説明

車両用電源装置

【課題】バッテリ(主電源、低圧バッテリ)を補助する補助電源に必要な容量を低減することができる車両用電源装置の提供。
【解決手段】車載発電機、バッテリ(図示せず)又は蓄電器C1〜C3,C4〜C6により車載負荷群8〜10に給電する車両用電源装置。蓄電器C1〜C6及びバッテリ間に接続され、蓄電器C1〜C6を充電する為の充電回路18、及び蓄電器C1〜C6から放電する為の放電回路17と、放電回路17及び充電回路18をそれぞれオン又はオフに制御する制御手段12と、蓄電器C1〜C6及びバッテリの出力電圧値を各検出する第1及び第2検出手段14,13と、その各検出値を比較する比較手段12とを備え、その比較結果に応じて、蓄電器C1〜C3,C4〜C6を直列又は並列に接続し、充電回路18及び放電回路17をそれぞれオン又はオフに制御する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載発電機又はバッテリにより充電される複数の蓄電器を備え、車載発電機、バッテリ、又は蓄電器により車載負荷群に給電するエンジン駆動車、ハイブリッド車及び電気自動車の車両用電源装置、特に、アイドリング時にエンジンを停止させるアイドルストップ車に好適に使用される車両用電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、燃費を向上させる為に、また、環境への配慮から、停車時にアイドリングを停止するアイドルストップを行なう車両が増加しつつある。このような車両では、従来の車両に比べて頻繁にエンジンを始動させるので、エンジンを始動させるスタータの電源が重要である。エンジンを始動させる際、スタータが大電流を消費する為、車両用電源装置の電圧が一時的に低下する。電圧が一時的に低下すると、ナビゲーション装置及びECU(Electronic Control Unit)等の電気負荷の電源電圧も低下し、動作が不安定になる等の可能性があった。また、ハイブリッド車及び電気自動車でも、高圧バッテリから低圧バッテリへ充電する為のDCDCを始動する際に、同様に、低圧バッテリの電圧が一時的に低下することがある。
その為、バッテリ(主電源、低圧バッテリ)に補助電源としてバックアップバッテリ又は電気二重層キャパシタを並列に接続して、補助電源からの放電によりスタータ駆動時の電圧低下を抑制することが考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、メインバッテリ(主電源)とは別にバックアップバッテリ(補助電源)を搭載し、主電源の給電系統の故障時(主電源の低電圧時)に、ダイオードの電圧降下を利用して、補助電源からの給電に切替える車両の給電回路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−282844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、車両に搭載されるナビゲーション装置及びECU等の電気負荷は、近年、増加する一方であり、それに応じて、上述したような補助電源に必要とされる容量も増加し、設置に必要なスペースも増加するという問題がある。
本発明は、上述したような事情に鑑みてなされたものであり、バッテリ(主電源、低圧バッテリ)を補助する補助電源に必要な容量を低減することができる車両用電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る車両用電源装置は、車載発電機又はバッテリにより充電される複数の蓄電器と、該蓄電器を直列又は並列に選択的に接続する接続手段とを備え、前記車載発電機、バッテリ又は蓄電器により車載負荷群に給電するように構成してある車両用電源装置において、前記蓄電器及びバッテリ間に接続され、該蓄電器を充電する為の充電回路、及び該蓄電器から放電する為の放電回路と、前記放電回路及び充電回路をそれぞれオン又はオフに制御する制御手段と、前記蓄電器及びバッテリの出力電圧値を各検出する第1及び第2検出手段と、該第1及び第2検出手段の各検出値を比較する比較手段とを備え、該比較手段の比較結果に応じて、前記接続手段が蓄電器を直列又は並列に接続し、前記制御手段が充電回路及び放電回路をそれぞれオン又はオフに制御するように構成してあることを特徴とする。
【0007】
この車両用電源装置では、複数の蓄電器が、車載発電機又はバッテリにより充電され、接続手段が、蓄電器を直列又は並列に選択的に接続し、車載発電機、バッテリ又は蓄電器により車載負荷群に給電する。蓄電器及びバッテリ間に接続された充電回路が、蓄電器を充電し、蓄電器及びバッテリ間に接続された放電回路が、蓄電器から放電する。制御手段が、放電回路及び充電回路をそれぞれオン又はオフに制御し、第1及び第2検出手段が、蓄電器及びバッテリの出力電圧値を各検出する。比較手段が、第1及び第2検出手段の各検出値を比較し、比較手段の比較結果に応じて、接続手段が蓄電器を直列又は並列に接続し、制御手段が充電回路及び放電回路をそれぞれオン又はオフに制御する。
