク機構に連結されて、サーボモータのようなアクチュエータまたはコントロールレバーにより回転駆動されるようになっている。
【0031】
図1および図2に示すように、デフロスタ通路14は、第1本体部11bのスライド移動方向(車両前後方向)においてセンターフェイス通路12の車両前方側に隣接配置されている。さらに、サイドフェイス通路13は、第1軸部11aの軸方向(車両左右方向)においてセンターフェイス通路12の両側に隣接配置されている。
【0032】
デフロスタ通路14の第2軸部15aの軸方向(車両左右方向)における幅Aは、当該方向における2つのサイドフェイス通路13の両端部間の幅Bよりも短く構成されている。
【0033】
第2本体部15bは、デフロスタ通路14およびセンターフェイス通路12を全閉できる大きさであるとともに、第2軸部15aの軸方向(車両左右方向)における幅が、当該方向における2つのサイドフェイス通路13の両端部間の幅Bよりも短く構成されている。
【0034】
したがって、サイドフェイス通路13は、第2本体部15bによるデフロスタ通路14およびセンターフェイス通路12の選択的な開閉に係らず、常に開口するようになっている。
【0035】
第1本体部11bのうち、第1ロータリードア11が第2空気通路10を全閉したときに空調ケース2と対向する部位に、弾性を有するパッキン等のシール部材16が設けられている。
【0036】
シール部材16は、第1ロータリードア11が第2空気通路10を全閉したときに、第1本体部11bと空調ケース2とにより押圧される。
【0037】
図3に示すように、第1軸部11aの軸方向におけるシール部材16の幅Cは、同方向における第1本体部11bの幅Dよりも短く形成されている。したがって、第1ロータリードア11が第1空気通路9を全開し、第2空気通路10を全閉した時に、シール部材16の同方向における両側に微少隙間17が形成され、この微少隙間17を介して、冷温風混合空間8からの空気が第2空気通路10へ導かれるようになっている。
【0038】
次に、上記構成における本実施形態の作動の概略を説明する。車両用空調装置は、周知のように、図示しない空調操作パネルに設けられた各種操作スイッチからの操作信号、および空調制御用の各種センサからのセンサ信号が入力される図示しない空調制御装置を備えており、この空調制御装置の出力信号により各ロータリードア11、15の位置が制御され、5つの吹出モード(フットモード、フェイスモード、バイレベルモード、フットデフロスタモードおよびデフロスタモード)が切り替えられる。本実施形態では、フットモードについて図1を用いて説明し、他の4つの吹出モードについては図示を省略し、本文のみで説明することとする。
【0039】
図1に示すフットモードでは、第1ロータリードア11が、第1本体部11bにより第1空気通路9を全開して第2空気通路10を全閉し、第2ロータリードア15が、第2本体部15bによりデフロスタ通路14を全開してセンターフェイス通路12を全閉する。また、サイドフェイス通路13は第2ロータリードア15によっては閉じられず、開口している。
【0040】
図1では、フィルムドア6が冷風バイパス通路7と温風通路4aをそれぞれ開口する位置に操作された状態が示されているが、フィルムドア6を図1左方の最大冷房位置から図1右方の最大暖房側へスライド操作することにより、吹出空気温度は任意に調整できる。
【0041】
この状態では、送風機ユニットからの送風空気が空気流入口5より空調ユニット1内に流入し、エバポレータ3にて冷却されて冷風となる。そして、この冷風がフィルムドア6により冷風バイパス通路7と温風通路4aとに振り分けられ、冷温風混合空間8で混合する。そして、冷温風混合空間8の空気の大半は第1空気通路9に流入し、車室内乗員の下半身に吹き出される。また、残る少量の空気は、第1ロータリードア11と空調ケース2との間の微少隙間17から第2空気通路10へ導かれると、サイドフェイス通路13とデフロスタ通路14とに流入し、車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて吹き出されるとともに、車室内フロントガラスの内面に向けて吹き出される。
【0042】
フェイスモード時には、第1ロータリードア11の第1本体部11bは、第1空気通路入口部9aを全閉して第2空気通路入口部10aを全開する。また、第2ロータリードア15の第2本体部15bは、センターフェイス通路入口部12aを全開してデフロスタ通路入口部14aを全閉する。
【0043】
これにより、冷温風混合空間8の空気の大半はセンターフェイス通路12を介して車室内乗員の頭胸部に向けて吹き出されるとともに、一部がサイドフェイス通路13を介して車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて吹き出される。
