説明

車両窓の取付用接着剤として有用な組成物

本発明は、a)1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエーテル基材プレポリマー;b)1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマー(このプレポリマーの製造に使用される1種又はそれ以上のポリエステルは45〜59℃の融点を有する);c)3又はそれ以上の公称官能価を有する1種又はそれ以上のポリイソシアネート;d)1種又はそれ以上の非導電性カーボンブラック;及びe)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種又はそれ以上の触媒を含む組成物である。好ましい一実施態様において、本発明の組成物は、更にプレポリマーの製造に使用される1種又はそれ以上のポリエステルが60〜90℃の融点を有する1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及び建物へのガラスの接着に使用できる接着剤として有用な組成物に関する。別の実施態様において、本発明は2つ又はそれ以上の基体(又は下地)の接着方法に関する。このような基材はガラス、建物及び車両を含むことができる。別の実施態様において、本発明は本発明の組成物を用いた車両中の窓の交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物及び車両にガラス(窓)を付ける(接着する)ためには、接着剤組成物が用いられている(例えば特許文献1、2、3及び4参照:これらの特許の全てを引用することによって本明細書中に組み入れる)。自動車工場において、窓はロボット及びコンピュータ制御処理を用いて取付ける。これは、種々の自動車に用いられる高性能接着剤、例えば非導電性接着剤及び高弾性率接着剤の使用を容易にする。更に、新しい車両は窓の取付け後数日間はほとんど運転しないので、硬化速度は重要な問題ではない。逆に、車両窓の交換が必要な場合には、このような交換は、遠く離れた場所で車両からのインストーラーの作業によって実施することが多い。この状況においては、車両の所有者は、窓の取付け後できるだけ速く車を持ち帰りたいので、硬化速度は重要である。車に乗って帰るまでの時間(ドライブアウェイ時間)を短縮することができる、車両用窓の交換に有用な接着剤が知られている(例えば、特許文献2及び4を参照)。窓の装着に使用される種々の高性能接着剤組成物の自動車工場への導入は、交換用窓のインストーラーに問題を引き起す。第一に、様々な性能要件を全て満たす接着剤は市場では入手できない。第二に、多くの高性能接着剤組成物を、1時間、より好ましくは30分間のような、速いドライブアウェイ時間を可能にするように製剤化することは困難である。従って、交換窓のインストーラーは、接着剤を元の接着剤の性質に一致させることができるように種々の接着剤を取り揃えなければならないことが多い。また、垂れない、即ち、車両又はガラスに適用された接着剤ビーズの形状を失わない高性能接着剤を製剤化することは困難である。
【0003】
ガラスを所定の位置に保持するための追加の固定を行わずに、ガラスを所定の位置に固定できる良好な初期グリーン強度を示す接着剤が開発された。これは、接着剤中に結晶性ポリエステルを含ませることによって達成される。これらの接着剤はホットメルト性を有し、溶融して高温で適用することが必要である。接着剤が冷却すると、ポリエステル部分が結晶化して、ガラスを所定の位置に保持する初期グリーン強度を生じる(特許文献5参照:引用することによって本明細書中に組み入れる)。これらの接着剤に関連する問題は、それらの使用には熱の適用及びヒーターを含む複雑な装置の使用が必要であることである。得られる初期グリーン強度は速いドライブアウェイ時間を得るには充分でない。交換用ガラスの業界においては、安全で速いドライブアウェイ時間を可能にするには、速い強度発現が必要である。自動車用窓交換業界においてはポリエステルを基材とするポリウレタン接着剤が使用されるため、多くのインストーラーは、窓又は窓フランジへの接着剤の適用前に接着剤を加熱することに固執する。多くの接着剤は加熱時に、重力の結果として垂れ、即ち、変形を示す。この変形がひどすぎる場合には、車両への窓の適切な取付け及びシーリングが妨げられるおそれがある。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,780,520号(Rizk)
【特許文献2】米国特許第5,976,305号(Bhat)
【特許文献3】米国特許第6,015,475号(Hsiehら)
【特許文献4】米国特許第6,709,539号(Zhou)
【特許文献5】米国特許第5,747,581号(Proebster)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建物及び車両の窓の取付及び交換は、種々の環境条件において行われる。現存する接着剤組成物の多くは、適用の環境条件が限定されている。その結果、窓のインストーラーは、環境条件に基づいて異なる接着剤を用いなければならないことが多い。
【0006】
必要とされているのは、種々の高い性能特性(例えば、高弾性率及び非導電性)を示し、種々の条件下での適用時に速くて安全なドライブアウェイ時間、即ち速い強度発現を示し、接着剤を加熱せずに適用でき、広範囲の環境条件下で適用でき、しかも適用時に垂れない、車両へのガラスの接着用接着剤として有用な組成物である。更に、必要とされているのは、適用前に80℃までの温度に加熱される際に垂れない接着剤組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施態様において、本発明は、
a)1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエーテル基材プレポリマー;
b)1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマー(このプレポリマーの製造に使用される1種又はそれ以上のポリエステルは45〜59℃の融点を有する);
c)3又はそれ以上の公称官能価を有する1種又はそれ以上のポリイソシアネート;
d)1種又はそれ以上の非導電性カーボンブラック;及び
e)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種又はそれ以上の触媒
を含んでなる組成物である。好ましい一実施態様において、本発明は更に、プレポリマーの製造に使用される1種又はそれ以上のポリエステルが60〜90℃の融点を有する、1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーを含んでなる。
【0008】
別の実施態様において、本発明は、2つ又はそれ以上の基体を、基体の接触領域の少なくとも一部に沿って配置された本発明の組成物と接触させることを含んでなる、2つ又はそれ以上の基体の接着方法である。
【0009】
更に別の実施態様において、本発明は、
i)車両から窓を取り外し;
