説明

車両用過電流検出装置

【課題】 小型かつ製造容易な構成で低コストの車両用過電流検出装置を提供する。
【解決手段】 基板10と、基板10上に載置され、車載装置OBUの電源供給線に介在するFETベアチップ20と、2つの入力電極35,36を備え、FETベアチップに流入または流出する電流の電位差を検出する電位差検出回路32と、電位差検出回路により検出された電位差を電流値に変換する電流値算出回路33と、FETベアチップのドレイン電極21と電位差検出回路の一方の入力電極35とを接続する第一のボンディングワイヤ41と、電位差検出回路の一方の入力電極35と電位差検出回路の他方の入力電極36とを接続する第二のボンディングワイヤ42と、を備える車両用過電流検出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載装置の電源供給線に介在するベアチップを含む回路に発生する過電流を検出する車両用過電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気アクチュエータ等の車載装置を駆動するために用いられる電流制御用素子を過電流から保護するため、種々の車両用過電流検出装置や保護回路が使用されている。
【0003】
このような車両用過電流検出装置として、電気アクチュエータの電源供給線における正極側に直列接続される正極側シャント抵抗と、電源供給線における負極側に直列接続される負極側シャント抵抗と、正極側シャント抵抗に流れる過電流を検出する正極側過電流検出回路と、負極側シャント抵抗に流れる過電流を検出する負極側過電流検出回路と、正極側過電流検出回路と負極側過電流検出回路とから出力される検出信号を入力し、検出信号データを時間的に平均化処理して過電流の発生を判定する過電流判定手段と、を備えた技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、電気負荷に対する給電を開始するとき、計時動作を開始して、予め設定されているマスク期間が経過したとき、マスク期間終了信号を生成するマスク部と、電気負荷に対する給電を開始したとき、電気負荷に対する過電流検出を中止し、マスク部からマスク期間終了信号が出力された時点で、電気負荷に対する過電流検出動作を開始する過電流検出部と、を備えた技術が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−333063号公報
【特許文献2】特開平11−301340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2に記載の過電流検出回路にはシャント抵抗等の抵抗器が用いられている。このような抵抗器には、アクチュエータの駆動電流やワイヤーハーネス等からの過電流に耐えうるよう十分な大きさの定格電力が求められる。しかしながら、定格電流の大きな抵抗器は実装面積が大きく且つコストが高いため、過電流検出装置の大型化およびコスト上昇を招来する問題がある。また、はんだ付け等の基板に実装する工程を要するが、製造にかかる手間を削減する要望がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、小型かつ製造容易な構成で低コストの車両用過電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する第1の課題解決手段は、基板と、前記基板上に載置され、車載装置の電源供給線に介在するベアチップと、2つの入力電極を備え、前記ベアチップに流入または流出する電流の電位差を検出する電位差検出回路と、前記電位差検出回路により検出された電位差を電流値に変換する電流値算出回路と、前記ベアチップの電極と前記電位差検出回路の第一入力電極とを接続する第一ボンディングワイヤと、前記電位差検出回路の第一入力電極と前記電位差検出回路の第二入力電極とを接続する第二ボンディングワイヤと、を備える、ことである。
【0009】
また、第2の課題解決手段は、前記ベアチップは、ドレイン電極とソース電極とゲート電極とを有するFETベアチップであり、前記第一ボンディングワイヤは、前記FETベアチップのソース電極と前記電位差検出回路の前記第一入力電極とを接続し、前記電位差検出回路の前記第二入力電極は、グラウンドに接続される、ことである。
【0010】
また、第3の課題解決手段は、前記電位差検出回路は増幅回路を備える、ことである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベアチップと電位差検出回路との接続にボンディングワイヤが使用されるため、ボンディングワイヤによるベアチップと基板上の回路との接続工程において、ベアチップと電位差検出回路との接続をスムーズに行える。例えば、まずベアチップの電極と電位差検出回路の第一入力電極とを第一ボンディングワイヤで接続し、次に電位差検出回路の第一入力電極と電位差検出回路の第二入力電極とを第二ボンディングワイヤで接続することにより、基板上のベアチップと電位差検出回路との接続が完了する。そのため、従来の車両用過電流検出装置のようにシャント抵抗等の抵抗器を基板に取り付けるためのはんだ付け等の工程が不要となり、車両用過電流検出装置の製造におけるはんだ付不良が低減し、製造容易となる。また、大きな定格電流を必要とする抵抗器が不要となるため、小型かつ低コストに車両用過電流検出装置を構成できる。また、車載装置の電源供給線に介在するベアチップに車両用過電流検出装置が取り付けられるため、小型化による車載性の向上と軽量化を達成できる。
