説明

車両用駆動装置

【課題】ロータ支持軸受に外部から油を供給すると共に、油を用いてステータのコイルを冷却することができる車両用駆動装置の実現が望まれる。
【解決手段】ロータ支持部材は、ロータ支持軸受の排出側面よりも軸第二方向側にあって排出側面に対して対向する対向面部と、当該対向面部から径方向外側へ延びる対向延在面部と、を有し、対向延在面部の径方向外側端部は、コイルエンド部よりも径方向内側であって径方向視で前記コイルエンド部と重複する位置に径方向の空隙を介して配置され、排出側面は、対向延在面部の径方向外側端部よりも軸第二方向側に配置され、対向延在面部は、その径方向断面が径方向外側へ向う方向及び軸第一方向側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されている車両用駆動装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータとステータとを有する回転電機を車両の駆動力源として備える車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような車両用駆動制御装置に関して、例えば下記の特許文献1には、以下のような技術が開示されている。特許文献1の車両用駆動制御装置は、ケース(モータハウジング4)が回転電機(モータ・ジェネレータ2)の軸第一方向側に径方向に延びる支持壁(隔壁部材50)と、ロータ(40)を回転可能に支持するロータ支持部材(ロータ支持板41及びフロントカバー24)と、を備えている。そして、支持壁とロータ支持部材との間に、ロータ支持部材を支持壁に対して回転可能に支持するロータ支持軸受(ベアリング55)が配置されている。また、特許文献1の車両用駆動制御装置は、ロータ支持部材と入力軸(センター部材31、連結部材30)との間に、入力軸をロータ支持部材に対して回転可能に支持する入力軸支持軸受(ベアリング70)が配置されている。
【0003】
また、特許文献1の技術では、ロータ支持部材は、クラッチを内部に収容するカバー体としても機能するように構成されており、カバー体の内部に、油が供給されるように構成されている。そして、カバー体内部の油は、入力軸支持軸受にも供給されるように構成されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、ロータ支持軸受に対して外部から油を供給しない構成となっており、ロータ支持軸受に利用できる軸受の種類が、潤滑油を内封しているものなどに限られる。また、特許文献1には、油を用いてステータのコイルを冷却する技術は開示されておらず、特許文献1の技術は、例えば、カバー体内部などの油を有効利用して、ステータのコイルを冷却することには対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2005/105507号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、ロータ支持軸受に外部から油を供給すると共に、油を用いてステータのコイルを冷却することができる車両用駆動装置の実現が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る、ロータとステータとを有する回転電機を車両の駆動力源として備える車両用駆動装置の特徴構成は、前記回転電機を収容すると共に、当該回転電機に対して軸方向一方側である軸第一方向側で少なくとも径方向に延びる支持壁を有するケースと、前記ステータよりも径方向内側で前記ロータを支持するロータ支持部材と、前記ロータ支持部材を前記支持壁に対して回転可能に支持するロータ支持軸受と、前記ロータ支持軸受に油を供給する供給部と、を備え、軸方向における前記軸第一方向側とは反対側を軸第二方向側として、前記ロータ支持軸受は、前記供給部から供給された油を排出する排出部を、前記ロータ支持軸受における前記軸第二方向側の面である排出側面に備え、前記ロータ支持部材は、前記排出側面よりも前記軸第二方向側にあって前記排出側面に対して対向する対向面部と、当該対向面部から径方向外側へ延びる対向延在面部と、を有し、前記ステータは、ステータコアと、当該ステータコアから前記軸第一方向側に突出したコイルエンド部とを備え、前記対向延在面部の径方向外側端部は、前記コイルエンド部よりも径方向内側であって径方向視で前記コイルエンド部と重複する位置に配置されていると共に、前記コイルエンド部との間に径方向の空隙を介して配置され、前記排出側面は、前記対向延在面部の径方向外側端部よりも前記軸第二方向側に配置され、前記対向延在面部は、当該対向延在面部の径方向内側端部から径方向外側端部までの径方向断面が径方向外側へ向う方向及び前記軸第一方向側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されている点にある。
【0008】
上記の特徴構成によれば、ロータ支持軸受の排出部から排出された油は、排出側面に対して対向して配置されているロータ支持部材の対向面部に供給される。ロータ支持部材の対向面部に供給された油は、ロータ支持部材の回転による遠心力により、対向面部から径方向外側へ延びる対向延在面部に流れる。
上記の特徴構成によれば、対向延在面部は、その径方向内側端部から径方向外側端部まで全体として径方向内側及び軸第一方向側の一方又は双方を向くように形成されている。よって、油に作用する遠心力は、対向延在面部上で、対向延在面部へ向かう力と、対向延在面部に沿って径方向外側へ向かう方向の力と、の一方又は双方となる。よって、対向延在面部上の油は、対向延在面部から離れることなく、対向延在面部に沿ってその径方向外側端部まで流れる。
【0009】
対向延在面部の径方向外側端部まで流れた油は、径方向外側へ向う遠心力により、当該径方向外側端部から離れて、径方向外側に飛ばされる。上記の特徴構成によれば、対向延在面部の径方向外側端部から径方向外側に向う方向には、当該径方向外側端部との間に空隙を介してコイルエンド部が配置されているので、当該径方向外側端部から径方向外側に飛ばされた油は、コイルエンド部に供給される。この際、ロータ支持部材は回転しているため、油はコイルエンド部の全周に亘って供給される。よって、ロータ支持軸受の排出部から排出された油により、コイルエンド部を全周に亘って冷却することができる。
【0010】
ここで、前記支持壁は、前記対向延在面部よりも前記軸第一方向側にあって前記対向延在面部に対して対向して径方向に延びる支持壁面部を備え、前記支持壁面部は、前記排出部よりも下方に、前記軸第二方向側へ突出すると共に当該支持壁面部に沿って鉛直方向と交差する方向に延びる突条部を備え、前記突条部における前記軸第二方向側の端部の最下部よりも下方であって鉛直方向視で当該最下部と重複する位置に前記対向延在面部の一部が配置されていると共に、当該最下部は当該対向延在面部の一部との間に鉛直方向の空隙を介して配置されていると好適である。
【0011】
この構成によれば、ロータ支持軸受の排出部から排出された油は、対向延在面部に対向して径方向に延びる支持壁面部に沿っても流れる。
重力により支持壁面部に沿って下方に流れた油は、軸第二方向側へ突出すると共に支持壁面部に沿って鉛直方向と交差する方向に延びる突条部により堰き止められる。そして、堰き止められた油は、重力及び表面張力により突条部の上面に沿って、当該突条部における軸第二方向側の端部の最下部に向って流れ、そこから重力により下方に滴下する。
上記の構成によれば、当該最下部から下方に向う方向には、最下部との間に空隙を介して、ロータ支持部材の対向延在面部が配置されている。よって、突条部の最下部から下方に滴下した油は、対向延在面部に供給される。
また、支持壁面部に対して対向延在面部は回転しているため、突条部の最下部から下方に滴下した油は、対向延在面部の全周に亘って供給される。そして、上記したように、対向延在面部に供給された油は、径方向外側に向う遠心力によって、対向延在面部に沿ってその径方向外側端部まで流れ、当該径方向外側端部からコイルエンド部の全周に亘って供給される。
【0012】
ここで、前記突条部は、上方から見て前記排出部と重複する領域の全体に亘って延びるように形成されていると好適である。
【0013】
この構成によれば、排出部の各部分から下方に支持壁面部に沿って流れた油を、突条部によって確実に堰き止めることができ、ロータ支持部材の対向延在面部に向けて流すことができる。
【0014】
ここで、前記対向延在面部は、径方向外側へ向うに従って前記軸第一方向側へ向う傾斜面部を備え、前記突条部における前記軸第二方向側の端部の最下部よりも下方であって鉛直方向視で当該最下部と重複する位置に前記傾斜面部の一部が配置されていると共に、当該最下部は当該傾斜面部の一部との間に鉛直方向の空隙を介して配置されていると好適である。
【0015】
この構成によれば、突条部の端部の最下部から下方に滴下した油は、対向延在面部の傾斜面部に供給される。また、斜面部上の油に作用する径方向外側方向の遠心力は、径方向内側及び軸第一方向側を向く傾斜面部上で、傾斜面部へ向かう方向の力と、斜面部に沿って径方向外側へ向かう方向の力と、に分解される。よって、対向延在面部上に供給された油は、供給された後、径方向外側に向う流れが生じ、径方向外側端部まで円滑に流れる。
【0016】
ここで、前記支持壁は、前記対向延在面部よりも前記軸第一方向側にあって前記対向延在面部に対して対向して径方向に延びる支持壁面部を備え、前記支持壁面部は、径方向外側を向く段差面を有する段差部を備え、前記段差面の前記軸第二方向側の端部は、前記コイルエンド部よりも径方向内側であって径方向視で前記コイルエンド部と重複する位置に配置されていると共に、当該コイルエンド部との間に径方向の空隙を介して配置されていると好適である。
