車両用空調装置
【課題】分割面がケーシングの底壁部を通るように該ケーシングを分割する場合に、冷却用熱交換器の凝縮水がケーシング構成部材の合わせ部に付着しても外部への漏れを抑制する。
【解決手段】エバポレータ21と、複数のケーシング構成部材27a,27bに分割されたケーシング27とを備え、ケーシング構成部材27aは空気流れ上流側に位置し、ケーシング構成部材27bは下流側に位置し、ケーシング構成部材27aにエバポレータ21が収容され、ケーシング構成部材27a,27bの合わせ部には、外周側に凹凸嵌合による外周側シール部68が設けられ、外周側シール部68よりも内周側に離れた部位に凹凸嵌合による内周側シール部67が設けられている。
【解決手段】エバポレータ21と、複数のケーシング構成部材27a,27bに分割されたケーシング27とを備え、ケーシング構成部材27aは空気流れ上流側に位置し、ケーシング構成部材27bは下流側に位置し、ケーシング構成部材27aにエバポレータ21が収容され、ケーシング構成部材27a,27bの合わせ部には、外周側に凹凸嵌合による外周側シール部68が設けられ、外周側シール部68よりも内周側に離れた部位に凹凸嵌合による内周側シール部67が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却用熱交換器に付着した凝縮水がケーシングの外部に漏水するのを抑制する構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置は、ケーシング内に冷却用熱交換器や加熱用熱交換器を収容し、これら熱交換器によって空調用空気の温度調節をした後、車室の各部に供給するように構成されている。一般に、車両用空調装置のケーシングを一体成形するのは困難であるため、特許文献1に開示されているように複数のケーシング構成部材に分割されている。
【0003】
特許文献1では、ケーシングは、冷却用熱交換器を収容する前側ケーシング構成部材と、加熱用熱交換器等を収容する後側ケーシング構成部材とに分割されており、前側ケーシング構成部材内で冷却された空気が後側ケーシング構成部材内に導入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−195091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように前側ケーシング構成部材から後側ケーシング構成部材に空調用空気を流すようにした場合、前側ケーシング構成部材には冷却用熱交換器が収容されているので、この冷却用熱交換器の表面に付着している凝縮水が空気の流れに乗って後側ケーシング構成部材へ向けて飛散する場合がある。これは特に凝縮水の付着量が多い場合に送風量を増大させると顕著に現れる。
【0006】
飛散した凝縮水は前側ケーシング構成部材と後側ケーシング構成部材との合わせ部に付着することがあり、こうなると両ケーシング構成部材の間から外部に漏れ出し、その結果、車室内が濡れてしまう恐れがある。
【0007】
このことに対し、ケーシングの分割面が例えば水平で底壁部よりも上に位置するようにケーシングを上下方向に分割することにより、分割面がケーシングの底壁部を通らないようにすることが考えられるが、空調装置の構造によっては、必ずしもそのように分割することができるとは限らず、分割面が底壁部を通るように分割せざるを得ない場合がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分割面がケーシングの底壁部を通るように該ケーシングを分割する場合に、冷却用熱交換器の凝縮水がケーシング構成部材の合わせ部に付着しても外部への漏れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、ケーシングに外周側のシール部と内周側のシール部とを設け、これらを内外方向に離して配置した。
【0010】
第1の発明は、冷却用熱交換器と、上記冷却用熱交換器を収容するとともに、複数のケーシング構成部材に分割されたケーシングとを備え、上記ケーシングに導入した空調用空気を、上記冷却用熱交換器を通過させて冷却した後、温度調節して車室の各部に供給するように構成された車両用空調装置において、上記ケーシングは、その分割面が該ケーシングの底壁部を通り、空気流れ方向上流側及び下流側に位置する上流側ケーシング構成部材及び下流側ケーシング構成部材を備え、上記上流側ケーシング構成部材に上記冷却用熱交換器が収容され、上記上流側ケーシング構成部材と上記下流側ケーシング構成部材との合わせ部には、外周側に凹凸嵌合による外周側シール部が設けられ、該外周側シール部よりも内周側に離れた部位に凹凸嵌合による内周側シール部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、ケーシング構成部材の合わせ部の内周側と外周側とにそれぞれ凹凸嵌合構造が設けられることになるので、合わせ部の剛性が高まり、しっかりと凹凸嵌合させてシール性を高めることが可能になる。
【0012】
従って、空調装置の運転時、冷却用熱交換器に付着した凝縮水が上流側ケーシング構成部材から下流側ケーシング構成部材へ向けて飛散して合わせ部に付着した場合、内周側シール部によってケーシング外部への漏水が抑制される。
【0013】
仮に内周側シール部から漏水があった場合、内周側シール部と外周側シール部とが離れているので、内周側シール部から漏れた凝縮水は内周側シール部と外周側シール部との間で一時的に保水されることになり、外周側シール部に達する凝縮水の量が極めて少なくなる。外周側シール部に達した凝縮水は外周側シール部によってケーシング外部への漏水が抑制される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記外周側シール部と上記内周側シール部との間には、上記内周側シール部から漏れた凝縮水を保水するための保水部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、仮に内周側シール部から凝縮水が漏れた場合に、その凝縮水が保水部で一時的に保水されるので、外周側シール部に達しにくくなる。保水された凝縮水は、例えば空調装置の運転を停止した状態で徐々に自然蒸発していく等、保水部から無くすことが可能である。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記保水部は、上記上流側ケーシング構成部材及び上記下流側ケーシング構成部材の一方に形成されたリブであることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、保水部を利用して上流側ケーシング構成部材または下流側ケーシング構成部材の剛性を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、ケーシングの底壁部を通る分割面によってケーシングを上流側ケーシング構成部材と下流側ケーシング構成部材とに分割した場合に、凹凸嵌合による外周側シール部と内周側シール部とを互いに離して設けたので、冷却用熱交換器の凝縮水がケーシング構成部材の合わせ部に付着しても外部への漏れを抑制することができる。
【0019】
第2の発明によれば、外周側シール部と内周側シール部との間に保水部を設けたので、凝縮水がより一層漏れにくくなる。
【0020】
第3の発明によれば、上流側ケーシング構成部材及び下流側ケーシング構成部材の一方に形成されたリブを保水部としたので、保水部を利用してケーシング構成部材の剛性を高めることができる。これにより、外周側シール部及び内周側シール部のシール性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1にかかる車両用空調装置の斜視図である。
【図2】車両用空調装置の右側面図である。
【図3】車両用空調装置の平面図である。
【図4】車両用空調装置の断面図である。
【図5】ケーシングの分解斜視図である。
【図6】上側ケーシング構成部材の背面図である。
【図7】上側ケーシング構成部材の右側面図である。
【図8】下側ケーシング構成部材の斜視図である。
【図9】下側ケーシング構成部材の背面図である。
【図10】シール部の拡大図である。
【図11】変形例1にかかる図10相当図である。
【図12】変形例2にかかる図10相当図である。
【図13】変形例3にかかる図10相当図である。
【図14】変形例4にかかる図10相当図である。
【図15】変形例5にかかる図10相当図である。
【図16】変形例6にかかる図8相当図である。
【図17】変形例7にかかる図8相当図である。
【図18】変形例8にかかる図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1〜図3は、本発明の実施形態1にかかる車両用空調装置1の空調ユニット20を示すものである。この車両用空調装置1は、自動車の車室前端部に配設されているインストルメントパネル(図示せず)内に搭載されている。
【0024】
車両用空調装置1は、図示しない送風ユニットと、空調ユニット20とを備えている。送風ユニットは、車両の助手席側に配置され、空調ユニット20は車幅方向中央部に配置されている。送風ユニットと空調ユニット20とは接続されている。
