説明

車両用電子制御装置

【課題】車両に搭載された電子制御装置において、外部診断装置から送信された処理要求の内容を確実に記憶する
【解決手段】故障診断装置6から処理要求を受信すると、ヘッダ部と付加情報部と操作内容部とから構成される操作履歴情報を作成する。そして、作成された操作履歴情報と比較対象データとを比較し、操作履歴情報のうち、操作履歴情報と比較対象データとの相違部分を、電子制御装置1内に設けられたSRAM15の操作履歴記憶領域23に記憶する。また、操作履歴記憶領域23の記憶残量が通知判定量以下になると、操作履歴記憶領域23に記憶されている操作履歴情報の全てを、車両の外部に設置されたリモートセンタ100に転送する。そして、転送された操作履歴情報を、SRAM15の操作履歴記憶領域23から削除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部診断装置との間でデータ通信可能に構成された車両用電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両整備工場等では、車両に搭載された電子制御装置に接続して故障診断を行うための外部診断装置が用いられている。この外部診断装置は、データ通信可能に接続された電子制御装置に対して各種処理要求を送信することができ、電子制御装置はこの処理要求に応じた処理を実行する。例えば、電子制御装置に記憶された故障コードを読み出したり消去したりする処理、電子制御装置を初期化する処理などの要求を行う。そして電子制御装置は、外部診断装置からの処理要求に応じた不正な処理が行われたか否かを後で確認することができるように、外部診断装置から送信された処理要求の内容を記憶する機能を有する。
【0003】
ところで従来、データをバックアップする際に、前回パックアップしたデータからの変更部分のみをパックアップすることにより、バックアップするデータ量を低減する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−90770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、車両に搭載された電子制御装置において、上記特許文献1に記載の技術を用い、外部診断装置から送信された処理要求の内容を記憶することにより、記憶するデータ量を低減することができたとしても、その記憶容量は限られている。このため、記憶データ量が多くなり記憶可能領域が無くなった場合に、その後に不正な処理要求があっても、その処理要求の内容を記憶することができなくなるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであり、外部診断装置から送信された処理要求の内容を確実に記憶することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の車両用電子制御装置は、車両の故障診断を行う外部診断装置との間でデータ通信可能に構成され、外部診断装置からの処理要求に応じた処理を実行する車両用電子制御装置であって、処理要求情報作成手段が、外部診断装置から処理要求を受信すると、外部診断装置からの処理要求を示す処理要求指示情報と、処理要求に関連した情報であり処理要求指示情報に付加される付加情報とから構成される外部診断処理要求情報を作成する。そして装置内記憶手段が、処理要求情報作成手段により作成された外部診断処理要求情報と、外部診断処理要求情報と比較するために設定された比較用情報とを比較し、外部診断処理要求情報のうち、外部診断処理要求情報と比較用情報との相違部分を、車両用電子制御装置内に設けられた記憶媒体である装置内記憶媒体に記憶させる。
【0008】
また転送手段が、装置内記憶媒体において相違部分を記憶することができる記憶残量である相違部分記憶残量が予め設定された所定転送判定量以下になると、装置内記憶媒体に記憶された相違部分の少なくとも一部を、車両用電子制御装置の外部に設けられた記憶媒体である装置外記憶媒体に相違部分を記憶させる装置外記憶手段に転送する。そして削除手段が、装置内記憶媒体に記憶された相違部分のうち、転送手段により転送された相違部分を、装置内記憶媒体から削除する。
【0009】
このように構成された車両用電子制御装置では、処理要求情報作成手段により作成された外部診断処理要求情報のうち、外部診断処理要求情報と比較用情報との相違部分のみを装置内記憶媒体に記憶させるため、装置内記憶媒体に記憶するデータ量を低減することができる。
【0010】
さらに、装置内記憶媒体における相違部分記憶残量が所定転送判定量以下になると、装置内記憶媒体に記憶された相違部分の少なくとも一部を装置外記憶手段に転送した後に、転送した相違部分を装置内記憶媒体から削除する。このため、装置内記憶媒体において、外部診断処理要求情報を記憶する領域がなくなってしまうことがない。したがって、装置内記憶媒体に記憶する必要性が高い外部診断処理要求情報が、装置内記憶媒体の記憶容量不足のために記憶できないという状況の発生を抑制することができる。
【0011】
また、請求項1に記載の車両用電子制御装置において、請求項2に記載のように、転送手段が、装置内記憶媒体において相違部分を記憶することができる記憶残量が予め設定された所定転送判定量以下になると、その旨を示す残量低下情報を装置外記憶手段に通知し、その後に、装置外記憶手段から、相違部分の転送を要求する転送要求指令を受信すると、相違部分を装置外記憶手段に転送し、転送確認手段が、転送手段が相違部分を転送した後に、相違部分が正常に転送されたか否かを確認し、削除手段は、相違部分が正常に転送されたと転送確認手段により確認された後に、相違部分を装置内記憶媒体から削除するようにしてもよい。
【0012】
このように構成された車両用電子制御装置では、相違部分の転送を要求する転送要求指令を装置外記憶手段から受信すると、相違部分を装置外記憶手段に転送する。このため、車両用電子制御装置は、装置外記憶手段において相違部分を記憶することが可能である場合に、相違部分を装置外記憶手段に転送することができる。したがって、装置外記憶手段において相違部分を記憶することができないときに相違部分を装置外記憶手段に無駄に送信してしまうという状況の発生を抑制することができる。
【0013】
さらに、車両用電子制御装置は、相違部分が正常に転送されたか否かを確認した後に、相違部分を装置内記憶媒体から削除する。このため、転送した相違部分が装置外記憶手段に記憶されていないにもかかわらず、この相違部分を装置内記憶媒体から削除してしまうという状況の発生を抑制することができる。
【0014】
また、請求項1または請求項2に記載の車両用電子制御装置において、請求項3に記載のように、外部診断処理要求情報に、外部診断処理要求情報の必要性の度合いに応じた重要度が付与されるようにしてもよい。
【0015】
このように構成された車両用電子制御装置では、付与された重要度に基づいて、削除を禁止する外部診断処理要求情報、及び、記憶する必要のない外部診断処理要求情報などを簡便に判別することができる。これにより、削除すべきでない外部診断処理要求情報が削除されてしまうという状況の発生を抑制し、外部診断処理要求情報の記憶における安全性を向上させることができる。また、記憶する必要のない外部診断処理要求情報が装置内記憶媒体に記憶されてしまうという状況の発生を抑制し、装置内記憶媒体のリソースを節約することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の車両用電子制御装置において、請求項4に記載のように、第1重要度算出手段が、重要度を当該車両用電子制御装置の状態に基づいて算出するようにしてもよい。
【0017】
このように構成された車両用電子制御装置では、当該車両用電子制御装置の状態に基づいて重要度を設定することができる。例えば、当該車両用電子制御装置が異常を検出している状態で外部診断装置から処理要求があった場合に、車両用電子制御装置に記憶されている異常情報が消去される可能性があるため、重要度を高くするようにするとよい。
【0018】
また、請求項3または請求項4に記載の車両用電子制御装置において、請求項5に記載のように、処理要求情報作成手段が、外部診断処理要求情報に付与された重要度が必要性の度合いが低いものとして予め設定された所定判定重要度より低い場合に、相違部分記憶残量に応じて、外部診断処理要求情報に付与される付加情報の種類または数を変化させるようにしてもよい。
【0019】
このように構成された車両用電子制御装置では、相違部分記憶残量が少なくなった場合に、重要度の低い外部診断処理要求情報に付与される付加情報を減らすことができる。これにより、重要度の高い外部診断処理要求情報を記憶できないという状況の発生を抑制し、装置内記憶媒体のリソースを有効活用することができる。
【0020】