ii)交換窓に又は車両中に窓を保持するように構成された車両フランジに本発明に係る組成物を適用し;
iii)車両フランジ及び交換窓を、交換窓と車両フランジとの間に配置された組成物と接触させ;そして
iv)接着剤を硬化させる
ことを含んでなる車両窓の交換方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物は、基体同士を結合させる接着剤として有用である。この組成物を用いると、種々の基体、例えばプラスチック、ガラス、木材、セラミック、金属、被覆基体などを接着することができる。本発明の組成物は、同様な基体及び異なる基体のいずれの接着にも使用できる。この組成物は特に、ガラスを他の基体に、例えば車両及び建物に接着するのに有用である。本発明の組成物はまた、車両モジュール部品のようなモジュール部品の部分を接着するのに有用である。ガラスは、車両の被覆部分及び非被覆部分に接着できる。有利なことに、接着剤はポンプ輸送可能であり、垂れ抵抗性であり、しかも5〜80℃の温度において機能できる。このため、本発明の組成物から製造された接着剤は広範囲の周囲温度において適用可能である。この接着剤の適用には加熱適用装置は必要ない。更に、この接着剤は速い強度発現を示し、それによって、0°F(−18℃)〜115°F(46℃)の温度において接着剤を適用後に好ましくは1時間、好ましくは30分間の速いドライブアウェイ時間が容易になる。特に、このような条件下で装着されたフロントガラスは、United States Federal Motor Vehicle Safety Standard(FMVSS)212を満たす。本発明の組成物は非導電性であり、5×1010Ω・cm又はそれより大きい体積抵抗率を示す。本発明の組成物は、ASTM D4065による2週間の適用後の弾性率が2MPa又はそれより大きい、好ましくは2.2PMa又はそれより大きい、最も好ましくは3MPa又はそれより大きい。本発明の組成物は、5.3×105Pa又はそれより大きい、好ましくは53MPa又はそれより大きい、最も好ましくは1.0MPa又はそれより大きい貯蔵弾性率、G’を示す。組成物のポンプ輸送能は、以下に記載する加圧流動粘度(press flow viscosity)試験に従って測定でき、この試験によれば組成物は20〜50秒の加圧流動粘度を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書中で使用する「1種又はそれ以上」とは、列挙された成分のうち少なくとも1種又は1種超が開示された通りに使用できることを意味する。「官能価」に関して使用する「公称」とは理論的官能価を意味し、これは一般に、使用する成分の化学量論から計算できる。一般に、実際の官能価は、原料の不完全さ、反応体の不完全な転化及び副生成物の形成のために異なる。
【0012】
1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステル基材プレポリマーは、組成物に接着性を与えるのに充分な量で存在する。このようなプレポリマーは、硬化時に架橋ポリウレタンの製造を可能にするのに充分であるがポリマーが不安定になるほどは高くない平均イソシアネート官能価を有する。これに関連する「安定性」は、プレポリマー又はプレポリマーから製造される接着剤が周囲温度において少なくとも6ヶ月間、その適用又は使用を妨げるような粘度増加を示さないので、周囲温度において少なくとも6ヶ月の保存寿命を有することを意味する。好ましくは、プレポリマー又はプレポリマーから製造される接着剤は少なくとも6ヶ月間、50%より大きい粘度増加を受けない。好ましくは、平均イソシアネート官能価は少なくとも2.2、好ましくは少なくとも2.4である。平均イソシアネート官能価2.2未満では、硬化接着剤の所望の強度を達成するのに充分なプレポリマー架橋能は損なわれる。好ましくは、プレポリマーの平均イソシアネート官能価は3.0又はそれより小さく、より好ましくは2.8又はそれより小さい。イソシアネート官能価が3.0を超えると、プレポリマー及びプレポリマーから製造される接着剤は、許容され得ない安定性を示す場合がある。プレポリマーは、好ましくは遊離イソシアネート含量を有し、それが、プレポリマーから製造される接着剤の60分後の許容され得る強度とプレポリマーの安定性を容易にする。好ましくは、遊離イソシアネート含量は、プレポリマーの重量に基づき0.8重量%又はそれより大きく、より好ましくは0.9重量%又はそれより大きく且つ好ましくは2.2重量%又はそれより小さく、より好ましくは2.0重量%又はそれより小さく、更に好ましくは1.4重量%又はそれより小さく、更に好ましくは1.1重量%又はそれより小さく、最も好ましくは1.0重量%又はそれより小さい。遊離イソシアネート含量が2.2重量%を超えると、プレポリマーから製造される接着剤は60分後には、使用目的には低すぎる重ね剪断強さを示すおそれがあり、プレポリマーから製造される接着剤の硬化の間に発泡が起こる場合がある。遊離イソシアネート含量が0.8重量%未満の場合には、プレポリマーは粘度が高すぎて取り扱えず、しかも貼合せ時間が短すぎる。
【0013】
遊離イソシアネート基は水分と反応するので、遊離イソシアネート含量は経時的に変化する。一次遊離イソシアネート含量は、プレポリマーの生成後1時間未満の短時間で測定されたイソシアネート含量を意味する。二次遊離イソシアネート含量は、プレポリマー生成後24時間のプレポリマー中に存在するイソシアネート基の重量%を意味する。前記の好ましいイソシアネート含量は二次イソシアネート含量である。
【0014】
プレポリマーは好ましくは、良好なグリーン強度を有する、ポンプ輸送可能な接着剤の製剤化を容易にする粘度を示す。好ましくは、プレポリマーの粘度は100,000センチポアズ(100Pas)又はそれ以下、より好ましくは70,000センチポアズ(70Pas)又はそれ以下で且つ好ましくは30,000センチポアズ(30Pas)又はそれ以上、より好ましくは45,000センチポアズ(45Pas)又はそれ以上である。本明細書中で使用する「粘度」は、No.5スピンドルを用いて測定したブルックフィールド粘度である。接着剤の粘度は充填剤によって調整できるが、充填剤は最終接着剤の生強度を向上させることはできない。30,000センチポアズ(30Pas)未満では、プレポリマーから製造された接着剤は不良な生強度を示すおそれがある。100,000センチポアズ(100Pas)超では、プレポリマーは不安定であって、計量分配が困難な可能性がある。プレポリマーは、任意の適当な方法によって、例えば、前記基準を満たすイソシアネート官能価及び遊離イソシアネート含量を有するプレポリマーを形成するのに充分な反応条件下でジオール、トリオール及び分散トリオールのようなポリオールを化学量論量より過剰の量の1種又はそれ以上のポリイソシアネートと反応させることによって製造できる。プレポリマーの製造に使用するのに好ましい方法においては、ポリイソシアネートを1種又はそれ以上のジオール、1種又はそれ以上のトリオール及び分散トリオールと反応させる。
【0015】
