説明

車両用空調装置

【課題】ケース内で回転軸方向に並ぶ複数のドアについて、同軸に配される回転軸の倒れや撓み等による作動不良を防止可能な車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置100が有する第1ドア駆動用シャフト25は、第2回転軸部240の内部を貫通して配されるシャフトであり、軸方向の一端側で第1回転軸部の端部232と結合する連結部としての端部251と、軸方向の他端側で第2回転軸部の端部242を囲むように回転可能に支持する支持部253とを、有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に配設した複数の空気通路のそれぞれを開閉可能なドアを有し、各ドアを駆動する軸部が同軸である車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の従来技術は、通路に設けられた回転軸方向に並ぶ2個のドアの駆動機構に関するものである。各ドア本体を開閉するために回転させる各回転軸部は、同軸に配される構造であり、両方の回転軸部は、当該回転軸の軸方向の一方側に配置したレバー等を駆動することに伴ってそれぞれ回転する構造となっている。レバー等の駆動機構から近い側にあるドアの回転軸部が円筒状であり、駆動機構から遠い側にあるドアの回転軸部は、当該近い側のドアにおける中空円筒の回転軸部に回転可能に内挿されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第3030778A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、レバー等の駆動機構から遠い側のドアの回転軸部が、当該近い側のドアの回転軸部の中空円筒内で倒れたり、撓んだりした状態で使用されてしまうことがある。このような好ましくない状態でドアの開閉が行われると、ドアの作動不良が発生するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ケース内で回転軸方向に並ぶ複数のドアについて、同軸に配される回転軸等の倒れや撓み等による作動不良を防止可能な車両用空調装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1の車両用空調装置に係る発明は、車室内に供給する空気が流通する空気通路を内部に有する空調ケース(20)と、空調ケースに一体に形成される板、または空調ケースとは別部品の板であって、空調ケース内の空気通路を第1区画通路(26L)と第2区画通路(26R)とに仕切る仕切り板(27)と、第1区画通路に設けられて第1区画通路を開閉する第1ドア(23)と、第1ドアと軸方向に並ぶように第2区画通路に設けられて第2区画通路を開閉する第2ドア(24)と、空調ケース及び仕切り板の少なくとも一方に、軸方向において少なくとも2箇所で回転可能に支持されて、第1ドアを駆動する第1回転軸部(230)と、第1回転軸部と同軸で第1回転軸部とは独立して回転可能に空調ケースに支持されて、第2ドアを駆動する第2回転軸部(240)と、第1回転軸部と同軸に一体となって回転して第1回転軸部を回転させる第1ドア駆動用シャフト(25)と、を備え、
第1ドア駆動用シャフト(25)は、筒状である第2回転軸部を貫通して配されるシャフトであって、軸方向の一端側で第1回転軸部の端部(232)と結合する連結部(251)と、軸方向の他端側で第2回転軸部の端部(242)の外周面を囲むように回転可能に支持する支持部(253)と、を有することを特徴とする。なお、第1ドア駆動用シャフト(25)が有する当該支持部(253)は、第2回転軸部の端部(242)の外周面の全周または一部を支持することにより、当該外周面を囲むように支持する。
【0007】
この発明によれば、第1ドア駆動用シャフトは、軸方向の一端側で第1回転軸部と結合することにより第1回転軸部を同軸上に支え、軸方向の他端側の支持部で第2回転軸部を回転可能に支える。これにより、第1回転軸部は、軸方向において少なくとも2箇所で支持されるとともに、軸方向の他端側で第1ドア駆動用シャフトとの連結によって支持されている。また、第2回転軸部は、空調ケースによって支持されるとともに、軸方向の他端側で第1ドア駆動用シャフトに一体に設けた支持部によって支持されている。以上の構成及び作用により、第1回転軸部及び第2回転軸部を支持して、これらと同軸上に配される第1ドア駆動用シャフトは、各回転軸部を介して空調ケース等によって確実に支持されることになり、筒状の第2回転軸部内で、第1ドア駆動用シャフトが倒れたり、撓んだりすることを抑制することができる。したがって、空調ケース内で回転軸方向に並ぶ複数のドアについて、同軸に配される回転軸等の倒れや撓み等による作動不良を防止可能な車両用空調装置を提供することである。
【0008】
請求項2の発明によると、さらに、第1ドア駆動用シャフト(25)に軸方向の他端側で一体に設けられ、駆動力を受けて第1ドア駆動用シャフト(25)を回転させるギア(252)を備え、
第1ドア駆動用シャフト(25)が有する支持部(253)は、第1ドア駆動用シャフト(25)のギア(252)に一体に形成された円管状のリブであることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、第1ドア駆動用シャフトの外周面を取り巻く第2回転軸部は、第1ドア駆動用シャフトの軸方向の他端側に設けられたギアに一体の円環状のリブによって、その外周面全周が囲まれるように支持される。これにより、第1ドア駆動用シャフトによる第2回転軸部を支持する能力が安定し、かつ強力なものにできる。
【0010】
請求項3の発明によると、請求項1または請求項2に記載の発明において、仕切り板(27)は、第1回転軸部と第2回転軸部の両方を回転可能に支持する支持部(271)を備えることを特徴とする。この発明によれば、第1回転軸部の軸方向の他端側と第2回転軸部の軸方向の一端側とが仕切り板によって回転可能に支持されるため、仕切り板に、各回転軸部の姿勢を適正に維持する構造と空気通路を仕切るための機能とを持たせることができる。したがって、回転軸部の倒れや撓み等によるドアの作動不良を防止する機能を少ない部品点数で実現することができる。
【0011】
請求項4の発明によると、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の発明において、第1ドア駆動用シャフト(25)は、仕切り板(27)によって第1回転軸部が支持される位置で、第1回転軸部と結合することを特徴とする。
