説明

車両用筐体

【課題】筐体を固定する締結ボルトと筐体の取付足が筐体側に移動しても筐体外壁を破壊することなく、筐体内部を保護することのできる取付足を有する車両用筐体を提供する。
【解決手段】筐体10の内部には高電圧基板21が格納され、筐体10の側面には、筐体10を車両に取り付けるための取付足11と、取付足11へ過大な衝撃荷重が集中することを防止する二つのリブ15,16と、が設けられている。車両のクラッシャブルゾーンには、筐体を車体に固定する締結ボルト23が設けられ、取付足11の締結ボルト挿通孔12(ボスとも呼ぶ)に挿通されている。図中の取付足11は、筐体10の側面から伸びる二つの側面リブ14と、それぞれの側面リブ14に設けられた切欠き部13と、二つの側面リブを連結する連結部19と、側面リブ14に接続される位置決めとなるボスを含む基準座18と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に取り付けられる車両用筐体に関し、特に、車体に筐体を取付ける取付け構造を有する車両用筐体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気機器を収容した車両用筐体(以下、筐体という)を車両に取り付ける際、車両衝突時に筐体を空きスペースに導くことにより筐体の破損を低減させるため、予め決められた方向に意図的に弱く設計された取付け構造(取付足)を有する筐体が知られている。
【0003】
図7は、特許文献1で開示された従来の取付け構造を示している。図7の取付足100には、車両に設けられたクラッシャブルゾーンの固定部に締結ボルト101を設置し、筐体である電気接続箱の取付足100に設けられた環状リブ102と、環状リブ102から放射状に伸びる放射状リブ106と、環状リブ102の一部に破壊誘発部となる切欠き部108を設けた挿通孔107と、一部壁を除いた貫通穴105と、を配置し、挿通孔107に締結ボルト101を通して取付足100を固定することで、車両衝突時の衝撃荷重により切欠き部108が破壊して図中矢印で示した方向に締結ボルト101を移動可能とする技術が開示されている。また、破壊誘発部は、車両衝突時に電気接続箱本体を移動させる方向に沿い、かつ、締結ボルトが取りうる移動軌跡上に配置形成されている。
【0004】
特許文献2は車両用ダクトに関し、歩行者との衝突により変形したボンネットの更なる変形を許容するため、エンジンルーム内のダクトに破断予定ラインを有する支持壁部を設け、ボンネットの沈み込みにより支持壁部がダクトから部分的または全体的に分離し、これによりダクトの沈み込みを確保する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−233357号公報
【特許文献2】特開2000−8985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1は、車両衝突時に筐体の離脱方向を制御することが可能であるものの、締結ボルトが取付足から離れる方向に制御するものであり、締結ボルトが筐体側に移動する場合には筐体内部に損傷を及ぼす場合がある。また、特許文献2では、破断予定ラインによって部分的または全体的に分離する方向が離脱方向であり、離脱方向とは逆の方向では適用が難しい。
【0007】
そこで、本発明に係る筐体では、筐体を固定する締結ボルトと筐体の取付足が筐体側に移動しても筐体外壁を破壊することなく、筐体内部を保護することのできる取付足を有する筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る車両用筐体は、車両に取付けられる車両用筐体において、車両衝突時に筐体に加わる荷重方向に対向するように筐体面から伸びる同じ高さの二つのリブと、二つのリブの間に設けられ、かつ、取付足によって二つのリブより高い部位に設けられたボスと、ボスの取付け部に設けられた破壊誘発部と、を有し、破壊誘発部は、二つのリブの高さより低い部位に設けられることを特徴とする。ここで、ボスには車両に取り付けられた固定用ボルトが挿入され、固定用ボルトによって車両に固定される。
【0009】
また、本発明に係る車両用筐体において、破壊誘発部は、切欠き又は貫通孔であることを特徴とする。ここで、破壊誘発部は衝撃荷重により機能し、通常の荷重では機能しないものである。
【0010】
また、本発明に係る車両用筐体において、さらに破壊誘発部は、ボスの取付け部に割り込むようにして亀裂を発生させる突起を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る車両用筐体において、ボスは車両の筐体取付け部に立設した締結ボルトに挿通されていることを特徴とする。ここで、締結ボルトは車両のクラッシャブルゾーンに設けられている。
【0012】
