車両用送風装置
【課題】後席前方に設置する際のスペース効率が良好で、静音性に優れた車両用送風装置を提供する。
【解決手段】シロッコファン装置14の回転駆動軸部17aは、吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上から、車両上下方向で、下側に所定寸法DL1、オフセットされた位置CLに、軸延設方向が車幅方向に沿うように設けられている。
筒状羽根部17cの回転駆動軸部17aが、所定寸法DL1、オフセットされた位置CLに設定されることにより、回転駆動軸部17aが、センタコンソール4の上面部よりも、下方に所定寸法DL2、オフセットされて内蔵される。
このため、シロッコファン装置14の略吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上及びセンタコンソール4の上面部位置よりも上下方向で、下方にシロッコファン本体17が位置して、道程Lを長く設定することにより、慣性吸込を増大させる。
【解決手段】シロッコファン装置14の回転駆動軸部17aは、吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上から、車両上下方向で、下側に所定寸法DL1、オフセットされた位置CLに、軸延設方向が車幅方向に沿うように設けられている。
筒状羽根部17cの回転駆動軸部17aが、所定寸法DL1、オフセットされた位置CLに設定されることにより、回転駆動軸部17aが、センタコンソール4の上面部よりも、下方に所定寸法DL2、オフセットされて内蔵される。
このため、シロッコファン装置14の略吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上及びセンタコンソール4の上面部位置よりも上下方向で、下方にシロッコファン本体17が位置して、道程Lを長く設定することにより、慣性吸込を増大させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部座席に向けて、前席の空気調和された室内空気を送風することが出来る車両用送風装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車室としての乗員室の後席に向けて、空調装置によって、温調された空気を送風するダクト部が設けられたコンソールボックスが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このようなものでは、乗員室内の運転席及び助手席との間に設けられたセンタコンソールボックスの内部に挿通されたダクト部内に導かれた空気を、後席前方に位置するセンタコンソールボックスの後端に設けられたファン装置によって、送り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−153802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の車両用送風装置では、前記センタコンソールボックスの内部にダクト部を挿通しなければならないので、収納スペースを減少させる虞があるとともに、乗員室内の運転席及び助手席との間にダクト部を挿通させる為のスペースや、或いは、プロペラ状のファン装置を設置する車幅方向の寸法によっては、このファン装置を高速で回転させなければ、所望の風量を得ることが困難である場合があった。
【0006】
そこで、この発明は、後席前方に設置する際のスペース効率が良好で、静音性に優れた車両用送風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の車両用送風装置では、センタコンソール後部に設けられた筐体内に、前記シロッコファンを回転駆動する前記回転駆動軸部が、軸延設方向を車幅方向に沿わせて、しかも、前記吸込口及び吹出口との間を結ぶ線上から、車両上下方向で、下側にオフセットされた位置に設けられている車両用送風装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用送風装置では、前記回転駆動軸部が、軸延設方向を車幅方向に沿わせて、しかも、前記吸込口及び吹出口との間を結ぶ線上から、車両上下方向で、下側にオフセットされた位置に設けられている。
【0009】
このため、前記シロッコファンの外径寸法を大きく設定出来、充分な風量を低速回転運転で得られるので、駆動に伴う騒音を低減出来ると共に、車幅方向に必要とされる寸法を減少させて、スペース効率を向上させることが出来る。
【0010】
また、前記筐体内で、前記吸込口から、該シロッコファンに至るまでの道程を、前記吸込口及び吹出口との間を結ぶ線上に回転駆動軸部を位置させる場合に比して長く設定出来るので、送風効率を向上させて、ダクト部材等の別部材を不要とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の車両用送風装置で、前席を取り外した状態で、乗員室内の後部座席から、前方を見た全体の構成を説明する斜視図である。
【図2】実施の形態の車両用送風装置で、要部の構成を説明する車両用送風装置の分解斜視図である。
【図3】実施の形態の車両用送風装置で、各部の構成を説明し、図1中A−A線に沿った位置の縦断面図である。
【図4】実施の形態の車両用送風装置で、筐体の外観を示す斜視図である。
【図5】実施の形態の車両用送風装置で、図4中B−B線に沿った位置での断面図である。
【図6】実施の形態の車両用送風装置で、図4中C−C線に沿った位置での断面図である。
【図7】実施の形態の車両用送風装置で、図4中D−D線に沿った位置での断面図である。
【図8】実施の形態の車両用送風装置で、シロッコファン近傍のケースの構成を説明する縦断面図である。
【図9】実施の形態の車両用送風装置で、吸込口近傍の拡大斜視図である。
【図10】実施の形態の車両用送風装置で、筐体内に設けられたケースを車両下方から見た一部透過正面図である。
【図11】実施の形態の車両用送風装置で、筐体内に設けられた駆動モータと、シロッコファン本体との構成を説明し、車両下方から図4中E−E線に沿った方向への透過断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の車両用送風装置を、図1乃至図11に基づいて説明する。
【0013】
まず、図1乃至図4を用いて、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車両用送風装置では、車両1の車室としての乗員室2の左,右に一対設けられた前席3間には、センタコンソール4が設けられている。
【0014】
このセンタコンソール4の後部4aで、後部座席5の前方位置には、このセンタコンソール4の一部を構成する側板4b,4bと一体に設けられた筐体6が配置されている。
【0015】
この筐体6は、主に前席空間部分内の雰囲気(温度,湿度及び香り等)を有する空気を吸い込む吸込口8が設けられた前側カバー部材7と、この筐体6内から、送出された空気を、前記後部座席5方向へ配風する吹出口9,9が、車両上下方向に縦列に設けられた後部カバー部材10とを有している。
【0016】