【0025】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両右側を単に「右」といい、車両左側を単に「左」というものとする。
【0026】
送風ユニットは、送風機を内蔵するとともに、内外気切替部を備えている。内外気切替部は、車室内の空気と車室外の空気との一方を選択して導入するためのものであり、送風ユニットは、車室内の空気又は車室外の空気を空調ユニット20に送ることができるようになっている。
【0027】
図4に示すように、空調ユニット20は、冷却用熱交換器としてのエバポレータ21と、加熱用熱交換器としてのヒータコア22と、エアミックスダンパ23と、デフロスタダンパ24と、ベントダンパ25と、ヒートダンパ26と、これらを収容する樹脂製のケーシング27とを備えている。
【0028】
図1及び図2に示すように、ケーシング27は、前後方向の中間部で分割された前側ケーシング構成部材27aと、後側ケーシング構成部材27bとを備えている。これら前側ケーシング構成部材27a及び後側ケーシング構成部材27bの分割面は、ケーシング27の底壁部を通っており、略鉛直、かつ、左右方向に延びる仮想面である。また、送風ユニットから送風された空調用空気は、まず、前側ケーシング構成部材27aに導入された後、後側ケーシング構成部材27bに導入されるようになっており、従って、前側ケーシング構成部材27aは本発明の上流側ケーシング構成部材であり、後側ケーシング構成部材27bは本発明の下流側ケーシング構成部材である。
【0029】
図5にも示すように、前側ケーシング構成部材27aには、エバポレータ21が収容され、一方、図4に示すように、後側ケーシング構成部材27bには、ヒータコア22と、エアミックスダンパ23と、デフロスタダンパ24と、ベントダンパ25と、ヒートダンパ26が収容されるようになっている。前側ケーシング構成部材27a及び後側ケーシング構成部材27bは、例えばファスナやビス等を用いて結合されている。
【0030】
さらに、図1に示すように後側ケーシング構成部材27bは、左右方向の中間部で分割された左側ケーシング構成部材27c及び右側ケーシング構成部材27dを備えている。左側ケーシング構成部材27c及び右側ケーシング構成部材27dは、ファスナやビス等を用いて結合されている。左側ケーシング構成部材27c及び右側ケーシング構成部材27dの分割面は、ケーシング27の底壁部を通っており、略鉛直、かつ、前後方向に延びる仮想面である。
【0031】
前側ケーシング構成部材27aは、図5に示すように上下方向の中間部で分割された上側ケーシング構成部材27e及び下側ケーシング構成部材27fを備えている。上側ケーシング構成部材27e及び下側ケーシング構成部材27fもファスナやビス等を用いて結合されている。
【0032】
尚、前側ケーシング構成部材27aは左右方向には分割されておらず、前側ケーシング構成部材27aの底壁部に分割面が存在していない。これは後述する凝縮水が底壁部から漏れるのを防止するためである。
【0033】
図4に示すように、ケーシング27の内部には、空調用空気が流通する空気通路Rが形成されている。エバポレータ21は、前側ケーシング構成部材27aの内部において空気通路R内に収容されている。
【0034】
このエバポレータ21の構造について説明すると、このエバポレータ21は、多数のチューブ及びフィン(共に図示せず)を有するチューブアンドフィンタイプの熱交換器であり、冷凍サイクルの一要素である蒸発器を構成している。
【0035】
エバポレータ21は、全体として略直方体状をなしている。エバポレータ21のチューブ及びフィンは上下方向に延び、左右方向に交互に並ぶように配置され、従って、図4に示すように、エバポレータ21は空気通路Rの一部を構成している冷却通路R1を横切っている。チューブは、エバポレータ21の空気通過方向(前後方向)に2列配列されている。チューブ及びフィンによってコア21aが構成されている。
【0036】
図5にも示すように、エバポレータ21の上部及び下部には、それぞれ上側及び下側ヘッダタンク21b,21cが設けられ、上側及び下側ヘッダタンク21b,21cにチューブの上端部及び下端部がそれぞれ接続されている。上側及び下側ヘッダタンク21b,21cの内部には仕切板(図示せず)が配設されており、この仕切板によってエバポレータ21には複数のパスが構成されている。
【0037】
図5に示すように、エバポレータ21の上側ヘッダタンク21bの右側面には、熱交換媒体としての冷媒を供給するための供給側クーラパイプ47と、エバポレータ21内を循環した後の冷媒を排出するための排出側クーラパイプ48とが接続されており、エバポレータ21の内部には熱交換媒体としての冷媒が循環するようになっている。供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48は、エバポレータ21の右側面から突出している。
【0038】
冷却通路R1内を流れる空調用空気がエバポレータ21を通過することによって冷媒と空調用空気とが熱交換し、空調用空気が冷却され、この時にエバポレータ21の表面で凝縮水が生成される。この凝縮水は、主にチューブやフィンを伝って下方へ流れるが、下流側へ飛散することもある(詳細は後述する)。
【0039】
エバポレータ21は、前側ケーシング構成部材27a内に収容された状態で、コア21aの空気流入面が前方に向き、また、空気流出面が後方に向き、これら空気流入面及び空気流出面は略上下方向に延びる姿勢となる。さらに、エバポレータ21の右側面及び左側面は、上下方向に延びており、また、上面及び下面は、左右方向に延びている。
【0040】
次に、前側ケーシング構成部材27aの構造について説明する。図1に示すように、前側ケーシング構成部材27aの右側壁部には、送風ユニット側(右側)へ向けて延びる導入ダクト30が一体成形されている。導入ダクト30は、前側ケーシング構成部材27aの分割面によって上下方向に2分割されており、上側ダクト構成部30aが上側ケーシング構成部材27eに一体成形され、下側ダクト構成部30bが下側ケーシング構成部材27fに一体成形されている。この導入ダクト30内の通路は空気通路Rの上流部分で構成されている。
【0041】
前側ケーシング構成部材27aには、ヒータパイプ44,45及びクーラパイプ47,48を支持するブラケット46が設けられている。上側ブラケット構成部46aが上側ケーシング構成部材27eに一体成形され、下側ブラケット構成部46bが下側ケーシング構成部材27fに一体成形されている。
【0042】
図5に示すように、下側ケーシング構成部材27fは、全体として上方に開放するように形成されている。図8や図9にも示すように、下側ケーシング構成部材27fの後壁部には、空調用空気を後側ケーシング構成部材27bへ流通させるための切欠部50が形成されている。切欠部50は、上方に開放する略コ字状となっており、該切欠部50の下縁部は前側ケーシング構成部材27aの底壁部よりも上に位置している。
【0043】
下側ケーシング構成部材27fの後壁部における切欠部50よりも下側は、略上下方向に延びてエバポレータ21のコア21aと対向する対向壁部50aとされている。図10に示すように、対向壁部50aの上縁部には、内周側シール部67を構成する内周側凸条部61が設けられている。図9に示すように、内周側凸条部61は、後側へ突出して切欠部50の下縁部に沿って左右方向に直線状に延びている。また、内周側凸条部61は、突出方向先端に近づくほど肉厚が薄くなっている。
【0044】
対向壁部50aの下側には、内周側凸条部61から下側(ケーシング27の外周側)に離れた部位に、外周側シール部68を構成する外周側凹条部62が設けられている。図10に示すように、外周側凹条部62を形成する部位は対向壁部50aから後側へ突出しており、この突出した部位に、前側へ窪むように外周側凹条部62が形成されている。図9に示すように、外周側凹条部62は、全体として、切欠部50の縁部に沿って上方に開放するコ字を描くように延びている。外周側凹条部62の下側は、上記内周側凸条部61の略平行に左右方向に延びている。
【0045】
図8や図9にも示すように、対向壁部50aの内周側凸条部61と外周側凹条部62との間には、多数の保水部63,63,…が設けられている。保水部63は、エバポレータ21から飛散した凝縮水が内周側凸条部61を越えて対向壁部50aの下側に向かって流れてきた場合に一時的に保水しておくためのものであり、対向壁部50aの左右両側に亘って並び、かつ、上下にも並ぶように配置されている。
【0046】
各保水部63は、図10に示すように対向壁部50aから後側へ突出しており、図9に示すように後側から見ると上方に開放する略コ字状をなしている。凝縮水は、保水部63に達すると表面張力によって保水部63の周囲に集まって保水されることになる。
【0047】
また、左右方向に並ぶ保水部63は、互いに間隔をあけて配置されており、これにより、広い保水面積が確保されている。また、上下方向に並ぶ保水部63は互いに連なっており、凝縮水が最上部の保水部63から最下部の保水部63に亘って流れるようになっている。これにより、最下部の保水部63も有効に利用して保水することが可能になる。また、上下方向に並ぶ保水部63によって対向壁部50aに上下方向に連続するリブが形成されることになる。
【0048】