【0017】
排出部から対向延在面部に供給されなかった油は、支持壁面部に沿って流れる。上記の構成によれば、重力により支持壁面部に沿って下方に流れた油は、段差部に到達する。そして、油は、重力により段差面の軸第二方向側の端部から下方に滴下する。
ロータの回転軸心が水平又は水平に近い角度で配置されている場合、上記の構成によれば、段差面の軸第二方向側の端部の各部から下方に向う方向には、当該端部との間に空隙を介して、コイルエンド部が配置される。よって、段差面の端部から滴下した油は、コイルエンド部に供給される。従って、対向延在面部に供給されなかった油も、支持壁面部に備えられた段差部からコイルエンド部に供給することができ、コイルエンド部の冷却に利用することができる。
【0018】
ここで、前記段差面は、軸方向に平行な面、又は前記軸第一方向側へ向うに従って径方向内側へ向う面とされていると好適である。
【0019】
ロータの回転軸心が水平又は水平に近い角度で配置されている場合、段差面が軸方向に平行な面又は段差面が軸第一方向側へ向うに従って径方向内側へ向う面とされている場合には、段差面上の油に作用する重力は、段差面上で軸第一方向側に向く方向には分解されないため、油が段差面に沿って軸第一方向側に流れることを抑制することができる。従って、油を、段差面の軸第二方向側の端部からコイルエンド部に滴下させることができる。
【0020】
ここで、前記排出側面は、径方向視で前記ステータコアと重複する位置に配置されていると好適である。
【0021】
この構成によれば、ロータ支持軸受の少なくとも一部が径方向視でステータコア及びロータコアと重複するように配置されることになる。これにより、ロータよりも径方向内側の空間を有効利用してロータ支持軸受を配置することができ、車両用駆動装置の軸方向長さの短縮を図ることが容易となる。そして、本願発明によれば、対向延在面部の径方向内側端部から径方向外側端部までの径方向断面が径方向外側へ向う方向及び軸第一方向側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されているため、このような構成においても、排出側面に排出された油を適切に軸第一方向側及び径方向外側へ流し、ステータコアから軸第一方向側に延出しているコイルエンド部に供給することができる。
【0022】
ここで、前記ロータの回転を検出する回転センサを備え、前記回転センサは、前記ロータ支持部材に対して前記軸第二方向側に隣接して配置されていると好適である。
【0023】
この構成によれば、対向延在面部が形成されるロータ支持部材の軸第一方向側に回転センサが配置されない。このため、当該回転センサにより対向延在面部を流れる油の流れが妨げられること防止し、円滑な油の流れを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の要部断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る車両用駆動装置の要部平面図である。
【図5】本発明のその他の実施形態に係る車両用駆動装置の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.第一の実施形態
本発明の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態においては、本発明に係る車両用駆動装置を、ハイブリッド駆動装置に適用した場合を例として説明する。図1は、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの概略構成を示す模式図である。ハイブリッド駆動装置Hは、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置である。このハイブリッド駆動装置Hは、いわゆる1モータパラレルタイプのハイブリッド駆動装置として構成されている。以下では、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hについて、詳細に説明する。
【0026】
1−1.ハイブリッド駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの全体構成について説明する。図1に示すように、このハイブリッド駆動装置Hは、車両の第一の駆動力源としての内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車両の第二の駆動力源としての回転電機MGと、変速機構TMと、回転電機MGに駆動連結されると共に変速機構TMに駆動連結される中間軸Mと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、を備えている。また、ハイブリッド駆動装置Hは、入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられるクラッチCLと、カウンタギヤ機構Cと、出力用差動歯車装置DFと、を備えている。これらの各構成は、ケース(駆動装置ケース)1内に収容されている。
【0027】
なお、「駆動連結」は、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が一又は二以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む概念として用いている。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材が含まれ、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。また、「駆動力」はトルクと同義で用いている。また、本実施形態では、同軸上に配置される入力軸I、中間軸M、及び回転電機MGの回転軸心を基準として、「軸方向」、「径方向」及び「周方向」の各方向を規定している。また、「上」は鉛直方向上方を指し、「下」は鉛直方向下方を指すものとする。
【0028】
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、内燃機関Eのクランクシャフト等の出力回転軸がダンパDを介して入力軸Iに駆動連結されている。また、入力軸IはクラッチCLを介して回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結されており、入力軸IはクラッチCLにより選択的に回転電機MG及び中間軸Mに駆動連結される。このクラッチCLの係合状態では、入力軸Iを介して内燃機関Eと回転電機MGとが駆動連結され、クラッチCLの解放状態では内燃機関Eと回転電機MGとが分離される。
【0029】
回転電機MGは、ステータStとロータRoとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、蓄電装置(図示せず)と電気的に接続されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。なお、蓄電装置としてキャパシタ等を用いても好適である。回転電機MGは、バッテリから電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eが出力するトルクや車両の慣性力により発電した電力をバッテリに供給して蓄電させる。回転電機MGのロータRoは、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されている。この中間軸Mは、変速機構TMの入力軸(変速入力軸)となっている。
【0030】
変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して変速出力ギヤGへ伝達する装置である。このような変速機構TMとして、本実施形態では、シングルピニオン型及びラビニヨ型の遊星歯車機構とクラッチ、ブレーキ及びワンウェイクラッチ等の複数の係合装置とを備えて構成され、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動有段変速機構が用いられている。なお、変速機構TMとして、その他の具体的構成を備えた自動有段変速機構や、変速比を無段階に変更可能な自動無段変速機構、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式有段変速機構等を用いても良い。変速機構TMは、各時点における所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速するとともにトルクを変換して、変速出力ギヤGへ伝達する。
【0031】
変速出力ギヤGは、カウンタギヤ機構Cを介して出力用差動歯車装置DFに駆動連結されている。出力用差動歯車装置DFは、出力軸Oを介して車輪Wに駆動連結されており、当該出力用差動歯車装置DFに入力される回転及びトルクを左右2つの車輪Wに分配して伝達する。これにより、ハイブリッド駆動装置Hは、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
【0032】
なお、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、入力軸Iと中間軸Mとが同軸上に配置されると共に、出力軸Oが入力軸I及び中間軸Mとは異なる軸上に互いに平行に配置された複軸構成とされている。このような構成は、例えばFF(Front Engine Front Drive)車両に搭載されるハイブリッド駆動装置Hの構成として適している。
