説明

車両用窓の取付構造

【目的】 複層窓ガラスの外面と車両外板の外面との段差を、できる限り小さくすると共に、窓ユニットを車両外板に対し弾性支持させて、車両外板の振動が窓ユニットに直接伝わらないようにした車両用窓取付構造を提供すること。
【構成】 窓ガラス取付用周枠12の周枠基板部12aの車外側端に内向きフランジ部12bが突設されると共に、周枠基板部12aの外周面側にはその車外側端より車内側へ隔たった位置に車外側外向きフランジ部12cが突設され、この外向きフランジ部12cより車内側に車内側外向きフランジ部12dが突設され、両外向きフランジ部12c,12d間に弾性保持材22が取付けられ、この弾性保持部材22を介して取付金具26が設けられ、窓ユニット15は、この取付金具26によって車両外板16に弾性支持される。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本考案は、車両用窓の取付構造、特に、新幹線車両のように高速走行する車両に好適な固定窓の取付構造に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
新幹線車両のように高速走行する車両の固定窓には、防音、断熱等の観点から複層ガラス構造が採用され、また車両窓開口部への取付けには、取付作業の容易性の観点から、窓ガラスと窓枠とが一体化された窓ユニットを窓開口部に取付ける方式が採用されている。
【0003】
図4は、上記のような複層ガラス構造及び窓ユニット取付方式を採用した従来の車両用窓取付構造を示す。この窓取付構造では、複層窓ガラス1を窓ガラス取付用周枠2及び押さえ枠3のガラス嵌合溝部4に緩衝材Kを介し嵌装して窓ユニット5を形成し、この窓ユニット5を車両外板6の窓取付用開口部7に取付けたもので、窓ガラス取付用周枠2には、周枠基板部2aの車外側端にガラス嵌合用溝部4の車外側壁部を形成する内向きフランジ部2bが、また車内側端に外向きに突出する取付用フランジ部2cが突設されている。しかして、この窓ユニット5は、窓ガラス取付用周枠2の取付用フランジ部2cを、車両外板6の窓取付用開口部7を形成する開口枠部6aの車内端側取付フランジ部6bに当接してビス8止めすると共に、窓ガラス取付用周枠2の内向きフランジ部2bを、車両外板本体部6cの内向き延設部6d内面に当接支持させている。
【0004】
ところが、この図4のような窓取付構造によると、複層窓ガラス1の外面と車両外板6の外面との間に可成り大きな段差Dができる。このような段差Dがあると、走行中に空気抵抗が増すため、新幹線のような高速走行車両には好ましくない。
【0005】
上記のような段差の問題を解消するためには、図5に示す窓取付構造のように、複層窓ガラス1の車内側ガラス10と対向する車外側ガラス(合わせガラス)
9の外ガラス9aに厚いガラスを使用し、この厚板ガラス9aの端部を切除して内ガラス9bとの間に凹段部Lを形成した状態で、この厚板ガラス9aの外面を車両外板6の外面と面一に配設することが考えられるが、そうすると、車外側ガラス9の厚みが非常に厚くなって、重量の増大を来たすことになるため好ましくない。
【0006】
また、図4及び図5に示すいずれの窓取付構造においても、窓ガラス取付用周枠2が車両外板6と一体に連結されることから、車両走行中に車両外板6に生ずる振動が窓ガラス取付用周枠2に直接伝わり、窓ユニット5をガタつかせて騒音を生じさせたり、その振動によってガラスの破損させるなどの問題がある。
【0007】