また、請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、請求項6に記載のように、装置内記憶手段が、相違部分記憶残量が予め設定された所定記憶判定量以下である場合に、重要度が予め設定された所定記憶判定重要度より低い外部診断処理要求情報の記憶を禁止するようにしてもよい。
【0021】
このように構成された車両用電子制御装置では、重要度の低い外部診断処理要求情報を記憶したために相違部分記憶残量が少なくなり、重要度の高い外部診断処理要求情報を記憶できないという状況の発生を抑制し、装置内記憶媒体のリソースを有効活用することができる。
【0022】
また、請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、請求項7に記載のように、第2重要度算出手段が、外部診断装置を当該車両用電子制御装置に接続してから外部診断装置が処理要求を送信するまでの重要度算出条件に基づいて、処理要求に対応した外部診断処理要求情報に付与される重要度を算出し、処理実行手段が、第2重要度算出手段により算出された重要度に応じて、処理要求に応じた処理を実行するか否かを決定するようにしてもよい。
【0023】
このように構成された車両用電子制御装置では、外部診断装置を当該車両用電子制御装置に接続してから外部診断装置が処理要求を送信するまでの状況に基づいて、処理要求に応じた処理を実行するか否かを決定することができる。例えば、深夜の操作や国外での操作など、通常の使用では考えられない状況下での外部診断装置の接続であれば、特定の処理要求を禁止することで、車両用電子制御装置の不正改造を抑制することができる。
【0024】
また、請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、請求項8に記載のように、比較用情報は、外部診断装置から要求される頻度が多いものとして予め設定された処理要求を示す処理要求指示情報を含むようにしてもよい。
【0025】
このように構成された車両用電子制御装置では、外部診断処理要求情報と比較用情報との相違部分が少なくなり、装置内記憶媒体に記憶するデータ量を低減することができる。
また、請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、請求項9に記載のように、処理要求情報作成手段が、相違部分記憶残量に応じて、付加情報の種類または数を変化させるようにしてもよい。
【0026】
このように構成された車両用電子制御装置では、相違部分記憶残量が少なくなった場合に、外部診断処理要求情報に付与される付加情報を減らすことができる。このため、記憶する必要のある外部診断処理要求情報が相違部分記憶残量の不足のために記憶できないという状況の発生を抑制し、装置内記憶媒体のリソースを有効活用することができる。
【0027】
また、請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の車両用電子制御装置において、請求項10に記載のように、転送手段は、外部診断装置が当該車両用電子制御装置に接続されている場合に、外部診断装置に相違部分を送信し、外部診断装置のデータ通信機能を介して、相違部分を装置外記憶手段に転送するようにしてもよい。
【0028】
このように構成された車両用電子制御装置では、相違部分を装置外記憶手段に転送する手段を車両が備えていない場合であっても、外部診断装置を利用することで、相違部分を装置外記憶手段に転送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の電子制御装置1の構成を示すブロック図、および操作履歴情報のデータ構造を示す図である。
【図2】第1実施形態の要求受信時処理を示すフローチャートである。
【図3】付加情報取得処理を示すフローチャートである。
【図4】操作履歴作成処理を示すフローチャートである。
【図5】操作履歴比較処理を示すフローチャートである。
【図6】操作履歴記憶処理を示すフローチャートである。
【図7】操作履歴読出し処理を示すフローチャートである。
【図8】メモリ残量警告通知処理を示すフローチャートである。
【図9】第1実施形態のセンタ通信受信時処理を示すフローチャートである。
【図10】操作履歴転送処理を示すフローチャートである。
【図11】転送確認処理を示すフローチャートである。
【図12】今回記憶データ用記憶領域22のデータ構造を示す図である。
【図13】操作履歴情報の圧縮方法を説明する図である。
【図14】操作履歴記憶領域23に記憶された情報のデータ構造を示す図である。
【図15】第2実施形態の電子制御装置1の構成を示すブロック図、および重要度テーブルのデータ構造を示す図である。
【図16】第2実施形態の要求受信時処理を示すフローチャートである。
【図17】重要度算出処理を示すフローチャートである。
【図18】記憶先判定処理を示すフローチャートである。
【図19】重要度付き操作履歴記憶処理を示すフローチャートである。
【図20】重要度付き操作履歴読出し処理を示すフローチャートである。
【図21】第2実施形態のセンタ通信受信時処理を示すフローチャートである。
【図22】重要度付き操作履歴転送処理を示すフローチャートである。
【図23】重要度付き転送確認処理を示すフローチャートである。
【図24】重要度算出テーブルと記憶領域設定テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(第1実施形態)
以下に本発明の第1実施形態を図面とともに説明する。
図1(a)は第1実施形態の電子制御装置1の構成を示すブロック図、図1(b)は操作履歴情報のデータ構造を示す図である。
【0031】
電子制御装置1は、車両に搭載されており、図1(a)に示すように、車両に搭載された外部接続装置3、および車両に搭載された無線通信装置4と、車内LAN5を介してデータ通信可能に接続されている。
【0032】
電子制御装置1は、所定の処理プログラムに基づいて処理を実行するCPU11と、種々の処理プログラムが格納されたROM12と、種々のデータを格納するRAM13と、電力が供給されない状態でも記憶されたデータを保持可能なEEPROM14と、車両のバッテリ(不図示)から常時電圧が供給されるように構成された揮発性メモリであるSRAM15と、CPU11を車内LAN5と接続する通信インターフェース(以下、通信I/Fという)16とから構成される。
【0033】
なおSRAM15には、比較対象データ用記憶領域21、今回記憶データ用記憶領域22、および操作履歴記憶領域23が設けられている。
外部接続装置3は、車内LAN5に接続され、車両用の故障診断装置(いわゆるダイアグテスタ)6を、車内LAN5を介して電子制御装置1とデータ通信可能に接続する。
【0034】
無線通信装置4は、車両外部に設置された外部装置との間で各種情報を無線通信により送受信する。
ここで、電子制御装置1の操作履歴記憶領域23に記憶される操作履歴情報は、図1(b)に示すように、ヘッダ部と、付加情報部と、操作内容部とから構成されている。
【0035】
ヘッダ部は、各操作履歴情報の先頭であり、どのデータが圧縮されているかを示す固定長データである。
また付加情報部には、故障診断装置6の操作内容とともに記憶する付加情報(例えば、故障診断装置6を操作した日付、時間、作業者)が格納される。各付加情報は固定長データである。
【0036】
また操作内容部には、故障診断装置6の操作内容を示す操作内容情報が格納される。各操作内容情報は固定長データである。なお操作内容部は、操作内容を、大分類・中分類・小分類のように階層別に分割して格納することができる。
【0037】
そして電子制御装置1は、故障診断装置6からの要求を受信すると実行される要求受信時処理と、リモートセンタ100(後述)からデータを受信すると実行されるセンタ通信受信時処理を実行する。
【0038】
まず、電子制御装置1のCPU11が実行する要求受信時処理の手順を図2を用いて説明する。図2は要求受信時処理を示すフローチャートである。この要求受信時処理は、故障診断装置6から車内LAN5を介して各種要求を受信すると実行される処理である。
【0039】
この要求受信時処理が実行されると、CPU11は、まずS10にて、付加情報取得処理(後述)を実行し、さらにS20にて、操作履歴作成処理(後述)を実行する。
そしてS30にて、比較対象データ用記憶領域21に比較対象データが記憶されていないか否か、すなわち比較対象データ用記憶領域21が空であるか否かを判断する。ここで、比較対象データが記憶されていない場合には(S30:YES)、S50に移行する。一方、比較対象データ用記憶領域21に比較対象データが記憶されている場合には(S30:NO)、S40にて、操作履歴比較処理(後述)を実行し、S50に移行する。
【0040】