プレポリマーの製造に使用するのに好ましいポリイソシアネートとしては、米国特許第5,922,809号の3欄第32行〜4欄第24行(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されたものが挙げられる。好ましくは、ポリイソシアネートは、芳香族又は脂環式ポリイソシアネート、例えばジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、最も好ましくはジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートである。ジオール及びトリオールはポリオールと総称する。本発明において有用なポリオールは米国特許第5,922,809号の4欄第60行〜5欄第50行(引用することによって本明細書中に組み入れる)に記載されたポリオールに相当するジオール及びトリオールである。好ましくは、ポリオール(ジオール及びトリオール)はポリエーテルポリオール、より好ましくはポリオキシアルキレンオキシドポリオールである。最も好ましいトリオールは、グリセリンをプロピレンオキシドと反応させた後、生成物をエチレンオキシドと反応させることによって製造されるエチレンオキシドでキャップされたポリオールである。
【0016】
好ましくは、プレポリマーはまた、有機基材ポリマーの粒子が分散された分散トリオールを含む。好ましい分散トリオールは、米国特許第6,709,539号(Zhou)の4欄第13行〜6欄第18行(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されている。好ましくは、有機粒子を分散させるのに使用されるトリオールはポリエーテルトリオール、より好ましくはポリオキシアルキレン基材トリオールである。好ましくは、このようなポリオキシアルキレンオキシドトリオールは、ポリオキシエチレン末端キャップを有するポリオキシプロピレン鎖を含む。好ましくは、使用されるトリオールは4,000又はそれより大きく、より好ましくは5,000又はそれより大きく、最も好ましくは6,000又はそれより大きい分子量を有する。好ましくは、このようなトリオールは8,000又はそれより小さく、より好ましくは7,000又はそれより小さい分子量を有する。分子量4,000未満では、最終的に硬化された接着剤の伸び及び耐衝撃性が使用目的には低すぎる。分子量8,000超では、プレポリマーから製造される接着剤は使用目的にはゴム状弾性が高すぎる。トリオールは好ましくは、プレポリマーから製造される接着剤が充分に速く硬化し且つ望ましい風乾時間を提供するのに充分に高いヒドロキシル価を有する。ヒドロキシル価が低すぎる場合には、接着剤の硬化は遅すぎ、望ましい風乾時間及びドライブアウェイ時間が得られない。ヒドロキシル価は、プレポリマーから製造された硬化接着剤の伸びを低下させるほど高くてはならない。好ましくは、トリオールのヒドロキシル価は30又はそれより大きく、より好ましくは40又はそれより大きい。好ましくは、トリオールのヒドロキシル価は75又はそれより小さく、より好ましくは60又はそれより小さい。
【0017】
好ましくは、分散トリオール中に分散された粒子は、トリオール中に分散された熱可塑性ポリマー、ゴム改質熱可塑性ポリマー又はポリ尿素を含む。ポリ尿素は好ましくは、ポリアミンとポリイソシアネートとの反応生成物を含む。好ましい熱可塑性ポリマーは、モノビニリデン芳香族モノマー及びビニモノビニリデン芳香族モノマーと共役ジエン、アクリレート、メタクリレート、不飽和ニトリル又はそれらの混合物とのコポリマーを基材とするものである。コポリマーは、ブロックコポリマー又はランダムコポリマーであることができる。より好ましくは、トリオールに分散された粒子は、不飽和ニトリル、共役ジエン及びモノビニリデン芳香族モノマーのコポリマー;不飽和ニトリルとモノビニリデン芳香族モノマーとのコポリマー;又はポリ尿素を含む。更に好ましくは、粒子は、ポリ尿素又はポリスチレン−アクリロニトリルコポリマーを含み、ポリスチレン−アクリロニトリルコポリマーが最も好ましい。トリオールに分散された有機ポリマー粒子は、好ましくは最終硬化接着剤の耐衝撃性及びゴム状弾性を向上させるには充分に大きいが、硬化後の接着剤の極限強さを低下させるほど大きくない粒度を有する。好ましくは、粒度は10ミクロン又はそれより大きく、より好ましくは20ミクロン又はそれより大きい。好ましくは、粒度は50ミクロン又はそれより小さく、より好ましくは40ミクロン又はそれより小さい。トリオール分散体は、硬化後の接着剤が所望の用途に充分な硬度を有するように充分な量であるが、伸びによって規定される硬化接着剤の弾性が大きくなりすぎるほどには多くない量の有機ポリマー粒子を含む。好ましくは、分散体は分散体に基づき20重量%又はそれより大きく、好ましくは30重量%又はそれより大きく、より好ましくは35重量%又はそれより大きい有機ポリマー粒子を含む。好ましくは、分散体は分散体に基づき60重量%又はそれより小さく、好ましくは50重量%又はそれより小さく、より好ましくは45重量%又はそれより小さい有機ポリマー粒子を含む。
【0018】
ポリオール(ジオール及びトリオール並びに分散トリオール)は、イソシアネートのイソシアネート基のほとんどと反応するのに充分であるのが、プレポリマーに望ましい遊離イソシアネート含量と一致する充分なイソシアネート基を残す量で存在する。好ましくは、ポリオールは、プレポリマーに基づき30重量%又はそれより大きく、より好ましくは40重量%又はそれより大きく、最も好ましくは55重量%又はそれより大きい量で存在する。好ましくは、ポリオールはプレポリマーに基づき75重量%又はそれより小さく、より好ましくは65重量%又はそれより小さく、最も好ましくは60重量%又はそれより小さい量で存在する。
【0019】
ジオール対トリオール及び分散トリオールの重量比は、接着剤に望ましい硬化速度及び強度を達成するのに重要である。この重量比が低すぎる場合には、製剤は粘稠過ぎて取り扱いができず、得られる接着剤の弾性が不十分で、衝突事故条件において自動車窓枠中にガラスを保持できない。この比が高すぎる場合には、接着剤は適切な生強度を有さない。ジオール対トリオール及び分散トリオールの重量比は好ましくは0.8又はそれより大きく、より好ましくは0.85又はそれより大きく、最も好ましくは0.9又はそれより大きい。ジオール対トリオール及び分散トリオールの重量比は、1.2又はそれより小さく、より好ましくは1.0又はそれより小さく、最も好ましくは0.95又はそれより小さい。ポリオールがジオールとトリオールとの混合物を含んでなる実施態様において、存在するジオールの量はプレポリマーに基づき好ましくは15重量%又はそれより大きく、より好ましくは25重量%又はそれより大きく、最も好ましくは28重量%又はそれより大きく且つプレポリマーに基づき40重量%又はそれより小さい、より好ましくは35重量%又はそれより小さい、最も好ましくは30重量%又はそれより小さい。ポリオールがジオールとトリオールとの混合物を含む実施態様において、存在するトリオール(非分散トリオール及び分散トリオール)の量はプレポリマーに基づき好ましくは15重量%又はそれより大きく、より好ましくは25重量%又はそれより大きく、最も好ましくは28重量%又はそれより大きく且つプレポリマーに基づき好ましくは45重量%又はそれより小さく、より好ましくは35重量%又はそれより小さく、最も好ましくは32重量%又はそれより小さい。
