説明

車両用電源制御装置

【課題】本発明は、駐車状態で使用したい電気負荷を作動させても駐車状態での無駄な消費電流を抑制することができる車両用電源制御装置の提供を目的とする。
【解決手段】車両に搭載される電気負荷の通電/非通電を制御する車両用電源制御装置であって、車両に搭載される電気負荷の一部である電気負荷1〜10と、電気負荷1〜10よりも駐車状態では優先的に通電が必要な電気負荷11〜20と、電気負荷1〜10の通電/非通電だけでなく電気負荷11〜20の通電/非通電も切り替える電源切替ECU30、ACCリレー36及びIGリレー37と、電気負荷11〜20のみの通電/非通電を切り替える電源マネジメントECU40、駐車時ACCリレー46及び駐車時IGリレー47とを備えることを特徴とする、車両用電源制御装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載される電気負荷の通電/非通電を制御する車両用電源制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バッテリ管理コントローラによって高圧バッテリの電圧等の電源状態を検出し、その検出結果に応じてエアコンコントローラに対して電動コンプレッサの起動許可信号を供給し、起動許可信号の供給を受けたエアコンコントローラによって車室内の空調を行うために電動コンプレッサを動作させる、空気調和装置の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この空気調和装置の制御装置は、電動コンプレッサを作動させる前に、高圧バッテリの電圧等の電源状態を検出することによって、電動コンプレッサの駆動の効率化を図ろうとするものである。
【特許文献1】特開平8−20232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車両にはアクセサリ電源やイグニッション電源などの複数の電源供給系統ラインが備えられており、アクセサリ電源で動作する電気負荷やイグニッション電源で動作する電気負荷が車両に搭載される電気負荷として存在する。これらの電気負荷を作動させるためには、アクセサリ電源やイグニッション電源を通電状態にする必要がある。
【0004】
そして、近年、アクセサリ電源やイグニッション電源で動作していた電気負荷をそれらの電源が通電状態ではない駐車状態にも使用したいというニーズが高まってきている。例えば、ユーザが車両に乗り込む時にメロディを流したい場合には駐車状態でオーディオシステムを作動させる必要があり、ユーザが車両に乗り込む前に車室内の温度を快適にしたい場合には駐車状態でエアコンシステムを作動させる必要がある。
【0005】
しかしながら、駐車状態で使用したい電気負荷を作動させるために、アクセサリ電源やイグニッション電源を駐車状態でも通電状態にすると、本来駐車状態では作動が不必要な他の電気負荷に対しても電力が供給されることになり、バッテリ等の電源の限りある電力を無駄に消費することになる。また、駐車状態で使用したい電気負荷をアクセサリ電源やイグニッション電源が非通電状態であっても作動可能な構成(例えば、駐車状態で使用したい電気負荷をバッテリに常時接続する構成)にしてしまうと、無駄なスタンバイ電流(暗電流)が増加することになる。
【0006】
この点、上述の従来技術であっても、空気調和装置の制御装置を駐車状態で使用したい場合には、アクセサリ電源あるいはイグニッション電源を駐車状態で通電状態にするか、アクセサリ電源やイグニッション電源が非通電状態であっても作動可能な構成にする必要があるので、上述と同様の懸念が生じてしまう。
【0007】
そこで、本発明は、駐車状態で使用したい電気負荷を作動させても駐車状態での無駄な消費電流を抑制することができる車両用電源制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の車両用電源制御装置は、
車両に搭載される電気負荷の通電/非通電を制御する車両用電源制御装置であって、
車両に搭載される電気負荷の一部である第1の電気負荷と、
前記第1の電気負荷よりも駐車状態では優先的に通電が必要な第2の電気負荷と、
前記第1の電気負荷の通電/非通電だけでなく前記第2の電気負荷の通電/非通電も切り替える第1の切替手段と、
前記第2の電気負荷のみの通電/非通電を切り替える第2の切替手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
これにより、第1の切替手段によって切替動作を実施すれば第1の電気負荷だけでなく第2の電気負荷にも通電させることができる一方で、駐車状態では第2の切替手段によって切替動作を実施すれば第2の電気負荷のみに通電させることができるので、駐車状態で使用したい電気負荷を第2の電気負荷に割り当てれば、駐車状態での無駄な消費電流を抑制することができる。
【0010】
また、前記第2の切替手段は、前記第1の切替手段が前記第2の電気負荷を通電側に切り替えるオン指令を出力する場合、前記第2の電気負荷を非通電側に切り替えるオフ指令を出力すると好適である。これにより、前記第2の切替手段が前記第2の電気負荷を通電側に切り替えるオン指令を出力していたとしても、前記第1の切替手段によって前記第2の電気負荷を通電側に切り替えるオン指令が出力されれば、前記第2の切替手段は前記第2の電気負荷を非通電側に切り替えるオフ指令を出力するので、前記第1及び第2の切替手段の両方からオン指令が出力された状態のままになることが防止可能となり、両方からのオン指令による干渉を避けることが可能となる。
【0011】
また、前記第1の切替手段が出力する前記第2の電気負荷を通電側に切り替えるオン指令と前記第2の切替手段が出力する前記第2の電気負荷を非通電側に切り替えるオフ指令とが重複する場合、該オン指令が優先すると好適である。これにより、前記第2の電気負荷に対して相反する指令(前記第1の切替手段が出力するオン指令と前記第2の切替手段が出力するオフ指令)があっても、前記第1の切替手段が出力するオン指令によって、前記第2の電気負荷を通電側に切り替えることができる。
【0012】
