説明

車両用軸受装置

【課題】強度を損なうことなく軽量化が可能となる車両用軸受装置を提供する。
【解決手段】車輪が取り付けられるシャフトと、玉を介してシャフトと同心上に配置された外輪3と、この外輪3の上側の前後及び下側の前後それぞれに設けられたフランジ部7とを備えている。フランジ部7には、外輪3を車体側に固定するためのボルトが挿通する取り付け孔12が形成されている。フランジ部7それぞれにおいて、取り付け孔12の中心12aと外輪3の中心3aとを結ぶ仮想直線13を境界として区画した場合に、外輪3を軸方向に見て、上下方向外側に位置する第1領域A1を上下方向中央側に位置する第2領域A2よりも広くすることにより、第1領域A1側の剛性を第2領域A2側の剛性よりも高めている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の車輪を支持するために用いられる車両用軸受装置は、一般的に、車輪が取り付けられる回転輪と、転動体を介して前記回転輪と同心状に配置された固定輪とを備えており、この固定輪には、当該固定輪を車体側の懸架装置に固定するためのフランジ部が設けられている。
図7(A)は、フランジ部92が設けられている固定輪91の斜視図である。フランジ部92は、固定輪91の上側の前後及び下側の前後それぞれに当該固定輪91の外周から径方向外側へ突出して設けられており、このフランジ部92には、固定輪91を車体側の懸架装置に固定するボルト(図示せず)が挿通する取り付け孔93が形成されている。また、図7(A)では、周方向で隣り合うフランジ部92,92の間には、リブ97が設けられている。
【0003】
そして、従来の車両用軸受装置では、図7(B)に示しているように、フランジ部92それぞれにおいて、取り付け孔93の中心93aと固定輪91の中心91aとを結ぶ仮想直線94を境界として上下に区画した場合に、上下方向外側に位置する第1領域95(ハッチングの領域)と、上下方向中央側に位置する第2領域96とは、同じ広さ(仮想直線94を基準に対称であるが同じ形状)とされている。
【0004】
また、このような車両用軸受装置は、車輪を通じて路面からの様々な荷重を受けることから、この荷重に抗するべく強度を高める必要がある。そのために、例えば、上下前後の全てのリブ97を厚くすればよいが、この場合、質量が大きく増加してしまう。
そこで、質量の増加を抑えつつ、強度の向上を図る車両用軸受装置として、特許文献1に記載のものがある。この車両用軸受装置では、実際に作用する荷重及びモーメントを考慮して構成されており、図8に示しているように、フランジ部92の上下部分(上下のリブ97a)と前後部分(前後のリブ97b)とで厚さを相違させている。すなわち、車両用軸受装置には、上下荷重(垂直荷重)、左右荷重(横荷重)及び前後荷重が作用するが、特許文献1の発明では、このうち左右荷重が作用した際に上下両部分において最も大きなモーメントが作用することに着目し、前後のリブ97bに比べて上下のリブ97aを厚くし、上下両部分の強度を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−71352号公報(図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8に示しているように、前後のリブ97bを厚くしないで、上下のリブ97aを厚くすることにより、質量の増加を抑えつつ効果的に強度の向上を図ることが可能となる。しかし、上下のリブ97aを厚くしていることから、軸受装置全体としての質量の増加は避けられない。すなわち、特許文献1の図3に示しているように、強度の向上に伴い、質量も増加している。
【0007】
そこで、本発明は、強度を損なうことなく軽量化が可能となる車両用軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車両用軸受装置は、車輪が取り付けられる回転輪と、転動体を介して前記回転輪と同心上に配置された固定輪と、前記固定輪の上側の前後及び下側の前後それぞれに当該固定輪から径方向外側へ突出して設けられていると共に当該固定輪を車体側に固定するためのボルトが挿通する取り付け孔が形成されたフランジ部とを備え、前記フランジ部それぞれにおいて、前記取り付け孔の中心と前記固定輪の中心とを結ぶ仮想直線を境界として区画した場合に、前記固定輪を軸方向に見て、上下方向外側に位置する第1領域を上下方向中央側に位置する第2領域よりも広くすることにより、当該第1領域側の剛性を当該第2領域側の剛性よりも高めていることを特徴とする。