【0012】
第2の課題解決手段によれば、FETベアチップのソース電極側にあるグラウンドに接続された第二入力電極と第一入力電極との間に介在する第二ボンディングワイヤの両端間の電位差が電位差検出回路により検出されるため、FETベアチップのドレイン電極側に電位差検出回路を設けた場合と比較して電位が安定する。そのため、電位差検出回路により検出される電位差をより正確に測定でき、誤動作を低減できる。
【0013】
第3の課題解決手段によれば、電位差検出回路が増幅回路を備えるため、抵抗値の小さいボンディングワイヤを使用して第二ボンディングワイヤの両端間の電位差が微小となっても電位差の計測誤差を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる。なお、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付し、重複説明は省略される。
【0016】
図1は、本発明にかかる過電流検出装置の一実施形態を示す構成図である。本実施例の車両用過電流検出装置1は、例えば車両に搭載されるサンルーフ開閉機構やドア開閉機構等の車載装置OBUに備えられるブラシモータ等の電気アクチュエータの電源供給線に介在しており、車載装置OBUの電気アクチュエータの駆動状態を制御するものである。
【0017】
車両用過電流検出装置1は、基板10に組み込まれた電気回路を形成する。この基板10上に、FETベアチップ(ベアチップ)20と中央演算処理装置(CPU)30とが載置される。
【0018】
FETベアチップ20は、電界効果トランジスタ(FET)のチップであり、基板上に直接載置され、ワイヤボンディングによりチップ上の電極と基板上の電極とを結線するものである。本実施例におけるFETベアチップ20は、ソース電極21とゲート電極22とドレイン電極23とを備える。このうちゲート電極22とドレイン電極23は、それぞれ基板電極11,12にボンディングワイヤ43,44により接続される。
【0019】
中央演算処理装置30は、車載装置OBUの電気アクチュエータの駆動状態を制御するためにFETベアチップ20に供給されるゲート電圧を制御する制御装置であり、さらに、FETベアチップ20に供給されるソース電流に所定の電流値を超える電流(過電流)が流れ込むのを検知したときにゲート電圧を0ボルトにしてドレイン電流を遮断する過電流保護機構を備える。過電流保護機構は、中央演算処理装置30に内蔵された増幅回路31と電位差検出回路32と電流値算出回路33とゲート電圧制御回路34とにより構成される。
【0020】
また、中央演算処理装置30は、複数の電極35,36,37を備える。電極(第一入力電極)35は、ボンディングワイヤ(第一ボンディングワイヤ)41を介してFETベアチップ20のソース電極21に接続される。電極(第二入力電極)36は、ボンディングワイヤ(第二ボンディングワイヤ)42を介して電極35に接続されるとともに、グラウンドGに接続される。電極(ゲート出力電極)37は、基板10上の配線を介して基板電極11に接続される。尚、本実施例のように中央演算処理装置30を構成する各回路要素は1つの集積素子としたものでなくてもよく、個別の素子として基板19上に配置されてもよい。
【0021】
増幅回路31は、本実施例では電位差検出回路32に備えられており、2つの入力電極35,36の間の電位差を増幅する差動増幅回路が使用される。本実施例では2つの入力電極35,36の間をボンディングワイヤ42により接続しているため、ボンディングワイヤ42の抵抗値が小さい場合には2つの入力電極35,36の間の電位差が微小となってしまう。増幅回路31は、電位差検出回路32により精度良く検出できるレベルになるように電位差を増幅する。
【0022】
電位差検出回路32は、2つの入力電極35,36の間の電位差を検出して電流値算出回路33に値を送る。電流値算出回路33は、電位差検出回路32により検出された電位差に基づいて電流値を算出し、ゲート電圧制御回路34に値を送る。使用するボンディングワイヤ42の抵抗値によって電位差と電流の関係が変化するため、電流値算出回路33は、ボンディングワイヤ42の抵抗値を記憶する記憶部(図示なし)を備える。さらに記憶部にはボンディングワイヤ42の抵抗値に応じて電位差と電流との対応を示す変換テーブルを記憶させてもよい。また、ボンディングワイヤ42が記憶部に記憶された所定の抵抗値となるように、ボンディングワイヤ42の材質、線径、長さを設定してもよいし、ボンディングワイヤ42で2つの入力電極35,36の間を接続してから抵抗値を実測して記憶部に記憶させてもよい。
