説明

車両計量装置

【課題】 車両の重心高さを効率よく求める。
【解決手段】 本発明に係る車両計量システム10は、例えば輸送業者の敷地内の通行路60に沿って直列に配置された水平側計量部20と傾斜側計量部40とを備えている。被計量物としての車両100は、水平側計量部20を通行する際には水平姿勢となり、傾斜側計量部30を通行する際には傾斜姿勢となる。そして、これら水平側計量部20を構成する複数のロードセルから得られる荷重検出値W1a〜W1dおよびW2a〜W2dと、傾斜側計量部40を構成する複数のロードセルから得られる荷重検出値W3a〜W3dと、に基づいて、車両100の総重量値や当該車両100の重心位置,重心高さ等の重心情報が求められる。つまり、車両100にとっては通行路60を通行するだけで自身の総合的な計量が実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両計量装置に関し、特に、車両の重心の高さを求める機能を備えた、車両計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両計量装置として、従来、例えば特許文献1に開示されたものがある。この従来技術によれば、一端が軸支された傾動台と、この傾動台の他端を上下動可能に支持する上下動機構と、当該傾動台上に間隔をおいて配設された少なくとも2つの荷重計と、各荷重計により支持された被測定物用載荷盤と、この載荷盤の傾動台上面に沿った動きのみを規制する規制手段と、が具備されている。この構成において、まず、傾動台上の載荷盤に被計量物としての車両が載置された状態で、当該傾動台が水平姿勢とされ、つまり載荷盤上の車両が水平姿勢とされる。このときに各荷重計から得られる荷重検出値に基づいて、車両の重量と、当該車両の左右方向における重心位置と、が求められる。続いて、傾動台が傾斜姿勢とされ、つまり載荷盤上の車両が傾斜姿勢とされ、このときに各荷重計から得られる荷重検出値と、先に求められた車両の重量および重心位置と、に基づいて、当該車両の重心高さが求められる。なお、規制手段が設けられているので、傾動台が傾動したときでも各荷重計の相対位置が変わらず、従って、測定値にバラツキが生じない、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭63−9606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両計量装置は、例えばトラックスケールに適用される。特に、トラック輸送業界においては、トラックの重量や左右方向における重心位置のみならず、重心高さをも把握することができれば、つまり当該重心に関する情報を立体的に把握することができれば、輸送の安全性の向上に大きく貢献するので、当該重心高さを求める機能を備えた上述の従来技術は、極めて有用である。その一方で、トラック輸送業界においては、輸送の効率化が要求されるため、トラックスケールについても当然に、計量の効率化が要求される。しかし、従来技術では、この計量の効率化の要求に十分に対応することができない。即ち、従来技術では、まず傾動台(載荷盤)にトラックが載置され、この状態で当該トラックの姿勢が傾動台ごと上下動機構によって変えられ、最後に傾動台からトラックが降ろされる。このように傾動台の上下動を含む複数の工程を経て初めてトラックの重心高さが求められるため、1台のトラックに要する計量時間が長く、極めて効率が悪い、という問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも効率よく車両の重心高さを求めることができる車両計量装置を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の車両計量装置は、第1荷重測定手段と、第2荷重測定手段と、重心高さ演算手段と、を具備する。第1荷重測定手段は、被計量物としての車両が第1姿勢で通行するように作られた第1路面の一部を形成する第1計量台を有する。この第1計量台には、車両に属する全ての車輪のうち1軸分のみが左右別々または一緒に載置可能である。この第1計量台に全ての車輪が1軸分ずつ順次載置されることによって、第1荷重測定手段は、車両が第1姿勢にあるときに当該全ての車輪のそれぞれに印加される荷重を測定する。そして、第2荷重測定手段は、車両が第1姿勢とは異なる第2姿勢で通行するように作られた第2路面の一部を形成する第2計量台を有する。この第2計量台には、車両に属する全ての車輪のうち少なくとも左右のいずれか一方側にある一方側車輪が1軸分のみ載置可能である。この第2計量台に全ての一方側車輪が1軸分ずつ順次載置されることによって、第2荷重測定手段は、車両が第2姿勢にあるときに当該全ての一方側車輪のそれぞれに印加される荷重を測定する。さらに、重心高さ演算手段は、第1荷重測定手段から得られる第1荷重測定値と、第2荷重測定手段から得られる第2荷重測定値と、に基づいて、車両の重心の高さを求める。ここで、第1路面と第2路面とは繋がっている。そして、第1姿勢とは、車両の進行方向に対して直角な平面上で、つまり車両の左右方向において、当該車両が水平方向に対して第1角度を成す姿勢である。第2姿勢とは、車両の左右方向において、当該車両が水平方向に対して第1角度とは異なる第2角度を成す姿勢である。
【0007】
この構成によれば、車両が第1計量台を含む第1路面を通行することによって、当該車両が第1姿勢となり、詳しくはその左右方向において水平方向に対して第1角度を成す姿勢となる。そして、このときに、つまり車両が第1姿勢にあるときに、当該車両に属する全ての車輪のそれぞれに印加される荷重が、第1荷重測定手段によって測定される。これと前後して、車両が第1路面に繋がると共に第2計量台を含む第2路面を通行することによって、当該車両が第1姿勢とは異なる第2姿勢となり、詳しくはその左右方向において水平方向に対して第1角度とは異なる第2角度を成す姿勢となる。そして、このときに、つまり車両が第2姿勢にあるときに、当該車両に属する全ての車輪のうち少なくとも左右のいずれか一方側にある全ての一方側車輪のそれぞれに印加される荷重が、第2荷重測定手段によって測定される。そして、これら第1荷重測定手段から得られる第1荷重測定値と、第2荷重測定手段から得られる第2荷重測定値と、に基づいて、車両の重心高さが、重心高さ演算手段によって求められる。即ち、車両にとっては言わば第1路面および第2路面を順次通行するだけで、自身の重心高さが求められる。
【0008】
なお、本発明において、第1角度は、例えば略零であり、第2角度は、鋭角であってもよい。この場合、車両は、第1姿勢として、その左右方向において水平を成した姿勢を取る。そして、第2姿勢として、その左右方向において水平方向に対して鋭角を成すように傾斜した姿勢を取る。
【0009】
このように車両が第1姿勢として水平姿勢を取り、第2姿勢として傾斜姿勢を取る場合、つまりそうなるように第1計量台を含む第1路面と第2計量台を含む第2路面とが形成されている場合は、当該車両がまず第1路面を通行し、その後に第2路面を通行するように、これら第1路面と第2路面とが配されると共に、次のような左右重心位置演算手段と左右重心バランス評価手段と左右重心バランス評価結果出力手段とが設けられるのが、望ましい。即ち、左右重心位置演算手段は、車両が第2路面を通行する前、例えば当該車両が第1路面を通行している最中か若しくは当該車両が第1路面を通行し終えた直後に、上述の第1荷重測定値に基づいて、車両の左右方向における重心位置である左右重心位置を求める。ここで例えば、この左右重心位置が車両の左右方向における中心またはその近傍にあるときは、当該車両の左右方向における重心バランスは比較的に良好である、と言える。一方、左右重心位置が車両の左右方向における中心から離れているとき、特にその離れ度合が大きいほど、当該車両の左右方向における重心バランスが悪く、ひいては車両が転倒する危険性がある。この転倒の危険性は、車両が第2路面を通行するとき、つまり当該車両が第2姿勢としての傾斜姿勢を取るときに、増大する恐れがある。この車両の左右重心位置に起因する転倒の危険性の有無を事前に、つまり車両が第2路面を通行する前に、周囲(計量作業を担う作業者や車両の運転者等)に知らしめるべく、左右重心バランス評価手段が、当該左右重心位置に基づいて車両の左右方向における重心バランスを評価する。そして、左右重心バランス評価結果出力手段が、この左右重心バランス評価手段による評価結果を出力し、特に車両が転倒する危険性が高いときは当該評価結果として警報を出力する。
【0010】
また、第1角度は、鋭角であり、第2角度は、当該第1角度とは逆方向に成す鋭角であってもよい。この場合、車両は、第1姿勢として、その左右方向において水平方向に対して或る方向に鋭角を成すように傾斜した姿勢を取る。そして、第2姿勢として、その左右方向において水平方向に対して第1角度とは逆方向に鋭角を成すように傾斜した姿勢を取る。
【0011】
このように車両が第1姿勢として傾斜姿勢を取り、第2姿勢として当該第1姿勢とは逆方向に傾斜した姿勢を取る構成によれば、次のような利点がある。即ち、車両の重心高さを精確に求めるには、当該車両が第1姿勢にあるときの第1荷重測定値と、当該車両が第2姿勢にあるときの第2荷重測定値と、の相互差が大きいほど好都合である。それには、第1姿勢を形成する第1角度と、第2姿勢を形成する第2角度と、の相互差が大きいことが、必要とされる。そうすると例えば、上述の第1姿勢が水平姿勢であり、第2姿勢が傾斜姿勢である構成では、第1角度が略零であり、第2角度が鋭角であるので、車両の重心高さを精確に求めるには、当該第2角度が大きいことが、必要とされる。ただし、第2角度が過度に大きいと、車両が第2姿勢になったときに、当該車両が転倒する危険性が極めて高い。これに対して、第1姿勢が傾斜姿勢であり、第2姿勢が当該第1姿勢とは逆方向の傾斜姿勢である構成によれば、第1角度および第2角度そのもの(絶対値)が比較的に小さくても、両者の相互差は比較的に大きくなる。例えば、第1角度の絶対値がαという或る値であり、第2角度の絶対値もまたαである、とすると、両者の相互差は2・αとなる。これは、第1姿勢が水平姿勢であり、第2姿勢が傾斜姿勢である構成において、第2角度の値が2・αとされるのと同程度の精度で車両の重心高さを求め得ることを意味し、言い換えれば当該第2角度の値がαとされた場合の約2倍の精度で車両の重心高さを求め得ることを意味する。つまり、第1姿勢が傾斜姿勢であり、第2姿勢が当該第1姿勢とは逆方向の傾斜姿勢である構成によれば、車両の転倒の危険性を抑制しつつ、より高い精度で車両の重心高さを求めることができる。
【0012】
本発明における車両は、駆動車と、この駆動車によって牽引される荷台車と、から成る牽引自動車、いわゆるトレーラ、であってもよい。この場合、トレーラ全体の重心の高さのみならず、荷台車単体の重心の高さ、厳密には当該荷台車単体の重量によるトレーラ全体としての重心の高さをも、求める機能が設けられてもよい。具体的には、次のような駆動車単体荷重値記憶手段と荷台車単体重心情報演算手段とが設けられる。即ち、駆動車単体荷重値記憶手段には、駆動車が荷台車と切り離された単体の状態にありかつ上述の第1姿勢および第2姿勢にそれぞれあるときの当該駆動車単体に属する全ての左側車輪への印加荷重値である駆動車単体左側車輪印加荷重値と、当該駆動車単体に属する全ての右側車輪への印加荷重値である駆動車単体右側車輪印加荷重値とが、予め記憶されている。なお、これら駆動車単体左側車輪印加荷重値と駆動車単体右側車輪印加荷重値とは、例えば事前に求められ、詳しくは駆動車単体のみが被計量物とされたときの第1荷重測定値と第2荷重測定値とに基づいて求められ、より詳しくは当該駆動車単体が第1路面を通行することによって第1姿勢にあるときに得られる第1荷重測定値と当該駆動車単体が第2路面を通行することによって第2姿勢にあるときに得られる第2荷重測定値とに基づいて求められる。そして、荷台車単体重心情報演算手段が、これら駆動車単体左側車輪印加荷重値と駆動車単体右側車輪印加荷重値とに加えて、トレーラ全体が被計量物とされたときの第1荷重測定値と第2荷重測定値とに基づいて、詳しくは当該トレーラ全体が第1路面を通行することによって第1姿勢にあるときに得られる第1荷重測定値と当該トレーラ全体が第2路面を通行することによって第2姿勢にあるときに得られる第2荷重測定値とに基づいて、荷台車単体の重心高さを含む重心情報を求める。
【0013】
さらに、荷台車単体の水平方向における重心の位置、厳密には荷台車単体を上方(または下方)から見たときの当該荷台車単体の重量による平面的な重心の位置、である水平方向重心位置を求める機能が設けられてもよい。具体的には、上述の駆動車単体荷重値記憶手段に加えて、次のような水平方向重心位置演算手段が設けられる。即ち、当該水平方向重心位置演算手段は、駆動車単体荷重値記憶手段に記憶されている駆動車単体左側車輪印加荷重値と駆動車単体右側車輪印加荷重値とに加えて、トレーラ全体が被計量物とされたときの第1荷重測定値に基づいて、水平方向重心位置を求める。
【0014】
なお、この荷台車単体の水平方向重心位置によっては、当該荷台車単体の水平方向における重心バランスが悪く、極端には当該荷台車を含むトレーラ全体が転倒する危険性がある。この荷台車単体の水平方向重心位置に起因する転倒の危険性の有無を周囲に知らしめるべく、次のような荷台車単体重心バランス評価手段と荷台車単体重心バランス評価結果出力手段とが設けられてもよい。即ち、荷台車単体重心バランス評価手段は、荷台車単体の水平重心位置に基づいて当該荷台車単体の水平方向における重心バランスを評価する。そして、荷台車単体重心バランス評価結果出力手段が、この荷台車単体重心バランス評価手段による評価結果を出力し、特にトレーラ全体が転倒する危険性が高いときは当該評価結果として警報を出力する。
【0015】
本発明における第1計量台は、車両の進行方向において、当該車両に属するそれぞれの車輪の接地面長さよりも長い寸法を有するものであってもよい。この場合、車両が第1計量台を含む第1路面を通行する際に、当該車両の或る1軸の車輪が完全に第1計量台のみに載置される状態が形成される。この状態によれば、当該或る1軸の車輪への印加荷重がそのまま第1計量台のみに印加されるので、第1荷重測定手段は、第1計量台のみに印加される荷重を測定することで、当該或る1軸の車輪への印加荷重を測定することができる。そして、この或る1軸の車輪への印加荷重の測定は、例えば当該或る1軸の車輪が完全に第1計量台のみに載置された状態で車両が停止しているとき(静的モード)であっても、当該車両が走行しているとき(動的モード)であっても、可能である。これと同様に、第2計量台もまた、車両の進行方向において、当該車両に属するそれぞれの車輪の接地面長さよりも長い寸法を有するものであってもよい。
【0016】
さらに、第1計量台は、車両の進行方向において、当該車両に属するそれぞれの車輪の接地面長さよりも短い寸法を有するものであってもよい。この場合、車両が第1計量台を含む第1路面を通行する際に、当該車両の或る1軸の車輪が完全に第1計量台のみに載置される状態が形成されることはなく、当該或る1軸の車輪が第1計量台に載置されるときには必ず当該或る1軸の車輪は第1計量台以外の第1路面にも接触する状態になる。この状態によれば、当該或る1軸の車輪への印加荷重が第1計量台と当該第1計量台以外の第1路面とに分散印加されるので、第1荷重測定手段は、静的モードによる測定はできず、動的モードによる測定を行い、詳しくは車両の走行速度をも加味して測定を行う。これと同様に、第2計量台もまた、車両の進行方向において、当該車両に属するそれぞれの車輪の接地面長さよりも短い寸法を有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
上述したように、本発明によれば、車両にとっては第1路面および第2路面を順次通行するだけで、自身の重心高さが求められる。従って、車両の重心高さを求めるのに傾動台の上下動を含む複数の工程を経る必要のある従来技術に比べて、遥かに効率よく当該車両の重心高さを求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る車両計量システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】同第1実施形態における水平側計量部を上方から見た図解図である。
【図3】同水平側計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図4】同第1実施形態における傾斜側計量部を上方から見た図解図である。
【図5】同傾斜側計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図6】同第1実施形態における水平側プロセッサの電気的な構成を示す概略ブロック図である。
【図7】同第1実施形態における傾斜側プロセッサの電気的な構成を示す概略ブロック図である。
【図8】同第1実施形態における車載プロセッサの電気的な構成を示す概略ブロック図である。
【図9】同第1実施形態における水平側プロセッサのメモリ回路内に形成された車両情報一時記憶レジスタの構成を概念的に示す図解図である。
【図10】同第1実施形態における左側輪重値の算出要領を説明するための図解図である。
【図11】同第1実施形態における水平側プロセッサのメモリ回路内に形成された輪重値一時記憶レジスタの構成を概念的に示す図解図である。
【図12】同第1実施形態における水平側プロセッサのメモリ回路内に形成された水平側計量結果一時記憶レジスタの構成を概念的に示す図解図である。
【図13】同第1実施形態における水平側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図14】同第1実施形態における荷台車単体の水平方向における重心位置を求める手順を説明するための図解図である。
【図15】図14におけるX軸方向の力学的要素の相互関係を示す図解図である。
【図16】図14におけるY軸方向の力学的要素の相互関係を示す図解図である。
【図17】図14の別例を示す図解図である。
【図18】同第1実施形態における水平側プロセッサのメモリ回路内に形成された車両情報出力レジスタの構成を概念的に示す図解図である。
【図19】同第1実施形態における水平側プロセッサのメモリ回路内に形成された水平側計量結果出力レジスタの構成を概念的に示す図解図である。
【図20】同第1実施形態における傾斜側プロセッサのメモリ回路内に形成された傾斜姿勢時左側輪重値一時記憶レジスタの構成を概念的に示す図解図である。
【図21】同第1実施形態における傾斜側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図22】同第1実施形態における水平側プロセッサが実行する水平側制御タスクの流れを示すフローチャートである。
【図23】図22における輪重計量タスクの詳細を示すフローチャートである。
【図24】図23に続くフローチャートである。
【図25】同第1実施形態における水平側プロセッサが実行するデータ送信タスクの流れを示すフローチャートである。
【図26】同第1実施形態における傾斜側プロセッサが実行する傾斜側制御タスクの流れを示すフローチャートである。
【図27】同第1実施形態における車載プロセッサが実行する車載制御タスクの流れを示すフローチャートである。
【図28】同第1実施形態における傾斜側計量部の別例を示す図解図である。
【図29】同第1実施形態における水平側計量部の別例を示す図解図である。
【図30】図28のさらに別例を示す図解図である。
【図31】図28および図30のさらに別例を示す図解図である。
【図32】図31の傾斜側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図33】同第1実施形態における水平側計量部のさらに別例を示す図解図である。
【図34】本発明の第2実施形態に係る車両計量システムの水平側計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図35】同第2実施形態における傾斜側計量部の具体的な構成を示す図解図である。
【図36】同第2実施形態における水平側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図37】同第2実施形態における傾斜側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【図38】同第2実施形態における水平側計量部の別例を示す図解図である。
【図39】同第2実施形態における傾斜側計量部の別例を示す図解図である。
【図40】図39のさらに別例を示す図解図である。
【図41】図40の傾斜側計量部に車両が載置された状態を当該車両の左右方向における力学的要素にのみ注目して示す図解図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1実施形態について、図1に示す車両計量システム10を例に挙げて説明する。
【0020】
同図に示すように、本第1実施形態に係る車両計量システム10は、水平側計量部20と、この水平側計量部20と共に第1荷重測定手段を構成する水平側プロセッサ30と、水平側計量部20とは別個の傾斜側計量部40と、当該傾斜側計量部40と共に第2荷重測定手段を構成する傾斜側プロセッサ50と、を備えており、例えば輸送業者の敷地内に設置される。なお、当該敷地内には、被計量物としての車両100を所定の順路に従って(同図においては左側から右側に向かって)通行させるための例えばアスファルト舗装された通行路60が敷設されている。
【0021】
水平側計量部20は、通行路(路面)60の一部を形成するように配置されており、詳しくは自身の構成要素である後述の左側水平計量台210および右側水平計量台220によって当該通行路60のうち第1路面としての後述の水平路面62の一部を形成するように配置されている。そして、この水平側計量部20は、水平側プロセッサ30に接続されており、詳しくは自身の構成要素である後述の各ロードセル212,212,…および222,222,…が、当該水平側プロセッサ30に接続されている。なお、水平側プロセッサ30は、管理室等の屋内に配置されている。
【0022】
傾斜側計量部40もまた、水平側計量部20と同様、通行路60の一部を形成するように配置されており、詳しくは自身の構成要素である後述の左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420によって当該通行路60のうち後述の傾斜路面64の一部を形成するように配置されている。そして、この傾斜側計量部40は、傾斜側プロセッサ50に接続されており、詳しくは自身の構成要素である後述の各ロードセル412,412,…および422,422,…が、当該傾斜側プロセッサ50に接続されている。なお、車両100の通行順路において、傾斜側計量部40は、水平側計量部20よりも前方に配置されている。つまり、車両100が水平側計量部20(左側水平計量台210および右側水平計量台220)を通行した後に傾斜側計量部40(左側傾斜計量台410および右側傾斜計量台420)を通行するように、これら水平側計量部20と傾斜側計量部40とが配置されている。そして、傾斜側プロセッサ50は、水平側プロセッサ30と同じ室内に配置されており、これら水平側プロセッサ30と傾斜側プロセッサ50とは、後述するように相互間で有線による双方向通信が可能とされている。
【0023】
さらに、車両100の通行順路における水平側計量部20の手前には、これから当該水平側計量部20に乗り込もうとする車両100を検知するための第1車両検知手段としての水平側車両検知器70が設置されている。この水平側車両検知器70は、水平側プロセッサ30に接続されている。即ち、水平側車両検知器70は、車両100を検知すると、そのことを表す水平側車両検知信号Saを生成する。そして、この水平側車両検知信号Saは、水平側プロセッサ30に入力される。なお、水平側車両検知器70としては、例えば赤外線反射方式のものが採用されるが、赤外線透過方式のものや、超音波反射方式のもの、超音波透過方式のもの、その他の方式のものも、適宜に採用可能である。