また、前記第1の電気負荷にエンジンを始動させるために必要な電気負荷が含まれているとよい。これにより、駐車状態では第2の切替手段によって切替動作を実施すれば第2の電気負荷のみに通電させることができる一方で、第1の切替手段によって切替動作を実施すればエンジンを始動させるために必要な電気負荷への通電によってエンジンが始動可能になるだけでなく第1及び第2の電気負荷にも通電させることができる。
【0013】
また、前記第2の電気負荷にエンジンを始動させるために必要な電気負荷が含まれていてもよい。これにより、駐車状態では第2の切替手段によって切替動作を実施すれば第2の電気負荷のみへの通電とともにエンジンが始動可能になる一方で、第1の切替手段によって切替動作を実施すればエンジンが始動可能になるだけでなく第1及び第2の電気負荷にも通電させることができる。
【0014】
また、前記第2の切替手段による切り替えは、車両と無線通信可能な端末装置からの制御信号に基づいて行われると好適である。すなわち、車外から第2の電気負荷のみの通電/非通電を制御することができる。
【0015】
また、ユーザからの操作入力を受け付ける操作入力手段を車室内に備え、前記第1の切替手段による切り替えは、前記操作入力手段からの制御信号に基づいて行われると好適である。すなわち、ユーザは車両に乗り込めば第1及び第2の電気負荷の通電/非通電の切り替えを操作することができる。
【0016】
また、前記第2の電気負荷には、車室内の空調を制御するために必要な電気負荷が含まれると好適である。駐車状態では第2の切替手段によって切替動作を実施すれば空調関連電気負荷のみに通電させることができるので、駐車状態で車室内を快適にすることができるとともに駐車状態での無駄な消費電流を抑制することができる。
【0017】
また、前記第2の切替手段は、前記第1の電気負荷への通電を禁止する禁止手段を備えることによって、第2の電気負荷のみの通電/非通電の切り替えを実現すると好適であり、その禁止手段の具体例としてダイオードが挙げられる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、駐車状態で使用したい電気負荷を作動させても駐車状態での無駄な消費電流を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【0020】
[実施例1]
図1は、本発明に係る車両用電源制御装置の第1の実施形態を示す構成図である。車両には複数の電気負荷が搭載され、その一部の具体例を図1に示している。50は、これらの各電気負荷に電力を供給する電源を示している。電源50には、所定の電圧系(例えば、14V系)のバッテリ等の蓄電装置が接続されている。また、電源50には、運動エネルギーを電気エネルギーに変換することにより発電を行う発電機が接続されていてもよい。発電機は、車両を走行させるためのエンジンの出力によって発電を行う。発電機が発電した電力も、バッテリ等の蓄電装置と同様に、各電気負荷に供給される。発電機の具体例として、オルタネータがある。エンジンの回転数が上昇するにつれてオルタネータの発電量も増加し、また、エンジンが停止すればオルタネータによる発電は停止する。
【0021】
電源50から供給される電力は、電源ライン60を介して、各電源供給系統ライン61〜64に分配され、それらに接続される各電気負荷に供給される。アクセサリ電源供給系統ライン61(以下、「ACC電源61」という)には、例えば、TVシステム1、DVDシステム2、後席ディスプレイ3、リヤシートエンターテイメントシステム(RSE)4、前席(FR)シガソケット5などの電気負荷が接続される。イグニッション電源供給系統ライン62(以下、「IG電源62」という)には、例えば、エアバッグメインシステム(A/B Main)6、エアバッグサブシステム(A/B Sub)7、エンジンECU8、電子制御ブレーキ(ECB)9、サスペンションシステム10などの電気負荷が接続される。駐車時アクセサリ電源供給系統ライン63(以下、「駐車時ACC電源63」という)には、例えば、ナビゲーションシステム11、オーディオ12、アンプ13などの電気負荷が接続される。駐車時イグニッション電源供給系統ライン64(以下、「駐車時IG電源64」という)には、例えば、ハイブリッド(HV)システム16、エアコンプレッサ(A/C)17、空調ECU18、A/Cインバータ19、ステアリングヒータECU20などの電気負荷が接続される。
【0022】
以下、ACC電源61に接続されるテレビシステム1等の電気負荷を「ACC動作負荷」といい、IG電源62に接続されるエアバッグメインシステム6等の電気負荷を「IG動作負荷」といい、駐車時ACC電源63に接続されるナビゲーションシステム11等の電気負荷を「駐車時ACC動作負荷」といい、駐車時IG電源64に接続されるHVシステム16等の電気負荷を「駐車時IG動作負荷」という。
【0023】
電源マネジメントECU40は、ACC電源61及びIG電源62が通電状態ではない駐車状態において電源50から電力供給を可能にするために設定された電源切替素子(駐車時ACC用リレー46と駐車時IG用リレー47)を駆動することによって、駐車時ACC動作負荷と駐車時IG動作負荷の通電/非通電を制御する。電源マネジメントECU40は、車外からの遠隔操作を可能にする所定の端末装置110からの制御信号に基づいて、あるいは、車内に設置されたパワースイッチ100からの制御信号に基づいて、駐車時ACC用リレー46と駐車時IGリレー47の駆動を実行する。
【0024】
端末装置110は、ユーザによって操作される装置であって、駐車時ACC動作負荷や駐車時IG動作負荷の作動を制御可能な装置である。端末装置110は、例えば、車両を操作するためのキーやカード、携帯電話あるいは専用端末などのユーザが携帯可能な端末装置である。また、常置されるパソコン等の携帯不可能な端末装置であってもよい。
【0025】
ユーザは、駐車時ACC動作負荷や駐車時IG動作負荷の全部又は一部を駐車状態で作動させたい場合、端末装置110を使ってそれらを作動させる。ユーザは駐車時ACC動作負荷や駐車時IG動作負荷の全部又は一部の作動をさせるための所定の操作を端末装置110に対して行うことによって、駐車時ACC動作負荷や駐車時IG動作負荷の全部又は一部の作動を制御する制御信号が端末装置110から送信される。端末装置110からの制御信号を受信した電源マネジメントECU40は、その制御信号に応じて駐車時ACC動作負荷や駐車時IG動作負荷の通電/非通電を制御する。