このうち、前記前側カバー部材7の吸込口8には、図9に示す様な下向きルーバー部材11が嵌着されている。
【0017】
この下向きルーバー部材11には、正面視略ロ字状の枠体11cの内側面に一体となるように、多数の横ルーバー11a…及び、縦ルーバー11b…が、格子状に設けられて、主に構成されている。
【0018】
このうち、前記横ルーバー11a…は、車両前方下向きに向けて、所定の傾斜角度α(α=約0.1度〜60度、好ましくは、10度〜30度)が与えられて、多数の横ルーバー11a…が、車両上下方向に、略等間隔を置いて、平行に配設されて、内側に設けられた縦ルーバー11b…によって、格子状となるように支持されている。
【0019】
また、図1,図2に示す様に、前記後部カバー部材10の後面部10aに開口形成された各吹出口9,9には、閉塞可能な多方向ルーバー部材12,12が装着されていると共に、多方向ルーバー部材12,12の下方位置には、ファン速切り替えスイッチ13が、これらの多方向ルーバー部材12,12と上下一列に並ぶように設けられている。
【0020】
この多方向ルーバー部材12,12は、後部座席の乗員が、角度変更操作することにより、個別に開閉塞及び配風方向の変更が可能となる可動式弁蓋体を有していて、図1中実線で示すように、車両上下方向或いは、図1中二点鎖線で示す様に、後部座席の左,右に、上下何れの方向にも、上,下個別に、又は上,下同時に、多方向ルーバー部材12,12からの送風の風向を変更可能なように構成されている。
【0021】
また、前記ファン速切り替えスイッチ13は、ダイヤル式摘み部13aを回転操作することにより、ファン速を停止状態(OFF)と、強風,弱風等、多段階変速回転駆動状態若しくは、無段階変速回転駆動状態とのうち、何れかに選択操作可能となるように構成されている。
【0022】
この実施の形態の車両用送風装置では、図2に示す様に、前記後部カバー部材10の各吹出口9,9を開口形成した後面部10aが、車両下方に向けて傾斜されている。
【0023】
このため、前記吹出口9,9に設けられた多方向ルーバー部材12,12と、上下一列に並ぶように、この後面部10aに連ねられて設けることが可能な設置スペースが確保出来る。
そして、この筐体6の内部には、図3に示す様に、側面視略渦巻貝形状の外観を有するシロッコファン装置14と、このシロッコファン装置14から送出された送風を、前記各吹出口9,9に、上下均等となるように配風する配風ダクト部材15とが設けられている。
【0024】
このうち、前記シロッコファン装置14は、左,右に分割可能で、前記配風ダクト部材15を介して、前記吹出口9に連通される出口側開口部14bが形成される内側ケース14a,14aが設けられていると共に、前記吸込口8と接続される入口側開口部14dを有する外側ケース14cが設けられている。
【0025】
また、この外側ケース14cによって覆われた前記内側ケース14a,14aの左,右外側面14e,14eとの間には、この内側ケース14a,14aの手前で、車幅方向左,右二つの流路に分離されて、この左,右外側面14e,14eに各々開口形成された内部連通開口部14f,14fから、前記内側ケース14a,14aの内部に、前記乗員室2内の前席3,3近傍の空気を導入する左,右一対の導入路14g,14gが、連通されて形成されている(図4参照)。
【0026】
この実施の形態の左,右一対の導入路14g,14gの流路断面積の合計面積は、前記吸込口8の流路断面積と同等若しくはそれ以上の大きさとして、吸込抵抗が増大しないように構成されている。
【0027】
また、前記内側ケース14a,14aの内部から、前記出口側開口部14bに接続された配風ダクト部材15を介して、前記吹出口9,9に分配される送風は、図2中二点鎖線で示すように、この出口側開口部14bに一体に形成された絞り部14hを通過する際に、配風方向が調整される。
【0028】
すなわち、この絞り部14hでは、上下方向に延設されて、前記吹出口9,9又は前記出口側開口部14bの下側略半分を覆う位置まで膨出形成される抵抗板部14iを有すると共に、この抵抗板部14iの上縁部から、上下方向寸法hで、各部分の幅方向寸法wを、切り込み位置に応じて徐変させる舌状風量調整絞り14jが切り欠き形成されている。
【0029】
また、前記配風ダクト部材15の円形の上,下連通路15a,15a間に上下方向で略中央部には、上,下連通路15a,15aを分離するように、中央分離橋状部15bが車幅方向に沿って設けられている。
【0030】
そして、前記出口側開口部14bの絞り部14hを通過した配風が、この中央分離橋状部15bを中心として、上下方向に略均等に、前記上,下の吹出口9,9へ分配されるように、この中央前記舌状風量調整絞り14jの上下方向中央位置へ向けて、配風される状態となるように、前記舌状風量調整絞り14jの切り欠きの上下方向寸法h及び、各部分の幅方向寸法wが設定されている。
【0031】
更に、前記シロッコファン装置14には、これらの内側ケース14a,14a及び外側ケース14b内に、モータ軸16a方向を、車両1の車幅方向に沿わせて、横向きに内蔵される駆動モータ16が設けられている。
【0032】
この駆動モータには、このモータ軸16aと直結連結されて、この駆動モータ16のモータ回転駆動力で回転する回転駆動軸部17aを有して、この回転駆動軸部17aの回転に伴って回転する多翼ファン部材としてのシロッコファン本体17が連結されている。
【0033】
このシロッコファン本体17には、図11に示す様に、前記モータ軸16aに外嵌されて一体に共廻りする小径円筒状の前記回転駆動軸部17aが設けられている。
【0034】
この回転駆動軸部17aは、軸延設方向を車幅方向に沿うように、前記モータ軸16a延設方向と一致する方向に軸延設方向を有している。
【0035】
また、このシロッコファン本体17には、多翼として複数のブレード17b…を、この回転駆動軸部17aの周囲に径方向一定間隔を置いて、全周に渡り、周上に複数枚所定の角度及び断面形状で並べて、大径円筒状とする筒状羽根部17cが設けられている。
【0036】
そして、これらの回転駆動軸部17aと筒状羽根部17cとの間には、棒状の複数のスポーク部17d…が、軸方向では斜めに連結されて、正面視放射状に設けられている。
【0037】
これらのスポーク部17d…が、斜めに連結されることによって、各スポーク部17d,17d間に、間隙17e…が各々設けられて、空気の流入が妨げられること無く、傘状(円錐状)に一体に成型されている。
【0038】
更に、この実施の形態では、図11に示すように、前記シロッコファン本体17の各端面17f,17gから、前記回転駆動軸部17aの端縁17h及び駆動モータ16のモータ軸16aの端縁16bまでの車幅方向への各突設寸法w1,w2が、略同一(w1=w2)となるように突出された形状に設定されていて、外側ケース14c及び内側ケース14a,14aの外形形状が、車幅方向左右対称形となるように構成されている。
【0039】
そして、前記シロッコファン本体17の両側から、略均等に空気を吸い込んで送出出来るように、前記シロッコファン本体17の筒状羽根部17cの車幅方向中央位置が、前記内側ケース14a,14aの内部空間の空気送出路14kの左,右中央位置に設けられている。
【0040】