図8に示すように、下側ケーシング構成部材27fの右側壁部51は、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の右側面に沿うように延びている。下側ケーシング構成部材27fの左側壁部52も、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の左側面に沿うように延びている。
【0049】
また、下側ケーシング構成部材27fの底壁部53は、基本的にはエバポレータ21の下面に沿って延びており、その一部には、エバポレータ21に結露して滴下した凝縮水を収集して排出するための凝縮水排水部49が設けられている。凝縮水排水部49は、底壁部53を、その左右方向中央部近傍が最も低くなるように傾斜させることによって構成されている。図9にも示すように、凝縮水排水部49には、凝縮水を前側ケーシング構成部材27aの外部へ排出するためのドレン部Dが設けられている。
【0050】
ドレン部Dには、ドレンホースHが接続されている。ドレンホースHの下端は、図示しないが、車体パネルに形成された貫通孔に接続されて車室外に連通している。
【0051】
上側ケーシング構成部材27eは、全体として下方に開放するように形成されている。図5及び図6に示すように、上側ケーシング構成部材27eの後壁部には、空調用空気を後側ケーシング構成部材27bへ流通させるための切欠部56が上記下側ケーシング構成部材27fの切欠部50と一致するように形成されている。
【0052】
上側ケーシング構成部材27eの左側壁部57、上壁部58及び右側壁部60は、エバポレータ21の外周面を囲む部位である。そして、左側壁部57は、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の左側面に沿うように延びている。
【0053】
この左側壁部57の下端と、下側ケーシング構成部材27fの左側壁部52の上端とは、両ケーシング構成部材27e,27fを組み合わせた際に連続するようになっている。
【0054】
また、上側ケーシング構成部材27eの上壁部58は、左右方向に略水平に、エバポレータ21の上面に沿うように延びている。
【0055】
上側ケーシング構成部材27eの右側壁部60は、エバポレータ21の外周面(右側面)から前側ケーシング構成部材27aの外方(右側)へ離れるように膨出する側壁膨出部60aを備えており、この側壁膨出部60aにより、上側ケーシング構成部材27eの右側壁部60とエバポレータ21の右側面との間に隙間が形成されることになる。
【0056】
図5に示すように、上側ケーシング構成部材27eの上側ダクト構成部30aには、上方へ膨出するように形成されたダクト膨出部30cが形成されている。このダクト膨出部30cの内部と上記側壁膨出部60aの内部とは連通している。
【0057】
また、上側ブラケット構成部46aの内部は中空であり、上記ダクト膨出部30cの内部と連通している。
【0058】
供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48は、ダクト膨出部30c及び上側ブラケット構成部46aの内部を通ってブラケット46に達している。
【0059】
尚、図2や図3に示すように、供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48の先端側には、周知の膨張弁を内蔵した膨張弁ブロックCが取り付けられている。
【0060】
クーラパイプ47,48の先端側は、車両のダッシュパネルの貫通孔からエンジンルームへ突出するようになっている。クーラパイプ47,48の先端側には、膨張弁ブロックCを介してエンジンルーム内のパイプが接続される。
【0061】
次に、後側ケーシング構成部材27bの構造について説明する。図1及び図3に示すように、後側ケーシング構成部材27bの上壁部の前後方向中央部には、デフロスタ吹出口32が形成されている。このデフロスタ吹出口32には、図示しないがインストルメントパネルのデフロスタノズルまで延びるデフロスタダクトが接続されている。
【0062】
後側ケーシング構成部材27bの上壁部の後側には、ベント吹出口34が形成されている。このベント吹出口34には、図示しないがインストルメントパネルのベントノズルまで延びるベントダクトが接続されている。
【0063】
図2に示すように、後側ケーシング構成部材27bの後側には、ヒート吹出口36が形成されている。このヒート吹出口36には、図示しないが乗員の足下まで延びるフットダクトが接続されている。
【0064】
図4に示すように、空気通路Rの冷却通路R1の下流部は、後側ケーシング構成部材27b内において上下に分岐しており、後側ケーシング構成部材27b内に配設されている隔壁38の上側に形成された上側開口部40と、隔壁38の下側に形成された下側開口部41とに連通している。
【0065】
下側開口部41には、空調用空気を加熱する加熱通路R2が接続されている。上側開口部40には、エアミックス空間R3が接続されている。加熱通路R2の下流側は、エアミックス空間R3に接続されている。
【0066】
エアミックスダンパ23は、上側開口部40及び下側開口部41を開閉するとともに、加熱通路R2の下流端開口43も開閉するように構成されており、上側開口部40を全開にした状態で下側開口部41及び加熱通路R2の下流端開口43を全閉にし、一方、下側開口部41を全開にした状態で上側開口部40及び加熱通路R2の下流端開口43を全開にする。
【0067】
尚、エアミックスダンパ23による各開口部40,41,43の開度は任意に設定できるようになっている。
【0068】
デフロスタダンパ24は、デフロスタ吹出口32を開閉し、ベントダンパ25は、ベント吹出口34を開閉し、ヒートダンパ26はヒート吹出口36を開閉する。
【0069】
ヒータコア22は、加熱通路R2に配設されている。図1に示すように、ヒータコア22には、熱交換媒体としてのエンジン冷却水を供給するための供給側ヒータパイプ44と、ヒータコア22を循環した後のエンジン冷却水を排出するための排出側ヒータパイプ45とが接続されており、ヒータコア22の内部にはエンジン冷却水が循環するようになっている。このエンジン冷却水と加熱通路R2内を流れる空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が加熱される。
【0070】
ヒータパイプ44,45は、後側ケーシング構成部材27bの右側壁部を貫通してケーシング27の外方を前側へ向かって延びている。ヒータパイプ44,45の前端側(先端側)は、前側ケーシング構成部材27aに設けられたブラケット46に保持されている。ヒータパイプ44,45の先端側は、車両のダッシュパネル(図示せず)に形成された貫通孔からエンジンルームへ突出するようになっている。ヒータパイプ44,45の先端側には、エンジンルーム内のパイプが接続される。
【0071】
図4に示すように、後側ケーシング構成部材27bの隔壁38は、前側ケーシング構成部材27aの対向壁部50aと対向した状態で略上下方向に延びている。隔壁38の上端は対向壁部50aの上端よりも上に位置している。隔壁38と対向壁部50aとは、前後方向に離れており、内部には凝縮水の保水が可能な保水空間が構成されている。
【0072】
前側ケーシング構成部材27aの対向壁部50aと後側ケーシング構成部材27bの隔壁38とが、ヒータコア22の下部とエバポレータ21の下部との間に位置することになり、断熱性の高い二重壁を形成することになる。これにより、ヒータコア22の熱がエバポレータ21に伝わりにくくなり、冷房性能の向上が図られる。
【0073】
図10に示すように、後側ケーシング構成部材27bの隔壁38には、内周側凸条部61と共に内周側シール部67を構成する内周側凹条部65が設けられている。内周側凹条部65を形成する部位は隔壁38から前側へ突出しており、この突出した部位に、後側へ窪むように内周側凹条部65が形成されている。
【0074】
隔壁38の内周側凹条部65よりも下側に離れた部位には、外周側凹条部62と共に外周側シール部68を構成する外周側凸条部66が形成されている。外周側凸条部66は、前側へ突出して上記外周側凹条部62と同様にコ字状に延びている。外周側凸条部66は、突出方向先端に近づくほど肉厚が薄くなっている。
【0075】
前側ケーシング構成部材27aと後側ケーシング構成部材27bを組み合わせた状態で内周側凹条部65に内周側凸条部61が入り込むことによって両者が凹凸嵌合し、また、外周側凹条部62に外周側凸条部66が入り込むことによって両者が凹凸嵌合する。これにより、ケーシング27の内外方向に離れて配置された2重のシール構造が得られる。
【0076】
対向壁部50aに内周側凸条部61と外周側凹条部62が形成されていることで対向壁部50aの剛性が高まる。また、隔壁38も内周側凹条部65と外周側凸条部66とが形成されていることで隔壁38の剛性も高まる。よって、対向壁部50a及び隔壁38の変形が抑制され、また、びびり音等の異音の発生も抑制される。
【0077】