【0020】
有機ポリマー粒子のトリオール中分散体は、プレポリマー中にプレポリマーの10重量%又はそれより大きく、より好ましくは12重量%又はそれより大きく且つプレポリマーの18重量%又はそれより小さく、より好ましくは15重量%又はそれより小さい量で存在する。
【0021】
本発明のポリウレタンプレポリマーは更に可塑剤を含むことができる。プレポリマー中において有用な可塑剤は、ポリウレタン接着剤用として有用であり且つ当業者によく知られた一般的可塑剤である。可塑剤は、最終接着剤組成物中にプレポリマーを分散させるのに充分な量で存在する。可塑剤は、プレポリマーの製造中に又は接着剤組成物の配合中に接着剤に添加できる。好ましくは、可塑剤はプレポリマー製剤(プレポリマー+可塑剤)の1重量%又はそれより大きく、より好ましくは20重量%又はそれより大きく、最も好ましくは30重量%又はそれより大きい量で存在する。好ましくは、可塑剤はプレポリマー製剤の45重量%又はそれより小さく、より好ましくは35重量%又はそれより小さい量で存在する。
【0022】
ポリウレタンプレポリマーは、バルク重合及び溶液重合のような任意の適当な方法によって製造できる。プレポリマーの好ましい製造方法は、米国特許第5,922,809号の9欄第4行〜第51行(これを引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されている。ポリウレタンプレポリマーは接着剤組成物中に、得られる接着剤の硬化時に基体を接着するような充分な量で存在する。好ましくは、ポリウレタンプレポリマーは、接着剤組成物の25重量部又はそれより大きく、より好ましくは30重量部又はそれより大きく、最も好ましくは35重量部又はそれより大きい量で存在する。好ましくは、ポリウレタンプレポリマーは接着剤組成物の55重量部又はそれより小さく、より好ましくは50重量部又はそれより小さく、更に好ましくは45重量部又はそれより小さい量で存在する。
【0023】
組成物は更に、第1ポリエステル基材ポリオールを含むイソシアネート官能性プレポリマーを含む。第1ポリエステル基材ポリオールは、基材が重力によって相互に移動するのを防ぐ充分なグリーン強度をプレポリマーが生じるような融点を有する。車両又は建物への窓の装着に関して、第1ポリエステル基材プレポリマーは、窓が装着後に滑り落ちるのを防ぐ。第1ポリエステル基材イソシアネートプレポリマーは、必要とされるグリーン強度を生じるのに充分な融点を有する。好ましくは、第1ポリエステルポリオールは40℃又はそれより高く、更に好ましくは45℃又はそれより高く、最も好ましくは50℃又はそれより高い融点を有する。好ましくは、第1ポリエステルポリオールは、59℃又はそれより低く、最も好ましくは55℃又はそれより低い融点を示す。第1ポリエステル基材イソシアネートプレポリマーは、第1ポリエステルポリオールのみを用いて製造することもできるし、あるいは第1ポリエステルポリオールと他のポリオールとの組合せを用いて製造することもできる。プレポリマー中の第1ポリエステルポリオールの量は、本発明の組成物に必要とされるグリーン強度を与えるのに充分な量である。好ましくは、第1ポリエステルポリオールは、第1ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマー中にプレポリマーの重量に基づき70重量%又はそれより大きく、より好ましくは80重量%又はそれより大きい量で存在する。好ましくは、第1ポリエステルポリオールは第1ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマー中にプレポリマーの重量に基づき95重量%又はそれより小さく、より好ましくは90重量%又はそれより小さい量で存在する。好ましくは、第1ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマーは接着剤組成物中に、必要なグリーン強度を与えるのに充分な量で存在する。好ましくは、第1ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマーは接着剤組成物中にプレポリマーの重量に基づき1重量%又はそれより大きく、最も好ましくは2重量%又はそれより小さい量で存在する。好ましくは、第1ポリエステルポリオールは第1ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマー中にプレポリマーの重量に基づき5重量%又はそれより小さく、より好ましくは4重量%又はそれより小さい量で存在する。第1ポリエステルポリオールは周囲温度において結晶性であり且つ所望の温度範囲において溶融する、限定された特性要件を満たす任意のポリエステル組成物であることができる。好ましいポリエステルポリオールは、直鎖二酸及び直鎖ジオールから製造される。より好ましい二酸はアジピン酸である。より好ましいジオールはC2〜C6ジオールであり、ブタンジオール、ペンタンジオール及びヘキサンジオールが最も好ましい。第1ポリエステル基材ポリイソシアネートプレポリマーは、前述した方法及びイソシアネートを用いて製造できる。
【0024】
種々の接着剤組成物の代わりに使用でき且つ高温における接着剤の予熱を含む種々の適用条件下で使用できる接着剤組成物を提供するために、本発明の組成物中に第2ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマーを含ませるのが望ましい。このようなプレポリマー中に使用する第2ポリエステル基材ポリオールは、基材に適用後の組成物が重力によって変形するのを防ぐのに充分な垂れ抵抗性をプレポリマーが与えるような融点を有する。第2ポリエステル基材イソシアネートプレポリマーは、必要とされる垂れ抵抗性を与えるのに充分な融点を有する。好ましくは、第2ポリエステルポリオールは60℃又はそれより高く、より好ましくは70℃又はそれより高く、最も好ましくは80℃又はそれより高い融点を有する。好ましくは、第2ポリエステルポリオールは、90℃又はそれより低く、最も好ましくは85℃又はそれより低い融点を示す。第2ポリエステル基材イソシアネートプレポリマーは、第2ポリエステルポリオールのみを用いて製造することもできるし、あるいは第2ポリエステルポリオールと他のポリオールとの組合せを用いて製造することもできる。プレポリマー中の第2ポリエステルポリオールの量は、本発明の組成物に必要とされる垂れ抵抗性を与えるのに充分な量である。好ましくは、第2ポリエステルポリオールは第2ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマー中に、必要な垂れ抵抗性を与えるのに充分な量で存在する。好ましくは、第2ポリエステルポリオールは第2ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマー中に、プレポリマーの重量に基づき65重量%又はそれより大きく、より好ましくは70重量%又はそれより大きい量で存在する。