このため、図4に示す様に、この内側ケース14a,14aと、外側ケース14cとの間に形成される前記導入路14g,14gでは、左,右同一の流路面積を得られて、円滑に前記内部連通開口部14f,14fから、導入された空気を、前記シロッコファン装置14の回転駆動によって送出して、左,右均等の風量で、後部座席5方向へ前記上,下の吹出口から、配風することが出来るように構成されている。
【0041】
また、図3に示す様に、前記シロッコファン装置14の回転駆動軸部17aは、前記吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上から、車両上下方向で、下方に所定寸法DL1、オフセットされた下側位置CLに、軸延設方向を、車幅方向に沿わせて設けられている。
【0042】
更に、この実施の形態では、前記筒状羽根部17cの回転駆動軸部17aが、所定寸法DL1、オフセットされた位置CLに設定されることにより、図3に示す様に、前記回転駆動軸部17aが、前記センタコンソール4の上面部よりも、下方に所定寸法DL2、オフセットされることにより、前記シロッコファン本体17の略全体が、これらの前記吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上及びセンタコンソール4の上面部の車両上下方向位置で、下方に位置するように設定されている。
【0043】
次に、この実施の形態の車両用送風装置の作用効果について説明する。
【0044】
この実施の形態の車両用送風装置では、図3に示すように、前記回転駆動軸部17aが、軸延設方向を車幅方向に沿わせて、しかも、前記センタコンソールの後部4aに設けられた吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上から、車両上下方向で、下側にオフセットされた位置に設けられている。
【0045】
このため、前記シロッコファン本体17の回転駆動軸部17aを、前記中心線VL上に設定する場合に比して、このシロッコファン本体17の外径寸法d1が、この大きく設定されて充分な風量を低速回転駆動で得られる。
【0046】
このため、回転駆動に伴う騒音を低減出来る。
【0047】
また、回転駆動軸部17aを車両上下方向に沿わせて配置する場合に比して、前記シロッコファン本体17の外径寸法d1の制約が比較的少なく、車幅方向に必要とされる寸法を減少させて、スペース効率を向上させることが出来る。
【0048】
更に、図10及び図11に示す様に、前記シロッコファン本体17の各端面17f,17gから、前記回転駆動軸部17aの端縁17h及び駆動モータ16のモータ軸16aの端縁16bまでの車幅方向への各突設寸法w1,w2が、略同一(w1=w2)となるように設定されている。
【0049】
このため、前記シロッコファン本体17の内側に、挿入される前記駆動モータ16の寸法を大きく設定することが出来、シロッコファン本体17の各ブレード17bで構成される円筒内側に、挿入されて、車幅方向で重複される前記駆動モータ16のモータケースが、重複された寸法分、充分な駆動力、特に駆動トルクを得られるように大きく設定しても、車幅方向に必要とされる寸法を減少させることが出来る。
【0050】
また、駆動モータ16と重複される寸法が、大きく設定されることにより、前記筒状羽根部17cの各ブレード17b…の車幅方向長さ寸法,幅方向寸法及び数量を増大させることが出来、更に低速回転駆動でも、充分な送風量を得られて、消音化に寄与出来る。
【0051】
しかも、図3に示す様に、前記吸込口8の下向きルーバー部材11の各横ルーバー11a…間を通過した前席3近傍の温調された空気e1は、前記筐体6内で、二点鎖線で示す様に、この吸込口8から、前記シロッコファン本体17に至るまでの直線的な道程Lを、前記吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上に、回転駆動軸部17aを位置させる場合に比して長く設定出来る。
【0052】
このため、図1に示す様に、前席3,3空間部分内の温度及び湿度を有する空気E0が、図3中導入空気e1として、比較的長い直線的な道程Lで、慣性吸込が行われて、ダクト部材等の別部材を不要としても、送風量を多くすることにより、送風効率を向上させることが出来る。
【0053】
更に、この実施の形態では、図4に示す様に、前記吸込口8の流路断面積と略同一若しくは、それ以上の総断面積を有する車幅方向左,右一対の導入路14g,14gが、前記内側ケース14a,14aの手前で、車幅方向左,右二つの流路に分離されて、この左,右外側面14e,14eに各々開口形成された内部連通開口部14f,14fから、この内側ケース14a,14aの内部空間の空気送出路14kに流入する。
【0054】
このように、前記乗員室2内の前席3,3近傍の空気が、左,右一対で、対称形の導入路14g,14gを介して、前記内側ケース14a,14aの左,右外側面14e,14e外側を迂回するように連通されているので、通風抵抗の少ない道程Lが、長く設定されて、送風効率を向上させることが出来る。
【0055】
また、この実施の形態では、図2に示す様に、前記シロッコファン装置14から送出させる空気が、前記後部カバー部材10に縦列に形成された各吹出口9,9に、均等に供給される。
【0056】
即ち、前記配風ダクト部材15の上,下連通路15a,15aを車両上下方向に分割する中央分離橋状部15bを中心として配風されるように、空気送出路kからの送風を調整する絞り部14hが、設けられている。
【0057】
この絞り部14hでは、前記シロッコファン装置14の内側ケース14a,14aの出口側開口部14bに位置する前記抵抗板部14iの上縁が、図8に示す様に一部切り欠かれて、舌状風量調整絞り14jが形成されている。
【0058】
この舌状風量調整絞り14jは、前記上下方向寸法h及び、各部分の幅方向寸法wの設定が行われて、形状により、空気送出路14kからの送風e2が、最適化されることにより前記中央分離橋状部15bを中心に当接されるように、送り出されることが可能となる。
【0059】
従って、前記抵抗板部14i及び絞り部14hを有する前記出口側開口部14bを、前記送風e2が通過することにより、図3中に示す様な、上下方向で均等な風量及び風速となる送風e3,e4を得られるように、前記中央分離橋状部15bで分配されて、各吹出口9,9から、略均等な送風e3,e4を送り出させることが出来る。
【0060】
また、図11に示す様に、前記シロッコファン本体17の各端面17f,17gから、前記回転駆動軸部17aの端縁17h及び駆動モータ16のモータ軸16aの端縁16bまでの車幅方向への各突設寸法w1,w2が、略同一(w1=w2)となるように設定されている。
【0061】
このため、図10に示す様に、シロッコファン装置14の外形形状を、入口側開口部14dから、出口側開口部14bに至るまでの中心線を挟んで、車幅方向左右で対称形状と容易にすることができる。
【0062】
しかも、該シロッコファン本体17の送風を行う各ブレード17b…が一体に形成された筒状羽根部17cの車幅方向中心位置が、前記吸込口8及び吹出口9を結ぶ中心線SLと、一致するので、上,下の吹出口に各々配風される送風e3,e4も、左右対称で風量ムラが殆ど無い。