【0008】
第2発明に係る車両用電源装置は、蓄電器を2つ備え、前記比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が高いときは、前記接続手段が前記蓄電器を直列に接続し、前記制御手段が放電回路をオンにし、該制御手段が放電回路をオンにした後、前記比較結果が、第1検出手段の検出値の方が低いときは、前記接続手段が蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が充電回路をオンにするように構成してあることを特徴とする。
【0009】
この車両用電源装置では、蓄電器を2つ備え、比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が高いときは、接続手段が2つの蓄電器を直列に接続し、制御手段が放電回路をオンにする。制御手段が放電回路をオンにした後、比較結果が、第1検出手段の検出値の方が低いときは、接続手段が蓄電器を並列に接続し、制御手段が充電回路をオンにする。
【0010】
第3発明に係る車両用電源装置は、前記接続手段が蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が充電回路をオンにしている場合に、前記比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が第2検出手段の検出値の1/2より高いときは、前記制御手段が充電回路をオフにし、前記接続手段が蓄電器を直列に接続するように構成してあることを特徴とする。
【0011】
この車両用電源装置では、接続手段が蓄電器を並列に接続し、制御手段が充電回路をオンにしている場合に、比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が第2検出手段の検出値の1/2より高いときは、制御手段が充電回路をオフにし、接続手段が蓄電器を直列に接続する。
【0012】
第4発明に係る車両用電源装置は、蓄電器を2つ備え、前記比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が高いときは、前記接続手段が前記蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が放電回路をオンにし、該制御手段が放電回路をオンにした後、前記第1検出手段の検出値が第1電圧値より低くなったときは、前記接続手段が蓄電器を直列に接続し、該接続手段が蓄電器を直列に接続した後、前記比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が低いときは、前記接続手段が前記蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が充電回路をオンにするように構成してあることを特徴とする。
【0013】
この車両用電源装置では、蓄電器を2つ備え、比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が高いときは、接続手段が2つの蓄電器を並列に接続し、制御手段が放電回路をオンにする。制御手段が放電回路をオンにした後、第1検出手段の検出値が第1電圧値より低くなったときは、接続手段が蓄電器を直列に接続する。接続手段が蓄電器を直列に接続した後、比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が低いときは、接続手段が2つの蓄電器を並列に接続し、制御手段が充電回路をオンにする。
【0014】
第5発明に係る車両用電源装置は、前記接続手段が蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が充電回路をオンにしている場合に、前記第1検出手段の検出値が前記第1電圧値より高い第2電圧値より高くなったときは、前記制御手段が充電回路をオフにし、該制御手段が充電回路をオフにした後、第1検出手段の検出値が前記第1電圧値より高く第2電圧値より低い第3電圧値より低くなったときは、前記制御手段が充電回路をオンにするように構成してあることを特徴とする。
【0015】
この車両用電源装置では、接続手段が蓄電器を並列に接続し、制御手段が充電回路をオンにしている場合に、第1検出手段の検出値が第1電圧値より高い第2電圧値より高くなったときは、制御手段が充電回路をオフにする。制御手段が充電回路をオフにした後、第1検出手段の検出値が第1電圧値より高く第2電圧値より低い第3電圧値より低くなったときは、制御手段が充電回路をオンにする。