そしてS50に移行すると、操作履歴記憶処理(後述)を実行し、さらにS60にて、故障診断装置6からの要求の内容が「操作履歴読出し」であるか否かを判断する。ここで、要求内容が「操作履歴読出し」である場合には(S60:YES)、S70にて、操作履歴読出し処理(後述)を実行し、S90に移行する。一方、要求内容が「操作履歴読出し」でない場合には(S60:NO)、S80にて、要求内容に応じた処理を実施し、S90に移行する。
【0041】
そしてS90に移行すると、操作履歴記憶領域23の記憶残量が予め設定された通知判定量以下であるか否かを判断する。ここで、記憶残量が通知判定量より多い場合には(S90:NO)、要求受信時処理を終了する。一方、記憶残量が通知判定量以下である場合には(S90:YES)、S100にて、メモリ残量警告通知処理(後述)を実行し、要求受信時処理を終了する。
【0042】
次に、S10で実行される付加情報取得処理の手順を図3を用いて説明する。図3は付加情報取得処理を示すフローチャートである。
この付加情報取得処理が実行されると、CPU11は、まずS210にて、電子制御装置1内に保有するデータから付加情報を取得する。例えば、車両に搭載されたGPS受信機(不図示)から現在地情報を取得する。またS220にて、故障診断装置6より受信したデータから付加情報を取得する。例えば、日付、時刻、作業者を示す情報を取得する。またS230にて、車内LAN5を介して接続されている他の電子制御装置(不図示)から付加情報を取得する。例えば、電子制御装置1が絶対時間情報を保有していない場合には、絶対時間情報を取得する。そして、付加情報取得処理を終了する。
【0043】
次に、S20で実行される操作履歴作成処理の手順を図4を用いて説明する。図4は操作履歴作成処理を示すフローチャートである。
この操作履歴作成処理が実行されると、CPU11は、まずS310にて、今回記憶データ用記憶領域22の先頭に、全ビットが1となる操作履歴比較結果を書き込む(図12の今回記憶データDN1を参照)。またS320にて、操作履歴比較結果の後ろの領域に、S10の付加情報取得処理で取得した付加情報を書き込む(図12の今回記憶データDN2,DN3,DN4を参照)。またS330にて、付加情報の後ろの領域に、故障診断装置6から受信した要求内容を操作内容情報として書き込む(図12の今回記憶データDN5,DN6を参照)。そして、操作履歴作成処理を終了する。なお、今回記憶データ用記憶領域22に記憶されている今回記憶データDN1〜DN6をまとめて今回記憶データという。
【0044】
次に、S40で実行される操作履歴比較処理の手順を図5を用いて説明する。図5は操作履歴比較処理を示すフローチャートである。
この操作履歴比較処理が実行されると、CPU11は、まずS410にて、比較対象データ用記憶領域21から比較対象データを取得する。またS420にて、今回記憶データ用記憶領域22から今回記憶データを取得する。
【0045】
そしてS430にて、比較対象データと今回記憶データとの間で比較を行っていないデータ(以下、未比較データという)があるか否かを判断する。ここで、未比較データがない場合には(S430:NO)、操作履歴比較処理を終了する。一方、未比較データがある場合には(S430:YES)、S440にて、比較対象データと今回記憶データからそれぞれ比較するデータを取得する。
【0046】
その後S450にて、取得したデータが同値であるか否かを判断する。ここで、データが同値でない場合には(S450:NO)、S430に移行して、上述の処理を繰り返す。一方、データが同値である場合には(S450:YES)、S460にて、今回記憶データ用記憶領域22の操作履歴比較結果(今回記憶データDN1)において、比較したデータに対応するビットを0に設定する。そしてS430に移行して、上述の処理を繰り返す。
【0047】
次に、S50で実行される操作履歴記憶処理の手順を図6を用いて説明する。図6は操作履歴記憶処理を示すフローチャートである。
この操作履歴記憶処理が実行されると、CPU11は、まずS510にて、今回記憶データ用記憶領域22から操作履歴比較結果(今回記憶データDN1)と、操作履歴比較結果のビットが1のデータを取得する。その後S520にて、S510で取得したデータ(操作履歴比較結果と、ビットが1のデータ)を操作履歴記憶領域23に記憶する。
【0048】
そしてS530にて、今回記憶データ用記憶領域22に記憶されている付加情報と操作内容情報を比較対象データ用記憶領域21に上書きして記憶し、操作履歴記憶処理を終了する。なお以下、今回記憶データのうち比較対象データと同値でないデータのみを抽出することを圧縮という。また、圧縮されたデータを元のデータに復元することを解凍という。
【0049】
例えば、図13に示すように、前回作成した操作履歴情報Ipと、今回作成した操作履歴情報Inとを比較して、ヘッダ、日付、時間、作業者、操作内容1、および操作内容2のうち、日付、作業者、操作内容1が同一であるため、今回作成した操作履歴情報Inのうち、ヘッダと時間と操作内容2のみが記憶される(図13における圧縮された操作履歴情報Icを参照)。これにより、記憶データ量を削減することができる。
【0050】
また、前回作成した操作履歴情報Ipが、操作履歴記憶領域23に記憶される最初のデータである場合には、図14(a)に示すように、操作履歴情報Ipのヘッダには、全ビットが1となる操作履歴比較結果が書き込まれるとともに、ヘッダ、日付、時間、作業者、操作内容1、および操作内容2の全てが記憶される。そして、次に作成した操作履歴情報Inと操作履歴情報Ipとを比較すると、日付、作業者、操作内容1が同一である。このため、操作履歴情報Inのうち、ヘッダと時間と操作内容2のみが抽出され、抽出したデータが、圧縮された操作履歴情報Icとして記憶される。なお、操作履歴情報Icのヘッダには、日付、作業者、操作内容1が同一でありその他は異なることを示す操作履歴比較結果(すなわち、01001)が書き込まれる。
【0051】
なお、操作履歴情報の各データは固定長であるので、操作履歴比較結果から、記憶している操作履歴情報の容量を算出することができる。すなわち、図14(b)に示すように、ヘッダ、日付、時間、作業者、操作内容1、および操作内容2のデータ長はそれぞれ、1バイト、1バイト、2バイト、2バイト、1バイト、2バイトであるので、操作履歴情報Ipのヘッダに書き込まれている操作履歴比較結果が「11111」であることから、操作履歴情報Ipの容量は9バイトと算出される。また、圧縮された操作履歴情報Icのヘッダに書き込まれている操作履歴比較結果が「01001」であることから、5バイトと算出される。
【0052】
次に、S70で実行される操作履歴読出し処理の手順を図7を用いて説明する。図7は操作履歴読出し処理を示すフローチャートである。
この操作履歴読出し処理が実行されると、CPU11は、まずS610にて、操作履歴記憶領域23の先頭に記憶している操作履歴情報を取得する。なお、この操作履歴情報は、操作履歴記憶領域23の先頭に記憶されているものであるので、圧縮されていない。
【0053】
そしてS620にて、操作履歴記憶領域23に記憶されている操作履歴情報の全てが解凍されたか否かを判断する。ここで、操作履歴情報の全てが解凍されていない場合には(S620:NO)、S630にて、操作履歴記憶領域23から次に記憶した操作履歴情報を取得する。なお、ここで取得した操作履歴情報は圧縮された状態になっている。
【0054】
そしてS640にて、S630にて取得した操作履歴情報(圧縮)を解凍する。具体的には、S630にて取得した操作履歴情報(圧縮)は、1つ前に記憶した操作履歴情報からの差分であるため、前回S640にて解凍した操作履歴情報と比較して、異なるデータを、S630にて取得した操作履歴情報(圧縮)に追加する。その後、S630に移行し、上述の処理を繰り返す。
【0055】
一方、操作履歴情報の全てが解凍された場合には(S620:YES)、S650にて、解凍した操作履歴情報の全てを故障診断装置6に送信し、操作履歴読出し処理を終了する。
【0056】
次に、S100で実行されるメモリ残量警告通知処理の手順を図8を用いて説明する。図8はメモリ残量警告通知処理を示すフローチャートである。
このメモリ残量警告通知処理が実行されると、CPU11は、まずS710にて、操作履歴記憶領域23の記憶残量が少ない旨を示すメモリ残量警告情報と、電子制御装置の識別番号を示す装置識別情報を、無線通信装置4に、車両の外部に設置されたリモートセンタ100へ送信させる。そしてS720にて、リモートセンタ100との通信待ち状態を示すためにRAM13に予め設けられているリモート通信待ち状態記憶領域に、「転送要求待ち」を示す内容を上書き記憶する。そして、メモリ残量警告通知処理を終了する。
【0057】
次に、電子制御装置1のCPU11が実行するセンタ通信受信時処理の手順を図9を用いて説明する。図9はセンタ通信受信時処理を示すフローチャートである。このセンタ通信受信時処理は、リモートセンタ100からデータを受信すると実行される処理である。
