説明

車両用装飾部材

【課題】係止爪部に影響されずにシール保持部を装飾板本体の一端(前縁部)から他端(詳しくは後縁部の近傍)まで延ばすことができる車両用装飾部材を提供する。
【解決手段】車両用装飾部材13は、装飾面61および非装飾面62を形成する装飾板本体63と、非装飾面62に設けられて被取付け部材35の端部(前端)38に係止される係止爪部45と、非装飾面62から突出して非装飾面62との間に空間57を設けて配置され、且つ被取付け部材35にシール部材53を押圧することによって挟持しているシール保持部52と、を備える。係止爪部45は、端部(前端)38のうち装飾部材13へ向いている第1面66に当接する第1当接部67と、第1面66とは反対面をなす第2面68に当接することによって第1当接部67とで被取付け部材35を挟持する第2当接部71と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側に取付けられて装飾面を形成するとともに、車体側との間に遮音用のシール部材を設けた車両用装飾部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用装飾部材には、ドアに取付けられて車室の装飾面を形成しているものがある。
この装飾部材は、装飾面に対し反対の面をなす非装飾面、言い換えると装飾面を表としたときに裏の面をなす非装飾面に対向するドアパネルに取付けられている。ドアパネルは装飾部材から離れる方向へ複数の段部を押し出し成形している。そして、装飾部材とで空間を形成している(例えば、特許文献1参照)。
また、装飾部材には、非装飾面の縁から爪部を張り出して、ドアパネルの上下方向に延びる縁部に係合しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、装飾部材とドアパネルで形成される空間に、例えば遮音用のシール部材を入れても遮音することは難しい。シール部材は、製造の観点から一直線状に一定の厚さで形成されたものを用いるのが望ましく、ドアパネルの段部によって形成される角や隅に密着し難い。ドアパネルの段部に沿うリブを装飾部材に樹脂成形金型の開閉方向へ延ばして成形することも考えられるが、リブにシール部材を強固に固定するのは難しい。
また、シール部材を密着させる力を付与し難い構造である。
【0004】
特許文献2は、段部が無く平坦なため装飾部材、ドアパネルにシール部材を密着させることは可能であるが、ドアパネルに凸曲面や凹曲面を形成する必要があるドアには採用できない。
また、爪部によってシール部材を密着させる力を付与することはできるが、装飾部材の縁までシール部材を入れることは困難である。すなわち、爪部にシール部材を近接させると、シール部材に押さえ力を分散させることなく伝えられるが、爪部に凸曲面や凹曲面に対応するリブが近接するため、爪部を樹脂成形するスライド型とリブを成形する型が干渉する。スライド型を優先にすると、爪部(係止爪部)を設けた縁(前縁部)までリブ(シール保持部)を形成することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2516994号公報
【特許文献2】特開平11−198727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、係止爪部に影響されずにシール保持部を装飾板本体の一端(前縁部)から他端(詳しくは後縁部の近傍)まで延ばすことができ、装飾部材の取付け強度が高まる車両用装飾部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車体側の被取付け部材に取付けられる車両用装飾部材であって、装飾部材は、装飾面および装飾面に対し裏の面をなす非装飾面を形成する板状の装飾板本体と、非装飾面に設けられて被取付け部材の端部に係止される係止爪部と、非装飾面から突出して、且つ被取付け部材にシール部材を押圧することによって挟持しているシール保持部と、を備え、係止爪部は、非装飾面よりも端部側の位置で端部のうち装飾部材へ向いている第1面に当接する第1当接部と、第1面とは反対面をなす第2面に当接することによって第1当接部とで被取付け部材を挟持する第2当接部と、を備え、第1当接部は、シール保持部から端部に向かって立設されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、シール保持部は、非装飾面とで空間を形成し、被取付け部材に沿って帯状に延びてシール部材を押圧することによって挟持しているシール押圧板部を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