【0016】
第6発明に係る車両用電源装置は、前記充電回路は、第1スイッチ及び第1抵抗の直列回路と、第2スイッチ及び第2抵抗(<第1抵抗)の直列回路とが並列に接続されて構成されており、前記制御手段が充電回路をオンにしている場合に、車両のブレーキが作動しているときは、前記制御手段が第2スイッチをオンにするように構成してあることを特徴とする。
【0017】
この車両用電源装置では、充電回路は、第1スイッチ及び第1抵抗の直列回路と、第2スイッチ及び第2抵抗(<第1抵抗)の直列回路とが並列に接続されて構成されている。制御手段が充電回路をオンにしている場合に、車両のブレーキが作動しているときは、制御手段が第2スイッチをオンにする。
【0018】
第7発明に係る車両用電源装置は、前記蓄電器は、複数の蓄電セルを直列に接続して構成してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る車両用電源装置によれば、バッテリ(主電源、低圧バッテリ)を補助する補助電源に必要な容量を低減することができる車両用電源装置を実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る車両用電源装置の実施の形態の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す補助電源モジュールの構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る車両用電源装置の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図4】キャパシタ容量とキャパシタの両端電圧との関係を示す特性図である。
【図5】本発明に係る車両用電源装置の実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明に係る車両用電源装置の実施の形態1の概略構成を示すブロック図である。
この車両用電源装置は、エンジン3に連動してオルタネータ(車載発電機、交流発電機)1が発電する。発電された電力は、オルタネータ1内で直流に変換され、電気接続箱16を経由して、バッテリ(主電源、鉛蓄電池)Bに与えられる。また、オルタネータ1が発電した電力は、電気接続箱16内で、イグニッションキー6に連動するイグニッションスイッチ11及び補助電源モジュール7を経由して、車両に搭載された電気負荷(車載負荷)8,9,10・・・に与えられる。
【0022】
バッテリBのプラス電極が、スタータスイッチ15を経由してエンジン3のスタータ2に接続されている。スタータスイッチ15は、アイドルストップの制御を行う図示しないエンジン制御部からの制御信号によりオン/オフされる。
イグニッションキー6のオン/オフ状態を通知する通知信号、ブレーキ4の作動(オン/オフ)状態を通知する通知信号、及びエンジン3の回転センサ5の検出信号が補助電源モジュール7に与えられている。
【0023】
図2は、図1に示す補助電源モジュール7の構成例を示すブロック図である。
この補助電源モジュール7は、制御回路12を備えている。制御回路12は、上述したイグニッションキー6からの通知信号、ブレーキ4からの通知信号及び回転センサ5の検出信号が与えられている。
補助電源モジュール7は、オルタネータ1及びバッテリBからの電力をイグニッションスイッチ11経由で与えられ、与えられた電力は、電気負荷8,9,10・・・に供給される。
【0024】
また、与えられた電力は、補助電源モジュール7内で、スイッチSW11及び抵抗R1の直列回路と、スイッチSW12及び抵抗R2の直列回路との並列回路で構成された充電回路18の一方の端子に与えられる。尚、抵抗R2は、抵抗R1より小さくしてある。
充電回路18の他方の端子は、スイッチSW21及び電気二重層キャパシタ(蓄電セル)C4,C5,C6の直列回路のスイッチSW21側の端子と、電気二重層キャパシタC1,C2,C3及びスイッチSW22の直列回路のキャパシタC1側の端子とに接続されている。スイッチSW21及びキャパシタC4,C5,C6の直列回路のキャパシタC6側の端子と、キャパシタC1,C2,C3及びスイッチSW22の直列回路のスイッチSW22側の端子とは接地されている。
【0025】
スイッチSW22は、スイッチSW21及びキャパシタC4間の端子と接地側端子とに分岐する分岐スイッチである。
スイッチSW22がスイッチSW21及びキャパシタC4間の端子側に接続し、スイッチSW21がオフになっている場合は、キャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6は直列に接続される。一方、スイッチSW22が接地端子側に接続し、スイッチSW21がオンになっている場合は、キャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6は並列に接続される。