【0009】
車両用軸受装置では、路面側から上下荷重、左右荷重及び前後荷重が作用するが、このうち左右荷重(軸方向荷重)が作用した際に、上下両部分が最も大きな荷重(モーメント)の作用する負荷領域となる。
そこで、本発明のように、フランジ部それぞれにおいて、前記仮想直線を境界として区画した場合に、固定輪を軸方向に見て、上下方向外側に位置する第1領域を上下方向中央側に位置する第2領域よりも広くすることにより、第1領域側の剛性を第2領域側の剛性よりも高めていることにより、上側の前後及び下側の前後のフランジ部において、上下方向両外側となる上下両部分の強度を確保することが可能となる。つまり、前記負荷領域におけるフランジ強度を高めることができ、また、従来(第1領域と第2領域とが同じ広さである従来)と同等の強度を確保することが可能となる。
その一方で、前記負荷領域とは異なる領域、つまり、上下方向中央側となる前部及び後部では、フランジ部の広がりを小さくすることで、軽量化することが可能となる。以上より、強度を損なうことなく軽量化が可能となる。
【0010】
また、前記フランジ部それぞれは、径方向外側から径方向内側の裾部に向かうにつれてフランジ幅が拡大する形状であり、前記フランジ部それぞれにおいて、フランジ幅方向に関して前記第1領域の幅が前記第2領域の幅よりも大きいのが好ましい。
この構成により、フランジ部それぞれにおいて、上下方向外側に位置する第1領域を上下方向中央側に位置する第2領域よりも広くすることができる。なお、前記フランジ幅は、前記仮想直線及びフランジ部の厚さ方向に直交する方向の幅である。
【0011】
また、前記第1領域におけるフランジ幅方向外側のフランジ側面は、径方向外側から裾部側に向かうにつれて前記仮想直線から離れる形状であり、前記第2領域におけるフランジ幅方向外側のフランジ側面は、前記仮想直線と平行に形成されている構成とすることにより、簡単に第1領域よりも第2領域を小さくすることができる。
【0012】
また、周方向で隣り合う前記フランジ部の間にリブが設けられており、上下及び前後のリブはすべて同じ厚さである場合、フランジ部の間にリブが設けられている車両用軸受装置となり、この場合において、上下のリブを厚くしなくても、フランジ部それぞれにおいて第1領域を第2領域よりも広くすることにより、第1領域側の剛性を第2領域側の剛性よりも高めていることで、上下両部分の強度を従来と同等に確保することができ、かつ、リブの厚肉化による質量増加を抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、最も大きな荷重(モーメント)が作用する負荷領域の強度を従来と同等とすることが可能となり、前記負荷領域とは異なる領域では、フランジ部の広がり小さくすることで、強度を損なうことなく軽量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の車両用軸受装置の実施の一形態を示す縦断面図である。
【図2】外輪を軸方向(左右方向)から見た図である。
【図3】外輪の縦断面図である。
【図4】モーメントが作用した状態の解析結果を示す説明図であり、(A)は本実施形態に係る車両用軸受装置が有するフランジ部及び外輪の上下方向の変位量を示しており、(B)は従来の車両用軸受装置が有するフランジ部及び外輪の上下方向の変位量を示している。
【図5】車両用軸受装置の剛性(モーメント剛性)及び質量について、従来例と本実施形態(実施例)との比較を説明する図である。
【図6】他の外輪を軸方向(左右方向)から見た図である。
【図7】(A)は、フランジ部が設けられている固定輪の斜視図であり、(B)はその一部を軸方向に見た説明図である。
【図8】従来のフランジ部が設けられている固定輪の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の車両用軸受装置の実施の一形態を示す縦断面図である。この車両用軸受装置1は、自動車等の車両の車体側に設けられている懸架装置(ナックル)30に固定されるものであり、この懸架装置30に対して、車輪(図示せず)を回転可能に支持することができる。