本考案は、上述した従来の窓取付構造の問題点に鑑み、複層窓ガラスの外面と車両外板の外面との段差を、従来のようにガラスの厚みを厚くすることなく、できる限り少なくして重量の軽減を図ると共に、窓ユニットを車両外板に対して弾性支持させることにより車両外板の振動が窓ユニットに直接伝わらないようにした車両用窓取付構造を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決し得る本考案の車両用窓取付構造は、窓ガラス取付用周枠12における周枠基板部12aの車外側端にガラス嵌合溝部14の車外側壁部を形成する内向きフランジ部12bが突設されると共に、周枠基板部12aの外周面側にはその車外側端より車内側へ隔たった位置に車外側外向きフランジ部12cが突設され、且つ該外向きフランジ部12cより車内側に車内側外向きフランジ部12dが突設され、周枠基板部12aと前記両外向きフランジ部12c,12dとに囲繞される部分に弾性保持材22が取付けられ、該弾性保持部材22を介して窓ユニット15を車両外板16に取付けるための取付金具26が設けられ、しかして窓ユニット15は、前記取付金具26によって車両外板16に弾性支持されてなることを特徴とする。
【0009】
この取付構造において、複層窓ガラス11の車外側ガラス19は、その外側面周縁部を前記内向きフランジ部12bの内面に接着材23によって接着することが望ましい。また、複層窓ガラス11の車外側ガラス19は、その外側面周縁部を前記内向きフランジ部12bのほぼ厚みに相当する分だけ切除して凹段部Mを形成し、この凹段部Mに窓ガラス取付用周枠12の内向きフランジ部12bを突入させて、この内向きフランジ部12bの外側面と車外側ガラス19の外側面とが面一になるよう配置することが望ましい。
【0010】
【実施例】
実施例について図1〜図3を参照して説明すると、図1は、本考案に係る車両用窓取付構造を車内側から見た全体概略正面図、図2は、一実施例による取付構造の断面図、図3は他の実施例による取付構造の断面図である。先ず、図1及び図2に示す取付構造において、複層窓ガラス11は、車外側ガラス19と車内側ガラス20と両ガラス19,20の周縁部間に介装されたスペーサSとからなり、車外側ガラス19は、後述する窓ガラス取付用周枠12の内向きフランジ部12bとほぼ同程度の厚みを有する外ガラス19aと、車内側ガラス20と同じ厚みの内ガラス19bとの合わせガラスからなるもので、外ガラス19aはその周縁部が切除されて内ガラス19bとの間に凹段部Mを形成している。しかして、この複層窓ガラス11は、窓ガラス取付用周枠12とこれにビス21止めした押さえ枠13とにより形成されるガラス嵌合溝部14に、緩衝材Kを介して嵌装され、それによって窓ユニット15が形成される。
【0011】
この窓ユニット15の窓ガラス取付用周枠12には周枠基板部12aの車外側端に、前記ガラス嵌合溝部14の車外側壁部を形成する内向きフランジ部12bが突設され、この周枠基板部12aの外周面側には、その車外側端より車内側へ隔たった位置に車外側外向きフランジ部12cが突設されて、この外向きフランジ部12cと周枠基板部12aとの間に断面L字状の凹段部25が形成される。
また、周枠基板部12aの外周面側には、前記車外側外向きフランジ部12cより車内側に車内側外向きフランジ部12dが突設され、そしてこれら両外向きフランジ部12c,12dと周枠基板部12a外周面とに囲繞される凹溝部分に、ゴム状の弾性体からなる弾性保持材22が取付けられる。
【0012】
前記押さえ枠13は、前記車内側外向きフランジ部12dにビス21により締結されて、緩衝材Kを介し複層窓ガラス11の周縁部をガラス嵌合溝部14に保持する。尚、図2において、21aは前記車内側外向きフランジ部12dの裏側でビス21と螺合するナットを示す。この場合、複層窓ガラス11は、図2から明らかなように、車外側ガラス19の外ガラス19a外周縁部に形成された前記凹段部Mに窓ガラス取付用周枠12の内向きフランジ部12bを突入させると共に、この内向きフランジ部12bの内面を当該車外側ガラス19の内ガラス19bの外側面周縁部に対面させて、その対面部間に介装した接着材23により内向きフランジ部12bに接着させた状態でガラス嵌合溝部14に保持固定させる。
これによって、窓ガラス取付用周枠12に対する複層窓ガラス11の保持強度を高めることができると共に、ガラス板厚をできるだけ薄くして重量の軽減化を図ることができる。前記接着材23としては、テープ状のものや、液状または糊状のものを使用することができる。尚、図2において、24はシール材を示す。