好ましくは、第2ポリエステルポリオールは第2ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマー中に、プレポリマーの重量に基づき80重量%又はそれより小さく、より好ましくは75重量%又はそれより小さい量で存在する。接着剤組成物中の第2ポリエステルポリオールイソシアネートプレポリマーの量は、本発明の組成物に必要とされる垂れ抵抗性を与えるのに充分な量である。好ましくは、第2ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマーは接着剤組成物中にプレポリマーの重量に基づき1重量%又はそれより大きく、最も好ましくは2重量%又はそれより小さい量で存在する。好ましくは、第2ポリエステルポリオールは第2ポリエステルポリオール基材イソシアネートプレポリマー中にプレポリマーの重量に基づき5重量%又はそれより小さく、より好ましくは4重量%又はそれより小さい量で存在する。第2ポリエステルポリオールは、限定された特性要件を満たす、入手可能な任意のポリエステル組成物であることができる。好ましい第2ポリエステルポリオールは、Creanovaから商品名Dynacol並びに呼称7330及び7381として得られ、7381がより好ましい。第2ポリエステル基材ポリイソシアネートプレポリマーは、前述した方法及びイソシアネートを用いて製造できる。
【0025】
本発明の組成物は、硬化された形態における組成物の弾性率を更に向上させるために多官能価イソシアネートを含む。イソシアネートとの関連で使用される「多官能価」は、3又はそれより大きい官能価を有するイソシアネートを意味する。ポリイソシアネートは、3又はそれより大きい公称官能価を有する任意のモノマー又はポリマーイソシアネートであることができる。より好ましくは、多官能価イソシアネートは3.2又はそれより大きい公称官能価を有する。好ましくは、多官能価イソシアネートは5又はそれより小さく、より好ましくは4.5又はそれより小さく、最も好ましくは4.2又はそれより小さい公称官能価を有する。多官能価イソシアネートは、組成物に使用されるイソシアネートポリイソシアネートプレポリマーと反応性であって且つ硬化された組成物の弾性率を向上させる任意のイソシアネートであることができる。ポリイソシアネートは、モノマー;三量体、イソシアヌレート若しくはモノマーイソシアネートのビウレット;又はポリマー、1種又はそれ以上のモノマーイソシアネート数単位の反応生成物であることができる。好ましい多官能価イソシアネートの例としては、Bayerから商標及び呼称Desmodur(登録商標)N3300として入手可能なヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、及びThe Dow Chemical CompanyによってPAPI(登録商標)20ポリマーイソシアネートを含むPAPT(登録商標)の商標で市販されているもののようなポリマーMDI(メチレンジフェニルジイソシアネート)のようなポリマーイソシアネートが挙げられる。イソシアネートポリイソシアネートは、本発明の硬化組成物の弾性率に影響を与えるのに充分な量で存在する。使用量が多すぎる場合には、組成物の硬化速度は許容され得ないほど遅くなる。使用量が少なすぎる場合には、望ましい弾性率レベルを達成できない。多官能価イソシアネートは組成物の重量に基づき、好ましくは0.5重量%又はそれより大きく、より好ましくは0.9重量%又はそれより大きく、最も好ましくは1.5重量%又はそれより大きい量で存在する。多官能価イソシアネートは組成物の重量に基づき好ましくは8重量%又はそれより小さく、より好ましくは5重量%又はそれより小さく、最も好ましくは2.5重量%又はそれより小さい量で存在する。
【0026】
本発明の組成物はまた、組成物の所望の黒色、粘度及び垂れ抵抗性を与えるためにカーボンブラックを含んでなる。一部の高性能接着剤組成物は非導電性である必要があるので、使用するカーボンブラックは非導電性である。非導電性カーボンブラックは当業界でよく知られており、その例としてはColombianから入手できるRaven 1040及びRaven 1060カーボンブラックが挙げられる。組成物がここに定義したレベルまで非導電性であるならば、1種又はそれ以上のカーボンブラックを組成物中に使用できる。組成物中のカーボンブラックの量は、所望の色、粘度及び垂れ抵抗性を与える量である。カーボンブラックは組成物の重量に基づき、好ましくは10重量%又はそれより大きく、より好ましくは12重量%又はそれより大きく、最も好ましくは14重量%又はそれより大きい量で使用する。カーボンブラックは組成物の重量に基づき好ましくは35重量%又はそれより小さく、より好ましくは30重量%又はそれより小さく、最も好ましくは20重量%又はそれより小さい量で存在する。
【0027】
本発明の接着剤組成物は、水分の存在下でポリウレタンの硬化を促進することが知られている触媒を更に含むことができる。好ましい触媒としては、金属塩、例えばカルボン酸錫、有機チタン酸塩(例えばアルキルチタネート)、金属カルボキシレート、及びジモルホリノジエチルエーテル又はアルキル置換ジモルホリノジエチルエーテルが挙げられる。好ましくは、触媒は、金属カルボキシレートとジモルホリノジエチルエーテル又はアルキル置換ジモルホリノジエチルエーテルのうち1つとの混合物を含む。好ましい金属カルボキシレートとしては、カルボン酸ビスマスが挙げられる。好ましい触媒には、オクタン酸ビスマス、ジモルホリノジエチルエーテル及び(ジ−(2−(3,5−ジメチルモルホリノ)エチル))エーテルがある。このような触媒を使用する場合には、これらは接着剤組成物の重量に基づき、好ましくは0重量部又はそれより大きく、より好ましくは0.1重量部又はそれより大きく、更に好ましくは0.2重量部又はそれより大きく、最も好ましくは0.4重量部又はそれより大きい量で使用する。このような触媒は接着剤組成物の重量に基づき、好ましくは5重量部又はそれより小さく、より好ましくは1.75重量部又はそれより小さく、更に好ましくは1重量部又はそれより小さく、最も好ましくは0.6重量部又はそれより小さい量で使用する。
【0028】
本発明の接着剤には、先行技術において知られた接着剤組成物用の充填剤及び添加剤を用いて製剤化できる。このような材料の添加によって、粘度、流量などのような物理的性質を改良できる。しかし、ポリウレタンプレポリマーの感湿性基の早期加水分解を防ぐためには、充填剤は混合前に充分に乾燥しなければならない。
【0029】
本発明の接着剤の任意成分としては強化用充填剤が挙げられる。このような充填剤は当業者にはよく知られており、その例としてはカーボンブラック、二酸化チタン、炭酸カルシウム、表面処理シリカ、酸化チタン、ヒュームシリカ、タルクなどが挙げられる。好ましい強化用充填剤は、前述のようなカーボンブラックを含む。一実施態様においては、1種より多い強化用充填剤を使用でき、その一方はカーボンブラックであり、接着剤に所望の黒色を与えるのに充分な量のカーボンブランクを使用する。強化用充填剤は、接着剤の強度を増加させ且つ接着剤にチキソトロープ性を与えるのに充分な量で使用する。