【0012】
第1回転軸部と第1ドア駆動用シャフトとが結合される部分は、第1ドア駆動用シャフトを適正に支持し倒れや撓み等を防止する重要な部分であるため、他の部分と比較して負荷が大きく、確実な支持力が必要になる。そこで、この発明によれば、仕切り板によって第1回転軸部の端部を支持することにより、当該結合部分を確実に支持することができる。したがって、第1ドア駆動用シャフトの姿勢を保持する機能をさらに向上することができるので、同軸に配される回転軸の倒れや撓み等による作動不良を確実に防止可能である。
【0013】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した第1実施形態に係る車両用空調装置の内部構成を説明する模式的平面図である。
【図2】図1についてII方向から見たときの模式的断面図である。
【図3】二つのドアの各回転軸部、第1ドア駆動用シャフト、及びケースの関係を説明するための部分断面図である。
【図4】第1ドア駆動用シャフトが第2回転軸部の端部を回転可能に支持する図3の支持構造について、他の形態を示した部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組み合わせが可能であることを明示している部分同士の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合わせることも可能である。
【0016】
(第1実施形態)
本発明を適用した第1実施形態の車両用空調装置について図1〜図4にしたがって説明する。図1は、第1実施形態に係る車両用空調装置の内部構成を説明する模式的平面図である。図2は、図1についてII方向から見たときの模式的断面図である。図1において、紙面の上方が車両前方、下方が車両後方、左方向が車両左方向、右方向が車両右方向をそれぞれ示している。図2において、紙面の上方が車両上方向、下方が車両下方向、左方向が車両前方、右方向が車両後方をそれぞれ示している。
【0017】
車両用空調装置は、図1に示すように、送風機ユニット1と、この送風機ユニット1から送風された送風空気の温度調節を行う調整部をなす空調ユニット2とを備えている。この車両用空調装置の通風系は、大別して、送風機ユニット1と、空調ユニット2との2つの部分に分かれ、それぞれはケース覆われた外殻を有している。送風機ユニット1は車室内のインストルメントパネル下方部のうち、中央部から助手席側へオフセットして配置されている。これに対し、空調ユニット2は車室内のインストルメントパネル下方部のうち、車両左右方向の略中央部に配置されている。
【0018】
送風機ユニット1は、遠心多翼ファンからなる送風ファン10を有し、この送風ファン10は渦巻き状のスクロールケーシング11内に配置されて、電動モータにて回転駆動される。送風ファン10の送風空気は、スクロールケーシング11の渦巻き形状に沿って図1に示す矢印方向に送風される。
【0019】
送風ファン10の吸入口は、車両上方側に設けられ、内外気切替箱を通して空気を吸入する。内外気切替箱は、内気(車室内空気)吸入口及び外気(車室外空気)吸入口と、これらの吸入口を切替開閉する切替ドアとを有している。
【0020】
空調ユニット2は、1つの共通の空調ケース20内に蒸発器21とヒータコア22を両方とも一体的に内蔵する。空調ケース20は、例えばポリプロピレンといった樹脂の成形品からなり、図2の車両上下方向に延びる分割面を有する複数の分割ケースからなる。この複数の分割ケースは、第1ケース部材20a及び第2ケース部材20bからなり、蒸発器21、ヒータコア22や、後述する各ドア等の機器を収納した後に、金属バネクリップ、ネジ等の締結手段により一体に結合されて空調ケース20を形成する。
【0021】
空調ユニット2は、車室内のインストルメントパネル下方部の略中央部に、車両の前後、左右及び上下方向に対して、図1及び図2に示す状態に配置されている。そして、空調ケース20のうち、最も車両前方側の部位には、空気入口201が配設されている。この空気入口201には、送風機ユニット1から送風される空調空気が流入する。この空気入口201は、送風機ユニット1のスクロールケーシング11の空気出口部に接続するために、空調ケース20のうち、助手席側の側面に開口している。
【0022】
空調ケース20内において空気入口201直後の部位に蒸発器21が配置されている。蒸発器21は、車両前後方向には薄型の形態で空調ケース20内通路を横断するように配置されている。したがって、蒸発器21の車両上下及び車両左右に延びる前面に空気入口201からの送風空気が流入する。この蒸発器21は、冷凍サイクルの冷媒の蒸発潜熱を空調空気から吸熱して、空調空気を冷却する。
【0023】
蒸発器21の空気流れ下流側(車両後方側)には、所定の間隔を隔ててヒータコア22が配置されている。ヒータコア22は、蒸発器21を通過した冷風を加熱し、その内部に高温の温水(例えばエンジン冷却水)が流れ、この温水を熱源として空気を加熱する。
【0024】
空調ケース20内部の空気通路は、図1及び図2に示すように車両前後に延びるように形成されている。空調ケース20内部の空気通路は、センタープレートである仕切り板27により、車両左右方向に第1区画通路26Lと第2区画通路26Rとに仕切られている。第1区画通路26Lは助手席側空気通路であり、送風機ユニット1に近接している。第2区画通路26Rは運転席側空気通路であり、第1区画通路26Lに比べて送風機ユニット1から遠い位置にある。仕切り板27は、空調ケース20を構成する第1ケース部材20aまたは第2ケース部材20bに一体に形成されて一部品として構成してもよいし、空調ケース20とは別部品として構成されて空調ケース20と組み立てられる部品でもよい。
【0025】
仕切り板27は、2つの通路(第1区画通路26Lと第2区画通路26R)を仕切るために、蒸発器21の空気下流側部位からヒータコア22周辺部を通ってヒータコア22の下流側端部に至るまで、車両前後に延びるように配置されている。この仕切り板27は空調ケース20の部品と一体に形成することができ、また樹脂にて空調ケース20と一体に成形することができ、ヒータコア22の配置部位ではヒータコア22との干渉を回避するための切欠き部が形成されている。
【0026】