【0013】
一方、車両外板16には、窓取付用開口部17を形成する開口枠部16aの車内端側取付フランジ部16bに、前記弾性保持材22を介して窓ユニット15を当該車両外板16に取付けるための複数個の取付金具26が取付られるようになっており、これらの取付金具26の配置を図1に示す。各取付金具26は、その一端部が窓ガラス取付用周枠12の両外向きフランジ部12c,12d間に取付けてある弾性保持材22内に挿着保持され、他端部がビス27により車内端側取付フランジ部16bに固定される。尚、図2において、16dは車両外板本体16cの内向き延設部である。
【0014】
この窓ユニット15を車両外板16に取付けるにあたっては、各取付金具26の一端部を窓ユニット15外周部の弾性保持材22に保持させた状態で、この窓ユニット15を車内側から窓取付用開口部17に挿入して、各取付金具26の他端部を車両外板16の車内端側取付フランジ部16bにビス27で固定することにより、窓ユニット15は複数個の取付金具26によって車両外板16に弾性支持される。
【0015】
この場合、窓ユニット15及び車両外板16に対する取付金具26の車内外方向取付位置を適宜に設定することにより、図2に示すように、車両外板16の内向き延設部16dが窓ガラス取付用周枠12の内向きフランジ部12bに車外側から対面した状態で、窓ガラス取付用周枠12及び複層窓ガラス11の外面を車両外板16の外面と面一にすることができる。尚、車両外板16の内向き延設部16dと窓ガラス取付用周枠12の外向きフランジ部12cとの間には緩衝材K及びシール材24を介装させる。
【0016】
上記のような取付構造によれば、車両走行中における車両外板16の振動は、一端部が車両外板16側に固定されている各取付金具26には直接に伝わるものの、その他端部が窓ガラス取付用周枠12に対して弾性保持材22により弾性保持されているため、窓ユニット15にはほとんど伝わらず、従って窓ユニット5がガタついたり、騒音を生じるようなことがない。また、車両外板16の外面と窓ガラス取付用周枠12及び複層窓ガラス11の外面とを面一にすることができるため、車両走行中に空気抵抗が増大することがない。
【0017】
図3に示す車両窓取付構造は、上述した図2の取付構造とほとんど同じであるが、窓ユニット15における窓ガラス取付用周枠12への複層窓ガラス11の取付構造が若干異なっている。即ち、複層窓ガラス11の車外側ガラス19′を形成する外ガラス19a′は、その端部が図2の実施例のように切除されておらず、内ガラス19b′と同一形状に形成してあって、内外両ガラス19a′,19b′の端部が共に、ガラス嵌合溝部14′内に嵌合されている。このため、押さえ枠13′の内周側端部を車内側へ屈曲させて、ガラス嵌合溝部14′の溝幅を若干広くしている。それ以外の点については、図2の取付構造と同一であり、同一部材には同一符号を付している。
【0018】
この図3の取付構造では、窓ユニット15の窓ガラス取付用周枠12外面と複層窓ガラス11外面との間に内向きフランジ部12bの厚み相当分だけの段差ができるが、従来例を示す図4の取付構造に較べると、その段差は半分程度に小さくすることができる。他の作用及び効果については、図2の実施例の場合と同様な作用効果を奏する。
【0019】
【考案の作用及び効果】
本考案の請求項1に係る取付構造によれば、窓ユニットを車両外板に取付けるにあたり、取付金具を、窓ユニット外周部に取付けた弾性保持材に保持しておいて、窓ユニットを、取付金具を介して車両外板に取付けることにより、窓ユニットはこの取付金具によって車両外板に弾性支持される。
【0020】
従って、車両走行中における車両外板の振動は、取付金具には直接に伝わるものの、この取付金具が窓ユニットの窓ガラス取付用周枠に対して弾性保持材により弾性保持されているため、窓ユニットにはほとんど伝わらず、窓ユニットのガタつきや、騒音の発生を防止できる。
【0021】