このように変形しにくいもの同士を組み合わせるようにしているので、内周側凹条部65と内周側凸条部61との嵌合、及び外周側凹条部62と外周側凸条部66との嵌合が設計通りに行われることになり、組立作業性及びシール性が共に向上する。この嵌合状態では、内周側シール部67及び外周側シール部68のそれぞれで水密性が確保されるように設計されている。従って、この実施形態では、内周側凹条部65と内周側凸条部61との間、及び外周側凹条部62と外周側凸条部66の間には、ゴム等からなる別体シール材が配設されていない。これにより、車両用空調装置1の部品点数が少なくなり、製造工数が削減され、よってコストの低減が可能になる。
【0078】
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の運転時について説明する。送風ユニットから送風された空調用空気は導入ダクト30内を流れて空調ユニット20の冷却通路R1に流入し、エバポレータ21を通過して冷却される。このときエバポレータ21の表面には凝縮水が発生する。エバポレータ21表面の凝縮水は、主にチューブやフィンを伝ってケーシング27の凝縮水排水部49に滴下して収集され、ドレン部D及びドレンホースHを通って車室外へ排水される。
【0079】
ところが、空調用空気の湿度や温度状態等によってエバポレータ21に多量の凝縮水が付着していることがあり、この場合に送風ユニットによる送風量が例えば急激に増大されると、エバポレータ21に付着している凝縮水が空調用空気の流れに乗って下流側(後側ケーシング構成部材27b側)へ飛散することがある。
【0080】
飛散した凝縮水は内周側シール部67に付着する場合がある。この場合、本来、内周側シール部67は水密性が確保される設計となっているが、経年変化や製造誤差、付着した凝縮水の量等によって、凝縮水が内周側シール部67の内周側凸条部61と内周側凹条部65との間を通って下側へ漏れることが考えられる。
【0081】
仮に内周側シール部67から漏水があった場合、内周側シール部67と外周側シール部68とが離れているので、内周側シール部67から漏れた凝縮水は内周側シール部67と外周側シール部68との間で、対向壁部50aや隔壁38に付着し、一時的に保水されることになる。
【0082】
特に本実施形態では、対向壁部50aに保水部63,63,…を設けているので、対向壁部50aを伝って下方へ流れてきた凝縮水は各保水部63に保水される。このとき、各保水部63が上方に開放するコ字状であるため、上方から流れてきた凝縮水を確実に受けて保水することができる。これにより、外周側シール部68に達する凝縮水の量が極めて少なくなるか、もしくは凝縮水が外周側シール部68に達しなくなる。外周側シール部68に達した凝縮水は外周側シール部68によってケーシング27外部への漏水が抑制されるので、車室内に漏れるのを未然に防止できる。
【0083】
尚、保水部63に保水された凝縮水は、例えば空調装置1の停止時等に自然蒸発してなくなる。
【0084】
以上説明したように、この実施形態にかかる車両用空調装置1によれば、ケーシング27の底壁部を通る分割面によってケーシング27を前側ケーシング構成部材27aと後側ケーシング構成部材27bとに分割した場合に、凹凸嵌合による外周側シール部68と内周側シール部67とを互いに離して設けたので、エバポレータ21の凝縮水がケーシング構成部材27a,27bの合わせ部に付着しても外部への漏れを抑制することができる。
【0085】
この場合に、外周側シール部68と内周側シール部67との間に保水部63,63,…を設けているので、凝縮水がより一層漏れにくくなる。
【0086】
また、保水部63が対向壁部50aのリブとして機能するので、このことによっても対向壁部50aの剛性が向上する。
【0087】
また、上記実施形態では、内周側シール部67を内周側凸条部61と内周側凹条部65とで構成し、外周側シール部68を外周側凹条部62と外周側凸条部66とで構成しているが、これに限らず、例えば、図11〜図13に示す変形例1〜3のように凹凸の組み合わせは任意に設定することができる。
【0088】
図11に示す変形例1では、内周側シール部67を対向壁部50aの内周側凹条部70と隔壁38の内周側凸条部71とで構成している。
【0089】
図12に示す変形例2では、外周側シール部68を対向壁部50aの外周側凸条部72と隔壁38の外周側凹条部73とで構成している。
【0090】
図13に示す変形例3では、内周側シール部67を対向壁部50aの内周側凹条部70と隔壁38の内周側凸条部71とで構成し、外周側シール部68を対向壁部50aの外周側凸条部72と隔壁38の外周側凹条部73とで構成している。
【0091】
また、図14に示す変形例4のように、内周側シール部67の内周側凸条部61と内周側凹条部65を、外周側シール部68の外周側凹条部62と外周側凸条部66よりも大きく形成してもよい。この場合、内周側シール部67によるシール性が特に高まるので、保水空間への凝縮水の漏れがより一層少なくなる。
【0092】
また、図15に示す変形例5のように、外周側シール部68の外周側凹条部62と外周側凸条部66を、内周側シール部67の内周側凸条部61と内周側凹条部65よりも大きく形成してもよい。この場合、外周側シール部68によるシール性が特に高まるので、保水部63に保水された凝縮水が下側へ流れた場合に車室への漏れを抑制できる。
【0093】
また、保水部63の形状は上記した形状に限られるものではなく、図16に示す変形例6のように保水部63を上下方向に延びるリブで構成してもよい。この保水部63は、左右に屈曲しながら延びており、屈曲部分によって凝縮水の保水量が十分に確保されるようになっている。また、リブを保水部63としたので、保水部63を利用して前側ケーシング構成部材27aの剛性を高めることができる。これにより、シール性をより一層高めることができる。変形例6において保水部63は斜めに延びるものであってもよいし、左右方向に略水平に延びるものであってもよい。
【0094】
また、図17に示す変形例7のように、短いリブを保水部63a,63bとしてもよい。保水部63aは、右斜め上に向けて延びており、また、保水部63bは、左斜め上に向けて延びている。これら保水部63a,63bを上下方向に交互に並べて配置することで、上から流れてきた凝縮水を確実に保水することができる。保水部63a,63bの長さは任意に設定することができる。
【0095】
また、図18に示す変形例8のように、保水部63は突起で構成してもよい。この変形例8では、保水部63が対向壁部55aの左下から右上に向かって斜めに並ぶように配置されている。これにより、上から流れてきた凝縮水がいずれかの保水部63に達することになるので、凝縮水を確実に保水することができる。保水部63の形状は、円形突起以外にも、多角形突起や楕円形突起であってもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0096】
また、上記実施形態にかかる保水部63、変形例6〜9にかかる保水部63,63a,63bを任意に組み合わせてもよい。
【0097】
また、上記保水部63,63a,63bは、後側ケーシング構成部材27bの隔壁38に設けてもよいし、隔壁38と対向壁部50aの両方に設けてもよい。
【0098】
また、保水部63としては、保水性を有する別部材を隔壁38や対向壁部50aに取り付けるようにして構成してもよい。
【0099】
また、前側ケーシング構成部材27aは一体成形品であってもよい。
【0100】
また、車両用空調装置1としては、上記したような空調ユニット20と送風ユニットとが左右方向に並んで配設されたセミセンタタイプの他、熱交換器及び送風機が車幅方向の中央部に配設されたフルセンタタイプのいずれであっても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明したように、本発明にかかる車両用空調装置は、複数のケーシング構成部材に分割されたケーシングを備えるものに適用できる。
【符号の説明】
【0102】
1 車両用空調装置
20 空調ユニット
21 エバポレータ(冷却用熱交換器)
22 ヒータコア
27 ケーシング
27a 前側ケーシング構成部材(上流側ケーシング構成部材)
27b 後側ケーシング構成部材(下流側ケーシング構成部材)
47 供給側クーラパイプ
48 排出側クーラパイプ
67 内周側シール部
68 外周側シール部
63 保水部
R 空気通路
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却用熱交換器に付着した凝縮水がケーシングの外部に漏水するのを抑制する構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用空調装置は、ケーシング内に冷却用熱交換器や加熱用熱交換器を収容し、これら熱交換器によって空調用空気の温度調節をした後、車室の各部に供給するように構成されている。一般に、車両用空調装置のケーシングを一体成形するのは困難であるため、特許文献1に開示されているように複数のケーシング構成部材に分割されている。
【0003】
