車両用荷物吊下装置
【課題】車両用荷物吊下装置を構成する部品点数の削減、部品組付性の向上及び装置のコスト低減を図る。
【解決手段】荷物吊下装置は、荷物を掛けるフック部材(5)と、フック部材(5)を出没自在に収容する収容孔(6)を有する車両の内装部材(1)とによって構成され、フック部材(5)は外周面に螺旋溝(11,12)が形成されてなるねじ部(8)を備え、内装部材(1)は収容孔(6)の内周面に螺旋溝(11,12)が螺合する螺旋状の突条(15,16)を備え、さらに、フック部材(5)を突出端に位置付ける突出端位置決め手段と、フック部材(5)を収容端に位置付ける収容端位置決め手段とが設けられている。
【解決手段】荷物吊下装置は、荷物を掛けるフック部材(5)と、フック部材(5)を出没自在に収容する収容孔(6)を有する車両の内装部材(1)とによって構成され、フック部材(5)は外周面に螺旋溝(11,12)が形成されてなるねじ部(8)を備え、内装部材(1)は収容孔(6)の内周面に螺旋溝(11,12)が螺合する螺旋状の突条(15,16)を備え、さらに、フック部材(5)を突出端に位置付ける突出端位置決め手段と、フック部材(5)を収容端に位置付ける収容端位置決め手段とが設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室において手提げ袋などの荷物を吊り下げるための車両用荷物吊下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルやコンソールボックス、ドア内側のアームレスト、シートバック等の内装部材に、合成樹脂フィルム製の買い物袋、手提げ袋など、吊り掛け部を有する荷物を吊り下げるフックがあると、利便性が良い。
【0003】
特許文献1には、そのような要求に応える提案が記載されている。それは、インストルメントパネルに取り付けたシリンダケースにフック部を有するスライダを収容し、フック部をインストルメントパネル上面から出没させるようにしたものである。その出没のために、スライダにはハート型カムが設けられ、シリンダケースにはハート型カムが係合する係合部材と、スプリングとが設けられている。このものによれば、フック部を上から押すと、ハート型カムに係合部材が係合して該フック部が没入状態になり、そのフック部をさらに押し込むと、ハート型カムから係合部材が外れ、スプリングの働きによってフック部が突出状態になる。特許文献2にも、同様のフック出没機構を有する車両の荷物吊下装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、車体パネルに取り付けたハウジングの収容室にフックを収容し、該フックを収容室から出没させるようにした格納式小物掛けが記載されている。フックはハウジングに軸によって突出位置と没入位置とに回動するように設けられている。ハウジングには、ストッパと弾性を有するカムとが設けられ、フックにはカム及びストッパに係合するアームと、カムに係合する突出部とが設けられている。アームがストッパ及びカムに係合することによって、フックが没入状態に保持される。フックを強制的に突出方向に回動させると、アームとカムとの係合が外れ、今度は突出部がカムに係合することによって、フックが突出状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−132198号公報
【特許文献2】特開2005−132213号公報
【特許文献3】特開2003−325267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜3に記載された荷物吊下装置によれば、フック部材の出没機構を有するから、さらに荷物掛けの利便性が高まる。しかし、特許文献1,2に記載された荷物吊下装置の場合、上記出没機構を構成するために、シリンダケース、ハート型カム、係合部材、スプリングを設ける必要があって、部品点数が多くなっているとともに、構造も複雑になり、コスト高になる。特許文献3に記載された荷物吊下装置の場合も、ハウジングとフックの2部品を必要とし、そのハウジングを車体パネル等に組み付ける必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、車両用荷物吊下装置を構成する部品点数の削減、部品組付性の向上及び装置のコスト低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、車両内装部材にフック部材の収容孔を形成し、ねじ機構によってフック部材を出没させるようにした。
【0009】
すなわち、ここに提示する車両用荷物吊下装置は、車室内において荷物を掛けて吊り下げるためのフック部材と、該フック部材を出没自在に収容する収容孔を有する車両の内装部材とによって構成されていて、
上記フック部材は、外周面に螺旋溝が形成されてなるねじ部と、該ねじ部に続く荷物掛用のフック部とを備え、
上記内装部材は、上記フック部材がその正逆の回転によって出没するように、上記螺旋溝が螺合する螺旋状に設けられた突条を上記収容孔の内周面に備え、
さらに、上記フック部材及び内装部材の少なくとも一方の部材に設けられ、上記フック部材を上記収容孔から突出するように回転させたときに、他方の部材に係合することによって該フック部材を突出端に位置付ける突出端位置決め手段と、
上記フック部材及び内装部材の少なくとも一方の部材に設けられ、上記フック部材を上記収容孔に収容されるように回転させたときに、他方の部材に係合することによって該フック部材を収容端に位置付ける収容端位置決め手段とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様では、上記フック部材のねじ部には、リードがピッチの2倍になるように、上記螺旋溝として第1螺旋溝及び第2螺旋溝の2本が設けられ、
上記内装部材の収容孔内周面には、上記突条として、上記第1螺旋溝が螺合する第1突条と、上記第2螺旋溝が螺合する第2突条とが設けられ、
上記第1突条及び第2突条各々は、上記収容孔の軸方向投影視において、互いに重ならないように、両者合わせて収容孔内周面の周方向に360度未満の範囲で配置される。
【0011】
本発明の別の好ましい態様では、上記突出端位置決め手段は、上記フック部材及び上記内装部材の各々に設けられ、上記フック部材が上記突出端に位置付けられたときに該フック部材の突出する方への回転を阻止するように相対して係合する回転ストッパによって構成される。
【0012】
本発明のさらに好ましい態様では、上記突出端位置決め手段は、上記螺旋溝に設けられた溝の深さが浅い浅溝部と、上記突条に設けられた隆起部とによって構成され、
上記浅溝部と上記隆起部とは、上記フック部材が上記突出端に位置付けられたときに上記浅溝部が上記隆起部に乗り上げて上記フック部材の回転抵抗を増大させるように配置される。
【0013】
本発明のさらに好ましい態様では、上記フック部材は、上記ねじ部と上記フック部との中間より張り出したフランジを備え、
上記内装部材の収容孔は、該内装部材の表面に開口した大径孔部と、該大径孔部に続く小径孔部とを備え、該大径孔部と小径孔部との境界に段部が形成され、該小径孔部の内周面に上記突条が設けられており、
上記収容端位置決め手段は、上記フック部材のフランジと、上記内装部材の上記収容孔の段部とによって構成され、
上記フランジと上記段部とは、上記フック部材が上記収容端に位置付けられたときに、上記フランジが上記段部に係合し、上記フック部材が没入する方に回転することを阻止するように配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フック部材の収容孔を車両の内装部材に設けたから、車両用荷物吊下装置を構成するために内装部材に組み付けるべき部品はフック部材のみの一部品となり、その組付が簡単になるとともに、装置コスト低減に有利になる。また、フック部材を正逆に回転させることによって出没させることができるとともに、フック部材を位置決め手段によって突出端及び収容端各々に位置付けることができ、その出没操作が容易である。
【0015】
本発明の好ましい態様では、フック部材の出没機構にリードがピッチの2倍になる二条ねじを採用したから、フック部材を少ない回転数で大きく且つ安定した状態で出没させることができる。しかも、二条ねじを構成する内装部材側の第1突条及び第2突条は、収容孔の軸方向投影視において、互いに重ならないように、両者合わせて収容孔内周面の周方向に360度未満の範囲で配置されているから、金型による内装部材の成形が容易になる。
【0016】
すなわち、内装部材の収容孔内周面に螺旋状の突条を形成する方法として、外周面にねじが切られたコアピンを内設したキャビティ内に溶融樹脂を注入し、その樹脂が固化した後にコアピンを回転させながら抜き取ることが考えられる。しかし、その方法では、コアピンが必要になるとともに、コアピンの抜き取り工程を設ける必要があって、生産性が低くなる。
【0017】
これに対して、上記好ましい態様によれば、内装部材成形用の相対する金型に収容孔成形用の相対する円形凸部を設け、この両円形凸部の合わせ面の周縁部に2本の螺旋状キャビティを形成することによって、上記第1突条及び第2突条を成形することができる。この場合、第1突条用の螺旋キャビティと第2突条用の螺旋キャビティとは、互いの対応する端部同士が収容孔の軸方向に離れた構成になる。しかし、その端部同士は軸方向投影視において互いに重ならない配置になるから、この軸方向投影視において両端部間に生ずる隙間を利用して、相対する金型間のシール性を確保することができる。つまり、相対する金型の円形凸部同士を上記隙間部分において当該軸方向に対して傾斜した斜面で合わせることができ、それによって、上記シール性を確保することができる。