、第2当接部は、装飾板本体の表裏方向から見て、シール押圧板部に重ならない位置へ設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、シール押圧板部から第2当接部へ向かってシール部材より低く延ばした突出壁部が形成され、第2当接部へ向く突出壁部の縁に第1当接部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明では、突出壁部は、第2当接部に連続していることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明では、突出壁部は、シール押圧板部の幅方向の一端に設けられ、シール押圧板部の他端から非装飾面に達する封じ壁を設けたことを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明では、第2当接部は、シール押圧板部よりも装飾部材の端部に近い側に設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明では、装飾板本体は、シール押圧板部の他端側に、非装飾面から被取付け部材まで突出して被取付け部材に当接する補助当接リブが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明では、装飾部材は、装飾面および裏の面をなす非装飾面を形成する板状の装飾板本体と、非装飾面に設けられて被取付け部材の端部に係止される係止爪部と、非装飾面から突出して、且つ被取付け部材にシール部材を押圧することによって挟持しているシール保持部と、を備え、係止爪部は、非装飾面よりも端部側の位置で装飾部材へ向いている第1面に当接する第1当接部と、反対面をなす第2面に当接することによって第1当接部とで被取付け部材を挟持する第2当接部と、を備え、第1当接部は、シール保持部から端部に向かって立設されているので、係止爪部の第1当接部をシール保持部と一体に樹脂成形用金型で成形すると、シール保持部の空間を形成する中子スライド型と被取付け部材の端部(前端)を入れる把持開口を形成する把持開口用スライド型を一体にしたスライド型を用いることができ、係止爪部に影響されずにシール保持部を装飾板本体の一端(前縁部)から他端(詳しくは後縁部の近傍)まで延ばすことができる。
【0016】
また、第1当接部を直交するシール保持部で補強することができ、第1当接部の強度が高まり、結果的に、装飾部材の取付け強度が高まるという利点がある。
【0017】
請求項2に係る発明では、シール保持部は、非装飾面とで空間を形成し、被取付け部材に沿って帯状に延びてシール部材を押圧することによって挟持しているシール押圧板部を備えているので、シール部材を帯状の面で保持することができる。すなわち、車体側の被取付け部材にシール部材を面で押しつけることができ、遮音のシール性を向上させることができる。
【0018】
また、帯状のシール押圧板部の面にシール部材の面を貼り付けることができる。その結果、シール部材を安定させて保持することができ、遮音のシール性を向上させることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、第2当接部は、装飾板本体の表裏方向から見て、シール押圧板部に重ならない位置へ設けられているので、シール押圧板部にシール部材を重ねて取付ける際に、第2当接部にシール部材が干渉しない。従って、シール部材を取付ける取付け作業が容易になる。
【0020】
請求項4に係る発明では、シール押圧板部から第2当接部へ向かってシール部材より低く延ばした突出壁部が形成され、第2当接部へ向く突出壁部の縁に第1当接部が形成されているので、シール部材の圧縮代を確保することができる。すなわち、車体側の被取付け部材を第1当接部と第2当接部とで把持したときに、シール部材は第1当接部まで被取付け部材で圧縮されるという利点がある。
【0021】
また、装飾部材にシール部材を取付けるときに、シール押圧板部にシール部材を重ねて突出壁部に当てることによってシール部材の位置決めを行うことができ、シール部材を取付ける取付け作業がより容易になる。
【0022】
さらに、車体側の被取付け部材を挟んだ第1当接部に入力される力、例えば装飾部材を外す力をシール押圧板部に伝え分散することができる。従って、係止爪部(第1当接部と第2当接部とからなる)による被取付け部材への係止を確実に行うことができる。
【0023】
請求項5に係る発明では、突出壁部は、第2当接部に連続しているので、シール押圧板部および第2当接部へ突出壁部に入力される力を分散することができ、突出壁部の強度が高められるという利点がある。
