説明

車両空調装置用フィルター

【課題】フィルター材の構造を改良し、利用者の多様な要求に対応可能な機能選択性を実現可能な車両空調装置用フィルターを提供する。
【解決手段】特性または機能の異なる積層された複数のフィルター材からなる積層フィルター部材と、積層フィルター部材を保持する枠体とを備えた車両空調装置用フィルターであって、複数のフィルター材が、積層順を任意に設定可能に、かつ、隣接フィルター材を互いに離反可能に、実質的に非接着状態にて積層されていることを特徴とする車両空調装置用フィルター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両空調装置用フィルターに関し、とくに、フィルター材の構造を改良し、利用者の多様な要求に対応可能な機能選択性を実現した車両空調装置用フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用空調装置、とくに、客室または乗務員室に備えられた車両用空調装置においては、快適性の向上を図るべく、抗菌機能、芳香機能、マイナスイオン発生機能など、多種多様な機能が要求される傾向にある。例えば、特許文献1には、芳香機能、消臭機能等の機能が付与された機能材がシート状、スティック状又はひも状に形成され、多様な機能を提供可能としつつ、機能材の交換作業の容易化が図られたカーエアコン用フィルターが開示されている。
【特許文献1】特開2001−213157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示された発明においては、組付性は向上されているものの、機能材自体の形状がスティック状等の特殊な形状であることから、十分な風路断面積を確保することが難しく、機能材の効果を十分に発揮させることが困難であるという問題が残されている。また、十分な風路断面積を確保すべく多数の機能材を配置すると、圧力損失が増大して空調性能の低下が引き起されるという好ましくない問題が生じる可能性もある。
【0004】
そこで本発明の課題は、空調性能を従来技術と同様の高い水準に維持しつつ、利用者の多様な要求に対応可能な機能選択性を実現可能な車両空調装置用フィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る車両空調装置用フィルターは、特性または機能の異なる積層された複数のフィルター材からなる積層フィルター部材と、該積層フィルター部材を保持する枠体とを備えた車両空調装置用フィルターであって、前記複数のフィルター材が、積層順を任意に設定可能に、かつ、隣接フィルター材を互いに離反可能に、実質的に非接着状態にて積層されていることを特徴とするものからなる。
【0006】
このような構成においては、フィルター材が実質的に非接着状態にて積層されているので、フィルター材の交換作業が容易化されて保守性が向上するとともに、フィルター材の接着による圧力損失が最小限に抑えられ、空調性能が従来技術と同様の高い水準に維持される。また、積層順が任意に設定可能であることから、特性や機能の異なるフィルター材を自由に選択し、最適な順序で積層させることができ、顧客の多様な要求に対応することが可能となる。また、特性または機能が異なる複数の積層フィルター材のうち、寿命や保守の必要性等に応じて、特定のフィルター材のみを交換等することも可能になる。
【0007】
上記フィルター部材は、とくに限定されないが、枠体に着脱自在に保持されていることが好ましい。かかる構成によりフィルター部材全体としての交換作業が容易化され、保守性のさらなる向上が図られる。フィルター部材が容易に着脱できることにより、それを構成している各フィルター材も容易に交換可能となる。
【0008】
上記フィルター部材においては、少なくとも一組の隣接フィルター材が、互いに剥離可能に点接着された構成とすることも可能である。このような構成にすれば、互いに点接着された複数のフィルター材を実質的に一つの部材として取り扱うことができるため、組立性および保守性のさらなる向上が実現可能となり、しかもフィルター材の接着による圧力損失の場所は、点接着とすることにより最小限に抑えられる。また、互いに点接着しておくだけでフィルター材同士の望ましくない位置ずれも防止される。
【0009】
あるいは、上記フィルター部材においては、積層された複数のフィルター材が、棒状に延びる押さえ部材により、互いに離反可能に止められている構成とすることも可能である。このような構成においては、上記のような点接着を必ずしも行う必要はなく、点接着構成の場合に比べた利点として、例えば中間層のフィルター材を交換する場合、点接着されているとその前後のフィルター材を剥がす必要があるが、押さえ部材の場合はその必要がなく、交換作業がより容易になる。ただし、点接着と押さえ部材の両方を採用することも可能である。押さえ部材の材質は特に限定されず、樹脂や金属を使用可能であり、本数も特に限定されず、1本でも複数本でもよい。また、押さえ部材は枠体に固定される構造でもよく、枠体に対して着脱可能に設けられてもよい。