【0026】
電源マネジメントECU40は、駐車時ACC動作負荷の全部又は一部を作動させる制御信号を駐車状態で端末装置110から受信した場合、駐車時ACC動作負荷の通電を行うため、駐車時ACCリレー46をオンさせる。電源マネジメントECU40のマイコン41がトランジスタ42をオンすることによって、内部電源48との導通により駐車時ACCリレー46がオンする。駐車時ACCリレー46がオンすることによって電源50と駐車時ACC電源63とが導通するため、駐車時ACC動作負荷の通電がなされる。
【0027】
同様に、電源マネジメントECU40は、駐車時IG動作負荷の全部又は一部を作動させる制御信号を駐車状態で端末装置110から受信した場合、駐車時IG動作負荷の通電を行うため、駐車時IGリレー47をオンさせる。電源マネジメントECU40のマイコン41がトランジスタ43をオンすることによって、内部電源48との導通により駐車時IGリレー47がオンする。駐車時IGリレー47がオンすることによって電源50と駐車時IG電源64とが導通するため、駐車時IG動作負荷の通電がなされる。
【0028】
また、電源マネジメントECU40は、駐車時ACC動作負荷を非通電にする制御信号を駐車状態で端末装置110から受信した場合には、トランジスタ42をオフすることによって、駐車時ACC動作負荷を非通電にし、駐車時IG動作負荷を非通電にする制御信号を駐車状態で端末装置110から受信した場合には、トランジスタ43をオフすることによって、駐車時IG動作負荷を非通電にする。
【0029】
一方、電源切替ECU30は、ACCリレー36とIGリレー37の電源切替素子を駆動することによって、ACC動作負荷とIG動作負荷の通電/非通電を制御するだけでなく、駐車時ACC用リレー46と駐車時IG用リレー47の駐車時電源切替素子を駆動することによって、駐車時ACC動作負荷と駐車時IG動作負荷の通電/非通電も制御する。電源切替ECU30は、ACCリレー36とIGリレー37と駐車時ACC用リレー46と駐車時IGリレー47の駆動を、パワースイッチ100からの制御信号に基づいて実行する。
【0030】
パワースイッチ100は、車室内の運転席近くに設置されている。車両に乗り込んだユーザはパワースイッチ100の押下によってエンジンの始動や停止を操作する。そして、パワースイッチ100の操作に伴い、ACC動作負荷、IG動作負荷、駐車時ACC動作負荷及び駐車時IG動作負荷の通電/非通電の切り替えが電源切替ECU30によって行われる。
【0031】
電源切替ECU30は、OFF状態、ACC状態及びIGON状態の少なくとも3つの電源切替状態を示す内部状態を有している。
【0032】
電源切替ECU30は、内部状態がOFF状態のときにパワースイッチ100の押下を示す信号を検知した場合、OFF状態からACC状態に内部状態が遷移し、ACC動作負荷の通電を行うためACCリレー36をオンさせるとともに、駐車時ACC動作負荷の通電を行うため駐車時ACCリレー46をオンさせる。電源切替ECU30のマイコン31がトランジスタ32をオンすることによって、内部電源38との導通によりACCリレー36がオンするとともにダイオード70を介して駐車時ACCリレー46がオンする。ACCリレー36がオンすることによって電源50とACC電源61とが導通するため、ACC動作負荷の通電がなされるとともに、駐車時ACCリレー46がオンすることによって電源50と駐車時ACC電源63とが導通するため、駐車時ACC動作負荷の通電がなされる。
【0033】
また、電源切替ECU30は、内部状態がACC状態のときにパワースイッチ100の押下を示す信号を検知した場合、ACC状態からIG状態に内部状態が遷移し、IG動作負荷の通電を行うためIGリレー37をオンさせるとともに、駐車時IG動作負荷の通電を行うため駐車時IGリレー47をオンさせる。電源切替ECU30のマイコン31がトランジスタ33をオンすることによって、内部電源38との導通によりIGリレー37がオンするとともにダイオード71を介して駐車時IGリレー47がオンする。IGリレー37がオンすることによって電源50とIG電源62とが導通するため、IG動作負荷の通電がなされるとともに、駐車時IGリレー47がオンすることによって電源50と駐車時IG電源64とが導通するため、駐車時IG動作負荷の通電がなされる。したがって、IG動作負荷の一つであるエンジンECU8に通電がなされると、エンジンの始動を制御可能なエンジンECU8は、エンジンを始動させることが可能となる。
【0034】
また、電源切替ECU30は、車両停止状態で内部状態がIGON状態のときにパワースイッチ100の押下を示す信号を検知した場合、IGON状態からOFF状態に内部状態が遷移し、ACC動作負荷、IG動作負荷、駐車時ACC動作負荷及び駐車時IG動作負荷の全てを非通電にするため、ACCリレー36、IGリレー37、駐車時ACCリレー46及び駐車時IGリレー47を全てオフさせる。電源切替ECU30のマイコン31がトランジスタ32及び33をオフすることによって、ACC動作負荷、IG動作負荷、駐車時ACC動作負荷及び駐車時IG動作負荷の全てが非通電となる。したがって、IG動作負荷の一つであるエンジンECU8が非通電になることによって、エンジンを停止させることが可能となる。
【0035】
なお、電源切替ECU30によるトランジスタ32及び33のオフによって、駐車時ACC動作負荷及び駐車時IG動作負荷が非通電となるように、エンジンマネジメントECU40は、エンジン始動を要求するパワースイッチ100からの制御信号に基づいて、トランジスタ42及び43をオフしておく。
【0036】
また、電源マネジメントECU40及び電源切替ECU30は、制御処理プログラムを処理するマイコン31やマイコン41のほかに、制御処理プログラムを記憶するROM、制御処理プログラムの処理データを一時的に記憶するRAM、外部と情報をやり取りするための入出力インターフェースなど、複数の回路要素によって構成される。
【0037】
それでは、図1に示される上述の車両用電源制御装置の第1の実施形態の動作例について説明する。図2は、車両用電源制御装置の第1の実施形態を駐車時空調システムに適用した場合の動作フローの一例である。
【0038】