ヒータコア22は、第1区画通路26Lと第2区画通路26Rを横断するように配置されており、このヒータコア22の内部は、扁平チューブの扁平面またはコルゲートフィンのフィン面により、仕切り板27と同一位置で第1区画通路26Lと第2区画通路26Rに仕切られている。
【0027】
空調ケース20内の第1区画通路26L及び第2区画通路26Rにおいて、ヒータコア22よりも上方部位には、それぞれ、このヒータコア22をバイパスして冷風空気が流れる第1冷風バイパス通路28Lと第2冷風バイパス通路28R(以下、単に冷風バイパス通路28L,28Rと称することがある)が左右方向に形成されている。
【0028】
また、第1区画通路26L、第2区画通路26Rにおいて、ヒータコア22と蒸発器21との間の部位には、ヒータコア22で加熱される温風と、第1冷風バイパス通路28L、第2冷風バイパス通路28Rを通ってヒータコア22をバイパスする冷風との風量割合を調整する第1エアミックスドア23(第1ドアに相当する)、第2エアミックスドア24(第2ドアに相当する)が設けられている。第1エアミックスドア23は第1区画通路26Lを開閉し、第2エアミックスドア24は第2区画通路26Rを開閉する。
【0029】
第1エアミックスドア23及び第2エアミックスドア24(以下、単に総称してエアミックスドアと称することがある)は、モータ等の駆動手段によってスライドさせられて、冷風バイパス通路28L,28R側及びヒータコア22側に移動するスライド方式のドアである。
【0030】
エアミックスドア23,24は、ドア本体23a,24a、ドア本体23a,24aの端部に設けられるラック(ドアスライドギアともいう)、第1回転軸部230及び第2回転軸部240(以下、単に回転軸部230,240と称することがある)に設けられ駆動手段により回転されるピニオン233,234,243,244(シャフトギアともいう)、ドアガイドピン等から構成されている。ラックは、各ドア本体23a,24aのそれぞれの移動方向全体に延びるように形成されている。ドア本体23aに形成される二つのラックは、ピニオン233,234のそれぞれと噛み合うように構成されている。また、ドア本体24aの軸方向の両側に形成される二つのラックは、ピニオン243,244のそれぞれと噛み合うように構成されている。
【0031】
第1ドアのピニオン233,234は、回転軸の軸方向の一方側(例えば、車両右方向側)に設けられた第1ギア252に伝えられるサーボモータ50の回転駆動力によって第1ギア252とともに回転し、この回転駆動力が二つのラックを第1回転軸部230の軸方向に対して直交する方向に移動させる力として伝達され、ドア本体23aが当該直交する方向に移動することになる。
【0032】
第2ドアのピニオン243,244は、回転軸の軸方向の一方側(例えば、車両右方向側)に設けられた第2ギア254に伝えられるサーボモータ51の回転駆動力によって第2ギア254とともに回転し、この回転駆動力が二つのラックを第2回転軸部240の軸方向に対して直交する方向に移動させる力として伝達され、ドア本体24aが当該直交する方向に移動することになる。
【0033】
エアミックスドア23,24は、そのスライド位置により、ヒータコア22を通る温風の風量とヒータコア22を通過しない冷風の風量との比率を調節する。エアミックスドア23,24が図2に示すヒータコア22側の位置にあるときは最大冷房時であり、第1温風通路29L、第2温風通路29R(以下、単に温風通路29L,29Rと称することがある)を閉めてヒータコア22への空気の流れを完全に遮断し、車室内に冷房風を提供する。逆に、エアミックスドア23,24が図2に示す冷風バイパス通路28L,28R側の位置にあるときは最大暖房時であり、冷風バイパス通路28L,28Rを閉めて蒸発器21を通過した空気をすべてヒータコア22へ流して加熱し、車室内に暖房風を提供する。
【0034】
また、エアミックスドア23,24が中間の位置にあるときは、冷風バイパス通路28L,28Rと温風通路29L,29Rの両方が部分的に開放されて冷風と温風の両方が流下するようになり、下流側に設けられる第1エアミックスチャンバ30L、第2エアミックスチャンバ30R(以下、単にエアミックスチャンバ30L,30Rとも称する)で混合し、温調されてから開放されている各吹出口を通過して車室内に送られる。エアミックスドア23,24は、そのスライド位置に応じて冷風と温風の風量割合を調節し、空調風の温度調節を行う。エアミックスドア23,24のスライド位置は、オートエアコンの設定温度に応じて、各吹出口を開閉する各ドアによる吹出しモードとともに制御装置で決定され、マニュアルエアコンの場合には設定された温度及び吹出しモードに応じて、制御装置で決定される。
【0035】
また、仕切り板27によって左右に区画される第1エアミックスチャンバ30L、第2エアミックスチャンバ30Rのそれぞれは、蒸発器21から流れてきた冷風空気とヒータコア22で加熱された温風空気とが混ざり合う空間である。この空間で温度調節された空調風は、各吹出口を開閉する各ドアを制御することによって適正な風量割合で車室内へ供給することができる。
【0036】
ヒータコア22の下流側には、仕切り板27により左右に仕切られて、第1区画通路26L側の第1温風通路29Lと第2区画通路26R側の第2温風通路29Rとが設けられている。温風通路29L,29Rは、空調ケース20の下部から上方に向けて延びるように形成され、空調ケース20の車両左右幅全体に亘る幅寸法を有し、その幅寸法は車両前後方向の寸法よりも大きくなっている。つまり、温風通路29L,29Rは、前後方向に薄く、横長で上下方向に長い扁平状の通路を呈している。温風通路29L,29Rはヒータコア22の上端部付近でエアミックスチャンバ30L,30Rにそれぞれ接続されて、冷風バイパス通路28L,28Rにそれぞれ合流する。
【0037】
空調ケース20の上部のうち車両前方側の部位には、第1区画通路26L、第2区画通路26Rのそれぞれに対応して左右に第1デフロスタ開口部31L、第2デフロスタ開口部31R(以下、単にデフロスタ開口部31L,31Rと称することもある)が開口している。これらデフロスタ開口部31L,31Rは、それぞれエアミックスチャンバ30L,30Rから温度制御された空調空気が流入するものであって、デフロスタダクトを介して車室内のデフロスタ吹出口に接続されて、このデフロスタ吹出口から車両前面窓ガラスの内面に向けて風を吹き出す。
【0038】