【0033】
1−2.ハイブリッド駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hの各部の構成について説明する。図2に示すように、ケース1は、少なくとも回転電機MG及びクラッチCLを収容している。ケース1は、回転電機MGや変速機構TM等の各収容部品の外周を覆うケース周壁2と、当該ケース周壁2の軸第一方向A1側(内燃機関E側であって図2における右側、以下同じ。)の開口を塞ぐ第一支持壁3と、当該第一支持壁3よりも軸第二方向A2側(内燃機関Eとは反対側であって図2における左側、以下同じ。)において軸方向で回転電機MGと変速機構TMとの間に配置される第二支持壁8と、を備えている。なお、第一支持壁3が本発明における「支持壁」に相当する。
【0034】
第一支持壁3は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第一支持壁3には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが第一支持壁3を貫通してケース1内に挿入されている。第一支持壁3は、軸第二方向A2側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部4を備えている。第一支持壁3は、回転電機MG及びクラッチCLに対して軸第一方向A1側に配置されており、より具体的には、回転電機MGのロータRoを支持するロータ支持部材30に対して軸第一方向A1側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、第一支持壁3は、回転電機MGの軸第一方向A1側でロータ支持部材30を回転可能に支持している。
【0035】
第二支持壁8は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第二支持壁8には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される中間軸Mが第二支持壁8を貫通している。第二支持壁8は、軸第一方向A1側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部9に連結されている。軸方向突出部9は、第二支持壁8に一体的に連結されている。第二支持壁8は、回転電機MG及びクラッチCLに対して軸第二方向A2側に配置されており、より具体的にはロータ支持部材30に対して軸第二方向A2側に所定間隔を空けて隣接して配置されている。また、第二支持壁8は、回転電機MGの軸第二方向A2側でロータ支持部材30を回転可能に支持している。また、軸方向突出部9の径方向外側には、回転センサ(レゾルバ)11のセンサステータ13が固定されている。
【0036】
第二支持壁8の内部に形成されるポンプ室には、オイルポンプ18が収容されている。本実施形態においては、オイルポンプ18は、インナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。オイルポンプ18のインナロータは、その径方向の中心部でロータ支持部材30と一体回転するようにスプライン連結されている。オイルポンプ18は、ロータ支持部材30の回転に伴ってオイルパン(図示せず)から油を吸引し、その吸引した油を吐出して、クラッチCLや変速機構TM、回転電機MG等に油を供給する。なお、第二支持壁8及び中間軸M等の内部には、それぞれ油路が形成されており、オイルポンプ18により吐出された油は、不図示の油圧制御装置及びそれらの油路を介して油供給対象となる各部位に供給される。各部位に供給された油は、当該部位の潤滑及び冷却の一方又は双方を行う。本実施形態における油は、「潤滑液」及び「冷却液」の双方の機能を果たし得る「潤滑冷却液」として機能する。
【0037】
入力軸Iは、内燃機関Eのトルクをハイブリッド駆動装置Hに入力するための軸部材である。入力軸Iは、軸第一方向A1側の端部において内燃機関Eに駆動連結されている。入力軸Iは、第一支持壁3を貫通する状態で配設されており、図2に示すように、第一支持壁3の軸第一方向A1側でダンパDを介して内燃機関Eの出力回転軸と一体回転するように駆動連結されている。また、入力軸Iの外周面と第一支持壁3に設けられた貫通孔の内周面とに亘って、これらの間を液密状態として軸第一方向A1側(ダンパD側)への油の漏出を抑制するためのシール部材66が配設されている。
【0038】
本実施形態では、入力軸Iの軸第二方向A2側の端部の径方向中心部には、軸方向に延びる孔部が形成されている。この孔部に、当該入力軸Iと同軸上に配置される中間軸Mの軸第一方向A1側の端部が軸方向に進入されている。また、入力軸Iは、その軸第二方向A2側の端部が、径方向外側に延びるクラッチハブ21に連結されている。本実施形態においては、ロータ支持部材30は、後述するようにクラッチCLの周囲を覆うように形成されており、ロータ支持部材30によりクラッチCLを収容するハウジング(クラッチハウジング)が構成されている。本例では、ロータ支持部材30の全部を利用してハウジング(クラッチハウジング)が構成されている。以下では、「ロータ支持部材30」の用語を用いる場合には、「ハウジング(クラッチハウジング)」の意味も含んでいるものとする。
【0039】
中間軸Mは、回転電機MGのトルク及びクラッチCLを介する内燃機関Eのトルクの一方又は双方を変速機構TMに入力するための軸部材である。中間軸Mは、ロータ支持部材30にスプライン連結されている。図2に示すように、この中間軸Mは、第二支持壁8を貫通する状態で配設されている。上記のとおり、第二支持壁8の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔を介して中間軸Mが第二支持壁8を貫通している。中間軸Mは、第二支持壁8に対して回転可能な状態で径方向に支持されている。本実施形態においては、中間軸Mはその内部に供給油路15及び排出油路16を含む複数の油路を有する。供給油路15は、軸方向に延びると共にクラッチCLの作動油室H1に連通するように軸方向の所定位置で径方向に延びて中間軸Mの外周面に開口している。排出油路16は、軸方向に延びて軸第一方向A1側の端面に開口している。
【0040】
クラッチCLは、上記のとおり入力軸Iと中間軸Mとの間の駆動力の伝達及び遮断を切替可能に設けられ、内燃機関Eと回転電機MGとを選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。本実施形態では、クラッチCLは湿式多板クラッチ機構として構成されている。図3に示すように、クラッチCLは、クラッチハブ21、クラッチドラム22、複数の摩擦プレート24、及びピストン25を備えている。クラッチハブ21は、入力軸Iの軸第二方向A2側の端部で当該入力軸Iと一体回転するように連結されている。クラッチドラム22はロータ支持部材30と一体的に形成されており、当該ロータ支持部材30を介して中間軸Mと一体回転するように連結されている。摩擦プレート24は、クラッチハブ21とクラッチドラム22との間に設けられ、対となるハブ側摩擦プレートとドラム側摩擦プレートとを有する。
【0041】
本実施形態では、クラッチドラム22と一体化されたロータ支持部材30とピストン25との間には液密状態の作動油室H1が形成される。この作動油室H1には、オイルポンプ18により吐出され、油圧制御装置(図示せず)により所定の油圧に調整された圧油が、中間軸Mに形成された供給油路15を介して供給される。作動油室H1に供給される油圧に応じて、クラッチCLの係合及び解放が制御される。また、ピストン25に対して作動油室H1とは反対側には、循環油室H2が形成される。この循環油室H2には、オイルポンプ18により吐出され、油圧制御装置(図示せず)により所定の油圧に調整された圧油が、ロータ支持部材30に形成された循環油路48を介して供給される。
【0042】
図2に示すように、クラッチCLの径方向外側に回転電機MGが配置されている。回転電機MGとクラッチCLとは、径方向に見て互いに重複する位置に配置されている。回転電機MGとクラッチCLとをこのような位置関係で配置することで、軸長短縮による装置全体の小型化が図られている。
【0043】
回転電機MGは、ケース1に固定されたステータStと、このステータStの径方向内側でロータ支持部材30を介して回転自在に支持されたロータRoと、を有する。ステータStとロータRoとは、径方向に微小隙間を空けて対向配置されている。ステータStは、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体として構成されて第一支持壁3に固定されるステータコアCOsと、当該ステータコアCOsに巻装されるコイルと、を備えている。なお、コイルのうち、ステータコアCOsから軸第一方向A1側に突出した部分が第一コイルエンド部Ce1であり、ステータコアCOsから軸第二方向A2側に突出した部分が第二コイルエンド部Ce2である。回転電機MGのロータRoは、円環板状の電磁鋼板を複数枚積層した積層構造体として構成されたロータコアCOoと、当該ロータコアCOoに埋め込まれた永久磁石と、を備えている。本実施形態では、軸方向に沿って延びる複数の永久磁石が、ロータRo(ロータコアCOo)内において周方向に分散配置されている。本実施形態においては、第一コイルエンド部Ce1が本発明における「コイルエンド部」に相当する。
【0044】