この車両用軸受装置1が、車体(懸架装置30)に取り付けられた状態で、車輪が取り付けられる側(図1では左側)が車両アウタ側となり、車体の中央側(図1では右側)が車両インナ側となる。このアウタ側とインナ側とを結ぶ方向が左右方向であり、図1の紙面方向が前後方向となり、図1の上下方向が車両用軸受装置1の上下方向となる。
【0016】
この車両用軸受装置1は、前記懸架装置30に固定される外輪3と、この外輪3の内周側に設けられているシャフト2と、外輪3とシャフト2との間に転動可能に設けられている複数個の玉(転動体)4と、これら玉4を等間隔で保持している保持器5とを備えている。
本実施形態では、外輪3が、車本側に固定される固定輪であり、このために、外輪3の外周14には、懸架装置30に固定するためのフランジ部7が、当該外輪3と一体ものとして設けられている。また、外輪3の内周面には玉4が転動する複列の外輪軌道3b,3bが形成されている。
【0017】
シャフト2は、車輪(図示せず)が取り付けられる車軸であり、車輪取り付け用のフランジ部10が、このシャフト2の車両アウタ側の端部外周から径外方向に延びて環状に形成されている。このフランジ部10には周方向数箇所に貫通孔11が設けられており、この貫通孔11に挿通されるボルトによってディスクロータや車輪(図示せず)が取り付けられる。
【0018】
シャフト2は、前記フランジ部10と一体となっているシャフト本体8と、このシャフト本体8の車両インナ側の端部に嵌合している円環状の内輪部材9とを備えている。内輪部材9は、シャフト本体8の車両インナ側の端部を径外方向に塑性変形させて成るかしめ部8aにより、当該シャフト本体8に抜け止め固定されている。
【0019】
玉4は、車両インナ側と車両アウタ側との二列で設けられており、これに対応して、シャフト2の外周面には、複列の内輪軌道2b,2bが形成されている。これら内輪軌道2b,2bは前記外輪軌道3b,3bに対向しており、各列の内輪軌道2bと外輪軌道3bとの間に、複数の玉4が転動自在に配置されている。
【0020】
以上により、複列のアンギュラ玉軸受部を有している車両用軸受装置1が構成され、この車両用軸受装置1では、シャフト2が、車輪(図示せず)が取り付けられる回転輪となり、外輪3が、玉(転動体)4を介してシャフト2と同心上に配置された固定輪となる。
【0021】
図2は、外輪3を軸方向(左右方向)から見た図である。前記フランジ部7は、固定輪となる外輪3の上側の前後及び下側の前後それぞれに設けられており、フランジ部7それぞれは、外輪3の外周14から径方向外側へ突出している。そして、フランジ部7それぞれには、外輪3を車体側の懸架装置30(図1参照)に固定するためのボルト31が挿通する取り付け孔12が形成されている。なお、図1は図2のI−I矢視の断面図である。
【0022】
また、本実施形態では、周方向で隣り合うフランジ部7,7の間に、リブ6が設けられており、上下及び前後のリブ6は、フランジ部7よりも薄く、すべて同じ厚さである。なお、フランジ部7もすべて同じ厚さである。
そして、本実施形態の車両用軸受装置1の外輪3は、隣り合うフランジ部7,7同士が周方向で直接連結されていない独立フランジタイプ(浮島フランジタイプ)であり、周方向で隣り合うフランジ部7,7の間にリブ6が介在している。
【0023】
ここで、フランジ部7それぞれにおいて、取り付け孔12の中心12aと外輪3の中心3aとを結ぶ仮想直線13を境界として上下に区画した場合に、上下方向外側に位置する領域を第1領域A1とし、上下方向中央側に位置する領域を第2領域A2とする。なお、図2では、第1領域A1をハッチングで示しており、フランジ面7aが仮想直線13によって上下に区画されている。
【0024】
また、フランジ部7それぞれは、径方向外側Nから径方向内側の裾部Mに向かうにつれてフランジ幅Wが漸次拡大する形状を有している。このフランジ幅Wは、仮想直線13及びフランジ部7の厚さ方向(左右方向)に直交する方向の幅である。
そして、フランジ部7それぞれにおいて、前記仮想直線13を境界として上下に区画した場合に、外輪3を軸方向に見て、上下方向外側に位置する前記第1領域A1が上下方向中央側に位置する前記第2領域A2よりも広くすることにより、第1領域A1側の剛性を第2領域A2側の剛性よりも高めている。つまり、第1領域A1と第2領域A2とは、仮想直線94を基準に非対称の形状となっている。なお、前記剛性としては、車両用軸受装置1に作用する(後述の)モーメントに抗する曲げ剛性であり、例えば、前記仮想直線13に直交するフランジ幅方向の軸線回りの曲げ剛性である。