スイッチSW21及びキャパシタC4,C5,C6の直列回路と、キャパシタC1,C2,C3及びスイッチSW22の直列回路とは、補助電源19を構成している。
【0026】
スイッチSW21及びキャパシタC4,C5,C6の直列回路のスイッチSW21側の端子と、キャパシタC1,C2,C3及びスイッチSW22の直列回路のキャパシタC1側の端子とは、また、放電回路17を構成するスイッチSW31の一方の端子に接続されている。スイッチSW31の他方の端子は、オルタネータ1、バッテリB及び電気負荷8,9,10・・・に接続されている。
【0027】
制御回路12が内蔵する電圧検出器(第2検出手段)13が、オルタネータ1及びバッテリBの出力電圧値Vinを検出する。また、制御回路12が内蔵する電圧検出器(第1検出手段)14が、補助電源19の出力電圧値Vcを検出する。
制御回路12は、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22,SW31をそれぞれ制御する。
【0028】
以下に、このような構成の車両用電源装置の動作を、それを示す図3のフローチャートを参照しながら説明する。
制御回路12は、先ず、スイッチSW11,SW12,SW31をオフにし、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を直列に接続する(S1)。
【0029】
制御回路12は、次に、バッテリBの出力電圧値Vin、及び補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S3)、Vc>Vinであるか否かを判定する(S5)。
制御回路12は、Vc>Vinであれば(S5)、スイッチSW31をオンにして(S7)、直列接続された補助電源19から放電させ、バッテリBの出力電圧値Vin、及び補助電源19の出力電圧値Vcを読込む(S3)。
制御回路12は、Vc>Vinでなければ(S5)、スイッチSW31をオフにして(S9)、回転センサ5の検出信号により、エンジン3が回転し、車両が走行中であるか否かを判定する(S11)。
【0030】
制御回路12は、車両が走行中でなければ(S11)、スイッチSW11,SW12,SW31をオフにし、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を直列に接続する(S1)。
制御回路12は、車両が走行中であれば(S11)、ブレーキ4からの通知信号により、ブレーキ4が作動中であるか否かを判定する(S13)。
【0031】
制御回路12は、ブレーキ4が作動中でなければ(S13)、通常の充電動作として、スイッチSW11をオンにし、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を並列に接続する(S15)。
制御回路12は、次に、バッテリBの出力電圧値Vin、及び補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S17)、Vc>Vin/2であるか否かを判定する(S19)。
【0032】
制御回路12は、Vc>Vin/2であれば(S19)、充電動作を終了して、スイッチSW11,SW12,SW31をオフにし、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を直列に接続する(S1)。
制御回路12は、Vc>Vin/2でなければ(S19)、車両が走行中であるか否かを判定する(S11)。
制御回路12は、ブレーキ4が作動中であれば(S13)、回生電力の充電動作として、スイッチSW12をオンにし、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を並列に接続する(S21)。制御回路12は、次いで、バッテリBの出力電圧値Vin、及び補助電源19の出力電圧値Vcを読込む(S17)。
【0033】
本実施の形態1では、例えば、定格3Vのキャパシタ(セル)を用いる場合、寿命の観点から余裕を見て、1セル当たり2.7Vで利用する。車両の電源電圧12V前後で利用する為には、6直列(耐圧16V)で利用し、保護電圧Vp≦16Vとなるようにキャパシタを充電制御する。
セル3直列×2並列で充電し、Vc(3直列)>Vin/2になると、6直列にすることで、Vc(6直列)=Vinとなる。これにより、6直列でVc=Vinとなる迄充電することに比較して、充電時間を短くすることができる。
【0034】
尚、キャパシタ容量Cとキャパシタの両端電圧V(t)との関係は、図4の特性図に示される。V0は充電後の初期電圧、tは時間、Iは電流、Cはキャパシタ容量であり、電圧V(t)は、t=0から放電したときのt時間経過後の電圧であり、V(t)=V0―(I/C)tの関係がある。