【0024】
また、シール押圧板部から第2当接部までの距離を維持することができる。その結果、シール押圧板部から車体側の被取付け部材までの距離は保たれるので、シール部材を押圧する力の低下を抑制することができ、遮音のシール性の低下を抑制することができる。
【0025】
請求項6に係る発明では、突出壁部は、シール押圧板部の幅方向の一端に設けられ、シール押圧板部の他端から非装飾面に達する封じ壁を設けたので、シール押圧板部から封じ壁に力を伝えることができ、シール押圧板部のたわみの強度を高めることができる。
【0026】
また、断面コ字形状を、対向するシール押圧板部と装飾板本体に封じ壁を交差させることによって形成しているので、封じ壁に対向する開口から空間を形成する樹脂成形用金型のスライド型を抜くことができる。
つまり、装飾部材を成形するときに、スライド型によって、封じ壁、シール押圧板部、突出壁部、第2当接部を一回で成形することができ、樹脂成形作業が容易になる。
【0027】
さらに、開口やブリッジ状のシール押圧板部と装飾部材との間(空間)に達した音の進行を封じ壁によって遮ることができ、遮音性能を高めることができる。
【0028】
請求項7に係る発明では、第2当接部は、シール押圧板部よりも装飾部材の端部に近い側に設けられているので、第2当接部の方が装飾部材の端部に近い側に位置し、スライド型を抜くときに装飾部材の端部側に抜くことができ、より成形性が高まる。
【0029】
請求項8に係る発明では、装飾板本体は、シール押圧板部の他端側に、非装飾面から被取付け部材まで突出して被取付け部材に当接する補助当接リブが設けられているので、シール押圧板部の一端側へ設けられた第2当接部を形成するために、一端側でスライドするスライド型に、他端側に設けられた補助当接リブに干渉せずに補助当接リブを樹脂成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施例に係る車両用装飾部材を採用したドアの内側側面図である。
【図2】実施例に係る装飾部材を取外して車室側から見たドアの内側側面図である。
【図3】実施例に係る装飾部材を車室側から見た装飾部材の斜視図である。
【図4】図2の4矢視図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図3の6矢視図である。
【図7】実施例に係るシール保持部を取外して下から見た装飾部材の斜視図である。
【図8】図7の8矢視図である。
【図9】図8の9矢視図である。
【図10】図9の10−10線断面図である。
【図11】図1の11−11線断面図である。
【図12】シール保持部、係止爪部の樹脂成形要領を説明する図であり、(a)は金型を閉じてキャビティを形成する工程、(b)は金型に樹脂を射出し固化させる工程を説明する図である。
【図13】図12の続きを説明する図で、(a)は金型を開く型開工程、(b)は型開工程のうちのスライド型を抜く工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0032】
車両11は、図1に示すように、ドア12に実施例に係る車両11用装飾部材13を採用している。
ドア12は、後右ドアであり、車体14のセンタピラー15に支持されるドア本体18と、ドア本体18の上端21に立設したサッシュ22と、ドアガラス23と、装飾部材13と、を備える。
【0033】
ここで、図1〜図5に示すように、車両11前後方向をX軸方向とし、車両11幅方向(または車幅方向)をY軸方向とし、車両11上下方向をZ軸方向とする。
車内側とは、車両11幅方向(Y軸方向)における車内側(図5の矢印a1方向)とし、車外側とは、車両11幅方向(Y軸方向)における車外側(矢印a2方向)とする。
【0034】
ドア本体18は、アウタパネル25と、インナパネル26と、を備える。インナパネル26に内装部材27を取付けている。
【0035】
サッシュ22は、図1、図2、図5に示す通り、ドア本体18の上端21の後部28に立設した後部サッシュ部31を有する。
この後部サッシュ部31は、車両11側面視(図1の視点)、一直線に形成され、車両11前方へわずかに角度αだけ倒れ傾斜している。
【0036】
また、後部サッシュ部31は、ドア本体18の上端21と交差することで後角部33を形成している。
後角部33には、被取付け部材35を設け、この被取付け部材35に装飾部材13を取付けている。
被取付け部材35は、鋼板製のアウタ三角パネル36(図5)と、インナ三角パネル37と、からなる。
【0037】