【0024】
これと同様に、車両100の通行順路における傾斜側計量部40の手前にも、これから当該傾斜側計量部40に乗り込もうとする車両100を検知するための第2車両検知手段としての傾斜側車両検知器72が設置されている。そして、この傾斜側車両検知器72は、傾斜側プロセッサ50に接続されている。即ち、傾斜側車両検知器72は、車両100を検知すると、そのことを表す傾斜側車両検知信号Sbを生成する。そして、この傾斜側車両検知信号Sbは、傾斜側プロセッサ50に入力される。
【0025】
加えて、車両100の通行順路における水平側計量部20と傾斜側計量部40との間には、警報出力手段としての警報器80が設置されている。この警報器80は、水平側プロセッサ30に接続されている。即ち、警報器80は、水平側プロセッサ30から後述する警報信号Scが入力されると、これに応答して警報を発する。なお、警報器80としては、当該警報をサイレンや音声等の聴覚的態様によって発するものであってもよいし、光や文字等の視覚的態様によって発するものであってもよい。
【0026】
なお、ここで言う車両100は、例えば駆動車102と当該駆動車102によって牽引される荷台車104とから成るトレーラであり、詳しくは2軸の駆動車102と2軸の荷台車104とから成る合計4軸のセミトレーラである。そして、この車両100の運転席付近(駆動車102)には、車載プロセッサ90が設置されている。この車載プロセッサ90は、後述するように水平側プロセッサ30および傾斜側プロセッサ50のそれぞれとの間で無線による双方向通信が可能とされており、そのためのアンテナ902を有している。これと同様に、水平側プロセッサ30も、アンテナ302を有しており、傾斜側プロセッサ50もまた、アンテナ502を有している。
【0027】
以下、より具体的に説明すると、水平側計量部20は、図2に示すように、上述した水平路面62の一部を形成する第1左側計量台としての左側水平計量台210と第1右側計量台としての右側水平計量台220とを有している。これら左右2つの水平計量台210および220は、車両100の進行方向(図2において左側から右側に向かう方向)を直角に横切る方向に沿って、言わば横並びに、配置されている。そして、これら各水平計量台210および220を含む水平路面62は、当該各水平計量台210および220の後方(手前)側にL10という距離にわたって形成されており、当該各水平計量台210および220の前方側にL20という距離にわたって形成されている。なお、この水平路面62の後方側距離L10および前方側距離L20は、いずれも車両100の最遠軸距(最前輪軸である第1軸から最後輪軸である第4軸までの距離)La以上(L10≧La,L20≧La)であり、この条件が満足されれば、互いに同等(L10=L20)であってもよいし、そうでなくても(L10≠L20)よい。
【0028】
さらに図3を参照して、左側水平計量台210は、これに車両100の任意の1軸分の左側車輪(タイヤ)110のみが載置可能に構成されており、右側水平計量台220は、これに当該任意の1軸分の右側車輪120のみが載置可能に構成されている。詳しくは、各水平計量台210および220は、互いに同一形状かつ同一寸法の概略矩形の金属製平板であり、それぞれの一方主面が上面として真上に向けられると共に、それぞれの他方主面が下面として真下に向けられ、併せて、車両100の進行方向に沿う直線、例えば水平路面62の中央線62a、に関して線対称の位置関係にあり、かつ、それぞれの一側縁が当該中央線62aを挟んで互いに平行を成すように、設けられている。そして、車両100の進行方向における各水平計量台210および220それぞれの寸法、言わば長さ寸法L21は、同方向における各車輪110および120それぞれの接地面の寸法、言わば接地面長さLb、よりも大きい(L21>Lb)。また、車両100の進行方向を直角に横切る方向における各水平計量台210および220それぞれの寸法、言わば幅寸法L22は、同方向における各車輪110および120それぞれの寸法、言わば接地面幅Ld、よりも大きい(L22>Ld)。なお、各水平計量台210および220間の距離、例えば当該各水平計量台210および220それぞれの外方側側縁間の距離L23は、車両100の左右両車輪110および120間の距離(中心間距離)Leと当該各車輪110および120それぞれの接地面幅Ldとを加味して、適宜に定められる。加えて、図示は省略するが、各水平計量台210および220は、リブ等の適当な補強部材によって補強されている。
【0029】
そして、左側水平計量台210は、上述の如く水平路面62の一部を形成するように、厳密にはその上面が当該上面以外の水平路面62と共に一連の水平面62bを形成するように、複数の、例えば4つの、第1左側荷重検出手段としてのロードセル212,212,…によって支持されている。このため、水平路面62(通行路60)には、概略矩形穴状のピット612が形成されており、このピット612内において、当該左側水平計量台210が各ロードセル212,212,…によって支持されている。各ロードセル212,212,…は、互いに同一仕様のものであり、詳しくは概略柱状の起歪体を有し、この起歪体の荷重受け部である両端部が概略球状に突出した構造のいわゆるダブルコンベックス型のものである。これら各ロードセル212,212,…は、左側水平計量台210の下面の四隅近傍において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該左側水平計量台210の下面とピット612の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。なお、左側水平計量台210の下面と各ロードセル212,212,…(起歪体)の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、言わば可動的に接合されている。そして、この左側水平計量台210の下面における各ロードセル212,212,…の上方側端部との接触(接合)部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。また、ピット612の底面と各ロードセル212,212,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、言わば可動的に接合されている。そして、このピット612の底面における各ロードセル212,212,…の下方側端部との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。このような構成とされることで、左側水平計量台210が車両100(左側車輪110)の載荷によって撓んだとしても、この撓みに応じて各ロードセル212,212,…(起歪体)が傾転して、当該各ロードセル212,212,…への横荷重の作用が緩和され、この横荷重に起因する各ロードセル212,212,…による計量精度の低下が抑制される。左側水平計量台210の撓みが解消されると、各ロードセル212,212,…は元の直立姿勢に復帰する。
【0030】
右側水平計量台220も同様に、その上面が当該上面以外の水平路面62と共に一連の水平面62bを形成するように、上述したのとは別の概略矩形穴状のピット622内において、4つの第1右側荷重検出手段としてのロードセル222,222,…によって支持されている。これらの言わば右側ロードセル222,222,…は、上述の左側ロードセル212,212,…と同一仕様のものであり、右側水平計量台220の下面の四隅近傍において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該右側水平計量台220の下面とピット622の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。そして、右側水平計量台220の下面と各右側ロードセル222,222,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、当該右側水平計量台220の下面における各右側ロードセル222,222,…との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。また、ピット622の底面と各右側ロードセル222,222,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、当該ピット622の底面における各右側ロードセル222,222,…の下方側端部との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。
【0031】
なお、左側水平計量台210に車両100の任意の1軸分の左側車輪110が載置されると、必然的に、同じ軸の右側車輪120が右側水平計量台220に載置される。それ以外の左側車輪110,110,…および右側車輪120,120,…は、いずれも各水平計量台210および220には載置されず、当該各水平計量台210および220(の上面)以外の水平路面62に接地される。このとき、車両100は、特に図3(c)に示すように、その進行方向に対して直角な平面上(図3(c)の紙面に沿う平面上)で、つまり当該車両100の左右方向において、水平の姿勢となる。また、車両100の進行方向においても、つまり前後方向においても、当該車両100は水平姿勢となる。
【0032】
各左側ロードセル212,212,…には、LC1a,LC1b,LC1cおよびLC1dという個別の識別符号が付されている。例えば、図3(b)に示すように、左側水平計量台210の左側後部隅(図3(b)において左上隅)に配置されたロードセル212に、LC1aという識別符号が付されており、当該左側水平計量台210の右側後部隅(図3(b)において左下隅)に配置されたロードセル212に、LC1bという識別符号が付されている。そして、左側水平計量台210の左側前部隅(図3(b)において右上隅)に配置されたロードセル212に、LC1cという識別符号が付されており、当該左側水平計量台210の右側前部隅(図3(b)において右下隅)に配置されたロードセル212に、LC1dという識別符号が付されている。これ以降、各左側ロードセル212,212,…については、当該LC11,LC12,LC13およびLC14という識別符号を用いて表現することがある。
【0033】
また、各右側ロードセル222,222,…には、LC2a,LC2b,LC2cおよびLC2dという個別の識別符号が付されている。例えば、右側水平計量台220の右側後部隅(図3(b)において左下隅)に配置されたロードセル222に、LC2aという識別符号が付されており、当該右側水平計量台220の左側後部隅(図3(b)において左上隅)に配置されたロードセル222に、LC23bいう識別符号が付されている。そして、右側水平計量台220の右側前部隅(図3(b)において右下隅)に配置されたロードセル222に、LC2cという識別符号が付されており、当該右側水平計量台220の左側前部隅(図3(b)において右上隅)に配置されたロードセル222に、LC2dという識別符号が付されている。これ以降、各右側ロードセル222,222,…については、当該LC2a,LC2b,LC2cおよびLC2dという識別符号を用いて表現することがある。
【0034】
各左側ロードセルLC1a,LC1b,LC1cおよびLC1dは、左側水平計量台210を介して自身に印加される荷重の大きさを表すデジタル荷重検出信号W1a,W1b,W1cおよびW1dを出力する。これらの言わば左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dは、水平側プロセッサ30に入力される。なお、これらの左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dには、左側水平計量台210による荷重のように最初から各左側ロードセルLC1a〜LC1dに印加されている荷重成分、いわゆる初期荷重成分と、周囲温度等の環境による零点変動成分とが、含まれている。ただし、ここでは、説明の便宜上、これら初期荷重成分および零点変動成分については、各左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dから排除されているものとする。
【0035】
これと同様に、各右側ロードセルLC2a,LC2b,LC2cおよびLC2dは、右側水平計量台220を介して自身に印加される荷重の大きさを表す右側デジタル荷重検出信号W2a,W2b,W2cおよびW2dを出力する。そして、これらの右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dもまた、水平側プロセッサ30に入力される。なお、これらの右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dにも、初期荷重成分および零点変動成分が含まれているが、ここでは、当該初期荷重成分および零点変動成分については、各右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dから排除されているものとする。
【0036】
一方、傾斜側計量部40は、図4に示すように、上述した傾斜路面64の一部を形成する第2左側計量台としての左側傾斜計量台410と第2右側計量台としての右側傾斜計量台420とを有している。これら左右2つの傾斜計量台410および420もまた、水平側計量部20を構成する左右2つの水平計量台210および220と同様、車両100の進行方向を直角に横切る方向に沿って横並びに配置されている。そして、これら各傾斜計量台410および420を含む傾斜路面64は、当該各傾斜計量台410および420の後方側にL30という距離にわたって形成されており、当該各傾斜計量台410および420の前方側にL40という距離にわたって形成されている。なお、この傾斜路面64の後方側距離L30および前方側距離L40もまた、車両100の最遠軸距La以上(L30≧La,L40≧La)であり、この条件が満足されれば、互いに同等(L30=L40)であってもよいし、そうでなくても(L30≠L40)よい。
【0037】
さらに図5を参照して、左側傾斜計量台410は、これに車両100の任意の1軸分の左側車輪110のみが載置可能に構成されており、右側傾斜計量台420は、これに当該任意の1軸分の右側車輪120のみが載置可能に構成されている。詳しくは、各傾斜計量台410および420は、互いに同一形状かつ同一寸法の金属製傾斜台であり、それぞれの上面は、傾斜面とされており、それぞれの下面(厳密には後述する各ロードセル412,412,…,422,422,…の上方側端部との接触部分およびその周辺部分)は、水平面とされている。特に上面は、これを上方から見ると概略矩形であり、後方から見ると水平方向に対して反時計回りにθという所定の角度だけ傾斜している。なお、この傾斜角度θは、鋭角であり、例えば10度である。そして、これら各傾斜計量台410および420は、これらを上方から見ると、車両100の進行方向に沿う直線、例えば傾斜路面64の中央線64a、に関して線対称の位置関係にあり、かつ、それぞれの一側縁が当該中央線64aを挟んで互いに並行を成すように、設けられている。なお、各傾斜計量台410および420それぞれの長さ寸法L41は、上述した各車輪110および120それぞれの接地面長さLbよりも大きい(L41>Lb)。また、各傾斜計量台410および420それぞれの幅寸法L42は、上述した各車輪110および120それぞれの接地面幅Ldよりも大きい(L42>Ld)。そして、各傾斜計量台410および420間の距離、例えば当該各傾斜計量台410および420それぞれの外方側側縁間の距離L43は、車両100の左右両車輪110および120間の距離Leと当該車輪110および120それぞれの接地面幅Ldとを加味して、適宜に定められる。加えて、各傾斜計量台410および420もまた、図示しないリブ等の適当な補強部材によって補強されている。
【0038】
左側傾斜計量台410は、上述の如く傾斜路面64の一部を形成するように、厳密にはその上面が当該上面以外の傾斜路面64と共に一連の傾斜面64bを形成するように、複数の、例えば4つの、第2左側荷重検出手段としてのロードセル412,412,…によって支持されている。このため、傾斜路面64(通行路60)には、概略矩形穴状のピット632が形成されており、このピット632内において、当該左側傾斜計量台410が各ロードセル412,412,…によって支持されている。この左側傾斜計量台410を支持する言わば傾斜側ロードセル412,412,…は、上述した左側ロードセル212,212,…および右側ロードセル222,222,…と同一仕様のものであり、左側傾斜計量台410の下面の四隅近傍において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該左側傾斜計量台410の下面とピット632の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。なお、左側傾斜計量台410の下面と各傾斜側ロードセル412,412,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、当該左側傾斜計量台410の下面における各傾斜側ロードセル412,412,…との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。また、ピット632の底面と各傾斜側ロードセル412,412,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、当該ピット64の底面における各傾斜側ロードセル412,412,…の下方側端部との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。
【0039】
右側傾斜計量台420も同様に、その上面が当該上面以外の傾斜路面64と共に一連の傾斜面64bを形成するように、別のピット642内において、4つの第2右側荷重検出手段としてのロードセル422,422,…によって支持されている。ただし、これらのロードセル422,422,…は、上述の各ロードセル212,212,…,222,222,…,412,412,…と同一仕様の起歪体を有するものの、図示しない歪ゲージを有しない、つまり荷重検出機能を有しない、いわゆるダミーである。これらのダミーロードセル422,422,…は、右側傾斜計量台420の下面の四隅近傍において、それぞれの起歪体が直立姿勢で当該右側傾斜計量台420の下面とピット642の底面との間に挟まれた状態になるように配置されている。そして、右側傾斜計量台420の下面と各ダミーロードセル422,422,…の上方側端部とは、単に接触した状態にあり、当該右側傾斜計量台420の下面における各ダミーロードセル422,422,…との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。また、ピット642の底面と各ダミーロードセル422,422,…の下方側端部とについても、単に接触した状態にあり、当該ピット642の底面における各ダミーロードセル422,422,…の下方側端部との接触部分は、その周辺部分を含め水平な平面とされている。
【0040】
なお、左側傾斜計量台410に車両100の任意の1軸分の左側車輪110が載置されると、必然的に、同じ軸の右側車輪120が右側傾斜計量台420に載置される。それ以外の左側車輪110,110,…および右側車輪120,120,…は、いずれも各傾斜計量台210および220には載置されず、当該各傾斜計量台210および220(の上面)以外の傾斜路面64に接地される。このとき、車両100は、特に図5(b)に示すように、これを後方から見ると、水平方向に対して反時計回りに上述の角度θだけ傾斜した姿勢となる。ただし、車両100の前後方向においては、当該車両100は水平姿勢となる。
【0041】
各傾斜側ロードセル412,412,…には、LC3a,LC3b,LC3cおよびLC3dという個別の識別符号が付されている。例えば、図3(a)に示すように、左側傾斜計量台410の左側後部隅(図3(a)において左上隅)に配置されたロードセル412に、LC3aという識別符号が付されており、当該左側傾斜計量台410の右側後部隅(図3(a)において左下隅)に配置されたロードセル412に、LC3bという識別符号が付されている。そして、左側傾斜計量台410の左側前部隅(図3(a)において右上隅)に配置されたロードセル412に、LC3cという識別符号が付されており、当該左側傾斜計量台410の右側前部隅(図3(a)において右下隅)に配置されたロードセル412に、LC3dという識別符号が付されている。これ以降、各傾斜側ロードセル412,412,…については、当該LC3a,LC3b,LC3cおよびLC3dという識別符号を用いて表現することがある。なお、各ダミーロードセル422,422,…については、特段に識別符号等は付されていない。また、図3においては、その見易さを考慮して、図2(a)に示したような横方から見た図は省略してある。
【0042】
各傾斜側ロードセルLC3a,LC3b,LC3cおよびLC3dは、左側傾斜計量台410を介して自身に印加された荷重の大きさを表す言わば傾斜側デジタル荷重検出信号W3a,W3b,W3cおよびW3dを出力する。そして、これらの傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dは、傾斜側プロセッサ50に入力される。なお、これらの傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dにも、初期荷重成分および零点変動成分が含まれているが、ここでは、当該初期荷重成分および零点変動成分については、各傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dから排除されているものとする。
【0043】
水平側プロセッサ30は、図6に示すように、水平側計量部20の各左側ロードセルLC1a〜LC1dからの左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dと、当該水平側計量部20の各右側ロードセルLC2a〜LC1dからの右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dと、の入力を受け付ける入出力インタフェース(I/O)回路304を有している。この入出力インタフェース回路304に入力された各デジタル荷重検出信号W1a〜W1dおよびW2a〜W2dは、当該入出力インタフェース回路304を経由してさらに水平側演算手段としてのCPU(Central
Processing Unit)306に入力される。また、CPU306には、上述の水平側車両検知器70からの水平側車両検知信号Saも、当該入出力インタフェース回路304経由で入力される。
【0044】
CPU306は、これに付随されたメモリ回路308に記憶されている水平側制御プログラムに従って動作し、この動作の1つとして、後述するように警報信号Scを生成する。この警報信号Scは、入出力インタフェース回路304を経由して上述の警報器80に入力される。また、CPU306は、入出力インタフェース回路304および無線通信回路310を介して、上述のアンテナ302と接続されている。無線通信回路310は、アンテナ302を用いての双方向の無線通信処理を担い、つまり変調処理および復調処理を担う。さらに、CPU306は、入出力インタフェース回路304および通信制御回路312を介して、傾斜側プロセッサ50と有線接続されており、詳しくは当該傾斜側プロセッサ50の後述するCPU504と接続されている。通信制御回路312は、傾斜側プロセッサ50との間で所定の通信規格に従ってデータ通信を行うための処理を担う。加えて、CPU306は、入出力インタフェース回路304を介して、当該CPU306に各種命令を入力する水平側命令入力手段としての操作キー314と、当該CPU306の動作に応じて各種情報を表示する水平側表示手段としてのディスプレイ316と、に接続されている。なお、操作キー314とディスプレイ316とは、互いに一体化されたものでもよく、例えばタッチスクリーンによって構成されてもよい。