図2及び図3に示すように、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hは、ロータRoを支持するロータ支持部材30を備えている。ロータ支持部材30は、ケース1に対して回転可能な状態でロータRoを支持している。より具体的には、ロータ支持部材30は、その外周部にロータRoを固定した状態で、軸第一方向A1側で第一軸受61を介して第一支持壁3に支持され、軸第二方向A2側で第二軸受62を介して第二支持壁8に支持されている。また、ロータ支持部材30は、その内部に配置されるクラッチCLの周囲、すなわち軸第一方向A1側、軸第二方向A2側、及び径方向外側を覆うように形成されている。そのため、ロータ支持部材30は、クラッチCLの軸第一方向A1側に配置されて径方向に延びる第一径方向延在部31と、クラッチCLの軸第二方向A2側に配置されて径方向に延びる第二径方向延在部41と、クラッチCLの径方向外側に配置されて軸方向に延びる軸方向延在部51と、を備えている。
【0045】
第一径方向延在部31は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第一径方向延在部31の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される入力軸Iが第一径方向延在部31を貫通してロータ支持部材30内に挿入されている。また、本例では、第一径方向延在部31は、全体として板状に形成されると共に、径方向内側の部位が径方向外側の部位よりも軸第二方向A2側に位置するようにオフセットされた形状を有している。
【0046】
第一径方向延在部31は、軸第一方向A1側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部32を備えている。本実施形態では、軸方向突出部32は、第一径方向延在部31の径方向内側の端部に備えられている。軸方向突出部32は、入力軸Iの周囲を取り囲むように形成されている。軸方向突出部32と入力軸Iとの間には第三軸受63が配設されている。ここでは、入力軸Iの外周面と軸方向突出部32の内周面とに接して、第三軸受63が配設されている。また、第一支持壁3の軸方向突出部4と軸方向突出部32との間には第一軸受61が配設されている。ここでは、軸方向突出部32の外周面32aと第一支持壁3の軸方向突出部4の内周面4bとに接して、第一軸受61が配設されている。本例では、このような第一軸受61として、ボールベアリングを用いている。第一軸受61と第三軸受63とは、径方向に見て互いに重複して配置されている。なお、第一軸受61が本発明における「ロータ支持軸受」に相当する。
【0047】
第二径方向延在部41は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、本実施形態では径方向及び周方向に延在している。第二径方向延在部41の径方向中心部には軸方向の貫通孔が形成されており、この貫通孔に挿通される中間軸Mが第二径方向延在部41を貫通してロータ支持部材30内に挿入されている。また、本例では、第二径方向延在部41は、全体として板状に形成されている。第二径方向延在部41は、軸第二方向A2側に突出する円筒状(ボス状)の軸方向突出部42に連結されている。軸方向突出部42は、第二径方向延在部41の径方向内側の端部において、当該第二径方向延在部41に一体的に連結されている。軸方向突出部42は、中間軸Mの周囲を取り囲むように形成されている。軸方向突出部42は、その軸方向の一部の内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。また、軸方向突出部42と第二支持壁8の軸方向突出部9との間には第二軸受62が配設されている。ここでは、軸方向突出部42の外周面と第二支持壁8の軸方向突出部9の内周面とに接して、第二軸受62が配設されている。本例では、このような第二軸受62として、ボールベアリングを用いている。
【0048】
また、軸方向突出部42は、中間軸Mと一体回転するように、軸第二方向A2側の端部の内周面において中間軸Mにスプライン連結されている。また、軸方向突出部42は、オイルポンプ18を構成するインナロータと一体回転するように、軸第二方向A2側の端部の外周面において当該インナロータにスプライン連結されている。また、第二径方向延在部41とピストン25との間に作動油室H1が形成されている。
【0049】
本実施形態においては、第二径方向延在部41は、軸第二方向A2側に突出する円筒状の円筒状突出部43を有する。本例では、円筒状突出部43は軸方向及び径方向にある程度の厚みを有する形状に形成されている。このような円筒状突出部43は、第二径方向延在部41のうち径方向外側の領域に形成されている。円筒状突出部43は、軸方向に見てその径方向外側の部位がロータRoと重複している。また、円筒状突出部43は、軸方向に見てその径方向内側の部位がクラッチドラム22と重複している。また、円筒状突出部43は、径方向に見て第二軸受62及び第二コイルエンド部Ce2と重複して配置されている。
【0050】
軸方向延在部51は、少なくとも軸方向に延びる形状を有し、本実施形態では軸方向及び周方向に延在している。軸方向延在部51は、クラッチCLの径方向外側を包囲する円筒型の形状を有しており、第一径方向延在部31と第二径方向延在部41とを、これらの径方向外側端部で軸方向に連結している。本例では、軸方向延在部51は軸第一方向A1側において第一径方向延在部31と一体的に形成されている。また、軸方向延在部51は、軸第二方向A2側において第二径方向延在部41とボルト等の締結部材により連結されている。なお、これらが溶接等により連結された構成としても良い。また、軸方向延在部51の外周部に回転電機MGのロータRoが固定されている。
【0051】
本実施形態においては、軸方向延在部51は、軸方向に延在する円筒状の内側支持部52と、当該内側支持部52の軸第二方向A2側の端部から径方向外側に向かって延在する円環状の一方側支持部53と、を有する。本例では、一方側支持部53は軸方向及び径方向にある程度の厚みを有する形状に形成されている。内側支持部52の外周面に接してロータRoが固定されており、これにより内側支持部52は径方向内側からロータRoを支持している。また、一方側支持部53の軸第一方向A1側の端面に接してロータRoが固定されており、これにより一方側支持部53は軸第二方向A2側からロータRoを支持している。なお、ロータRoの軸第一方向A1側から円環状のロータ保持部材56が内側支持部52に外挿され、このロータ保持部材56はロータRoに対して軸第一方向A1側から接するように配置されて軸第一方向A1側からロータRoを保持している。本例では、ロータ保持部材56は、一方側支持部53との間に複数の電磁鋼板を軸方向に挟持した状態で、軸第一方向A1側からロータRoを押さえて保持している。
【0052】
上記のとおり、本実施形態に係るロータ支持部材30は、クラッチCLを収容するハウジング(クラッチハウジング)としても機能するように構成されている。ロータ支持部材30の内部に形成される空間のうち、作動油室H1を除いた大部分を占める空間が、先に説明した循環油室H2となる。そして、本実施形態においては、オイルポンプ18により吐出されて所定の油圧に調整された油が、循環油路48を介して循環油室H2に供給される。ここで、本実施形態においては、軸方向突出部32と入力軸Iとの間に配設される第三軸受63は、ある程度の液密性が確保可能に構成されたシール機能付軸受(ここでは、シールリング付ニードルベアリング)とされている。更に、第二径方向延在部41の軸方向突出部42の軸方向の一部の内周面が周方向全体に亘って中間軸Mの外周面に当接している。そのため、ロータ支持部材30内の循環油室H2は液密状態とされ、油が循環油室H2に供給されることにより、基本的には所定圧以上の油で満たされた状態となる。これにより、本実施形態に係るハイブリッド駆動装置Hでは、クラッチCLに備えられる複数の摩擦プレート24を、循環油室H2に満たされる多量の油で効果的に冷却することが可能となっている。なお、循環油室H2から排出された油の大部分は、入力軸Iの外周面に開口する径方向の連通孔を介して中間軸Mの内部に形成された排出油路16から排出されてオイルパン(図示せず)に戻される。
【0053】
本実施形態においては、ロータRoの回転角度を検出する回転センサ11が、ロータ支持部材30に対して軸第二方向A2側に隣接して配置されている。ここでは、回転センサ11は、ロータ支持部材30の軸第二方向A2側で、第二支持壁8と第二径方向延在部41との間に回転センサ11が設けられている。回転センサ11は、回転電機MGのステータStに対するロータRoの回転位置を検出するためのセンサである。このような回転センサ11としては、例えばレゾルバ等を用いることができる。
【0054】
本実施形態においては、図2に示すように第二径方向延在部41(円筒状突出部43)の軸第二方向A2側の側面にセンサロータ12が固定され、第二支持壁8(軸方向突出部9)の軸第一方向A1側の側面にセンサステータ13が固定されている。
【0055】
この構成によれば、後述する対向延在面部71が形成されるロータ支持部材30の軸第一方向A1側に回転センサが配置されない。このため、回転センサ11により対向延在面部71を流れる油の流れが妨げられること防止し、円滑な油の流れを実現できる。
【0056】
1−3.軸受の潤滑構造