なお、駐車時空調システムとは、空調を駐車状態に作動させること(プレ空調)ができるシステムである。ユーザが乗車する前に無線等で車両に指示を与えてエアコンを動作させて乗車前に車内を快適な環境にしておくことができる。また、駐車時空調作動中にユーザが乗車し、エンジンを始動させた場合でも空調は引き続き作動させておきたい。近年、アイドリングSTOP条例などが制定され、ユーザが居ないときにはエンジンが始動できないことがある。エンジンとモータを動力源とするハイブリッド車両の場合には、コンプレッサが電動であり高圧バッテリを使用しているため、エンジンを始動できなくてもエアコン動作は可能である。しかしながら、高圧バッテリも駐車時空調システムに使用できる電力には限りがあるため、無駄な電力を使用してしまうと、駐車時空調ができる時間が低下してしまう。その結果、商品としての価値も下がることとなる。
【0039】
それでは、本発明に係る車両用電源制御装置の第1の実施形態を駐車時空調システムに適用した場合の図2の動作フローについて図1を参照しながら説明する。
【0040】
電源マネジメントECU40は、端末装置110を介してユーザによるプレ空調のオン要求を駐車状態で受信した場合(ステップ10、ステップ12;Yes)、駐車時IGリレー47をオンさせる(ステップ14)。これにより、駐車時IG動作負荷である空調ECU18に通電がなされ、空調ECU18はプレ空調の実施を開始可能となる。
【0041】
次に、電源マネジメントECU40は、プレ空調のオフタイマが所定時間(例えば、10分)を経過しているか否かを判断する(ステップ16)。あるいは、電源マネジメントECU40は、空調ECU18からプレ空調のオフタイマが所定時間を経過しているか否かの判断結果を取得する(ステップ16)。電源マネジメントECU40は、所定時間を経過している場合には駐車時IGリレー47をオフさせる(ステップ18)。これにより、空調ECU18は非通電となり、プレ空調は停止する。
【0042】
一方、電源マネジメントECU40は、所定時間を経過していない場合には端末装置110を介してユーザによるプレ空調のオフ要求があるか否を判断する(ステップ20)。電源マネジメントECU40は、オフ要求がある場合には駐車時IGリレー47をオフさせる(ステップ22)。これにより、空調ECU18は非通電となり、プレ空調は停止する。これは、オフタイマではなくユーザが自らプレ空調をオフしたことを示す。
【0043】
さらに、端末装置110を介してユーザによるプレ空調のオフ要求がないままユーザが車両に乗り込みエンジンを始動させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ステップ24;Yes)、その押下を検知した電源切替ECU30の内部状態はOFF状態からACC状態を経てIGON状態に遷移する。内部状態がACC状態に遷移した電源切替ECU30はACCリレー36及び駐車時ACCリレー46をオンさせ、内部状態がIGON状態に遷移した電源切替ECU30はIGリレー37及び駐車時IGリレー47をオンさせる(ステップ28)。なお、ステップ24においてユーザがエンジンを始動させるためのパワースイッチ100の押下が無ければ、駐車時IGリレー47がオンのままの電源状態が継続される(ステップ26)。
【0044】
そして、ユーザがエンジンを停止させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ステップ30;Yes)、その押下を検知した電源切替ECU30の内部状態はIGON状態からOFF状態に遷移する。内部状態がOFF状態に遷移した電源切替ECU30はACCリレー36、IGリレー37、駐車時ACCリレー46及び駐車時IGリレー47を全てオフさせる(ステップ34)。なお、ステップ30においてユーザがエンジンを停止させるためのパワースイッチ100の押下が無ければ、ACCリレー36、IGリレー37、駐車時ACCリレー46及び駐車時IGリレー47がオンのままの電源状態が継続される(ステップ32)。
【0045】
図3を参照しながら、車両用電源制御装置の第1の実施形態の動作例をより詳細説明する。図3は、電源マネジメントECU40及び電源切替ECU30の制御出力と駐車時IGリレー47及びIGリレー37のオン/オフ状態との関係を示した図である。図3の上段は、電源マネジメントECU40のマイコン41が出力するトランジスタ43の駆動信号の出力状態と電源切替ECU30のマイコン31が出力するトランジスタ33の駆動信号の出力状態とを示している。図3の下段は、駐車時IGリレー47及びIGリレー37のオン/オフ状態を示している。
【0046】
図3の左半分において、空調ECU18等の駐車時IG動作負荷の作動開始要求があった場合、電源マネジメントECU40のマイコン41は、トランジスタ43をオンする駆動信号を出力することによって、駐車時IGリレー47をオンさせる。
【0047】
そして、駐車時IGリレー47がオンしている最中に、ユーザがエンジンを始動させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ユーザによるIGのオン要求があった場合)、電源切替ECU30のマイコン31は、トランジスタ33をオンする駆動信号を出力することによって、IGリレー37をオンさせる一方で、電源マネジメントECU40のマイコン41は、トランジスタ43をオフする駆動信号を出力する。電源マネジメントECU40によってトランジスタ43をオフする駆動信号が出力されたとしても、トランジスタ33をオンする駆動信号が出力されているため、駐車時IGリレー47は、ダイオード71を介して、オンしたままとなる。駐車時IGリレー47を、電源マネジメントECU40と電源切替ECU30の両方からオンさせる状態を防ぐためである。すなわち、制御干渉による誤作動を防ぐ。
【0048】
その後、ユーザがエンジンを停止させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ユーザによるIGのオフ要求があった場合)、電源切替ECU30のマイコン31は、トランジスタ33をオフする駆動信号を出力することによって、IGリレー37と駐車時IGリレー47を共にオフさせる。
【0049】