【0045】
傾斜側プロセッサ50は、図7に示すように、傾斜側計量部40の各傾斜側ロードセルLC3a〜LC3dからの傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dの入力を受け付ける入出力インタフェース回路506を有している。この入出力インタフェース回路506に入力された各傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dは、当該入出力インタフェース回路506を経由してさらに傾斜側演算手段としてのCPU504に入力される。また、CPU504には、上述の傾斜側車両検知器72からの傾斜側車両検知信号Sbも、当該入出力インタフェース回路506経由で入力される。
【0046】
CPU504は、これに付随されたメモリ回路508に記憶されている傾斜側制御プログラムに従って動作する。このCPU504の動作の詳細については、後述する。また、CPU504は、入出力インタフェース回路506および無線通信回路510を介して、上述のアンテナ502と接続されている。さらに、CPU504は、入出力インタフェース回路506および通信制御回路512を介して、水平側プロセッサ30と有線接続されており、詳しくは当該水平側プロセッサ30のCPU306と接続されている。加えて、CPU504は、入出力インタフェース回路506を介して、当該CPU504に各種命令を入力する傾斜側命令入力手段としての操作キー514と、当該CPU504の動作に応じて各種情報を表示する傾斜側表示手段としてのディスプレイ516と、に接続されている。なお、この傾斜側プロセッサ50の操作キー514とディスプレイ516とについても、互いに一体化されたものでもよく、例えばタッチスクリーンによって構成されてもよい。また、無線通信回路510および通信制御回路512は、水平側プロセッサ30のものと同様のものである。
【0047】
さらに、車載プロセッサ90は、図8に示すように、上述したアンテナ902を有している。このアンテナ902は、例えば車載プロセッサ90の筐体の外部に設けられるが、当該筐体の内部に設けられてもよい。そして、このアンテナ902は、無線通信回路904および入出力インタフェース回路906を介して、車載演算手段としてのCPU908に接続されている。CPU908は、これに付随されたメモリ回路910に記憶されている車載制御プログラムに従って動作する。このCPU908の動作の詳細については、後述する。また、CPU908は、入出力インタフェース回路906を介して、当該CPU908に各種命令を入力する車載命令入力手段としての操作キー912と、当該CPU908の動作に応じて各種情報を表示する車載表示手段としてのディスプレイ914と、に接続されている。なお、これら操作キー912とディスプレイ914とについても、互いに一体化されたものでもよく、例えばタッチスクリーンによって構成されてもよい。無線通信回路904は、水平側プロセッサ30および傾斜側プロセッサ50それぞれのものと同様のものである。
【0048】
加えて、CPU908には、入出力インタフェース回路906を介して、ICカードリーダ916が接続されている。このICカードリーダ916は、携帯可能なICカード92からこれに記録されている車両100に関する各種情報(諸元)、言わば車両情報、を読み取るものである。車両情報としては、例えば車両100毎に付与された個別の車両識別コードIDと、当該車両100の全車軸数Mと、左右の両車輪110および120間の距離(中心間距離)Leと、が含まれている。また、駆動車102と荷台車104との連結部である後述のカプラ(第5輪)Cから当該荷台車104の前輪軸に当たる第3軸までの相互間距離Lfと、当該カプラCから荷台車104の後輪軸に当たる第4軸までの相互間距離Lgと、も含まれている。さらに、駆動車102が荷台車104と切り離された単体の状態で上述の水平側計量部20(左側水平計量台210および右側水平計量台220)に載置された水平姿勢にあるときの当該駆動車102単体に属する全て(駆動車102の前輪軸および後輪軸に当たる第1軸および第2軸)の左側車輪110および110のそれぞれに印加される荷重値、言わば駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W11kおよびW12kと、当該駆動車102単体に属する全ての右側車輪120および120のそれぞれに印加される荷重値、言わば駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W21kおよびW22kとが、車両情報として含まれている。そして、駆動車102が単体の状態で上述の傾斜側計量部40(左側傾斜計量台410および右側傾斜計量部420)に載置された傾斜姿勢にあるときの当該駆動車102単体に属する全ての左側車輪110および110のそれぞれに印加される荷重値、言わば駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W31kおよびW32kも、車両情報として含まれている。なお、ここでの全車軸数Mは、M=4である。そして、駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W11kおよびW12kと駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W21kおよびW22kと駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W31kおよびW32kとは、後述するように本第1実施形態の車両計量システム10によって事前に求められる。また、ICカード92は、例えばRFID(Radio Frequency
IDentification)タグを用いた非接触型のものであるが、これに代えて、外部端子を有する接触型のものであってもよい。
【0049】
併せて、CPU908には、入出力インタフェース回路906を介して、図示しない外部装置の1つであるカーナビゲーション装置も接続されている。そして、このカーナビゲーション装置から、車両100の現在位置や当該車両100が実際に通行する道路に関する情報、言わばカーナビゲーション情報が、入出力インタフェース回路906経由でCPU908に入力される。このカーナビゲーション情報は、後述するように、本第1実施形態の車両計量システム10による一連の計量を終えた車両100が実際の輸送業務に就く際に当該車両計量システム10による計量結果と絡めて利用される。
【0050】
また、CPU908には、入出力インタフェース回路906を介して、図示しない別の外部装置である車速計が接続されている。そして、この車速計から、車両100の走行速度に関する車速情報が、入出力インタフェース回路906経由でCPU908に入力される。この車速情報もまた、後述するように、本第1実施形態の車両計量システム10による一連の計量を終えた車両100が実際の輸送業務に就く際に利用される。
【0051】
さて、本第1実施形態の車両計量システム10によれば、車両100の総重量値Wtを求めることができる。併せて、車両100全体の重心Gの位置、厳密には当該車両100の左右方向における重心Gの位置、を求めることができると共に、当該重心Gの高さHを求めることができる。つまり、車両100全体の重心Gに関する立体的な情報を求めることができる。さらに、車両100全体ではなく、荷台車104単体の重心G’の位置、厳密には当該荷台車104単体の重量Wt’による車両100全体としての左右方向における重心G’の位置、を求めることができると共に、当該重心G’の高さH’を求めることができる。つまり、荷台車104単体の重心G’に関しても、その立体的な情報を求めることができる。加えて、荷台車104単体の水平方向における重心G”の位置、厳密には荷台車104単体を上方(または下方)から見たときの当該荷台車104単体の重量Wt’による平面的な重心G”の位置、を求めることができる。
【0052】
この一連の計量を実現するために、まず、車両100の運転者または同乗者による手動操作によって、上述のICカード92が車載プロセッサ90のICカードリーダ916の読み取り部にタッチされる。これにより、ICカード92内の車両情報がICカードリーダ916によって読み取られる。読み取られた車両情報は、車載プロセッサ90のメモリ回路910に記憶され、厳密にはCPU908による制御によって当該メモリ回路910に記憶される。
【0053】
その後、車両100は、通行路60を上述した所定の順路に従って通行する。そして、車両100が、水平側計量部20の手前に差し掛かり、水平側車両検知器70によって検知されると、このことが、当該水平側車両検知器70から出力される水平側車両検知信号Saによって水平側プロセッサ30に伝えられ、厳密にはCPU306に伝えられる。これを受けて、水平側プロセッサ30(CPU306)は、車載プロセッサ90に対して車両情報の送信を要求する。この要求は、無線通信によって行われる。
【0054】
車載プロセッサ90(CPU906)は、水平側プロセッサ30からの要求を受けると、これに応答して、メモリ回路910に記憶されている車両情報を読み出し、これを無線通信によって水平側プロセッサ30に送信する。水平側プロセッサ30は、車載プロセッサ90から送信されてきた車両情報を受信すると、これを一旦、メモリ回路308に記憶し、詳しくは当該メモリ回路308の記憶領域に形成された図9に示す車両情報一時記憶レジスタRa0に記憶する。これにより、水平側プロセッサ30は、これから計量対象となる車両100の車両情報を認識し、つまり当該車両100の識別コードIDと、全車軸数Mと、左右両車輪110および120間距離Leと、カプラCから第3軸までの相互間距離Lfと、カプラCから第4軸までの相互間距離Lgと、駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W11kおよびW12kと、駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W21kおよびW22kと、駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W31kおよびW32kと、を認識する。
【0055】
そして、車両100が水平側計量部20を通行すると、つまりまず当該車両100の第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されると共に、当該第1軸の右側車輪120が右側水平計量台220に載置されると、このうちの左側水平計量台210を支持する各左側ロードセルLC1a〜LC1dから、それぞれに印加される荷重の大きさを表す左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dが出力される。併せて、右側水平計量台220を支持する各右側ロードセルLC2a〜LC2dから、それぞれに印加される荷重の大きさを表す右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dが出力される。そして、これら各左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dおよび各右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dは、水平側プロセッサ30に入力される。
【0056】
ここで、各左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dについて、ゼロ調整およびスパン調整が適切に成されており、当該各左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dは、それぞれに対応する左側ロードセルLC1a〜LC1dへの印加荷重値そのものを表す、とする。水平側プロセッサ30は、これら各左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dを合算することで、車両100の第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されたことによる各左側ロードセルLC1a〜LC1dへの総合の印加荷重値、厳密にはその検出値W11(=W1a+W1b+W1c+W1d)、を求める。この言わば左側荷重検出値W11は、水平姿勢にある車両100の第1軸の左側車輪110への印加荷重値、いわゆる輪重値、を表す。
【0057】
より具体的に説明すると、今、図10(a)に示すように、車両100の第1軸の左側車輪110が同図の左側から右側に向かって移動する、とする。すると、この第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210に乗り込み始めた時点t0で、当該左側水平計量台210の後部側を支持する2つの左側ロードセルLC1aおよびLC1bによる荷重検出値W1aおよびW1bの合算値、言わば後部側荷重検出値W1ab(=W1a+W1b)が、図10(b)に太実線で示す如く急激に増大し始める。併せて、左側水平計量台210の前部側を支持する残り2つの左側ロードセルLC1cおよびLC1dによる荷重検出値W1cおよびW1dの合算値、言わば前部側荷重検出値W1cd(=W1c+W1d)もまた、図10(b)に太破線で示す如く増大し始める。ただし、前部側荷重検出値W1cdの増大度合(速度)は、後部側荷重検出値W1abの増大度合よりも緩やかである。そして、第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210に完全に乗り込み終えた或る時点t1で、後部側荷重検出値W1abが最大となり、これ以降、当該後部側荷重検出値W1abは第1軸の左側車輪110が移動(前進)するに連れて緩やかに低下する。一方、前部側荷重検出値W1cdは、当該時点t1以降も緩やかに増大し続け、第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210から降り始める直前の或る時点t2で、最大になる。そして、当該時点t2以降、前部側荷重検出値W1cdは急激に低下し、第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210から完全に降り終えた時点t3でゼロになる。後部側荷重検出値W1abは、時点t2以降も緩やかに低下し続け、時点t3でゼロになる。
【0058】
このように後部側荷重検出値W1abおよび前部側荷重検出値W1cdが推移することに着目して、零よりも大きい適当な閾値Wr(Wr>0)が設定されると共に、1よりも大きい適当な基準比率β(β>1)が設定される。その上で、水平側プロセッサ30は、後部側荷重検出値W1abが閾値Wrを越えた(W1ab>Wr)時点t0’以降で、当該後部側荷重検出値W1abと前部側荷重検出値W1cdとの比率、言わば後部対前部の荷重比率W1ab/W1cdが、基準比率βを下回る(W1ab/W1cd<β)時点taを捉える。そして、この時点taを基点として、次の式1に基づく演算をΔTという一定の周期で繰り返し行う。
【0059】
《式1》
W11’=W1ab+W1cd=W1a+W1b+W1c+W1d
【0060】
この式1によって求められるW11は、第1軸の左側車輪110の輪重値を表し、厳密には仮の輪重値を表す。なお、この仮の輪重値W11の算出周期、言い換えれば各左側ロードセルLC1a〜LC1dからの各左側デジタル荷重検出信号W1a〜W1dの取得周期、であるΔTは、第1軸の左側車輪110が上述の時点taに対応する左側水平計量台210の或る位置Paから次に説明する時点tbに対応する当該左側水平計量台210の或る位置Pbに移動するまでに要する平均的な時間よりも遥かに短い時間間隔であり、例えばΔT=1msである。また、閾値Wrは、第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210に乗り込んだか否かの判定基準となる適当な値とされ、基準比率βは、後部対前部荷重比率W1ab/W1cdに応じて適当に設定される。
【0061】
次いで、水平側プロセッサ30は、後部対前部荷重比率W1ab/W1cdの逆数である前部対後部荷重比率W1cd/W1abが基準比率βを超える(W1cd/W1ab>β)時点tbを捉える。そして、この時点tbで、式1に基づく演算を終了する。その上で、水平側プロセッサ30は、それまで当該式1に基づく演算によって求められた仮の輪重値W11’の平均値を求め、この平均値を最終的な輪重値W11として決定する。
【0062】
ただし、車両100(第1軸の左側車輪110)の移動速度が極端に遅かったり、当該車両100の第1軸の左側車輪100が左側水平計量台210に載置された状態で当該車両100が停止したりした場合には、いつまで立っても時点tbが到来せずに、式1に基づいて求められた仮の輪重値W11’の数が膨大になる。そこで、水平側プロセッサ30は、所定の制限時間T0を設け、時点ta以降、時点tbが到来する前に当該制限時間T0が経過した場合は、式1に基づく演算を即刻終了する。そして、この制限時間T0内に求められた仮の輪重値W11’の平均値を最終的な輪重値W11として決定する。
【0063】
一方、各右側ロードセルLC2a〜LC2dから得られる各右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dについても、ゼロ調整およびスパン調整が適切に成されており、当該各右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dは、それぞれに対応する右側ロードセルLC2a〜LC2dへの印加荷重値そのものを表す、とする。水平側プロセッサ30は、これら各右側デジタル荷重検出信号W2a〜W2dを合算することで、詳しくは図10を参照しながら説明したのと同様の要領で、車両100の第1軸の右側車輪120が右側水平計量台220に載置されたことによる各右側ロードセルLC2a〜LC2dへの総合の印加荷重値、厳密にはその検出値W21、を求める。この言わば右側荷重検出値W21は、水平姿勢にある車両100の第1軸の右側車輪120の輪重値を表す。
【0064】
そして、車両100がさらに移動(前進)して、当該車両100の第1軸の左側車輪110が左側水平計量台210から降りると共に、当該第1軸の右側車輪120が右側水平計量台220から降りると、次に、当該車両100の第2軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されると共に、当該第2軸の右側車輪120が右側水平計量台220に載置される。この第2軸の左側車輪110の輪重値W12もまた、図10を参照しながら説明したのと同様の要領で求められると共に、当該第2軸の右側車輪120の輪重値W22もまた、同様の要領で求められる。
【0065】
さらに車両100が移動して、当該車両100の第2軸の左側車輪110が左側水平計量台210から降りると共に、当該第2軸の右側車輪120が右側水平計量台220から降りると、次に、当該車両100の第3軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されると共に、当該第3軸の右側車輪120が右側水平計量台220に載置される。そして、車両100がさらに移動して、当該車両100の第3軸の左側車輪110が左側水平計量台210から降りると共に、当該第3軸の右側車輪120が右側水平計量台220から降りると、次に、当該車両100の第4軸の左側車輪110が左側水平計量台210に載置されると共に、当該第4軸の右側車輪120が右側水平計量台220に載置される。この過程においても、第3軸の左側車輪110の輪重値W13と、当該第3軸の右側車輪120の輪重値W23と、第4軸の左側車輪110の輪重値W14と、当該第4軸の右側車輪120の輪重値W24とが、図10を参照しながら説明したのと同様の要領で求められる。そして最終的に、車両100の第4軸の左側車輪110が左側水平計量台210から降りると共に、当該第4軸の右側車輪120が右側水平計量台220から降りる。
【0066】
このようにして求められた水平姿勢時の第1軸〜第4軸の各左側輪重値W11〜W14は、メモリ回路308の記憶領域に形成された図11(a)に示す水平姿勢時左側輪重値一時記憶レジスタR1に記憶される。そして、第1軸〜第4軸の各右側輪重値W21〜W24は、メモリ回路308の記憶領域に当該水平姿勢時左側輪重値一時記憶レジスタR1とは別個に形成された図11(b)に示す水平姿勢時右側輪重値一時記憶レジスタR2に記憶される。なお、図11(a)の左側輪重値一時記憶レジスタR1および図11(b)の右側輪重値一時記憶レジスタR2は、いずれも最大で例えば8軸(M=8)の車両100に対応できるよう、当該8軸分の記憶域を有している。
【0067】
水平側プロセッサ30は、水平姿勢時の第1軸〜第4軸の各左側輪重値W11〜W14を合算することで、つまり次の式2に基づいて、当該水平姿勢時の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1を求める。
【0068】
《式2》
W1=W11+W12+W13+W14
【0069】
併せて、水平側プロセッサ30は、水平姿勢時の第1軸〜第4軸の各右側輪重値W21〜W24を合算することで、つまり次の式3に基づいて、当該水平姿勢時の全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2を求める。
【0070】
《式3》
W2=W21+W22+W23+W24
【0071】
さらに、水平側プロセッサ30は、式2に基づく左側総合印加荷重値W1と式3に基づく右側総合印加荷重値W2とを合算することで、つまり次の式4に基づいて、車両100の総重量値Wtを求める。この車両100の総重量値Wtは、メモリ回路308の記憶領域に形成された図12に示す水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶される。
【0072】
《式4》
Wt=W1+W2
【0073】
ここで、式2に基づく左側総合印加荷重値W1と式3に基づく右側総合印加荷重値W2と式4に基づく車両100全体の総重量値Wtとの関係を、当該車両100の左右方向における力学的要素として図示すると、例えば図13のようになる。なお、この図13において、P1という符号が付された点は、全ての左側ロードセルLC1a〜LC1dの集合体である言わば左側ロードセル群LC1による支持位置を表し、点P2は、全ての右側ロードセルLC2a〜LC2dの集合体である右側ロードセル群LC2による支持位置を表す。そして、点P0は、左右の各ロードセル群LC1およびLC2による支持位置P1およびP2間の中心を表し、言い換えれば車両100の左右方向における中心を表す。さらに、点Pgは、左右の各ロードセル群LC1およびLC2による支持位置P1およびP2を通る仮想水平線62c上における車両100の重心Gの位置を表す。
【0074】
この図13において、例えば左側ロードセル分LC1による支持位置P1を軸とするモーメントに注目すると、次の式5が成立する。なお、この式5におけるLxは、左側支持位置P1と仮想重心位置Pgとの相互間距離である。また、車両100の左右両車輪110および120間の距離Leは、上述したように車載プロセッサ90から車両情報として与えられる。
【0075】
《式5》
Lx・Wt=Le・W2
【0076】
そして、この式5を距離Lxについての数式に変形すると、次の式6のようになる。
【0077】
《式6》
Lx=Le・(W2/Wt)
【0078】
さらに、この式6に基づく距離Lxを車両100の左右方向における中心P0からの距離Lzに変換すると、次の式7のようになる。
【0079】
《式7》
Lz=Lx−(Le/2)=Le・(W2/Wt)−(Le/2)