【0018】
本発明の別の好ましい態様によれば、フック部材及び内装部材の各々に、フック部材が突出端に位置付けられたときに、互いに相対して係合しフック部材が突出する方に回転することを阻止する回転ストッパを設けたから、フック部材を突出端に確実に位置付けることができ、フック部材の使い勝手が良い。
【0019】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、フック部材の螺旋溝に浅溝部を設け、内装部材の収容孔内周面の突条に隆起部を設け、フック部材が突出端に位置付けられたときに上記浅溝部が隆起部に乗り上げてフック部材の回転抵抗が増大するようにしたから、この浅溝部と隆起部との係合を利用してフック部材を突出端に位置付けることができるとともに、その係合によって、フック部材を突出端に保持することができる。つまり、フック部材のがたつきが防止されるとともに、フック部材が振動等によって回転して収容孔に没入していくことが避けられる。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、フック部材が収容端に位置付けられたときに、フック部材のフランジが内装部材の収容孔の段部に係合するようにしたから、フック部材を収容端に確実に位置付けることができ、使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両用荷物吊下装置を設けたインストルメントパネルの一部を示す斜視図である。
【図2】車両用荷物吊下装置の概略構成を示す一部断面にした斜視図である。
【図3】車両用荷物吊下装置を構成するフック部材及びインストルメントパネルの収容孔を示す一部断面にした図である。
【図4】インストルメントパネルの収容孔を示す断面図(図5のIV−IV線断面図)である。
【図5】インストルメントパネルの収容孔を示す平面図である。
【図6】フック部材を突出端に位置付けた車両用荷物吊下装置の断面図である。
【図7】フック部材の螺旋溝と収容孔の突条との螺合状態を示す断面図である。
【図8】螺旋溝の浅溝部が突条の隆起部に乗り上げて係合した状態を示す断面図である。
【図9】フック部材の螺旋溝中間点の浅溝部の部分を示す断面図である。
【図10】フック部材の底面図である。
【図11】フック部材の可撓部と螺旋溝との関係を示す斜視図である。
【図12】可撓部の変形例を示すフック部材のねじ部の底面図である。
【図13】フック部材を収容端に位置付けた車両用荷物吊下装置の断面図である。
【図14】フック部材を突出端と収容端との中間に位置付けた車両用荷物吊下装置の断面図である。
【図15】インストルメントパネル成形用金型の、収容孔を成形する部分の正面図である。
【図16】別の実施形態に係る車両用荷物吊下装置の断面図である。
【図17】別の実施形態に係る突条の配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
<車両用荷物吊下装置の設置場所>
図1において、1は自動車(車両)の内装部材としての合成樹脂製のインストルメントパネルであり、そのグローブボックス2の横に車室後方へ張り出した張出し部3が設けられている。この張出し部3の角部にフック部材5を有する車両用荷物吊下装置4が設けられている。すなわち、この荷物吊下装置4は、買い物袋等の吊り掛け部を有する荷物を吊り下げる合成樹脂製のフック部材5と、このフック部材5を出没自在に収容する収容孔6を有するインストルメントパネル1とによって構成されている。荷物吊下装置4の設置場所は、上記インストルメントパネル1に限られるものではなく、車両用シートのシートバック、ドアのアームレスト部、車室内壁など、適宜の場所とすることができる。また、フック部材5は、それら内装部材の表面から上方へ突出する構成に限らず、側方へ突出する構成とすることもできる。
【0024】
<荷物吊下装置4の概略構成>
図2に概略的に示すように、インストルメントパネル1は、下方(内側)に延びる筒状部7を有し、この筒状部7の筒孔がインストルメントパネル1の表面に開口した収容孔6を形成している。フック部材5は、ねじ部8と、該ねじ部8に続く荷物掛け用のフック部9とを備え、ねじ部8とフック部9との中間にねじ部8よりも大径になった中間フランジ10が形成されている。本実施形態のフック部9は、半円柱状の首部9aと、該首部9aに続くフランジ部9bとを備えてなり、首部9aに荷物の吊り掛け部を掛け、フランジ部9bにて吊り掛け部の脱落を阻止するようになっている。そして、ねじ部8の外周面に、二条ねじを構成する第1螺旋溝11及び第2螺旋溝12が形成されている。
【0025】
インストルメントパネル1の収容孔6は、表面に開口した大径孔部6aと、該大径孔部6aに続く小径孔部6bとを備え、該大径孔部6aと小径孔部6bとの境界に段部6cが形成されている。小径孔部6bの内周面には後述の突条が形成されているが、図2での図示は省略している。
【0026】
<フック部材5の出没機構>
図3に示すように、フック部材5のねじ部8の螺旋溝11,12は、二条ねじを構成するように、螺旋の始点(ねじ部8の先端側を始点とする。)が周方向に180度ずれていて、各々ねじ部8の外周面を一周半してフランジ10側の終点に至っている。
【0027】
一方、収容孔6の小径孔部6bの内周面には、フック部材5がその正逆の回転によって収容孔6から出没するように、上記第1螺旋溝11が螺合する螺旋状に延びた第1突条15と、上記第2螺旋溝12が螺合する螺旋状に延びた第2突条16とが形成されている。第1及び第2の突条15,16は、二条ねじを構成するように、螺旋の始点(インストルメントパネル1の表面側を始点とする。)が周方向に180度ずれていて、各々小径孔部6bの内周面を周方向に半周弱巡って終点に至っている。
【0028】
図4は、一方の突条15の周方向に半周弱の距離で設けられていることを示すが、この点は他方の突条16も同じである。
【0029】
そうして、突条15,16各々は、上述の如く、小径孔部6bの内周面に半周弱設けられているだけでなく、図5(インストルメントパネル1の収容孔6部分の平面図)に示すように、収容孔6の軸方向投影視において、互いに重ならないように配置されている。なお、突条15,16の一方を半周よりも長く延ばし、他方を半周よりも短くすることも可能であるが、その場合でも、両突条15,16合わせた周方向の距離は360度未満となるようにして、収容孔6の軸方向投影視において、両突条15,16が互いに重ならないようにすることが好ましい。その理由については後述する。
【0030】
<フック部材5の第1の突出端位置決め手段>
図3に戻って螺旋溝11,12及び突条15,16の形状について説明する。まず、螺旋溝11,12各々の溝断面形状は基本的には逆三角形であるが、始点及びこの始点から周方向に半周弱回転した中間部位には、溝の深さが浅くなった浅溝部11a,11b,12a,12bが形成されている。浅溝部11a,11b,12a,12bの両端部には溝深さが漸次深くなるようにテーパが付けられている。一方、突条15,16の断面形状は、基本的には螺旋溝11,12の溝形状に対応する台形であるが、始点及び終点には断面形状が三角山形になって隆起した隆起部15a,15b,16a,16bが形成されている。隆起部15a,15b,16a,16bの両端部には突条高さが漸次低くなるようにテーパが付けられている。
【0031】
上記浅溝部11a,11b,12a,12b及び隆起部15a,15b,16a,16bは、フック部材5を突出端に位置付ける第1の位置決め手段を構成している。
【0032】
すなわち、本実施形態では、フック部材5を回転させて収容孔6から突出させていき、図6に示すように、フック部材5の中間フランジ10の上面がインストルメントパネル1の上面に面一になったときを、フック部材5の突出端としている。そして、この突出端において、螺旋溝11,12各々の始点の浅溝部11a,12aが突条15,16各々の始点の隆起部15a,16aに乗り上げて係合するように、これら浅溝部11a,12a及び隆起部15a,16aが配置されている。
【0033】
さらに、螺旋溝11,12各々の中間点の浅溝部11b,12bは、始点の浅溝部11a,12aから周方向に半周弱進んだ位置にあり、突条15,16各々の終点の隆起部15b,16bも同じく始点の隆起部15a,16aから周方向に半周弱進んだ位置にある。従って、上記突出端においては、中間点の浅溝部11b,12bも終点の隆起部15b,16bに乗り上げて係合することになる。
【0034】
フック部材5が上記突出端以外の回転位置にあるときは、浅溝部11a,11b,12a,12bは突条15,16の隆起がない台形部分に隙間を存して相対し、或いは軽く接した状態にある。図7は第1螺旋溝11と第1突条15との関係を代表例として示し、浅溝部11aが台形部分15cに対向している。従って、螺旋溝11,12と突条15,16との間の摺動抵抗は小さい。
【0035】