【0030】
接着剤組成物中の任意材料にはクレイがある。本発明において有用な好ましいクレイとしては、カオリン、表面処理カオリン、焼成カオリン、珪酸アルミニウム及び表面処理無水珪酸アルミニウムが挙げられる。クレイは任意の形態で使用でき、ポンプ輸送可能な接着剤の製剤化を容易にする。好ましくは、クレイは粉砕粉、噴霧乾燥ビーズ又は微粉砕粒子の形態である。クレイは、接着剤組成物の0重量部又はそれより大きく、より好ましくは1重量部又はそれより大きく、更に好ましくは6重量部又はそれより大きい量で使用できる。クレイは、好ましくは接着剤組成物の20重量部又はそれより小さく、より好ましくは10重量部又はそれより小さい量で使用する。
【0031】
本発明の接着剤組成物は、更に流動学的性質を所望のコンシステンシーまで改良するように可塑剤を含むことができる。このような材料は、水を含まず、イソシアネート基に対して不活性であり且つポリマーと相溶性でなければならない。適当な可塑剤は当業界でよく知られており、好ましい可塑剤としてはフタル酸アルキル、例えばフタル酸ジオクチル又はフタル酸ジブチル、「HB−40」として市販されている部分水素化テルペン、燐酸トリオクチル、エポキシ可塑剤、トルエン−スルファミド、クロロパラフィン、アジピン酸エステル、ヒマシ油、トルエン及びアルキルナフタレンが挙げられる。接着剤組成物中の可塑剤の量は、望ましい流動学的性質を与える量であって且つ系中に触媒を分散させるのに充分な量である。ここに開示した量は、プレポリマーの製造時及び接着剤の配合時に添加される量を含む。好ましくは、可塑剤は接着剤組成物中に接着剤組成物の重量に基づき、0重量部又はそれより多く、より好ましくは5重量部又はそれより多く、最も好ましくは10重量部又はそれより多い量で使用する。可塑剤は好ましくは、接着剤組成物の総量に基づき45重量部又はそれより少なく、より好ましくは40重量部又はそれより少ない量で使用する。
【0032】
本発明の組成物は、接着剤を水分から保護することによって進行を阻害し且つ接着剤製剤中のイソシアネートの早期架橋を防ぐ働きをする安定剤を更に含むことができる。当業者に知られた水分硬化性接着剤用の安定剤を好ましくは本発明において使用できる。このような安定剤には、ジエチルマロネート、アルキルフェノールアルキレート、パラトルエンスルホン酸イソシアネート、塩化ベンゾイル及び蟻酸オルトアルキルがある。このような安定剤は好ましくは接着剤組成物の総重量に基づき、0.1重量部又はそれより多く、好ましくは0.5重量部又はそれより多く、より好ましくは0.8重量部又はそれより多い量で使用する。このような安定剤は接着剤組成物の重量に基づき、5.0重量部又はそれより少なく、より好ましくは2.0重量部又はそれより少なく、最も好ましくは1.4重量部又はそれより少ない量で使用する。
【0033】
本発明の組成物は米国特許出願公開第2002/0100550号(Mahdi)のパラグラフ0055〜0065及び米国特許第6,015,475号(Hsieh)の5欄第27行目〜6欄第41行目(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示されたような接着促進剤を更に含むことができる。有用であるこのような接着促進剤の量もまた、これらの参考文献中に開示されており、それらを引用することによって本明細書中に組み入れる。
【0034】
接着剤組成物は大気中の水分を組成物中に引き込む働きをする親水性材料を更に含むことができる。この材料は、大気中の水分を組成物中に引き込むことによって、製剤の硬化速度を増大させる。好ましくは、親水性材料は液体である。好ましい吸湿性材料には、ピロリジノン類、例えば商標m−ピロールとして入手可能な1−メチル−2−ピロリジノンがある。親水性材料は好ましくは、0.1重量%又はそれより多く、より好ましくは0.3重量%又はそれより多く且つ好ましくは1.0重量%又はそれより少なく、最も好ましくは0.6重量%又はそれより少ない量で存在する。場合によっては、接着剤組成物はチキソトロープを更に含むことができる。このようなチキソトロープは当業者によく知られており、その例としてはアルミナ、石灰石、タルク、酸化亜鉛、酸化硫黄、炭酸カルシウム、パーライト、天然スレート粉、塩(NaCl)、シクロデキストリンなどが挙げられる。チキソトロープは、望ましい流動学的性質を与えるのに充分な量で接着剤組成物に添加できる。好ましくは、チキソトロープは接着剤組成物の重量に基づき、0重量部又はそれより多く、好ましくは1重量部又はそれより多い量で存在する。好ましくは、任意のチキソトロープは接着剤組成物の重量に基づき、10重量部又はそれより少なく、より好ましくは2重量部又はそれより少ない量で存在する。
【0035】
接着剤組成物によく使用される他の成分も本発明の接着剤組成物中に使用できる。このような材料は当業者にはよく知られており、その例としては、紫外線安定剤及び酸化防止剤などが挙げられる。
【0036】
本明細書中で使用する、接着剤組成物の成分に関する重量部は全て、接着剤組成物合計100重量部に基づくものである。
【0037】
本発明の接着剤組成物は、当業界でよく知られた手段を用いて成分をブレンドすることによって製剤化できる。一般に、成分は適当なミキサー中でブレンドする。このようなブレンドは好ましくは、早期反応を防ぐために不活性雰囲気下で酸素及び大気中水分の不存在下において実施する。イソシアネート含有プレポリマーの製造に関しては、反応混合物を容易に混合及び取り扱いできるように、反応混合物に任意の可塑剤を添加するのが有利である場合がある。あるいは、可塑剤を全成分のブレンドの間に添加することもできる。接着剤組成物が製剤化されたら、大気中水分及び酸素から保護されるように適当な容器中に包装する。大気中水分及び酸素との接触は、ポリウレタンプレポリマーに含まれるイソシアネート基の早期架橋を引き起こすこともあり得る。
【0038】
本発明の接着剤組成物は、前述した種々の基材を接着するのに使用される。この組成物は多孔質基体(下地)と非孔質基体(下地)との接着に使用できる。この接着剤組成物を基体に適用し、その後に第1の基体上の接着剤を第2の基体と接着させる。好ましい実施態様において、接着剤を適用する面は、適用前に清浄し且つ下塗りする。例えば米国特許第4,525,511号;第3,707,521号及び第3,779,794号を参照されたい(これらの全ての関連部分を引用することによって本明細書中に組み入れる)。一般に、本発明の接着剤は周囲温度において大気中水分の存在下で適用する。大気中水分への暴露は、接着剤の硬化を引き起こすのに充分である。硬化は、追加の水の添加によって又は対流熱、マイクロ波加熱などによって硬化性接着剤に熱を適用することによって促進できる。好ましくは、本発明の接着剤は、6分間又はそれより長く、より好ましくは10分間又はそれより長い貼り合わせ時間を提供するように製剤化する。好ましくは、貼り合わせ時間は15分間又はそれより短く、より好ましくは12分間又はそれより短い。
【0039】