【0058】
このセンタ通信受信時処理が実行されると、CPU11は、まずS810にて、リモートセンタ100から受信したデータは操作履歴転送要求であるか否かを判断する。ここで、操作履歴転送要求である場合には(S810:YES)、S820にて、操作履歴転送処理(後述)を実行し、センタ通信受信時処理を終了する。
【0059】
一方、操作履歴転送要求でない場合には(S810:NO)、誤り訂正符号であると判断し、S830にて、転送確認処理(後述)を実行し、センタ通信受信時処理を終了する。
【0060】
次に、S820で実行される操作履歴転送処理の手順を図10を用いて説明する。図10は操作履歴転送処理を示すフローチャートである。
この操作履歴転送処理が実行されると、CPU11は、まずS910にて、リモート通信待ち状態記憶領域に「転送要求待ち」を示す内容が記憶されているか否かを判断する。すなわち、リモート通信待ち状態が「転送要求待ち」であるか否かを判断する。ここで、リモート通信待ち状態が「転送要求待ち」である場合には(S910:YES)、S920にて、操作履歴記憶領域23に記憶されている操作履歴情報の全てを、無線通信装置4に、車両の外部に設置されたリモートセンタ100へ送信させる。そしてS930にて、リモート通信待ち状態記憶領域に、「誤り訂正符号待ち」を示す内容を上書き記憶する。そして、操作履歴転送処理を終了する。一方、リモート通信待ち状態が「転送要求待ち」でない場合には(S910:NO)、操作履歴転送処理を終了する。
【0061】
次に、S830で実行される転送確認処理の手順を図11を用いて説明する。図11は転送確認処理を示すフローチャートである。
この転送確認処理が実行されると、CPU11は、まずS1010にて、リモート通信待ち状態記憶領域に「誤り訂正符号待ち」を示す内容が記憶されているか否かを判断する。すなわち、リモート通信待ち状態が「誤り訂正符号待ち」であるか否かを判断する。ここで、リモート通信待ち状態が「誤り訂正符号待ち」である場合には(S1010:YES)、S1020にて、リモートセンタ100が送信した誤り訂正符号を取得する。そしてS1030にて、リモート通信待ち状態記憶領域に「無し」を示す内容を上書き記憶する。その後S1040にて、操作履歴記憶領域23に記憶されている操作履歴情報の誤り訂正符号を算出する。
【0062】
そしてS1050にて、S1020で取得した誤り訂正符号の値と、S1040で算出した誤り訂正符号の値とが一致するか否かを判断する。ここで、誤り訂正符号の値が一致する場合には(S1050:YES)、S1060にて、操作履歴記憶領域23に記憶されている操作履歴情報の全てを削除するとともに、S1070にて、比較対象データ用記憶領域21に記憶されている操作履歴情報を削除して、転送確認処理を終了する。
【0063】
一方、誤り訂正符号の値が一致しない場合には(S1050:NO)、S1080にて、操作履歴記憶領域23に記憶されている操作履歴情報の全てを、無線通信装置4にリモートセンタ100へ再度送信させる。そしてS1090にて、リモート通信待ち状態記憶領域に、「誤り訂正符号待ち」を示す内容を上書き記憶する。そして、転送確認処理を終了する。
【0064】
このように構成された電子制御装置1では、故障診断装置6から処理要求を受信すると、ヘッダ部と付加情報部と操作内容部とから構成される操作履歴情報を作成する(S20)。
【0065】
そして、作成された操作履歴情報と比較対象データとを比較し、操作履歴情報のうち、操作履歴情報と比較対象データとの相違部分を、電子制御装置1内に設けられたSRAM15の操作履歴記憶領域23に記憶する(S520)。
【0066】
また、操作履歴記憶領域23の記憶残量が通知判定量以下になると(S90:YES)、操作履歴記憶領域23に記憶されている操作履歴情報の全てを、車両の外部に設置されたリモートセンタ100に転送する(S920)。そして、転送された操作履歴情報を、SRAM15の操作履歴記憶領域23から削除する(S1060)。
【0067】
これにより、作成された操作履歴情報のうち、操作履歴情報と比較対象データとの相違部分のみをSRAM15の操作履歴記憶領域23に記憶させるため、SRAM15の操作履歴記憶領域23に記憶するデータ量を低減することができる。
【0068】
さらに、操作履歴記憶領域23の記憶残量が通知判定量以下になると、操作履歴情報をリモートセンタ100に転送した後に、転送した操作履歴情報を操作履歴記憶領域23から削除するため、操作履歴記憶領域23において、操作履歴情報を記憶する領域がなくなってしまうことがない。したがって、操作履歴記憶領域23に記憶する必要性が高い操作履歴情報が、操作履歴記憶領域23の記憶容量不足のために記憶できないという状況の発生を抑制することができる。
【0069】
また、操作履歴情報の削除は、作業者が直接実行することができず、電子制御装置1の自己判断によって行われる。このため、作業者の不注意で、本来削除されるべきではない操作履歴情報が削除されてしまうという状況の発生を抑制することができる。さらに、操作履歴情報が電子制御装置1内に記憶されるため、各整備工場で車両の操作履歴情報を保持する必要がなくなり、且つ、車両の操作履歴情報を各整備工場で共有することができる。
【0070】
また、操作履歴記憶領域23の記憶残量が通知判定量以下になると、操作履歴記憶領域23の記憶残量が少ない旨を示すメモリ残量警告情報をリモートセンタ100に通知し(S710)、その後に、リモートセンタ100から操作履歴転送要求を受信すると、操作履歴情報をリモートセンタ100に転送し(S920)、その後に、操作履歴情報が正常に転送されたと確認された後に(S1050:YES)、転送された操作履歴情報を、SRAM15の操作履歴記憶領域23から削除する(S1060)。
【0071】
これにより、リモートセンタ100から操作履歴転送要求を受信すると、操作履歴情報をリモートセンタ100に転送するため、電子制御装置1は、リモートセンタ100において操作履歴情報を記憶することが可能である場合に、操作履歴情報をリモートセンタ100に転送することができる。したがって、リモートセンタ100において操作履歴情報を記憶することができないときに操作履歴情報をリモートセンタ100に無駄に送信してしまうという状況の発生を抑制することができる。
【0072】
さらに、電子制御装置1は、操作履歴情報が正常に転送されたか否かを確認した後に、操作履歴情報をSRAM15の操作履歴記憶領域23から削除するため、転送した操作履歴情報がリモートセンタ100に記憶されていないにもかかわらず、この操作履歴情報を操作履歴記憶領域23から削除してしまうという状況の発生を抑制することができる。
【0073】
また、今回記憶データ用記憶領域22に記憶されている付加情報と操作内容情報を比較対象データ用記憶領域21に上書きして記憶する(S530)。すなわち、故障診断装置6から前回受信した要求内容を示すデータを、今回記憶データと比較するための比較対象データとする。これにより、同日に一人の作業者が故障診断装置6を繰り返し操作して各種処理要求を入力する場合に、今回記憶データと比較対象データとの比較で、付加情報の日付と作業者が一致する頻度が多くなり、今回記憶データの圧縮率を向上させることができる。
【0074】
以上説明した実施形態において、電子制御装置1は本発明における車両用電子制御装置、故障診断装置6は本発明における外部診断装置、S20の処理は本発明における処理要求情報作成手段、S520の処理は本発明における装置内記憶手段、S920の処理は本発明における転送手段、S1060の処理は本発明における削除手段、S1050の処理は本発明における転送確認手段、リモートセンタ100は本発明における装置外記憶媒体および装置外記憶手段である。
【0075】
また、操作内容情報は本発明における処理要求指示情報、操作履歴情報は本発明における外部診断処理要求情報、比較対象データは本発明における比較用情報、SRAM15の操作履歴記憶領域23は本発明における装置内記憶媒体、通知判定量は本発明における所定転送判定量である。
【0076】
(第2実施形態)
以下に本発明の第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分のみを説明する。
【0077】
第2実施形態の電子制御装置1は、EEPROM14およびSRAM15の構成が変更された点と、要求受信時処理およびセンタ通信受信時処理が変更された点以外は第1実施形態と同じである。
【0078】
図15(a)は第2実施形態の電子制御装置1の構成を示すブロック図、図15(b)は重要度テーブルのデータ構造を示す図である。
