説明

車両用輻射暖房装置

【課題】送風式空気調和装置の外気導入モードと内気導入モードの双方で、乗員が快適な暖房感を得られる車両用輻射暖房装置を提供する。
【解決手段】車室内の空気と車室外の空気を選択的に導入し、導入した空気より作製した空調風を車室内に吹き出す送風式空気調和装置と共に設置され、乗員に輻射熱を放射する輻射熱ヒータを有する車両用輻射暖房装置であって、送風式空気調和装置の導入空気が車室内の空気である場合と車室外の空気である場合によって、輻射熱ヒータの放射エネルギー量を可変した。輻射熱ヒータは、乗員の複数の部位にそれぞれ放射する複数の部位ヒータ部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗員を輻射熱で暖房する車両用輻射暖房装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用輻射暖房装置として、特許文献1や特許文献2に開示されたものがある。
【0003】
特許文献1の車両用輻射暖房装置100は、図14に示すように、シートバック101の裏面に配置された輻射熱ヒータ102と、この輻射熱ヒータ102の周囲を半分被うように配置された集光部材103とを備えている。輻射熱ヒータ102からの輻射熱は、集光部材103によって集められ、後席に着座している乗員Aの膝下部分aに放射される。
【0004】
特許文献2の車両用輻射暖房装置110は、図15に示すように、インストルメントパネル111の下部の左右位置に配置された輻射熱ヒータ112と、この輻射熱ヒータ112の周囲を半分被うように配置された集光部材113とを備えている。輻射熱ヒータ112からの輻射熱は、集光部材113によって集められ、乗員(運転手)の足元スペースbに放射される。
【0005】
ところで、車両用輻射暖房装置は、送風式空気調和装置の補助暖房として利用される。送風式空気調和装置は、車室外の空気(外気)又は車室内の空気(内気)を空調ユニット内に導入し、導入した空気を空調ユニット内で所望温度の空調風として車室内に吹き出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−6955号公報
【特許文献2】特開2006−224813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、送風式空気調和装置の外気導入モードでは、車室内に吹き出された温風が図16にて矢印で示すように流れ、内気導入モードでは、車室内に吹き出された温風が図17にて矢印で示すように流れる。従って、送風式空気調和装置の外気導入モード時と内気導入モード時では、温風の風流れの相違等によって乗員の体感温度が相違する。そのため、双方の空気導入モードで車両用輻射暖房装置を同じ放射エネルギーで作動させたのでは乗員が快適な暖房感を得られないという問題が発生する。
【0008】
特に、図16及び図17に示すように、双方の空気導入モードにおける後席の乗員A回りの温風の風流れが相違するため、輻射熱ヒータ112が同じ輻射熱を放射したのでは後席の乗員Aが快適な暖房感を得られない。
【0009】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、送風式空気調和装置の外気導入モードと内気導入モードの双方で、乗員が快適な暖房感を得られる車両用輻射暖房装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、車室内の空気と車室外の空気を選択的に導入し、導入した空気より作製した空調風を車室内に吹き出す送風式空気調和装置と共に設置され、乗員に輻射熱を放射する輻射熱ヒータを有する車両用輻射暖房装置であって、前記送風式空気調和装置の導入空気が車室内の空気である場合と車室外の空気である場合によって、前記輻射熱ヒータの放射エネルギー量を可変したことを特徴とする。
【0011】
前記輻射熱ヒータは、乗員の複数の部位にそれぞれ放射する複数の部位ヒータ部を有することが好ましい。
【0012】
複数の前記部位ヒータ部は、それぞれ放射エネルギー量を調整可能であり、前記送風式空気調和装置の導入空気が車室内の空気である場合と車室外の空気である場合によって、前記各部位ヒータ部の放射エネルギー量を可変することが好ましい。
【0013】
複数の前記部位ヒータ部は、乗員のひざやふくらはぎやももに向かって輻射熱を放射することが好ましい。
【0014】
複数の前記部位ヒータ部は、乗員のもも、ひざ、すね、つま先、ふきらはぎ、かかと、もも横、くるぶし横に向かって輻射熱をそれぞれ放射することが好ましい。
【0015】
前記輻射熱ヒータは、後席の乗員に対して輻射熱を放射することが好ましい。
【0016】
前記輻射熱ヒータの作動状態を指示できる操作部を有することが好ましい。
【0017】
前記操作部は、前記輻射熱ヒータの放射エネルギー量を可変できるお好みスイッチを有することが好ましい。