インナ三角パネル37は、図2、図5に示す通り、ドアガラス23に近接する前端38に連ねて車外側(矢印a2方向)へ膨出させた膨出部41が形成され、膨出部41に連ねて前端38を延長するように中央部42が形成され、中央部42に連ねて車内側へ折り曲げた後端43が形成されている。
【0038】
また、インナ三角パネル37は、図2、図3に示す通り、前端38を一直線に形成し、ほぼ垂直に配置している。この前端38を装飾部材13に設けた下の係止爪部45および上の別の係止爪部46が把持している。さらに、インナ三角パネル37の中央に開けた係止孔47(図7)に装飾部材13の係止ボス48を嵌めている。
【0039】
装飾部材13は、被取付け部材35とで空間51(図3)を形成し、この空間51をシール保持部52とシール部材53によって、上部空間54と下部空間55とに分割して上部空間54と下部空間55とを隔絶している。57(図7)はシール保持部52の空間である。
【0040】
次に、装飾部材13の主要構成を図1〜図12で説明する。
車両11用装飾部材13は、車体14側の被取付け部材35に取付けられる。
装飾部材13は、装飾面61および装飾面61に対し裏の面をなす非装飾面62を形成する板状の装飾板本体63と、非装飾面62に設けられて被取付け部材35の端部(前端)38に係止される係止爪部45と、非装飾面62から突出して非装飾面62との間に空間57を設けて配置され、且つ被取付け部材35にシール部材53を押圧することによって挟持しているシール保持部52と、を備える。
【0041】
「車体14側の被取付け部材35」とは、車体14に含まれる被取付け部材や、車体14に含まれないが、車体に相当するもの、例えば、ドアに含まれる被取付け部材である。
【0042】
係止爪部45は、非装飾面62よりも端部(前端)38側の位置で端部(前端)38のうち装飾部材13へ向いている第1面66(図5)に当接する第1当接部67と、第1面66とは反対面をなす第2面68に当接することによって第1当接部67とで被取付け部材35を挟持する第2当接部71と、を備える。
【0043】
第1当接部67は、シール保持部52から端部(前端)38に向かって立設されている。
「シール保持部52に立設され」とは、装飾板本体63に対し、直交している状態。
【0044】
装飾面61を形成する型面72(図12)と非装飾面62を形成する型面73とを対向させて型開(図13の状態)、型閉(図12の状態)する金型74を用いて、少なくとも第1当接部67とシール保持部52を一体に形成している。
【0045】
シール保持部52は、非装飾面62とで空間57を形成し、被取付け部材35に沿って帯状に車両11前後方向(X軸方向)に延びてシール部材53を押圧することによって挟持しているシール押圧板部75を備えている。
【0046】
第2当接部71は、装飾板本体63の表裏方向から見て、シール押圧板部75に重ならない位置へ設けられている。
すなわち、第2当接部71は、車両11側面視(図2の視点)、言い換えれば、車両幅方向、図9、図10に示す通り、シール押圧板部75に重ならない位置でシール押圧板部75の一端76側(矢印3の方向)へ設けられている。
【0047】
シール押圧板部75から(詳しくは、一端76に連なり)第2当接部71へ向かってシール部材53より距離β(図6)だけ低く延ばした突出壁部77が形成されている。
そして、第2当接部71へ向く突出壁部77の縁に第1当接部67が形成されている。
「シール部材53より低く」とは、圧縮する前のシール部材53の高さHsより低いということ。
【0048】
突出壁部77は、第2当接部71に連続している。
すなわち、突出壁部77は、図6、図9、図10に示す通り、装飾板本体63の非装飾面62に連なり当接連続部78を介して第2当接部71に連続している。
【0049】
突出壁部77は、シール押圧板部75の幅方向の一端76に設けられ、シール押圧板部75の他端81から非装飾面62に達する封じ壁82を設けた。
【0050】
また、第2当接部71は、シール押圧板部75よりも装飾部材13の端部84に近い側に設けられている。
すなわち、第2当接部71は、シール押圧板部75の一端76側へ設けられているとともに、空間57の開口83(図10)の向き(矢印3の方向)と同じ方向へ向いている装飾部材13の端部84に近接させて形成されている。
【0051】
装飾板本体63は、シール押圧板部75の他端81側に、非装飾面62から被取付け部材35まで突出して被取付け部材35に当接する補助当接リブ85が設けられている。
【0052】
次に、装飾部材13を詳しく説明していく。