【0080】
この式7に基づく距離Lzは、車両100の左右方向における中心P0を起点とする当該車両100の左右方向における重心Gの位置を表し、言わば偏心量を表す。例えば、この左右偏心量LzがLz=0のときは、車両100の重心Gは中心P0に位置する。そして、左右偏心量LzがLz<0(負数)のときは、車両100の重心Gは中心P0よりも左側に位置し、言わば左側偏心(偏荷重)状態にある。これとは反対に、左右偏心量LzがLz>0(正数)のときは、車両100の重心Gは中心P0よりも右側に位置し、言わば右側偏心状態にある。
【0081】
水平側プロセッサ30は、この式7に基づいて、左右偏心量Lzを求め、つまり車両100の左右方向における重心Gの位置を求める。この左右偏心量Lzもまた、図12に示した水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶される。
【0082】
さらに、水平側プロセッサ30は、荷台車104単体の重量Wt’による車両100全体としての左右方向における重心G’の位置を求め、つまり当該荷台車104単体の左右偏心量Lz’を求める。具体的には、第1軸の左側輪重値W11(図11(a)参照)から車両情報の1つである第1軸の駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W11k(図9参照)を差し引くことで、つまり次の式8に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による当該第1軸の左側輪重値W11’を求める。
【0083】
《式8》
W11’=W11−W11k
【0084】
併せて、水平側プロセッサ30は、第2軸の左側輪重値W12(図11(a)参照)から車両情報の1つである第2軸の駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W12k(図9参照)を差し引くことで、つまり次の式9に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による当該第2軸の左側輪重値W12’を求める。
【0085】
《式9》
W12’=W12−W12k
【0086】
さらに、水平側プロセッサ30は、第1軸の右側輪重値W21(図11(b)参照)から車両情報の1つである第1軸の駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W21k(図9参照)を差し引くことで、つまり次の式10に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による当該第1軸の右側輪重値W21’を求める。
【0087】
《式10》
W21’=W21−W21k
【0088】
そして、水平側プロセッサ30は、第2軸の右側輪重値W22(図11(b)参照)から車両情報の1つである第2軸の駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W22k(図9参照)を差し引くことで、つまり次の式11に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による当該第2軸の右側輪重値W22’を求める。
【0089】
《式11》
W22’=W22−W22k
【0090】
その上で、水平側プロセッサ30は、次の式12に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による第1軸〜第4軸の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1’を求める。
【0091】
《式12》
W1’=W11’+W12’+W13+W14
【0092】
これと同様に、水平側プロセッサ30は、次の式13に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による第1軸〜第4軸の全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2’を求める。
【0093】
《式13》
W2’=W21’+W22’+W23+W24
【0094】
さらに、水平側プロセッサ30は、式12に基づく荷台車104単体の重量Wt’による左側総合印加荷重値W1’と式13に基づく当該荷台車104単体の重量Wt’による右側総合印加荷重値W2’とを合算することで、つまり次の式14に基づいて、荷台車104単体の重量値Wt’を求める。この荷台車104の重量値Wtもまた、図12に示した水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶される。
【0095】
《式14》
Wt’=W1’+W2’
【0096】
そして、水平側プロセッサ30は、上述の式7における車両100全体の重量Wtによる右側総合印加荷重値W2に代えて、式13に基づく荷台車104単体の重量Wt’による右側総合印加荷重値W2’を用いると共に、当該式7における車両100の総重量値Wtに代えて、式14に基づく荷台車104単体の重量値Wt’を用いることで、つまり次の式15に基づいて、荷台車104単体の左右偏心量Lz’を求める。この荷台車単体左右偏心量Lz’もまた、図12に示した水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶される。
【0097】
《式15》
Lz’=Le・(W2’/Wt’)−(Le/2)
【0098】
この式15から分かるように、例えば荷台車単体左右偏心量Lz’がLz’=0のときは、荷台車104単体の重心G’は中心P0に位置する。そして、荷台車単体左右偏心量Lz’がLz’<0のときは、荷台車104単体の重心G’は中心P0よりも左側に位置し、つまり左側偏心状態にある。これとは反対に、荷台車単体左右偏心量Lz’がLz’>0のときは、荷台車104単体の重心G’は中心P0よりも右側に位置し、つまり右側偏心状態にある。
【0099】
加えて、水平側プロセッサ30は、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置を求める。具体的には、図14に示すように、荷台車104単体を上方から見たときに、当該荷台車104単体を支持する点が、第3軸の左右両車輪110および120と、第4軸の左右両車輪110および120と、第5輪としてのカプラC(厳密には荷台車104側の図示しないキングピンとの連結部)と、であることを踏まえて、カプラCを含む水平面において、当該カプラCを原点Oとする仮想のX−Y直交座標が設定される。なお、図14においては、車両100の左右方向がX軸方向とされており、当該車両100の前後方向(進退方向)がY軸方向とされている。そして、点P11,P12,P13およびP14は、第1軸,第2軸,第3軸および第4軸の各左側車輪110,110,…の設置位置(質点)であり、点P21,P22,P23およびP24は、当該第1軸,第2軸,第3軸および第4軸の各右側車輪120,120,…の設置位置である。
【0100】
このような仮想座標が設定された上で、水平側プロセッサ30は、次の式16に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’によるカプラCへの印加荷重値、いわゆる第5輪荷重値W5を、求める。
【0101】
《式16》
W5=W11’+W12’+W21’+W22’
【0102】
ここで、図14のX軸方向における力学的要素の相互関係を図示すると、例えば図15のようになる。この図15において、例えば第3軸および第4軸の各左側車輪110および110の接地位置P13およびP14を軸とするモーメントに注目すると、次の式17が成立する。なお、この式17におけるLx”は、左側接地位置P13およびP14と荷台車104単体の水平方向重心G”との相互間距離である。
【0103】
《式17》
Lx”・Wt’=(Le/2)・W5+Le・(W23+W24)
【0104】
そして、この式17を距離Lx”についての数式に変形すると、次の式18のようになる。
【0105】
《式18》
Lx”={(Le/2)・W5+Le・(W23+W24)}/Wt’
【0106】
そうすると、原点OであるカプラCから荷台車単体水平方向重心G”までの距離、言わばX軸方向偏心量Lz”は、次の式19のように表される。
【0107】
《式19》
Lz”=Lx”−(Le/2)
={(Le/2)・W5+Le・(W23+W24)}/Wt’−(Le/2)
【0108】
水平側プロセッサ30は、この式19に基づいてX軸方向偏心量Lz”を求める。なお、この式17から分かるように、X軸方向偏心量Lz”が例えばLz”=0のときは、荷台車単体水平方向重心G”は当該荷台車104を含む車両100全体の左右方向における中心P0に位置する。そして、X軸方向偏心量Lz”が例えばLz”<0のときは、荷台車単体水平方向重心G”は車両100の中心P0よりも左側に位置する。これとは反対に、X軸方向偏心量Lz”がLz”>0のときは、荷台車単体水平方向重心G”は車両100の中心P0よりも右側に位置する。このX軸方向偏心量Lz”は、次に説明するY軸方向重心距離Ly”と共に、仮想座標上における荷台車単体水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]を構成する。
【0109】
次に、図14のY軸方向における力学的要素の相互関係を図示すると、図16のようになる。この図16において、例えば原点OであるカプラCを軸とするモーメントに注目すると、次の式20が成立する。なお、この式18におけるLy”は、カプラCから荷台車単体水平方向重心G”までの相互間距離、言わばY軸方向重心距離である。そして、Lfは、カプラCから第3軸までの相互間距離であり、Lgは、当該カプラCから第4軸までの相互間距離である。これらの距離LfおよびLgは、上述したように車載プロセッサ90から車両情報として与えられる。
【0110】
《式20》
Ly”・Wt’=Lf・(W13+W23)+Lg・(W14+W24)
【0111】
そして、この式20をY軸方向重心距離Lx”についての数式に変形すると、次の式21のようになる。
【0112】
《式21》
Ly” ={Lf・(W13+W23)+Lg・(W14+W24)}/Wt’
【0113】
水平側プロセッサ30は、この式21に基づいてY軸方向重心距離Ly”を求める。この式21から分かるように、Y軸方向重心距離Ly”は、常にLy”>0である。このY軸方向重心距離Ly”は、上述の如くX軸方向偏心量Lz”と共に、仮想座標上における荷台車単体水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]を構成する。
【0114】
さらに、水平側プロセッサ30は、上述の式7に基づく車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、式15に基づく荷台車104単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’と、式19および式21に基づく荷台車単体水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]と、に基づいて、各重心G,G’およびG”のバランスを評価する。
【0115】
例えば、式7に基づく左右偏心量Lzに関して、その絶対値|Lz|が小さいほど、車両100全体の重心Gが中心P0に近い位置にあり、当該重心Gのバランスは良好である、と見なすことができる。これに対して、当該左右偏心量Lzの絶対値|Lz|が大きいほど、車両100全体の重心Gが中心P0から離れた位置にあり、つまり重心Gのバランスが悪く、極端には車両100が転倒する危険性がある。そこで、水平側プロセッサ30は、次の式22に基づいて車両100全体の左右偏荷重率Reを求める。
【0116】
《式22》
Re=Lz/(Le/2)
【0117】
その上で、水平側プロセッサ30は、この車両100全体の左右偏荷重率Reの絶対値|Re|が例えば次の式23を満足するか否かを判定する。
【0118】
《式23》
0≦|Re|<1/2
【0119】
この式23が満足されるとき、水平側プロセッサ30は、車両100全体の重心Gのバランスは比較的に良好であり、この重心Gのバランスに起因して車両100が転倒する危険性は低い、と判定する。一方、式23が満足されないときは、車両100が転倒する危険性が高い、と判定する。
【0120】
また、式15に基づく荷台車104単体の左右偏心量Lz’に関しても、その絶対値|Lz’|が小さいほど、荷台車104単体の重心G’が中心P0に近い位置にあり、当該重心G’のバランスは良好である、と見なすことができる。これに対して、当該左右偏心量Lz’の絶対値|Lz’|が大きいほど、荷台車104単体の重心G’が中心P0から離れた位置にあり、つまり重心G’のバランスが悪く、極端には当該荷台車104を含む車両100全体が転倒する危険性がある。そこで、水平側プロセッサ30は、式22に準拠する次の式24に基づいて荷台車104単体の左右偏荷重率Re’を求める。
【0121】
《式24》
Re’=Lz’/(Le/2)
【0122】
その上で、水平側プロセッサ30は、この荷台車104単体の左右偏荷重率Re’の絶対値|Re’|が例えば式23に準拠する次の式25を満足するか否かを判定する。
【0123】
《式25》
0≦|Re’|<1/2
【0124】
この式25が満足されるとき、水平側プロセッサ30は、荷台車104単体の重心G’のバランスが比較的に良好であり、この荷台車104単体の重心G’のバランスに起因して当該荷台車104を含む車両100全体が転倒する危険性は低い、と判定する。一方、式23が満足されないときは、車両100が転倒する危険性が高い、と判定する。
【0125】
さらに、荷台車104単体の水平方向重心G”に関して、これが極端に偏った位置にある場合にも、当該荷台車104を含む車両100全体が転倒する危険性がある。そこで、図14に示した仮想座標において、同図に斑点模様106で示すような安全領域が設定される。その上で、水平側プロセッサ30は、上述の式19および式21に基づく座標値[Lz”,Ly”]によって特定される当該荷台車単体水平方向重心G”の位置が、この安全領域108内にあるか否かを確認する。例えば、荷台車単体水平方向重心G”の位置が安全領域108内にあるときは、当該荷台車単体水平方向重心G”のバランスが比較的に良好であり、この荷台車単体水平方向重心G”のバランスに起因して荷台車104単体を含む車両100全体が転倒する危険性は低い、と判定する。一方、荷台車単体水平方向重心G”の位置が安全領域108内にないときには、車両100が転倒する危険性が高い、と判定する。
【0126】
なお、図14における安全領域106は、カプラCと、第4軸の左側車輪110の接地位置P14と、第4軸の右側車輪110の接地位置P24と、を頂点とする三角形状であるが、これに限らない。例えば、図17に示すように、カプラCの台座の左右縁部P01およびP02と、第3軸の左側車輪110の接地位置と、第3軸の右側車輪120の接地位置と、を頂点とする台形状とされてもよいし、これ以外の形状および大きさとされてもよい。
【0127】
これら車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lz(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車104単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]に基づく判定と、のいずれにおいても、車両100が転倒する危険性が低い、つまり安全である、という評価が成された場合、水平側プロセッサ30は、その旨を表す安全メッセージを、ディスプレイ316に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、ディスプレイ316に表示する。
【0128】
そして、水平側プロセッサ30は、車載プロセッサ90に対して、安全である旨の評価結果を無線通信により送信する。また、この評価結果に付随して、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、無線通信により車載プロセッサ90に送信する。
【0129】
さらに、水平側プロセッサ30は、図9に示した車両情報一時記憶レジスタRa0に記憶されている車両情報(ID,M,Le,Lf,Lg,W11k,W12k,W21k,W22k,W31kおよびW32k)をメモリ回路308の記憶領域に形成された図18に示す車両情報出力レジスタRaに転送する。この車両情報出力レジスタRaは、最大で3台分の車両情報を記憶しておき、これを傾斜側プロセッサ50からの後述するデータ送信要求に応答して当該傾斜側プロセッサ50へ順次送信するためのものであり、当該3台分の車両情報の記憶を可能とするべく、車両情報一時記憶レジスタRa0と同じ記憶容量を持つ3つのシフトレジスタRa1,Ra2およびRa3を有している。そして、このうちの初段のシフトレジスタRa1に車両情報一時記憶レジスタRa0からの車両情報が転送される。このとき、初段のシフトレジスタRa1に別の、つまり1つ前の計量対象とされた車両100の、車両情報が記憶されている場合、この初段のシフトレジスタRa1に記憶されている車両情報は2段目のシフトレジスタRa2に転送され、その上で、車両情報一時記憶レジスタRa0に記憶されている車両情報が当該初段のシフトレジスタRa1に転送される。またこのとき、2段目のシフトレジスタRa2にも別の、つまりさらにもう1つ前の計量対象とされた車両100の、車両情報が記憶されている場合は、この2段目のシフトレジスタRa2に記憶されている車両情報は最終段のシフトレジスタRa3に転送され、その上で、初段のシフトレジスタRa1に記憶されている車両情報が当該2段目のシフトレジスタRa2に転送される。なお、車両情報一時記憶レジスタRa0から車両情報出力レジスタRa(初段のシフトレジスタRa0)に車両情報が転送された後は、当該車両情報一時記憶レジスタRa0はリセットされる。
【0130】
併せて、水平側プロセッサ30は、図12に示した水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶されている水平側計量結果(Wt,Lz,Wt’およびLz’)をメモリ回路308の記憶領域に形成された図19に示す水平側計量結果出力レジスタRbに転送する。この水平側計量結果出力レジスタRbもまた、最大で3台分の水平側計量結果を記憶しておき、これを傾斜側プロセッサ50からのデータ送信要求に応答して当該傾斜側プロセッサ50へ順次送信するためのものであり、当該3台分の水平側計量結果の記憶を可能とするべく、水平側計量結果一時記憶レジスタRb0と同じ要領を持つ3つのシフトレジスタRb1,Rb2およびRb3を有しており、このうちの初段のシフトレジスタRb1に水平側計量結果一時記憶レジスタRb0からの水平側計量結果が転送される。このとき、初段のシフトレジスタRb1に別の、つまり1つ前の計量対象とされた車両100の、水平側計量結果が記憶されている場合、この初段のシフトレジスタRa1に記憶されている水平側計量結果は2段目のシフトレジスタRb2に転送され、その上で、水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶されている水平側計量結果が当該初段のシフトレジスタRb1に転送される。またこのとき、2段目のシフトレジスタRb2にも別の、つまりさらにもう1つ前の計量対象とされた車両100の、水平側計量結果が記憶されている場合は、この2段目のシフトレジスタRb2に記憶されている水平側計量結果は最終段のシフトレジスタRb3に転送され、その上で、初段のシフトレジスタRb1に記憶されている水平側計量結果が当該2段目のシフトレジスタRb2に転送される。なお、水平側計量結果一時記憶レジスタRb0から水平側計量結果出力レジスタRb(初段のシフトレジスタRb0)に水平側計量結果が転送された後は、当該水平側計量結果一時記憶レジスタRb0はリセットされる。
【0131】
車載プロセッサ90は、水平側プロセッサ30から安全である旨の評価結果を受信すると、この評価結果をメモリ回路910に記憶すると共に、安全メッセージをディスプレイ914に表示する。また、当該評価結果の付随データとしての車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、についても、メモリ回路910に記憶すると共に、ディスプレイ914に表示する。
【0132】
このように、車両100が転倒する危険性が低く、安全であり、その旨を表す安全メッセージが車載プロセッサ90のディスプレイ914に表示されると、これを受けて、当該車両100(運転手)は、所定の順路通りに傾斜側計量部40へと進む。
【0133】
これとは反対に、上述の車両100全体の左右偏心量Lz(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車104単体の左右偏心量Lz’(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]に基づく判定と、の少なくともいずれかにおいて、車両100が転倒する危険性が高い、という評価が成された場合、水平側プロセッサ30は、その旨を表す警告メッセージを、ディスプレイ316に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、についても、ディスプレイ316に表示する。なお、このディスプレイ316に表示される車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、車両100の転倒の危険性が高いという評価の要因になったものは、特別な態様で表示され、例えば赤色等の特殊色で表示される。
【0134】
併せて、水平側プロセッサ30は、上述した警報器80から警報を発生させるための警報信号Scを出力する。これを受けて、警報器80は警報を発する。
【0135】
さらに、水平側プロセッサ30は、車載プロセッサ90に対して、車両100の転倒の危険性が高い旨の評価結果を無線通信により送信する。また、この評価結果に付随して、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、を無線通信により車載プロセッサ90に送信する。さらに、この付随データとしての車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、車両100の転倒の危険性が高いという評価の要因になったものについては、その旨を表す注記符号を付した上で、送信する。
【0136】
加えて、水平側プロセッサ30は、図9に示した車両情報一時記憶レジスタRa0に記憶されている車両情報を消去し、つまり当該車両情報一時記憶レジスタRa0をリセットする。そして、図12に示した水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶されている水平側計量結果についても消去し、つまり当該水平側計量結果一時記憶レジスタRb0をリセットする。
【0137】
車載プロセッサ90は、水平側プロセッサ30から車両100の転倒の危険性が高い旨の評価結果を受信すると、この評価結果をメモリ回路910に記憶する。そして、警告メッセージをディスプレイ914に表示する。また、当該評価結果の付随データとしての車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、についても、メモリ回路910に記憶すると共に、ディスプレイ914に表示する。さらに、このディスプレイ914に表示する付随データのうち、車両100の転倒の危険性が高いという評価の要因になったもの、要するに上述の注記符号が付されたもの、については、赤色表示等の特別な態様で表示する。
【0138】