【0018】
前記操作部は、前記輻射熱ヒータの放射エネルギー量を最大にできるマックスホットスイッチを有することが好ましい。
【0019】
前記送風式空気調和装置は、通常暖房運転とエコノミー暖房運転を行うことができ、エコノミー暖房運転時には、後席に乗員が着座している場合には前記輻射熱ヒータを作動させ、後席に乗員が着座していない場合には前記輻射熱ヒータを作動させないようにしても良い。
【0020】
前記輻射熱ヒータは、パルス幅変調制御によって放射エネルギー量を可変するようにしても良い。
【0021】
前記輻射熱ヒータは、複数パターンの電熱線を有し、複数パターンの電熱線のオン・オフを制御することによって前記輻射熱ヒータの放射エネルギー量を可変するようにしても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、送風式空気調和装置が車室外の空気を導入する外気導入モードと車室内の空気を導入する内気導入モードで、それぞれ所望の暖房感が得られる値に輻射熱ヒータの放射エネルギー量を設定すれば、送風式空気調和装置の外気導入モードと内気導入モードの双方で乗員が快適な暖房感を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、輻射熱ヒータの設置状態を示す車室内の要部斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態を示し、輻射熱ヒータの設置状態を示す車室内の側面図である。
【図3】本発明の第1実施形態を示し、(a)は輻射熱パッドの斜視図、(b)は輻射熱パッドの断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態を示し、操作部の正面図である。
【図5】本発明の第1実施形態を示し、車両用輻射暖房装置の制御ブロック図である。
【図6】本発明の第1実施形態を示し、外気導入パターンと内気導入パターンにおける各部位の放射エネルギー量を示すマップデータ図である。
【図7】本発明の第1実施形態を示し、車両用輻射暖房装置の動作フローチャートである。
【図8】本発明の第1実施形態を示し、(a)は外気導入モード時の温風流れを示す図、(b)は外気導入モード時における車両用輻射暖房装置のオフ状態とオン状態での後席乗員の快適性を示す評価図である。
【図9】本発明の第1実施形態を示し、(a)は内気導入モード時の温風流れを示す図、(b)は内気導入モード時における車両用輻射暖房装置のオフ状態とオン状態での後席乗員の快適性を示す評価図である。
【図10】本発明の第2実施形態を示し、送風式空気調和装置の操作パネルの正面図である。
【図11】本発明の第2実施形態を示し、車両用輻射暖房装置の動作フローチャートである。
【図12】変形例に係る第1電熱パッドの電熱線パターンを示す図である。
【図13】変形例に係る第2電熱パッドの電熱線パターンを示す図である。
【図14】従来例を示し、輻射熱ヒータの設置状態を示す車室内の要部側面図である。
【図15】他の従来例を示し、輻射熱ヒータの設置状態を示す車室内の要部内面図である。
【図16】従来例を示し、外気導入モード時の温風流れを示す図である。
【図17】従来例を示し、内気導入モード時の温風流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1〜図9は、本発明の第1実施形態を示す。車両用空気調和システムは、送風式空気調和装置1と車両用輻射暖房装置10を備えている。
【0026】
送風式空気調和装置1は、センターコンソールメントパネル2(図8(a)、図9(a)に示す)の内部に空調ユニット3(図8(a)、図9(a)に示す)を有する。空調ユニット3は、外気導入口(図示せず)と内気導入口(図示せず)を有する。空調ユニット3は、外気導入口と内気導入口を選択的に開閉できるインテークドア(図示せず)を有する。空調ユニット3内には、インテークドアの位置によって車室外の空気(以下、外気という)と車室内の空気(以下、内気という)を選択的に導入できる。
【0027】
空調ユニット3内には、導入空気の上流側から下流側に向かって送風機(図示せず)、エバポレータ(図示せず)、加熱器(図示せず)が順に配置されている。空調ユニット3内には送風機の吸引力によって外気又は内気が導入される。空調ユニット3内に導入された空気(外気、内気)は、エバポレータで冷却され、加熱器で加熱され、所望温度の空調風(温風、冷風)とされる。所望温度の空調風は、車室の前部に配置された各吹出口(図示せず)より吹き出される。又、車室のリアパーセル4にはドラフターインレット5が、トランクルームにはドラフターアウトレット6が配置されている(図8(a)、図9(a)参照)。
【0028】
車両用輻射暖房装置10は、図1及び図2に示すように、後席の運転席側と助手席側のそれぞれを担当する2つの輻射熱ヒータ11と、2つの操作部30と、各操作部30の指令に基づいて各輻射熱ヒータ11を制御する制御部40とを備えている。