第2実施形態の電子制御装置1におけるEEPROM14には、図15(a)に示すように、操作履歴記憶領域41と重要度テーブル42が設けられている。なお、重要度テーブル42は、故障診断装置6から受信した要求内容に対応した重要度が記載されている。重要度テーブル42には、図15(b)に示すように、要求内容として、「データ読出し」、「アクティブテスト」、「故障コード消去」、「制御装置初期化」、および「リプログラミング」が記載されており、これらの要求内容に対応した重要度が記載されている。なお、重要度の数字が大きいほど重要度が高いことを示している。また、重要度の欄に記載の「計算」は、後述の計算に基づいて重要度を算出することを示す。「リプログラミング」は、法規に関わる要求内容であるため、法規違反になる可能性を考慮して重要度を高くしている。
【0079】
またSRAM15には、図15(a)に示すように、今回記憶データ用記憶領域51、中重要度記憶領域52、小重要度記憶領域53、通常記憶領域54、およびEEPROM比較対象データ用記憶領域55が設けられている。そして、中重要度記憶領域52、小重要度記憶領域53、および通常記憶領域54はそれぞれ、比較対象データ用記憶領域61と操作履歴記憶領域62とから構成される。
【0080】
次に、第2実施形態の要求受信時処理の手順を図16を用いて説明する。図16は、第2実施形態の要求受信時処理を示すフローチャートである。
第2実施形態の要求受信時処理は、S50,S70の処理が省略された点と、S12,S14,S52,S62,S72の処理が追加された点以外は、第1実施形態と同じである。
【0081】
すなわち、S10の処理が終了すると、S12にて重要度算出処理(後述)を実行し、さらにS14にて記憶先判定処理(後述)を実行し、S20に移行する。
また、S30にて、比較対象データが記憶されていない場合(S30:YES)、またはS40の処理が終了した場合に、S52にて重要度付き操作履歴記憶処理(後述)を実行し、S60に移行する。
【0082】
また、S60にて、要求内容が「操作履歴読出し」でない場合に(S60:NO)、S62にて、重要度が6未満であるか否かを判断する。ここで、重要度が6未満である場合には(S62:YES)、S80に移行する。一方、重要度が6以上である場合には(S62:NO)、S90に移行する。
【0083】
また、S60にて、要求内容が「操作履歴読出し」である場合に(S60:YES)、S72にて、重要度付き操作履歴読出し処理(後述)を実行し、S90に移行する。
次に、S12で実行される重要度算出処理の手順を図17を用いて説明する。図17は重要度算出処理を示すフローチャートである。
【0084】
この重要度算出処理が実行されると、CPU11は、まずS1210にて、重要度テーブル42を参照して、故障診断装置6からの要求内容に応じた重要度を抽出する。そして、抽出した重要度を、重要度の内容を示すためにRAM13に予め設けられている重要度記憶領域に、抽出した重要度を示す内容を上書き記憶する。
【0085】
その後S1220にて、重要度記憶領域に「計算」を示す内容が記憶されているか否かを判断する。ここで、重要度記憶領域に「計算」を示す内容が記憶されていない場合には(S1220:NO)、重要度算出処理を終了する。一方、重要度記憶領域に「計算」を示す内容が記憶されている場合には(S1220:YES)、S1230にて、現在時刻がビジネスタイム内(本実施形態では例えば9時から18時)であるか否かを判断する。
【0086】
ここで、現在時刻がビジネスタイム内である場合には(S1230:YES)、S1250に移行する。一方、現在時刻がビジネスタイム外である場合には(S1230:NO)、S1240にて、重要度記憶領域に記憶されている重要度を1加算する。すなわち、深夜など、通常外の使用時間帯であれば、重要度が高いと判断する。そして、S1250に移行する。但し、この時点では、重要度記憶領域に「計算」を示す内容が記憶されているため、重要度記憶領域に、重要度が1であることを示す内容を上書き記憶する。
【0087】
そしてS1250に移行すると、現在地が販売国内かつ販売店内であるか否かを判断する。ここで、現在地が販売国内かつ販売店内である場合には(S1250:YES)、S1290に移行する。一方、現在地が販売国内かつ販売店内でない場合には(S1250:NO)、S1260にて、現在地が販売国内であるか否かを判断する。
【0088】
ここで、現在地が販売国内である場合には(S1260:YES)、S1270にて、重要度記憶領域に記憶されている重要度を1加算し、S1290に移行する。例えば、重要度が1であることを示す内容が重要度記憶領域に記憶されている場合には、重要度が2であることを示す内容を重要度記憶領域に上書き記憶する。但し、「計算」を示す内容が重要度記憶領域に記憶されている場合には、重要度が1であることを示す内容を重要度記憶領域に上書き記憶する。
【0089】
一方、現在地が販売国内でない場合には(S1260:NO)、S1280にて、重要度記憶領域に記憶されている重要度を5加算し、S1290に移行する。例えば、重要度が1であることを示す内容が重要度記憶領域に記憶されている場合には、重要度が6であることを示す内容を重要度記憶領域に上書き記憶する。但し、「計算」を示す内容が重要度記憶領域に記憶されている場合には、重要度が5であることを示す内容を重要度記憶領域に上書き記憶する。
【0090】
そしてS1290に移行すると、車両状態が正常であるか否かを判断する。ここで、車両状態が正常である場合には(S1290:YES)、S1310に移行する。一方、車両状態が正常でない場合には(S1290:NO)、S1300にて、重要度記憶領域に記憶されている重要度を1加算し、S1310に移行する。但し、「計算」を示す内容が重要度記憶領域に記憶されている場合には、重要度が1であることを示す内容を重要度記憶領域に上書き記憶する。
【0091】
そしてS1310に移行すると、作業者が故障診断装置6に登録された者であるか否かを判断する。ここで、作業者が登録された者である場合には(S1310:YES)、重要度算出処理を終了する。一方、作業者が登録された者でない場合には(S1310:NO)、S1320にて、重要度記憶領域に記憶されている重要度を1加算し、重要度算出処理を終了する。但し、「計算」を示す内容が重要度記憶領域に記憶されている場合には、重要度が1であることを示す内容を重要度記憶領域に上書き記憶する。
【0092】
次に、S14で実行される記憶先判定処理の手順を図18を用いて説明する。図18は記憶先判定処理を示すフローチャートである。
この記憶先判定処理が実行されると、CPU11は、まずS1410にて、重要度記憶領域に記憶されている重要度が5未満であるか否かを判断する。ここで、重要度が5未満である場合には(S1410:YES)、S1430に移行する。一方、重要度が5以上である場合には(S1410:NO)、S1420にて、記憶先を示すためにRAM13に予め設けられている記憶先記憶領域に、「EEPROM」を示す内容を上書き記憶し、記憶先判定処理を終了する。
【0093】
そしてS1430に移行すると、重要度記憶領域に記憶されている重要度が3未満であるか否かを判断する。ここで、重要度が3未満である場合には(S1430:YES)、S1450に移行する。一方、重要度が3以上である場合には(S1430:NO)、S1440にて、記憶先を示すためにRAM13に予め設けられている記憶先記憶領域に、「中重要度領域」を示す内容を上書き記憶し、記憶先判定処理を終了する。
【0094】
そしてS1450に移行すると、重要度記憶領域に記憶されている重要度が1未満であるか否かを判断する。ここで、重要度が1以上である場合には(S1450:NO)、S1460にて、記憶先を示すためにRAM13に予め設けられている記憶先記憶領域に、「小重要度領域」を示す内容を上書き記憶し、記憶先判定処理を終了する。一方、重要度が1未満である場合には(S1450:YES)、S1470にて、記憶先を示すためにRAM13に予め設けられている記憶先記憶領域に、「通常領域」を示す内容を上書き記憶し、記憶先判定処理を終了する。
【0095】
次に、S52で実行される重要度付き操作履歴記憶処理の手順を図19を用いて説明する。図19は重要度付き操作履歴記憶処理を示すフローチャートである。
この重要度付き操作履歴記憶処理が実行されると、CPU11は、まずS1510にて、記憶先記憶領域に「EEPROM」を示す内容が記憶されているか否かを判断する。ここで、「EEPROM」を示す内容が記憶されていない場合には(S1510:NO)、「中重要度領域」、「小重要度領域」、および「通常領域」の何れか1つを示す内容が記憶されていると判断し、S1520にて、今回記憶データ用記憶領域51から操作履歴比較結果と、操作履歴比較結果のビットが1のデータを取得する。その後S1530にて、S1520で取得したデータ(操作履歴比較結果と、ビットが1のデータ)を、記憶先記憶領域に記憶されている記憶先の操作履歴記憶領域62に記憶する。例えば、記憶先記憶領域に「小重要度領域」を示す内容が記憶されている場合には、小重要度記憶領域53の操作履歴記憶領域62に記憶する。