このように、車載プロセッサ90のディスプレイ914に警告メッセージが表示されると共に、警報器80から警報が発せられると、これを受けて、車両100(運転手)は、一旦、本第1実施形態の車両計量システム10による計量を終了(中断)する。そして、上述の車両100全体の左右偏心量Lz(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車104単体の左右偏心量Lz’(左右偏荷重率Re)に基づく判定と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]に基づく判定と、の各評価結果に基づいて、車両100の各重心G,G’およびG”のバランスが検証され、特に荷台車104の図示しない荷物の積載状態が検証される。そして、当該荷台車104の荷物の積載状態が改善可能な場合には、その改善が試みられた後、改めて最初から本第1実施形態の車両計量システム10による計量が行われる。
【0139】
なお例えば、車両100が転倒する危険性が高いという評価が成された状態で、当該車両100がそのまま傾斜側計量部40を通行する、とすると、次のような不都合が生じる。即ち、車両100が傾斜側計量台40を通行する際には、当該車両100は上述したように傾斜姿勢になる。このとき、車両100の各重心G,G’およびG”の位置によっては、特にこれら各重心G,G’およびG”の位置が車両100の中心P0から左側に大きく離れている場合には、当該車両100が転倒する危険性がさらに高くなる。このように極めて危険な状況に陥るのを未然に防ぐべく、車両100が転倒する危険性が高いという評価が成された場合には、上述の如く本第1実施形態の車両計量システム10による計量が途中で終了され、傾斜側計量台40への車両100の通行が禁止される。
【0140】
さて、車両100の転倒の危険性が低く、安全な場合には、当該車両100は、所定の順路通り傾斜側計量部40へと進む。そして、車両100が、傾斜側計量部40の手前に差し掛かり、傾斜側車両検知器72によって検知されると、このことが、当該傾斜側車両検知器72から出力される傾斜側車両検知信号Sbによって傾斜側プロセッサ50に伝えられ、厳密にはCPU504に伝えられる。これを受けて、傾斜側プロセッサ50(CPU504)は、水平側プロセッサ30に対して上述のデータ送信要求を行う。このデータ送信要求は、有線通信によって行われる。
【0141】
水平側プロセッサ30は、傾斜側プロセッサ50からデータ送信要求を受けると、これに応答して、図18に示した車両情報出力レジスタRaの各シフトレジスタRa1,Ra2およびRa3に記憶されている車両情報の中から最古のものを探索する。そして、探索された車両情報を傾斜側プロセッサ50に有線で送信する。さらに、この送信し終えた車両情報が記憶されていたシフトレジスタRa1,Ra2またはRa3をリセットする。併せて、水平側プロセッサ30は、図19に示した水平側計量結果出力レジスタRbの各シフトレジスタRb1,Rb2およびRb3に記憶されている水平側計量結果の中から最古のものを探索すると共に、探索された水平側計量結果を傾斜側プロセッサ50に有線で送信する。さらに、この送信し終えた水平側計量結果が記憶されていたシフトレジスタRb1,Rb2またはRb3をリセットする。
【0142】
傾斜側プロセッサ50は、水平側プロセッサ30から送られてきた車両情報と水平側計量結果とを一旦、メモリ回路508に記憶し、詳しくは当該メモリ回路508の記憶領域に形成された図9および図12に示したのと同様の図示しない一時記憶レジスタに記憶する。これにより、傾斜側プロセッサ50は、これから計量対象となる車両100の車両情報(ID,M,Le,Lf,Lg,W11k,W12k,W21k,W22k,W31kおよびW32k)を認識すると共に、当該車両100についての水平側計量結果(Wt,Lz,Wt’およびLz’)を認識する。
【0143】
そして、車両100が傾斜側計量部400を通行すると、つまりまず当該車両100の第1軸の左側車輪110が左側傾斜計量台410に載置されると共に、当該第1軸の右側車輪120が右側傾斜計量台420に載置されると、このうちの左側傾斜計量台410を支持する各傾斜側ロードセルLC3a〜LC3dから、それぞれに印加される荷重の大きさを表す傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dが出力される。なお、右側傾斜計量台420を支持する各ダミーロードセル422,422,…からは何らの信号も出力されない。そして、各傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dは、傾斜側プロセッサ50に入力される。
【0144】
ここで、各傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dについても、ゼロ調整およびスパン調整が適切に成されており、当該各傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dは、それぞれに対応する傾斜側ロードセルLC3a〜LC3dへの印加荷重値そのものを表す、とする。傾斜側プロセッサ50は、これら各傾斜側デジタル荷重検出信号W3a〜W3dを合算することで、詳しくは図10を参照しながら説明したのと同様の要領で、車両100の第1軸の左側車輪110が左側傾斜計量台420に載置されたことによる各傾斜側ロードセルLC3a〜LC3dへの総合の印加荷重値、厳密にはその検出値W31、を求める。この言わば傾斜側荷重検出値W31は、傾斜姿勢にある車両100の第1軸の左側輪重値を表す。
【0145】
そして、車両100がさらに移動して、当該車両100の第1軸の左側車輪110が左側傾斜計量台410から降りると共に、当該第1軸の右側車輪120が右側傾斜計量台420から降りると、次に、当該車両100の第2軸の左側車輪110が左側傾斜計量台410に載置されると共に、当該第2軸の右側車輪120が右側傾斜計量台420に載置される。これ以降、車両100が移動するに連れて、車両100の第3軸および第4軸の左側車輪110および110が左側傾斜計量台410に1軸分ずつ順次載置されると共に、当該第3軸および第4軸の右側車輪120および120が右側傾斜計量台420に1軸分ずつ順次載置され、最終的に、車両100の全ての左側車輪110,110,…が左側傾斜計量台410を通過すると共に、当該車両100の全ての右側車輪120,120,…が右側傾斜計量台420を通過する。そして、この過程において、図10を参照しながら説明したのと同様の要領で、傾斜姿勢にある車両100の第2軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W32,W33およびW34が求められる。
【0146】
このようにして求められた傾斜姿勢時の第1軸〜第4軸の各左側輪重値W31〜W34は、メモリ回路508の記憶領域に形成された図20に示す傾斜姿勢時左側輪重値一時記憶レジスタR3に記憶される。なお、この傾斜姿勢時左側輪重値一時記憶レジスタR3もまた、図11に示した水平姿勢時左側輪重値一時記憶レジスタR1および水平姿勢時右側輪重値一時記憶レジスタR2と同様、8軸分の記憶域を有している。
【0147】
傾斜側プロセッサ50は、傾斜姿勢時の第1軸〜第4軸の各左側輪重値W31〜W34を合算することで、つまり次の式26に基づいて、当該傾斜姿勢時の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3を求める。
【0148】
《式26》
W3=W31+W32+W33+W34
【0149】
この式26に基づく傾斜姿勢時の左側総合印加荷重値W3を含む当該傾斜姿勢時の力学的要素の相互関係を、車両100の左右方向に注目して図示すると、例えば図21のようになる。なお、この図21において、点P3は、全ての傾斜側ロードセルLC3a〜LC3dの集合体である傾斜側ロードセル群LC3による支持位置を表し、点P4は、全てのダミーロードセル422,422,…の集合体であるダミーロードセル群LC4による支持位置を表す。そして、点P3’は、左側車輪110の接地位置を表し、この左側接地位置P3’は、傾斜側ロードセル群LC3による支持位置点P3の真上にある。P4’は、右側車輪120の接地位置を表し、この右側接地位置P4’は、ダミーロードセル群LC4にとる支持位置P4の真上にある。さらに、点Pg’は、左側接地位置P3’と右側接地位置P4’とを通る仮想傾斜線64c上における車両100の重心Gの位置を表し、点Pgaは、傾斜側ロードセル群LC3による支持位置P3とダミーロードセル群LC4による支持位置P4とを通る仮想水平線64d上における当該重心Gの位置を表す。また、右側車輪120の接地位置P4’を基点とする上方向きの太線矢印W4は、全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重を表すが、本第1実施形態では、この右側総合印加荷重W4は検出されない。
【0150】
この図21において、例えばダミーロードセル群LC4による支持位置P4を軸とするモーメントに注目すると、次の式27が成立する。
【0151】
《式27》
Le・cosθ・W3={(Le−Lx)+H・tanθ}・cosθ・Wt
【0152】
そして、この式27を高さHについての数式に変形すると、次の式28のようになる。
【0153】
《式28》
H={Le・W3−(Le−Lx)・Wt}/(Wt・tanθ)
【0154】
この式28において、車両100の左右両車輪110および120間の距離Leは、水平側プロセッサ30から車両情報として与えられる。そして、車両100の総重量値Wtは、水平側プロセッサ30から水平側計量結果として与えられる。さらに、距離Lxは、上述の式7の変形式である次の式29に基づいて求められる。なお、式29における車両100全体の左右偏心量Lzもまた、当該水平側計量結果として与えられる。そして、傾斜角度θは、既知であり、例えば操作キー514による手動操作によって事前に設定される。傾斜側プロセッサ50は、この式28に基づいて車両100全体の重心Gの高さHを求める。
【0155】
《式29》
Lx=Lz+(Le/2)
【0156】
併せて、傾斜側プロセッサ50は、荷台車104単体の重心G’の高さH’を求める。具体的には、傾斜姿勢時の第1軸の左側輪重値W31(図20参照)から車両情報の1つである当該第1軸の駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W31kを差し引くことで、つまり次の式30に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による当該第1軸の左側輪重値W31’を求める。
【0157】
《式30》
W31’=W31−W31k
【0158】
加えて、傾斜側プロセッサ500は、傾斜姿勢時の第2軸の左側輪重値W12(図20参照)から車両情報の1つである第2軸の駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W32kを差し引くことで、つまり次の式31に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による当該第2軸の左側輪重値W32’を求める。
【0159】
《式31》
W32’=W32−W32k
【0160】
そして、傾斜側プロセッサ50は、次の式32に基づいて、荷台車104単体の重量Wt’による傾斜姿勢時の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3’を求める。
【0161】
《式32》
W3’=W31’+W32’+W33+W34
【0162】
その上で、傾斜側プロセッサ50は、上述の式28に準拠する次の式33に基づいて、荷台車104単体の重心G’の高さH’を求める。
【0163】
《式33》
H’={Le・W3’−(Le−Lx’)・Wt’}/(Wt’・tanθ)
【0164】
なお、この式33は、式28における傾斜姿勢時の左側総合印加荷重値W3に代えて、式32に基づく荷台車104単体の重量Wt’による左側総合印加荷重値W3’を用いると共に、当該式28における車両100の総重量値Wtに代えて、水平側計量結果の1つである荷台車104単体の重量値Wt’を用い、さらに、式28における距離Lxに代えて、上述の式29に準拠する次の式34に基づく距離Lx’を用いたものである。式34における荷台車104単体の左右偏心量Lz’もまた、水平側計量結果の1つとして与えられる。
【0165】
《式34》
Lx’=Lz’+(Le/2)
【0166】
このようにして車両100全体の重心高さHと荷台車104単体の重心高さH’とを求め終えると、傾斜側プロセッサ50は、これらをディスプレイ516に表示する。併せて、当該各重心高さHおよびH’を無線通信により車載プロセッサ90に送信する。その後、上述の一時記憶レジスタに記憶された車両情報と水平側計量結果とを消去し、つまり当該一時記憶レジスタをリセットする。
【0167】
車載プロセッサ90は、傾斜側プロセッサ50から各重心高さHおよびH’を受信すると、これらをメモリ回路910に記憶すると共に、ディスプレイ914に表示する。これをもって、本第1実施形態の車両計量システム10による一連の計量が終了する。
【0168】
この一連の計量終了後、車載プロセッサ90は、当該一連の計量によって得た情報を、車両100が実際の輸送業務に就く際の安全走行支援に利用する。
【0169】
即ち、車両100が実際の輸送業務において道路を走行する際、特にカーブを通過する際、当該車両100に遠心力が作用する。この遠心力は、車両100の運転性(安定性)に大きく影響し、極端な場合には当該車両100の転倒を招く恐れがある。そこで、車載プロセッサ90は、上述の一連の計量によって得た情報、特に車両100の総重量値Wtと、当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、当該重心Gの高さHと、を用いて、例えば車両100の走行速度がどれくらいであれば、最小でどれくらいの曲率半径のカーブを安定して走行することができるか、という車両100の走行速度とカーブの最小曲率半径との相互関係を、導き出す。そして、実際に道路を走行する際に、上述のカーナビゲーション装置から得られるカーナビゲーション情報に基づいて、先々の各カーブの曲率半径を認識すると共に、車速計から得られる車速情報に基づいて、今現在の車両100の走行速度を認識し、これらを当該相互関係と照合することで、今現在の車両100の走行速度によって先々の各カーブを安定して走行することができるかどうかを判断する。そしてもし、今現在の車両100の走行速度が過大であるのであれば、これを抑えるよう、例えばディスプレイ914へのメッセージの表示や図示しないスピーカからアラーム音を発生させることによって、運転者に注意を促す。これにより、安全走行支援が実現される。
【0170】
この安全走行支援の要領は、飽くまでも一例であって、これとは別の要領によって、当該安全走行支援が実現されてもよい。また、車両100の総重量値Wtと、当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、当該重心Gの高さHと、に代えて、或いはこれらに加えて、例えば荷台車104単体の重量値Wtと、当該荷台車104単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’と、当該重心G’の高さH’とが、安全走行支援(上述の相互関係の導出)に供されてもよい。勿論、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]等の他の情報が、当該安全走行支援に供されてもよい。
【0171】
ここで、水平側プロセッサ30の動作について、改めて具体的に説明する。
【0172】
即ち、水平側プロセッサ30は、上述したように水平側制御プログラムに従って動作するが、特に水平側車両検知器70によって車両100が検知されたことを表す水平側車両検知信号Saが当該水平側車両検知器70から入力されると、図22の水平側制御タスクを実行する。
【0173】
この水平側制御タスクによれば、水平側プロセッサ30は、まず、ステップS101に進み、車載プロセッサ90に対して、車両情報の送信を要求する。この要求は、上述したように無線通信によって行われる。そして、水平側プロセッサ30は、ステップS103に進み、車載プロセッサ90から車両情報が送られてくるのを待つ。
【0174】
ステップS103において、車載プロセッサ90から車両情報が送られてくると、水平側プロセッサ30は、これを受信し、その後、ステップS105に進む。そして、このステップS105において、当該車両情報、つまり車両100の識別コードID,全車軸数M,左右両車輪110および120間距離Le,カプラCから第3軸までの相互間距離Lf,カプラCから第4軸までの相互間距離Lg,駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W11kおよびW12k,駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W21kおよびW22k,ならびに駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W31kおよびW32kを、図9に示した車両情報一時記憶レジスタRa0に記憶する。なお、本第1実施形態における全車軸数Mは、M=4である。
【0175】
そして、水平側プロセッサ30は、ステップS107に進み、後述する輪重計量タスクを実行する。この輪重計量タスクにおいては、車両100が水平姿勢にあるときの第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W11,W12,W13およびW14と、当該第1軸〜第4軸それぞれの右側輪重値W21,W22,W23およびW24とが、求められる。厳密に言えば、各左側輪重値W11,W12,W13およびW14を求めるための輪重計量タスクと、各右側輪重値W21,W22,W23およびW24を求めるための輪重計量タスクとが、並行して別々に実行される。
【0176】
このステップS107の輪重計量タスクの実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS109に進む。そして、このステップS109において、上述の式4に基づいて車両100の総重量値Wtを求め、これを図12に示した水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶する。さらに、ステップS111に進み、上述の式7に基づいて当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzを求め、これについても当該水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶する。
【0177】
次いで、水平側プロセッサ30は、ステップS113に進み、上述の式14に基づいて荷台車104単体の重量値Wt’を求め、これを図12に示した水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶する。その後、ステップS115に進み、上述の式15に基づいて荷台車104単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lzを求め、これをも当該水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶する。そして、ステップS117に進み、上述の式19に基づいてX軸方向偏心量Lz”を求めると共に、式11に基づいてY軸方向偏心量Ly”を求める。つまり、荷台車104単体の水平方向重心Gの位置を表す座標値[Lz”,Ly”]を求める。
【0178】
ステップS117の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS119に進み、車両100が転倒する危険性がないかどうかの言わば安全性の評価を行う。即ち、車両100全体の左右偏心量Lzに基づいて、厳密には上述の左右偏荷重率Reが式23を満足するか否かに基づいて、当該車両100が転倒する危険性がないかどうか判定する。併せて、荷台車104単体の左右偏心量Lz’に基づいて、厳密には上述の左右偏荷重率Re’が式25を満足するか否かに基づいて、当該荷台車104を含む車両100全体が転倒する危険性がないかどうかを判定する。加えて、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]が図14に示した安全領域108内にあるか否かに基づいて、当該荷台車104を含む車両100全体が転倒する危険性がないかどうかを判定する。これらの判定の全てにおいて、例えば車両100が転倒する危険性が低い、という判定が成された場合、安全である、という評価を下す。一方、少なくともいずれかの判定において、車両100が転倒する危険性が高い、という判定が成された場合は、危険である、という評価を下す。
【0179】
このステップS119における評価の後、水平側プロセッサ30は、ステップS121に進み、当該ステップS119における評価結果を無線通信によって車載プロセッサ90に送信する。これに付随して、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、車載プロセッサ90に送信する。なお例えば、ステップS119における評価結果が危険を意味する場合、車載プロセッサ90に付随データとして送信される車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、当該危険という評価要因になったものについて、上述した注記符号が付される。
【0180】
ステップS121の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS123に進み、上述のステップS119における評価結果が安全を意味するものであるか否かを判断する。ここで例えば、当該評価結果が安全を意味する場合、水平側プロセッサ30は、ステップS125に進む。そして、このステップS125において、当該安全である旨を表す安全メッセージを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ316に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、ディスプレイ316に表示する。
【0181】
そして、水平側プロセッサ30は、ステップS127に進み、車両情報一時記憶レジスタRa1に記憶されている車両情報(ID,M,Le,Lf,Lg,W11k,W12k,W21k,W22k,W31kおよびW32k)を、図18に示した車両情報出力レジスタRaの初段のシフトレジスタRa1に転送する。このとき、初段のシフトレジスタRa1に別の車両情報が記憶されている場合は、この初段のシフトレジスタRa1に記憶されている車両情報を2段目のシフトレジスタRa2に転送し、その上で、車両情報一時記憶レジスタRa0に記憶されている車両情報を当該初段のシフトレジスタRa1に転送する。またこのとき、2段目のシフトレジスタRa2にも別の車両情報が記憶されている場合は、この2段目のシフトレジスタRa2に記憶されている車両情報を最終段のシフトレジスタRa3に転送し、その上で、初段のシフトレジスタRa1に記憶されている車両情報を当該2段目のシフトレジスタRa2に転送する。なお、車両情報一時記憶レジスタRa0から車両情報出力レジスタRa(初段のシフトレジスタRa0)に車両情報を転送した後は、当該車両情報一時記憶レジスタRa0をリセットする。
【0182】