また、本発明に係る車両用筐体において、バッテリ電圧よりも高い電圧を取り扱う高電圧部品を内部に収容することを特徴とする。ここで、高電圧部品は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車のインバータやコンバータなどである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る筐体を用いることにより、締結ボルトと取付足が筐体側に移動しても筐体外壁を破壊することがなく、筐体内部を保護することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る筐体の取付け構造の周辺を示す斜視図である。
【図2】図1に示す筐体の取付け構造の周辺の上面図と取付足11の斜視図である。
【図3】図1に示す筐体に衝突物が衝突した第1状態を説明する説明図である。
【図4】図3に示す衝突物がさらに押し込まれた第2状態を説明する説明図である。
【図5】図4に示す衝突物がさらに押し込まれ、かつ、リブに接触するまで押し込まれた第3状態を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施形態に係る別の筐体の衝突状況を説明する説明図である。
【図7】従来の筐体における取付足の構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る筐体10の取付け構造である取付足11の周辺を示し、図1を用いて筐体10を概説する。筐体10の内部には高電圧基板21が格納され、筐体10の側面には、筐体10を車両に取り付けるための取付足11と、取付足11へ過大な衝撃荷重が集中することを防止する二つのリブ15,16と、が設けられている。車両のクラッシャブルゾーンには、筐体を車体に固定する締結ボルト23が設けられ、取付足11の締結ボルト挿通孔12(ボスとも呼ぶ)に挿通されている。図中の取付足11は、筐体10の側面から伸びる二つの側面リブ14と、それぞれの側面リブ14に設けられた切欠き部13と、二つの側面リブを連結する連結部19と、側面リブ14に接続される位置決めとなるボスを含む基準座18と、を有している。また、基準座18は締結ボルト挿通孔12(ボス)と、連結部19とを分離するために連結部19に突入する突入部24と、を有している。このような構成にすることにより、基準座18への衝突荷重を切欠き部に集中させ、さらに、二つのリブ15,16で衝撃荷重を吸収することで、取付足11が筐体10の側面を破壊して筐体10内部の高電圧基板に損傷を与えることを防止している。
【0017】
一般的に、取付足11の基準座18の根本に切欠き部13を追加することで基準座18の根本で折れ、折れた箇所に再度衝突荷重が発生するため取付足11の根本に応力が発生する。そこで、本実施形態では取付足11に二つの改良を施した。第1の改良は、衝突荷重を受ける座を切り欠きの手前側(リブ15,16の高さ近傍)に設定することで、切欠き部13からの亀裂が突入部24の周囲を伝わって突入部24を露出させたことである。第2の改良は、折れた箇所に再度衝撃荷重が発生すると、突入部24が取付足11の連結部19に食い込むことにより連結部19を引き裂きながら進むことで、基準座で折れた後、折れた箇所に衝突荷重が再度入力されることがなく、筐体10の側面の割れを防止したことである。
【0018】
図2(A)は、図1に示す筐体10の取付け構造の周辺の上面図を示し、図2(B)は取付足11の斜視図を示している。上述したように、筐体10の取付足11の両脇には取付足11より短いリブ15,16が配置され、取付足11に加わる衝撃荷重は一時的には取付足11単独で受け持つことになるが、基準座18が押し込まれ、筐体10の側面の補強部材であるリブ15,16と同じ高さになるとリブ15,16にて衝撃荷重が緩和されることになる。なお、図2(B)の切欠き部13は、側面リブ14の中央部に設けられているため、通常の荷重では折れることがない。
【0019】
また、突入部24の先端から切欠き部13までの距離L1を設定することにより、切欠き部13から発生した亀裂が側面リブ14から突入部24の周囲を伝わることで突入部24の先端を形成させ、折れた箇所に突入部24と突入部24を受け入れる凹みが形成される。次に、図3〜図5を用いて衝突の際の第1状態から第3状態を詳説する。
【0020】
図3(A)は図1に示す筐体10に衝突物25が衝突した第1状態を示し、図3(B)は斜視図を示している。第1状態では、取付足11に衝突物25が接触して衝撃荷重が伝わり、最初に切欠き部13を開始点として亀裂26が両側から進み突入部24の周囲を進むことで取付足11が折れる。この時、折れた箇所に突入部24を受け入れる凹みが形成されているため、突入部24が連結部19に入り込むことになる。
【0021】