【0096】
そしてS1540にて、今回記憶データ用記憶領域51に記憶されている付加情報と操作内容情報を、記憶先記憶領域に記憶されている記憶先の比較対象データ用記憶領域61に上書きして記憶し、重要度付き操作履歴記憶処理を終了する。
【0097】
またS1510にて、「EEPROM」を示す内容が記憶されている場合には(S1510:YES)、S1550にて、今回記憶データ用記憶領域51から操作履歴比較結果と、操作履歴比較結果のビットが1のデータを取得する。その後S1560にて、S1550で取得したデータ(操作履歴比較結果と、ビットが1のデータ)を、EEPROM14の操作履歴記憶領域41に記憶する。
【0098】
そしてS1570にて、今回記憶データ用記憶領域51に記憶されている付加情報と操作内容情報を、SRAM15のEEPROM比較対象データ用記憶領域55に上書きして記憶し、重要度付き操作履歴記憶処理を終了する。
【0099】
次に、S72で実行される重要度付き操作履歴読出し処理の手順を図20を用いて説明する。図20は重要度付き操作履歴読出し処理を示すフローチャートである。
この重要度付き操作履歴読出し処理が実行されると、CPU11は、まずS1610にて、参照記憶先を示すためにRAM13に予め設けられている参照記憶先記憶領域に、「通常領域」を示す内容を上書き記憶する。その後S1620にて、参照記憶先記憶領域に記憶されている参照記憶先の操作履歴記憶領域の先頭に記憶している操作履歴情報を取得する。例えば、参照記憶先が「通常領域」である場合には、小重要度記憶領域53の操作履歴記憶領域62から取得し、参照記憶先が「EEPROM」である場合には、EEPROM14の操作履歴記憶領域41から取得する。なお、この操作履歴情報は、操作履歴記憶領域の先頭に記憶されているものであるので、圧縮されていない。
【0100】
そしてS1630にて、参照記憶先記憶領域に記憶されている参照記憶先の操作履歴記憶領域に記憶されている操作履歴情報の全てが解凍されたか否かを判断する。ここで、操作履歴情報の全てが解凍されていない場合には(S1630:NO)、S1640にて、参照記憶先の操作履歴記憶領域から次に記憶した操作履歴情報を取得する。そしてS1650にて、S1640にて取得した操作履歴情報(圧縮)を解凍する。その後、S1630に移行し、上述の処理を繰り返す。
【0101】
一方、操作履歴情報の全てが解凍された場合には(S1630:YES)、S1660にて、全ての記憶先、すなわち、EEPROM14、中重要度記憶領域52、小重要度記憶領域53、および通常記憶領域54の全てにおいて操作履歴情報を解凍したか否かを判断する。ここで、全ての記憶先において操作履歴情報を解凍していない場合には(S1660:NO)、S1670にて、参照記憶先記憶領域に、次に重要度が高い記憶領域を示す内容を上書き記憶する。例えば、参照記憶先記憶領域に「中重要度領域」を示す内容が記憶されていた場合には、「EEPROM」を示す内容を上書き記憶する。その後、S1630に移行し、上述の処理を繰り返す。
【0102】
またS1660にて、全ての記憶先において操作履歴情報を解凍した場合には(S1660:YES)、S1680にて、解凍した操作履歴情報の全てを故障診断装置6に送信し、重要度付き操作履歴読出し処理を終了する。
【0103】
次に、第2実施形態のセンタ通信受信時処理の手順を図21を用いて説明する。図21は、第2実施形態のセンタ通信受信時処理を示すフローチャートである。
第2実施形態のセンタ通信受信時処理は、S820,S830の処理が省略された点と、S822,S832の処理が追加された点以外は、第1実施形態と同じである。
【0104】
すなわち、S810にて、リモートセンタ100から受信したデータが操作履歴転送要求である場合には(S810:YES)、S822にて、重要度付き操作履歴転送処理(後述)を実行し、センタ通信受信時処理を終了する。一方、操作履歴転送要求でない場合には(S810:NO)、S832にて、重要度付き転送確認処理(後述)を実行し、センタ通信受信時処理を終了する。
【0105】
次に、S822で実行される重要度付き操作履歴転送処理の手順を図22を用いて説明する。図22は重要度付き操作履歴転送処理を示すフローチャートである。
この重要度付き操作履歴転送処理が実行されると、CPU11は、まずS1810にて、リモート通信待ち状態記憶領域に「転送要求待ち」を示す内容が記憶されているか否かを判断する。すなわち、リモート通信待ち状態が「転送要求待ち」であるか否かを判断する。ここで、リモート通信待ち状態が「転送要求待ち」でない場合には(S1810:NO)、重要度付き操作履歴転送処理を終了する。一方、リモート通信待ち状態が「転送要求待ち」である場合には(S1810:YES)、S1820にて、「通常領域」を示す内容を参照記憶先記憶領域に上書き記憶する。
【0106】
そしてS1830にて、参照記憶先記憶領域に記憶されている参照記憶先の操作履歴記憶領域に記憶されている操作履歴情報の全てを取得する。その後S1840にて、全ての記憶先、すなわち、EEPROM14、中重要度記憶領域52、小重要度記憶領域53、および通常記憶領域54の全てにおいて操作履歴情報を取得したか否かを判断する。ここで、全ての記憶先において操作履歴情報を取得していない場合には(S1840:NO)、S1850にて、参照記憶先記憶領域に、次に重要度が高い記憶領域を示す内容を上書き記憶する。その後、S1830に移行し、上述の処理を繰り返す。
【0107】
またS1840にて、全ての記憶先において操作履歴情報を取得した場合には(S1840:YES)、S1860にて、全ての記憶先において操作履歴記憶領域に記憶されている操作履歴情報の全てを、無線通信装置4に、車両の外部に設置されたリモートセンタ100へ送信させる。そしてS1870にて、リモート通信待ち状態記憶領域に、「誤り訂正符号待ち」を示す内容を上書き記憶する。そして、重要度付き操作履歴転送処理を終了する。
【0108】
次に、S832で実行される重要度付き転送確認処理の手順を図23を用いて説明する。図23は重要度付き転送確認処理を示すフローチャートである。
重要度付き転送確認処理は、S1060〜S1090の処理が省略された点と、S1910〜S1980の処理が追加された点以外は、第1実施形態の転送確認処理と同じである。
【0109】
すなわち、S1050にて、誤り訂正符号の値が一致しない場合には(S1050:NO)、S1910にて、S1860の処理と同様にして、全ての記憶先において操作履歴記憶領域に記憶されている操作履歴情報の全てを再度送信させる。そしてS1920にて、リモート通信待ち状態記憶領域に、「誤り訂正符号待ち」を示す内容を上書き記憶する。そして、重要度付き転送確認処理を終了する。一方、誤り訂正符号の値が一致する場合には(S1050:YES)、S1930にて、「通常領域」を示す内容を参照記憶先記憶領域に上書き記憶する。
【0110】
そしてS1940にて、参照記憶先記憶領域に記憶されている参照記憶先の重要度が中未満であるか否かを判断する。すなわち、参照記憶先が「小重要度領域」または「通常領域」であるか否かを判断する。ここで、参照記憶先の重要度が中以上、すなわち、参照記憶先が「EEPROM」または「中重要度領域」である場合には(S1940:NO)、S1970に移行する。
【0111】
一方、参照記憶先の重要度が中未満である場合には(S1940:YES)、S1950にて、参照記憶先の操作履歴記憶領域に記憶されている操作履歴情報の全てを削除するとともに、S1960にて、参照記憶先の比較対象データ用記憶領域に記憶されている操作履歴情報を削除して、S1970に移行する。
【0112】
そしてS1970に移行すると、参照記憶先記憶領域に「EEPROM」を示す内容が記憶されているか否かを判断する。ここで、「EEPROM」を示す内容が記憶されていない場合には(S1970:NO)、参照記憶先の重要度が最大ではないと判断し、S1980にて、参照記憶先記憶領域に、次に重要度が高い記憶領域を示す内容を上書き記憶する。その後、S1830に移行し、上述の処理を繰り返す。一方、「EEPROM」を示す内容が記憶されている場合には(S1970:YES)、重要度付き転送確認処理を終了する。
【0113】
このように構成された電子制御装置1では、操作履歴情報に重要度が付与される。図24(a)〜(d)は、重要度の算出条件を規定した重要度算出テーブルを示す図である。また、図24(e)は、重要度と記憶先記憶領域との対応関係を示す記憶領域設定テーブルを示す図である。
【0114】
図15(b)に示すように、要求内容が「データ読出し」、「アクティブテスト」、および「リプログラミング」の場合にはそれぞれ、重要度が0,0,5に設定される(S1210)。一方、要求内容が「故障コード消去」および「制御装置初期化」の場合には、図24(a)〜(d)に記載の重要度算出テーブルに基づいて算出される(S1230〜S1320)。