特許文献1では、ケーシングは、冷却用熱交換器を収容する前側ケーシング構成部材と、加熱用熱交換器等を収容する後側ケーシング構成部材とに分割されており、前側ケーシング構成部材内で冷却された空気が後側ケーシング構成部材内に導入されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−195091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように前側ケーシング構成部材から後側ケーシング構成部材に空調用空気を流すようにした場合、前側ケーシング構成部材には冷却用熱交換器が収容されているので、この冷却用熱交換器の表面に付着している凝縮水が空気の流れに乗って後側ケーシング構成部材へ向けて飛散する場合がある。これは特に凝縮水の付着量が多い場合に送風量を増大させると顕著に現れる。
【0006】
飛散した凝縮水は前側ケーシング構成部材と後側ケーシング構成部材との合わせ部に付着することがあり、こうなると両ケーシング構成部材の間から外部に漏れ出し、その結果、車室内が濡れてしまう恐れがある。
【0007】
このことに対し、ケーシングの分割面が例えば水平で底壁部よりも上に位置するようにケーシングを上下方向に分割することにより、分割面がケーシングの底壁部を通らないようにすることが考えられるが、空調装置の構造によっては、必ずしもそのように分割することができるとは限らず、分割面が底壁部を通るように分割せざるを得ない場合がある。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、分割面がケーシングの底壁部を通るように該ケーシングを分割する場合に、冷却用熱交換器の凝縮水がケーシング構成部材の合わせ部に付着しても外部への漏れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、ケーシングに外周側のシール部と内周側のシール部とを設け、これらを内外方向に離して配置した。
【0010】
第1の発明は、冷却用熱交換器と、上記冷却用熱交換器を収容するとともに、複数のケーシング構成部材に分割されたケーシングとを備え、上記ケーシングに導入した空調用空気を、上記冷却用熱交換器を通過させて冷却した後、温度調節して車室の各部に供給するように構成された車両用空調装置において、上記ケーシングは、その分割面が該ケーシングの底壁部を通り、空気流れ方向上流側及び下流側に位置する上流側ケーシング構成部材及び下流側ケーシング構成部材を備え、上記上流側ケーシング構成部材に上記冷却用熱交換器が収容され、上記上流側ケーシング構成部材と上記下流側ケーシング構成部材との合わせ部には、外周側に凹凸嵌合による外周側シール部が設けられ、該外周側シール部よりも内周側に離れた部位に凹凸嵌合による内周側シール部が設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
この構成によれば、ケーシング構成部材の合わせ部の内周側と外周側とにそれぞれ凹凸嵌合構造が設けられることになるので、合わせ部の剛性が高まり、しっかりと凹凸嵌合させてシール性を高めることが可能になる。
【0012】
従って、空調装置の運転時、冷却用熱交換器に付着した凝縮水が上流側ケーシング構成部材から下流側ケーシング構成部材へ向けて飛散して合わせ部に付着した場合、内周側シール部によってケーシング外部への漏水が抑制される。
【0013】
仮に内周側シール部から漏水があった場合、内周側シール部と外周側シール部とが離れているので、内周側シール部から漏れた凝縮水は内周側シール部と外周側シール部との間で一時的に保水されることになり、外周側シール部に達する凝縮水の量が極めて少なくなる。外周側シール部に達した凝縮水は外周側シール部によってケーシング外部への漏水が抑制される。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記外周側シール部と上記内周側シール部との間には、上記内周側シール部から漏れた凝縮水を保水するための保水部が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、仮に内周側シール部から凝縮水が漏れた場合に、その凝縮水が保水部で一時的に保水されるので、外周側シール部に達しにくくなる。保水された凝縮水は、例えば空調装置の運転を停止した状態で徐々に自然蒸発していく等、保水部から無くすことが可能である。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記保水部は、上記上流側ケーシング構成部材及び上記下流側ケーシング構成部材の一方に形成されたリブであることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、保水部を利用して上流側ケーシング構成部材または下流側ケーシング構成部材の剛性を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、ケーシングの底壁部を通る分割面によってケーシングを上流側ケーシング構成部材と下流側ケーシング構成部材とに分割した場合に、凹凸嵌合による外周側シール部と内周側シール部とを互いに離して設けたので、冷却用熱交換器の凝縮水がケーシング構成部材の合わせ部に付着しても外部への漏れを抑制することができる。
【0019】
第2の発明によれば、外周側シール部と内周側シール部との間に保水部を設けたので、凝縮水がより一層漏れにくくなる。
【0020】
第3の発明によれば、上流側ケーシング構成部材及び下流側ケーシング構成部材の一方に形成されたリブを保水部としたので、保水部を利用してケーシング構成部材の剛性を高めることができる。これにより、外周側シール部及び内周側シール部のシール性をより一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1にかかる車両用空調装置の斜視図である。
【図2】車両用空調装置の右側面図である。
【図3】車両用空調装置の平面図である。
【図4】車両用空調装置の断面図である。
【図5】ケーシングの分解斜視図である。
【図6】上側ケーシング構成部材の背面図である。
【図7】上側ケーシング構成部材の右側面図である。
【図8】下側ケーシング構成部材の斜視図である。
【図9】下側ケーシング構成部材の背面図である。
【図10】シール部の拡大図である。
【図11】変形例1にかかる図10相当図である。
【図12】変形例2にかかる図10相当図である。
【図13】変形例3にかかる図10相当図である。
【図14】変形例4にかかる図10相当図である。
【図15】変形例5にかかる図10相当図である。
【図16】変形例6にかかる図8相当図である。
【図17】変形例7にかかる図8相当図である。
【図18】変形例8にかかる図8相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1〜図3は、本発明の実施形態1にかかる車両用空調装置1の空調ユニット20を示すものである。この車両用空調装置1は、自動車の車室前端部に配設されているインストルメントパネル(図示せず)内に搭載されている。
【0024】
車両用空調装置1は、図示しない送風ユニットと、空調ユニット20とを備えている。送風ユニットは、車両の助手席側に配置され、空調ユニット20は車幅方向中央部に配置されている。送風ユニットと空調ユニット20とは接続されている。
【0025】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両右側を単に「右」といい、車両左側を単に「左」というものとする。
【0026】
送風ユニットは、送風機を内蔵するとともに、内外気切替部を備えている。内外気切替部は、車室内の空気と車室外の空気との一方を選択して導入するためのものであり、送風ユニットは、車室内の空気又は車室外の空気を空調ユニット20に送ることができるようになっている。
【0027】
図4に示すように、空調ユニット20は、冷却用熱交換器としてのエバポレータ21と、加熱用熱交換器としてのヒータコア22と、エアミックスダンパ23と、デフロスタダンパ24と、ベントダンパ25と、ヒートダンパ26と、これらを収容する樹脂製のケーシング27とを備えている。
【0028】
図1及び図2に示すように、ケーシング27は、前後方向の中間部で分割された前側ケーシング構成部材27aと、後側ケーシング構成部材27bとを備えている。これら前側ケーシング構成部材27a及び後側ケーシング構成部材27bの分割面は、ケーシング27の底壁部を通っており、略鉛直、かつ、左右方向に延びる仮想面である。また、送風ユニットから送風された空調用空気は、まず、前側ケーシング構成部材27aに導入された後、後側ケーシング構成部材27bに導入されるようになっており、従って、前側ケーシング構成部材27aは本発明の上流側ケーシング構成部材であり、後側ケーシング構成部材27bは本発明の下流側ケーシング構成部材である。
【0029】
図5にも示すように、前側ケーシング構成部材27aには、エバポレータ21が収容され、一方、図4に示すように、後側ケーシング構成部材27bには、ヒータコア22と、エアミックスダンパ23と、デフロスタダンパ24と、ベントダンパ25と、ヒートダンパ26が収容されるようになっている。前側ケーシング構成部材27a及び後側ケーシング構成部材27bは、例えばファスナやビス等を用いて結合されている。
【0030】
さらに、図1に示すように後側ケーシング構成部材27bは、左右方向の中間部で分割された左側ケーシング構成部材27c及び右側ケーシング構成部材27dを備えている。左側ケーシング構成部材27c及び右側ケーシング構成部材27dは、ファスナやビス等を用いて結合されている。左側ケーシング構成部材27c及び右側ケーシング構成部材27dの分割面は、ケーシング27の底壁部を通っており、略鉛直、かつ、前後方向に延びる仮想面である。