【0025】
具体的に説明すると、外輪3の上側前方に設けられているフランジ部7tf及び上側後方に設けられているフランジ部7tbそれぞれでは、上側に位置する第1領域A1が、上下方向中央側に位置する第2領域A2よりも広くなっており、第1領域A1側の剛性を第2領域A2側の剛性よりも高めている。そして、外輪3の下側前方に設けられているフランジ部7bf及び下側後方に設けられているフランジ部7bbそれぞれでは、下側に位置する第1領域A1が、上下方向中央側に位置する第2領域A2よりも広くなっており、第1領域A1側の剛性を第2領域A2側の剛性よりも高めている。なお、すべてのフランジ部7の厚さはすべて同じであり、フランジ部7それぞれにおける厚さは一定である。
【0026】
フランジ部7の形状についてさらに説明すると、フランジ部7の外側面は、径方向外側Nにおいて第1領域A1と第2領域A2とに跨る円弧面17、第1領域A1におけるフランジ幅方向外側のフランジ側面15、及び、第2領域A2におけるフランジ幅方向外側のフランジ側面16からなる。そして、フランジ側面15,16は両者とも平面状に形成されており、外輪3の外周14と交差している。
【0027】
そして、フランジ部7それぞれにおいて、上記のとおり、径方向外側Nから径方向内側の裾部Mに向かうにつれてフランジ幅Wが漸次拡大する形状を有しているが、第1領域A1を第2領域A2よりも広くするために、本実施形態では、フランジ幅方向に関して、第1領域A1の幅(広がり幅)w1が、第2領域A2の幅(広がり幅)w2よりも大きくされている。なお、第1領域A1の前記幅w1は、仮想直線13上の一点からフランジ側面15までの距離であり、第2領域A2の前記幅w2は、当該一点から反対側のフランジ側面16までの距離である。
つまり、第1領域A1の広がり度合いが、第2領域A2の広がり度合いよりも大きい。なお、広がり度合いとは、仮想直線13に沿った径方向内側への単位長さ(例えば1cm)あたりの、当該仮想直線13に直交する方向の各領域A1,A2の幅(各領域のフランジ幅)の変化の割合である。したがって、広がり度合いは、仮想直線13を基準としたフランジ側面15,16の傾きであり、仮想直線13に対するフランジ側面15の傾きは、仮想直線13に対するフランジ側面16の傾きよりも大きい。なお、本実施形態では、フランジ側面16の傾きはゼロである。
【0028】
さらに、図2に示す実施形態では、第1領域A1を第2領域A2よりも広くするために、第1領域A1における前記フランジ側面15は、径方向外側Nから裾部側に向かうにつれて仮想直線13から離れる形状であるが、第2領域A2における前記フランジ側面16は、仮想直線13と平行に形成されている(仮想直線13に対するフランジ側面16の傾きはゼロである。)。
【0029】
以上のように、フランジ部7それぞれにおいて、仮想直線13を境界として上下に区画した場合に、外輪3を軸方向に見て、上下方向外側に位置する第1領域A1を上下方向中央側に位置する第2領域A2よりも広くすることにより、第1領域A1側の部分の剛性を第2領域A2側の部分の剛性よりも高めているので、上側の前後及び下側の前後のフランジ部7において、上下方向両外側となる上下両部分の(荷重及びモーメントに抗する)強度を高めることが可能となる。
【0030】
ここで、このような車両用軸受装置1では、車両が走行すると、上下荷重、左右荷重及び前後荷重が作用するが、図3に示すように、左右荷重(軸方向荷重)が作用した際に、上下両部分が最も大きな荷重(モーメント)が作用する負荷領域S1となる。なお、図3の矢印f1,f2は、玉4から外輪3が受ける荷重を示しており、矢印mはこの荷重によるモーメントを示している。
そこで、上述のとおり、上側の前後及び下側の前後のフランジ部7において、上下方向両外側となる上下両部分の強度(剛性)を高めることが可能となることから、上下の負荷領域Sにおけるフランジ強度を高めることができ、図7(A)で示した従来例(第1領域95と第2領域96とが同じ広さである従来例)と同等の強度を確保することが可能となる。
その一方で、上下の負荷領域S1とは異なる領域、つまり、上下方向中央側となる前部及び後部の領域S2(図2参照)では、フランジ部7のフランジ幅方向への広がりを小さくすることで、車両用軸受装置1を軽量化することが可能となる。
【0031】