接着剤組成物は好ましくは、ガラスを金属又はプラスチックのような他の基体に接着するのに使用する。好ましい一実施態様において、第1の基体はガラス窓であり、第2の基体は窓枠である。別の好ましい実施態様において、第1の基体はガラス窓であり、第2基体は自動車の窓枠である。好ましくは、ガラス窓を清浄にし、ガラス窓の、接着剤が接着される領域にガラスプライマーを適用する。
【0040】
好ましい一実施態様において、本発明の組成物は、建造物又は車両中の窓、最も好ましくは車両の窓の交換に使用する。第1工程は元の窓の取り外しである。これは、古い窓を所定の位置に保持している接着剤のビーズを切り取り、次いで古窓を取り外すことによって行うことができる。その後、新しい窓を清浄にし、下塗りする。窓フランジ上にある古い接着剤は取り除くことができるが、それは必要ではなく、ほとんどの場合そのまま残される。窓フランジには好ましくはペイントプライマーを下塗りする。接着剤は、車両への取り付け時に窓フランジと接触するように配置される窓の周辺にビーズの形態で適用する。次いで、接着剤が配置された窓をフランジ中に入れて、接着剤を窓とフランジとの間に配置させる。接着剤ビーズは、窓と窓フランジとの間の結合部をシールするのに役立つ連続ビーズである。接着剤の連続ビーズは、接触時に窓とフランジとの間に連続シールを形成するようにビーズが各末端でつながるように配置されるビーズである。その後、接着剤を硬化させる。
【0041】
別の実施態様において、本発明の組成物は、モジュール部品を接着するのに使用できる。モジュール部品としては、車両モジュール、例えばドア、窓又はボディーが挙げられる。
【0042】
本明細書中に記載した粘度は、米国特許第5,922,809号(Bhat)の12欄第38行〜第49行(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示された方法に従って測定する。
【0043】
本明細書中に記載した分子量は、米国特許第5,922,809号(Bhat)の12欄第50行〜第64行(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示された方法に従って測定する。
【0044】
ポリウレタンプレポリマーに関する平均イソシアネート官能価は、米国特許第5,922,809号(Bhat)の12欄第65行〜13欄第26行(引用することによって本明細書中に組み入れる)に開示された方法に従って測定する。
【実施例】
【0045】
以下の実施例は本発明を説明するために記載するのであって、本発明の範囲の限定を目的としない。特に断らない限り、全ての部及び百分率は重量に基づく。
【0046】
ポリエーテルプレポリマーの製造
平均分子量2,000のポリオキシプロピレンジオール980gを平均分子量4500のポリオキシプロピレントリオール595g及び平均分子量5400のスチレンアクリロニトリル分散ポリオキシプロピレントリオール455gと混合することによって、ポリエーテルポリウレタンプレポリマーを製造した。混合は、反応器中で混合物を48℃に加熱することによって実施した。この混合物にジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート320g及びオクタン酸第一錫0.17gを添加した。次いで、混合物全体を80℃において1時間反応させた。最後に、混合物にフタル酸ジアリル可塑剤1120gを添加し、混合を1時間続けた。
【0047】
ポリエステルプレポリマー1の製造
フタル酸ジアルキル可塑剤175gを反応器に装入して、48℃に加熱することによって、ポリエステルポリウレタンプレポリマーを製造した。これに、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)108gを添加し、MDIを確実に溶融させるために混合した。次いで、溶融線状コポリエステルジオール(Dynacoll 7381)717gをゆっくりと添加し、30分間反応させた。許容される最大温度は88℃であった。使用したポリエステルは60〜62℃の融点を示した。
【0048】
ポリエステルプレポリマー2の製造
反応器にフタル酸ジアルキル175gを装入して、48℃に加熱することによって、ポリエステルポリウレタンプレポリマーを製造した。これに、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート108gを添加し、MDIを確実に溶融させるために混合した。次いで、溶融線状コポリエステルジオール(Dynacoll 7330)717gをゆっくりと添加し、30分間反応させた。許容される最大温度は88℃であった。使用したポリエステルは80〜85℃の融点を示した。
【0049】
ポリエステルプレポリマー3の製造
反応器にジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート150gを装入して、48℃に加熱することによって、ポリエステルポリウレタンプレポリマーを製造した。次いで、溶融線状ポリエステルジオール(Dynacoll 7360)850gをゆっくりと添加し、混合した。材料を30分間反応させた。最大許容温度は88℃であった。使用したポリエステルは53〜55℃の融点を示した。
【0050】
接着剤の配合
接着剤は全て、以下の配合方法に従って以下の表1及び2に記載した原料の割合を用いて製造した。異なる製剤間の唯一の変更点は、配合温度である。ポリエステルプレポリマーを含まない接着剤は室温で製造し;そうでない場合には、例2〜4の3種のポリエステルポリウレタンプレポリマーに関して混合容器をそれぞれ85℃、85℃及び55℃に加熱した。これら3種のプレポリマーの組合せを用いる場合には、混合容器は更に高い温度に上昇させた。混合容器は、使用するポリエステルポリウレタンプレポリマーに応じて所望の温度に加熱した。適当量のポリエーテルプレポリマー及び多官能価イソシアネート(Desmodur(登録商標)N3300又はPAPT(登録商標)2020)を容器に装入し、真空下で15分間ガス抜きした。次に、ポリエステルポリウレタンプレポリマーを添加し、材料を真空下で更に15分間ガス抜きした。カーボンブラック及びクレイ充填剤を添加し、充填剤がプレポリマーによって充分に湿潤されるまで真空下で低速で5分間混合した。混合速度を増加させ、充填剤を20分間分散させた。最後に、ジモルホリノジエチルエーテル及びオクタン酸ビスマス触媒並びにN−メチルピロリドンを混合容器に加え、混合物を真空下で更に10分間混合した。
【0051】
試験方法
DMA弾性率: 完全に硬化した接着剤の貯蔵弾性率を、TA Instruments製のDMAを用いてASTM Method D4065に従って25℃において測定した。
【0052】
体積抵抗率: 完全に硬化した接着剤の体積抵抗率を、Hewlett Packard 16008B Resistivity及び4339B High Resistance Meterを用いることによって測定した。40mm平方、厚さ2mmのサンプルを、電極と直接接触させて置き、100Vの印加電圧を用いて、体積抵抗率をΩ cmの単位で測定した。5×1010超の値は低抵抗率を有すると見なした。