【0029】
各輻射熱ヒータ11は、第1〜第4電熱パッド13,14,15,16から構成されている。第1電熱パッド13は、前席7のシートバック7a及びシートクッション7bの背面に配置されている。第2電熱パッド14は、後席のシートクッション8bの前面に配置されている。第3電熱パッド15は、ドア9aの車室側の面に配置されている。第4電熱パッド16は、サイドシル9bの車室側の面に配置されている。
【0030】
第1電熱パッド13は、上下方向に分割された4つの部位ヒータ部13a〜13dを有する。4つの部位ヒータ部13a〜13dは、上方から順にもも用ヒータ部13a、ひざ用ヒータ部13b、すね用ヒータ部13c、つま先用ヒータ部13dである。4つの部位ヒータ部13a〜13dは、後席8の乗員Aの各担当部位に輻射熱をそれぞれ放射する。第2電熱パッド14は、上下方向に分割された2つの部位ヒータ部14a,14bを有する。2つの部位ヒータ部14a、14bは、上方がふきらはぎ用ヒータ部14aであり、下方がかかと用ヒータ部14bである。2つの部位ヒータ部14a,14bは、後席8の乗員Aの各担当部位に輻射熱をそれぞれ放射する。第3電熱パッド15は、全体としてもも横用ヒータ部15である。後席8の乗員Aのもも横に輻射熱を放射する。第4電熱パッド16は、全体としてくるぶし横用ヒータ部16である。後席8の乗員Aのくるぶし横に輻射熱を放射する。
【0031】
第1〜第4電熱パッド13〜16は、図3(a)、(b)に示すように、断熱材20、電熱線21が配策されたフェルト22、表皮23の積層構造である。電熱線21は、ジグザグ状に配策されている。電熱線21は、各部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16毎に独立配線されている。例えば、第1電熱パッド13では4分割され、各部位ヒータ部13a〜13dにそれぞれ別個独立に通電できるようになっている。
【0032】
2つの操作部30は、後席側のセンターコンソールメントパネル(図示せず)に配置されている。各操作部30は、図4に示すように、後席暖房スイッチ31と、2つのお好みスイッチ32a,32bと、マックスホットスイッチ33とを備えている。後席暖房スイッチ31は、車両用輻射暖房装置10のオン・オフを指令する。2つのお好みスイッチ32a,32bは、車両用輻射暖房装置10の放射エネルギー量をアップダウンできる。温度のアップダウンは、5段階に設定できる。マックスホットスイッチ33は、車両用輻射暖房装置10の放射エネルギー量を最大にするよう指令する。
【0033】
次に、車両用輻射暖房装置10の制御系を説明する。図5に示すように、制御部40には、送風式空気調和装置1の空気導入モード(外気導入モードか内気導入モードか否か)のデータと共に2つの操作部30の操作データが入力される。制御部40は、外気導入モードにおける各部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16の通電パターン(Aパターン)と内気導入モードにおける各部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16の通電パターン(Bパターン)をマップデータとして内蔵している。マップデータは、図6に示すように、各部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16における、外気導入モードと内気導入モードで所望の暖房感が得られる通電電力量である。この値は、実験データより求められたものである。
【0034】
制御部40は、図7のフローチャートに基づき、後席8の運転席側と助手席の各輻射熱ヒータ11を制御する。詳細には、各輻射熱ヒータ11のもも用ヒータ部13a、ひざ用ヒータ部13b、すね用ヒータ部13c、つま先用ヒータ部13d、ふきらはぎ用ヒータ部14a、かかと用ヒータ部14b、もも横用ヒータ部15、くるぶし横用ヒータ部16への通電をPWM制御(パルス幅変調制御)で別個独立に制御する。図7のフローチャートの内容については、下記する動作で説明する。
【0035】
次に、車両用輻射暖房装置10の制御フローを説明する。以下の説明では、後席8の運転席側と助手席側の2つの輻射熱ヒータ11の一方について説明し、簡略化を図る。
【0036】
図7に示すように、後席暖房スイッチ31がオンされると(ステップS1)、マックスホットスイッチ33がオンか否かをチェックする(ステップS2)。マックスホットスイッチ33がオンである場合には、第1〜第4電熱パッド13〜16への通電電力量を最大として通電する(ステップS3)。マックスホットスイッチ33がオフである場合には、送風式空気調和装置1の空気導入モードをチェックする(ステップS4)。外気導入である場合には、入力パターンAの通電電力で各部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16に通電する(ステップS5)。入力パターンAでの通電中にあって、お好みスイッチ32a,32bが操作されると(ステップS6)、温度アップ・温度ダウンの1段階につき10%の放射エネルギー量をアップダウンする(ステップS7)。