【0031】
前側ケーシング構成部材27aは、図5に示すように上下方向の中間部で分割された上側ケーシング構成部材27e及び下側ケーシング構成部材27fを備えている。上側ケーシング構成部材27e及び下側ケーシング構成部材27fもファスナやビス等を用いて結合されている。
【0032】
尚、前側ケーシング構成部材27aは左右方向には分割されておらず、前側ケーシング構成部材27aの底壁部に分割面が存在していない。これは後述する凝縮水が底壁部から漏れるのを防止するためである。
【0033】
図4に示すように、ケーシング27の内部には、空調用空気が流通する空気通路Rが形成されている。エバポレータ21は、前側ケーシング構成部材27aの内部において空気通路R内に収容されている。
【0034】
このエバポレータ21の構造について説明すると、このエバポレータ21は、多数のチューブ及びフィン(共に図示せず)を有するチューブアンドフィンタイプの熱交換器であり、冷凍サイクルの一要素である蒸発器を構成している。
【0035】
エバポレータ21は、全体として略直方体状をなしている。エバポレータ21のチューブ及びフィンは上下方向に延び、左右方向に交互に並ぶように配置され、従って、図4に示すように、エバポレータ21は空気通路Rの一部を構成している冷却通路R1を横切っている。チューブは、エバポレータ21の空気通過方向(前後方向)に2列配列されている。チューブ及びフィンによってコア21aが構成されている。
【0036】
図5にも示すように、エバポレータ21の上部及び下部には、それぞれ上側及び下側ヘッダタンク21b,21cが設けられ、上側及び下側ヘッダタンク21b,21cにチューブの上端部及び下端部がそれぞれ接続されている。上側及び下側ヘッダタンク21b,21cの内部には仕切板(図示せず)が配設されており、この仕切板によってエバポレータ21には複数のパスが構成されている。
【0037】
図5に示すように、エバポレータ21の上側ヘッダタンク21bの右側面には、熱交換媒体としての冷媒を供給するための供給側クーラパイプ47と、エバポレータ21内を循環した後の冷媒を排出するための排出側クーラパイプ48とが接続されており、エバポレータ21の内部には熱交換媒体としての冷媒が循環するようになっている。供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48は、エバポレータ21の右側面から突出している。
【0038】
冷却通路R1内を流れる空調用空気がエバポレータ21を通過することによって冷媒と空調用空気とが熱交換し、空調用空気が冷却され、この時にエバポレータ21の表面で凝縮水が生成される。この凝縮水は、主にチューブやフィンを伝って下方へ流れるが、下流側へ飛散することもある(詳細は後述する)。
【0039】
エバポレータ21は、前側ケーシング構成部材27a内に収容された状態で、コア21aの空気流入面が前方に向き、また、空気流出面が後方に向き、これら空気流入面及び空気流出面は略上下方向に延びる姿勢となる。さらに、エバポレータ21の右側面及び左側面は、上下方向に延びており、また、上面及び下面は、左右方向に延びている。
【0040】
次に、前側ケーシング構成部材27aの構造について説明する。図1に示すように、前側ケーシング構成部材27aの右側壁部には、送風ユニット側(右側)へ向けて延びる導入ダクト30が一体成形されている。導入ダクト30は、前側ケーシング構成部材27aの分割面によって上下方向に2分割されており、上側ダクト構成部30aが上側ケーシング構成部材27eに一体成形され、下側ダクト構成部30bが下側ケーシング構成部材27fに一体成形されている。この導入ダクト30内の通路は空気通路Rの上流部分で構成されている。
【0041】
前側ケーシング構成部材27aには、ヒータパイプ44,45及びクーラパイプ47,48を支持するブラケット46が設けられている。上側ブラケット構成部46aが上側ケーシング構成部材27eに一体成形され、下側ブラケット構成部46bが下側ケーシング構成部材27fに一体成形されている。
【0042】
図5に示すように、下側ケーシング構成部材27fは、全体として上方に開放するように形成されている。図8や図9にも示すように、下側ケーシング構成部材27fの後壁部には、空調用空気を後側ケーシング構成部材27bへ流通させるための切欠部50が形成されている。切欠部50は、上方に開放する略コ字状となっており、該切欠部50の下縁部は前側ケーシング構成部材27aの底壁部よりも上に位置している。
【0043】
下側ケーシング構成部材27fの後壁部における切欠部50よりも下側は、略上下方向に延びてエバポレータ21のコア21aと対向する対向壁部50aとされている。図10に示すように、対向壁部50aの上縁部には、内周側シール部67を構成する内周側凸条部61が設けられている。図9に示すように、内周側凸条部61は、後側へ突出して切欠部50の下縁部に沿って左右方向に直線状に延びている。また、内周側凸条部61は、突出方向先端に近づくほど肉厚が薄くなっている。
【0044】
対向壁部50aの下側には、内周側凸条部61から下側(ケーシング27の外周側)に離れた部位に、外周側シール部68を構成する外周側凹条部62が設けられている。図10に示すように、外周側凹条部62を形成する部位は対向壁部50aから後側へ突出しており、この突出した部位に、前側へ窪むように外周側凹条部62が形成されている。図9に示すように、外周側凹条部62は、全体として、切欠部50の縁部に沿って上方に開放するコ字を描くように延びている。外周側凹条部62の下側は、上記内周側凸条部61の略平行に左右方向に延びている。
【0045】
図8や図9にも示すように、対向壁部50aの内周側凸条部61と外周側凹条部62との間には、多数の保水部63,63,…が設けられている。保水部63は、エバポレータ21から飛散した凝縮水が内周側凸条部61を越えて対向壁部50aの下側に向かって流れてきた場合に一時的に保水しておくためのものであり、対向壁部50aの左右両側に亘って並び、かつ、上下にも並ぶように配置されている。
【0046】
各保水部63は、図10に示すように対向壁部50aから後側へ突出しており、図9に示すように後側から見ると上方に開放する略コ字状をなしている。凝縮水は、保水部63に達すると表面張力によって保水部63の周囲に集まって保水されることになる。
【0047】
また、左右方向に並ぶ保水部63は、互いに間隔をあけて配置されており、これにより、広い保水面積が確保されている。また、上下方向に並ぶ保水部63は互いに連なっており、凝縮水が最上部の保水部63から最下部の保水部63に亘って流れるようになっている。これにより、最下部の保水部63も有効に利用して保水することが可能になる。また、上下方向に並ぶ保水部63によって対向壁部50aに上下方向に連続するリブが形成されることになる。
【0048】
図8に示すように、下側ケーシング構成部材27fの右側壁部51は、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の右側面に沿うように延びている。下側ケーシング構成部材27fの左側壁部52も、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の左側面に沿うように延びている。
【0049】
また、下側ケーシング構成部材27fの底壁部53は、基本的にはエバポレータ21の下面に沿って延びており、その一部には、エバポレータ21に結露して滴下した凝縮水を収集して排出するための凝縮水排水部49が設けられている。凝縮水排水部49は、底壁部53を、その左右方向中央部近傍が最も低くなるように傾斜させることによって構成されている。図9にも示すように、凝縮水排水部49には、凝縮水を前側ケーシング構成部材27aの外部へ排出するためのドレン部Dが設けられている。
【0050】
ドレン部Dには、ドレンホースHが接続されている。ドレンホースHの下端は、図示しないが、車体パネルに形成された貫通孔に接続されて車室外に連通している。
【0051】
上側ケーシング構成部材27eは、全体として下方に開放するように形成されている。図5及び図6に示すように、上側ケーシング構成部材27eの後壁部には、空調用空気を後側ケーシング構成部材27bへ流通させるための切欠部56が上記下側ケーシング構成部材27fの切欠部50と一致するように形成されている。
【0052】
上側ケーシング構成部材27eの左側壁部57、上壁部58及び右側壁部60は、エバポレータ21の外周面を囲む部位である。そして、左側壁部57は、上下方向に略真っ直ぐに、エバポレータ21の左側面に沿うように延びている。
【0053】
この左側壁部57の下端と、下側ケーシング構成部材27fの左側壁部52の上端とは、両ケーシング構成部材27e,27fを組み合わせた際に連続するようになっている。
【0054】
また、上側ケーシング構成部材27eの上壁部58は、左右方向に略水平に、エバポレータ21の上面に沿うように延びている。
【0055】