これに対して、フック部材5が上記突出端に至ると、上述の如く浅溝部11a,11b,12a,12bが隆起部15a,15b,16a,16bに乗り上げて係合する。図8は第1螺旋溝11と第1突条15との関係を代表例として示し、浅溝部11aが隆起部15aに乗り上げている。この乗り上げ係合により、螺旋溝11,12と突条15,16との間の摺動抵抗が急激に増大し、フック部材5を回転させにくくなるため、フック部材5を突出端に位置付けることができる。
【0036】
また、上述の如く、螺旋溝11,12と突条15,16との間の摺動抵抗が大きくなることによって、フック部材5は、突出端に保持され、がたつきが防止されるとともに、振動等で回転して収容孔6に没入していくことが避けられる。
【0037】
次に上記螺旋溝11,12の中間点の浅溝部11b,12bに関連して、フック部材5のねじ部8に施された可撓構造について説明する。フック部材5のねじ部8は、中空の筒状になっており、その筒壁に切り込みを入れることによって、図3に示すように、中間点の浅溝部11b,12b各々を囲むコ字状のスリット23が設けられている。すなわち、コ字状スリット23は、浅溝部11b,12bの両側を螺旋溝11,12に沿って延びる縦切り込みと、この螺旋溝11,12を横切って両縦切り込みの一端同士を結ぶ横切り込みとによって構成されている。このコ字状スリット23の形成により、ねじ部8の浅溝部11b,12bの部分は内側へ撓むことができる。図9は代表例として浅溝部12bが内側に撓む状態を鎖線で示している。
【0038】
従って、フック部材5を上記突出端まで回転させると、浅溝部11b,12bが隆起部15b,16bに乗り上げて係合するが、そのとき、ねじ部8の浅溝部11b,12b部分が内側に一旦撓んで復帰するため、当該乗り上げ係合が円滑になる。
【0039】
<フック部材5の第2の突出端位置決め手段及び螺合案内手段>
次にフック部材5を突出端に位置付ける第2の位置決め手段としての回転ストッパ及び螺合案内手段について説明する。この回転ストッパは、図3に示すように、フック部材5のねじ部8の先端部に設けられた可撓部21,21の端面21a,21aと、インストルメントパネル1側の突条15,16の終点側の端面15d,16dとによって構成されている。本実施形態の場合、可撓部21は、フック部材5をインストルメントパネル1に組み付けるときの、螺旋溝11,12と突条15,16との螺合を案内する機能と、当該螺合後の回転ストッパ機能とを果たす。
【0040】
以下、具体的に説明する。可撓部21は、ねじ部8の筒壁内方へ撓むことができるように、該筒壁にL字状のスリット(切り込み)22を入れることによって形成されている。すなわち、L字状スリット22は、螺旋溝11,12の始点側の端において、ねじ部8の先端面からねじ部8の軸方向に切り込みを入れ、その切込み端からさらにフック部材5の周方向(但し、フック部材5を収容するときの回転方向A)に切り込みを入れてなる。さらに、可撓部21の外周面は、その周方向の中央が螺旋溝11,12の溝深さに匹敵する深さになるように、ねじ部8の外周円よりも螺旋溝11,12の溝深さだけ半径が小さい円の接線方向に延びる平坦面に形成されている。この場合、可撓部21の端面21aの外端縁はねじ部8の外周面位置まで出ている。
【0041】
上記構成により、フック部材5をインストルメントパネル1に組み付けるときは、図10(フック部材5の底面図)に示すように、可撓部21の中間部位を突条15,16の始点側の隆起部15a,16aに対応するように位置付けて、フック部材5のねじ部8を収容孔6に挿入していく。上記中間部位が凹になっているから、ねじ部8と隆起部15a,16aとの干渉を招くことなく、可撓部21を隆起部15a,16aの部位まで嵌め込むことができる。
【0042】
この嵌め込み後、フック部材5を収容孔6に収容する方向Aに回転させると、可撓部21が突条15,16の始点側の隆起部15a,16aとの接触によって、図10に鎖線で示すように内側に撓む。フック部材5をさらに回転させると、螺旋溝11,12の始点側の浅溝部11a,12aが突条15,16の隆起部15a,16aに乗り上げる。この乗り上げによって、当該回転の摺動抵抗が大きくなるが、さらにフック部材5を強制的に回転させると、螺旋溝11,12の浅溝部11a,12aが突条15,16の隆起部15a,16aを乗り越え、螺旋溝11,12が突条15,16に螺合した状態になる。
【0043】
そうして、ねじ部軸方向の切り込みによって形成された可撓部21の端面21aは、螺旋溝11,12にその始点側から臨む形になっている。図11は、可撓部21の端面21aが螺旋溝11にその始点側から臨んでいることを示している。このため、図6に示すように、フック部材5を突出端まで回転させると、螺旋溝12に螺合している突条16の終点側の端面16dに可撓部21の端面21aが相対して係合(当接)することになる。この係合によって、フック部材5はさらに突出するように回転することが阻止される。つまり、突条16の終点側の端面16dと可撓部21の端面21aとが、フック部材5の突出する方への回転を阻止する回転ストッパを構成している。
【0044】
もう一方の可撓部21の端面21a及び突条15の端面15dも、上記可撓部21の端面21a及び突条16の端面16dと同様の関係にあり、同様に回転ストッパを構成している。
【0045】
なお、可撓部21の外周面は、上述の如き平坦面に限るものではなく、図12上側に示すように、周方向における中央が周方向の両端よりも凹んだ円弧状凹面(その凹面の周方向中央は螺旋溝11,12の溝深さに匹敵する深さになっている)に形成してもよく、或いは、図12下側に示すように、ねじ部8の外周円よりも螺旋溝11,12の溝深さだけ半径が小さい円弧部21bと、該円弧部21bの両端より当該小半径円の接線方向に延びる平坦部21c,21cとよりなるように(円弧部21bは螺旋溝11,12の溝深さに匹敵する深さになっている)に形成してもよい。
【0046】
<フック部材5の収容端位置決め手段>
次にフック部材5を収容端に位置付ける位置決め手段について説明する。この位置決め手段は、フック部材5の中間フランジ10とインストルメントパネル1の収容孔6の段部6cとによって構成されている。すなわち、図13に示すように、本実施形態では、フック部材5の回転によって、そのフック部9のフランジ部9bの頂面がインストルメントパネル1の表面と面一になった状態がフック部材5の収容端である。フック部材5の中間フランジ10と収容孔6の段部6cとは、フック部材5が収容端になったときに、互いに係合(当接)するように配置されている。この係合によって、フック部材5は、さらに没入する方に回転することが阻止されて収容端に位置付けられる。
【0047】
<フック部材5の使用>
以下、先の説明と一部重複することになるが、フック部材5の使用について説明する。フック部材5を図13に示す収容状態から図6に示す突出状態にするには、フック部材5のフック部9と収容孔6の大径孔部6aとの隙間に指を入れてフック部9をつまみ、フック部材5を左回転させる。これにより、フック部材5を収容孔6から突出させていくことができる。フック部材5の出没機構に二条ねじを採用しているから、リードがピッチの2倍になり、フック部材5を少ない回転数で大きく且つ安定した状態で突出させることができる。図14はフック部材5を半回転させた状態を示し、1回転させると、フック部材5は図6に示す突出端になる。
【0048】
フック部材5を突出端まで回転させると、フック部材5の螺旋溝11,12の浅溝部11a,11b,12a,12bが収容孔6の突条15,16の隆起部15a,15b,16a,16bに乗り上げて係合する。この係合により、螺旋溝11,12と突条15,16との間の摺動抵抗が増大するから、使用者はフック部材5の回転に抵抗を覚えた時点で回転を止めると、フック部材5は突出端に位置付けられることになる。仮に、使用者がフック部材5を強制的に回転させようとしても、可撓部21の端面21aと突条15,16の終点側の端面15d,16dとが当たってフック部材5の回転が阻止されるため、フック部材5を突出端に確実に位置付けることができる。
【0049】
以上により、フック部材5のフック部9がインストルメントパネル1から突出した状態になり、このフック部9に荷物を掛けて吊すことができる。インストルメントパネル1が振動しても、上述の如く、浅溝部11a,11b,12a,12bの隆起部15a,15b,16a,16bへの乗上げ係合により、フック部材5がインストルメントパネル1に保持されているから、フック部材5のがたつきはなく、また、フック部材5が勝手に回転して収容孔6に没入していくことはない。
【0050】
フック部材5を収容するときは、これを右回転させる。これにより、フック部材5は収容孔6に没入していき、フック部材5の中間フランジ10が収容孔6の段部6cに当たることにより、フック部材5は収容端に位置付けられる。
【0051】
<インストルメントパネル1の成形上の利点>
上述の如く、二条ねじを構成する突条15,16を収容孔6の軸方向投影視において、互いに重ならないように配置したから、インストルメントパネル1の成形が容易になる。
【0052】
すなわち、図15にインストルメントパネル1を成形するための相対する金型として、上型31及び下型32を概略的に示す。インストルメントパネル1の収容孔6を有する筒状部7は、上型31に設けた円形凸部33と下型32に設けた凹部34とを嵌め合わせてキャビティを形成することによって成形することができる。そして、上型31の円形凸部33の先端部周縁と、下型32の凹部34の中央より隆起させた円形隆起部35の先端部周縁とに、第1突条成形部33a,35a及び第2突条成形部33b,35bを設け、それら成形部によって、第1突条15を成形する螺旋キャビティと第2突条16を成形する螺旋キャビティとを形成することになる。