【0063】
更に、この実施の形態では、図1に示す様に、前記後部カバー部材10の後面部10aに開口形成された各吹出口9,9には、閉塞可能な多方向ルーバー部材12,12が装着されている。
【0064】
また、これらの多方向ルーバー部材12,12の下方位置には、ファン速切り替えスイッチ13が、これらの多方向ルーバー部材12,12と上下一列に並ぶように、同一の傾斜角度を有する後面部10aに良好な外観品質を有して、設けられている。
【0065】
このため、車両下方に向けて傾斜されている後面部10aに開口形成された各吹出口9,9の多方向ルーバー部材12,12と共に、縦列にファン速切り替えスイッチ13が、同じ後面部10aの車両後方へ延設された位置に配置される。
【0066】
従って、これらの多方向ルーバー部材12,12の角度調整による配風と共に、このファン速切り替えスイッチ13のダイヤル式摘み部13aを操作して、風量の調整が、後部座席5の左,右何れの座席に着座した乗員からも行えて、操作性が良好である。
【0067】
更に、この実施の形態では、ファン速切り替えスイッチ13が、車両下方に向けて傾斜されている後面部10aで、車両後方に最も突出した位置に設けられているので、このダイヤル式摘み部13aのダイヤル操作が、容易に行える。
【0068】
また、この実施の形態の下向きルーバー部材11には、正面視略ロ字状の枠体11cの内側面に一体となるように、多数の横ルーバー11a…及び、縦ルーバー11b…が、格子状に設けられている。
【0069】
更に、これらの横ルーバー11a…には、各々車両前方下向きに所定の傾斜角度αが与えられている。
【0070】
このため、ゴミ又は、粉塵や又はこれらの交雑物が、この格子状に設けられた多数の横ルーバー11a…及び、縦ルーバー11b…に干渉して、前記筐体6の内部に浸入しにくくなると共に、車両前方下向きの多数の横ルーバー11a…によって、図3中二点鎖線で示す様に、乗員室2の前席3近傍の空気E0が、筐体6内に導入された直後、一旦上昇して、前記導入路14gを通過する空気e1の道程Lを、更に延長することが出来、慣性吸込みを効果的に行わせることが出来る。
【0071】
更に、この実施の形態では、図1又は図2に示す様に、前記吹出口9,9に、各々可動式弁蓋体を有する多方向ルーバー部材12,12が設けられている。
【0072】
このため、後部座席5の乗員が、これらの多方向ルーバー部材12,12の角度変更、若しくは閉塞等の操作を行うことにより、個別に開閉塞及び配風方向の変更が可能となり、図1中実線で示すように、車両上下方向或いは、図1中二点鎖線で示す様に、後部座席5の左,右方向mp何れの方向にも、上,下の多方向ルーバー部材12,12で個別に、又は上,下の多方向ルーバー部材12,12で同時に、送風の風向が変更可能である。
【0073】
従って、前記ファン速切り替えスイッチ13と、この多方向ルーバー部材12,12とを組み合わせて、風向と同時に風量の調整も行うことが可能で、後部座席5の乗員の嗜好に応じた多彩な送風の調整が出来る。
【0074】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の車両用送風装置に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0075】
即ち、前記実施の形態の車両用送風装置では、回転駆動軸部17aを車幅方向に沿わせて、内側ケース14a,14aと外側ケース14cとの間に、左,右一対の導入路14g,14gを設けることにより、道程Lを長く設定したものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、内側ケース14aの少なくとも左,右一外側面14e等に、複数箇所、開口形成された内部連通開口部14fや、他の部分に形成された内部連通開口部から、内側ケース14a,14a内空間に流入させるもの等、回転駆動軸部17aが、中心線VLからオフセットされているものであれば、どのような形状の内側ケース14a及び外側ケース14cであっても良く、また、シロッコファン本体17のブレード17b…の形状、数量及び材質が、特に限定されるものではない。
【0076】
また、シロッコファン装置14の略吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上及びセンタコンソール4の上面部位置よりも上下方向で、下方にシロッコファン本体17が位置して、道程Lが長く設定されているが、特にこれに限らず、中心線VL上からオフセットされていれば、例えば、上下方向で上方にシロッコファン本体17が位置しても良く、道程Lが長く設定されて慣性吸込を増大させるものであれば、シロッコファン本体17及びシロッコファン装置14の位置、形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
前記実施の形態では、この発明の車両用送風装置として、後部座席の前方に適用したものを用いて説明してきたが、例えば、2列目の後部座席に限らず、三列目以後、どのような後部座席であっても良く、また、車幅方向左,右内側壁近傍等、どのような自動車の箇所に用いられる車両用送風装置であっても良く、また、車両1の駆動源も内燃機関によるものに限定されること無く、電気自動車或いは、ハイブリッドカー等であってもよいことは当然である。
【符号の説明】
【0078】
1 車両
2 乗員室(車室)
3 前席
4 センタコンソール
4a 後部
5 後部座席
6 筐体
8 吸込口
9 吹出口
11 下向きルーバー部材
11a 横ルーバー
12 多方向ルーバー部材
13 ファン速切り替えスイッチ
14 シロッコファン装置(シロッコファン)
14a,14a内側ケース(ケースの一部)
14b 出口側開口部
14c 外側ケース
17 シロッコファン本体
17a 回転駆動軸部
17c 筒状羽根部
17f,17g車幅方向端面
α 傾斜角度
CL オフセットされた下側位置
VL 中心線
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の後部座席に向けて、前席の空気調和された室内空気を送風することが出来る車両用送風装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車室としての乗員室の後席に向けて、空調装置によって、温調された空気を送風するダクト部が設けられたコンソールボックスが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【0003】
このようなものでは、乗員室内の運転席及び助手席との間に設けられたセンタコンソールボックスの内部に挿通されたダクト部内に導かれた空気を、後席前方に位置するセンタコンソールボックスの後端に設けられたファン装置によって、送り出すように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−153802号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の車両用送風装置では、前記センタコンソールボックスの内部にダクト部を挿通しなければならないので、収納スペースを減少させる虞があるとともに、乗員室内の運転席及び助手席との間にダクト部を挿通させる為のスペースや、或いは、プロペラ状のファン装置を設置する車幅方向の寸法によっては、このファン装置を高速で回転させなければ、所望の風量を得ることが困難である場合があった。