【0044】
バイレベルモード時には、第1ロータリードア11の第1本体部11bは、第1空気通路入口部9aと第2空気通路入口部10aを半分ずつ開口する中間位置となる。また、第2ロータリードア15の第2本体部15bは、フェイスモードと同様、センターフェイス通路入口部12aを全開してデフロスタ通路入口部14aを全閉する。
【0045】
これにより、冷温風混合空間8の空気の大半は第1空気通路9とセンターフェイス通路12とに半分ずつ分かれ、車室内乗員の下半身と車室内乗員の頭胸部とに向けて吹き出されるとともに、一部がサイドフェイス通路13を介して車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて吹き出される。
【0046】
フットデフロスタモード時には、第1ロータリードア11の第1本体部11bは、バイレベルモードと同様、中間位置となる。また、第2ロータリードア15の第2本体部15bは、センターフェイス通路入口部12aを全閉してデフロスタ通路入口部14aを全開する。
【0047】
これにより、冷温風混合空間8の空気の大半は第1空気通路9とデフロスタ通路14とに半分ずつ分かれ、車室内乗員の下半身と車室内フロントガラスの内面とに向けて吹き出されるとともに、一部がサイドフェイス通路13を介して車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて吹き出される。
【0048】
デフロスタモード時には、第1ロータリードア11の第1本体部11bは、フェイスモードと同様、第1空気通路入口部9aを全閉して第2空気通路入口部10aを全開する。また、第2ロータリードア15の第2本体部15bは、フットデフロスタモードと同様、センターフェイス通路入口部12aを全閉してデフロスタ通路入口部14aを全開する。
【0049】
これにより、冷温風混合空間8の空気の大半はデフロスタ通路14を介して車室内フロントガラスの内面に向けて吹き出されるとともに、一部がサイドフェイス通路13を介して車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて吹き出される。
【0050】
以上のような作用により、フットモード時において、第1本体部11bの停止位置を安定させることができ、微少隙間17を通過する空気の量を安定させることができる。これにより、デフロスタ通路14およびサイドフェイス通路12への吹出風量を安定させることができる。
【0051】
また、シール部材16は、フットモード時に、第1軸部11aの軸方向における両側部に微少隙間17が形成されるように設けられている。一方、サイドフェイス通路13は、第1軸部11aの軸方向においてセンターフェイス通路12の両側に隣接配置されている。
【0052】
従って、微少隙間17に流入した空気はデフロスタ通路14のみならず、サイドフェイス通路13にも導かれ易くなり、両通路12、14に導かれる風量の偏りを少なくすることができる。
【0053】
(第2実施形態)
第1実施形態では、シール部材16は第1本体部11bのうち、第1ロータリードア11が第2空気通路10を全閉したときに空調ケース2と対向する部位に設ける構造としたが、第2実施形態では、シール部材16を、空調ケース2のうち、第1ロータリードア11が第2空気通路を全閉したときに第1本体部11bと対向する部位に設ける。このように構成しても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
(その他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0055】
(1)第1実施形態では、図3に示すように、シール部材16を1本のパッキンで構成したが、シール部材16の第1軸部11aの軸方向における両側に微少隙間17が設けられていれば良く、例えば図4に示すように、シール部材16を複数本に分け、各シール部材16の間にも微少隙間17を設ける構成としてもよい。
【0056】
(2)第1実施形態および第2実施形態では、本発明の第1開閉手段および第2開閉手段をそれぞれ第1ロータリードア11および第2ロータリードアで構成したが、ロータリードアに限定されることなく板ドア等、その他の種類のドアとしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 空調ユニット
3 エバポレータ(冷却用熱交換器)
4a 温風通路
5 空気吸入口
6 フィルムドア(風量割合調整手段)
7 冷風バイパス通路
8 冷温風混合空間
12a センターフェイス通路入口