【0053】
この場合、第1突条成形部33a,35aと第2突条成形部33b,35bとは、互いの対応する端部同士が収容孔の軸方向に離れた構成になる。しかし、この第1突条成形部33a,35aと第2突条成形部33b,35bとは、互いの端部同士が軸方向投影視において互いに重ならず、軸方向投影視においてその両端部間に隙間がある。つまり、周方向に離れている。よって、この隙間において、上型31の円形凸部33と下型32の円形隆起部35の各々に当該軸方向に対して傾斜した互いに当接する合わせ面33c,33d,35c,35dを形成することができる。そして、その合わせ面33c,33d,35c,35d同士は、上下の金型31,32の型合わせ方向に対して傾斜しているから、型合わせによって隙間なく接触させることができ、よって、シール性を確保することができる。
【0054】
換言すれば、二条ねじを構成する突条15,16を収容孔6の軸方向投影視において、互いに重ならないように配置したから、上下の金型31,32を確実に型合わせすることができ、バリを最小限に抑えてインストルメントパネル1を成形することができる。
【0055】
<他の実施形態>
図16に示す実施形態は、フック部材5のフック部9のみが先の実施形態と相違する。すなわち、この実施形態のフック部9も首部9aとフランジ部9bとを備えてなるが、首部9aはねじ部8と同外径で軸方向に延設されている。そして、フランジ部9bが形成された頂面は軸方向に凹んだ凹曲面に形成され、その中央より撮み9cが突出している。本実施形態の場合、フック部材5を収容孔6に収容した状態で、収容孔6とフック部9との間に隙間ができないため、収容孔6に異物が入ることを避けることができる。また、フック部材5に撮み9cが設けられているから、フック部材5の回転操作が容易になる。また、首部9aは、先の実施形態に比べて、短くなるが、太くなるから、荷物の吊下に安定感が得られる。
【0056】
図17は収容孔における突条の配置構成に関する別に実施形態を示す。すなわち、図17の実施形態は、第1突条が断続的に配置した2本の突条15A,15Bによって構成され、第2突条も断続的に配置した2本の突条16A,16Bによって構成されている点が、第1突条15及び第2突条16の各々を連続した一本構成とした先の実施形態と相違する。
【0057】
突条15Bは、当該螺旋上において突条15Aから1ピッチずらして配置され、突条16Bも、その螺旋上において突条16Aから1ピッチずらして配置されている。かかる配置構成にすることにより、図17に突条15A,15B,16A,16Bの軸方向投影図を併せて示すように、それら突条を軸方向投影視において互いに重ならないように配置することができる。
【0058】
また、図3等に示す先の実施形態では、第1及び第2の突条15,16は、二条ねじを構成するように、螺旋の始点(インストルメントパネル1の表面側を始点とする。)が周方向に180度ずれていて、各々小径孔部6bの内周面を周方向に半周弱巡って終点に至っているが、その場合でも、この半周弱の間において突条が断続的に配置されていてもよい。例えば、始点15a、16aを含む突条部分と、終点15b、16bを含む突条部分とを有し、その間に突条の存在しない部分がある場合であってもスムーズな操作ができる。
【0059】
なお、以上に説明した実施形態では、第1螺旋溝及び第2螺旋溝各々の始点を周方向に180度ずらし、第1突条及び第2突条各々の始点も同じく周方向に180度ずらしたが、それら始点をずらすことは必ずしも要さず、また、180度以外の適宜の角度でずらしてもよい。
【0060】
また、第1螺旋溝及び第2螺旋溝各々の始点、並びに第1突条及び第2突条各々の始点を周方向に例えば180度ずらす場合でも、軸方向におけるそれらの始点位置を同じにする(同じ高さにする)ことは必ずしも要しない。
【0061】
また、上記実施形態では二条ねじをフック部材の出没機構に採用したが、他の多条ねじとしてもよく、或いは一条ねじを採用してもよい。
【0062】
また、フック部材5の第1の突出位置決め手段は、2本の螺旋溝11,12及び2本の突条15,16の各々の始点及び終点に設けたが、2本のうちのいずれか一方の螺旋溝と突条とに設けて良いし、始点及び終点のいずれか一方のみに設けても良い。
また、螺旋溝11,12の溝断面形状は基本的には逆三角形であるが、台形であっても、U字形、長方形であっても良い。
【0063】
また、突条15,16の断面形状は、基本的には螺旋溝11,12の溝形状(逆三角形)に対応する台形であるが、三角形、U字形、長方形であっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 インストルメントパネル(内装部材の一例)
5 フック部材
6 収容孔
6a 大径孔部
6b 小径孔部
6c 段部(収容端位置決め手段を構成する)
8 ねじ部
9 フック部
10 フランジ(収容端位置決め手段を構成する)
11 第1螺旋溝
11a,11b 浅溝部
12 第2螺旋溝
12a,12b 浅溝部
15 第1突条
15a,15b 隆起部
16 第2突条
16a,16b 隆起部
15d,16d 回転ストッパを構成する突条端面
21a 回転ストッパを構成する可撓部端面
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室において手提げ袋などの荷物を吊り下げるための車両用荷物吊下装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のインストルメントパネルやコンソールボックス、ドア内側のアームレスト、シートバック等の内装部材に、合成樹脂フィルム製の買い物袋、手提げ袋など、吊り掛け部を有する荷物を吊り下げるフックがあると、利便性が良い。
【0003】
特許文献1には、そのような要求に応える提案が記載されている。それは、インストルメントパネルに取り付けたシリンダケースにフック部を有するスライダを収容し、フック部をインストルメントパネル上面から出没させるようにしたものである。その出没のために、スライダにはハート型カムが設けられ、シリンダケースにはハート型カムが係合する係合部材と、スプリングとが設けられている。このものによれば、フック部を上から押すと、ハート型カムに係合部材が係合して該フック部が没入状態になり、そのフック部をさらに押し込むと、ハート型カムから係合部材が外れ、スプリングの働きによってフック部が突出状態になる。特許文献2にも、同様のフック出没機構を有する車両の荷物吊下装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、車体パネルに取り付けたハウジングの収容室にフックを収容し、該フックを収容室から出没させるようにした格納式小物掛けが記載されている。フックはハウジングに軸によって突出位置と没入位置とに回動するように設けられている。ハウジングには、ストッパと弾性を有するカムとが設けられ、フックにはカム及びストッパに係合するアームと、カムに係合する突出部とが設けられている。アームがストッパ及びカムに係合することによって、フックが没入状態に保持される。フックを強制的に突出方向に回動させると、アームとカムとの係合が外れ、今度は突出部がカムに係合することによって、フックが突出状態に保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−132198号公報
【特許文献2】特開2005−132213号公報
【特許文献3】特開2003−325267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜3に記載された荷物吊下装置によれば、フック部材の出没機構を有するから、さらに荷物掛けの利便性が高まる。しかし、特許文献1,2に記載された荷物吊下装置の場合、上記出没機構を構成するために、シリンダケース、ハート型カム、係合部材、スプリングを設ける必要があって、部品点数が多くなっているとともに、構造も複雑になり、コスト高になる。特許文献3に記載された荷物吊下装置の場合も、ハウジングとフックの2部品を必要とし、そのハウジングを車体パネル等に組み付ける必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、車両用荷物吊下装置を構成する部品点数の削減、部品組付性の向上及び装置のコスト低減を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、車両内装部材にフック部材の収容孔を形成し、ねじ機構によってフック部材を出没させるようにした。
【0009】
すなわち、ここに提示する車両用荷物吊下装置は、車室内において荷物を掛けて吊り下げるためのフック部材と、該フック部材を出没自在に収容する収容孔を有する車両の内装部材とによって構成されていて、
上記フック部材は、外周面に螺旋溝が形成されてなるねじ部と、該ねじ部に続く荷物掛用のフック部とを備え、
上記内装部材は、上記フック部材がその正逆の回転によって出没するように、上記螺旋溝が螺合する螺旋状に設けられた突条を上記収容孔の内周面に備え、