【0053】
短い硬化時間における貯蔵弾性率(グリーン強度): 接着剤の貯蔵弾性率を、短い硬化時間においてDynamic Stress Rheometer(DSR)を用いて測定した。DSRは、プレート分離高さが1mmである8mmの平行プレートの幾何学的形態を用いて5rad/秒の周波数で応力を適用するようにプログラミングした。接着剤サンプルをプレートに適用し、指示された温度において最初の2時間の間、2分毎に貯蔵弾性率を記録した。
【0054】
高温垂れ試験: 接着剤の重要な性能特性は、適用後に適当なビーズ形状を保持する能力であった。この特性の試験は垂れ試験であった。この試験においては、水平から60°の角度に保持された面に標準コーキングガンを用いて、接着剤の8mm×12mmの二等辺三角形のビーズを計量分配する。許容され得る性能は、ビーズチップのたわみが最小限であることであったが、たわみも変形もないのが好ましい。ここで使用した試験は、80℃において10時間老化後の接着剤について行った。接着剤は、まだ80℃の高温であるうちに計量分配し、垂れの量を、ビーズチップのたわみのmm数として記録した。
【0055】
加圧流動粘度(press flow viscosity): 加圧流動粘度は、細管を通して接着剤20gを押出するのに必要な時間(秒)として測定する。細管の幅を0.203”(25.4mm)に固定した。適用圧力は80psi(5.5×105Pa)である。特に断らない限り、全ての加圧流動粘度値は23±1℃において測定した。
【0056】
結果
表1に、試験した製剤及び結果を記載した。
【0057】
試験した接着剤は室温で計量分配できる(一般に、コーキングガンによって適用される材料の場合には20〜50秒の加圧流動粘度範囲を示す)。
【0058】
ポリエステルプレポリマーを用いない場合又は低融点ポリエステルしか用いない場合(それぞれ、例1及び2)には、材料は80℃において不良な垂れ抵抗性を有する。例3及び4においては、ほんのわずかのこれより融点の高いポリエステル、それぞれポリエステルプレポリマー2及び3を混和することによって、室温粘度に悪影響を与えることなく、垂れの問題が解決された。
【0059】
しかし、G’弾性率は、少量の多官能価イソシアネートの混和によって大きく影響された(例3及び4参照)。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエーテル基材プレポリマー;
b)1種又はそれより多いポリエステルから製造される、融点が40〜59℃の1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマー;
c)3又はそれ以上の公称官能価を有する1種又はそれより多いポリイソシアネート;
d)1種又はそれより多い非導電性カーボンブラック;及び
e)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種又はそれ以上の触媒
を含んでなる組成物。
【請求項2】
プレポリマーの製造に使用される1種又はそれ以上のポリエステルが融点60〜90℃の1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーを更に含む請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート官能性ポリエーテルプレポリマーが有機ポリマーの粒子を含む1種又はそれ以上の分散ポリオールを含む請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
a)1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエーテル基材プレポリマーが25〜55%の量で存在し;
b)プレポリマーの製造に使用される1種又はそれ以上のポリエステルが45〜55℃の融点を有する1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーが1〜5%の量で存在し;
c)1種又はそれ以上の多官能価イソシアネートが1〜8%の量で存在し;
d)1種又はそれ以上の非導電性カーボンブラックが5〜25%の量で存在し;
e)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種又はそれ以上の触媒が0.005〜2%の量で存在し;且つ
f)プレポリマーの製造に使用される1種又はそれ以上のポリエステルが75〜90℃の融点を有する1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーが1〜5%の量で存在する
請求項2又は3に記載の組成物(百分率は組成物の重量に基づく)。
【請求項5】
前記組成物が、硬化時にASTM D4065に従って25℃において測定された弾性率が2.0MPa又はそれより大きく;体積抵抗率が5×1010Ωcm又はそれより大きく;未硬化サンプルの垂れが2mm未満であり;加圧流動粘度が20〜50であり;且つ貯蔵弾性率が5.3×105Pa又はそれより大きい請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
2つ又はそれより多い基体を、基体が接触する領域の少なくとも一部にそって配置された請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物と接触させることを含んでなる2つ又はそれ以上の基体の接着方法。
【請求項7】
前記基体の少なくとも1つが窓ガラスである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
他方の基体の少なくとも1つが建物又は車両である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
i)車両から窓を取り外し;
ii)交換窓に又は窓を車両中に保持するように構成された車両フランジに請求項1〜5のいずれか1項に記載された組成物を適用し;
iii)車両フランジ及び交換窓を、交換窓と車両フランジとの間に配置された組成物と接触させ;そして
iv)接着剤を硬化させる
ことを含んでなる車両窓の交換方法。
e)イソシアネート部分とヒドロキシル基との反応のための1種又はそれ以上の触媒が0.005〜2%の量で存在し;且つ
f)プレポリマーの製造に使用される1種又はそれ以上のポリエステルが60〜90℃の融点を有する1種又はそれ以上のイソシアネート官能性ポリエステルプレポリマーが1〜5%の量で存在する(百分率は組成物の重量に基づく)。

【公表番号】特表2007−503512(P2007−503512A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524737(P2006−524737)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/027004
【国際公開番号】WO2005/019292
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】