デフロスタ開口部31L,31Rは、それぞれ第1デフロスタドア32L、第2デフロスタドア32R(以下、単にデフロスタドア32L,32Rまたは総称してデフロスタドア32とも称する)により開閉される。デフロスタドア32L,デフロスタドア32Rには、それぞれ第1回転軸部321L、第2回転軸部321R(以下、単に回転軸部321L,321Rとも称する)が一体に結合されている。回転軸部321L,321Rは、デフロスタドア32L,32Rと同様に、車両左右方向に沿って、同一直線上に並ぶように空調ケース20に設けられている。これら回転軸部321L,321Rの一方端は、仕切り板27に設けられた回動支持部を介して回動可能に支持されている。また、回転軸部321L,321Rの他方端は、駆動用レバー及びリンク機構を介してサーボモータ等からなる吹出モード切替用のアクチュエータ装置に連結されて、駆動されるようになっている。
【0039】
このように第1デフロスタドア32L、第2デフロスタドア32Rは、サーボモータ等の駆動手段によって第1回転軸部321L、第2回転軸部321Rがそれぞれ回転駆動されることにより、それぞれデフロスタ開口部31L,31Rを開閉する片側枢支式の回転ドアである。デフロスタドア32L,32Rが図2に示す一点鎖線位置に操作されると、デフロスタ開口部31L,31Rを全開するとともに第1連通口44L、第2連通口44Rを閉じるようになっている。第1連通口44L、第2連通口44Rは、第1区画通路26L、第2区画通路26Rにそれぞれ形成され、エアミックスチャンバ30L,30Rからフェイス開口部及びフット開口部側へ空気を流すための通路となる。
【0040】
また、空調ケース20の上部のうち車両後方側の部位には、複数組(本実施形態では、5組の合計10個)の左右のフェイス開口部33L〜37L,33R〜37Rが設けられており、これら各フェイス開口部のうち中央側のフェイス開口部33L,33R,36L,36Rには、エアミックスチャンバ30L,30Rから温度制御された空調空気が第1連通口44L、第2連通口44Rを介して流入する。
【0041】
左右のセンタフェイス開口部33L,33Rには、それぞれ左右のセンタフェイスダクトが連結され、このダクトを介して、インストルメントパネル左右方向の中央部上方側に配置されている車室内のセンタフェイス吹出口に連通し、この吹出口から車室内中央部の乗員頭部に向けて風を吹き出す。センタフェイス開口部33L,33Rの車両左右方向の両側に配置された左右のサイドフェイス開口部34L,34R,35L,35Rには、それぞれ左右のサイドフェイスダクトが連結され、このダクトを介して、インストルメントパネル左右両端部において車室内に向けて開口している左右のサイドフェイス吹出口に連通し、この吹出口から車室内左右両側部の乗員頭部側または車両側面窓ガラスに向けて風を吹き出す。サイドフェイス吹出口は、手動操作される風向変更装置を備えており、この風向変更装置の風向板の方向を調整することにより、車室内左右両側部の乗員頭部側または車両側面窓ガラスに向けて風を吹き出すことが可能になっている。
【0042】
また、左右のサイドフェイス開口部34L,34R,35L,35Rはエアミックスチャンバ30L,30Rと直接連通しているため、デフロスタドア32L,32R、第1フットフェイス切替用ドア40L及び第2フットフェイス切替用ドア40R(以下、単にフットフェイス切替用ドア40L,40Rとも称する)の操作位置と無関係に、全吹出モードにおいて常にエアミックスチャンバ30L,30Rからの空気を吹出すことができる。
【0043】
また、左右のセンタフェイス開口部33L,33Rよりも中央寄りの部位に配置された左右のリヤフェイス開口部36L,36Rは、空調ケース20の外部にてダクトを介して左右の補助リヤフェイス開口部37L,37Rに連通している。この開口部37L,37Rは、空調ケース20に設けられたリヤフェイス通路38L,38Rに接続されている。このリヤフェイス通路38L,38Rの開口端には、リヤフェイスダクトが接続されており、このダクトの先端に形成されたリヤフェイス吹出口から後席の乗員の頭部側に向けて風を吹き出す。また、空調ケース20内で、エアミックスチャンバ30L,30Rより車両後方側の部位に、左右のフット用空気入口部39L,39Rが第1区画通路26L、第2区画通路26Rのそれぞれにおいて開口している。
【0044】
左右のフット用空気入口部39L,39Rは、センタフェイス開口部33L,33R及びリヤフェイス開口部36L,36Rに対向して設けられ、第1区画通路26L、第2区画通路26Rのそれぞれに設けられた各フットフェイス切替用ドア40L,40Rにより切り替え開閉される。
【0045】
片側枢支式の回転ドアである第1フットフェイス切替用ドア40L、第2フットフェイス切替用ドア40Rには、それぞれ第1回転軸部401L、第2回転軸部401R(以下、単に回転軸部401L,401Rとも称する)が一体に結合されている。回転軸部401L,401Rは、フットフェイス切替用ドア40L,40Rと同様に、車両左右方向に沿って、同一直線上に並ぶように空調ケース20に設けられている。
【0046】
これら回転軸部401L,401Rの一方端は、仕切り板27に設けられた回動支持部を介して回動可能に支持されている。また、回転軸部401L,401Rの他方端は、駆動用レバー及びリンク機構を介してサーボモータ等からなる吹出モード切替用のアクチュエータ装置に連結されて、駆動されるようになっている。また、フットフェイス切替用ドア40L,40Rが図2に示す一点鎖線位置に操作されると、中央側のフェイス開口部33L,33R,36L,36Rを全開するとともに左右のフット用空気入口部39L,39Rを閉じるようになっている。
【0047】
フット用空気入口部39L,39Rからの空気は前席用フット開口部41L,41Rに流れ、さらに前席用フットダクト、車室内の前席用吹出口を経て前席の乗員足元に吹き出される。また、フット用空気入口部39L,39Rからの空気の一部は、後席用フット通路42L,42Rを流れて後席用フット開口部43L,43Rに至り、ここから後席用フットダクト、車室内の後席用吹出口を経て後席の乗員足元に吹き出される。
【0048】
デフロスタドア32L,32R及びフットフェイス切替用ドア40L,40Rは、吹出モード切替用のドアであって、左右2つの第1区画通路26L、第2区画通路26R内に配され、第1回転軸部321L,401L及び第2回転軸部321R,401Rを独立駆動または一体同時駆動のいずれかで回動駆動することによって、エアミックスチャンバ30L,30Rで温度調整された空調空気を車室内に吹き出す吹出モードの切り替えを、左右独立駆動または左右一体駆動のいずれかで操作することができる。