【0006】
そこで、この発明は、後席前方に設置する際のスペース効率が良好で、静音性に優れた車両用送風装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の車両用送風装置では、センタコンソール後部に設けられた筐体内に、前記シロッコファンを回転駆動する前記回転駆動軸部が、軸延設方向を車幅方向に沿わせて、しかも、前記吸込口及び吹出口との間を結ぶ線上から、車両上下方向で、下側にオフセットされた位置に設けられている車両用送風装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用送風装置では、前記回転駆動軸部が、軸延設方向を車幅方向に沿わせて、しかも、前記吸込口及び吹出口との間を結ぶ線上から、車両上下方向で、下側にオフセットされた位置に設けられている。
【0009】
このため、前記シロッコファンの外径寸法を大きく設定出来、充分な風量を低速回転運転で得られるので、駆動に伴う騒音を低減出来ると共に、車幅方向に必要とされる寸法を減少させて、スペース効率を向上させることが出来る。
【0010】
また、前記筐体内で、前記吸込口から、該シロッコファンに至るまでの道程を、前記吸込口及び吹出口との間を結ぶ線上に回転駆動軸部を位置させる場合に比して長く設定出来るので、送風効率を向上させて、ダクト部材等の別部材を不要とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態の車両用送風装置で、前席を取り外した状態で、乗員室内の後部座席から、前方を見た全体の構成を説明する斜視図である。
【図2】実施の形態の車両用送風装置で、要部の構成を説明する車両用送風装置の分解斜視図である。
【図3】実施の形態の車両用送風装置で、各部の構成を説明し、図1中A−A線に沿った位置の縦断面図である。
【図4】実施の形態の車両用送風装置で、筐体の外観を示す斜視図である。
【図5】実施の形態の車両用送風装置で、図4中B−B線に沿った位置での断面図である。
【図6】実施の形態の車両用送風装置で、図4中C−C線に沿った位置での断面図である。
【図7】実施の形態の車両用送風装置で、図4中D−D線に沿った位置での断面図である。
【図8】実施の形態の車両用送風装置で、シロッコファン近傍のケースの構成を説明する縦断面図である。
【図9】実施の形態の車両用送風装置で、吸込口近傍の拡大斜視図である。
【図10】実施の形態の車両用送風装置で、筐体内に設けられたケースを車両下方から見た一部透過正面図である。
【図11】実施の形態の車両用送風装置で、筐体内に設けられた駆動モータと、シロッコファン本体との構成を説明し、車両下方から図4中E−E線に沿った方向への透過断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態の車両用送風装置を、図1乃至図11に基づいて説明する。
【0013】
まず、図1乃至図4を用いて、全体の構成から説明すると、この実施の形態の車両用送風装置では、車両1の車室としての乗員室2の左,右に一対設けられた前席3間には、センタコンソール4が設けられている。
【0014】
このセンタコンソール4の後部4aで、後部座席5の前方位置には、このセンタコンソール4の一部を構成する側板4b,4bと一体に設けられた筐体6が配置されている。
【0015】
この筐体6は、主に前席空間部分内の雰囲気(温度,湿度及び香り等)を有する空気を吸い込む吸込口8が設けられた前側カバー部材7と、この筐体6内から、送出された空気を、前記後部座席5方向へ配風する吹出口9,9が、車両上下方向に縦列に設けられた後部カバー部材10とを有している。
【0016】
このうち、前記前側カバー部材7の吸込口8には、図9に示す様な下向きルーバー部材11が嵌着されている。
【0017】
この下向きルーバー部材11には、正面視略ロ字状の枠体11cの内側面に一体となるように、多数の横ルーバー11a…及び、縦ルーバー11b…が、格子状に設けられて、主に構成されている。
【0018】
このうち、前記横ルーバー11a…は、車両前方下向きに向けて、所定の傾斜角度α(α=約0.1度〜60度、好ましくは、10度〜30度)が与えられて、多数の横ルーバー11a…が、車両上下方向に、略等間隔を置いて、平行に配設されて、内側に設けられた縦ルーバー11b…によって、格子状となるように支持されている。
【0019】
また、図1,図2に示す様に、前記後部カバー部材10の後面部10aに開口形成された各吹出口9,9には、閉塞可能な多方向ルーバー部材12,12が装着されていると共に、多方向ルーバー部材12,12の下方位置には、ファン速切り替えスイッチ13が、これらの多方向ルーバー部材12,12と上下一列に並ぶように設けられている。
【0020】
この多方向ルーバー部材12,12は、後部座席の乗員が、角度変更操作することにより、個別に開閉塞及び配風方向の変更が可能となる可動式弁蓋体を有していて、図1中実線で示すように、車両上下方向或いは、図1中二点鎖線で示す様に、後部座席の左,右に、上下何れの方向にも、上,下個別に、又は上,下同時に、多方向ルーバー部材12,12からの送風の風向を変更可能なように構成されている。
【0021】
また、前記ファン速切り替えスイッチ13は、ダイヤル式摘み部13aを回転操作することにより、ファン速を停止状態(OFF)と、強風,弱風等、多段階変速回転駆動状態若しくは、無段階変速回転駆動状態とのうち、何れかに選択操作可能となるように構成されている。
【0022】
この実施の形態の車両用送風装置では、図2に示す様に、前記後部カバー部材10の各吹出口9,9を開口形成した後面部10aが、車両下方に向けて傾斜されている。
【0023】
このため、前記吹出口9,9に設けられた多方向ルーバー部材12,12と、上下一列に並ぶように、この後面部10aに連ねられて設けることが可能な設置スペースが確保出来る。
そして、この筐体6の内部には、図3に示す様に、側面視略渦巻貝形状の外観を有するシロッコファン装置14と、このシロッコファン装置14から送出された送風を、前記各吹出口9,9に、上下均等となるように配風する配風ダクト部材15とが設けられている。
【0024】
このうち、前記シロッコファン装置14は、左,右に分割可能で、前記配風ダクト部材15を介して、前記吹出口9に連通される出口側開口部14bが形成される内側ケース14a,14aが設けられていると共に、前記吸込口8と接続される入口側開口部14dを有する外側ケース14cが設けられている。
【0025】
また、この外側ケース14cによって覆われた前記内側ケース14a,14aの左,右外側面14e,14eとの間には、この内側ケース14a,14aの手前で、車幅方向左,右二つの流路に分離されて、この左,右外側面14e,14eに各々開口形成された内部連通開口部14f,14fから、前記内側ケース14a,14aの内部に、前記乗員室2内の前席3,3近傍の空気を導入する左,右一対の導入路14g,14gが、連通されて形成されている(図4参照)。