【0037】
内気導入である場合には、入力パターンBの通電電力量で各部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16に通電する(ステップS8)。入力パターンBでの通電中にあって、お好みスイッチ32a,32bが操作されると(ステップS9)、温度アップ・温度ダウンの1段階につき10%の放射エネルギー量をアップダウンする(ステップS10)。
【0038】
送風式空気調和装置1が暖房運転の外気導入モードでは、図8(a)に示すように、外気を空調ユニット3内に導入し、導入した外気より温風を作製して車室内に吹き出す。車室内に吹き出された温風は、前席7から後席に向かって流れ、ドラフターインレット5を経てドラフターアウトレット6より外部に排気される。又、内気導入モードでは、図9(a)に示すように、内気を空調ユニット3内に導入し、導入した内気より温風を作製して車室内に吹き出す。車室内に吹き出された温風は、後席8にまで十分に行き渡らずにUターンして空調ユニット3に吸い込まれる。従って、送風式空気調和装置1の外気導入モード時と内気導入モード時では、温風の風流れの相違等によって後席8の乗員Aの体感温度が相違する。
【0039】
このような送風式空気調和装置1の暖房運転にあって、車両用輻射暖房装置10がオンされていると、それぞれの空気導入モードで所望の暖房感が得られる放射エネルギーが各輻射熱ヒータ11より後席8の各乗員Aに放射される。従って、送風式空気調和装置1の外気導入モードと内気導入モードの双方で乗員Aが快適な暖房感を得られる。
【0040】
輻射熱ヒータ11は、乗員Aの複数の部位にそれぞれ放射する複数の部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16を有するので、きめ細かな暖房が行われるため、暖房感が向上する。
【0041】
複数の部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16は、それぞれ放射エネルギー量を調整可能であり、送風式空気調和装置1の導入空気が内気である場合と外気である場合によって、各部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16の放射エネルギー量を可変した。乗員Aは、下半身の各部位毎に温度による暖房感覚が異なり、外気導入モードと内気導入モードでそれぞれ各部位に応じた暖房を行うことができるため、暖房感が向上する。
【0042】
複数の部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16の一つは、乗員Aのひざに向かって輻射熱を放射するひざ用ヒータ部13bである。外気導入モードでは送風式空気調和装置1からの温風が後席8の乗員Aのひざの周囲を流れるが、内気導入モードでは送風式空気調和装置1からの温風が後席8の乗員Aのひざの周囲を流れないため、後席8の乗員Aのひざ部位への放射エネルギーを外気導入モードでは低く、内気導入モードでは高く設定することにより、双方の空気導入モードでひざに関して快適な暖房感を得ることができる。
【0043】
複数の部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16の一つは、後席8の乗員Aのふくらはぎに向かって輻射熱を放射するふくらはぎ用ヒータ部14aである。外気導入モードでは送風式空気調和装置1からの温風が後席8の乗員Aのひざの周囲を流れて上方に向かい、この風流れに誘導されて床面近くの冷たい空気が後席8の乗員Aのふくらはぎの周囲を流れ、内気導入モードでは送風式空気調和装置1からの温風が後席8の乗員Aのひざの周囲を流れて上方に向かうことがなく、床面近くの冷たい空気が上方に誘導されて後席8の乗員Aのひざの周囲を流れないため、後席8の乗員Aのひざ部位への放射エネルギーを外気導入モードでは高く、内気導入モードでは低く設定することにより、双方の空気導入モードでふくらはぎに関して快適な暖房感を得ることができる。
【0044】
複数の部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16の一つは、後席8の乗員Aのももに向かって輻射熱を放射するもも用ヒータ部13aである。外気導入モードでは送風式空気調和装置1からの温風が後席8の乗員Aのひざの周囲を流れて上方に向かい、この風流れに誘導されて床面近くの冷たい空気が後席8の乗員Aのももの周囲を流れ、内気導入モードでは送風式空気調和装置1からの温風が後席8の乗員Aのひざの周囲を流れて上方に向かうことがなく、床面近くの冷たい空気が上方に誘導されて後席8の乗員Aのももの周囲を流れないため、後席8の乗員Aのもも部位への放射エネルギーを外気導入モードでは高く、内気導入モードでは低く設定することにより、双方の空気導入モードでももに関して快適な暖房感を得ることができる。