【0023】
ゲート電圧制御回路34は、FETベアチップ20に供給されるソース電流に所定の電流値を超える電流(過電流)が流れ込むのを検知したときに、ゲート電圧を0ボルトにしてドレイン電流を遮断する。
【0024】
上記構成により本実施例の車両用過電流検出装置1は、ワイヤボンディングによりFETベアチップ20と電位差検出回路32とを接続する、という工程を経て製造される。例えば、まずFETベアチップ20のソース電極21と電位差検出回路32の第一入力電極35とをボンディングワイヤ41で接続し、次に電位差検出回路32の第一入力電極35と電位差検出回路32の第二入力電極36とをボンディングワイヤ42で接続することにより、スムーズに基板10上のFETベアチップ20と電位差検出回路32との接続が完了する。そのため、従来の車両用過電流検出装置のようにシャント抵抗等の抵抗器を基板に取り付けるためのはんだ付け等の工程が不要となり、車両用過電流検出装置の製造におけるはんだ付不良が低減し、製造容易となる。また、大きな定格電流を必要とする抵抗器が不要となるため、小型かつ低コストに車両用過電流検出装置1を構成できる。また、車載装置OBUの電源供給線に介在するFETベアチップ20に車両用過電流検出装置1が取り付けられるため、小型化による車載性の向上と軽量化を達成できる。
【0025】
さらに、FETベアチップ20のソース電極21側にあるグラウンドGに接続された電極36と電極35との間に介在するボンディングワイヤ42の両端間の電位差が電位差検出回路32により検出されるため、FETベアチップ20のドレイン電極23側に電位差検出回路を設けた場合と比較して電位が安定する。そのため、電位差検出回路により検出される電位差をより正確に測定でき、誤動作を抑制できる。
【0026】
さらに、電位差検出回路32が増幅回路31を備えるため、抵抗値の小さいボンディングワイヤを使用してボンディングワイヤの両端間の電位差が微小となっても電位差の計測誤差を低減できる。
【0027】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。
【0028】
例えば、ボンディングワイヤ41,42,43,44によるFETベアチップ20と基板10上の各部との接続工程は、ワイヤボンディング装置を使用して連続的に行える。ボンディングワイヤ41,42,43,44を接続する順番は、基板10上の配置に基づいて適宜設定できる。
【0029】
ボンディングワイヤ41,42,43,44の材質、線径、長さは、電位差検出回路32および電流値算出回路33により電流値を算出する際の要求に基づいて決定され、例えば、線径0.4mmのアルミニウム線が使用可能である。また、全てのボンディングワイヤを同じ材質、線径、長さにすれば、ワイヤボンディング装置を使用して連続的に接続できる。
【0030】
基板10の材料および形状は特に限定されない。また、FETベアチップ20と中央演算処理装置30とを熱的に分離された2つの基板に載置する構成でもよい。この場合、FETベアチップ20の放熱性を考慮した配置をとることが容易となり設計自由度が向上する。また、車載装置OBUの作動時にFETベアチップ20で発生する熱が中央演算処理装置30に直接伝熱しなくなるため、中央演算処理装置30の動作が安定する。
【符号の説明】
【0031】
1 車両用過電流検出装置
10 基板
20 FETベアチップ
32 電位差検出回路
33 電流値算出回路
35,36 入力電極
41,42 ボンディングワイヤ
OBU 車載装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に載置され、車載装置の電源供給線に介在するベアチップと、
2つの入力電極を備え、前記ベアチップに流入または流出する電流の電位差を検出する電位差検出回路と、
前記電位差検出回路により検出された電位差を電流値に変換する電流値算出回路と、
前記ベアチップの電極と前記電位差検出回路の一方の入力電極とを接続する第一のボンディングワイヤと、
前記電位差検出回路の一方の入力電極と前記電位差検出回路の他方の入力電極とを接続する第二のボンディングワイヤと、
を備えることを特徴とする車両用過電流検出装置。
【請求項2】
前記ベアチップは、ドレイン電極とソース電極とゲート電極とを有するFETベアチップであり、
前記第一のボンディングワイヤは、前記FETベアチップのソース電極と前記電位差検出回路の前記一方の入力電極とを接続し、
前記電位差検出回路の前記他方の入力電極は、グラウンドに接続されることを特徴とする請求項1に記載の車両用過電流検出装置。
【請求項3】
前記電位差検出回路は増幅回路を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用過電流検出装置。

【図1】
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