【0010】
また、上記フィルター部材においては、少なくとも一組の隣接フィルター材間に、予め定められた寸法の隙間が形成されている形態を採用することができる。かかる構成によって積層フィルター材のさらなる圧力損失低減が可能となり、空調性能が従来技術と同様の高い水準に維持される。
【0011】
上記フィルター材は、とくに限定されないが、積層が容易でかつ表面積を容易に広くとれるプリーツ形態に形成されていることが好ましい。プリーツ構造により有効濾過面積が増大し、フィルター機能の向上が図られる。また、フィルター材をプリーツに沿って折り畳むことにより、非装着時におけるフィルター材の省スペース化が可能となり、保管コストおよび輸送コストの低減を図ることができる。
【0012】
本発明に係るフィルター材に付与される機能としては、とくに限定されないが、例えば、集塵機能の他、脱臭機能、抗菌機能、抗アレルゲン機能、抗酸化機能、芳香機能、湿度調整機能、マイナスイオン発生機能等が挙げられる。
【0013】
本発明に係る車両空調装置用フィルターは、上述の如くフィルター材の交換が容易であり、かつ、フィルター材の積層順を任意に設定可能であることから、個々のフィルター材の交換頻度や交換作業を考慮して、調和空気送出路に対し任意の最適な位置に配置されることができる。したがって、定期的な交換作業が要求される、有効成分放出機能を有するフィルター材を備えたものの場合にも、交換作業効率等を考慮して、設置位置を任意の最適な位置に設定することができる。このような有効成分放出機能を有するフィルター材としては、例えば、芳香機能やマイナスイオン発生機能等を有するフィルター材が挙げられ、この場合有効成分としては、芳香発生剤やマイナスイオン発生剤等が挙げられる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本発明に係る車両空調装置用フィルターによれば、フィルター材を非接着状態にて積層することにより、圧力損失を最小限に抑えつつ組立性および保守性の向上が実現可能となる。また、積層される各フィルター材に所望の異なる特性や機能を容易に付与できるので、フィルター全体としても、利用者の多様な要求に応じた望ましい性能を付与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の望ましい実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施態様に係るフィルター材1を示しており、とくに、プリーツ形態に形成された機能の異なる複数のフィルター材を例示している。図1に示すように、各フィルター材1はプリーツ加工が施された略同一形状の薄いシート形状に形成され、フィルター材1の機能を発揮するための風路断面積が十分に確保されている。フィルター材1は任意の順序に積層可能であるが、本実施態様においては、調和空気流最上流側に集塵用フィルター材1aが配置されて下流側フィルターの目詰まりが防止されるとともに、調和空気流最下流側に、有効成分放出機能を有するフィルター材としての芳香機能用フィルター材1bが配置され、芳香成分が車室内へ効率良く放出されることにより、車室内の快適性の向上が図られている。このようなフィルター材1の材質はとくに限定されないが、圧力損失の抑制の観点からは、不織布またはメッシュからなることが好ましい。
【0016】
図2は、図1のフィルター材1が備えられた車両空調装置用フィルター2を示している。図2において、車両空調装置用フィルター2は、機能の異なる複数のフィルター材1が積層されてなる積層フィルター部材3と、積層フィルター部材3を保持する枠体4とを有している。本実施態様においては、各フィルター材1は、点接着部5において、スポット接合により隣接するフィルター材に対し互いに剥離可能に点接着されており、調和空気流の圧力損失を最小限に抑えつつ、積層フィルター部材3の取扱性の向上、各フィルター材1の望ましくない位置ずれの防止が図られている。
【0017】
車両空調装置用フィルター2において、フィルター材1は互いに剥離可能に点接着され、実質的に非接着状態にて積層されているので、所望のフィルター材のみを容易に交換でき、交換後は再び点接着を行って各部材を組み付けるだけでよい。また、機能性を有するフィルター材1が積層フィルター部材3として一体化されているため、積層フィルター部材3もしくは車両空調装置用フィルター2本体の交換によってもフィルター材1を交換することができる。したがって、要求される交換形態に応じた交換が可能であり、保守性の大幅な向上が可能である。
【0018】