【0115】
まず、図24(a)に記載のように、現在時刻がビジネスタイム内である場合には重要度を維持する一方、現在時刻がビジネスタイム外である場合には重要度を1加算する。また、図24(b)に記載のように、現在地が販売国内かつ販売店内である場合には重要度を維持し、現在地が販売国内かつ販売店外である場合には重要度を1加算し、現在地が販売国外である場合には重要度を5加算する。また、図24(c)に記載のように、車両が正常状態である場合には重要度を維持する一方、車両状態が異常状態である場合には重要度を1加算する。また、図24(d)に記載のように、作業者が登録済みである場合には重要度を維持する一方、作業者が登録されていない(ゲストアカウント)場合には重要度を1加算する。
【0116】
そして、図24(e)に記載のように、重要度が0の場合の記憶先は通常記憶領域54、重要度が1〜2の場合の記憶先は小重要度記憶領域53、重要度が3〜4の場合の記憶先は中重要度記憶領域52、重要度が5以上の場合の記憶先はEEPROM14に設定される。
【0117】
これにより、付与された重要度に基づいて、削除を禁止する操作履歴情報、及び、記憶する必要のない操作履歴情報などを簡便に判別することができる。このため、削除すべきでない操作履歴情報が削除されてしまうという状況の発生を抑制し、操作履歴情報の記憶における安全性を向上させることができる。また、記憶する必要のない操作履歴情報がEEPROM14およびSRAM15に記憶されてしまうという状況の発生を抑制し、EEPROM14およびSRAM15のリソースを節約することができる。
【0118】
また、操作履歴情報の重要度に応じて、EEPROM14の操作履歴記憶領域41、SRAM15の中重要度記憶領域52、SRAM15の小重要度記憶領域53、SRAM15の通常記憶領域54の何れかに操作履歴情報が記憶される(S1410〜S1470)。これにより、記憶領域毎にアクセス権を設定することができ、権限のない作業者による不正な操作を抑制することができる。また、領域毎に操作履歴情報を転送すること、転送不可能な記憶領域を設けることなど、記憶媒体のリソースの柔軟な管理を行うことができる。
【0119】
また、操作履歴情報の削除を上記の記憶領域毎に行う(S1950)。記憶領域は重要度に応じて区別されているため、重要度に応じて操作履歴情報の削除を行う場合に記憶領域毎に一括して削除処理を行うことができ、操作履歴情報の削除処理を簡略化できる。
【0120】
また、故障診断装置6を電子制御装置1に接続してから故障診断装置6が処理要求を送信するまでの重要度算出条件に基づいて(本実施形態では、「現在時刻がビジネスタイム内か否か」、「現在地が販売国内であるか否か」、及び「現在地が販売店内であるか否か」)、重要度を算出し(S1230〜S1280)、重要度に応じて、処理要求に応じた処理を実行するか否かを決定する(S62)。これにより、深夜の操作や国外での操作など、通常の使用では考えられない状況下での故障診断装置6の接続であれば、特定の処理要求を禁止することで、電子制御装置1の不正改造を抑制することができる。
【0121】
また、EEPROM14の操作履歴記憶領域41に記憶された操作履歴情報は削除されないように構成されている(S1940〜S1950)。これにより、EEPROM14に記憶された操作履歴情報を、削除するべきでなく必ず車両に残しておくべき情報とすることができる。
【0122】
以上説明した実施形態において、S1290,S1300の処理は本発明における第1重要度算出手段、S1230〜S1280の処理は本発明における第2重要度算出手段、S62の処理は本発明における処理実行手段である。
【0123】
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採ることができる。
例えば上記実施形態では、故障診断装置6から前回受信した要求内容を示すデータを、今回記憶データと比較するための比較対象データとするものを示した。しかし、比較対象データを予め設定し、常に同一の比較対象データを用いるようにしてもよい。例えば、比較対象データとして、利用頻度が高い付加情報を含ませるようにする。これにより、比較対象データにおける利用頻度が高い付加情報の部分は、今回記憶データと一致する頻度が多くなり、今回記憶データの圧縮率を向上させることができる。なお、利用頻度が高い付加情報として、例えば、車両を購入したディーラの作業者が挙げられる。
【0124】
また、比較対象データは、故障診断装置6から要求される頻度が多いものとして予め設定された要求内容を示すデータを含むようにしてもよい。これにより、今回記憶データと比較対象データとの相違部分が少なくなり、SRAM15に記憶するデータ量を低減することができる。
【0125】
また上記実施形態では、電子制御装置1内に設けられたSRAM15に操作履歴情報を記憶するものを示した。しかし、電子制御装置1外に設けられた記憶媒体(例えば、カーナビゲーション装置のハードディスクドライブ)に操作履歴情報を記憶するようにしてもよい。ハードディスクドライブは記憶容量が大きいため、多くの操作履歴情報を記憶することができるようになる。または、電子制御装置1とは別の電子制御装置が車内LAN5を介して電子制御装置1とデータ通信可能に接続される場合には、この別の電子制御装置に操作履歴情報を記憶するようにしてもよい。これにより、電子制御装置1のみの場合と比較して、より多くの操作履歴情報を記憶することができる。
【0126】
また上記実施形態では、操作履歴記憶領域23の記憶残量が通知判定量以下になると、操作履歴記憶領域23に記憶されている操作履歴情報の全てを削除するものを示した。しかし、操作履歴記憶領域23の記憶残量に応じて、付加情報の種類または数を変化させるようにしてもよい。これにより、操作履歴記憶領域23の記憶残量が少なくなった場合に、操作履歴情報に付与される付加情報を減らすことができる。このため、記憶する必要のある操作履歴情報が操作履歴記憶領域23の記憶残量の不足のために記憶できないという状況の発生を抑制し、SRAM15のリソースを有効活用することができる。
【0127】
さらに、重要度が予め設定された所定判定重要度より低い操作履歴情報について、操作履歴記憶領域23の記憶残量に応じて、付加情報の種類または数を変化させるようにしてもよい。これにより、操作履歴記憶領域23の記憶残量が少なくなった場合に、重要度の低い操作履歴情報に付与される付加情報を減らすことができる。これにより、重要度の高い操作履歴情報を記憶できないという状況の発生を抑制し、SRAM15のリソースを有効活用することができる。
【0128】
また、操作履歴記憶領域23の記憶残量が少なくなると、重要度が低い操作履歴情報の操作履歴記憶領域23への記憶を禁止するようにしてもよい。これにより、重要度の低い操作履歴情報を記憶したために操作履歴記憶領域23の記憶残量が少なくなり、重要度の高い操作履歴情報を記憶できないという状況の発生を抑制し、SRAM15のリソースを有効活用することができる。
【0129】
また、操作履歴記憶領域23の記憶残量が少ない場合において、重要度が高い操作履歴情報を新たに操作履歴記憶領域23に記憶する際に、既に操作履歴記憶領域23に記憶された低重要度の操作履歴情報を削除して、削除した領域に、この高重要度の操作履歴情報を記憶するようにしてもよい。これにより、重要度が低い操作履歴情報より重要度が高い操作履歴情報を優先してSRAM15に記憶させることができる。
【0130】
また上記実施形態では、操作履歴情報を1箇所に記憶するものを示した。しかし、同じ操作履歴情報を複数箇所に記憶するようにしてもよい。同じ操作履歴情報を2箇所に記憶することにより、互いに相違の有無をチェックし、相違がある場合には、操作履歴情報の記憶に異常が発生したと判断する。また、同じ操作履歴情報を3箇所以上に記憶することにより、或る1つの操作履歴情報と他の残りの操作履歴情報とで相違がある場合には、或る1つの操作履歴情報の内容を他の残りの操作履歴情報の内容に変更することで、或る1つの操作履歴情報を修正することができる。
【0131】
また上記実施形態では、車両の外部に設置されたリモートセンタ100へ操作履歴情報を無線送信するものを示したが、この無線送信において、操作履歴情報を暗号化して送信するようにしてもよい。これにより、第三者により操作履歴情報が不正に読み取られることを抑制することができる。
【0132】
また上記実施形態では、車両に搭載された無線通信装置4に操作履歴情報をリモートセンタ100へ無線送信させるものを示した。しかし、車内LAN5を介して故障診断装置6に操作履歴情報を送信した後に、この故障診断装置6の無線通信機能を用いて操作履歴情報をリモートセンタ100へ無線送信させるようにしてもよい。これにより、操作履歴情報をリモートセンタ100に転送する手段を車両が備えていない場合であっても、故障診断装置6を利用することでリモートセンタ100に転送することが可能になる。