図3の右半分は、図3の左半分と異なる場面を示す。図3の右半分は、ユーザがエンジンを始動させるためにパワースイッチ100を押下する前に(ユーザによるIGのオン要求がある前に)、駐車時IG動作負荷の作動終了要求があった場面を示す。
【0050】
図3の右半分において、空調ECU18等の駐車時IG動作負荷の作動開始要求があった場合、電源マネジメントECU40のマイコン41は、トランジスタ43をオンする駆動信号を出力することによって、駐車時IGリレー47をオンさせる。
【0051】
そして、ユーザによるIGのオン要求がある前に、端末装置110を介して駐車時IG動作負荷の作動終了要求があった場合、電源マネジメントECU40のマイコン41は、トランジスタ43をオフする駆動信号を出力することによって、駐車時IGリレー47をオフさせる。駐車時IGリレー47がオフした後に、ユーザによるIGのオン要求があった場合、電源切替ECU30のマイコン31は、トランジスタ33をオンする駆動信号を出力することによって、IGリレー37をオンさせるとともに駐車時IGリレー47をオンさせる。
【0052】
その後、ユーザがエンジンを停止させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ユーザによるIGのオフ要求があった場合)、電源切替ECU30のマイコン31は、トランジスタ33をオフする駆動信号を出力することによって、IGリレー37と駐車時IGリレー47を共にオフさせる。
【0053】
このように、プレ空調する際に、IG動作負荷等の駐車時IG動作負荷以外の電気負荷には電力が供給されないので、メータの点灯などの駐車状態では必要のないシステムの電力の消費を抑えることができる。また、特定の電気負荷に電源50の電力を供給することができるので、電源50の電力供給能力の低下によるプレ空調の動作時間の短縮を防止することもできる。また、プレ空調に必要とするECUがIG電源62に接続されていたECUであっても、そのECUを何ら変更することなく、空調ECU18の電源と同じ駐車時IG電源64に接続することができるようになる。そのECUから見れば、自身への電源の投入形態はIG電源62に接続されている場合であっても駐車時IG電源64に接続されている場合であっても同一であるからである。
【0054】
また、ユーザのパワースイッチ100の操作に基づいて電源切替ECU30によってIG電源62の通電/非通電が制御される時には、駐車時IG電源64の通電/非通電も同時に制御されるので、駐車時IG電源64系の駐車時動作負荷にIG電源62を接続する必要がなくなり、ワイヤハーネスの増加を抑えることができる。
【0055】
したがって、上述の車両用電源制御装置の第1の実施形態において、ACC電源61及びIG電源62が通電状態ではない駐車状態で使用したい電気負荷を駐車時ACC動作負荷又は駐車時IG動作負荷に設定すれば、ACCリレー36やIGリレー37がオフの状態で駐車時ACCリレー46をオンさせることによって駐車時ACC動作負荷に通電がなされ、ACC動作負荷やIG動作負荷には通電がなされないので、駐車時ACCリレー46が設定されていない場合に比べ駐車状態での無駄な消費電流を抑制することができる。また、ACCリレー36やIGリレー37がオフの状態で駐車時IGリレー47をオンさせることによって駐車時IG動作負荷に通電がなされ、ACC動作負荷やIG動作負荷には通電がなされないので、駐車時IGリレー47が設定されていない場合に比べ駐車状態での無駄な消費電流を抑制することができる。
【0056】
[実施例2]
図4は、本発明に係る車両用電源制御装置の第2の実施形態を示す構成図である。図4に示される第2の実施形態において、図1に示される第1の実施形態と同一の符号については、第1の実施形態と同様の構成・機能を有しているので、説明を省略または簡略する。
【0057】
第2の実施形態は、リモートエンジンスタートシステムに適用したものである。リモートエンジンスタートシステム(以下、「リモスタ」という)は、車外からでも車両のエンジンを遠隔操作によって始動させるシステムである。リモスタは、乗車前の霜雪による視界確保や冷暖房を行うために使用されることが多い。これらの目的を達成するために動作させることが必要な電気負荷は、リヤデフォッガ、デアイサ、ミラーヒータ、エアコン用コンプレッサなど、比較的消費電力が大きいものである。リモスタによって始動したエンジンの動作状態はアイドル状態のため、エンジンの回転数が低く発電機(オルタネータ)の発電量が少ない。したがって、バッテリから電力が持ち出されている状態であることが多い。そのため、リモスタによる始動の場合には、エンジンが作動しているにもかかわらず、バッテリからの放電が多く、必要以上にバッテリ容量が減ってしまうおそれがある。また、リモスタによる始動の場合には、走行前に一旦エンジンを停止することが法規上義務付けられているため、エンジンの再始動が必要になる。したがって、バッテリ容量が減っている状態では(さらには、リモスタの使用頻度が高い低温時ではバッテリの放電性能も悪いため)、エンジンの再始動時の始動性が悪くなるおそれがある。
【0058】
また、リモスタによる始動であっても、乗車後にキー等によってエンジンを始動させる場合と同様にエンジンの始動制御がなされるので、従来の構成ではアクセサリ電源やイグニッション電源が通電状態になってしまい、リモスタ時には必要のない電気負荷(例えば、シガソケットなどのアクセサリ電源で動作する電気負荷やメータや周辺監視センサなどの電気負荷)への通電がなされてしまう。
【0059】
それでは、図4に示される本発明に係る車両用電源制御装置の第2の実施形態の構成について説明する。電源50から供給される電力は、電源ライン60を介して、各電源供給系統ライン61,62,65に分配され、それらに接続される各電気負荷に供給される。ACC電源61には、例えば、TVシステム1、DVDシステム2、後席ディスプレイ3、リヤシートエンターテイメントシステム(RSE)4、前席(FR)シガソケット5などの電気負荷が接続される。IG電源62には、例えば、エアバッグメインシステム(A/B Main)6、エアバッグサブシステム(A/B Sub)7、電子制御ブレーキ(ECB)9、サスペンションシステム10などの電気負荷が接続される。リモスタ時電源供給系統ライン65(以下、「リモスタ時電源65」という)には、例えば、エアコンプレッサ21、各席空調シートECU22、リヤデフォッガ23、デアイサ24、ステアリングヒータ25、エンジンECU8などの電気負荷が接続される。リモスタ時電源65には、リモスタを行う場合に作動させることが必要な電気負荷を接続すればよい。