次に、本実施形態に係る軸受の潤滑構造について、図2及び図3を参照して説明する。本実施形態では、図2に示すように、第二軸受62は、オイルポンプ18からの油の一部により、油圧制御装置(図示せず)を介することなく直接的に潤滑される構造となっている。すなわち、本実施形態では、オイルポンプ18が収容されているポンプ室内の油の一部は、第二支持壁8の貫通孔の内周面と第二径方向延在部41の軸方向突出部42の外周面との間の微小隙間を通って僅かずつ軸方向に漏出し、当該微小隙間に対して軸第一方向A1側に隣接して配置された第二軸受62の潤滑を行うように構成されている。第二軸受62を潤滑した後の油は、第二軸受62の径方向外側に配置された第二コイルエンド部Ce2等へ、冷却のために供給される。
【0057】
一方、図3に示すように、第一軸受61及び第三軸受63は、油圧制御装置(図示せず)を介して液密状態の循環油室H2に供給された後、当該循環油室H2から排出される油の一部により潤滑される構造となっている。すなわち、本実施形態では、循環油室H2から排出された油の一部は、入力軸Iの外周面と軸方向突出部32の内周面との間に配設された第三軸受63の潤滑を行い、その後第三軸受63を通って軸第一方向A1側に向かって漏出するように構成されている。また、第三軸受63から漏出した油は、当該第三軸受63の軸第一方向A1側において入力軸Iの外周面と第一支持壁3の貫通孔の内周面との間に配設されたシール部材66によって堰き止められて径方向外側へ流出し、第三軸受63の径方向外側に配置された第一軸受61の潤滑を行うように構成されている。このように、本実施形態においては、ロータ支持部材30(軸方向突出部32)と入力軸Iとの間(より正確には、軸方向突出部32及び入力軸Iのそれぞれと第三軸受63を構成する各部品との間)の微小隙間として、潤滑油供給路LSが設けられている。第一軸受61は、潤滑油供給路LSの油が供給される被供給部82を、第一軸受61における軸第一方向A1側の面である供給側面83に備えている。よって、潤滑油供給路LSからの油は、第一軸受61に対して径方向内側かつ軸第一方向A1側から第一軸受61に供給される。このように、本実施形態では、液密状態とされた循環油室H2から排出される油の一部を利用して、第三軸受63、更には軸方向突出部32よりも径方向外側に配置された第一軸受61の潤滑を行うことができる。なお、本実施形態においては、潤滑油供給路LSが本発明における「供給部」に相当する。
【0058】
第一軸受61は、潤滑油供給路LSから供給された油を排出する排出部80を、第一軸受61における軸第二方向A2側の面である排出側面81に備えている。よって、第一軸受61を潤滑した後の油は、当該第一軸受61の軸第二方向A2側へ排出される。
以下で詳細に説明するように、第一軸受61から排出された油は、対向延在面部71に沿って軸第一方向A1側および径方向外側に流れて、ステータコアCOsから軸第一方向A1側に延出している第一コイルエンド部Ce1に供給され、当該第一コイルエンド部Ce1を冷却するように構成されている。
【0059】
1−3−1.ロータ支持部材30の側面を利用した油供給
図3に示すように、ロータ支持部材30(第一径方向延在部31)は、第一軸受61の排出側面81よりも軸第二方向A2側にあって排出側面81に対して対向する対向面部70と、当該対向面部70から径方向外側へ延びる対向延在面部71と、を有している。ここで、対向面部70は、排出側面81よりも軸第二方向A2側であって軸方向視で排出側面81と重複する位置に配置されていると共に、排出側面81との間に軸方向の空隙S1を介して配置されている面部である。
また、対向延在面部71の径方向外側端部72は、第一コイルエンド部Ce1よりも径方向内側であって径方向視で第一コイルエンド部Ce1と重複する位置に配置されていると共に、第一コイルエンド部Ce1との間に径方向の空隙S2を介して配置されている。
対向延在面部71は、当該対向延在面部71の径方向内側端部73から径方向外側端部72までの径方向断面が径方向外側へ向う方向及び軸第一方向A1側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されている。
【0060】
第一軸受61の排出側面81は、対向延在面部71の径方向外側端部72よりも軸第二方向A2側に配置されている。より詳しくは、排出側面81は、径方向視でステータコアCOsと重複する位置に配置されている。この構成によれば、第一軸受61の少なくとも一部が径方向視でステータコアCOs及びロータコアCOoと重複するように配置されることになる。これにより、ロータRoよりも径方向内側の空間を有効利用して第一軸受61を配置することができ、ハイブリッド駆動装置Hの軸方向長さの短縮を図ることが容易となる。
【0061】
本実施形態では、対向延在面部71における径方向内側端部73から径方向外側端部72までの径方向断面は、複数の面部から構成され、径方向外側に向うに従って、段階的に軸第一方向A1側へ向うように形成されている。
すなわち、当該径方向断面は、概略的に、径方向内側端部73から径方向外側へ向う方向及び軸第一方向A1側へ向う方向の双方にのみ延びる第一傾斜面部74と、当該第一傾斜面部74の径方向外側端部から径方向外側へ向う方向にのみ延びる第一径方向延出面部75と、第一径方向延出面部75の径方向外側端部から軸第一方向A1側へ向う方向にのみ延びる軸方向延出面部76と、当該軸方向延出面部76の径方向外側端部から径方向外側へ向う方向にのみ延びる第二径方向延出面部77と、第二径方向延出面部77の径方向外側端部から対向延在面部71の径方向外側端部72まで径方向外側へ向う方向及び軸第一方向A1側へ向う方向の双方にのみ延びる第二傾斜面部78と、から構成されている。ここで、第二傾斜面部78は、ロータコアCOoを軸第二方向A2側に支持するかしめ部の軸第一方向A1側の面である。本例では、第二傾斜面部78は、角度の異なる2つの傾斜面と当該2つの傾斜面をつなぐ曲面から構成されている。なお、軸方向延出面部76と第二径方向延出面部77との間には、短い傾斜面が設けられている。また、各面部の接続部分は、滑らかな曲面又は面取りでつながれている。なお、第一傾斜面部74及び第二傾斜面部78は、径方向外側へ向うに従って軸第一方向A1側へ向うように形成されている。また、本実施形態においては、第一傾斜面部74が本発明における「傾斜面部」に相当する。また、本実施形態では、対向面部70は、径方向及び周方向のみに延在する面部とされている。対向面部70と排出側面81との間の空隙S1は、第一軸受61の排出部80の開口幅より狭い。すなわち、第一軸受61から排出される油の流れは、空隙S1で絞られている。これにより、排出部80から排出された油は、対向面部70に接触し、対向面部70に沿って流れる。
【0062】
以上の構成によれば、第一軸受61の排出部80から排出された油は、排出側面81に対して対向して配置されているロータ支持部材30の対向面部70に供給される。ロータ支持部材30は駆動装置の運転中は回転しているため、ロータ支持部材30の対向面部70に供給された油には、径方向外側へ向う遠心力が作用し、対向面部70から径方向外側へ延びる対向延在面部71に流れる。
この際、対向延在面部71は、その径方向内側端部73から径方向外側端部72までの径方向断面が径方向外側へ向う方向及び軸第一方向A1側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されているので、対向延在面部71は、その径方向内側端部73から径方向外側端部72まで全体として径方向内側及び軸第一方向A1側の一方又は双方を向くように形成されている。よって、油に作用する径方向外側方向の遠心力は、対向延在面部71上で、対向延在面部71へ向かう(径方向外側端部72の法線方向と反対方向へ向う)の力と、対向延在面部71に沿って径方向外側(径方向外側端部72)へ向かう方向の力と、の一方又は双方に分解される。よって、対向延在面部71上の油は、対向延在面部71から離れることなく、対向延在面部71に沿って径方向外側(径方向外側端部72)まで流れる。また、排出側面81を、上記のように、径方向視でステータコアCOsと重複する位置に配置した場合でも、対向延在面部71の径方向内側端部73から径方向外側端部72までの径方向断面が径方向外側へ向う方向及び軸第一方向側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されているため、排出側面81に排出された油を適切に軸第一方向A1側及び径方向外側へ流し、ステータコアCOsから軸第一方向A1側に延出している第一コイルエンド部Ce1に供給することができる。
【0063】
対向延在面部71の径方向外側端部72まで流れた油は、径方向外側へ向う遠心力により、径方向外側端部72から離れて、径方向外側に飛ばされる。この際、径方向外側端部72から径方向外側に向う方向には、当該径方向外側端部72との間に空隙S2を介して第一コイルエンド部Ce1が配置されているので、径方向外側端部72から径方向外側に飛ばされた油は、第一コイルエンド部Ce1に供給される。この際、ロータ支持部材30は回転しているため、対向延在面部71に沿って径方向外側に流れた油は、第一コイルエンド部Ce1の全周に亘って供給される。
【0064】
また、上記の構成によれば、第一軸受61の排出側面81は、対向延在面部71の径方向外側端部72よりも軸第二方向A2側に配置されている。そして、対向延在面部71は、排出側面81の軸第二方向A2側に配置された対向面部70から径方向外側端部72まで、その径方向断面が径方向外側へ向う方向及び軸第一方向A1側へ向う方向の一方又は双方に延びるように形成されている。よって、第一軸受61の排出側面81から径方向外側に向う方向に、対向延在面部71が配置されている。また、本実施形態では、回転軸心は、水平に配置されているので、径方向外側に向う方向には下方B1に向う方向が含まれる。従って、第一軸受61の排出側面81から下方B1に向う方向に、対向延在面部71が配置されている。