併せて、水平側プロセッサ30は、ステップS127において、水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶されている水平側計量結果(Wt,Lz,Wt’およびLz’)を、図19に示した水平側計量結果出力レジスタRbの初段のシフトレジスタRb1に転送する。このとき、初段のシフトレジスタRb1に別の水平側計量結果が記憶されている場合は、この初段のシフトレジスタRa1に記憶されている水平側計量結果を2段目のシフトレジスタRb2に転送し、その上で、水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶されている水平側計量結果を当該初段のシフトレジスタRb1に転送する。またこのとき、2段目のシフトレジスタRb2にも別の水平側計量結果が記憶されている場合は、この2段目のシフトレジスタRb2に記憶されている水平側計量結果を最終段のシフトレジスタRb3に転送し、その上で、初段のシフトレジスタRb1に記憶されている水平側計量結果を当該2段目のシフトレジスタRb2に転送する。なお、水平側計量結果一時記憶レジスタRb0から水平側計量結果出力レジスタRb(初段のシフトレジスタRb0)に水平側計量結果を転送した後は、当該水平側計量結果一時記憶レジスタRb0をリセットする。
【0183】
このステップS127の実行をもって、水平側プロセッサ30は、水平側制御タスクを終了する。
【0184】
一方、上述のステップS123における評価結果が危険を意味するものである場合、水平側プロセッサ30は、当該ステップS123からステップS129に進む。そして、このステップS129において、当該危険である旨を表す警告メッセージを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ316に表示する。併せて、車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]とを、ディスプレイ316に表示する。さらに、このディスプレイ316に表示される車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、のうち、当該危険という評価要因になったものについては、赤色表示等の特別な態様で表示する。
【0185】
そして、水平側プロセッサ30は、ステップS131に進み、上述した警報器80から警報を発生させるための警報信号Scを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたって出力する。これを受けて、警報器80は、当該一定期間にわたって警報を発する。
【0186】
さらに、水平側プロセッサ30は、ステップS133に進み、車両情報一時記憶レジスタRa0に記憶されている車両情報を消去し、つまり当該車両情報一時記憶レジスタRa0をリセットする。併せて、水平側計量結果一時記憶レジスタRb0に記憶されている水平側計量結果についても消去し、つまり当該水平側計量結果一時記憶レジスタRb0をリセットする。
【0187】
このステップS133の実行をもって、水平側プロセッサ30は、;水平側制御タスクを終了する。
【0188】
次に、上述のステップS107の輪重計量タスクについて、図23および図24を参照して詳しく説明する。なお、この輪重計量タスクは、上述したように各左側輪重値W11,W12,W13およびW14を求めるためのものと、各右側輪重値W21,W22,W23およびW24を求めるためのものとが、並行して別々に実行される。つまり、各左側輪重値W11,W12,W13およびW14を求めるための図23および図24のフローチャートに従う処理と、各右側輪重値W21,W22,W23およびW24を求めるための当該図23および図24のフローチャートに従う処理とが、並行して別々に実行される。また、この輪重計量タスクに入る前に、後述するF0というフラグに初期値としての0が設定されると共に、車両100の軸番号を表すm(m=1〜M)というインデックスの値に初期値としての0が設定される。併せて、Σxmという積算レジスタの積算値がリセットされ、つまり0とされると共に、C0というカウンタのカウント値もまたリセットされ、つまり0とされる。
【0189】
この輪重計量タスクによれば、水平側プロセッサ30は、まず、図23のステップS201に進み、目的の各ロードセルLCxa〜LCxdによる荷重検出値Wxa〜Wxdを取得する。ここで、目的の各ロードセルLCxa〜LCxdとは、例えば当該輪重計量タスクが左側輪重値W11,W12,W13およびW14を求めるために実行される場合には、各左側ロードセルLC1a〜LC1dのことを指し、ゆえに、このステップS201においては、当該各左側ロードセルLC1a〜LC1dによる荷重検出値(左側荷重検出値)W1a〜W1dを取得することになる。また、当該輪重計量タスクが右側輪重値W21,W22,W23およびW24を求めるために実行される場合には、目的の各ロードセルLCxa〜LCxdは、各右側ロードセルLC2a〜LC2dを指し、ゆえに、ステップS201においては、当該各右側ロードセルLC2a〜LC2dによる荷重検出値(右側荷重検出値)W2a〜W2dを取得することになる。なお、当該輪重計量タスクは、後述するように傾斜側プロセッサ50によっても実行され、つまり車両100が傾斜姿勢にあるときの各左側輪重値W31,W32,W33およびW34を求めるためにも実行される。この場合、目的の各ロードセルLCxa〜LCxdは、各傾斜側ロードセルLC3a〜LC3dのことを指し、ゆえに、ステップS201においては、当該各傾斜側ロードセルLC3a〜LC3dによる荷重検出値(傾斜側荷重検出値)W3a〜W3dを取得することになる。
【0190】
このステップS201の実行後、水平側プロセッサ30は、ステップS203に進み、後部側荷重検出値Wxab(=Wxa+Wxb)を求める。さらに、ステップS205に進み、前部側荷重検出値Wxcd(=Wxc+Wxd)を求める。そして、ステップS207に進む。
【0191】
ステップS207において、水平側プロセッサ30は、F0というフラグに0が設定されているか否かを判断する。なお、このフラグF0は、任意の軸mの輪重値Wxmを測定している最中であるか否かを表す指標であり、当該任意軸mの輪重値Wxmの測定中である場合は、F0=1となり、そうでない場合には、F0=0となる。このステップS207において、例えば当該フラグF0がF0=0である場合、つまり任意軸mの輪重値Wxmの測定中でない場合、水平側プロセッサ30は、ステップS209に進む。
【0192】
ステップS209において、水平側プロセッサ30は、図10を参照しながら説明した時点taが到来したか否か、つまり任意軸mの輪重値Wmの測定を開始するための条件(W1ab>WrかつW1ab/W1cd<β)が満足されたか否かを、判断する。ここで例えば、当該条件が満足されていな場合には、ステップS201に戻る。一方、当該条件が満足された場合には、ステップS211に進み、上述のフラグF0に1を設定した後、さらにステップS213に進む。なお、上述のステップS207において、フラグF0がF0=1である場合、つまり任意軸mの輪重値Wxmの測定中である場合には、当該ステップS207から直接ステップS213に進む。
【0193】
ステップS213において、水平側プロセッサ30は、上述の式1に準拠して今現在測定対象となっている第m軸の仮の輪重値Wxm’を求め、詳しくはステップS203で求められた後部側荷重検出値WxabとステップS205で求められた前部側荷重検出値Wxcdとを合算することで当該仮の輪重値Wxm’(=Wxab+Wxcd)を求める。そして、ステップS215に進み、当該ステップS213で求められた仮の輪重値Wxm’を積算し、つまり上述の積算レジスタの積算値Σxmに加算する。さらに、ステップS217に進み、図10を参照しながら説明した制限時間T0をカウントするためのカウンタのカウント値C0を1だけインクリメントし、その後、ステップS219に進む。
【0194】
ステップS219において、水平側プロセッサ30は、先のステップS217でインクリメントされたカウント値C0と、上述の制限時間T0の離散化値Q0(=T0/ΔT)と、を比較する。ここで例えば、カウント値C0が制限時間T0の離散化値Q0に満たない(C0<Q0)場合、つまり未だ当該制限時間T0が経過していない場合は、ステップS221に進む。そして、このステップS221において、図10を参照しながら説明した時点tbが到来したか否か、つまり任意軸mの輪重値Wmの測定を終了するための条件(W1cd/W1ab>β)が満足されたか否かを、判断する。ここで例えば、当該条件が満足されていな場合には、ステップS201に戻る。一方、当該条件が満足された場合には、ステップS223に進む。なお、ステップS219において、カウント値C0が制限時間T0の離散化値Q0に達した(C0≧Q0)場合、つまり当該制限時間T0が経過した場合は、ステップS219から直接ステップS223に進む。
【0195】
ステップS223において、水平側プロセッサ30は、今現在の上述した積算レジスタの積算値Σxmを今現在のカウント値C0で除することによって、今現在の測定対象である第m軸の輪重値Wxm(=Σxm/C0)を求める。そして、この輪重値Wxmを、図11に示した一時記憶レジスタRx(R1またはR2)の第m軸用の記憶域に記憶する。
【0196】
ステップS223の実行後、水平側プロセッサ30は、図24のステップS225に進む。そして、このステップS225において、上述のフラグF0に0を設定した後、ステップS227に進み、積算レジスタの積算値Σxmを0にし、つまりリセットする。さらに、ステップS229に進み、カウント値C0をリセットし、その後、ステップS231に進む。
【0197】
ステップS231において、水平側プロセッサ30は、今現在の測定対象である車軸の番号mとその最大値Mとを比較する。そして例えば、今現在の測定対象である車軸の番号mが最大値Mと不等価(m≠M)である場合、詳しくは当該車軸番号mが最大値Mよりも小さく(m<M)、未だ全ての車軸について輪重値Wxmが測定されていない場合には、ステップS233に進み、当該車軸番号mを1だけインクリメントした後、図23のステップS201に戻る。一方、ステップS231において、今現在の車軸番号mが最大値Mと等価(m=M)である場合、つまり全ての車軸について輪重値Wxmが測定された場合には、ステップS235に進む。そして、このステップS235において、車軸番号mを1に戻して、一連の輪重計量タスクを終了する。
【0198】
また、水平側プロセッサ30は、図25に示すデータ送信タスクをも実行する。
【0199】
即ち、傾斜側プロセッサ50から有線通信にて上述のデータ送信要求を受けると、水平側プロセッサ30は、このデータ送信タスクのステップS301に進む。そして、このステップS301において、図18に示した車両情報出力レジスタRaの各シフトレジスタRa1,Ra2およびRa3に記憶されている車両情報の中から最古のものを探索する。次いで、ステップS303に進み、当該ステップS301で探索された車両情報を傾斜側プロセッサ50に有線で送信する。そして、ステップS305に進み、当該ステップS303で送信し終えた車両情報が記憶されていたシフトレジスタRa1,Ra2またはRa3をリセットする。
【0200】
さらに、水平側プロセッサ30は、ステップS307に進み、図19に示した水平側計量結果出力レジスタRbの各シフトレジスタRb1,Rb2およびRb3に記憶されている水平側計量結果の中から最古のものを探索する。そして、ステップS309に進み、当該ステップS307で探索された水平側計量結果を傾斜側プロセッサ50に有線で送信する。その後、ステップS311に進み、当該ステップS309で送信し終えた水平側計量結果が記憶されていたシフトレジスタRb1,Rb2またはRb3をリセットし、これをもって、一連のデータ送信タスクを終了する。
【0201】
このような水平側プロセッサ30の動作に対して、傾斜側プロセッサ50は、具体的に次のように動作する。
【0202】
即ち、傾斜側プロセッサ50は、上述したように傾斜側制御プログラムに従って動作するが、特に傾斜側車両検知器72によって車両100が検知されたことを表す傾斜側車両検知信号Sbが当該傾斜側車両検知器72から入力されると、図26の傾斜側制御タスクを実行する。
【0203】
この傾斜側制御タスクによれば、傾斜側プロセッサ30は、まず、ステップS401に進み、水平側プロセッサ30に対して有線通信により上述のデータ送信要求を行う。そして、ステップS403に進み、水平側プロセッサ30から当該データ送信要求に対する応答として車両情報(ID,M,Le,Lf,Lg,W11k,W12k,W21k,W22k,W31kおよびW32k)および水平側計量結果(Wt,Lz,Wt’およびLz’)が送られてくるのを待つ。そして、このステップS403において、水平側プロセッサ30から車両情報および水平側計量結果を受信すると、ステップS405に進み、当該車両情報および水平側計量結果を一旦、メモリ回路508に記憶し、詳しくは図9および図12に示したのと同様の一時記憶レジスタに記憶する
【0204】
そして、傾斜側プロセッサ30は、ステップS407に進み、水平側プロセッサ30によるのと同じ要領で、図23および図24に示した車軸計量タスクを実行する。これにより、車両100が傾斜姿勢にあるときの各左側輪重値W31,W32,W33およびW34が求められる。
【0205】
このステップS407の輪重計量タスクの実行後、傾斜側プロセッサ50は、ステップS409に進み、上述の式28に基づいて車両100全体の重心Gの高さHを求める。さらに、ステップS409に進み、上述の式33に基づいて荷台車104単体の重心G’の高さH’を求める。なお、これら式28および式33の演算で用いられる傾斜角度θは、予めメモリ回路508に記憶されている。そして、傾斜側プロセッサ50は、ステップS413に進み、各重心高さHおよびH’を車載プロセッサ90に無線送信する。
【0206】
ステップS413の実行後、傾斜側プロセッサ50は、ステップS415に進み、一連の計量が終了したことを表す終了メッセージを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ516に表示する。このとき併せて、各重心高さHおよびH’を当該ディスプレイ516に表示する。そして、ステップS417に進み、上述の一時記憶レジスタに記憶された車両情報および水平側計量結果を消去し、つまり当該一時記憶レジスタをリセットする。
【0207】
このステップS417の実行をもって、傾斜側プロセッサ50は、傾斜側制御タスクを終了する。
【0208】
続いて、車載プロセッサ90の動作について、具体的に説明する。
【0209】
即ち、傾斜側プロセッサ50は、上述したように車載制御プログラムに従って動作するが、ICカード92からの車載情報の読み取り処理を経て、その上で、水平側プロセッサ30から無線通信によって車両情報送信要求を受けると、図27に示す車載制御タスクを実行する。
【0210】
この車載制御タスクによれば、車載プロセッサ90は、まず、ステップS501に進み、メモリ回路910に記憶されている車両情報を読み出し、これを水平側プロセッサ30に無線送信する。そして、ステップS503に進み、水平側プロセッサ30から安全性評価の結果が送られてくるのを待つ。
【0211】
ステップS503において、水平側プロセッサ30から安全性評価結果を受信すると、車載プロセッサ90は、ステップS505に進み、当該ステップS503で受信した安全性評価結果をメモリ回路910に記憶する。また、付随データとしての車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、についても、メモリ回路910に記憶する。
【0212】
そして、車載プロセッサ90は、ステップS507に進み、水平側プロセッサ30から送られてきた安全性評価結果が安全である旨を表すものであるか否かを判断する。ここで例えば、当該安全性評価結果が安全である旨を表すものである場合は、ステップS509に進み、安全メッセージをディスプレイ914に表示する。併せて、付随データとしての車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、についても、ディスプレイ914に表示する。このディスプレイ914への安全メッセージの表示を受けて、車両100は、水平側計量部20から傾斜側計量部40に向かって移動する。なお、安全メッセージの表示は、付随データの表示を含め、後述するステップS515における各重心高さHおよびH’の表示が消えるまで継続される。
【0213】
ステップS509の実行後、車載プロセッサ90は、ステップS511に進み、傾斜側プロセッサ50から各重心高さHおよびH’が送られてくるのを待つ。そして、傾斜側プロセッサ50から各重心高さHおよびH’が送られてくると、ステップS513に進み、当該ステップS511で受信した各重心高さHおよびH’をメモリ回路910に記憶する。さらに、ステップS515に進み、上述の安全メッセージおよびその付随データの表示に加えて、これら各重心高さHおよびH’を一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ914に表示する。これをもって、車載制御タスクを終了し、ひいては本第1実施形態の車両計量システム10による一連の計量が終了する。
【0214】
一方、上述のステップS507において、水平側プロセッサ30から送られてきた安全性評価結果が危険である旨を表す場合には、車載プロセッサ90は、当該ステップS507からステップS517に進む。そして、このステップS517において、警告メッセージを一定期間(数秒間〜数十秒間)にわたってディスプレイ914に表示する。併せて、付随データとしての車両100の総重量値Wtと、車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、についても、ディスプレイ914に表示する。さらに、このディスプレイ914に表示する付随データのうち、危険という評価の要因になったもの、要するに上述の注記符号が付されたもの、については、赤色表示等の特別な態様で表示する。これをもって、車載制御タスクを終了する。
【0215】
なお、このようにディスプレイ914に警告メッセージが表示されるときは、併せて、上述の警報器80から警報が発せられる。これを受けて、車両100は、一旦、本第1実施形態の車両計量システム10による計量を終了(中断)する。そして、当該警告メッセージと共にディスプレイ914に表示される付随データとしての車両100全体の左右偏荷重率Reと、荷台車104単体の左右偏荷重率Re’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、に基づいて、車両100の各重心G,G’およびG”のバランスが検証され、特に荷台車104の積載状態が検証される。
【0216】
以上のように、本第1実施形態の車両計量システム10によれば、車両100の総重量Wtのみならず、当該車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、当該重心Gの高さHと、荷台車104単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’と、当該重心G’の高さHと、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置座標値[Lz”,Ly”]と、が言わば総合的に求められる。これらは、車両100の安全走行の維持、言い換えれば当該車両100による安全輸送の維持に、大きく貢献する。しかも、車両100にとっては所定の順路に従って通行路60を通行するだけで、当該総合計量が実現される。従って、車両の重心高さを求めるのに複数の工程を経る必要のある上述した従来技術に比べて、遥かに効率よく当該総合計量を実現することができる。
【0217】
なお、上述した車両情報としての駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W11kおよびW12k,駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W21kおよびW22k,ならびに駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W31kおよびW32kは、駆動車102のみが単体で被計量物とされたときの本第1実施形態の車輌計量システム10による計量結果に基づいて事前に求められる。具体的には、駆動車102のみが単体で水平側計量部20に乗り込んだときに得られる第1軸の左側輪重値W11が、当該第1軸の駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W11kとされ、第2軸の左側輪重値W12が、当該第2軸の駆動車単体水平姿勢時左側車輪印加荷重値W12kとされる。そして、このときに併せて得られる第1軸の右側輪重値W21が、当該第1軸の駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W21kとされ、第2軸の右側輪重値W22が、当該第2軸の駆動車単体水平姿勢時右側車輪印加荷重値W22kとされる。さらに、駆動車102のみが単体で傾斜側計量部40に乗り込んだときに得られる第1軸の左側輪重値W31が、当該第1軸の駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W31kとされ、第2軸の左側輪重値W32が、当該第2軸の駆動車単体傾斜姿勢時左側車輪印加荷重値W32kとされる。なお、これ以外の要領によって、例えば本第1実施形態の車輌計量システム10とは別の計量装置によって、当該各印加荷重値W11k,W12k,W21k,W22k,W31kおよびW32kが求められてもよい。
【0218】
本第1実施形態で説明した内容は、本発明を実現するための一具体例であり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0219】
例えば、車両100として、4軸のセミトレーラを挙げたが、これに限らない。4軸以外のセミトレーラやフルトレーラの計量にも、本発明を適用することができる。また、トレーラ以外のトラックや乗用車等の計量にも、当然に本発明を適用することができる。なお、上述したように、本第1実施形態によれば、最大8軸の車両100に対応することができる。勿論、より多くの軸数の車両100にも対応できるよう構成することも可能である。さらに、詳しい説明は省略するが、本発明を応用することによって、荷台車104に積み込まれるコンテナのみの重量や重心の位置,重心高さをも、求めることができる。
【0220】
また、傾斜側計量部40を構成する右側傾斜計量台420については、ダミーロードセル422,422,…によって支持されることとしたが、これに限らない。即ち、図21を参照しながら説明したように、本第1実施形態では、右側傾斜計量台420に載置される各右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4が計量上必要とされないので、例えば図28に示すように、当該右側傾斜計量台420およびこれを支持するダミーロードセル422,422,…が非設置とされてもよい。ただし、この場合、車両100の任意軸mの左側車輪110が左側傾斜計量台410に載置されている状態にあるとき、つまり各左側ロードセル412,412,…を含め当該左側傾斜計量台410という多少の弾性を有する構造体に載置された状態にあるとき、同じ軸の右側車輪120は非弾性の傾斜路面64(通行路60)に載置された状態になる。すると、右側車輪120が傾斜路面64によって拘束されて、その影響が左側車輪110の左側傾斜計量台410への載置状況に及び、多少ではあるが当該左側車輪110の輪重値W3mの測定精度が低下し、ひいては車両計量システム10全体による総合計量の精度が低下する恐れがある。従って、高精度な総合計量を実現するには、本第1実施形態(図5等)で説明したように、右側傾斜計量台420およびこれを支持するダミーロードセル422,422,…が設置されること、つまり車両100の左右両車輪110および120の載置条件が互いに揃えられることが、望ましい。
【0221】