なお、図4は、前記モーメントmが作用した状態の解析結果を示す説明図であり、図4(A)は、本実施形態に係る車両用軸受装置1(実施例)が有するフランジ部7及び外輪3の上下方向の変位量を示しており、図4(B)は、図7(A)に示した従来の車両用軸受装置(従来例)が有するフランジ部及び外輪の上下方向の変位量を示している。この図4の(A)と(B)とに示しているように、変位量について実施例と従来例とで大きな差がなく、本実施形態の車両用軸受装置1によれば、従来と比べて同等の強度を確保することができる。
【0032】
そして、図5は、車両用軸受装置の剛性(モーメント剛性)及び質量について、従来例と実施例との比較を説明する図である。図5(A)に示しているように、従来例と実施例とでは剛性を等しくすることができ、図5(B)に示しているように、実施例は、従来例よりも2%、質量を低下させることが可能となる。つまり、実施例では、剛性を損なうことなく軽量化が可能となる。
【0033】
また、本実施形態では、隣り合うフランジ部7,7の間にリブ6が設けられているが、図8に示した従来例のように、上下のリブ97aを厚くしなくても、フランジ部7それぞれにおいて第1領域A1を第2領域A2よりも広くすることにより、第1領域A1側の部分の剛性を第2領域A2側の部分の剛性よりも高めていることで、上下両部分の強度を従来例と同等に確保することができ、かつ、リブの肉厚化による質量増加を抑えることが可能となる。
【0034】
また、本発明の車両用軸受装置は、図示する形態に限らず本発明の範囲内において他の形態のものであってもよい。
前記実施形態では、図2に示しているように、フランジ部7がリブ6よりも厚く、フランジ部7とリブ6との境界が明確である浮島フランジタイプの外輪3を説明した。しかし、図6に示しているように、その境界が明らかでないタイプの外輪3もあり得る。この場合、図6に示しているように、フランジ側面15,16それぞれから外輪3の外周14に向かって仮想的な延長線K1,K2を設け、延長線K1及びフランジ側面15と、延長線K2及びフランジ側面16との間で挟まれた部分を、フランジ部7と定義し、上記の各説明と同様に、第1領域A1を第2領域A2よりも広くすることにより、第1領域A1側の部分の剛性を第2領域A2側の部分の剛性よりも高めている。
【符号の説明】
【0035】
1:車両用軸受装置、 2:シャフト(回転輪)、 3:外輪(固定輪)、 3a:中心、 4:玉(転動体)、 6:リブ、 7:フランジ部、 12:取り付け孔、 12a:中心、 13:仮想直線、 15:フランジ側面、 16:フランジ側面、 A1:第1領域、 A2:第2領域、 M:裾部、 N:径方向外側、 W:フランジ幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪が取り付けられる回転輪と、転動体を介して前記回転輪と同心上に配置された固定輪と、前記固定輪の上側の前後及び下側の前後それぞれに当該固定輪から径方向外側へ突出して設けられていると共に当該固定輪を車体側に固定するためのボルトが挿通する取り付け孔が形成されたフランジ部と、を備え、
前記フランジ部それぞれにおいて、前記取り付け孔の中心と前記固定輪の中心とを結ぶ仮想直線を境界として区画した場合に、前記固定輪を軸方向に見て、上下方向外側に位置する第1領域を上下方向中央側に位置する第2領域よりも広くすることにより、当該第1領域側の剛性を当該第2領域側の剛性よりも高めていることを特徴とする車両用軸受装置。
【請求項2】
前記フランジ部それぞれは、径方向外側から径方向内側の裾部に向かうにつれてフランジ幅が拡大する形状であり、
前記フランジ部それぞれにおいて、フランジ幅方向に関して前記第1領域の幅が前記第2領域の幅よりも大きい請求項1に記載の車両用軸受装置。
【請求項3】
前記第1領域におけるフランジ幅方向外側のフランジ側面は、径方向外側から裾部側に向かうにつれて前記仮想直線から離れる形状であり、
前記第2領域におけるフランジ幅方向外側のフランジ側面は、前記仮想直線と平行に形成されている請求項1又は2に記載の車両用軸受装置。
【請求項4】
周方向で隣り合う前記フランジ部の間にリブが設けられており、上下及び前後のリブはすべて同じ厚さである請求項1〜3のいずれか一項に記載の車両用軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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