装飾部材13は、装飾板本体63、係止爪部45、シール保持部52、シール部材53、別の係止爪部46を有する。
【0053】
装飾板本体63は、車両11側面視(図1〜図3の視点)、三角形に形成されている。そして、図5のサッシュ22の外方(矢印a3の方向)へ向く後縁部91に連ねて、低い後装飾部92が形成され、被取付け部材35に達している。
【0054】
また、サッシュ22の内方(矢印a4の方向)へ向く前縁部93に連ねて、前装飾部94が形成され、ドアガラス23の近傍まで達し、カバーしている。この前装飾部94の非装飾面62に係止爪部45が形成されている。
【0055】
係止爪部45は、第1当接部67と第2当接部71で把持開口95を形成している。第2当接部71を車両11上下方向(Z軸方向)に幅W2だけ延ばして、インナ三角パネル37に面接触している。一端、他端にリブ96が設けられているので、第1当接部67から離れる方向へたわむ第2当接部71の開きを防止することができる。
【0056】
また、図9、図10に示す通り、一端に設けたリブ96に連続して同じ板厚で当接連続部78が形成され、当接連続部78に連続して同じ板厚で突出壁部77が形成されている。
さらに、突出壁部77に連続して同じ板厚で位置決め凸部97が形成されている。シール押圧板部75の一端76に低く形成されている。
【0057】
この結果、シール押圧板部75にシール部材53を重ねて取付ける際に、位置決め凸部97に当てることによって、シール部材53の一端から他端まで位置決めすることができ、シール保持部52へのシール部材53の取付け作業は容易になる。
【0058】
シール保持部52は、ドア本体18の近傍、言い換えると装飾板本体63の下部に設けられている。また、前縁部93から後縁部91の近傍(後縁近接部101)まで形成されている。さらに、後縁近接部101へ向け直交し後縁近接部101に接合している第1脚部102を形成し、第2脚部103、第3脚部104をほぼ等間隔で形成している。この結果、シール押圧板部75の振動を抑制することができる。
【0059】
第1脚部102と後装飾部92との間に三角形のシール押圧リブ106がシール部材53に当接する間隔で形成されている。
【0060】
シール部材53は、樹脂製で、例えば、スポンジを用いて角柱に形成され、圧縮代δを設定している。圧縮代δは、車体14側の被取付け部材35に係止爪部45や別の係止爪部46で取り付けたときに、被取付け部材35の被取付けシート面107(図2の二点鎖線の範囲)を押しつけ弾性変形する量である。
【0061】
別の係止爪部46は、装飾板本体63の上部に設けられ、係止爪部45とほぼ同様である。すなわち、図11に示すように、第1当接部67と、別の第2当接部71と、からなる。別の第2当接部71は非装飾面62に形成されている。
【0062】
この別の係止爪部46と係止爪部45との間の中央に補助当接リブ85を配置している。
【0063】
次に、装飾部材13の組み付け要領を簡単に説明する。
まず、前述したように、シール保持部52にシール部材53を接着する(図3、図4)。
その次に、図2に示すように、車体14側の被取付け部材35に装飾部材13を矢印a5のように嵌める。前側から装飾部材13を矢印a5のように移動させ、被取付け部材35から装飾部材13の後縁部91を離し、挿入逃がし部112へ被取付け部材35の前端38を寄せる。
【0064】
続けて、図5、図11に示すように、被取付け部材35に後縁部91を矢印a6のように近づけることによって、第1当接部67および第2当接部71に被取付け部材35を当接させる。ほぼ同時に、被取付け部材35の係止孔47に装飾部材13の係止ボス48を嵌める(図7)。これで装飾部材13の組み付けは完了する。下部空間55と上部空間54が隔絶される。
【0065】
次に、装飾部材13のシール保持部52および係止爪部45の樹脂成形要領を簡単に説明する。
樹脂成形用の金型74は、縦型の射出成形機(図に示していない)に配置して、図12、図13に示すように金型74を図の上下方向に開閉させているが、横型の射出成形機(図に示していない)に配置して図の左右に開閉させてもよい。
【0066】
金型74は、固定型115、可動型116、キャビティ117、装飾面61を成形する型面72、非装飾面62を成形する型面73、スライド型118を有する。
スライド型118は中子スライド型121と把持開口用スライド型122とからなる。
【0067】
まず、図12に示すように、金型74を型閉した後、溶融(可塑化)した樹脂をシリンダから射出してキャビティ117に充填する(図12(b))。
【0068】