また、窓ユニット及び車両外板に対する取付金具の車内外方向取付位置を適宜に設定することにより、車両外板の一部を窓ガラス取付用周枠の内向きフランジ部に車外側から対接させることが可能となり、従って窓ガラス取付用周枠の外面を車両外板の外面と面一にすることができて、複層窓ガラスの外面と車両外板の外面との段差を最小限小さくすることができると共に、複層窓ガラスの、特に車外側ガラスの板厚をできる限り薄くすることができて、重量の軽減化を図ることができる。
【0022】
請求項2のように、複層窓ガラスにおける車外側ガラスの外側面周縁部を前記内向きフランジ部の内面に接着材によって接着させることによって、窓ガラス取付用周枠に対する複層窓ガラスの保持強度を高めることができる。
【0023】
また、請求項3のように、前記車外側ガラスの外側面周縁部を前記内向きフランジ部のほぼ厚みに相当する分だけ切除して凹段部を形成し、この凹段部に前記内向きフランジ部を突入させて、この内向きフランジ部の外側面と車外側ガラスの外側面とを面一に配置することによって、窓ユニットの外面全体を面一にして、車両外板との段差をなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係る車両用窓の取付構造を車内側から見た全体概略正面図である。
【図2】本考案の一実施例を示すもので、図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】本考案の他の実施例を示す図2と同様な断面図である。
【図4】従来の車両用窓取付構造を示す断面図である。
【図5】車両用窓取付構造の他の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
11 複層窓ガラス
12 窓ガラス取付用周枠
12a 周枠基板部
12b 内向きフランジ部
12c 車外側外向きフランジ部
12d 車内側外向きフランジ部
13 押さえ枠
14 ガラス嵌合溝部
15 窓ユニット
16 車両外板
17 窓取付用開口部
19 複層窓ガラスの車外側ガラス
20 複層窓ガラスの車内側ガラス
22 弾性保持材
23 接着材
26 取付金具

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】複層窓ガラスを窓ガラス取付用周枠及び押さえ枠のガラス嵌合溝部に嵌装して窓ユニットを形成し、該窓ユニットを車両外板の窓取付用開口部に取付けてなる車両用窓の取付構造において、前記周枠には、周枠基板部の車外側端に前記嵌合溝部の車外側壁部を形成する内向きフランジ部が突設されると共に、周枠基板部の外周面側にはその車外側端より車内側へ隔たった位置に車外側外向きフランジ部が突設され、且つ該外向きフランジ部より車内側に車内側外向きフランジ部が突設され、周枠基板部と前記両外向きフランジ部とに囲繞される部分に弾性保持材が取付けられ、該弾性保持部材を介して窓ユニットを車両外板に取付けるための取付金具が設けられ、しかして窓ユニットは、前記取付金具によって車両外板に弾性支持されてなることを特徴とする車両用窓の取付構造。
【請求項2】前記複層窓ガラスの車外側ガラスは、その外側面周縁部が前記内向きフランジ部の内面に接着材によって接着される請求項1に記載の車両用窓の取付構造。
【請求項3】前記複層窓ガラスの車外側ガラスは、外側面周縁部が前記内向きフランジ部のほぼ厚みに相当する分だけ切除されて凹段部を形成し、この凹段部に前記内向きフランジ部が突入されて、この内向きフランジ部の外側面と車外側ガラスの外側面とが面一に配置されてなる請求項1または2に記載の車両用窓の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】実開平7−6023
【公開日】平成7年(1995)1月27日
【考案の名称】車両用窓の取付構造
【国際特許分類】
【出願番号】実願平5−35063
【出願日】平成5年(1993)6月29日
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【出願人】(000101709)アルナ工機株式会社 (1)