【0065】
このため、第一軸受61の排出部80から排出された油の内、排出側面81に沿って重力により下方B1に流れた油は、当該排出側面81の下方B1に配置された対向延在面部71に流れ或いは滴下して供給される。また、対向延在面部71は回転しているため、第一軸受61の排出側面81から下方B1に流れた油は、対向延在面部71の全周に亘って供給される。このため、対向延在面部71に供給された油の質量により、ロータRoの重心が偏心することを防止できる。
そして、対向延在面部71に供給された油は、上記したように、径方向外側に向う遠心力によって、対向延在面部71に沿って径方向外側端部72まで流れ、径方向外側端部72から第一コイルエンド部Ce1の全周に亘って供給される。
【0066】
従って、第一軸受61の排出部80から排出された油は、対向延在面部71に沿って径方向外側端部72まで流れ、径方向外側端部72から第一コイルエンド部Ce1の全周に亘って供給されるので、第一コイルエンド部Ce1を全周に亘って冷却することができる。
【0067】
上記のように、対向延在面部71は、径方向内側端部73から径方向外側端部72までの径方向断面が径方向外側へ向う方向及び軸第一方向A1側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されており、径方向外側端部72から径方向外側に向う方向には、空隙S2を介して第一コイルエンド部Ce1が存在する。よって、径方向外側端部72は、対向面部70から径方向外側へ延びる対向延在面部71の内、最も軸第一方向A1側に位置する部分となる。従って、対向延在面部71の径方向外側端部72は、ロータ支持部材30の軸第一方向A1側を対向面部70から径方向外側へ延びる面の内、最も軸第一方向A1側に位置する部分とも定義することができる。
【0068】
よって、径方向外側端部72より径方向外側には、径方向外側端部72よりも軸第一方向A1側に延びる面が存在しないため、対向延在面部71は、径方向外側端部72の径方向外側では、もはや径方向内側及び軸第一方向A1側を向いておらず、径方向外側及び軸第一方向A1側を向くようになる。よって、径方向外側端部72上の油に作用する径方向外側方向の遠心力は、径方向外側端部72上で、もはや対向延在面部71へ向かう方向の力には分解されず、遠心力がそのまま油に作用する。よって、径方向外側端部72上の油は、径方向外側へ向う遠心力により、径方向外側端部72から離れて、径方向外側に飛ばされる。なお、回転電機MGの通常運転におけるロータRoの回転速度域では、径方向外側端部72上の油に作用する遠心力は、当該油が径方向外側に飛ばされるほど十分大きくなる。そして、上記のように、径方向外側端部72から径方向外側に向う方向には、空隙S2を介して第一コイルエンド部Ce1が配置されているので、径方向外側端部72から径方向外側に飛ばされた油は、第一コイルエンド部Ce1に供給される。
【0069】
本実施形態では、図3に示すように、径方向外側端部72に対して径方向外側であって軸第二方向A2側に、ロータ支持部材30とは別部材のロータ保持部材56が備えられている。ロータ保持部材56は、ロータコアCOoを軸第一方向A1側から支持するための円筒状の部材であり、当該ロータ保持部材56は、ロータ支持部材30のかしめ部により軸第一方向A1側から軸方向に支持されている。
ロータ保持部材56の軸第一方向A1側の側面79は、ロータ支持部材30の径方向外側端部72に対して径方向外側であって軸第二方向A2側に配置されている。よって、遠心力によりロータ支持部材30の径方向外側端部72から径方向外側に飛ばされた油は、ロータ保持部材56の軸第一方向A1側の側面79よりも軸第一方向A1側を通過する。
【0070】
なお、ロータ保持部材56の軸第一方向A1側の側面79の径方向外側端部から径方向外側に向う方向に、当該径方向外側端部との間に空隙を介して、第一コイルエンド部Ce1が配置されている。よって、ロータ支持部材30の径方向外側端部72から径方向外側に飛ばされた油が、飛ばされる方向の乱れなどにより、ロータ保持部材56の軸第一方向A1側の側面79に付着したとしても、遠心力により、当該側面79の径方向外側端部から第一コイルエンド部Ce1に向って飛ばされて供給される。また、ロータ支持部材30の径方向外側端部72に流れた油の一部が、油量が多い場合やロータRoの回転速度が低く遠心力が小さい場合などに、当該径方向外側端部72から径方向外側に飛ばされずに、ロータ保持部材56の軸第一方向A1側の側面に流れたとしても、遠心力により、ロータ保持部材56の側面79の径方向外側端部から、第一コイルエンド部Ce1に供給される。
【0071】
1−3−2.第一支持壁3の側面を利用した油供給
1−3−2−1.突条部91を利用した油供給
第一支持壁3は、対向延在面部71よりも軸第一方向A1側にあって対向延在面部71に対して対向して径方向に延びる支持壁面部90を備えている。
支持壁面部90は、排出部80よりも下方B1に、軸第二方向A2側へ突出すると共に当該支持壁面部90に沿って鉛直方向と交差する方向に延びる突条部91を備えている。
突条部91における軸第二方向A2側の端部92の最下部93よりも下方B1であって鉛直方向視で当該最下部93と重複する位置に対向延在面部71の一部が配置されていると共に、当該最下部93は当該対向延在面部71の一部との間に鉛直方向の空隙S3を介して配置されている。ここで、軸第二方向A2側の端部92の最下部93とは、図4に示すように、鉛直方向(下方B1又は上方B2に向う方向)と交差する方向に延びる突条部91の軸第二方向A2側の端部92の内、最も下方B1にある部分である。なお、図4は、第一支持壁3(支持壁面部90)の径方向内側よりの部分を軸第二方向A2側から軸第一方向A1側に向って軸方向視した平面図である。なお、図2から図5における鉛直方向(下方B1又は上方B2に向う方向)は、車両が水平面を走行しており、回転電機MGの回転軸心が水平に配置されている場合における、ハイブリッド駆動装置Hの方向を表す。
【0072】
この図4に示すように、突条部91は、上方B2から見て排出部80と重複する領域の全体に亘って延びるように形成されている。ここで、第一軸受61(排出部80)は、図4において、軸方向突出部4の径方向内側に配置される。すなわち、排出部80の各部分から下方B1に向う方向の全てに、突条部91が配置されている。よって、排出部80の各部分から下方B1に支持壁面部90に沿って流れた油を、突条部91によって確実に堰き止めることができ、ロータ支持部材30の対向延在面部71に向けて流すことができる。
【0073】
本実施形態では、突条部91は、図4に示すように、上方B2から見て排出部80と重複する領域の全体に亘って周方向に延びるように形成されている。より具体的には、第一軸受61と同心の円弧状とされている。よって、突条部91の最下部93は、第一軸受61(排出部80)の中心(軸心)から下方B1に向かって延びる線上に位置している。また、突条部91における軸第二方向側へ突出高さは、周方向に亘って同じ高さとされている。よって、突条部91における軸第二方向A2側の端部92の周方向に亘る各部から下方B1に向う方向の全てに、空隙を介して対向延在面部71が配置されている。このため、突条部91における最下部93以外の端部92から、油が下方B1に滴下した場合でも、油を対向延在面部71に供給することができる。
【0074】
第一軸受61の排出部80から排出された油の内、排出側面81に沿って重力により下方B1に流れた油は、上記のように排出側面81の下方B1に配置された対向延在面部71にそのまま滴下する分と、第一軸受61から径方向外側に延びる支持壁面部90に沿って下方B1に流れる分とに分かれる。
排出部80から支持壁面部90に沿って下方B1に流れた油は、排出部80の下方B1に配置され軸第二方向A2側へ突出している突条部91により、下方B1に向う流れが堰き止められる。また、突条部91は、支持壁面部90に沿って鉛直方向と交差する方向に延びているので、突条部91の上方B2には、支持壁面部90に沿って鉛直方向と交差する方向に延びると共に軸第二方向A2に延びる上面が形成される。よって、この突条部91の上面により、排出部80から支持壁面部90に沿った下方B1への油の流れを、効果的に堰き止めることができる。更には、突条部91の上面により、油を受け止めて一時的に溜めることができる。
【0075】
突条部91の上面の油は、重力により軸第二方向A2に向って流れると共に、当該上面の最下部に向って流れる。また、突条部91における軸第二方向A2側の端部92に流れた油は、重力及び表面張力により当該端部92に沿ってその最下部93に向って流れる。そして、端部92の最下部93に流れた油は、当該最下部93から重力により下方B1に滴下する。上記の構成によれば、当該最下部93から下方B1に向う方向には、最下部93との間に空隙S3を介して、ロータ支持部材30の対向延在面部71が配置されている。よって、突条部91の最下部93から下方B1に滴下した油は、対向延在面部71に供給される。
また、上記のように対向延在面部71は回転しているため、突条部91の最下部93から下方B1に滴下した油は、対向延在面部71の全周に亘って供給される。そして、上記したように、対向延在面部71に供給された油は、径方向外側に向う遠心力によって、対向延在面部71に沿って径方向外側端部72まで流れ、径方向外側端部72から第一コイルエンド部Ce1の全周に亘って供給される。
【0076】