【0049】
(各回転軸部230,240を支持する構造の説明)
次に、回転軸部の軸方向に並ぶ第1ドアと第2ドアを空調ケース20に対して取り付けるときの支持構造について図3を参照して説明する。図3は、二つのドアの各回転軸部230,240、第1ドア駆動用シャフト25、及び空調ケース20の関係を説明するための図であり、これらを車両後方に向かって見たものを断面で示した部分断面図である。以下の文言において、「車両左側」は、「回転軸部の一端側」と同意であり、「車両右側」は、「回転軸部の他端側」と同意である。
【0050】
図3に示すように、ドア本体23aは、ドア本体23aの軸方向両端に設けられた2個のラックのそれぞれに、第1回転軸部230の両端側に一体に形成された2個のピニオン233,234がかみ合うことにより、第1回転軸部230と一体となっている。ドア本体24aは、ドア本体24aの軸方向両端に設けられた2個のラックのそれぞれに、第2回転軸部240の一端部(車両左側に位置する一端部)と中ほどに一体に形成された2個のピニオン243,244が噛み合うことにより、第2回転軸部240と一体となっている。
【0051】
第1回転軸部230は、ピニオン233よりも車両左側に位置する端部231が、第1ケース部材の支持部20a1によって回転可能に支持されるとともに、ピニオン234よりも車両右側に位置する端部232が、仕切り板27に形成された支持部271によって回転可能に支持される。第1ケース部材の支持部20a1には、ケース内面よりも車両右方向に突出する軸方向突出部20a2が形成されている。
【0052】
仕切り板の支持部271には、仕切り板27の表面よりも、車両左方向に突出する軸方向突出部271aと車両右方向に突出する軸方向突出部271bとが形成されている。第1回転軸部の端部232は、第1ドア駆動用シャフト25の車両左側に位置する端部251と結合される結合凹部であり、両者の結合は嵌合構造、螺合構造等によって構成されている。この第1ドア駆動用シャフトの端部251は、軸方向の一端側で第1回転軸部の端部232と結合する連結部である。
【0053】
第1ドア駆動用シャフト25は、自身が回転することにより、一体に結合されている第1回転軸部230を回転させる駆動シャフトである。第1ドア駆動用シャフト25は、車両右側に位置する端部に第1ギア252を備えている。第1ギア252は、例えばサーボモータ50等のアクチュエータ装置に接続され、アクチュエータ装置からの駆動力を受けて回転駆動される。したがって、アクチュエータ装置からの駆動力によって、第1ギア252とともに第1ドア駆動用シャフト25が回転すると第1ドア駆動用シャフト25と一体に第1回転軸部230が回転し、回転するピニオン233,234とラックとの噛み合いにより、ドア本体23aが軸方向に対して垂直な方向にスライド移動する。なお、第1ギア252とアクチュエータ装置との間に、リンク機構を連結するように構成してもよい。
【0054】
第2回転軸部240は、軸の両端部が開口する円筒体であり、その内部には第1ドア駆動用シャフト25が貫通するように挿入設置されている。第2回転軸部240の円筒内径は、第1ドア駆動用シャフト25の外径よりも大きく設定されている。第1ドア駆動用シャフト25は、第2回転軸部240の円筒内部でその内壁面に接触しないように回転可能である。つまり、第1ドア駆動用シャフト25の回転によって、第2回転軸部240がとも回りすることはなく、その逆のとも回りも起こらない。
【0055】
第1ドア駆動用シャフト25に設けられている第1ギア252には、第2回転軸部240の外周面を囲むように軸方向一方に突出する支持部253が形成されている。第1ギアの支持部253は、第1ドア駆動用シャフト25の軸部と同軸に、第1ギア252の端面から円筒状に突出する円管状のリブであり、その円筒内径は、第2回転軸部240の外径よりも若干大きい寸法に設定されている。第1ギアの支持部253は、その円筒内壁面で、第2回転軸部240の車両右側に位置する端部242を回転可能に支持する。
【0056】
また、第1ギアの支持部253は、は、図4に示す支持部253Aであってもよい。図4は、図3の支持構造の他の形態であって、第1ギアの支持部253A等の断面を車両右方向に見たときの部分断面図である。図4に示すように、第1ギアの支持部253Aは、第2回転軸部の端部242の外周面を複数箇所(図4は3箇所)で支える形態である。したがって、第1ギアの支持部253Aは円環状ではなく、車両左方向(軸の他方)に起立して突出する3つの立壁部から構成されている。
【0057】
この図4に示す構成によれば、第2回転軸部の端部242を複数箇所で支持するため、第2回転軸部240の回転時の摩擦力を低減でき、軸部の円滑な回転性能を提供できるのである。なお、3つの立壁部の内面は、第2回転軸部の端部242の外周面に沿う局面に形成されていることが好ましい。
【0058】
第2回転軸部240のピニオン244よりも車両右側であって、第1ギア252の支持部253に支持される端部242よりも車両左側に位置する部分には、第2ギア254が第2回転軸部240に同軸に固定されている。第2ギア254は、例えばサーボモータ51等のアクチュエータ装置に接続され、アクチュエータ装置からの駆動力を受けて回転駆動される。なお、第2ギア254とアクチュエータ装置との間に、リンク機構を連結するように構成してもよい。
【0059】
第2回転軸部240は、ピニオン243よりも車両左側に位置する端部241が、仕切り板の支持部271によって第1回転軸部の端部232とともに回転可能に支持されるとともに、ピニオン244と第2ギア254の間の部分が、第2ケース部材の支持部20b1によって回転可能に支持されている。第2ケース部材の支持部20b1には、第2ケース部材20bの内面よりも、車両左方向に突出する軸方向突出部20b2と車両右方向に突出する軸方向突出部20b3とが形成されている。
【0060】