【0133】
また上記第2実施形態では、重要度テーブル42に、要求内容として、「データ読出し」、「アクティブテスト」、「故障コード消去」、「制御装置初期化」、および「リプログラミング」が記載されているものを示した(図15(b)を参照)。しかし、故障診断装置6が実装する機能に応じて、これらの要求内容を増減してもよい。
【0134】
また上記第2実施形態では、重要度が6未満の場合に処理要求に応じた処理を実行するものを示した(S62を参照)。しかし、重要度の判定値(第2実施形態では「6」)は固定ではなく、要求内容に応じた重要度によって判断してもよい。
【0135】
また上記第2実施形態では、現在時刻、現在地、車両状態、および作業者に基づいて重要度を算出するものを示した。しかし、故障診断装置6の種類に基づいて重要度を算出するようにしてもよい。例えば、故障診断装置6が正規品ではない場合に重要度を高くするようにする。
【0136】
また、故障診断装置6のバージョンに基づいて重要度を算出するようにしてもよい。例えば、バージョンが古い故障診断装置6では、新しいバージョンで可能な操作ができない場合があるため、故障診断装置6のバージョンが古い場合には、重要度を高くするようにする。
【0137】
また上記第2実施形態では、作業者が故障診断装置6に登録された者であるか否かに基づいて、重要度を算出するものを示した。しかし、作業者のアカウントまたはディーラが前回と同一であるか否かにより、重要度を算出するようにしてもよい。例えば、作業者のアカウントが前回と異なる場合には、重要度を高くするようにする。また、作業者の熟練度に基づいて重要度を算出するようにしてもよい。例えば、故障診断装置6に、作業者とその熟練度との対応関係を示すテーブルを設け、このテーブルを参照することで、作業者の熟練度を電子制御装置1に送信する。そして電子制御装置1は、この熟練度に基づいて、熟練度が高いほど重要度を低くする。これにより、想定外の操作が発生し易い状況での重要度を高くすることができ、想定外の操作が行われた場合の操作履歴情報が記憶されないという状況の発生を抑制することができる。
【0138】
また、故障診断装置6に対する操作に要した時間に基づいて、重要度を算出するようにしてもよい。例えば、予め設定された所定時間より長く操作していた場合には、規定していない操作が操作中に行われたと判断して、重要度を高くするようにする。
【0139】
また、故障診断装置6に対する操作順序に基づいて、重要度を算出するようにしてもよい。例えば、予め設定されている操作順序以外の操作が行われて場合には、不正な操作である可能性が高いとして、重要度を高くするようにする。
【0140】
また、故障診断装置6が要求を送信する対象の種類に基づいて、重要度を算出するようにしてもよい。例えば、エンジンを制御する電子制御装置など、車両に対する影響が大きい制御対象を制御する電子制御装置へ要求を送信する場合には、重要度を高くするようにする。
【符号の説明】
【0141】
1…電子制御装置、3…外部接続装置、4…無線通信装置、5…車内LAN、6…故障診断装置、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…EEPROM、15…SRAM、16…通信I/F、21…比較対象データ用記憶領域、22…今回記憶データ用記憶領域、23…操作履歴記憶領域、41…操作履歴記憶領域、42…重要度テーブル、51…今回記憶データ用記憶領域、52…中重要度記憶領域、53…小重要度記憶領域、54…通常記憶領域、55…EEPROM比較対象データ用記憶領域、61…比較対象データ用記憶領域、62…操作履歴記憶領域、100…リモートセンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の故障診断を行う外部診断装置との間でデータ通信可能に構成され、前記外部診断装置からの処理要求に応じた処理を実行する車両用電子制御装置であって、
前記外部診断装置から前記処理要求を受信すると、前記外部診断装置からの前記処理要求を示す処理要求指示情報と、前記処理要求に関連した情報であり前記処理要求指示情報に付加される付加情報とから構成される外部診断処理要求情報を作成する処理要求情報作成手段と、
前記処理要求情報作成手段により作成された前記外部診断処理要求情報と、前記外部診断処理要求情報と比較するために設定された比較用情報とを比較し、前記外部診断処理要求情報のうち、前記外部診断処理要求情報と前記比較用情報との相違部分を、前記車両用電子制御装置内に設けられた記憶媒体である装置内記憶媒体に記憶させる装置内記憶手段と、
前記装置内記憶媒体において前記相違部分を記憶することができる記憶残量である相違部分記憶残量が予め設定された所定転送判定量以下になると、前記装置内記憶媒体に記憶された前記相違部分の少なくとも一部を、前記車両用電子制御装置の外部に設けられた記憶媒体である装置外記憶媒体に前記相違部分を記憶させる装置外記憶手段に転送する転送手段と、
前記装置内記憶媒体に記憶された前記相違部分のうち、前記転送手段により転送された前記相違部分を、前記装置内記憶媒体から削除する削除手段と
を備えることを特徴とする車両用電子制御装置。
【請求項2】
前記転送手段は、前記装置内記憶媒体において前記相違部分を記憶することができる記憶残量が予め設定された所定転送判定量以下になると、その旨を示す残量低下情報を前記装置外記憶手段に通知し、その後に、前記装置外記憶手段から、前記相違部分の転送を要求する転送要求指令を受信すると、前記相違部分を前記装置外記憶手段に転送し、
前記転送手段が前記相違部分を転送した後に、前記相違部分が正常に転送されたか否かを確認する転送確認手段を備え、
前記削除手段は、前記相違部分が正常に転送されたと前記転送確認手段により確認された後に、前記相違部分を前記装置内記憶媒体から削除する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用電子制御装置。
【請求項3】
前記外部診断処理要求情報に、前記外部診断処理要求情報の必要性の度合いに応じた重要度が付与される
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用電子制御装置。
【請求項4】
前記重要度を、当該車両用電子制御装置の状態に基づいて算出する第1重要度算出手段を備える
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用電子制御装置。
【請求項5】
前記処理要求情報作成手段は、
前記外部診断処理要求情報に付与された前記重要度が、必要性の度合いが低いものとして予め設定された所定判定重要度より低い場合に、前記相違部分記憶残量に応じて、前記外部診断処理要求情報に付与される前記付加情報の種類または数を変化させる
ことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の車両用電子制御装置。
【請求項6】
前記装置内記憶手段は、
前記相違部分記憶残量が予め設定された所定記憶判定量以下である場合に、前記重要度が予め設定された所定記憶判定重要度より低い前記外部診断処理要求情報の記憶を禁止する
ことを特徴とする請求項3〜請求項5の何れか1項に記載の車両用電子制御装置。
【請求項7】
前記外部診断装置を当該車両用電子制御装置に接続してから前記外部診断装置が前記処理要求を送信するまでの重要度算出条件に基づいて、前記処理要求に対応した前記外部診断処理要求情報に付与される前記重要度を算出する第2重要度算出手段と、
前記第2重要度算出手段により算出された前記重要度に応じて、前記処理要求に応じた処理を実行するか否かを決定する処理実行手段を備える
ことを特徴とする請求項3〜請求項6の何れか1項に記載の車両用電子制御装置。
【請求項8】
前記比較用情報は、
前記外部診断装置から要求される頻度が多いものとして予め設定された処理要求を示す処理要求指示情報を含む
ことを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の車両用電子制御装置。
【請求項9】
前記処理要求情報作成手段は、
前記相違部分記憶残量に応じて、前記付加情報の種類または数を変化させる
ことを特徴とする請求項1〜請求項8の何れか1項に記載の車両用電子制御装置。
【請求項10】
前記転送手段は、
前記外部診断装置が当該車両用電子制御装置に接続されている場合に、前記外部診断装置に前記相違部分を送信し、前記外部診断装置のデータ通信機能を介して、前記相違部分を前記装置外記憶手段に転送する
ことを特徴とする請求項1〜請求項9の何れか1項に記載の車両用電子制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図14】
image rotate

【図24】
image rotate