さらに、上記フック部材及び内装部材の少なくとも一方の部材に設けられ、上記フック部材を上記収容孔から突出するように回転させたときに、他方の部材に係合することによって該フック部材を突出端に位置付ける突出端位置決め手段と、
上記フック部材及び内装部材の少なくとも一方の部材に設けられ、上記フック部材を上記収容孔に収容されるように回転させたときに、他方の部材に係合することによって該フック部材を収容端に位置付ける収容端位置決め手段とが設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の好ましい態様では、上記フック部材のねじ部には、リードがピッチの2倍になるように、上記螺旋溝として第1螺旋溝及び第2螺旋溝の2本が設けられ、
上記内装部材の収容孔内周面には、上記突条として、上記第1螺旋溝が螺合する第1突条と、上記第2螺旋溝が螺合する第2突条とが設けられ、
上記第1突条及び第2突条各々は、上記収容孔の軸方向投影視において、互いに重ならないように、両者合わせて収容孔内周面の周方向に360度未満の範囲で配置される。
【0011】
本発明の別の好ましい態様では、上記突出端位置決め手段は、上記フック部材及び上記内装部材の各々に設けられ、上記フック部材が上記突出端に位置付けられたときに該フック部材の突出する方への回転を阻止するように相対して係合する回転ストッパによって構成される。
【0012】
本発明のさらに好ましい態様では、上記突出端位置決め手段は、上記螺旋溝に設けられた溝の深さが浅い浅溝部と、上記突条に設けられた隆起部とによって構成され、
上記浅溝部と上記隆起部とは、上記フック部材が上記突出端に位置付けられたときに上記浅溝部が上記隆起部に乗り上げて上記フック部材の回転抵抗を増大させるように配置される。
【0013】
本発明のさらに好ましい態様では、上記フック部材は、上記ねじ部と上記フック部との中間より張り出したフランジを備え、
上記内装部材の収容孔は、該内装部材の表面に開口した大径孔部と、該大径孔部に続く小径孔部とを備え、該大径孔部と小径孔部との境界に段部が形成され、該小径孔部の内周面に上記突条が設けられており、
上記収容端位置決め手段は、上記フック部材のフランジと、上記内装部材の上記収容孔の段部とによって構成され、
上記フランジと上記段部とは、上記フック部材が上記収容端に位置付けられたときに、上記フランジが上記段部に係合し、上記フック部材が没入する方に回転することを阻止するように配置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フック部材の収容孔を車両の内装部材に設けたから、車両用荷物吊下装置を構成するために内装部材に組み付けるべき部品はフック部材のみの一部品となり、その組付が簡単になるとともに、装置コスト低減に有利になる。また、フック部材を正逆に回転させることによって出没させることができるとともに、フック部材を位置決め手段によって突出端及び収容端各々に位置付けることができ、その出没操作が容易である。
【0015】
本発明の好ましい態様では、フック部材の出没機構にリードがピッチの2倍になる二条ねじを採用したから、フック部材を少ない回転数で大きく且つ安定した状態で出没させることができる。しかも、二条ねじを構成する内装部材側の第1突条及び第2突条は、収容孔の軸方向投影視において、互いに重ならないように、両者合わせて収容孔内周面の周方向に360度未満の範囲で配置されているから、金型による内装部材の成形が容易になる。
【0016】
すなわち、内装部材の収容孔内周面に螺旋状の突条を形成する方法として、外周面にねじが切られたコアピンを内設したキャビティ内に溶融樹脂を注入し、その樹脂が固化した後にコアピンを回転させながら抜き取ることが考えられる。しかし、その方法では、コアピンが必要になるとともに、コアピンの抜き取り工程を設ける必要があって、生産性が低くなる。
【0017】
これに対して、上記好ましい態様によれば、内装部材成形用の相対する金型に収容孔成形用の相対する円形凸部を設け、この両円形凸部の合わせ面の周縁部に2本の螺旋状キャビティを形成することによって、上記第1突条及び第2突条を成形することができる。この場合、第1突条用の螺旋キャビティと第2突条用の螺旋キャビティとは、互いの対応する端部同士が収容孔の軸方向に離れた構成になる。しかし、その端部同士は軸方向投影視において互いに重ならない配置になるから、この軸方向投影視において両端部間に生ずる隙間を利用して、相対する金型間のシール性を確保することができる。つまり、相対する金型の円形凸部同士を上記隙間部分において当該軸方向に対して傾斜した斜面で合わせることができ、それによって、上記シール性を確保することができる。
【0018】
本発明の別の好ましい態様によれば、フック部材及び内装部材の各々に、フック部材が突出端に位置付けられたときに、互いに相対して係合しフック部材が突出する方に回転することを阻止する回転ストッパを設けたから、フック部材を突出端に確実に位置付けることができ、フック部材の使い勝手が良い。
【0019】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、フック部材の螺旋溝に浅溝部を設け、内装部材の収容孔内周面の突条に隆起部を設け、フック部材が突出端に位置付けられたときに上記浅溝部が隆起部に乗り上げてフック部材の回転抵抗が増大するようにしたから、この浅溝部と隆起部との係合を利用してフック部材を突出端に位置付けることができるとともに、その係合によって、フック部材を突出端に保持することができる。つまり、フック部材のがたつきが防止されるとともに、フック部材が振動等によって回転して収容孔に没入していくことが避けられる。
【0020】
本発明のさらに別の好ましい態様によれば、フック部材が収容端に位置付けられたときに、フック部材のフランジが内装部材の収容孔の段部に係合するようにしたから、フック部材を収容端に確実に位置付けることができ、使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】車両用荷物吊下装置を設けたインストルメントパネルの一部を示す斜視図である。
【図2】車両用荷物吊下装置の概略構成を示す一部断面にした斜視図である。
【図3】車両用荷物吊下装置を構成するフック部材及びインストルメントパネルの収容孔を示す一部断面にした図である。
【図4】インストルメントパネルの収容孔を示す断面図(図5のIV−IV線断面図)である。
【図5】インストルメントパネルの収容孔を示す平面図である。
【図6】フック部材を突出端に位置付けた車両用荷物吊下装置の断面図である。
【図7】フック部材の螺旋溝と収容孔の突条との螺合状態を示す断面図である。
【図8】螺旋溝の浅溝部が突条の隆起部に乗り上げて係合した状態を示す断面図である。
【図9】フック部材の螺旋溝中間点の浅溝部の部分を示す断面図である。
【図10】フック部材の底面図である。
【図11】フック部材の可撓部と螺旋溝との関係を示す斜視図である。
【図12】可撓部の変形例を示すフック部材のねじ部の底面図である。
【図13】フック部材を収容端に位置付けた車両用荷物吊下装置の断面図である。
【図14】フック部材を突出端と収容端との中間に位置付けた車両用荷物吊下装置の断面図である。
【図15】インストルメントパネル成形用金型の、収容孔を成形する部分の正面図である。
【図16】別の実施形態に係る車両用荷物吊下装置の断面図である。
【図17】別の実施形態に係る突条の配置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
<車両用荷物吊下装置の設置場所>
図1において、1は自動車(車両)の内装部材としての合成樹脂製のインストルメントパネルであり、そのグローブボックス2の横に車室後方へ張り出した張出し部3が設けられている。この張出し部3の角部にフック部材5を有する車両用荷物吊下装置4が設けられている。すなわち、この荷物吊下装置4は、買い物袋等の吊り掛け部を有する荷物を吊り下げる合成樹脂製のフック部材5と、このフック部材5を出没自在に収容する収容孔6を有するインストルメントパネル1とによって構成されている。荷物吊下装置4の設置場所は、上記インストルメントパネル1に限られるものではなく、車両用シートのシートバック、ドアのアームレスト部、車室内壁など、適宜の場所とすることができる。また、フック部材5は、それら内装部材の表面から上方へ突出する構成に限らず、側方へ突出する構成とすることもできる。
【0024】
<荷物吊下装置4の概略構成>
図2に概略的に示すように、インストルメントパネル1は、下方(内側)に延びる筒状部7を有し、この筒状部7の筒孔がインストルメントパネル1の表面に開口した収容孔6を形成している。フック部材5は、ねじ部8と、該ねじ部8に続く荷物掛け用のフック部9とを備え、ねじ部8とフック部9との中間にねじ部8よりも大径になった中間フランジ10が形成されている。本実施形態のフック部9は、半円柱状の首部9aと、該首部9aに続くフランジ部9bとを備えてなり、首部9aに荷物の吊り掛け部を掛け、フランジ部9bにて吊り掛け部の脱落を阻止するようになっている。そして、ねじ部8の外周面に、二条ねじを構成する第1螺旋溝11及び第2螺旋溝12が形成されている。
【0025】
インストルメントパネル1の収容孔6は、表面に開口した大径孔部6aと、該大径孔部6aに続く小径孔部6bとを備え、該大径孔部6aと小径孔部6bとの境界に段部6cが形成されている。小径孔部6bの内周面には後述の突条が形成されているが、図2での図示は省略している。