【0060】
以下、ACC電源61に接続されるテレビシステム1等の電気負荷を「ACC動作負荷」といい、IG電源62に接続されるエアバッグメインシステム6等の電気負荷を「IG動作負荷」といい、リモスタ時電源65に接続されるエンジンECU8等の電気負荷を「リモスタ時動作負荷」という。
【0061】
リモートスタートECU(リモスタECU)80は、ACC電源61及びIG電源62が通電状態ではない駐車状態においてリモスタによって始動した場合に電源50から電力供給を可能にするために設定された電源切替素子であるリモスタIGリレー84を駆動することによって、リモスタ時動作負荷の通電/非通電を制御する。リモスタECU80は、車外からの遠隔操作を可能にする所定の端末装置110からの制御信号に基づいて、あるいは、車内に設置されたパワースイッチ100からの制御信号に基づいて、リモスタIGリレー84の駆動を実行する。
【0062】
端末装置110は、ユーザによって操作される装置であって、リモスタの作動/停止を制御可能な装置である。端末装置110は、例えば、車両を操作するためのキーやカード、携帯電話あるいはリモスタ専用端末などのユーザが携帯可能な端末装置である。また、常置されるパソコン等の携帯不可能な端末装置であってもよい。
【0063】
ユーザは、リモスタの作動や停止を要求する場合、端末装置110を使う。ユーザはリモスタの作動や停止のための所定の操作を端末装置110に対して行うことによって、リモスタの作動や停止を要求する制御信号が端末装置110から送信される。端末装置110からの制御信号を受信したリモスタECU80は、その制御信号に応じてリモスタの作動や停止を制御する。
【0064】
リモスタECU80は、リモスタの作動要求をする制御信号を駐車状態で端末装置110から受信した場合、リモスタ時動作負荷の通電を行うため、リモスタIGリレー84をオンさせる。リモスタECU80のマイコン81がトランジスタ82をオンすることによって、内部電源85との導通によりリモスタIGリレー84がオンする。リモスタIGリレー84がオンすることによって電源50とリモスタ時電源65とが導通するため、リモスタ時動作負荷の通電がなされる。したがって、リモスタ時動作負荷の一つであるエンジンECU8に通電がなされると、エンジンECU8はエンジンを始動させることが可能となる(リモスタの作動)。また、リモスタの作動とともに、エアコンプレッサ21等の電気負荷の作動も可能となる。
【0065】
また、リモスタECU80は、リモスタの作動停止要求をする制御信号を駐車状態で端末装置110から受信した場合には、トランジスタ82をオフすることによって、リモスタ時動作負荷を非通電にする。したがって、リモスタ時動作負荷の一つであるエンジンECU8が非通電になることによって、エンジンは停止する(リモスタの作動停止)。また、リモスタの作動停止とともに、エアコンプレッサ21等の電気負荷の作動も停止する。
【0066】
一方、電源切替ECU30は、ACCリレー36とIGリレー37の電源切替素子を駆動することによって、ACC動作負荷とIG動作負荷の通電/非通電を制御するだけでなく、リモスタIGリレー84を駆動することによって、リモスタ時動作負荷の通電/非通電も制御する。車両に乗り込んだユーザによるパワースイッチ100の操作に伴い、ACC動作負荷、IG動作負荷及びリモスタ時動作負荷の通電/非通電の切り替えが電源切替ECU30によって行われる。
【0067】
電源切替ECU30は、内部状態がOFF状態のときにパワースイッチ100の押下を示す信号を検知した場合、OFF状態からACC状態に内部状態が遷移し、ACC動作負荷の通電を行うためACCリレー36をオンさせる。電源切替ECU30のマイコン31がトランジスタ32をオンすることによって、内部電源38との導通によりACCリレー36がオンする。ACCリレー36がオンすることによって電源50とACC電源61とが導通するため、ACC動作負荷の通電がなされる。
【0068】
また、電源切替ECU30は、内部状態がACC状態のときにパワースイッチ100の押下を示す信号を検知した場合、ACC状態からIG状態に内部状態が遷移し、IG動作負荷の通電を行うためIGリレー37をオンさせるとともに、リモスタ時動作負荷の通電を行うためリモスタIGリレー84をオンさせる。電源切替ECU30のマイコン31がトランジスタ33をオンすることによって、内部電源38との導通によりIGリレー37がオンするとともにダイオード72を介してリモスタIGリレー84がオンする。IGリレー37がオンすることによって電源50とIG電源62とが導通するため、IG動作負荷の通電がなされるとともに、リモスタIGリレー84がオンすることによって電源50とリモスタ時電源65とが導通するため、リモスタ時動作負荷の通電がなされる。したがって、リモスタ時動作負荷の一つであるエンジンECU8に通電がなされると、エンジンECU8はエンジンを始動させることが可能となる。
【0069】
また、電源切替ECU30は、車両停止状態で内部状態がIGON状態のときにパワースイッチ100の押下を示す信号を検知した場合、IGON状態からOFF状態に内部状態が遷移し、ACC動作負荷、IG動作負荷及びリモスタ時動作負荷の全てを非通電にするため、ACCリレー36、IGリレー37及びリモスタIGリレー84を全てオフさせる。電源切替ECU30のマイコン31がトランジスタ32及び33をオフすることによって、ACC動作負荷、IG動作負荷及びリモスタ時動作負荷の全てが非通電となる。したがって、リモスタ時動作負荷の一つであるエンジンECU8が非通電になることによって、エンジンを停止させることが可能となる。
【0070】
なお、電源切替ECU30によるトランジスタ32及び33のオフによって、リモスタ時動作負荷が非通電となるように、リモスタECU40は、エンジン始動を要求するパワースイッチ100からの制御信号に基づいて、トランジスタ82をオフしておく。リモスタIGリレー84を、リモスタECU80と電源切替ECU30の両方からオンさせる状態を防ぐためである。すなわち、制御干渉による誤作動を防ぐ。