【0026】
この実施の形態の左,右一対の導入路14g,14gの流路断面積の合計面積は、前記吸込口8の流路断面積と同等若しくはそれ以上の大きさとして、吸込抵抗が増大しないように構成されている。
【0027】
また、前記内側ケース14a,14aの内部から、前記出口側開口部14bに接続された配風ダクト部材15を介して、前記吹出口9,9に分配される送風は、図2中二点鎖線で示すように、この出口側開口部14bに一体に形成された絞り部14hを通過する際に、配風方向が調整される。
【0028】
すなわち、この絞り部14hでは、上下方向に延設されて、前記吹出口9,9又は前記出口側開口部14bの下側略半分を覆う位置まで膨出形成される抵抗板部14iを有すると共に、この抵抗板部14iの上縁部から、上下方向寸法hで、各部分の幅方向寸法wを、切り込み位置に応じて徐変させる舌状風量調整絞り14jが切り欠き形成されている。
【0029】
また、前記配風ダクト部材15の円形の上,下連通路15a,15a間に上下方向で略中央部には、上,下連通路15a,15aを分離するように、中央分離橋状部15bが車幅方向に沿って設けられている。
【0030】
そして、前記出口側開口部14bの絞り部14hを通過した配風が、この中央分離橋状部15bを中心として、上下方向に略均等に、前記上,下の吹出口9,9へ分配されるように、この中央前記舌状風量調整絞り14jの上下方向中央位置へ向けて、配風される状態となるように、前記舌状風量調整絞り14jの切り欠きの上下方向寸法h及び、各部分の幅方向寸法wが設定されている。
【0031】
更に、前記シロッコファン装置14には、これらの内側ケース14a,14a及び外側ケース14b内に、モータ軸16a方向を、車両1の車幅方向に沿わせて、横向きに内蔵される駆動モータ16が設けられている。
【0032】
この駆動モータには、このモータ軸16aと直結連結されて、この駆動モータ16のモータ回転駆動力で回転する回転駆動軸部17aを有して、この回転駆動軸部17aの回転に伴って回転する多翼ファン部材としてのシロッコファン本体17が連結されている。
【0033】
このシロッコファン本体17には、図11に示す様に、前記モータ軸16aに外嵌されて一体に共廻りする小径円筒状の前記回転駆動軸部17aが設けられている。
【0034】
この回転駆動軸部17aは、軸延設方向を車幅方向に沿うように、前記モータ軸16a延設方向と一致する方向に軸延設方向を有している。
【0035】
また、このシロッコファン本体17には、多翼として複数のブレード17b…を、この回転駆動軸部17aの周囲に径方向一定間隔を置いて、全周に渡り、周上に複数枚所定の角度及び断面形状で並べて、大径円筒状とする筒状羽根部17cが設けられている。
【0036】
そして、これらの回転駆動軸部17aと筒状羽根部17cとの間には、棒状の複数のスポーク部17d…が、軸方向では斜めに連結されて、正面視放射状に設けられている。
【0037】
これらのスポーク部17d…が、斜めに連結されることによって、各スポーク部17d,17d間に、間隙17e…が各々設けられて、空気の流入が妨げられること無く、傘状(円錐状)に一体に成型されている。
【0038】
更に、この実施の形態では、図11に示すように、前記シロッコファン本体17の各端面17f,17gから、前記回転駆動軸部17aの端縁17h及び駆動モータ16のモータ軸16aの端縁16bまでの車幅方向への各突設寸法w1,w2が、略同一(w1=w2)となるように突出された形状に設定されていて、外側ケース14c及び内側ケース14a,14aの外形形状が、車幅方向左右対称形となるように構成されている。
【0039】
そして、前記シロッコファン本体17の両側から、略均等に空気を吸い込んで送出出来るように、前記シロッコファン本体17の筒状羽根部17cの車幅方向中央位置が、前記内側ケース14a,14aの内部空間の空気送出路14kの左,右中央位置に設けられている。
【0040】
このため、図4に示す様に、この内側ケース14a,14aと、外側ケース14cとの間に形成される前記導入路14g,14gでは、左,右同一の流路面積を得られて、円滑に前記内部連通開口部14f,14fから、導入された空気を、前記シロッコファン装置14の回転駆動によって送出して、左,右均等の風量で、後部座席5方向へ前記上,下の吹出口から、配風することが出来るように構成されている。
【0041】
また、図3に示す様に、前記シロッコファン装置14の回転駆動軸部17aは、前記吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上から、車両上下方向で、下方に所定寸法DL1、オフセットされた下側位置CLに、軸延設方向を、車幅方向に沿わせて設けられている。
【0042】
更に、この実施の形態では、前記筒状羽根部17cの回転駆動軸部17aが、所定寸法DL1、オフセットされた位置CLに設定されることにより、図3に示す様に、前記回転駆動軸部17aが、前記センタコンソール4の上面部よりも、下方に所定寸法DL2、オフセットされることにより、前記シロッコファン本体17の略全体が、これらの前記吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上及びセンタコンソール4の上面部の車両上下方向位置で、下方に位置するように設定されている。
【0043】
次に、この実施の形態の車両用送風装置の作用効果について説明する。
【0044】
この実施の形態の車両用送風装置では、図3に示すように、前記回転駆動軸部17aが、軸延設方向を車幅方向に沿わせて、しかも、前記センタコンソールの後部4aに設けられた吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上から、車両上下方向で、下側にオフセットされた位置に設けられている。
【0045】
このため、前記シロッコファン本体17の回転駆動軸部17aを、前記中心線VL上に設定する場合に比して、このシロッコファン本体17の外径寸法d1が、この大きく設定されて充分な風量を低速回転駆動で得られる。
【0046】
このため、回転駆動に伴う騒音を低減出来る。
【0047】
また、回転駆動軸部17aを車両上下方向に沿わせて配置する場合に比して、前記シロッコファン本体17の外径寸法d1の制約が比較的少なく、車幅方向に必要とされる寸法を減少させて、スペース効率を向上させることが出来る。
【0048】
更に、図10及び図11に示す様に、前記シロッコファン本体17の各端面17f,17gから、前記回転駆動軸部17aの端縁17h及び駆動モータ16のモータ軸16aの端縁16bまでの車幅方向への各突設寸法w1,w2が、略同一(w1=w2)となるように設定されている。
【0049】
このため、前記シロッコファン本体17の内側に、挿入される前記駆動モータ16の寸法を大きく設定することが出来、シロッコファン本体17の各ブレード17bで構成される円筒内側に、挿入されて、車幅方向で重複される前記駆動モータ16のモータケースが、重複された寸法分、充分な駆動力、特に駆動トルクを得られるように大きく設定しても、車幅方向に必要とされる寸法を減少させることが出来る。