【0026】
<フック部材5の出没機構>
図3に示すように、フック部材5のねじ部8の螺旋溝11,12は、二条ねじを構成するように、螺旋の始点(ねじ部8の先端側を始点とする。)が周方向に180度ずれていて、各々ねじ部8の外周面を一周半してフランジ10側の終点に至っている。
【0027】
一方、収容孔6の小径孔部6bの内周面には、フック部材5がその正逆の回転によって収容孔6から出没するように、上記第1螺旋溝11が螺合する螺旋状に延びた第1突条15と、上記第2螺旋溝12が螺合する螺旋状に延びた第2突条16とが形成されている。第1及び第2の突条15,16は、二条ねじを構成するように、螺旋の始点(インストルメントパネル1の表面側を始点とする。)が周方向に180度ずれていて、各々小径孔部6bの内周面を周方向に半周弱巡って終点に至っている。
【0028】
図4は、一方の突条15の周方向に半周弱の距離で設けられていることを示すが、この点は他方の突条16も同じである。
【0029】
そうして、突条15,16各々は、上述の如く、小径孔部6bの内周面に半周弱設けられているだけでなく、図5(インストルメントパネル1の収容孔6部分の平面図)に示すように、収容孔6の軸方向投影視において、互いに重ならないように配置されている。なお、突条15,16の一方を半周よりも長く延ばし、他方を半周よりも短くすることも可能であるが、その場合でも、両突条15,16合わせた周方向の距離は360度未満となるようにして、収容孔6の軸方向投影視において、両突条15,16が互いに重ならないようにすることが好ましい。その理由については後述する。
【0030】
<フック部材5の第1の突出端位置決め手段>
図3に戻って螺旋溝11,12及び突条15,16の形状について説明する。まず、螺旋溝11,12各々の溝断面形状は基本的には逆三角形であるが、始点及びこの始点から周方向に半周弱回転した中間部位には、溝の深さが浅くなった浅溝部11a,11b,12a,12bが形成されている。浅溝部11a,11b,12a,12bの両端部には溝深さが漸次深くなるようにテーパが付けられている。一方、突条15,16の断面形状は、基本的には螺旋溝11,12の溝形状に対応する台形であるが、始点及び終点には断面形状が三角山形になって隆起した隆起部15a,15b,16a,16bが形成されている。隆起部15a,15b,16a,16bの両端部には突条高さが漸次低くなるようにテーパが付けられている。
【0031】
上記浅溝部11a,11b,12a,12b及び隆起部15a,15b,16a,16bは、フック部材5を突出端に位置付ける第1の位置決め手段を構成している。
【0032】
すなわち、本実施形態では、フック部材5を回転させて収容孔6から突出させていき、図6に示すように、フック部材5の中間フランジ10の上面がインストルメントパネル1の上面に面一になったときを、フック部材5の突出端としている。そして、この突出端において、螺旋溝11,12各々の始点の浅溝部11a,12aが突条15,16各々の始点の隆起部15a,16aに乗り上げて係合するように、これら浅溝部11a,12a及び隆起部15a,16aが配置されている。
【0033】
さらに、螺旋溝11,12各々の中間点の浅溝部11b,12bは、始点の浅溝部11a,12aから周方向に半周弱進んだ位置にあり、突条15,16各々の終点の隆起部15b,16bも同じく始点の隆起部15a,16aから周方向に半周弱進んだ位置にある。従って、上記突出端においては、中間点の浅溝部11b,12bも終点の隆起部15b,16bに乗り上げて係合することになる。
【0034】
フック部材5が上記突出端以外の回転位置にあるときは、浅溝部11a,11b,12a,12bは突条15,16の隆起がない台形部分に隙間を存して相対し、或いは軽く接した状態にある。図7は第1螺旋溝11と第1突条15との関係を代表例として示し、浅溝部11aが台形部分15cに対向している。従って、螺旋溝11,12と突条15,16との間の摺動抵抗は小さい。
【0035】
これに対して、フック部材5が上記突出端に至ると、上述の如く浅溝部11a,11b,12a,12bが隆起部15a,15b,16a,16bに乗り上げて係合する。図8は第1螺旋溝11と第1突条15との関係を代表例として示し、浅溝部11aが隆起部15aに乗り上げている。この乗り上げ係合により、螺旋溝11,12と突条15,16との間の摺動抵抗が急激に増大し、フック部材5を回転させにくくなるため、フック部材5を突出端に位置付けることができる。
【0036】
また、上述の如く、螺旋溝11,12と突条15,16との間の摺動抵抗が大きくなることによって、フック部材5は、突出端に保持され、がたつきが防止されるとともに、振動等で回転して収容孔6に没入していくことが避けられる。
【0037】
次に上記螺旋溝11,12の中間点の浅溝部11b,12bに関連して、フック部材5のねじ部8に施された可撓構造について説明する。フック部材5のねじ部8は、中空の筒状になっており、その筒壁に切り込みを入れることによって、図3に示すように、中間点の浅溝部11b,12b各々を囲むコ字状のスリット23が設けられている。すなわち、コ字状スリット23は、浅溝部11b,12bの両側を螺旋溝11,12に沿って延びる縦切り込みと、この螺旋溝11,12を横切って両縦切り込みの一端同士を結ぶ横切り込みとによって構成されている。このコ字状スリット23の形成により、ねじ部8の浅溝部11b,12bの部分は内側へ撓むことができる。図9は代表例として浅溝部12bが内側に撓む状態を鎖線で示している。
【0038】
従って、フック部材5を上記突出端まで回転させると、浅溝部11b,12bが隆起部15b,16bに乗り上げて係合するが、そのとき、ねじ部8の浅溝部11b,12b部分が内側に一旦撓んで復帰するため、当該乗り上げ係合が円滑になる。
【0039】
<フック部材5の第2の突出端位置決め手段及び螺合案内手段>
次にフック部材5を突出端に位置付ける第2の位置決め手段としての回転ストッパ及び螺合案内手段について説明する。この回転ストッパは、図3に示すように、フック部材5のねじ部8の先端部に設けられた可撓部21,21の端面21a,21aと、インストルメントパネル1側の突条15,16の終点側の端面15d,16dとによって構成されている。本実施形態の場合、可撓部21は、フック部材5をインストルメントパネル1に組み付けるときの、螺旋溝11,12と突条15,16との螺合を案内する機能と、当該螺合後の回転ストッパ機能とを果たす。
【0040】
以下、具体的に説明する。可撓部21は、ねじ部8の筒壁内方へ撓むことができるように、該筒壁にL字状のスリット(切り込み)22を入れることによって形成されている。すなわち、L字状スリット22は、螺旋溝11,12の始点側の端において、ねじ部8の先端面からねじ部8の軸方向に切り込みを入れ、その切込み端からさらにフック部材5の周方向(但し、フック部材5を収容するときの回転方向A)に切り込みを入れてなる。さらに、可撓部21の外周面は、その周方向の中央が螺旋溝11,12の溝深さに匹敵する深さになるように、ねじ部8の外周円よりも螺旋溝11,12の溝深さだけ半径が小さい円の接線方向に延びる平坦面に形成されている。この場合、可撓部21の端面21aの外端縁はねじ部8の外周面位置まで出ている。
【0041】
上記構成により、フック部材5をインストルメントパネル1に組み付けるときは、図10(フック部材5の底面図)に示すように、可撓部21の中間部位を突条15,16の始点側の隆起部15a,16aに対応するように位置付けて、フック部材5のねじ部8を収容孔6に挿入していく。上記中間部位が凹になっているから、ねじ部8と隆起部15a,16aとの干渉を招くことなく、可撓部21を隆起部15a,16aの部位まで嵌め込むことができる。
【0042】
この嵌め込み後、フック部材5を収容孔6に収容する方向Aに回転させると、可撓部21が突条15,16の始点側の隆起部15a,16aとの接触によって、図10に鎖線で示すように内側に撓む。フック部材5をさらに回転させると、螺旋溝11,12の始点側の浅溝部11a,12aが突条15,16の隆起部15a,16aに乗り上げる。この乗り上げによって、当該回転の摺動抵抗が大きくなるが、さらにフック部材5を強制的に回転させると、螺旋溝11,12の浅溝部11a,12aが突条15,16の隆起部15a,16aを乗り越え、螺旋溝11,12が突条15,16に螺合した状態になる。
【0043】
そうして、ねじ部軸方向の切り込みによって形成された可撓部21の端面21aは、螺旋溝11,12にその始点側から臨む形になっている。図11は、可撓部21の端面21aが螺旋溝11にその始点側から臨んでいることを示している。このため、図6に示すように、フック部材5を突出端まで回転させると、螺旋溝12に螺合している突条16の終点側の端面16dに可撓部21の端面21aが相対して係合(当接)することになる。この係合によって、フック部材5はさらに突出するように回転することが阻止される。つまり、突条16の終点側の端面16dと可撓部21の端面21aとが、フック部材5の突出する方への回転を阻止する回転ストッパを構成している。
【0044】
もう一方の可撓部21の端面21a及び突条15の端面15dも、上記可撓部21の端面21a及び突条16の端面16dと同様の関係にあり、同様に回転ストッパを構成している。