【0071】
それでは、図4に示される上述の車両用電源制御装置の第2の実施形態の動作例について説明する。図5は、車両用電源制御装置の第2の実施形態の動作フローの一例である。リモスタECU80は、端末装置110を介してユーザによるリモスタのオン要求を駐車状態で受信した場合(ステップ50、ステップ52;Yes)、リモスタIGリレー84をオンさせる(ステップ54)。これにより、リモスタ時動作負荷であるエンジンECU8に通電がなされ、エンジンECU8がエンジンを始動させる(ステップ54)。また、リモスタの作動とともに、エアコンプレッサ21等の電気負荷の作動も可能となる。
【0072】
次に、リモスタECU80は、リモスタの停止条件(例えば、ユーザの停止要求、オフタイマ、ドア開、Pレンジ以外の操作など)が成立した場合(ステップ56)、リモスタIGリレー84をオフさせる(ステップ58)。これにより、リモスタ時動作負荷であるエンジンECU8が非通電になることによって、エンジンは停止する(リモスタの作動停止)。また、リモスタの作動停止とともに、エアコンプレッサ21等の電気負荷の作動も停止する。
【0073】
また、端末装置110を介してユーザによるリモスタのオン要求がないままユーザが車両に乗り込みエンジンを始動させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ステップ52;No,ステップ60;Yes)、あるいは、リモスタの作動が停止した後にユーザがエンジンを始動させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ステップ58,ステップ60;Yes)、その押下を検知した電源切替ECU30の内部状態はOFF状態からACC状態を経てIGON状態に遷移する。内部状態がACC状態に遷移した電源切替ECU30はACCリレー36をオンさせ、内部状態がIGON状態に遷移した電源切替ECU30はIGリレー37及びリモスタIGリレー84をオンさせる(ステップ64)。そして、リモスタ時動作負荷であるエンジンECU8に通電がなされ、エンジンECU8がエンジンを始動させる(ステップ66)。また、エアコンプレッサ21等の電気負荷の作動も可能となる。なお、ステップ60においてユーザがエンジンを始動させるためのパワースイッチ100の押下が無ければ、ACCリレー36、IGリレー37及びリモスタIGリレー84がオフのままの電源状態が継続される(ステップ62)。
【0074】
図6を参照しながら、車両用電源制御装置の第2の実施形態の動作例をより詳細説明する。図6は、リモスタECU80及び電源切替ECU30の制御出力とリモスタIGリレー84、ACCリレー36及びIGリレー37のオン/オフ状態との関係を示した図である。図6の上段は、リモスタECU80のマイコン81が出力するトランジスタ82の駆動信号の出力状態と電源切替ECU30のマイコン31が出力するトランジスタ32,33の駆動信号の出力状態とを示している。図6の下段は、リモスタIGリレー84,ACCリレー36及びIGリレー37のオン/オフ状態を示している。
【0075】
図6において、リモスタ作動開始要求があった場合、リモスタECU80のマイコン81は、リモスタIGリレー84をオンする駆動信号を出力することによって、リモスタIGリレー84をオンさせる。これにより、エンジンが始動する。その後、リモスタの停止条件が成立した場合、リモスタECU80のマイコン81は、リモスタIGリレー84をオフする駆動信号を出力することによって、リモスタIGリレー84をオフさせる。これにより、エンジンの作動が停止する。
【0076】
一方、ユーザがACC電源61の投入のためパワースイッチ100を押下した場合(ユーザによるACCのオン要求があった場合)、電源切替ECU30のマイコン31は、トランジスタ32をオンする駆動信号を出力することによって、ACCリレー36をオンさせる。
【0077】
そして、ユーザがエンジンを始動させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ユーザによるIGのオン要求があった場合)には、電源切替ECU30のマイコン31は、トランジスタ33をオンする駆動信号を出力することによって、IGリレー37をオンさせるとともに、ダイオード72を介してリモスタIGリレー84もオンさせる。このとき、電源切替ECU30のマイコン31は、エンジンの始動性向上のため、エンジンの始動が完了するまでトランジスタ32をオフする駆動信号を出力するようにしてもよい。トランジスタ32をオフする駆動信号を出力することによってACCリレー36はオフするので、TVシステム1等のACC動作負荷の消費電流を削減することができ、その分だけ電源50の電力供給能力が増え、エンジンを始動させるためのスタータの作動性が向上するからである。
【0078】
その後、ユーザがエンジンを停止させるためにパワースイッチ100を押下した場合(ユーザによるIGのオフ要求があった場合)、電源切替ECU30のマイコン31は、トランジスタ32をオフする駆動信号を出力することによって、ACCリレー36をオフさせ、トランジスタ33をオフする駆動信号を出力することによって、リモスタIGリレー84及びIGリレー37をオフさせる。
【0079】
したがって、上述の車両用電源制御装置の第2の実施形態において、リモスタによる作動の場合に使用したい電気負荷をリモスタ時動作負荷に設定すれば、ACCリレー36やIGリレー37がオフの状態でリモスタIGリレー84をオンさせることによってリモスタ時動作負荷に通電がなされ、ACC動作負荷やIG動作負荷には通電がなされないので、リモスタIGリレー84が設定されていない場合に比べリモスタによる作動の場合における無駄な消費電流を抑制することができる。すなわち、リモスタ時電源65を設定することによって、リモスタ動作時に、エンジン始動、空調、視界確保などを行う必要なシステムのみ動作させることができ、バッテリからの無駄な電流消費を抑えることができる。その結果、ユーザが乗車したときのエンジン停止後のエンジンの再始動の始動性が向上する。
【0080】