【0050】
また、駆動モータ16と重複される寸法が、大きく設定されることにより、前記筒状羽根部17cの各ブレード17b…の車幅方向長さ寸法,幅方向寸法及び数量を増大させることが出来、更に低速回転駆動でも、充分な送風量を得られて、消音化に寄与出来る。
【0051】
しかも、図3に示す様に、前記吸込口8の下向きルーバー部材11の各横ルーバー11a…間を通過した前席3近傍の温調された空気e1は、前記筐体6内で、二点鎖線で示す様に、この吸込口8から、前記シロッコファン本体17に至るまでの直線的な道程Lを、前記吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上に、回転駆動軸部17aを位置させる場合に比して長く設定出来る。
【0052】
このため、図1に示す様に、前席3,3空間部分内の温度及び湿度を有する空気E0が、図3中導入空気e1として、比較的長い直線的な道程Lで、慣性吸込が行われて、ダクト部材等の別部材を不要としても、送風量を多くすることにより、送風効率を向上させることが出来る。
【0053】
更に、この実施の形態では、図4に示す様に、前記吸込口8の流路断面積と略同一若しくは、それ以上の総断面積を有する車幅方向左,右一対の導入路14g,14gが、前記内側ケース14a,14aの手前で、車幅方向左,右二つの流路に分離されて、この左,右外側面14e,14eに各々開口形成された内部連通開口部14f,14fから、この内側ケース14a,14aの内部空間の空気送出路14kに流入する。
【0054】
このように、前記乗員室2内の前席3,3近傍の空気が、左,右一対で、対称形の導入路14g,14gを介して、前記内側ケース14a,14aの左,右外側面14e,14e外側を迂回するように連通されているので、通風抵抗の少ない道程Lが、長く設定されて、送風効率を向上させることが出来る。
【0055】
また、この実施の形態では、図2に示す様に、前記シロッコファン装置14から送出させる空気が、前記後部カバー部材10に縦列に形成された各吹出口9,9に、均等に供給される。
【0056】
即ち、前記配風ダクト部材15の上,下連通路15a,15aを車両上下方向に分割する中央分離橋状部15bを中心として配風されるように、空気送出路kからの送風を調整する絞り部14hが、設けられている。
【0057】
この絞り部14hでは、前記シロッコファン装置14の内側ケース14a,14aの出口側開口部14bに位置する前記抵抗板部14iの上縁が、図8に示す様に一部切り欠かれて、舌状風量調整絞り14jが形成されている。
【0058】
この舌状風量調整絞り14jは、前記上下方向寸法h及び、各部分の幅方向寸法wの設定が行われて、形状により、空気送出路14kからの送風e2が、最適化されることにより前記中央分離橋状部15bを中心に当接されるように、送り出されることが可能となる。
【0059】
従って、前記抵抗板部14i及び絞り部14hを有する前記出口側開口部14bを、前記送風e2が通過することにより、図3中に示す様な、上下方向で均等な風量及び風速となる送風e3,e4を得られるように、前記中央分離橋状部15bで分配されて、各吹出口9,9から、略均等な送風e3,e4を送り出させることが出来る。
【0060】
また、図11に示す様に、前記シロッコファン本体17の各端面17f,17gから、前記回転駆動軸部17aの端縁17h及び駆動モータ16のモータ軸16aの端縁16bまでの車幅方向への各突設寸法w1,w2が、略同一(w1=w2)となるように設定されている。
【0061】
このため、図10に示す様に、シロッコファン装置14の外形形状を、入口側開口部14dから、出口側開口部14bに至るまでの中心線を挟んで、車幅方向左右で対称形状と容易にすることができる。
【0062】
しかも、該シロッコファン本体17の送風を行う各ブレード17b…が一体に形成された筒状羽根部17cの車幅方向中心位置が、前記吸込口8及び吹出口9を結ぶ中心線SLと、一致するので、上,下の吹出口に各々配風される送風e3,e4も、左右対称で風量ムラが殆ど無い。
【0063】
更に、この実施の形態では、図1に示す様に、前記後部カバー部材10の後面部10aに開口形成された各吹出口9,9には、閉塞可能な多方向ルーバー部材12,12が装着されている。
【0064】
また、これらの多方向ルーバー部材12,12の下方位置には、ファン速切り替えスイッチ13が、これらの多方向ルーバー部材12,12と上下一列に並ぶように、同一の傾斜角度を有する後面部10aに良好な外観品質を有して、設けられている。
【0065】
このため、車両下方に向けて傾斜されている後面部10aに開口形成された各吹出口9,9の多方向ルーバー部材12,12と共に、縦列にファン速切り替えスイッチ13が、同じ後面部10aの車両後方へ延設された位置に配置される。
【0066】
従って、これらの多方向ルーバー部材12,12の角度調整による配風と共に、このファン速切り替えスイッチ13のダイヤル式摘み部13aを操作して、風量の調整が、後部座席5の左,右何れの座席に着座した乗員からも行えて、操作性が良好である。
【0067】
更に、この実施の形態では、ファン速切り替えスイッチ13が、車両下方に向けて傾斜されている後面部10aで、車両後方に最も突出した位置に設けられているので、このダイヤル式摘み部13aのダイヤル操作が、容易に行える。
【0068】
また、この実施の形態の下向きルーバー部材11には、正面視略ロ字状の枠体11cの内側面に一体となるように、多数の横ルーバー11a…及び、縦ルーバー11b…が、格子状に設けられている。
【0069】
更に、これらの横ルーバー11a…には、各々車両前方下向きに所定の傾斜角度αが与えられている。
【0070】
このため、ゴミ又は、粉塵や又はこれらの交雑物が、この格子状に設けられた多数の横ルーバー11a…及び、縦ルーバー11b…に干渉して、前記筐体6の内部に浸入しにくくなると共に、車両前方下向きの多数の横ルーバー11a…によって、図3中二点鎖線で示す様に、乗員室2の前席3近傍の空気E0が、筐体6内に導入された直後、一旦上昇して、前記導入路14gを通過する空気e1の道程Lを、更に延長することが出来、慣性吸込みを効果的に行わせることが出来る。
【0071】
更に、この実施の形態では、図1又は図2に示す様に、前記吹出口9,9に、各々可動式弁蓋体を有する多方向ルーバー部材12,12が設けられている。
【0072】
このため、後部座席5の乗員が、これらの多方向ルーバー部材12,12の角度変更、若しくは閉塞等の操作を行うことにより、個別に開閉塞及び配風方向の変更が可能となり、図1中実線で示すように、車両上下方向或いは、図1中二点鎖線で示す様に、後部座席5の左,右方向mp何れの方向にも、上,下の多方向ルーバー部材12,12で個別に、又は上,下の多方向ルーバー部材12,12で同時に、送風の風向が変更可能である。
【0073】
従って、前記ファン速切り替えスイッチ13と、この多方向ルーバー部材12,12とを組み合わせて、風向と同時に風量の調整も行うことが可能で、後部座席5の乗員の嗜好に応じた多彩な送風の調整が出来る。