引き続き、図13に示すように、キャビティ117内の樹脂が固化した後、可動型116を型開する。続けて、スライド型118を外方へスライドさせる。
最後に、押し出しピン123をスライドさせて、固定型115から装飾部材13を離型する。そして、装飾部材13を取り出す。
これで装飾部材13の成形は完了する。次のサイクルを開始する。
【0069】
次に、装飾部材13の作用を説明する。
このように、装飾部材13では、スライド型118を用いることができ、係止爪部45に影響されずにシール保持部52を成形することができる。
【0070】
装飾部材13では、ドア本体18で発生した音をシール部材53ならびにシール保持部52によって図3の矢印a7のように遮ることができる。さらに、図6、図10に示す通り、封じ壁82によって、矢印a8のように遮ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の車両用装飾部材は、ドアに好適である。
【符号の説明】
【0072】
11…車両、13…車両用装飾部材、14…車体、35…被取付け部材、38…被取付け部材の端部(前端)、45…係止爪部、52…シール保持部、53…シール部材、57…空間、61…装飾面、62…非装飾面、63…装飾板本体、66…被取付け部材の第1面、67…第1当接部、68…被取付け部材の第2面、71…第2当接部、72…装飾面を形成する型面、73…非装飾面を形成する型面、74…金型、75…シール押圧板部、76…シール押圧板部の一端、77…突出壁部、81…シール押圧板部の他端、82…封じ壁、83…開口、84…装飾部材の端部、85…補助当接リブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側の被取付け部材に取付けられる車両用装飾部材であって、
前記装飾部材は、装飾面および該装飾面に対し裏の面をなす非装飾面を形成する板状の装飾板本体と、前記非装飾面に設けられて前記被取付け部材の端部に係止される係止爪部と、前記非装飾面から突出して、且つ前記被取付け部材にシール部材を押圧することによって挟持しているシール保持部と、を備え、
前記係止爪部は、前記非装飾面よりも前記端部側の位置で前記端部のうち前記装飾部材へ向いている第1面に当接する第1当接部と、前記第1面とは反対面をなす第2面に当接することによって前記第1当接部とで前記被取付け部材を挟持する第2当接部と、を備え、
前記第1当接部は、前記シール保持部から前記端部に向かって立設されていることを特徴とする車両用装飾部材。
【請求項2】
前記シール保持部は、前記非装飾面とで前記空間を形成し、前記被取付け部材に沿って帯状に延びて前記シール部材を押圧することによって挟持しているシール押圧板部を備えていることを特徴とする請求項1記載の車両用装飾部材。
【請求項3】
前記第2当接部は、前記装飾板本体の表裏方向から見て、前記シール押圧板部に重ならない位置へ設けられていることを特徴とする請求項2記載の車両用装飾部材。
【請求項4】
前記シール押圧板部から前記第2当接部へ向かって前記シール部材より低く延ばした突出壁部が形成され、
前記第2当接部へ向く前記突出壁部の縁に前記第1当接部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の車両用装飾部材。
【請求項5】
前記突出壁部は、前記第2当接部に連続していることを特徴とする請求項4記載の車両用装飾部材。
【請求項6】
前記突出壁部は、前記シール押圧板部の幅方向の一端に設けられ、前記シール押圧板部の他端から前記非装飾面に達する封じ壁を設けたことを特徴とする請求項4又は請求項5記載の車両用装飾部材。
【請求項7】
前記第2当接部は、前記シール押圧板部よりも前記装飾部材の端部に近い側に設けられていることを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項記載の車両用装飾部材。
【請求項8】
前記装飾板本体は、前記シール押圧板部の他端側に、前記非装飾面から前記被取付け部材まで突出して前記被取付け部材に当接する補助当接リブが設けられていることを特徴とする請求項3〜7のいずれか1項記載の車両用装飾部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−218644(P2012−218644A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88450(P2011−88450)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(591270257)クミ化成株式会社 (12)
【Fターム(参考)】