上側ケーシング構成部材27eの右側壁部60は、エバポレータ21の外周面(右側面)から前側ケーシング構成部材27aの外方(右側)へ離れるように膨出する側壁膨出部60aを備えており、この側壁膨出部60aにより、上側ケーシング構成部材27eの右側壁部60とエバポレータ21の右側面との間に隙間が形成されることになる。
【0056】
図5に示すように、上側ケーシング構成部材27eの上側ダクト構成部30aには、上方へ膨出するように形成されたダクト膨出部30cが形成されている。このダクト膨出部30cの内部と上記側壁膨出部60aの内部とは連通している。
【0057】
また、上側ブラケット構成部46aの内部は中空であり、上記ダクト膨出部30cの内部と連通している。
【0058】
供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48は、ダクト膨出部30c及び上側ブラケット構成部46aの内部を通ってブラケット46に達している。
【0059】
尚、図2や図3に示すように、供給側クーラパイプ47及び排出側クーラパイプ48の先端側には、周知の膨張弁を内蔵した膨張弁ブロックCが取り付けられている。
【0060】
クーラパイプ47,48の先端側は、車両のダッシュパネルの貫通孔からエンジンルームへ突出するようになっている。クーラパイプ47,48の先端側には、膨張弁ブロックCを介してエンジンルーム内のパイプが接続される。
【0061】
次に、後側ケーシング構成部材27bの構造について説明する。図1及び図3に示すように、後側ケーシング構成部材27bの上壁部の前後方向中央部には、デフロスタ吹出口32が形成されている。このデフロスタ吹出口32には、図示しないがインストルメントパネルのデフロスタノズルまで延びるデフロスタダクトが接続されている。
【0062】
後側ケーシング構成部材27bの上壁部の後側には、ベント吹出口34が形成されている。このベント吹出口34には、図示しないがインストルメントパネルのベントノズルまで延びるベントダクトが接続されている。
【0063】
図2に示すように、後側ケーシング構成部材27bの後側には、ヒート吹出口36が形成されている。このヒート吹出口36には、図示しないが乗員の足下まで延びるフットダクトが接続されている。
【0064】
図4に示すように、空気通路Rの冷却通路R1の下流部は、後側ケーシング構成部材27b内において上下に分岐しており、後側ケーシング構成部材27b内に配設されている隔壁38の上側に形成された上側開口部40と、隔壁38の下側に形成された下側開口部41とに連通している。
【0065】
下側開口部41には、空調用空気を加熱する加熱通路R2が接続されている。上側開口部40には、エアミックス空間R3が接続されている。加熱通路R2の下流側は、エアミックス空間R3に接続されている。
【0066】
エアミックスダンパ23は、上側開口部40及び下側開口部41を開閉するとともに、加熱通路R2の下流端開口43も開閉するように構成されており、上側開口部40を全開にした状態で下側開口部41及び加熱通路R2の下流端開口43を全閉にし、一方、下側開口部41を全開にした状態で上側開口部40及び加熱通路R2の下流端開口43を全開にする。
【0067】
尚、エアミックスダンパ23による各開口部40,41,43の開度は任意に設定できるようになっている。
【0068】
デフロスタダンパ24は、デフロスタ吹出口32を開閉し、ベントダンパ25は、ベント吹出口34を開閉し、ヒートダンパ26はヒート吹出口36を開閉する。
【0069】
ヒータコア22は、加熱通路R2に配設されている。図1に示すように、ヒータコア22には、熱交換媒体としてのエンジン冷却水を供給するための供給側ヒータパイプ44と、ヒータコア22を循環した後のエンジン冷却水を排出するための排出側ヒータパイプ45とが接続されており、ヒータコア22の内部にはエンジン冷却水が循環するようになっている。このエンジン冷却水と加熱通路R2内を流れる空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が加熱される。
【0070】
ヒータパイプ44,45は、後側ケーシング構成部材27bの右側壁部を貫通してケーシング27の外方を前側へ向かって延びている。ヒータパイプ44,45の前端側(先端側)は、前側ケーシング構成部材27aに設けられたブラケット46に保持されている。ヒータパイプ44,45の先端側は、車両のダッシュパネル(図示せず)に形成された貫通孔からエンジンルームへ突出するようになっている。ヒータパイプ44,45の先端側には、エンジンルーム内のパイプが接続される。
【0071】
図4に示すように、後側ケーシング構成部材27bの隔壁38は、前側ケーシング構成部材27aの対向壁部50aと対向した状態で略上下方向に延びている。隔壁38の上端は対向壁部50aの上端よりも上に位置している。隔壁38と対向壁部50aとは、前後方向に離れており、内部には凝縮水の保水が可能な保水空間が構成されている。
【0072】
前側ケーシング構成部材27aの対向壁部50aと後側ケーシング構成部材27bの隔壁38とが、ヒータコア22の下部とエバポレータ21の下部との間に位置することになり、断熱性の高い二重壁を形成することになる。これにより、ヒータコア22の熱がエバポレータ21に伝わりにくくなり、冷房性能の向上が図られる。
【0073】
図10に示すように、後側ケーシング構成部材27bの隔壁38には、内周側凸条部61と共に内周側シール部67を構成する内周側凹条部65が設けられている。内周側凹条部65を形成する部位は隔壁38から前側へ突出しており、この突出した部位に、後側へ窪むように内周側凹条部65が形成されている。
【0074】
隔壁38の内周側凹条部65よりも下側に離れた部位には、外周側凹条部62と共に外周側シール部68を構成する外周側凸条部66が形成されている。外周側凸条部66は、前側へ突出して上記外周側凹条部62と同様にコ字状に延びている。外周側凸条部66は、突出方向先端に近づくほど肉厚が薄くなっている。
【0075】
前側ケーシング構成部材27aと後側ケーシング構成部材27bを組み合わせた状態で内周側凹条部65に内周側凸条部61が入り込むことによって両者が凹凸嵌合し、また、外周側凹条部62に外周側凸条部66が入り込むことによって両者が凹凸嵌合する。これにより、ケーシング27の内外方向に離れて配置された2重のシール構造が得られる。
【0076】
対向壁部50aに内周側凸条部61と外周側凹条部62が形成されていることで対向壁部50aの剛性が高まる。また、隔壁38も内周側凹条部65と外周側凸条部66とが形成されていることで隔壁38の剛性も高まる。よって、対向壁部50a及び隔壁38の変形が抑制され、また、びびり音等の異音の発生も抑制される。
【0077】
このように変形しにくいもの同士を組み合わせるようにしているので、内周側凹条部65と内周側凸条部61との嵌合、及び外周側凹条部62と外周側凸条部66との嵌合が設計通りに行われることになり、組立作業性及びシール性が共に向上する。この嵌合状態では、内周側シール部67及び外周側シール部68のそれぞれで水密性が確保されるように設計されている。従って、この実施形態では、内周側凹条部65と内周側凸条部61との間、及び外周側凹条部62と外周側凸条部66の間には、ゴム等からなる別体シール材が配設されていない。これにより、車両用空調装置1の部品点数が少なくなり、製造工数が削減され、よってコストの低減が可能になる。
【0078】
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の運転時について説明する。送風ユニットから送風された空調用空気は導入ダクト30内を流れて空調ユニット20の冷却通路R1に流入し、エバポレータ21を通過して冷却される。このときエバポレータ21の表面には凝縮水が発生する。エバポレータ21表面の凝縮水は、主にチューブやフィンを伝ってケーシング27の凝縮水排水部49に滴下して収集され、ドレン部D及びドレンホースHを通って車室外へ排水される。
【0079】
ところが、空調用空気の湿度や温度状態等によってエバポレータ21に多量の凝縮水が付着していることがあり、この場合に送風ユニットによる送風量が例えば急激に増大されると、エバポレータ21に付着している凝縮水が空調用空気の流れに乗って下流側(後側ケーシング構成部材27b側)へ飛散することがある。
【0080】
飛散した凝縮水は内周側シール部67に付着する場合がある。この場合、本来、内周側シール部67は水密性が確保される設計となっているが、経年変化や製造誤差、付着した凝縮水の量等によって、凝縮水が内周側シール部67の内周側凸条部61と内周側凹条部65との間を通って下側へ漏れることが考えられる。
【0081】
仮に内周側シール部67から漏水があった場合、内周側シール部67と外周側シール部68とが離れているので、内周側シール部67から漏れた凝縮水は内周側シール部67と外周側シール部68との間で、対向壁部50aや隔壁38に付着し、一時的に保水されることになる。
【0082】
特に本実施形態では、対向壁部50aに保水部63,63,…を設けているので、対向壁部50aを伝って下方へ流れてきた凝縮水は各保水部63に保水される。このとき、各保水部63が上方に開放するコ字状であるため、上方から流れてきた凝縮水を確実に受けて保水することができる。これにより、外周側シール部68に達する凝縮水の量が極めて少なくなるか、もしくは凝縮水が外周側シール部68に達しなくなる。外周側シール部68に達した凝縮水は外周側シール部68によってケーシング27外部への漏水が抑制されるので、車室内に漏れるのを未然に防止できる。