14a デフロスタ通路入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内への空気通路をなす空調ケース(2)と、
前記空調ケース(2)内に設けられて空気を加熱する加熱用熱交換器(4)と、を有し、
前記空調ケース(2)内には、前記加熱用熱交換器(4)の下流側の部位から第1空気通路(9)と第2空気通路(10)とが分岐して形成されているとともに、
前記第1空気通路(9)は、車室内乗員の下半身に空気を導くフット通路として構成されており、
第2空気通路(10)は、車室内中央部から車室内乗員の頭胸部に向けて空気を導くセンターフェイス通路(12)と、車室内側方部から車室内乗員の頭胸部もしくは車両サイドガラスの内面に向けて空気を導くサイドフェイス通路(13)と、車室内フロントガラスの内面に向けて空気を導くデフロスタ通路(14)と、に分岐しており、
前記第1空気通路(9)と前記第2空気通路(10)とを選択的に開閉する第1開閉手段(11)と、
前記センターフェイス通路(12)と前記デフロスタ通路(14)とを選択的に開閉する第2開閉手段(15)とが設けられ、
前記第1開閉手段(11)は、前記空調ケース(2)に回転可能に支持された第1軸部(11a)と、前記第1軸部(11a)に連結され、前記第1軸部(11a)が回転することによって前記第1空気通路(9)の入口部(9a)と前記第2空気通路(10)の入口部(10a)とに沿ってスライド移動する第1本体部(11b)とを有し、
前記第2開閉手段(15)は、前記空調ケース(2)に回転可能に支持された第2軸部(15a)と、前記第2軸部(15a)に連結され、前記第2軸部(15a)が回転することによって前記センターフェイス通路(12)と前記デフロスタ通路(14)とを選択的に開閉する第2本体部(15b)とを有し、
前記デフロスタ通路(14)は、前記第1本体部(11b)のスライド移動の方向において前記センターフェイス通路(12)に隣接配置されているとともに、前記サイドフェイス通路(13)は、前記第1軸部(11a)の軸方向において前記センターフェイス通路(12)の両側に隣接配置され、
前記デフロスタ通路(14)の前記第2軸部(15a)の軸方向における幅は、当該方向における前記2つのサイドフェイス通路(13)の両端部間の幅よりも短く構成されており、
前記第2本体部(15b)は、デフロスタ通路(14)およびセンターフェイス通路(12)を全閉できる大きさであるとともに、前記第2軸部(15a)の軸方向における幅が、当該方向における前記2つのサイドフェイス通路(13)の両端部間の幅よりも短く構成され、
前記サイドフェイス通路(13)は、前記第2本体部(15b)による前記デフロスタ通路(14)および前記センターフェイス通路(12)の選択的な開閉に係らず、常に開口するように構成された車両用空調装置において、
前記第1本体部(11b)のうち、前記第1開閉手段(11)が前記第2空気通路(10)を全閉したときに前記空調ケース(2)と対向する部位、または前記空調ケース(2)のうち、前記第1開閉手段(11)が前記第2空気通路(10)を全閉したときに前記第1本体部(11b)と対向する部位には、弾性を有するシール部材(16)が設けられており、
前記シール部材(16)は、前記第1本体部(11b)の前記第1軸部(11a)の軸方向長さよりも短く形成されるとともに、前記第1開閉手段(11)が前記第2空気通路(10)を全閉したときに、前記第1本体部(11b)の前記第1軸部(11a)の軸方向における両側部に、前記第1本体部(11b)と前記空調ケース(2)との間に微少隙間(17)が形成されるように設けられており、
前記シール部材(16)は、前記第1本体部(11b)が前記第1空気通路(9)を全開するとともに前記第2空気通路(10)を全開し、前記第2本体部(15b)が前記デフロスタ通路(14)を全開するとともに前記センターフェイス通路(12)を全閉するフットモード時に、前記第1本体部(11b)と前記空調ケース(2)とにより押圧されるようになっており、
前記フットモード時に、前記加熱用熱交換器(4)で加熱された空気が、前記第1空気通路(9)へ導かれるとともに、前記微少隙間(17)を介して前記デフロスタ通路(14)および前記サイドフェイス通路(13)へ導かれるように構成されたことを特徴とする車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22995(P2013−22995A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157579(P2011−157579)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】