【0035】
例えば、充電電圧V(t)は、
V(t)=Vin(1−exp(−t/τ)) (1)
である。但し、C:静電容量、R:充電制限抵抗とすると、時定数τ=CRである。
(1)式から、V(t)=Vinとなる充電時間t1は、
t1=5.3×τ1 (2)
であり、V(t)=Vin/2となる充電時間t2は、
t2=0.7×τ2 (3)
である。
【0036】
ここで、τ1=CR、τ2=(4C)Rから、τ2=4τ1である。
(2)(3)式からτ1,τ2を消去して、
t1/t2=5.3/(0.7×4)=1.9
となり、充電時間を約1/2にすることができる。
【0037】
また、使用頻度が低い用途の場合、充電電圧を通常より高くすることも可能である。例えば、緊急時に使用するような場合、劣化による製品寿命の短縮を抑制することよりも、動作することが重要である場合がある。そのような場合、例えば、通常はセルの充電電圧を2.7Vとしているところを、3.0V迄充電可能とする。
そこで、セル3直列×2並列で9V迄充電した後、6直列にして放電させる。又は、セル3直列×2並列で9V迄充電した後、5直列にして15Vで放電を開始させ、その放電電圧が所定電圧以下になったら、6直列にして放電させるなど、直列数を段階的に変更してもよい。これにより、セルを6直列で充電する場合に比べて、電源電圧より高い電圧に充電することが可能となる。
【0038】
また、本実施の形態1では、充電状況に応じて、低抵抗の充電経路を接続し、短時間で充電できるようにしている。
充電電流は、電線径及び他の負荷の関係で有限である。
例えば、充電電流を5Aに制限し、通常の充電では、スイッチSW11及び抵抗R1=2.4Ω(12V時5A)を経由するように構成しておく。
最近は、ブレーキ作動時の回生エネルギを回収して、例えば電源電圧を14Vにして、蓄電池に蓄えることで燃費を低減する機能が搭載された車両がある。
【0039】
ブレーキ作動時のエネルギ回収では、短時間に充電することが必要である。例えば、キャパシタの容量C=10Fである場合、時定数τ=2.4×10(秒)となり、数秒で充電できる電力は僅かである。
そこで、キャパシタがVc=12Vに充電済みとすると、ブレーキ作動時の充電では、スイッチSW12をオンにすることにより、抵抗R2=(14V−12V)/5A=0.4(Ω)であり、時定数τ=0.4×10(秒)となり、数秒で充電できることになる。
【0040】
本実施の形態1では、充電電圧をバッテリ電圧より高くすることができるので、キャパシタ(補助電源)の必要容量を低減することができる。例えば、充電電圧12V、負荷電流12A、キャパシタ容量10Fとすると、0.5秒後の電圧は11.5Vである。充電電圧を14Vにして、同じ負荷電流で0.5秒後の電圧を、10Fのときと同じ(11.5V)にするキャパシタ容量は2Fであり、キャパシタ容量を極めて小さくできる。
【0041】
(実施の形態2)
図5は、本発明に係る車両用電源装置の実施の形態2の動作を示すフローチャートである。以下に、この車両用電源装置の動作を、図5のフローチャートを参照しながら説明する。尚、本発明に係る車両用電源装置の実施の形態2の構成は、上述した実施の形態1の構成(図1,2)と同様であるので、説明を省略する。
制御回路12は、先ず、スイッチSW11,SW12,SW31をオフにし、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を並列に接続する(S31)。
【0042】
制御回路12は、次に、バッテリBの出力電圧値Vin、及び補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S33)、Vc>Vinであるか否かを判定する(S35)。
制御回路12は、Vc>Vinであれば(S35)、スイッチSW31をオンにして(S37)、並列接続された補助電源19から放電させる。制御回路12は、Vc>Vinでなければ(S35)、スイッチSW31をオフにする(S45)。
【0043】
制御回路12は、スイッチSW31をオンにした(S37)後、補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S39)、Vc<V1(第1電圧値)であるか否かを判定する(S41)。第1電圧値V1は、車載負荷のECUに使用される制御用電源電圧値より高く設定されている。
制御回路12は、Vc<V1であれば(S41)、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を直列に接続する(S43)。
【0044】
制御回路12は、次に、バッテリBの出力電圧値Vin、及び補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S33)、Vc>Vinであるか否かを判定する(S35)。