【0045】
複数の部位ヒータ部13a〜13d,14a,14b,15,16は、後席8の乗員Aのもも、ひざ、すね、つま先、ふきらはぎ、かかと、もも横、くるぶし横に向かって輻射熱をそれぞれ放射するものである。従って、後席8の乗員Aの下半身のもも、ひざ、すね、つま先、ふきらはぎ、かかと、もも側部、くるぶし側部に対して、外気導入モードと内気導入モードでそれぞれ上記各部位に応じた暖房を行うことができるため、暖房感が向上する。
【0046】
輻射熱ヒータ11は、後席8の乗員Aに対して輻射熱を放射するよう構成されている。前席7の乗員Bは送風式空気調和装置1による暖房を十分に受けることができる。これに対し、後席8の乗員Aは送風式空気調和装置1による暖房を十分に受け得るとは限らないが輻射熱ヒータ11の輻射熱を得ることができる。従って、前席7と後席8の双方の乗員A,Bが快適な暖房感を得ることができる。
【0047】
図8(b)に示すように、外気導入モードにあって前席7の乗員Bが快適(全身フィーリング、下半身フィーリング)と感じるように送風式空気調和装置1を作動させた場合に、輻射熱ヒータ11を作動させないときと輻射熱ヒータ11を作動させたときで後席8の乗員Aの快適性を実験した。すると、輻射熱ヒータ11を作動させないときには、後席8の乗員Aが全身フィーリング及び下半身フィーリング共に「やや寒い」と感じた。これに対し、輻射熱ヒータ11を作動させたときには、後席8の乗員Aが全身フィーリング及び下半身フィーリング共に「やや暑い」と「快適」の中間のフィーリングと感じるという結果が得られた。
【0048】
図9(b)に示すように、内気導入モードにあって前席7の乗員Bが快適(全身フィーリング、下半身フィーリング)と感じるように送風式空気調和装置1を作動させた場合に、輻射熱ヒータ11を作動させないときと輻射熱ヒータ11を作動させたときで後席8の乗員Aの快適性を実験した。すると、輻射熱ヒータ11を作動させないときには、後席8の乗員Aが全身フィーリングで「やや寒い」、下半身フィーリングで「寒い」と感じた。これに対し、輻射熱ヒータ11を作動させたときには、後席8の乗員Aが全身フィーリングと下半身フィーリングで共に「快適」と感じるという結果が得られた。
【0049】
輻射熱ヒータ11の作動状態を指示できる操作部30を有する。従って、乗員Aの意志によって輻射熱ヒータ11の作動状態を決定できるため、乗員Aの好みに応じた暖房を行うことができる。
【0050】
操作部30は、輻射熱ヒータ11の放射エネルギー量を可変できるお好みスイッチ32a,32bを有する。従って、後席8の乗員Aは温度による暖房感が個々に異なり、乗員Aの好みに応じた暖房を行うことができる。
【0051】
操作部30は、輻射熱ヒータ11の放射エネルギー量を最大にできるマックスホットスイッチ33を有する。従って、後席8の乗員Aの意志によって迅速な暖房を行うことができる。
【0052】
輻射熱ヒータ11は、PWM制御(パルス幅変調制御)で輻射熱ヒータ11の放射エネルギー量を可変した。従って、輻射熱ヒータ11の放射エネルギー量の変更調整が容易にできる。
【0053】
(第2実施形態)
図10及び図11は、本発明の第2実施形態を示す。この第2実施形態の車両用空気調和システムは、前記第1実施形態と同様に、送風式空気調和装置と車両用輻射暖房装置を備えているが、送風式空気調和装置は通常暖房運転の他にエコノミー暖房運転ができる。つまり、送風式空気調和装置の操作部30Aは、図10に示すように、吹出し送風量モード選択スイッチ34と、導入空気選択・室内温度設定スイッチ35、吹き出し風量モード選択スイッチ36、窓晴らしスイッチ37、エアコンスイッチ38、エコノミー暖房選択スイッチ39を有する。又、運転席側と助手席側の各後席には、着座センサ(図示せず)がそれぞれ設けられている。車両用輻射暖房装置の制御部(図示せず)には、送風式空気調和装置の空気導入モード(外気導入モードか内気導入モードか否か)のデータと共に、各着座センサ(図示せず)の検出データが入力される。制御部は、図11に示すフローチャートを実行する。
【0054】
他の構成は、前記第1実施形態と同様であるため、重複説明を省略する。
【0055】
次に、車両用輻射暖房装置の制御フローを説明する。以下の説明では、後席の運転席側と助手席側の2つの輻射熱ヒータの一方について説明し、簡略化を図る。
【0056】
図11に示すように、エアコンスイッチ38がオンされた状態にあって、エコノミー暖房スイッチ39のオフ時には(ステップS11)、全座席オートエアコン制御(通常暖房運転)を行う(ステップS12)。全座席オートエアコン制御では、車両用輻射暖房装置の輻射熱ヒータに関して、後席暖房スイッチ39のオン・オフ状態に基づいて前記第1実施形態と同様の制御を実行する(ステップS21〜S30)。この制御内容については、重複説明を回避するため省略する。