上記構成により、第1回転軸部230は、軸方向長さにおいて、両端部の2箇所でケース等によって回転可能に支持されるとともに、第1ドア駆動用シャフト25との結合によって当該者シャフトと同軸に支持され得る。第2回転軸部240は、軸方向長さにおいて、一端部で仕切り板27によって、及び他端部で第1ドア駆動用シャフト25によって回転可能に支持され、さらに両端部の間で第1ギア252に近い側の部位でも回転可能に支持される。また、第1ドア駆動用シャフト25は、上記のようにケース等に支持されている第1回転軸部230に同軸に結合して支持されるとともに、上記のようにケース等に支持されている第2回転軸部240を第1ギアの支持部253によって回転可能に支持することで、第2回転軸部240の筒体内部で、大きく傾いたり、倒れたりすることなく、回転軸部230,240の回転動作を円滑に維持することができる。
【0061】
また、アクチュエータ装置からの駆動力によって、第2ギア254とともに第2回転軸部240が回転すると、回転するピニオン243,244とラックとの噛み合いにより、ドア本体24aが軸方向に対して垂直な方向にスライド移動する。このように、サーボモータ50とサーボモータ51を個別に制御することにより、第1エアミックスドア23と第2エアミックスドア24は、独立してスライド移動可能なため、各通路において、冷風と温風の混合割合を個別に制御でき、独立した温度制御が可能である。
【0062】
また、第1ケース部材20a、第2ケース部材20b及び仕切り板27は、ポリプロピレン(PP)樹脂で形成されており、あるいはさらに強度を向上する場合には、所定量のタルクやガラス繊維を含有したPP樹脂が用いられる。第1回転軸部230、第2回転軸部240、第1ドア駆動用シャフト25、第1ギア252、及び第2ギア254は、強度を要するため、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリアセタール(POM)樹脂、または所定量のタルクやガラス繊維を含有したPP樹脂で形成されている。
【0063】
空調ケース20におけるドアが設置される部分は、一対のケース部材(第1ケース部材20aと第2ケース部材20b)が組み合わされている。当該一対のケース部材の組み立てに関する構成は、ドアの組み付けに関係する部位の空調ケース20が左右方向(第1回転軸部230等の軸方向)に組み合わされる第1ケース部材20aと第2ケース部材20bを含み、さらに第1ドアと第2ドアが同時ではなく別々に組み付けられる。
【0064】
図3に示すように、空調ケース20、第1エアミックスドア23及び第2エアミックスドア24等を組み立てるときは、まず、第1回転軸部230を備えた第1エアミックスドア23を空調ケース20において車両左側に配される第1ケース部材20aに対して組み付ける。ここで、車両左側(軸の一端側)に位置する第1回転軸部の端部231は、第1ケース部材の支持部20a1によって回転可能に支持されている。なお、この状態では、第1回転軸部230と第1ドア駆動用シャフト25は組み立てられていない。
【0065】
次に、第1ケース部材20aと第1エアミックスドア23とが組み立てられたものに、仕切り板27を組み付ける。この段階において、仕切り板の支持部271は、車両右側(軸の他端側)に位置する第1回転軸部の端部232を回転可能に支持する。
【0066】
さらに、第2エアミックスドア24の第2回転軸部240の内側に第1ドア駆動用シャフト25を挿入した状態で、車両左側(軸の一端側)に位置する第1ドア駆動用シャフトの端部251を、第1回転軸部の端部232に固定し、第1ドア駆動用シャフト25と第1回転軸部230を一体に組み付ける。この状態で、車両左側(軸の一端側)に位置する第2回転軸部の端部241は、第1ドア駆動用シャフト25が第1回転軸部230に固定されることに伴って、仕切り板の支持部271の内側に挿し込まれた状態で回転可能に支持される。このように、仕切り板の支持部271は、第1回転軸部230と第2回転軸部240の両方を回転可能に支持する。また、第1回転軸部230及び第2回転軸部240の軸径は、同等であることが好ましい。この構成によれば、仕切り板の支持部271が各回転軸部を支持する力を均等に与えやすく、各回転軸部への支持力を安定的に確保できる。
【0067】
なお、スライド移動方式のドア23、24の場合には、第1ケース部材20a及び第2ケース部材20bに仕切り板27、第1回転軸部230、第2回転軸部240、及び第1ドア駆動用シャフト25を組み付けた後に、この組み立て品を車両用空調装置を構成するケースへ挿入する組立て方法も可能である。
【0068】
ここで、第1ドア駆動用シャフトの端部251と第1回転軸部の端部232とが雄ねじと雌ねじの関係にある場合には第1ドア駆動用シャフトの端部251を第1回転軸部の端部232にねじ止めすることにより固定される。また、両者が嵌め合い関係の構成である場合には、第1ドア駆動用シャフトの端部251を第1回転軸部の端部232に挿し込むことにより、両者は固定される。このような結合構造により、互いに固着されて一体構造を呈するため、第1回転軸部230は、第1ドア駆動用シャフト25と同軸となるように設けられる。ここまでの組立工程で、第1ケース部材20a、第1エアミックスドア23及び仕切り板27が組み立てられたものに、第2エアミックスドア24及び第1ドア駆動用シャフト25が組み付けられることになる。
【0069】
最後に、第1ドア駆動用シャフト25と一体になった第2回転軸部240を仕切り板27とで挟むように第2ケース部材20bを車両右側から組み付ける。このとき、第2回転軸部240のピニオン244よりも車両右側の部分は、第2ケース部材の支持部20b1によって回転可能に支持され、車両右側(軸の他端側)に位置する第2回転軸部の端部242は、車両左方向(軸の一端向)に突出する第1ドア駆動用シャフトの支持部253によって回転可能に支持される。
【0070】
また、第1ギア252及び第2ギア254のそれぞれを、サーボモータ50、サーボモータ51といったアクチュエータ装置に接続する。そして、第1回転軸部230と第2回転軸部240は、各アクチュエータ装置からの駆動力を受けて駆動される。
【0071】
なお、第1回転軸部230は、第1ケース部材の支持部20a1における軸方向突出部20a2によって車両左方向(軸の一方向)の移動が規制され、仕切り板の支持部271における車両左側(軸の一端側)に位置する軸方向突出部271aによって車両右方向(軸の他方向)の移動が規制される。また、第2回転軸部240は、仕切り板の支持部271における車両右側(軸の他端側)に位置する軸方向突出部271bによって車両左方向(軸の一方向)の移動が規制され、第2ケース部材の支持部20b1における車両左側(軸の一端側)に位置する軸方向突出部20b2によって車両右方向(軸の他方向)の移動が規制される。