図1および図2においては、3種類の異なるフィルター材1が積層された実施態様が例示されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、枠体4により保持可能な範囲内において、任意の数のフィルター材1を積層することができ、脱臭機能、抗菌機能、抗アレルゲン機能などの多様な機能を付与することが可能である。
【0019】
図3は、図2に示した形態とは異なる形態の車両空調装置用フィルター11を示している。図2に示した形態においては、積層された各フィルター材1は点接着されていたが、本実施態様では、積層された各フィルター材1は、棒状に延びる押さえ部材12により、互いに離反可能に止められている(つまり、単に押さえ部材12による押さえによって固定されている)。本実施態様では、棒状の押さえ部材12は、積層フィルター部材3のプリーツ形態の谷部に嵌まり混んでいる。この棒状の押さえ部材12は、前述したように、枠体4に固定される構造でもよく、枠体4に対して着脱可能な構造でもよい。また、その材質、設置本数もとくに限定されない。このような押さえ部材12による押さえ固定構造では、とくに特定のフィルター材1のみを交換するような場合、点接着の場合のように隣接フィルター材1を剥がす必要がないので、交換作業が容易化される。ただし、前述したように、点接着と押さえ部材12の両方を採用することも可能である。
【0020】
なお、上記各実施態様では、積層される各フィルター材1を略同一形状としたが、必ずしもこれに限定されるわけではなく、特定のフィルター材1の大きさや厚みを、他のフィルター材と異なるものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る車両空調装置用フィルターはあらゆる種類の車両用空調装置に適用可能であり、とくに、保守性の向上やフィルターに集塵以外の特定の機能も要求される場合に好適なものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施態様に係るフィルター材の概略斜視図である。
【図2】図1のフィルター材を備えた車両空調装置用フィルターの概略斜視図である。
【図3】本発明の別の実施態様に係る車両空調装置用フィルターの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1 フィルター材
1a 集塵機能を有するフィルター材
1b 有効成分放出機能を有するフィルター材
2、11 車両空調装置用フィルター
3 積層フィルター部材
4 枠体
5 点接着部
12 棒状の押さえ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性または機能の異なる積層された複数のフィルター材からなる積層フィルター部材と、該積層フィルター部材を保持する枠体とを備えた車両空調装置用フィルターであって、前記複数のフィルター材が、積層順を任意に設定可能に、かつ、隣接フィルター材を互いに離反可能に、実質的に非接着状態にて積層されていることを特徴とする車両空調装置用フィルター。
【請求項2】
前記積層フィルター部材が前記枠体に着脱自在に保持されている、請求項1に記載の車両空調装置用フィルター。
【請求項3】
少なくとも一組の隣接フィルター材が、互いに剥離可能に点接着されている、請求項1または2に記載の車両空調装置用フィルター。
【請求項4】
積層された複数のフィルター材が、棒状に延びる押さえ部材により、互いに離反可能に止められている、請求項1〜3のいずれかに記載の車両空調装置用フィルター。
【請求項5】
少なくとも一組の隣接フィルター材間に、予め定められた寸法の隙間が形成されている、請求項1〜4のいずれかに記載の車両空調装置用フィルター。
【請求項6】
前記フィルター材がプリーツ形態に形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の車両空調装置用フィルター。
【請求項7】
少なくとも一つのフィルター材が、集塵機能、脱臭機能、抗菌機能、抗アレルゲン機能、抗酸化機能、芳香機能、湿度調整機能、マイナスイオン発生機能の少なくとも一つを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の車両空調装置用フィルター。
【請求項8】
少なくとも一つのフィルター材が有効成分放出機能を有する、請求項1〜7のいずれかに記載の車両空調装置用フィルター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−149564(P2010−149564A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327200(P2008−327200)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】