【0045】
なお、可撓部21の外周面は、上述の如き平坦面に限るものではなく、図12上側に示すように、周方向における中央が周方向の両端よりも凹んだ円弧状凹面(その凹面の周方向中央は螺旋溝11,12の溝深さに匹敵する深さになっている)に形成してもよく、或いは、図12下側に示すように、ねじ部8の外周円よりも螺旋溝11,12の溝深さだけ半径が小さい円弧部21bと、該円弧部21bの両端より当該小半径円の接線方向に延びる平坦部21c,21cとよりなるように(円弧部21bは螺旋溝11,12の溝深さに匹敵する深さになっている)に形成してもよい。
【0046】
<フック部材5の収容端位置決め手段>
次にフック部材5を収容端に位置付ける位置決め手段について説明する。この位置決め手段は、フック部材5の中間フランジ10とインストルメントパネル1の収容孔6の段部6cとによって構成されている。すなわち、図13に示すように、本実施形態では、フック部材5の回転によって、そのフック部9のフランジ部9bの頂面がインストルメントパネル1の表面と面一になった状態がフック部材5の収容端である。フック部材5の中間フランジ10と収容孔6の段部6cとは、フック部材5が収容端になったときに、互いに係合(当接)するように配置されている。この係合によって、フック部材5は、さらに没入する方に回転することが阻止されて収容端に位置付けられる。
【0047】
<フック部材5の使用>
以下、先の説明と一部重複することになるが、フック部材5の使用について説明する。フック部材5を図13に示す収容状態から図6に示す突出状態にするには、フック部材5のフック部9と収容孔6の大径孔部6aとの隙間に指を入れてフック部9をつまみ、フック部材5を左回転させる。これにより、フック部材5を収容孔6から突出させていくことができる。フック部材5の出没機構に二条ねじを採用しているから、リードがピッチの2倍になり、フック部材5を少ない回転数で大きく且つ安定した状態で突出させることができる。図14はフック部材5を半回転させた状態を示し、1回転させると、フック部材5は図6に示す突出端になる。
【0048】
フック部材5を突出端まで回転させると、フック部材5の螺旋溝11,12の浅溝部11a,11b,12a,12bが収容孔6の突条15,16の隆起部15a,15b,16a,16bに乗り上げて係合する。この係合により、螺旋溝11,12と突条15,16との間の摺動抵抗が増大するから、使用者はフック部材5の回転に抵抗を覚えた時点で回転を止めると、フック部材5は突出端に位置付けられることになる。仮に、使用者がフック部材5を強制的に回転させようとしても、可撓部21の端面21aと突条15,16の終点側の端面15d,16dとが当たってフック部材5の回転が阻止されるため、フック部材5を突出端に確実に位置付けることができる。
【0049】
以上により、フック部材5のフック部9がインストルメントパネル1から突出した状態になり、このフック部9に荷物を掛けて吊すことができる。インストルメントパネル1が振動しても、上述の如く、浅溝部11a,11b,12a,12bの隆起部15a,15b,16a,16bへの乗上げ係合により、フック部材5がインストルメントパネル1に保持されているから、フック部材5のがたつきはなく、また、フック部材5が勝手に回転して収容孔6に没入していくことはない。
【0050】
フック部材5を収容するときは、これを右回転させる。これにより、フック部材5は収容孔6に没入していき、フック部材5の中間フランジ10が収容孔6の段部6cに当たることにより、フック部材5は収容端に位置付けられる。
【0051】
<インストルメントパネル1の成形上の利点>
上述の如く、二条ねじを構成する突条15,16を収容孔6の軸方向投影視において、互いに重ならないように配置したから、インストルメントパネル1の成形が容易になる。
【0052】
すなわち、図15にインストルメントパネル1を成形するための相対する金型として、上型31及び下型32を概略的に示す。インストルメントパネル1の収容孔6を有する筒状部7は、上型31に設けた円形凸部33と下型32に設けた凹部34とを嵌め合わせてキャビティを形成することによって成形することができる。そして、上型31の円形凸部33の先端部周縁と、下型32の凹部34の中央より隆起させた円形隆起部35の先端部周縁とに、第1突条成形部33a,35a及び第2突条成形部33b,35bを設け、それら成形部によって、第1突条15を成形する螺旋キャビティと第2突条16を成形する螺旋キャビティとを形成することになる。
【0053】
この場合、第1突条成形部33a,35aと第2突条成形部33b,35bとは、互いの対応する端部同士が収容孔の軸方向に離れた構成になる。しかし、この第1突条成形部33a,35aと第2突条成形部33b,35bとは、互いの端部同士が軸方向投影視において互いに重ならず、軸方向投影視においてその両端部間に隙間がある。つまり、周方向に離れている。よって、この隙間において、上型31の円形凸部33と下型32の円形隆起部35の各々に当該軸方向に対して傾斜した互いに当接する合わせ面33c,33d,35c,35dを形成することができる。そして、その合わせ面33c,33d,35c,35d同士は、上下の金型31,32の型合わせ方向に対して傾斜しているから、型合わせによって隙間なく接触させることができ、よって、シール性を確保することができる。
【0054】
換言すれば、二条ねじを構成する突条15,16を収容孔6の軸方向投影視において、互いに重ならないように配置したから、上下の金型31,32を確実に型合わせすることができ、バリを最小限に抑えてインストルメントパネル1を成形することができる。
【0055】
<他の実施形態>
図16に示す実施形態は、フック部材5のフック部9のみが先の実施形態と相違する。すなわち、この実施形態のフック部9も首部9aとフランジ部9bとを備えてなるが、首部9aはねじ部8と同外径で軸方向に延設されている。そして、フランジ部9bが形成された頂面は軸方向に凹んだ凹曲面に形成され、その中央より撮み9cが突出している。本実施形態の場合、フック部材5を収容孔6に収容した状態で、収容孔6とフック部9との間に隙間ができないため、収容孔6に異物が入ることを避けることができる。また、フック部材5に撮み9cが設けられているから、フック部材5の回転操作が容易になる。また、首部9aは、先の実施形態に比べて、短くなるが、太くなるから、荷物の吊下に安定感が得られる。
【0056】
図17は収容孔における突条の配置構成に関する別に実施形態を示す。すなわち、図17の実施形態は、第1突条が断続的に配置した2本の突条15A,15Bによって構成され、第2突条も断続的に配置した2本の突条16A,16Bによって構成されている点が、第1突条15及び第2突条16の各々を連続した一本構成とした先の実施形態と相違する。
【0057】
突条15Bは、当該螺旋上において突条15Aから1ピッチずらして配置され、突条16Bも、その螺旋上において突条16Aから1ピッチずらして配置されている。かかる配置構成にすることにより、図17に突条15A,15B,16A,16Bの軸方向投影図を併せて示すように、それら突条を軸方向投影視において互いに重ならないように配置することができる。
【0058】
また、図3等に示す先の実施形態では、第1及び第2の突条15,16は、二条ねじを構成するように、螺旋の始点(インストルメントパネル1の表面側を始点とする。)が周方向に180度ずれていて、各々小径孔部6bの内周面を周方向に半周弱巡って終点に至っているが、その場合でも、この半周弱の間において突条が断続的に配置されていてもよい。例えば、始点15a、16aを含む突条部分と、終点15b、16bを含む突条部分とを有し、その間に突条の存在しない部分がある場合であってもスムーズな操作ができる。
【0059】
なお、以上に説明した実施形態では、第1螺旋溝及び第2螺旋溝各々の始点を周方向に180度ずらし、第1突条及び第2突条各々の始点も同じく周方向に180度ずらしたが、それら始点をずらすことは必ずしも要さず、また、180度以外の適宜の角度でずらしてもよい。
【0060】
また、第1螺旋溝及び第2螺旋溝各々の始点、並びに第1突条及び第2突条各々の始点を周方向に例えば180度ずらす場合でも、軸方向におけるそれらの始点位置を同じにする(同じ高さにする)ことは必ずしも要しない。
【0061】
また、上記実施形態では二条ねじをフック部材の出没機構に採用したが、他の多条ねじとしてもよく、或いは一条ねじを採用してもよい。
【0062】
また、フック部材5の第1の突出位置決め手段は、2本の螺旋溝11,12及び2本の突条15,16の各々の始点及び終点に設けたが、2本のうちのいずれか一方の螺旋溝と突条とに設けて良いし、始点及び終点のいずれか一方のみに設けても良い。
また、螺旋溝11,12の溝断面形状は基本的には逆三角形であるが、台形であっても、U字形、長方形であっても良い。
【0063】
また、突条15,16の断面形状は、基本的には螺旋溝11,12の溝形状(逆三角形)に対応する台形であるが、三角形、U字形、長方形であっても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 インストルメントパネル(内装部材の一例)
5 フック部材
6 収容孔
6a 大径孔部
6b 小径孔部
6c 段部(収容端位置決め手段を構成する)
8 ねじ部
9 フック部