【0074】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態の車両用送風装置に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0075】
即ち、前記実施の形態の車両用送風装置では、回転駆動軸部17aを車幅方向に沿わせて、内側ケース14a,14aと外側ケース14cとの間に、左,右一対の導入路14g,14gを設けることにより、道程Lを長く設定したものを示して説明してきたが、特にこれに限らず、内側ケース14aの少なくとも左,右一外側面14e等に、複数箇所、開口形成された内部連通開口部14fや、他の部分に形成された内部連通開口部から、内側ケース14a,14a内空間に流入させるもの等、回転駆動軸部17aが、中心線VLからオフセットされているものであれば、どのような形状の内側ケース14a及び外側ケース14cであっても良く、また、シロッコファン本体17のブレード17b…の形状、数量及び材質が、特に限定されるものではない。
【0076】
また、シロッコファン装置14の略吸込口8及び吹出口9との間を結ぶ中心線VL上及びセンタコンソール4の上面部位置よりも上下方向で、下方にシロッコファン本体17が位置して、道程Lが長く設定されているが、特にこれに限らず、中心線VL上からオフセットされていれば、例えば、上下方向で上方にシロッコファン本体17が位置しても良く、道程Lが長く設定されて慣性吸込を増大させるものであれば、シロッコファン本体17及びシロッコファン装置14の位置、形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
前記実施の形態では、この発明の車両用送風装置として、後部座席の前方に適用したものを用いて説明してきたが、例えば、2列目の後部座席に限らず、三列目以後、どのような後部座席であっても良く、また、車幅方向左,右内側壁近傍等、どのような自動車の箇所に用いられる車両用送風装置であっても良く、また、車両1の駆動源も内燃機関によるものに限定されること無く、電気自動車或いは、ハイブリッドカー等であってもよいことは当然である。
【符号の説明】
【0078】
1 車両
2 乗員室(車室)
3 前席
4 センタコンソール
4a 後部
5 後部座席
6 筐体
8 吸込口
9 吹出口
11 下向きルーバー部材
11a 横ルーバー
12 多方向ルーバー部材
13 ファン速切り替えスイッチ
14 シロッコファン装置(シロッコファン)
14a,14a内側ケース(ケースの一部)
14b 出口側開口部
14c 外側ケース
17 シロッコファン本体
17a 回転駆動軸部
17c 筒状羽根部
17f,17g車幅方向端面
α 傾斜角度
CL オフセットされた下側位置
VL 中心線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の前席間に位置するセンタコンソール後部で、後部座席前方に設けられた筐体内に、前席空間部の空気を吸い込む吸込口と、モータ回転駆動力によって回転駆動軸を回転中心として回転駆動されて、吸い込まれた空気を送出するシロッコファンと、送出された空気を後部座席方向へ配風する吹出口とを有する車両用送風装置であって、
前記回転駆動軸は、前記吸込口及び吹出口との間を結ぶ線上から、車両上下方向で、オフセットした位置とし、且つ、軸延設方向を車幅方向に沿わせて設けることを特徴とする車両用送風装置。
【請求項2】
前記シロッコファンから送出させる空気を、各吹出口に均等に供給するように調整する絞り部が、該シロッコファンのケースの出口側開口部に形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用送風装置。
【請求項3】
前記シロッコファンの車幅方向端面からの各突設寸法を同一となるように設定することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用送風装置。
【請求項4】
前記筐体の後面部に、開口形成された吹出口と、前記シロッコファンの回転速度を調整可能なファン速切り替えスイッチとが、上下一列に並ぶように設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか一項記載の車両用送風装置。
【請求項5】
前記吸込口には、車両前方下向きに向けて、所定の傾斜角度αで傾斜する横ルーバーが設けられた下向きルーバー部材を嵌着していることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか一項記載の車両用送風装置。
【請求項6】
前記吹出口には、閉塞可能な多方向ルーバー部材が装着されていることを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか一項記載の車両用送風装置。
【請求項1】
車室の前席間に位置するセンタコンソール後部で、後部座席前方に設けられた筐体内に、前席空間部の空気を吸い込む吸込口と、モータ回転駆動力によって回転駆動軸を回転中心として回転駆動されて、吸い込まれた空気を送出するシロッコファンと、送出された空気を後部座席方向へ配風する吹出口とを有する車両用送風装置であって、
前記回転駆動軸は、前記吸込口及び吹出口との間を結ぶ線上から、車両上下方向で、オフセットした位置とし、且つ、軸延設方向を車幅方向に沿わせて設けることを特徴とする車両用送風装置。
【請求項2】
前記シロッコファンから送出させる空気を、各吹出口に均等に供給するように調整する絞り部が、該シロッコファンのケースの出口側開口部に形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用送風装置。
【請求項3】
前記シロッコファンの車幅方向端面からの各突設寸法を同一となるように設定することを特徴とする請求項1又は2記載の車両用送風装置。
【請求項4】
前記筐体の後面部に、開口形成された吹出口と、前記シロッコファンの回転速度を調整可能なファン速切り替えスイッチとが、上下一列に並ぶように設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか一項記載の車両用送風装置。
【請求項5】
前記吸込口には、車両前方下向きに向けて、所定の傾斜角度αで傾斜する横ルーバーが設けられた下向きルーバー部材を嵌着していることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか一項記載の車両用送風装置。
【請求項6】
前記吹出口には、閉塞可能な多方向ルーバー部材が装着されていることを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか一項記載の車両用送風装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−131308(P2012−131308A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284074(P2010−284074)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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