また、右側傾斜計量台420がダミーロードセル422,422,…によって支持される構成に代えて、例えば左側傾斜計量台410がダミーロードセルによって支持され、若しくは、当該左側傾斜計量台410およびこれを支持するダミーロードセルが非設置とされてもよい。さらに、水平側計量部20の左側水平計量台210がダミーロードセルによって支持され、若しくは、当該左側水平計量台210およびこれを支持するダミーロードセルが非設置とされてもよい。或いは、右側水平計量台220がダミーロードセルによって支持され、若しくは、当該右側水平計量台220およびこれを支持するダミーロードセルが非設置とされてもよい。即ち、上述した各総合印加荷重値W1,W2,W3およびW4のうちのいずれかが検出されなくても、上述の総合計量を実現することができる。
【0222】
例えば、水平側計量部20の左側水平計量台210がダミーロードセルによって支持され、若しくは、当該左側水平計量台210およびこれを支持するダミーロードセルが非設置とされる構成の場合、つまり水平姿勢時の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1が検出されない場合は、傾斜姿勢時の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3と、当該傾斜姿勢時の全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4と、の合算によって、つまり次の式35に基づいて、車両100の総重量値Wtが求められる。
【0223】
《式35》
Wt=W3+W4
【0224】
そして、この式35に基づく車両100の総重量値Wtから、水平姿勢時の全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2を差し引くことで、つまり上述の式4の変形式である次の式36に基づいて、当該水平姿勢時の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1が求められる。
【0225】
《式36》
W1=Wt−W2
【0226】
これ以降は、本第1実施形態で説明したのと同じ要領により総合計量が実現される。
【0227】
加えて、図29に示すように、水平側計量部20を構成する各ロードセル212,212,…および222,222,…については、それぞれの上方側端部のみが概略球状に突出し、それぞれの下方側端部はピット612および622の底面(基礎面)に固定される構造のいわゆるシングルコンベックス型のものであってもよい。ただし、このシングルコンベックス型のものが採用された場合、車両100の載荷によってそれぞれの計量台210および220が撓むと、この計量台210および220の下面と各ロードセル212,212,…および222,222,…との接触部分において「すべり」が生じ、当該各ロードセル212,212,…および222,222,…に横方向の荷重が作用する。この横荷重は、言うまでもなく計量精度の低下を招く。従って、高い計量精度を得るには、ダブルコンベックス型のものが採用されるのが、望ましい。
【0228】
なお、多少の計量精度の低下が許されるのであれば、図30に示すように、傾斜側計量部40の各ロードセル412,412,…についても、シングルコンベックス型のものが採用されてもよい。また、この図30に示す構成おいては、図28に示した構成と同様、右側傾斜計量台420およびこれを支持するダミーロードセル422,422,…が非設置とされているが、当該右側傾斜計量台420およびこれを支持するシングルコンベックス型のダミーロードセル422,422,…が設けられてもよい。
【0229】
さらに、傾斜側計量部40の各ロードセル412,412,…として、シングルコンベックス型のものが採用される場合には、図31に示すように、当該各ロードセル412,412…によって支持される左側傾斜計量台410が水平側計量部40の左側水平計量台210および右側水平計量台220と同様の概略矩形平板とされ、併せて、ピット632の底面が水平方向に対して上述の傾斜角度θを成す傾斜面とされると共に、このピット632の底面に各ロードセル412,412,…が当該傾斜角度θだけ傾斜した状態で固定されてもよい。この構成によれば、図28に示した構成に比べて、特にピット632および左側傾斜計量台410の構造が簡素であるので、当該ピット632および左側傾斜計量台410の低コスト化を図ることができる。その一方で、各ロードセル412,412,…への横荷重が増大するため、計量精度がさらに低下する恐れがある。また、車両100全体の重心Gの高さHを求める要領が、上述したのとは異なる。具体的には、次の要領による。
【0230】
即ち、図31の構成における力学的要素を図示すると、例えば図32のようになる。この図32において、点P3”は、傾斜側ロードセル群LC3による支持位置を表し、言い換えれば車両100の左側車輪110の接地位置を表す。そして、点P4”は、右側車輪120の接地位置を表す。さらに、点Pgは、左右両車輪110および120の接地位置P3”およびP4”を通る仮想傾斜線64e上における車両100の重心Gの位置を表す。この図32によれば、傾斜側ロードセルLC3へは、全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重W3と同じ方向(垂直方向)の荷重が印加される。ただし、この傾斜側ロードセルLC3によって検出されるのは、これに印加される荷重そのものではなく、当該荷重のうち傾斜側ロードセル群LC3に対して真っ直ぐに印加される成分のみである。つまり、全ての左側車輪110,110,…が1軸分ずつ図31の左側傾斜計量台410に載置されたときの左側ロードセル群LC3による荷重検出値を合算すると、その値W3”は、W3”=W3・cosθとなる。
【0231】
ここで例えば、右側車輪120の接地位置P4”を軸とするモーメントに注目すると、上述の式27と同じ次の式37が成立する。
【0232】
《式37》
Le・cosθ・W3={(Le−Lx)+H・tanθ}・cosθ・Wt
【0233】
そして、この式37を高さHについての数式に変形すると、上述の式28と同じ次の式式38のようになる。
【0234】
《式38》
H={Le・W3−(Le−Lx)・Wt}/(Wt・tanθ)
【0235】
さらに、この式38における荷重値W3は、W3=W3”/cosθであるので、これを当該式38に代入すると、次の式39が成立する。
【0236】
《式39》
H={Le・(W3”/cosθ)−(Le−Lx)・Wt}/(Wt・tanθ)
【0237】
従って、図31に示した構成が採用される場合には、この式39に基づいて車両100全体の重心Gの高さHが求められる。
【0238】
また、荷台車104単体の重心G’の高さH’についても、式39に準拠する次の式40に基づいて求められる。なお、式40における荷重値W3’は、図31の構成が採用された上で、上述の式32に基づいて求められる(ただし厳密には、傾斜姿勢にある荷台車104単体の重量Wt’による全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値ではなく、傾斜側ロードセル群LC3によるその検出値である)。
【0239】
《式40》
H’={Le・(W3’/cosθ)−(Le−Lx’)・Wt’}/(Wt’・tanθ)
【0240】
そしてさらに、各ロードセル212,212,…および222,222,…ならびに412,412,…として、いわゆるデジタル式のものが採用されたが、アナログ式のものが採用されてもよい。この場合、言うまでもなく、アナログ荷重検出信号をデジタル化するためのA/D変換回路が必要になる。また、状況に応じて、当該アナログ荷重検出信号を適当に増幅するための増幅回路や、当該アナログ荷重検出信号に含まれる各種ノイズを除去するためのフィルタ回路等も、適宜必要になる。
【0241】
また、水平側計量部20として、例えば図33に示すようなバー型のものが採用されてもよい。即ち、このバー型の水平計量部20は、車両100の進行方向における長さ寸法L21’が同方向における左右両車輪110および120それぞれの接地面長さLbよりも小さい(L21’<Lb)左右2つの水平計量台230および240と、これら2つの水平計量台230および240のそれぞれを支持する2組のロードセル群232および242と、を有している。このようなバー型の水平計量部20によれば、車両100が走行していることを条件として、言わば動的モードによって、当該車両100の走行速度をも加味することで、左右それぞれの任意軸mの輪重値W1mおよびW2mを求めることができる。このバー型による輪重値W1mおよびW2mの算出要領については、公知であるので、ここでの詳しい説明は省略する。これと同様に、傾斜側計量部40についても、バー型のものが採用されてもよい。
【0242】
なお、本第1実施形態で説明した水平計量部20の構成、つまり車両100の進行方向における左右2つの水平計量台210および220それぞれの長さ寸法L21が同方向における左右両車輪110および120それぞれの接地面長さLbよりも大きい(L21>Lb)構成、によれば、動的モードでの計量は勿論のこと、静的モードでの計量も可能である。即ち、任意軸mの左右の車輪110および120が左右の水平計量台210および220に載置された状態で車両100が停止されたときは、当該任意軸mの左右の輪重値W1mおよびW2mを精確に求めることができる。
【0243】
本第1実施形態では、車載プロセッサ90にICカードリーダ916が設けられる構成としたが、これに限らない。例えば、水平側プロセッサ30の付属要素として、同様のICカードリーダが設けられてもよい。この場合、ICカードリーダは、水平側計量部20の手前の位置に設置されるのが望ましく、特に車両検知器70に代えて設置されるのが望ましい。この構成によれば、車両100がICカードリーダの近傍を通過する際に、その車両100に備えられたICカード92がICカードリーダの読み取り部にタッチされることで、当該ICカード92内の車両情報がICカードリーダによって読み取られる。読み取られた車両情報は、水平側プロセッサ30に入力される。水平側プロセッサ30は、この車両情報の入力を受けて、これから車両100が水平側計量部20に乗り込もうとしていることを認識すると共に、当該車両100の車両情報を認識する。そして、上述した要領で各処理を行う。なお、水平側プロセッサ30に入力された車両情報は、当該水平側プロセッサ30から車載プロセッサ90に対して直接的に送信(無線送信)されてもよいし、傾斜側プロセッサ50経由で送信されてもよい。また、ICカードリーダとして、通信可能距離が比較的に長い(例えば数m〜数十m程度の)ものが採用されれば、車両100が当該ICカードリーダの近傍を通過する際に、その車両に備えられたICカードから車両情報が言わば自動的に読み取られ、のさらなる効率化が図られる。
【0244】
さらに、本第1実施形態では、水平側プロセッサ30によって、車両100全体の重心Gの位置と、荷台車104単体の重心G’の位置と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置と、が求められると共に、これら各重心G,G’およびG”のバランスが評価されたが、これに限らない。例えば、水平側プロセッサ30から車載プロセッサ90に対して水平姿勢時の左右の各輪重値W11〜W14およびW21〜W24に関する情報が送信され、車載プロセッサ90側において、当該水平側プロセッサ30から送信されてきた情報に基づいて、各重心G,G’およびG”の位置が求められると共に、これら各重心G,G’およびG”のバランスが評価されてもよい。
【0245】
これと同様に、傾斜側プロセッサ50によって求められる車両100全体の重心高さHおよび荷台車104単体の重心高さH’についても、車載プロセッサ90側で求められてもよい。即ち、傾斜側プロセッサ50から車載プロセッサ90に対して傾斜姿勢時の各左側輪重値W31〜W34に関する情報が送信され、車載プロセッサ90側において、当該傾斜側プロセッサ50から送信されてきた情報に基づいて、各重心高さHおよびH’が求められてもよい。
【0246】
また、水平側プロセッサ30と傾斜側プロセッサ50とは、1台のプロセッサに統合されてもよい。このようにすれば、当該1台のプロセッサへの処理の負担は増大するものの、車両計量システム10全体の構成が簡素化される。
【0247】
加えて、本第1実施形態では、水平側計量部20と傾斜側計量部40とが設けられたが、これに限らない。詳しい図示は省略するが、例えば後方から見て水平方向に対して時計回りにθ’という角度だけ傾斜した第1の傾斜計量部と、反時計回りにθ”という角度だけ傾斜した第2の傾斜計量部と、が設けられ、これら各傾斜計量部によって得られる荷重検出値に基づいて、一連の計量が行われてもよい。なお、各傾斜角度θ’およびθ”は、互いに等価(θ’=θ”)であってもよいし、不等価(θ’≠θ”)であってもよい。
【0248】
このように互いに異なる方向に傾斜した2つの傾斜計量部が設けられる構成によれば、次のような利点がある。即ち、本第1実施形態で説明した水平側計量部20と傾斜側計量部40とが設けられる構成によれば、言わば水平側計量部20による荷重検出値としてのW1およびW2と、傾斜側計量部40による荷重検出値としてのW3と、の相互差が大きいほど、車両100全体の重心高さHおよび荷台車104単体の重心高さH’を精確に求めることができる。それには、傾斜側計量部40の傾斜角度θが大きいこと、厳密には水平側計量部20と傾斜側計量部40との間でそれぞれの車両100の載置面(上面)の角度差が大きいことが、必要とされる。しかしながら、この角度差が過度に大きいと、つまり傾斜側計量部40の傾斜角度θが過度に大きいと、この傾斜側計量部40に車両100が乗り込んだときに当該車両100が転倒する危険性が極めて高くなる。これに対して、互いに異なる方向に傾斜した2つの傾斜計量部が設けられる構成によれば、それぞれの傾斜角度θ’およびθ”そのもの(絶対値)が比較的に小さくても、両者の相互差が比較的に大きいので、各重心高さHおよびH’を精確に求めることができる。例えば、一方の傾斜角度θ’の絶対値|θ’|が5度であり、他方の傾斜角度θ”の絶対値|θ”|もまた5度である、とすると、本第1実施形態で説明した水平側計量部20と傾斜側計量部40とが設けられる構成において当該傾斜側計量部40の傾斜角度θが10度であるのと略同等の精度で各重心高さHおよびH’を求めることができる。言い換えれば、一方の傾斜角度θ’の絶対値|θ’|が10度であり、他方の傾斜角度θ”の絶対値|θ’|もまた10度である、とすると、本第1実施形態において傾斜側計量部40の傾斜角度θが10度である場合に比べてより高い精度(概ね2倍の精度)で各重心高さHおよびH’を求めることができる。つまり、互いに異なる方向に傾斜した2つの傾斜計量部が設けられる構成によれば、車両100の転倒の危険性を抑えつつ、より高い精度で各重心高さHおよびH’を求めることができる。
【0249】
また、本第1実施形態では、車両計量システム10の設置場所として、輸送業者の敷地内が例示されたが、これに限らない。例えば、公的な計量所や、その他の公的または私的な場所にも当然に、当該車両計量システム10の設置が可能である。
【0250】
次に、本発明の第2実施形態について、説明する。
【0251】
本第2実施形態においては、水平側計量部20として、図34に示すようなものが採用される。即ち、この図34に示す水平側計量部20は、車両100の任意の1軸分の左右両車輪110および120のみが同時に載置可能な一体の水平計量台200を有する。この水平計量台200は、図示しないリブ等の適当な補強部材を備えた概略矩形の金属製平板であり、その一方主面が上面として真上に向けられると共に、他方主面が下面として真下に向けられた状態で、複数の、例えば4つの、ロードセル202,202,…によって支持されている。なお、各ロードセル202,202,…は、第1実施形態におけるのと同様のダブルコンベックス型のものであり、水平路面62(通行路60)に形成された概略矩形穴状のピット602内において、水平計量台200の下面の四隅近傍を支持するように配置されている。そして、特に図34(c)に示すように、これら各ロードセル202,202,…のうち、水平計量台200の左側に配置された2つのロードセル202および202は、左側ロードセル群LC10という1つの集合体として取り扱われ、当該水平計量台200の右側に配置された2つのロードセル202および202は、右側ロードセル群LC20という1つの集合体として取り扱われる。また、水平計量台200の長さ寸法L50は、それぞれの車輪110および120の接地面長さLbよりも大きく(L50>Lb)、例えば第1実施形態における左右各水平計量台210および220それぞれの長さ寸法L21と等価(L50=L21)である。そして、水平計量台200の幅寸法L51は、車両100の左右両車輪110および120間の距離Leと当該各車輪110および120それぞれの接地面幅Ldとを加味して適宜に定められ、例えば第1実施形態における左右各水平計量台210および220それぞれの外方側側縁間の距離L23と等価(L51=L23)である。
【0252】
さらに、水平計量台200の一方側縁、例えば左側側縁、における略中央位置の外方には、車両100の側面までの距離L52を測定するための第1車両載置位置検知手段としての水平側距離センサ260が設けられている。そして、詳しい図示は省略するが、この水平側距離センサ260から出力される水平側距離測定信号Sd1は、水平側プロセッサ30に入力され、厳密には入出力インタフェース回路304を介してCPU306に入力される。なお、水平側距離センサ260としては、例えば赤外線を利用した赤外線方式のものが採用されるが、これ以外の光方式や超音波方式のものも採用可能である。また極端には、水平側距離センサ260に代えて、ビデオカメラが設置されると共に、このビデオカメラによる撮影画像から当該距離L52が導き出されてもよい。
【0253】
併せて、傾斜側計量部40として、図35に示すようなものが採用される。即ち、この図35に示す傾斜側計量部40は、車両100の任意の1軸分の左右両車輪110および120のみが同時に載置可能な一体の傾斜計量台400を有するものである。この傾斜計量台400は、その上面が傾斜面とされており、下面が水平面とされたものであり、図示しないリブ等の適当な補強部材によって補強されている。特に上面は、これを上方から見ると概略矩形であり、後方から見ると水平方向に対して反時計回りに所定角度θだけ傾斜している。そして、この傾斜計量台400もまた、傾斜路面64(通行路60)に形成された概略矩形穴状のピット602内において、複数の、例えば4つの、ダブルコンベックス型のロードセル402,402,…および404,404,…によって、その下面の四隅近傍を支持されている。ただし、この傾斜計量台400の右側に配置された2つのロードセル404および404は、ダミーである。これら2つのダミーロードセル404および404は、特に図35(b)に示すように、ダミーロードセル群LC40という1つの集合体として取り扱われる。片や、傾斜計量台400の左側に配置された2つのロードセル402および402は、傾斜側ロードセル群LC30という1つの集合体として取り扱われる。なお、傾斜計量台400の長さ寸法L70は、上述の水平計量台200の長さ寸法L50と基本的に同じ(L70=L50)である。そして、当該傾斜計量台400の上面幅寸法L71は、水平計量台200の幅寸法L51と基本的に同じ(L71=L51)である。
【0254】
さらに、この傾斜計量台400の一方側縁、例えば左側側縁、における略中央位置の外方にも、図34に示したのと同様の第2車両載置検出手段としての傾斜側距離センサ460が設けられており、この傾斜側距離センサ460によって車両100の側面までの距離L72が測定される。なお、詳しい図示は省略するが、この傾斜側距離センサ460から出力される傾斜側距離測定信号Sd2は、傾斜側プロセッサ50に入力され、厳密には入出力インタフェース回路506を介してCPU504に入力される。
【0255】
なお、これ以外の構成、特にハードウェア構成は、第1実施形態におけるのと同様であるので、それらについての詳しい説明は省略する。
【0256】
さて、本第2実施形態の車両計量システム10によれば、第1実施形態と同様、車両100の総重量値Wtと、当該車両100全体の重心Gの位置および高さHと、荷台車104単体の重心G’の位置および高さH’と、当該荷台車104単体の水平方向重心G”の位置と、を総合的に求めることができる。
【0257】
具体的には、まず、車両100が水平側計量部20を通行することによって、当該車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…が1軸分ずつ順次水平計量台200に載置されると共に、当該水平計量台200から降りる。この過程で、第1軸,第2軸,第3軸および第4軸それぞれの左右両車輪110および120が水平計量台200に載置されたときの左側ロードセル群LC10による荷重検出値W011,W012,W013およびW014と右側ロードセル群LC20による荷重検出値W021,W022,W023およびW024が取得される。なお、これらの荷重検出値W011〜W014およびW021〜W024は、輪重値W11〜W14およびW21〜W24ではない。
【0258】
そして、左側ロードセル群LC10による各荷重検出値W011〜W014が合算されることで、つまり次の式41に基づいて、左側総合荷重検出値W10が求められる。
【0259】
《式41》
W10=W011+W012+W013+W014
【0260】
また、右側ロードセル群LC20による各荷重検出値W021〜W024が合算されることで、つまり次の式42に基づいて、右側総合荷重検出値W20が求められる。
【0261】
《式42》
W20=W021+W022+W023+W024
【0262】
さらに、式41に基づく左側総合荷重検出値W10と式42に基づく右側総合荷重検出値W20とが合算されることで、つまり次の式43に基づいて、車両100の総重量値Wtが求められる。
【0263】
《式43》
Wt=W10+W20
【0264】
ここで、これら左側総合荷重検出値W10と右側総合荷重検出値W20と車両100の総重量値Wtとに加えて、車両100の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2との相互関係を、当該車両100の左右方向における力学的要素として図示すると、例えば図36のようになる。なお、この図36における点P10は、左側ロードセル群LC10による支持位置を表し、点P20は、右側ロードセル群LC20による支持位置を表す。そして、点P10’は、左側車輪110の接地位置を表し、点P20’は、右側車輪110の接地位置を表す。さらに、点PGは、左右の各ロードセル群LC10およびLC20による支持位置P10およびP20を通る仮想水平線62f上における車両100の重心Gの位置を表す。そして、点P0は、車両100の左右方向における中心を表す。
【0265】
この図36において、例えば右側ロードセル群LC20による支持位置P20を軸とするモーメントに注目すると、次の式44が成立する。
【0266】
《式44》
L53・W10=(L53−L54)・W1+{L53−(L54+Le)}・W2
【0267】
この式44において、L53は、左側ロードセル群LC10による支持位置P10と右側ロードセル群LC20による支持位置P20との相互間距離であり、既知である。そして、L54は、左側ロードセル群LC10による支持位置P10と車両100の左側車輪110の載置位置P10’との相互間距離であり、水平側距離センサ260による測定距離L52を含む次の式45に基づいて求められる。なお、式45におけるL55は、車両100の左側側面と当該車両100の左側車輪110の載置位置(厳密には中心位置)P10’との相互間距離であり、L56は、水平側距離センサ260と左側ロードセル群L10による支持位置P10との水平方向における相互間距離であり、これらはいずれも既知である。
【0268】
《式45》
L54=(L52+L55)−L56