【0057】
エコノミー暖房スイッチ39のオン時には(ステップS11)には、前席優先オートエアコン制御(エコノミー暖房運転)を行う(ステップS13)。前席優先オートエアコン制御では、後席の着座センサがオンか否かをチェックする(ステップS14)。着座センサがオフ、つまり、乗員がいない場合には、車両用輻射暖房装置の輻射熱ヒータを作動させない。着座センサがオン、つまり、乗員がいる場合には、車両用暖房装置の輻射熱ヒータに関して、後席暖房スイッチのオン・オフ状態に基づいて前記第1実施形態と同様の制御を実行する(ステップS21〜S30)。この制御内容については、重複説明を回避するため省略する。
【0058】
この第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
【0059】
その上、送風式空気調和装置は、通常暖房運転とエコノミー暖房運転を行うことができ、エコノミー暖房運転時には、後席に乗員が着座している場合には輻射熱ヒータを作動させ、後席に乗員が着座していない場合には輻射熱ヒータを作動させない。従って、乗員が乗っていない座席に対しては輻射熱ヒータを作動させないため、省エネルギー化(省電力化)になる。
【0060】
(輻射熱ヒータの変形例)
図12及び図13は、変形例に係る輻射熱ヒータの電熱線パターンを示す。図12は第1電熱パッド13Aの電熱線パターン、図13は第2電熱パッド14A電熱線パターンを示す。
【0061】
図12及び図13に示すように、輻射熱ヒータの第1電熱パッド13Aと第2電熱パッド14Aは、入力パターンA用に配策された電熱線21A,21Bと、入力パターンB用に配策された電熱線21C,21Dとをそれぞれ備えている。又、輻射熱ヒータの第3電熱パッド(図示せず)と第4電熱パッド(図示せず)も、入力パターンA用に配策された電熱線(図示せず)と、入力パターンB用に配策された電熱線(図示せず)とをそれぞれ備えている。そして、入力パターンAで通電する場合には、入力パターンA用に配策された電熱線21A,21Bに通電し、入力パターンBで通電する場合には、入力パターンB用に配策された電熱線21C,21Dに通電する。
【0062】
各電熱パッド13A,14A,(図示せず)は、複数パターンの電熱線21A,21B,21C,21D,(図示せず)を有し、複数パターンの電熱線21A,21B,21C,21D,(図示せず)のオン・オフを制御することによって各電熱パッド13A,14A,(図示せず)の放射エネルギー量を可変するので、各電熱パッド13A,14A,(図示せず)への通電制御が容易である。
【0063】
(変形例)
前記第1実施形態及び第2実施形態では、車両用輻射暖房装置は、後席の乗員を暖房するよう設定されているが、前席の乗員を暖房するようにしても良い。
【符号の説明】
【0064】
1 送風式空気調和装置
10 車両用輻射熱暖房装置
11 輻射熱ヒータ
21,21A〜21D 電熱線
30 操作部
32a,32b お好みスイッチ
33 マックスホットスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の空気と車室外の空気を選択的に導入し、導入した空気より作製した空調風を車室内に吹き出す送風式空気調和装置(1)と共に設置され、乗員に輻射熱を放射する輻射熱ヒータ(11)を有する車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記送風式空気調和装置(1)の導入空気が車室内の空気である場合と車室外の空気である場合によって、前記輻射熱ヒータ(11)の放射エネルギー量を可変したことを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項2】
請求項1記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記輻射熱ヒータ(11)は、乗員の複数の部位にそれぞれ放射する複数の部位ヒータ部(13a)〜(13d),(14a),(14b),(15),(16)を有することを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項3】
請求項2記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
複数の前記部位ヒータ部(13a)〜(13d),(14a),(14b),(15),(16)は、それぞれ放射エネルギー量を調整可能であり、前記送風式空気調和装置(1)の導入空気が車室内の空気である場合と車室外の空気である場合によって、前記各部位ヒータ部(13a)〜(13d),(14a),(14b),(15),(16)の放射エネルギー量を可変したことを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