10 フランジ(収容端位置決め手段を構成する)
11 第1螺旋溝
11a,11b 浅溝部
12 第2螺旋溝
12a,12b 浅溝部
15 第1突条
15a,15b 隆起部
16 第2突条
16a,16b 隆起部
15d,16d 回転ストッパを構成する突条端面
21a 回転ストッパを構成する可撓部端面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内において荷物を掛けて吊り下げるためのフック部材(5)と、該フック部材(5)を出没自在に収容する収容孔(6)を有する車両の内装部材(1)とによって構成された車両用荷物吊下装置であって、
上記フック部材(5)は、外周面に螺旋溝(11,12)が形成されてなるねじ部(8)と、該ねじ部(8)に続く荷物掛用のフック部(9)とを備え、
上記内装部材(1)は、上記フック部材(5)がその正逆の回転によって出没するように、上記螺旋溝(11,12)が螺合する螺旋状に設けられた突条(15,16)を上記収容孔(6)の内周面に備え、
さらに、上記フック部材(5)及び内装部材(1)の少なくとも一方の部材に設けられ、上記フック部材(5)を上記収容孔(6)から突出するように回転させたときに、他方の部材に係合することによって該フック部材(5)を突出端に位置付ける突出端位置決め手段(15d,16d,21a;11a,11b,12a,12b,15a,15b,16a,16b)と、
上記フック部材(5)及び内装部材(1)の少なくとも一方の部材に設けられ、上記フック部材(5)を上記収容孔(6)に収容されるように回転させたときに、他方の部材に係合することによって該フック部材(5)を収容端に位置付ける収容端位置決め手段(6c,10)とが設けられていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記フック部材(5)のねじ部(8)には、リードがピッチの2倍になるように、上記螺旋溝として第1螺旋溝(11)及び第2螺旋溝(12)の2本が設けられ、
上記内装部材(1)の収容孔(6)の内周面には、上記突条として、上記第1螺旋溝(11)が螺合する第1突条(15)と、上記第2螺旋溝(12)が螺合する第2突条(16)とが設けられ、
上記第1突条(15)及び第2突条(16)各々は、上記収容孔(6)の軸方向投影視において、互いに重ならないように、両者合わせて収容孔(6)の周方向に360度未満の範囲で配置されていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記突出端位置決め手段は、上記フック部材(5)及び上記内装部材(1)の各々に設けられ、上記フック部材(5)が上記突出端に位置付けられたときに該フック部材(5)の突出する方への回転を阻止するように相対して係合する回転ストッパ(15d,16d,21a)によって構成されていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
上記突出端位置決め手段は、上記螺旋溝(11,12)に設けられた溝の深さが浅い浅溝部(11a,11b,12a,12b)と、上記突条(15,16)に設けられた隆起部(15a,15b,16a,16b)とによって構成され、
上記浅溝部(11a,11b,12a,12b)と上記隆起部(15a,15b,16a,16b)とは、上記フック部材(5)が上記突出端に位置付けられたときに上記浅溝部(11a,11b,12a,12b)が上記隆起部(15a,15b,16a,16b)に乗り上げて上記フック部材(5)の回転抵抗を増大させるように配置されていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記フック部材(5)は、上記ねじ部(8)と上記フック部(9)との中間より張り出したフランジ(10)を備え、
上記内装部材(1)の収容孔(6)は、該内装部材(1)の表面に開口した大径孔部(6a)と、該大径孔部(6a)に続く小径孔部(6b)とを備え、該大径孔部(6a)と小径孔部(6b)との境界に段部(6c)が形成され、該小径孔部(6b)の内周面に上記突条(15,16)が設けられており、
上記収容端位置決め手段は、上記フック部材(5)のフランジ(10)と、上記内装部材(1)の上記収容孔(6)の段部(6c)とによって構成され、
上記フランジ(10)と上記段部(6c)とは、上記フック部材(5)が上記収容端に位置付けられたときに、上記フランジ(10)が上記段部(6c)に係合し、上記フック部材(5)が没入する方に回転することを阻止するように配置されていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項1】
車室内において荷物を掛けて吊り下げるためのフック部材(5)と、該フック部材(5)を出没自在に収容する収容孔(6)を有する車両の内装部材(1)とによって構成された車両用荷物吊下装置であって、
上記フック部材(5)は、外周面に螺旋溝(11,12)が形成されてなるねじ部(8)と、該ねじ部(8)に続く荷物掛用のフック部(9)とを備え、
上記内装部材(1)は、上記フック部材(5)がその正逆の回転によって出没するように、上記螺旋溝(11,12)が螺合する螺旋状に設けられた突条(15,16)を上記収容孔(6)の内周面に備え、
さらに、上記フック部材(5)及び内装部材(1)の少なくとも一方の部材に設けられ、上記フック部材(5)を上記収容孔(6)から突出するように回転させたときに、他方の部材に係合することによって該フック部材(5)を突出端に位置付ける突出端位置決め手段(15d,16d,21a;11a,11b,12a,12b,15a,15b,16a,16b)と、
上記フック部材(5)及び内装部材(1)の少なくとも一方の部材に設けられ、上記フック部材(5)を上記収容孔(6)に収容されるように回転させたときに、他方の部材に係合することによって該フック部材(5)を収容端に位置付ける収容端位置決め手段(6c,10)とが設けられていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記フック部材(5)のねじ部(8)には、リードがピッチの2倍になるように、上記螺旋溝として第1螺旋溝(11)及び第2螺旋溝(12)の2本が設けられ、
上記内装部材(1)の収容孔(6)の内周面には、上記突条として、上記第1螺旋溝(11)が螺合する第1突条(15)と、上記第2螺旋溝(12)が螺合する第2突条(16)とが設けられ、
上記第1突条(15)及び第2突条(16)各々は、上記収容孔(6)の軸方向投影視において、互いに重ならないように、両者合わせて収容孔(6)の周方向に360度未満の範囲で配置されていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
上記突出端位置決め手段は、上記フック部材(5)及び上記内装部材(1)の各々に設けられ、上記フック部材(5)が上記突出端に位置付けられたときに該フック部材(5)の突出する方への回転を阻止するように相対して係合する回転ストッパ(15d,16d,21a)によって構成されていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
上記突出端位置決め手段は、上記螺旋溝(11,12)に設けられた溝の深さが浅い浅溝部(11a,11b,12a,12b)と、上記突条(15,16)に設けられた隆起部(15a,15b,16a,16b)とによって構成され、
上記浅溝部(11a,11b,12a,12b)と上記隆起部(15a,15b,16a,16b)とは、上記フック部材(5)が上記突出端に位置付けられたときに上記浅溝部(11a,11b,12a,12b)が上記隆起部(15a,15b,16a,16b)に乗り上げて上記フック部材(5)の回転抵抗を増大させるように配置されていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
上記フック部材(5)は、上記ねじ部(8)と上記フック部(9)との中間より張り出したフランジ(10)を備え、
上記内装部材(1)の収容孔(6)は、該内装部材(1)の表面に開口した大径孔部(6a)と、該大径孔部(6a)に続く小径孔部(6b)とを備え、該大径孔部(6a)と小径孔部(6b)との境界に段部(6c)が形成され、該小径孔部(6b)の内周面に上記突条(15,16)が設けられており、
上記収容端位置決め手段は、上記フック部材(5)のフランジ(10)と、上記内装部材(1)の上記収容孔(6)の段部(6c)とによって構成され、
上記フランジ(10)と上記段部(6c)とは、上記フック部材(5)が上記収容端に位置付けられたときに、上記フランジ(10)が上記段部(6c)に係合し、上記フック部材(5)が没入する方に回転することを阻止するように配置されていることを特徴とする車両用荷物吊下装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−111441(P2012−111441A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−264075(P2010−264075)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】
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