【0072】
以下に、本実施形態の車両用空調装置100がもたらす作用効果について述べる。車両用空調装置100は、空調ケース20と、空調ケース20に一体に形成される板、または空調ケース20とは別部品の板であって、空気通路を第1区画通路26Lと第2区画通路26Rとに仕切る仕切り板27と、第1区画通路26Lに設けられて第1区画通路26Lを開閉する第1ドアと、第1ドアと軸方向に並ぶように第2区画通路26Rに設けられて第2区画通路26Rを開閉する第2ドアと、空調ケース20及び仕切り板27の少なくとも一方に、少なくとも2箇所で回転可能に支持されて、第1ドアを駆動する第1回転軸部230と、第1回転軸部230と同軸であり、第1回転軸部230とは独立して回転可能に空調ケース20に支持されて、第2ドアを駆動する第2回転軸部240と、第1回転軸部230と同軸に一体となって回転して第1回転軸部230を回転させる第1ドア駆動用シャフト25と、を備える。
【0073】
第1ドア駆動用シャフト25は、第2回転軸部240の内部を貫通して配されるシャフトであって、軸方向の一端側で第1回転軸部の端部232と結合する連結部としての端部251と、軸方向の他端側で第2回転軸部の端部242の外周面を囲むように回転可能に支持する支持部253と、を有する。
【0074】
この構成によれば、第1ドア駆動用シャフト25は、軸方向の一端側(車両左側端部)で第1回転軸部230と結合することで第1回転軸部230を同軸上に支え、軸方向の他端側(車両右側端部)の支持部253によって第2回転軸部240を回転可能に支える。これにより、第1回転軸部230は、軸方向の少なくとも2箇所で支持され、さらに軸方向の他端側で第1ドア駆動用シャフト25と連結されることで支持されている。また、第2回転軸部240は、空調ケース20によって支持されるとともに、軸方向の他端側で第1ドア駆動用シャフト25に一体に設けた支持部253によって支持されている。
【0075】
以上の構成及び作用によれば、第1回転軸部230及び第2回転軸部240を支持し、かつこれらと同軸上に配される第1ドア駆動用シャフト25は、各回転軸部230,240を介して空調ケース20等によって確実に支持されるので、筒状の第2回転軸部240の内部で、第1ドア駆動用シャフト25が所定の姿勢に対して、倒れたり、撓んだりすることを抑制することができる。つまり、従来技術で指摘されるシャフトの倒れこみ等に伴う、駆動ギアと従動ギアとの噛み合いの不具合を回避して、ドアの作動不良の問題を解消できる。したがって、空調ケース20内で回転軸方向に並ぶ複数のドアについて、回転軸等が適正な位置や姿勢で設置されないことに伴う作動不良を防止することができる。
【0076】
また、車両用空調装置100は、第1ドア駆動用シャフト25に軸方向の他端側で一体に設けられ、駆動力を受けて第1ドア駆動用シャフト25を回転させる第1ギア252を備える。第1ドア駆動用シャフト25が有する支持部253は、第1ギア252に一体に形成された円管状のリブである。
【0077】
この構成によれば、第1ドア駆動用シャフト25の外周面を取り巻くように配される第2回転軸部240は、第1ドア駆動用シャフト25の軸方向の他端側に設けられた第1ギア252に一体の円環状のリブによって、その外周面全周が囲まれるように支持される。これにより、第1ドア駆動用シャフト25が第2回転軸部240を安定的に支持し、その支持力を強力にできる。
【0078】
また、仕切り板27は、第1回転軸部230と第2回転軸部240の両方を回転可能に支持する支持部271を備える。この構成によれば、第1回転軸部230の軸方向の他端側と第2回転軸部240の軸方向の一端側とが仕切り板27によって回転可能に支持されるため、仕切り板27に、各回転軸部230,240の姿勢を適正に維持する構造と空気通路を区画するための機能とを持たせることができる。このように、回転軸部の倒れや撓み等によるドアの作動不良を防止する機能を少ない部品点数で実現することができる。
【0079】
第1回転軸部230と第1ドア駆動用シャフト25とが結合される部分は、第1ドア駆動用シャフト25を適正に支持して倒れや撓み等を防止する重要な部分であるため、他の部分と比較してこの部分にかかる負荷が大きく、適正に支持するためには確実な支持力が必要になる。そこで、本構成によれば、第1ドア駆動用シャフト25は、仕切り板27によって第1回転軸部230が支持される位置で、第1回転軸部230と結合する。この構成によれば、仕切り板27によって軸方向の他端側に位置する第1回転軸部の端部232を支持することにより、当該結合部分を確実に支持することができる。したがって、第1ドア駆動用シャフト25の姿勢を保持する機能をさらに向上可能なため、同軸に配される回転軸の倒れや撓み等による作動不良を確実に防止することができる。
【0080】
また、仕切り板27は空調ケース20(第1ケース部材20a及び第2ケース部材20b)とは別部品として構成される場合がある。この場合、空調ケース20は、第1エアミックスドア23及び第2エアミックスドア24が取り付けられるときに、第1回転軸部230の軸方向に互いに組み合わされる一対のケース部材としての第1ケース部材20a及び第2ケース部材20bを備えている。そして、第1エアミックスドア23、仕切り板27及び第2エアミックスドア24が取り付けられた状態で第1ケース部材20a及び第2ケース部材20bが第1回転軸部230の軸方向に組み合わされる。
【0081】
これによれば、一対のケース部材の一方(第1ケース部材20a)に対して、第1エアミックスドア23、仕切り板27を取り付けた後、軸方向に、第2エアミックスドア24、第1ドア駆動用シャフト25、及び他方のケース部材(第2ケース部材20b)を組み合わせることにより、エアミックスドア23,24の空調ケース20に対する装着が行われる。このように、第1回転軸部230、第1ケース部材20a及び仕切り板27からなる第1のユニットに対して、第2回転軸部240、第2ケース部材20b及び第1ドア駆動用シャフト25からなるユニットを組み付けることにより、同軸上に配置された3つの回転軸部及び駆動用シャフトを作動不良が起こらないように適正に組み立てることができる。
【0082】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0083】