【0083】
尚、保水部63に保水された凝縮水は、例えば空調装置1の停止時等に自然蒸発してなくなる。
【0084】
以上説明したように、この実施形態にかかる車両用空調装置1によれば、ケーシング27の底壁部を通る分割面によってケーシング27を前側ケーシング構成部材27aと後側ケーシング構成部材27bとに分割した場合に、凹凸嵌合による外周側シール部68と内周側シール部67とを互いに離して設けたので、エバポレータ21の凝縮水がケーシング構成部材27a,27bの合わせ部に付着しても外部への漏れを抑制することができる。
【0085】
この場合に、外周側シール部68と内周側シール部67との間に保水部63,63,…を設けているので、凝縮水がより一層漏れにくくなる。
【0086】
また、保水部63が対向壁部50aのリブとして機能するので、このことによっても対向壁部50aの剛性が向上する。
【0087】
また、上記実施形態では、内周側シール部67を内周側凸条部61と内周側凹条部65とで構成し、外周側シール部68を外周側凹条部62と外周側凸条部66とで構成しているが、これに限らず、例えば、図11〜図13に示す変形例1〜3のように凹凸の組み合わせは任意に設定することができる。
【0088】
図11に示す変形例1では、内周側シール部67を対向壁部50aの内周側凹条部70と隔壁38の内周側凸条部71とで構成している。
【0089】
図12に示す変形例2では、外周側シール部68を対向壁部50aの外周側凸条部72と隔壁38の外周側凹条部73とで構成している。
【0090】
図13に示す変形例3では、内周側シール部67を対向壁部50aの内周側凹条部70と隔壁38の内周側凸条部71とで構成し、外周側シール部68を対向壁部50aの外周側凸条部72と隔壁38の外周側凹条部73とで構成している。
【0091】
また、図14に示す変形例4のように、内周側シール部67の内周側凸条部61と内周側凹条部65を、外周側シール部68の外周側凹条部62と外周側凸条部66よりも大きく形成してもよい。この場合、内周側シール部67によるシール性が特に高まるので、保水空間への凝縮水の漏れがより一層少なくなる。
【0092】
また、図15に示す変形例5のように、外周側シール部68の外周側凹条部62と外周側凸条部66を、内周側シール部67の内周側凸条部61と内周側凹条部65よりも大きく形成してもよい。この場合、外周側シール部68によるシール性が特に高まるので、保水部63に保水された凝縮水が下側へ流れた場合に車室への漏れを抑制できる。
【0093】
また、保水部63の形状は上記した形状に限られるものではなく、図16に示す変形例6のように保水部63を上下方向に延びるリブで構成してもよい。この保水部63は、左右に屈曲しながら延びており、屈曲部分によって凝縮水の保水量が十分に確保されるようになっている。また、リブを保水部63としたので、保水部63を利用して前側ケーシング構成部材27aの剛性を高めることができる。これにより、シール性をより一層高めることができる。変形例6において保水部63は斜めに延びるものであってもよいし、左右方向に略水平に延びるものであってもよい。
【0094】
また、図17に示す変形例7のように、短いリブを保水部63a,63bとしてもよい。保水部63aは、右斜め上に向けて延びており、また、保水部63bは、左斜め上に向けて延びている。これら保水部63a,63bを上下方向に交互に並べて配置することで、上から流れてきた凝縮水を確実に保水することができる。保水部63a,63bの長さは任意に設定することができる。
【0095】
また、図18に示す変形例8のように、保水部63は突起で構成してもよい。この変形例8では、保水部63が対向壁部55aの左下から右上に向かって斜めに並ぶように配置されている。これにより、上から流れてきた凝縮水がいずれかの保水部63に達することになるので、凝縮水を確実に保水することができる。保水部63の形状は、円形突起以外にも、多角形突起や楕円形突起であってもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0096】
また、上記実施形態にかかる保水部63、変形例6〜9にかかる保水部63,63a,63bを任意に組み合わせてもよい。
【0097】
また、上記保水部63,63a,63bは、後側ケーシング構成部材27bの隔壁38に設けてもよいし、隔壁38と対向壁部50aの両方に設けてもよい。
【0098】
また、保水部63としては、保水性を有する別部材を隔壁38や対向壁部50aに取り付けるようにして構成してもよい。
【0099】
また、前側ケーシング構成部材27aは一体成形品であってもよい。
【0100】
また、車両用空調装置1としては、上記したような空調ユニット20と送風ユニットとが左右方向に並んで配設されたセミセンタタイプの他、熱交換器及び送風機が車幅方向の中央部に配設されたフルセンタタイプのいずれであっても本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上説明したように、本発明にかかる車両用空調装置は、複数のケーシング構成部材に分割されたケーシングを備えるものに適用できる。
【符号の説明】
【0102】
1 車両用空調装置
20 空調ユニット
21 エバポレータ(冷却用熱交換器)
22 ヒータコア
27 ケーシング
27a 前側ケーシング構成部材(上流側ケーシング構成部材)
27b 後側ケーシング構成部材(下流側ケーシング構成部材)
47 供給側クーラパイプ
48 排出側クーラパイプ
67 内周側シール部
68 外周側シール部
63 保水部
R 空気通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用熱交換器と、
上記冷却用熱交換器を収容するとともに、複数のケーシング構成部材に分割されたケーシングとを備え、
上記ケーシングに導入した空調用空気を、上記冷却用熱交換器を通過させて冷却した後、温度調節して車室の各部に供給するように構成された車両用空調装置において、
上記ケーシングは、その分割面が該ケーシングの底壁部を通り、空気流れ方向上流側及び下流側に位置する上流側ケーシング構成部材及び下流側ケーシング構成部材を備え、
上記上流側ケーシング構成部材に上記冷却用熱交換器が収容され、
上記上流側ケーシング構成部材と上記下流側ケーシング構成部材との合わせ部には、外周側に凹凸嵌合による外周側シール部が設けられ、該外周側シール部よりも内周側に離れた部位に凹凸嵌合による内周側シール部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
上記外周側シール部と上記内周側シール部との間には、上記内周側シール部から漏れた凝縮水を保水するための保水部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
上記保水部は、上記上流側ケーシング構成部材及び上記下流側ケーシング構成部材の一方に形成されたリブであることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項1】
冷却用熱交換器と、
上記冷却用熱交換器を収容するとともに、複数のケーシング構成部材に分割されたケーシングとを備え、
上記ケーシングに導入した空調用空気を、上記冷却用熱交換器を通過させて冷却した後、温度調節して車室の各部に供給するように構成された車両用空調装置において、
上記ケーシングは、その分割面が該ケーシングの底壁部を通り、空気流れ方向上流側及び下流側に位置する上流側ケーシング構成部材及び下流側ケーシング構成部材を備え、
上記上流側ケーシング構成部材に上記冷却用熱交換器が収容され、
上記上流側ケーシング構成部材と上記下流側ケーシング構成部材との合わせ部には、外周側に凹凸嵌合による外周側シール部が設けられ、該外周側シール部よりも内周側に離れた部位に凹凸嵌合による内周側シール部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用空調装置において、
上記外周側シール部と上記内周側シール部との間には、上記内周側シール部から漏れた凝縮水を保水するための保水部が設けられていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用空調装置において、
上記保水部は、上記上流側ケーシング構成部材及び上記下流側ケーシング構成部材の一方に形成されたリブであることを特徴とする車両用空調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−91403(P2013−91403A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234313(P2011−234313)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000152826)株式会社日本クライメイトシステムズ (154)
【Fターム(参考)】
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