制御回路12は、Vc<V1でなければ(S41)、バッテリBの出力電圧値Vin、及び補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S33)、Vc>Vinであるか否かを判定する(S35)。
【0045】
制御回路12は、スイッチSW31をオフにした(S45)後、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を並列に接続する(S47)。
制御回路12は、次に、補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S49)、Vc<V3(第3電圧値)であるか否かを判定する(S51)。第3電圧値V3は、第1電圧値V1より高く設定されている。
制御回路12は、Vc<V3でなければ(S51)、バッテリBの出力電圧値Vin、及び補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S33)、Vc>Vinであるか否かを判定する(S35)。
【0046】
制御回路12は、Vc<V3であれば(S51)、回転センサ5の検出信号により、エンジン3が回転し、車両が走行中であるか否かを判定する(S53)。
制御回路12は、車両が走行中でなければ(S53)、スイッチSW11,SW12,SW31をオフにし、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を並列に接続する(S31)。
制御回路12は、車両が走行中であれば(S53)、ブレーキ4からの通知信号により、ブレーキ4が作動中であるか否かを判定する(S55)。
【0047】
制御回路12は、ブレーキ4が作動中でなければ(S55)、通常の充電動作として、スイッチSW11をオンにする(S57)。
制御回路12は、次に、補助電源19の出力電圧値Vcを読込み(S59)、Vc>V2(第2電圧値)であるか否かを判定する(S61)。
【0048】
制御回路12は、Vc>V2であれば(S61)、充電動作を終了して、スイッチSW11,SW12,SW31をオフにし、スイッチSW21,SW22の切替えにより、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を並列に接続する(S31)。
制御回路12は、Vc>V2でなければ(S61)、車両が走行中であるか否かを判定する(S53)。
制御回路12は、ブレーキ4が作動中であれば(S55)、回生電力の充電動作として、スイッチSW12をオンにする(S63)。制御回路12は、次いで、補助電源19の出力電圧値Vcを読込む(S59)。
【0049】
定格3Vのキャパシタ(セル)を用いて、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を並列に接続した場合、補助電源19の充電後の出力電圧値Vcは8V前後である。アイドルストップによりエンジン3が再始動する際に、クランキングによりVc>Vinになると、補助電源19が放電を開始する。
【0050】
放電を開始して出力電圧値Vcが第1電圧値V1(例えば5.5V)より低くなると、補助電源19のキャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を直列に接続して、出力電圧値Vcを2×V1程度に引き上げ、エンジン3が再始動する迄(スタータスイッチがオフ)放電させる。
キャパシタC1,C2,C3及びキャパシタC4,C5,C6を並列に接続した補助電源19を充電する場合、出力電圧値Vcが第3電圧値V3(例えば7.5V)より低くなると、充電を開始し、出力電圧値Vcが第2電圧値V2(例えば8.0V)より高くなると、充電を停止する。
【0051】
尚、上述した実施の形態1,2では、エンジン駆動車の場合を記載しているが、ハイブリッド車及び電気自動車でも同様のことが可能である。エンジン駆動車での「エンジン及び車載発電機」の組合せが、ハイブリッド車及び電気自動車での「高圧バッテリ及びDCDC」の組合せに相当する。エンジン駆動車のスタータ始動時と同様に,ハイブリッド車及び電気自動車では,高圧バッテリから低圧バッテリへ充電する為のDCDCの始動時に、低圧バッテリ(12Vバッテリ)の電圧低下が発生する。
電気自動車の場合、駆動モータの回転数で走行中であるか否かが判定でき、駆動モータの回生電力を充電に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 オルタネータ(車載発電機)
2 スタータ
3 エンジン
4 ブレーキ
5 回転センサ
6 イグニッションキー
7 補助電源モジュール
8,9,10 電気負荷(車載負荷)
11 イグニッションスイッチ