【0269】
併せて、式43に基づく車両100の総重量値Wtは、上述の式4から分かるように、当該車両100の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2との合算値(Wt=W1+W2)でもある。そうすると、式4と式44との連立方程式を解くことで、全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2とが求められる。
【0270】
これと同じ要領で、第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W11〜W14と右側輪重値W21〜W24とが求められる。例えば、第1軸のみに注目すると、上述の式44に準拠する次の式46が成立する。なお、この式46は、式44における左側総合荷重検出値W10を、第1軸の左右両車輪110および120のみが水平計量台200に載置されたときの左側ロードセル群LC10による荷重検出値W011に置き換えると共に、当該式44における全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W1と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W2とを、それぞれ第1軸の左側輪重値W11と右側輪重値W21とに置き換えたものである。
【0271】
《式46》
L53・W011=(L53−L54)・W11+{L53−(L54+Le)}・W21
【0272】
そして、第1軸の左右両車輪110および120のみが水平計量台200に載置されたときの左側ロードセル群LC10による荷重検出値W011と右側ロードセル群LC20による荷重検出値W021との合算値(W011+W021)は、当該第1軸の軸重値であり、当該第1軸の左側輪重値W11と右側輪重値W21との合算値(W11+W21)に等しいので、次の式47が成立する。
【0273】
《式47》
W011+W021=W11+W21
【0274】
そうすると、式46と式47との連立方程式を解くことで、第1軸の左側輪重値W11と右側輪重値W21とが求められることになる。そして、他の第2軸〜第4軸それぞれの左右各輪重値W12〜W14およびW22〜W24についても、同じ要領で求められる。
【0275】
このようにして車両100が水平姿勢にあるときの第1軸〜第4軸それぞれの左右各輪重値W11〜W14およびW21〜W24が求められることによって、第1実施形態と同様の要領で車両100全体の重心Gの位置を表す左右偏心量Lzと、荷台車104単体の重心G’の位置を表す左右偏心量Lz’と、荷台車104単体の水平方向重心G”の位置を表す座標値[Lz”,Ly”]と、を求めると共に、これら各重心G,G’およびG”のバランスを評価することができる。なお、車両100の総重量値Wtについては、第1実施形態と同様に全ての輪重値W11〜W14およびW21〜W24を合算すること(式4)によって求めることができるし、上述の如く式43によっても求めることができる。
【0276】
各重心G,G’およびG”のバランスが良好である場合、車両100は、傾斜側計量部40へ進む。そして、この傾斜側計量部40においても、車両100の左右両車輪110,110,…および120,120,…が1軸分ずつ順次傾斜計量台400に載置されると共に、当該傾斜計量台400から降りる。この過程で、第1軸,第2軸,第3軸および第4軸それぞれの左側車輪110および120が傾斜計量台400に載置されたときの傾斜側ロードセル群LC30による荷重検出値W031,W032,W033およびW034が取得される。なお、これらの荷重検出値W031〜W034もまた、輪重値W31〜W34ではない。
【0277】
そして、傾斜側ロードセル群LC30による各荷重検出値W031〜W034が合算されることで、つまり次の式48に基づいて、傾斜側総合荷重検出値W30が求められる。
【0278】
《式48》
W30=W031+W032+W033+W034
【0279】
ここで、この傾斜側総合荷重検出値W30に加えて、車両100の総重量値Wtと当該車両100が傾斜姿勢にあるときの全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4との相互関係を、当該車両100の左右方向における力学的要素として図示すると、例えば図37のようになる。なお、この図37における点P30は、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置を表し、点P40は、ダミーロードセル群LC40による支持位置を表す。そして、点P30’は、左側車輪110の接地位置を表し、点P40’は、右側車輪110の接地位置を表す。さらに、点PG’は、左側車輪110の接地位置P30’と右側車輪120の接地位置P40’とを通る仮想傾斜線64f上における車両100の重心Gの位置を表し、点PGaは、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30とダミーロードセル群LC40による支持位置P40とを通る仮想水平線64g上における当該重心Gの位置を表す。そして、ダミーロードセル群LC40による支持位置P40を起点とする上方向きの矢印W40は、当該ダミーロードセル群LC40に印加される1台分の車両100による総合荷重であるが、このダミーロードセル群LC40への総合印加荷重W40は、本第2実施形態では検出されない。
【0280】
この図37において、例えばダミーロードセル群LC40による支持位置P40を軸とするモーメントに注目すると、次の式49が成立する。
【0281】
《式49》
L73・W30=(L74+Le・cosθ)・W3+L74・W4
【0282】
この式49において、L73は、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30とダミーロードセル群LC40による支持位置P40との相互間距離であり、既知である。そして、L74は、ダミーロードセル群LC40による支持位置P40と車両100の右側車輪120の載置位置P40’との水平方向における相互間距離であり、次の式50によって求められる。
【0283】
《式50》
L74=L73−(Le・cosθ+L75・cosθ)
【0284】
さらに、この式50におけるL75は、仮想傾斜線64f上における傾斜側ロードセル群LC30への荷重W30の印加位置P31と当該仮想傾斜線64f上における左側車輪110の載置位置P30’との相互間距離であり、傾斜側距離センサ460による測定距離L72を含む次の式51に基づいて求められる。なお、式51におけるL76は、仮想傾斜線64f上における傾斜側距離センサ460の設置位置P50と傾斜側ロードセル群L30による支持位置P30との水平方向における相互間距離であり、既知である。そして、L55は、車両100の左側側面と当該車両100の左側車輪110の載置位置(厳密には中心位置)P30’との相互間距離であり、図36に示したのと同じである。
【0285】
《式51》
L75=(L72+L55)−(L76/cosθ)
【0286】
併せて、上述の式43に基づく車両100の総重量値Wtは、傾斜姿勢にある当該車両100の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4との合算値(W3+W4)でもあり、つまり次の式52が成立する。
【0287】
《式52》
Wt=W3+W4
【0288】
そうすると、この式44と上述の(式50および式51を含む)式49との連立方程式を解くことで、傾斜姿勢にある車両100の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4とが求められる。
【0289】
これと同じ要領で、傾斜姿勢にある車両100の第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W31〜W34が求められる。例えば、第1軸のみに注目すると、上述の式49に準拠する次の式53が成立する。なお、この式53は、式49における傾斜側総合荷重検出値W30を、第1軸の左右両車輪110および120のみが傾斜計量台400に載置されたときの傾斜側ロードセル群LC30による荷重検出値W031に置き換えると共に、当該式49における全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4とを、それぞれ第1軸の左側輪重値W31と右側輪重値W41とに置き換えたものである。
【0290】
《式53》
L73・W031=(L74+Le・cosθ)・W31+L74・W41
【0291】
そして、傾斜姿勢にある車両100の第1軸の左側輪重値W31と右側輪重値W41との合算値(W31+W41)は、当該第1軸の輪重値であるので、上述の式47に準拠する次の式54が成立する。
【0292】
《式54》
W011+W021=W31+W41
【0293】
そうすると、式53と式54との連立方程式を解くことで、傾斜姿勢にある車両100の第1軸の左側輪重値W31と右側輪重値W41とが求められることになり、特に左側輪重値W31が求められる。そして、他の第2軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W32〜W34についても、同じ要領で求められる。
【0294】
このようにして車両100が傾斜姿勢にあるときの第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W31〜W34が求められることにより、第1実施形態と同様の要領で車両100全体の重心高さHを求めると共に、荷台車104単体の重心高さH’を求めることができる。
【0295】
なお、本第2実施形態においても、水平側計量部20を構成する各ロードセル202,202,…として、図38に示す如くシングルコンベックス型のものが採用されてもよい。ただし、高い計量精度を得る上では、シングルコンベックス型よりもダブルコンベックス型の方が好適であることは、上述した通りである。
【0296】
また、多少の計量精度の低下が許されるのであれば、図39に示すように、傾斜側計量部40の各ロードセル402,401,…および各ダミーロードセル404,404,…についても、シングルコンベックス型のものが採用されてもよい。
【0297】
さらに、図40に示すように、傾斜計量台400が概略矩形平板とされると共に、ピット604の底面が傾斜面とされ、この傾斜面とされたピット604の底面に各ロードセル402,402,…および各ダミーロードセル404,404,…が傾斜した状態で固定されてもよい。ただし、この場合は、車両100全体の重心Gの高さHを求める要領が、上述したのとは少し異なる。具体的には、次の要領による。
【0298】
即ち、図40の構成における力学的要素を図示すると、例えば図41のようになる。この図41において、点P30”は、傾斜側ロードセル群LC3による支持位置を表し、点P40”は、ダミーロードセル群LC40による支持位置を表す。そして、点P31”は、左側車輪110の接地位置を表し、点P41”は、右側車輪110の接地位置を表す。さらに、点PG”は、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30”とダミーロードセル群LC40による支持位置P40”とを通る仮想傾斜線64i上における車両100の重心Gの位置を表す。この図41によれば、傾斜側ロードセルLC30へは、図37に示した荷重W3と同じ方向(垂直方向)の荷重が印加されるが、当該傾斜側ロードセルLC30によって検出されるのは、これに印加される荷重そのものではなく、当該荷重のうち傾斜側ロードセル群LC30に対して真っ直ぐに印加される成分のみである。つまり、左右全ての左側車輪110,110,および120,120,…が1軸分ずつ図40の傾斜計量台400に載置されたときの傾斜側ロードセル群LC30による荷重検出値を合算すると、その値W30”は、W30”=W30・cosθとなる。
【0299】
ここで例えば、ダミーロードセル群LC40による支持位置P40”を軸とするモーメントに注目すると、次の式55が成立する。
【0300】
《式55》
L80・W30=(L81+Le)・W3+L81・W4
【0301】
この式55において、L80は、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30”とダミーロードセル群LC40による支持位置P40”との相互間距離であり、既知である。そして、L81は、ダミーロードセル群LC40による支持位置P40”と右側車輪120の載置位置P41”との相互間距離であり、次の式56によって求められる。
【0302】
《式56》
L81=L80−(Le+L82)
【0303】
さらに、この式56におけるL82は、傾斜側ロードセル群LC30による支持位置P30”と左側車輪110の載置位置P31”との相互間距離であり、傾斜側距離センサ460による測定距離L72を含む次の式57に基づいて求められる。なお、式57におけるL83は、仮想傾斜線64i上における傾斜側距離センサ460の設置位置P50”と傾斜側ロードセル群L30による支持位置P30”との相互間距離であり、既知である。そして、L55は、車両100の左側側面と当該車両100の左側車輪110の載置位置(厳密には中心位置)P31”との相互間距離であり、図36および図37に示したのと同じである。
【0304】
《式57》
L82=(L72+L55)−L83
【0305】
加えて、上述の式55における荷重値W30は、W30=W30”/cosθであるので、これを当該式55に代入すると、次の式58が成立する。
【0306】
《式58》
L80・(W30”/cosθ)=(L81+Le)・W3+L81・W4
【0307】
そうすると、この式58と上述の式52との連立方程式を解くことで、傾斜姿勢にある車両100の全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4とが求められる。
【0308】
これと同じ要領で、傾斜姿勢にある車両100の第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W31〜W34が求められる。例えば、第1軸のみに注目すると、上述の式58に準拠する次の式59が成立する。なお、この式59は、式58における傾斜側総合荷重検出値W30”を、第1軸の左右両車輪110および120のみが傾斜計量台400に載置されたときの傾斜側ロードセル群LC30による荷重検出値W031に置き換えると共に、当該式58における全ての左側車輪110,110,…への総合印加荷重値W3と全ての右側車輪120,120,…への総合印加荷重値W4とを、それぞれ第1軸の左側輪重値W31と右側輪重値W41とに置き換えたものである。
【0309】
《式59》
L80・(W031/cosθ)=(L81+Le)・W31+L81・W41
【0310】
そうすると、この式59と上述の式54との連立方程式を解くことで、傾斜姿勢にある車両100の第1軸の左側輪重値W31と右側輪重値W41とが求められることになり、特に左側輪重値W31が求められる。そして、他の第2軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W32〜W34についても、同じ要領で求められる。
【0311】
このようにして車両100が傾斜姿勢にあるときの第1軸〜第4軸それぞれの左側輪重値W31〜W34が求められることにより、第1実施形態と同様の要領で車両100全体の重心高さHを求めると共に、荷台車104単体の重心高さH’を求めることができる。
【0312】
なお、傾斜計量台400の右側の各ロードセル404および404がダミーロードセルとされるのではなく、当該傾斜計量台400の左側の各ロードセル402および402がダミーロードセルとされてもとい。また、これらに代えて、水平側計量部20を構成する水平計量台400の左側または右側の各ロードセル202および202がダミーロードセルとされてもよい。
【0313】
さらに、水平計量台200上における車両100(左右両車輪110および120)の載置位置を検知するための上述した水平側距離センサ260等の第1車両載置位置検知手段に代えて、図示は省略するが、当該水平計量台200上における車両100の載置位置として希望の位置に適当な目印が付されてもよい。例えば、左右両車輪110および120間の距離Leに応じた間隔を置くと共に車両100の進行方向に沿って延伸する2本の直線状のラインが、当該目印として付されてもよい。この場合、水平計量台200上に車両100が乗り込む際に、この2本のライン上に左右両車輪110および120が載置されるようにすることで、当該2本のラインの位置を左右両車輪110および120の載置位置として代用することができる。このようにすれば、水平側距離センサ260等の第1車両載置位置検知手段が不要となり、その分、車両計量システム10全体の構成が簡素化かつ低コスト化される。その一方で、水平計量台200上に車両100が乗り込む際に、2本のライン上に左右両車輪110および120が精確に載置される必要があるため、それ相応の運転技術や慎重さが要求される。従って、計量作業の効率化を図る上では、本第2実施形態で説明した如く水平側距離センサ260等の第1車両載置位置検知手段が採用されるのが、適当である。このことは、傾斜計量台400側の傾斜側距離センサ460等の第2車両載置位置検知手段についても、同様である。
【0314】
加えて、車両100が特に上述のトレーラである場合は、当該車両100の第1軸に当たる駆動車102の前輪110および120には、荷台車104単体の重量Wt’の分布(バランス)に拘らず左右略均等な荷重が印加される。この点に着目すると、例えば水平計量台200に車両100が乗り込む際に、当該車両100の第1軸の左右両車輪110および120が水平計量台200に乗り込んだときの左側ロードセル群LC10による荷重検出値W10と右側ロードセル群LC20による荷重検出値W20との比率に基づくことで、当該水平側計量台200上における車両100の載置位置を求めることができる。傾斜計量台400に関しても、右側のロードセル群LC40がダミーでない場合には、同様の要領で、当該傾斜計量台400上における車両100の載置位置を求めることができる。
【符号の説明】
【0315】
10 車両計量システム
20 水平側計量部
30 水平側プロセッサ
40 傾斜側計量部
50 傾斜側プロセッサ
100 車両
210 左側水平計量台
212 左側ロードセル
220 右側水平計量台
222 右側ロードセル
410 左側傾斜計量台
412 傾斜側ロードセル
420 右側傾斜計量台
422 ダミーロードセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計量物としての車両が第1姿勢で通行するように作られた第1路面の一部を形成すると共に該車両に属する全ての車輪のうち1軸分のみが左右別々または一緒に載置可能な第1計量台を有し、該第1計量台に該全ての車輪が1軸分ずつ順次載置されることによって、該車両が該第1姿勢にあるときに該全ての車輪のそれぞれに印加される荷重を測定する第1荷重測定手段と、
上記第1路面に繋がっており上記車両が上記第1姿勢とは異なる第2姿勢で通行するように作られた第2路面の一部を形成すると共に上記全ての車輪のうち少なくとも上記左右のいずれか一方側に属する一方側車輪が1軸分のみ載置可能な第2計量台を有し、該第2計量台に全ての該一方側車輪が1軸分ずつ順次載置されることによって、該車両が該第2姿勢にあるときに該全ての一方側車輪のそれぞれに印加される荷重を測定する第2荷重測定手段と、
上記第1荷重測定手段から得られる第1荷重測定値と上記第2荷重測定手段から得られる第2荷重測定値とに基づいて上記車両の重心の高さを求める重心高さ演算手段と、
を具備し、
上記第1姿勢は上記車両の進行方向に対して直角な平面上で該車両が水平方向に対して第1角度を成す姿勢であり、
上記第2姿勢は上記車両の進行方向に対して直角な平面上で該車両が水平方向に対して上記第1角度とは異なる第2角度を成す姿勢である、
車両計量装置。
【請求項2】
上記第1角度は略零であり、
上記第2角度は鋭角である、
請求項1に記載の車両計量装置。
【請求項3】
上記車両が上記第1路面を通行した後に上記第2路面を通行するように該第1路面および第2路面が配されており、
上記車両が上記第2路面を通行する前に上記第1荷重測定値に基づいて該車両の左右方向における上記重心の位置である左右重心位置を求める左右重心位置演算手段と、
上記車両が上記第2路面を通行する前に上記左右重心位置に基づいて上記車両の左右方向における重心バランスを評価する左右重心バランス評価手段と、
上記車両が上記第2路面を通行する前に上記左右重心バランス評価手段による評価結果を出力する左右重心バランス評価結果出力手段と、
をさらに備える、
請求項2に記載の車両計量装置。
【請求項4】
上記第1角度は鋭角であり、
上記第2角度は上記第1角度とは逆方向に成す鋭角である、
請求項1に記載の車両計量装置。
【請求項5】
上記車両は駆動車と該駆動車によって牽引される荷台車とから成る牽引自動車であり、
上記駆動車が上記荷台車と切り離された単体の状態にありかつ上記第1姿勢および上記第2姿勢にそれぞれあるときの該駆動車単体に属する全ての左側車輪への印加荷重値である駆動車単体左側車輪印加荷重値と該駆動車単体に属する全ての右側車輪への印加荷重値である駆動車単体右側車輪印加荷重値とが予め記憶された駆動車単体荷重値記憶手段と、
上記第1荷重測定値と上記第2荷重測定値と上記駆動車単体左側車輪印加荷重値と上記駆動車単体右側車輪印加荷重値とに基づいて上記荷台車単体の重心の高さを含む荷台車単体重心情報を求める荷台車単体重心情報演算手段と、
をさらに備える、
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項6】
上記車両は駆動車と該駆動車によって牽引される荷台車とから成る牽引自動車であり、
上記駆動車が上記荷台車と切り離された単体の状態にありかつ上記第1姿勢および上記第2姿勢にそれぞれあるときの該駆動車単体に属する全ての左側車輪への印加荷重値である駆動車単体左側車輪印加荷重値と該駆動車単体に属する全ての右側車輪への印加荷重値である駆動車単体右側車輪印加荷重値とが予め記憶された駆動車単体荷重値記憶手段と、
上記第1荷重測定値と上記駆動車単体左側車輪印加荷重値と上記駆動車単体右側車輪印加荷重値とに基づいて上記荷台車単体の水平方向における重心の位置である水平方向重心位置を求める水平方向重心位置演算手段と、
をさらに備える、
請求項1ないし4のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項7】
上記水平方向重心位置に基づいて上記荷台車単体の水平方向における重心バランスを評価する荷台車単体重心バランス評価手段と、
上記荷台車単体重心バランス評価手段による評価結果を出力する荷台車単体重心バランス評価結果出力手段と、
をさらに備える、
請求項6に記載の車両計量装置。
【請求項8】
上記第1計量台および上記第2計量台の一方または両方の上記車両の進行方向における寸法は該車両の進行方向における上記車輪の接地面の寸法よりも大きい、
請求項1ないし7のいずれかに記載の車両計量装置。
【請求項9】
上記第1計量台および上記第2計量台の一方または両方の上記車両の進行方向における寸法は該車両の進行方向における上記車輪の接地面の寸法よりも小さい、
請求項1ないし7のいずれかに記載の車両計量装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【公開番号】特開2013−96857(P2013−96857A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240296(P2011−240296)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)