上記実施形態において、軸方向に並んで配置される複数のドアの各回転軸部230,240、第1ドア駆動用シャフト25、第1ケース部材20a、第2ケース部材20b、及び仕切り板27に関わる支持構造の発明は、エアミックスドア23,24を例に挙げて説明しているが、このドアに限定して適用するものではない。例えば、デフロスタドア32L,32Rや、フットフェイス切替用ドア40L,40R等の車両用空調装置が備える各種ドアにも適用することができる。
【0084】
上記実施形態では、第1回転軸部230は空調ケース20内において車両左側(助手席側)に配され、第2回転軸部240は空調ケース20内において車両右側(運転席側)に配されている形態であるが、これと逆の位置とする複数のドアに適用可能であることはいうまでもない。
【0085】
上記実施形態において、エアミックスドア23,24は、第1回転軸部230、第2回転軸部240が独立に駆動されて左右独立作動方式によって、左右に並ぶ通路である第1区画通路26L、第2区画通路26Rをそれぞれ開閉するドアである。しかしながら、本発明はこのような形態に限定するものではなく、第1回転軸部230と第2回転軸部240が同時に一体となって駆動されてエアミックスドア23及び24を同時に駆動する一体駆動方式であってもよい。
【0086】
また、第1ケース部材20aと第2ケース部材20bは、上記実施形態のように回転軸部の軸方向に組み合わせる構成である他、回転軸部の軸方向に対して垂直な方向に組み合わせる構成でもよい。
【0087】
この構成の場合、空調ケース20、第1エアミックスドア23及び第2エアミックスドア24等を組み立てるときは、まず左右の回転軸部230,240と左右のドア23,24とを一体に組み立てたドア部材を第1ケース部材に対して組み付ける。このとき、第1回転軸部の両端部231,232、第2回転軸部の端部241及び、第2回転軸部のピニオン244よりも車両右側の部分は、第1ケース部材及び仕切り板によって回転可能に支持される。なお、仕切り板は、第1ケース部材と一体の部品としてもよいし、第1ケース部材と別体の部品であって第1ケース部材と第2ケース部材とによって挟持されて固定される部品としてもよい。
【0088】
次に、第1ケース部材と当該ドア部材とが組み立てられたものに、第1ケース部材とで当該ドア部材を挟むように第2ケース部材を組み付ける。この組付けにより、第2ケース部材は、第1ケース部材とともに、第1回転軸部の両端部231,232、第2回転軸部の端部241、及び第2回転軸部のピニオン244よりも車両右側の部分を回転可能に支持する。なお、仕切り板は第2ケース部材と一体の部品としてもよい。仕切り板を第2ケース部材に一体に設ける構成の場合には、第2ケース部材が第1ケース部材に組み付けられると、第2ケース部材は、第1ケース部材とともに、第1回転軸部の両端部231,232、第2回転軸部の端部241、及び第2回転軸部のピニオン244よりも車両右側の部分を回転可能に支持する。
【0089】
また、上記実施形態において説明した第1ドア及び第2ドアは、その両方が平行移動するスライド移動方式のドアであるが、本発明に係るドアは、この形式のドアに限定するものではない。
【符号の説明】
【0090】
20…空調ケース
23…第1エアミックスドア(第1ドア)
24…第2エアミックスドア(第2ドア)
25…第1ドア駆動用シャフト
26L…第1区画通路
26R…第2区画通路
230…第1回転軸部
232…第1回転軸部の端部
242…第2回転軸部の端部
240…第2回転軸部
251…端部、第1ドア駆動用シャフトの端部(連結部)
252…第1ギア(ギア)
253…支持部、第1ギアの支持部
271…支持部、仕切り板の支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に供給する空気が流通する空気通路を内部に有する空調ケース(20)と、
前記空調ケースに一体に形成される板、または前記空調ケースとは別部品の板であって、前記空調ケース内の前記空気通路を第1区画通路(26L)と第2区画通路(26R)とに仕切る仕切り板(27)と、
前記第1区画通路に設けられて前記第1区画通路を開閉する第1ドア(23)と、
前記第1ドアと軸方向に並ぶように前記第2区画通路に設けられて前記第2区画通路を開閉する第2ドア(24)と、
前記空調ケース及び前記仕切り板の少なくとも一方に、軸方向において少なくとも2箇所で回転可能に支持されて、前記第1ドアを駆動する第1回転軸部(230)と、
前記第1回転軸部と同軸で前記第1回転軸部とは独立して回転可能に前記空調ケースに支持されて、前記第2ドアを駆動する第2回転軸部(240)と、
前記第1回転軸部と同軸に一体となって回転して前記第1回転軸部を回転させる第1ドア駆動用シャフト(25)と、
を備え、
前記第1ドア駆動用シャフト(25)は、筒状である前記第2回転軸部を貫通して配されるシャフトであって、軸方向の一端側で前記第1回転軸部の端部(232)と結合する連結部(251)と、軸方向の他端側で前記第2回転軸部の端部(242)の外周面を囲むように回転可能に支持する支持部(253)と、を有することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記第1ドア駆動用シャフト(25)に軸方向の他端側で一体に設けられ、駆動力を受けて前記第1ドア駆動用シャフト(25)を回転させるギア(252)を備え、
前記第1ドア駆動用シャフト(25)が有する前記支持部(253)は、前記第1ドア駆動用シャフト(25)の前記ギア(252)に一体に形成された円管状のリブであることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記仕切り板(27)は、前記第1回転軸部と前記第2回転軸部の両方を回転可能に支持する支持部(271)を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第1ドア駆動用シャフト(25)は、前記仕切り板(27)によって前記第1回転軸部が支持される位置で、前記第1回転軸部と結合することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−35379(P2013−35379A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172470(P2011−172470)
【出願日】平成23年8月7日(2011.8.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】