複数の前記部位ヒータ部(13a)〜(13d),(14a),(14b),(15),(16)の一つは、乗員のひざに向かって輻射熱を放射するものであることを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
複数の前記部位ヒータ部(13a)〜(13d),(14a),(14b),(15),(16)の一つは、乗員のふくらはぎに向かって輻射熱を放射するものであることを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれかに記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
複数の前記部位ヒータ部(13a)〜(13d),(14a),(14b),(15),(16)の一つは、乗員のももに向かって輻射熱を放射するものであることを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項7】
請求項3記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
複数の前記部位ヒータ部(13a)〜(13d),(14a),(14b),(15),(16)は、乗員のもも、ひざ、すね、つま先、ふきらはぎ、かかと、もも横、くるぶし横に向かって輻射熱をそれぞれ放射するものであることを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかに記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記輻射熱ヒータ(11)は、後席の乗員に対して輻射熱を放射することを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれかに記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記輻射熱ヒータ(11)の作動状態を指示できる操作部(30)を有することを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項10】
請求項9記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記操作部(30)は、前記輻射熱ヒータ(11)の放射エネルギー量を可変できるお好みスイッチ(32a),(32b)を有することを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項11】
請求項9又は請求項10記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記操作部(30)は、前記輻射熱ヒータ(11)の放射エネルギー量を最大にできるマックスホットスイッチ(33)を有することを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項12】
請求項1〜請求項11のいずれかに記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記送風式空気調和装置(1)は、通常暖房運転とエコノミー暖房運転を行うことができ、エコノミー暖房運転時には、後席に乗員が着座している場合には前記輻射熱ヒータ(11)を作動させ、後席に乗員が着座していない場合には前記輻射熱ヒータ(11)を作動させないことを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項13】
請求項2〜請求項12のいずれかに記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記輻射熱ヒータ(11)は、パルス幅変調制御によって放射エネルギー量が可変されたことを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。
【請求項14】
請求項2〜請求項12のいずれかに記載の車両用輻射暖房装置(10)であって、
前記輻射熱ヒータ(11)は、複数パターンの電熱線(21A),(21B),(21C),(21D)を有し、複数パターンの電熱線(21A),(21B),(21C),(21D)のオン・オフを制御することによって前記輻射熱ヒータ(11)の放射エネルギー量を可変したことを特徴とする車両用輻射暖房装置(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−246091(P2011−246091A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124136(P2010−124136)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】