また、リモスタ時電源65を設定することによって、リモスタに必要とするECUがIG電源62に接続されていたECUであっても、そのECUを何ら変更することなく、リモスタ時電源65に接続することができるようになる。そのECUから見れば、自身への電源の投入形態はIG電源62に接続されている場合であってもリモスタ時電源65に接続されている場合であっても同一であるからである。
【0081】
また、ユーザのパワースイッチ100の操作に基づいて電源切替ECU30によってIG電源62の通電/非通電が制御される時には、リモスタ時電源65の通電/非通電も同時に制御されるので、リモスタ時電源65系のリモスタ時動作負荷にIG電源62を接続する必要がなくなり、ワイヤハーネスの増加を抑えることができる。
【0082】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0083】
例えば、上述の実施例では、電源マネジメントECU40と電源切替ECU30にECUを分割していたが(リモスタECU80と電源切替ECU30にECUを分割していたが)、図7に示されるように、一つのECUあるいは一つのマイコンによって動作させることも可能である。これにより、マイコン31がそれぞれのトランジスタを独立にオン/オフさせることができるので、上述の実施例におけるダイオードの削除が可能である。この場合の動作フローは上記の動作フローと同様である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る車両用電源制御装置の第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】車両用電源制御装置の第1の実施形態を駐車時空調システムに適用した場合の動作フローの一例である。
【図3】電源マネジメントECU40及び電源切替ECU30の制御出力と駐車時IGリレー47及びIGリレー37のオン/オフ状態との関係を示した図である。
【図4】本発明に係る車両用電源制御装置の第2の実施形態を示す構成図である。
【図5】車両用電源制御装置の第2の実施形態の動作フローの一例である。
【図6】リモスタECU80及び電源切替ECU30の制御出力とリモスタIGリレー84、ACCリレー36及びIGリレー37のオン/オフ状態との関係を示した図である。
【図7】リレー駆動を一つのECUあるいは一つのマイコンで実施した場合の図である。
【符号の説明】
【0085】
8 エンジンECU
1〜5 ACC動作負荷
6〜10 IG動作負荷
11〜13 駐車時ACC動作負荷
16〜20 駐車時IG動作負荷
30 電源切替ECU
40 電源マネジメントECU
36 ACCリレー
37 IGリレー
46 駐車時ACCリレー
47 駐車時IGリレー
50 電源
61 ACC電源
62 IG電源
63 駐車時ACC電源
64 駐車時IG電源
65 リモスタ時電源
84 リモスタIGリレー
100 パワースイッチ
110 端末装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される電気負荷の通電/非通電を制御する車両用電源制御装置であって、
車両に搭載される電気負荷の一部である第1の電気負荷と、
前記第1の電気負荷よりも駐車状態では優先的に通電が必要な第2の電気負荷と、
前記第1の電気負荷の通電/非通電だけでなく前記第2の電気負荷の通電/非通電も切り替える第1の切替手段と、
前記第2の電気負荷のみの通電/非通電を切り替える第2の切替手段とを備えることを特徴とする、車両用電源制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用電源制御装置であって、
前記第2の切替手段は、前記第1の切替手段が前記第2の電気負荷を通電側に切り替えるオン指令を出力する場合、前記第2の電気負荷を非通電側に切り替えるオフ指令を出力する、車両用電源制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両用電源制御装置であって、
前記第1の切替手段が出力する前記第2の電気負荷を通電側に切り替えるオン指令と前記第2の切替手段が出力する前記第2の電気負荷を非通電側に切り替えるオフ指令とが重複する場合、該オン指令が優先する、車両用電源制御装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の車両用電源制御装置であって、
前記第1の電気負荷には、エンジンを始動させるために必要な電気負荷が含まれる、車両用電源制御装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の車両用電源制御装置であって、
前記第2の電気負荷には、エンジンを始動させるために必要な電気負荷が含まれる、車両用電源制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の車両用電源制御装置であって、
前記第2の切替手段による切り替えは、車両と無線通信可能な端末装置からの制御信号に基づいて行われる、車両用電源制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の車両用電源制御装置であって、
ユーザからの操作入力を受け付ける操作入力手段を車室内に備え、
前記第1の切替手段による切り替えは、前記操作入力手段からの制御信号に基づいて行われる、車両用電源制御装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の車両用電源制御装置であって、
前記第2の電気負荷には、車室内の空調を制御するために必要な電気負荷が含まれる、車両用電源制御装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の車両用電源制御装置であって、
前記第2の切替手段は、前記第1の電気負荷への通電を禁止する禁止手段を備える、車両用電源制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用電源制御装置であって、
前記禁止手段はダイオードである、車両用電源制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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