本実施形態では、突条部91における軸第二方向A2側の端部92の最下部93よりも下方B1であって鉛直方向視で当該最下部93と重複する位置に第一傾斜面部74の一部が配置されていると共に、当該最下部93は当該第一傾斜面部74の一部との間に鉛直方向の空隙S3を介して配置されている。
【0077】
よって、本実施形態では、突条部91の最下部93から下方B1に滴下した油は、対向延在面部71の第一傾斜面部74に供給されるように構成されている。第一傾斜面部74上の油に作用する径方向外側方向の遠心力は、径方向内側及び軸第一方向A1側を向く第一傾斜面部74上で、上記したように、第一傾斜面部74へ向かう方向の力と、第一傾斜面部74に沿って径方向外側へ向かう方向の力と、に分解される。よって、対向延在面部71上に供給された油は、供給された後直ちに、径方向外側に向う流れが生じ、対向延在面部71上で溜まることなく、径方向外側端部72まで円滑に流れる。
また、本実施形態では、第一傾斜面部74(詳しくは、軸方向中央部付近)の上方B2に、突条部91の最下部93が配置されているので、回転電機MGの回転軸心が水平方向から傾いたとしても、突条部91の最下部93から下方に向かう方向に、第一傾斜面部74を位置させることができる。
また、本実施形態では、突条部91により堰き止められた油は最下部93に集まって流量が多くなり、また、突条部91の最下部93と対向延在面部71との間の空隙S3が狭いので、最下部93に沿って流れる油は、空隙S3で絞られる。これにより、最下部93に沿って流れる油は、対向延在面部71に接触し、対向延在面部71に沿って流れるようにすることができる。
【0078】
また、本実施形態では、支持壁面部90は、軸第二方向A2側へ突出すると共に軸方向突出部4の外周面4aの一部(図4では4箇所)から径方向外側に所定幅だけ延出している径方向延出突条部98を備えている。当該径方向延出突条部98の軸第二方向A2側への突出高さは、図2に示されているように、径方向外側に向うに従って減少するように形成されている。
【0079】
1−3−2−2.段差部95を利用した油供給
図2及び図3に示すように、支持壁面部90は、径方向外側を向く段差面96を有する段差部95を備えている。そして、段差面96の軸第二方向A2側の端部97は、第一コイルエンド部Ce1よりも径方向内側であって径方向視で第一コイルエンド部Ce1と重複する位置に配置されていると共に、第一コイルエンド部Ce1との間に径方向の空隙S4を介して配置されている。
【0080】
突条部91の軸第二方向A2側の端部92を下方に流れた油の一部は、対向延在面部71に滴下せずに、表面張力によりそのまま支持壁面部90に沿って下方に流れる。或いは、排出部80から排出された油の内、突条部91によって堰き止められなかった油は、そのまま支持壁面部90に沿って下方に流れる。或いは、対向延在面部71の径方向外側端部72から径方向外側に飛ばされた油が、飛ばされる方向の乱れなどにより、支持壁面部90に付着した場合も、当該付着した油は、支持壁面部90に沿って下方に流れる。よって、対向延在面部71に供給されなかった油は、支持壁面部90に沿って下方に流れることとなる。
そして、支持壁面部90に沿って下方に流れた油は、段差部95の内、排出部80よりも下方B1側に位置する部分に到達する。このような油は、重力により段差面96の軸第二方向A2側の端部97から下方に滴下する。
【0081】
段差面96の軸第二方向A2側の端部97から径方向外側に向う方向には、当該端部97との間に空隙S4を介して第一コイルエンド部Ce1が配置されている。また、本実施形態では、回転電機MGの回転軸心は水平に配置されているので、排出部80よりも下方B1側に位置する端部97の各部から下方B1に向う方向には、当該端部97との間に空隙を介して、第一コイルエンド部Ce1が配置されている。よって、段差面96の端部97から滴下した油は、第一コイルエンド部Ce1に供給される。より詳しくは、支持壁面部90に沿って段差部95(段差面96の端部97)に到達した油は、重力及び表面張力により段差面96の端部97に沿って、端部97の最下部まで流れる。そして、端部97の最下部に到達した油は、当該最下部から下方に滴下して、第一コイルエンド部Ce1に供給される。なお、端部97の最下部は、排出部80の中心から下方B1に向かって延びる線上に位置している。
従って、対向延在面部71に供給されなかった油も、段差部95により第一コイルエンド部Ce1に供給され、当該第一コイルエンド部Ce1の冷却に利用することができる。
【0082】
また、段差面96は、軸方向に平行な面、又は軸第一方向A1側へ向うに従って径方向内側へ向う面とされる。本実施形態では、段差面96は、図2及び図3に示すように、軸方向に平行な面とされている。
【0083】
よって、段差面96上の油に作用する下方B1に向う重力は、段差面96上で、軸第一方向A1側に向く方向には分解されないため、油が段差面96に沿って軸第一方向A1側に流れることを抑制することができる。従って、油を、段差面96の軸第二方向A2側の端部97から滴下させることができる。
【0084】
また、本実施形態では、段差部95は、全周に亘って形成されており、段差面96の各部の軸第二方向A2側の端部97は、第一コイルエンド部Ce1よりも径方向内側であって径方向視で第一コイルエンド部Ce1と重複する位置に配置されていると共に、第一コイルエンド部Ce1との間に径方向の空隙S4を介して配置されている。
【0085】
2.その他の実施形態
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される特徴構成は、その実施形態でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される特徴構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0086】
(1)上記の実施形態においては、対向延在面部71における径方向内側端部73から径方向外側端部72までの径方向断面が、複数の面部から構成され、径方向外側に向うに従って、段階的に軸第一方向A1側へ向っている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、対向延在面部71の径方向内側端部73から径方向外側端部72までの径方向断面は、径方向外側へ向う方向及び軸第一方向A1側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されていれば何れの形状でもよい。例えば、径方向断面は、径方向外側へ向う方向及び軸第一方向A1側へ向う方向の双方に延びる傾斜面部のみから構成されてもよく、或いは、当該傾斜面部を備えずに、径方向外側へ向う方向にのみ延びる径方向延出面部と、軸第一方向A1側へ向う方向にのみ延びる軸方向延出面部とを組み合わせた階段状に構成されてもよい。
【0087】
(2)上記の実施形態においては、対向延在面部71の径方向外側端部72が、ロータ支持部材30の軸第一方向A1側の面の内、最も径方向外側の部分となっている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、対向延在面部71の径方向外側端部72の径方向外側に、更にロータ支持部材30の軸第一方向A1側の面が備えられていてもよい。但し、径方向外側端部72より径方向外側のロータ支持部材30の部分は、径方向外側端部72に対して軸第二方向A2側に位置する。このようにすれば、対向延在面部71を伝って径方向外側へ流れてきた油を径方向外側端部72から第一コイルエンド部Ce1へ飛ばすことができる。
【0088】
(3)上記の実施形態においては、突条部91における軸第二方向A2側の端部92の最下部93よりも下方B1であって鉛直方向視で当該最下部93と重複する位置に第一傾斜面部74の一部が配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、突条部91における軸第二方向A2側の端部92の最下部93よりも下方B1であって鉛直方向視で当該最下部93と重複する位置に、第一傾斜面部74以外の対向延在面部71の一部(例えば、軸方向延出面部76の一部又は第二傾斜面部78の一部)が配置されている構成としてもよい。この場合であっても、当該最下部93は当該対向延在面部71の一部との間に鉛直方向の空隙S3を介して配置される必要がある。
【0089】
(4)上記の実施形態においては、突条部91が、上方B2から見て排出部80と重複する領域の全体に亘って周方向に延びるように形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、突条部91は、排出部80よりも下方B1に、支持壁面部90から軸第二方向A2側へ突出する部分を有すると共に、支持壁面部90に沿って鉛直方向と交差する方向の成分を有する方向に延びるように形成されていればいずれの形状でもよい。例えば、突条部91は、排出部80よりも径方向外側に、支持壁面部90から軸第二方向A2側へ突出すると共に、排出部80の周囲の全周に亘って延びるように形成されていてもよい。或いは、突条部91は、排出部80よりも下方B1に、支持壁面部90から軸第二方向A2側へ突出すると共に、軸方向視で水平方向或いは水平方向に対して傾斜して直線状に延びるように形成されていてもよい。また、突条部91は、軸方向視で上に向かって凸状の円弧状などに形成されていてもよい。
これらの場合でも、突条部91における軸第二方向A2側の端部92の最下部93よりも下方B1であって鉛直方向視で当該最下部93と重複する位置に対向延在面部71の一部が配置されていると共に、当該最下部93は対向延在面部71との間に鉛直方向の空隙S3を介して配置されていればよい。