12 制御回路
13 電圧検出器(第2検出手段)
14 電圧検出器(第1検出手段)
15 スタータスイッチ
16 電気接続箱
17 放電回路
18 充電回路
19 補助電源
B バッテリ
C1〜C6 (電気二重層)キャパシタ(蓄電セル)
R1,R2 抵抗
SW11,SW12,SW21,SW22,SW31 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載発電機又はバッテリにより充電される複数の蓄電器と、該蓄電器を直列又は並列に選択的に接続する接続手段とを備え、前記車載発電機、バッテリ又は蓄電器により車載負荷群に給電するように構成してある車両用電源装置において、
前記蓄電器及びバッテリ間に接続され、該蓄電器を充電する為の充電回路、及び該蓄電器から放電する為の放電回路と、前記放電回路及び充電回路をそれぞれオン又はオフに制御する制御手段と、前記蓄電器及びバッテリの出力電圧値を各検出する第1及び第2検出手段と、該第1及び第2検出手段の各検出値を比較する比較手段とを備え、該比較手段の比較結果に応じて、前記接続手段が蓄電器を直列又は並列に接続し、前記制御手段が充電回路及び放電回路をそれぞれオン又はオフに制御するように構成してあることを特徴とする車両用電源装置。
【請求項2】
蓄電器を2つ備え、前記比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が高いときは、前記接続手段が前記蓄電器を直列に接続し、前記制御手段が放電回路をオンにし、該制御手段が放電回路をオンにした後、前記比較結果が、第1検出手段の検出値の方が低いときは、前記接続手段が蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が充電回路をオンにするように構成してある請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項3】
前記接続手段が蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が充電回路をオンにしている場合に、前記比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が第2検出手段の検出値の1/2より高いときは、前記制御手段が充電回路をオフにし、前記接続手段が蓄電器を直列に接続するように構成してある請求項2記載の車両用電源装置。
【請求項4】
蓄電器を2つ備え、前記比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が高いときは、前記接続手段が前記蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が放電回路をオンにし、該制御手段が放電回路をオンにした後、前記第1検出手段の検出値が第1電圧値より低くなったときは、前記接続手段が蓄電器を直列に接続し、該接続手段が蓄電器を直列に接続した後、前記比較手段の比較結果が、第1検出手段の検出値の方が低いときは、前記接続手段が前記蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が充電回路をオンにするように構成してある請求項1記載の車両用電源装置。
【請求項5】
前記接続手段が蓄電器を並列に接続し、前記制御手段が充電回路をオンにしている場合に、前記第1検出手段の検出値が前記第1電圧値より高い第2電圧値より高くなったときは、前記制御手段が充電回路をオフにし、該制御手段が充電回路をオフにした後、第1検出手段の検出値が前記第1電圧値より高く第2電圧値より低い第3電圧値より低くなったときは、前記制御手段が充電回路をオンにするように構成してある請求項4記載の車両用電源装置。
【請求項6】
前記充電回路は、第1スイッチ及び第1抵抗の直列回路と、第2スイッチ及び第2抵抗(<第1抵抗)の直列回路とが並列に接続されて構成されており、前記制御手段が充電回路をオンにしている場合に、車両のブレーキが作動しているときは、前記制御手段が第2スイッチをオンにするように構成してある請求項1乃至5の何れか1項に記載の車両用電源装置。
【請求項7】
前記蓄電器は、複数の蓄電セルを直列に接続して構成してある請求項1乃至6の何れか1項に記載の車両用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−35464(P2013−35464A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174303(P2011−174303)
【出願日】平成23年8月9日(2011.8.9)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】