図4(A)は図3に示す衝突物25がさらに押し込まれた第2状態を示し、図4(B)は斜視図を示している。第2状態では、取付足11が折れ、突入部24が連結部19に入り込み、二つの側面リブ14を左右に押し開くように進むことになる。なお、この第2状態では、二つのリブ15,16は衝突物25と接触しておらず、もっぱら取付足11の基準座18が衝突荷重を受け持っている。
【0022】
図5(A)は図4に示す衝突物25がさらに押し込まれ、かつ、リブに接触するまで押し込まれた第3状態を示し、図5(B)は斜視図を示している。第3状態では、第2状態からさらに突入部24が連結部19に入り込み、取付足11の変形により二つのリブ15,16が衝突物25に接触することで、衝突荷重が緩和され、取付足11の変形が終了することになる。ここで、衝突荷重が取付足11を変形させることで筐体10の側面の割れや破壊が防止され、さらに、筐体10の補強用の二つのリブ15,16が衝撃荷重を受けることにより、筐体10の側面の割れや破壊を防止することが可能となる。なお、本実施形態では説明のために第1状態から第3状態に分けて示したが、衝突時において、ほぼ同時に状態変化が発生することもあり、上記の3つの状態に限定するものではない。また、図1〜図5において、図示しない筐体10の上カバーと筐体10とを固定する筐体固定ボルト孔22の受け部が補強部材となることから、筐体10の取付足11の近傍に適切に配置することにより、さらなる強度アップが可能となる。
【0023】
図6は本実施形態に係る別の筐体30の衝突状況を示している。上述した筐体30では、二つの補強用のリブの間に取付足11を配置したが、片側だけにリブ16を設けた場合、取付足11がもっぱら衝突物25からの衝突荷重を受け持つことになり、横方向の衝突荷重を伴って折れた取付足11に基準座18が押し込まれることになる。このような場合において、衝突物25から筐体30の縁部までの距離L2と、衝突物25からリブ16までの距離L3まで基準座18が取付足11に押し込まれると衝突物25と筐体30の複数箇所が接触することになり、筐体30の側面の割れや破壊を防止することが可能となる。
【0024】
以上、上述したように、本実施形態に係る取付足とリブとを有する筐体を用いることにより、締結ボルトと取付足が筐体側に移動しても筐体外壁を破壊することがなく、筐体内部を保護することが可能となる。なお、本実施形態では、基準座に半柱状の突入部を設けたが、これに限定するものではなく、強度を部分的に高めた突入部を形成するために、角部を有する三角柱状の突入部、角部を有するノッチと多角形状の突入部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0025】
10,30 筐体、11,100 取付足、12 締結ボルト挿通孔、13,108 切欠き部、14 側面リブ、15,16 リブ、18 基準座、19 連結部、21 高電圧基板、22 筐体固定ボルト孔、23 締結ボルト、24 突入部、25 衝突物、26 亀裂、101 締結ボルト、102 環状リブ、105 貫通穴、106 放射状リブ、107 挿通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取付けられる車両用筐体において、
車両衝突時に筐体に加わる荷重方向に対向するように筐体面から伸びる同じ高さの二つのリブと、
二つのリブの間に設けられ、かつ、取付足によって二つのリブより高い部位に設けられたボスと、
ボスの取付け部に設けられた破壊誘発部と、
を有し、
破壊誘発部は、二つのリブの高さより低い部位に設けられることを特徴とする車両用筐体。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用筐体において、
破壊誘発部は、切欠き又は貫通孔であることを特徴とする車両用筐体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用筐体において、
さらに破壊誘発部は、ボスの取付け部に割り込むようにして亀裂を発生させる突起を有することを特徴とする車両用筐体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用筐体において、
ボスは車両の筐体取付け部に立設した締結ボルトに挿通されていることを特徴とする車両用筐体。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用筐体において、
バッテリ電圧よりも高い電圧を取り扱う高電圧部品を内部に収容することを特徴とする車両用筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−201231(P2012−201231A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68043(P2011−68043)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】