【0090】
(5)上記の実施形態においては、段差面96は、軸方向に平行な面とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、段差面96は、径方向外側を向く面であればよく、例えば、段差面96は、図5に示すように、軸第一方向A1側へ向うに従って径方向内側へ向う面を備えていてもよい。この場合では、段差面96上の油に作用する下方B1に向う重力は、段差面96上で、軸第二方向A2側に向く方向に分解されるため、油が段差面96に沿って軸第一方向A1側に流れることを大幅に抑制することができる。従って、油を、段差面96の軸第二方向A2側の端部97から効果的に滴下させることができる。
【0091】
(6)上記の実施形態においては、段差部95は、全周に亘って形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、段差部95は、排出部80よりも下方B1側にのみに配置されていてもよい。更には、段差部95は、排出部80から下方B1に向う方向にのみに配置、すなわち、鉛直上方から見て排出部80と重複する領域にのみ配置されていてもよい。また、段差部95は、軸方向視で水平方向或いは水平方向に対して傾斜して直線状に延びるように形成されていてもよく、或いは、軸方向視で上に向かって凸状の円弧状などに形成されていてもよい。
【0092】
(7)上記の実施形態においては、回転電機MGの回転軸心が水平に配置されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、回転電機MGの回転軸心は、水平に近い角度(例えば、水平に対して45度以下の角度)で配置されていてもよい。
【0093】
(8)上記の実施形態においては、ハイブリッド駆動装置Hが、FF(Front Engine Front Drive)車両に搭載される場合に適した複軸構成とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば変速機構TMの出力軸を、入力軸I及び中間軸Mと同軸上に配置すると共に直接的に出力用差動歯車装置DFに駆動連結させた、一軸構成のハイブリッド駆動装置Hとすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成のハイブリッド駆動装置Hは、FR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載される場合に適している。
【0094】
(9)上記の各実施形態においては、本発明に係る車両用駆動装置を、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの双方を備えたハイブリッド車両用のハイブリッド駆動装置Hに適用した場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、車両の駆動力源として回転電機MGのみを備えた電気自動車(電動車両)用の駆動装置に本発明を適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、本発明は、ロータとステータとを有する回転電機を車両の駆動力源として備える車両用駆動装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0096】
1 :ケース
2 :ケース周壁
3 :第一支持壁(支持壁)
4 :軸方向突出部
11 :回転センサ(レゾルバ)
30 :ロータ支持部材
31 :第一径方向延在部
32 :軸方向突出部
56 :ロータ保持部材
61 :第一軸受(ロータ支持軸受)
62 :第二軸受
63 :第三軸受
66 :シール部材
70 :対向面部
71 :対向延在面部
72 :対向延在面部の径方向外側端部
73 :対向延在面部の径方向内側端部
74 :第一傾斜面部(傾斜面部)
75 :第一径方向延出面部
76 :軸方向延出面部
77 :第二径方向延出面部
78 :第二傾斜面部
79 :ロータ保持部材の側面
80 :第一軸受の排出部
81 :第一軸受の排出側面
82 :第一軸受の被供給部
83 :第一軸受の供給側面
90 :支持壁面部
91 :支持壁面部の突条部
92 :突条部の軸第二方向側の端部
93 :突条部の軸第二方向側の端部の最下部
95 :支持壁面部の段差部
96 :支持壁面部の段差面
97 :段差面の軸第二方向側の端部
98 :支持壁面部の径方向延出突条部
A1 :軸第一方向(軸方向一方側)
A2 :軸第二方向(軸方向他方側)
B1 :下方
B2 :上方
CL :クラッチ
COo :ロータコア
COs :ステータコア
Ce1 :第一コイルエンド部(コイルエンド部)
Ce2 :第二コイルエンド部
D :ダンパ
DF :出力用差動歯車装置
E :内燃機関
G :変速出力ギヤ
H :ハイブリッド駆動装置(車両用駆動装置)
H1 :作動油室
H2 :循環油室
I :入力軸
LS :潤滑油供給路(供給部)
M :中間軸
MG :回転電機
O :出力軸
Ro :ロータ
St :ステータ
TM :変速機構
W :車輪


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータとステータとを有する回転電機を車両の駆動力源として備える車両用駆動装置であって、
前記回転電機を収容すると共に、当該回転電機に対して軸方向一方側である軸第一方向側で少なくとも径方向に延びる支持壁を有するケースと、
前記ステータよりも径方向内側で前記ロータを支持するロータ支持部材と、
前記ロータ支持部材を前記支持壁に対して回転可能に支持するロータ支持軸受と、
前記ロータ支持軸受に油を供給する供給部と、を備え、
軸方向における前記軸第一方向側とは反対側を軸第二方向側として、
前記ロータ支持軸受は、前記供給部から供給された油を排出する排出部を、前記ロータ支持軸受における前記軸第二方向側の面である排出側面に備え、
前記ロータ支持部材は、前記排出側面よりも前記軸第二方向側にあって前記排出側面に対して対向する対向面部と、当該対向面部から径方向外側へ延びる対向延在面部と、を有し、
前記ステータは、ステータコアと、当該ステータコアから前記軸第一方向側に突出したコイルエンド部とを備え、
前記対向延在面部の径方向外側端部は、前記コイルエンド部よりも径方向内側であって径方向視で前記コイルエンド部と重複する位置に配置されていると共に、前記コイルエンド部との間に径方向の空隙を介して配置され、
前記排出側面は、前記対向延在面部の径方向外側端部よりも前記軸第二方向側に配置され、
前記対向延在面部は、当該対向延在面部の径方向内側端部から径方向外側端部までの径方向断面が径方向外側へ向う方向及び前記軸第一方向側へ向う方向の一方又は双方にのみ延びるように形成されている車両用駆動装置。
【請求項2】
前記支持壁は、前記対向延在面部よりも前記軸第一方向側にあって前記対向延在面部に対して対向して径方向に延びる支持壁面部を備え、
前記支持壁面部は、前記排出部よりも下方に、前記軸第二方向側へ突出すると共に当該支持壁面部に沿って鉛直方向と交差する方向に延びる突条部を備え、
前記突条部における前記軸第二方向側の端部の最下部よりも下方であって鉛直方向視で当該最下部と重複する位置に前記対向延在面部の一部が配置されていると共に、当該最下部は当該対向延在面部の一部との間に鉛直方向の空隙を介して配置されている請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記突条部は、上方から見て前記排出部と重複する領域の全体に亘って延びるように形成されている請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記対向延在面部は、径方向外側へ向うに従って前記軸第一方向側へ向う傾斜面部を備え、
前記突条部における前記軸第二方向側の端部の前記最下部よりも下方であって鉛直方向視で当該最下部と重複する位置に前記傾斜面部の一部が配置されていると共に、当該最下部は当該傾斜面部の一部との間に鉛直方向の空隙を介して配置されている請求項2又は3に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記支持壁は、前記対向延在面部よりも前記軸第一方向側にあって前記対向延在面部に対して対向して径方向に延びる支持壁面部を備え、
前記支持壁面部は、径方向外側を向く段差面を有する段差部を備え、
前記段差面の前記軸第二方向側の端部は、前記コイルエンド部よりも径方向内側であって径方向視で前記コイルエンド部と重複する位置に配置されていると共に、当該コイルエンド部との間に径方向の空隙を介して配置されている請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項6】
前記段差面は、軸方向に平行な面、又は前記軸第一方向側へ向うに従って径方向内側へ向う面とされている請求項5に記載の車両用駆動装置。
【請求項7】
前記排出側面は、径方向視で前記ステータコアと重複する位置に配置されている請求項1から6のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項8】
前記ロータの回転を検出する回転センサを備え、
前記回転センサは、前記ロータ支持部材に対して前記軸第二方向側に隣接して配置されている請求項1から7のいずれか一項に記載の車両用駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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