車体の生産方法
【課題】電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することを課題とする。
【解決手段】ST08において、車体の外表面の表面粗さを向上させるために研磨を行う。具体的には、前処理前に車体の外表面に研磨を施し、研磨後の車体の外表面に電着塗装を行って得られた電着塗膜の表面粗さがRa=0.1μm〜0.15μmになるようにする。
【効果】上記表面粗さを有する電着塗膜の上に中塗り塗装、上塗りベース塗装、上塗りクリア塗装を施し、焼付け作業を行った場合、平滑な上塗りクリア塗膜を得ることができる。よって、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することができる。
【解決手段】ST08において、車体の外表面の表面粗さを向上させるために研磨を行う。具体的には、前処理前に車体の外表面に研磨を施し、研磨後の車体の外表面に電着塗装を行って得られた電着塗膜の表面粗さがRa=0.1μm〜0.15μmになるようにする。
【効果】上記表面粗さを有する電着塗膜の上に中塗り塗装、上塗りベース塗装、上塗りクリア塗装を施し、焼付け作業を行った場合、平滑な上塗りクリア塗膜を得ることができる。よって、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の塗装工程では、一般に電着塗装後、中塗り塗装後、上塗りベース塗装後、上塗りクリア塗装後の各々の時点で、塗装面を加熱する焼付け作業が実施される。このように焼付け作業の回数が多いと乾燥炉の数量も多くなるので、塗装工程で消費される熱量は膨大になる。省エネルギーの観点から、熱量の低減化が必要とされる。
【0003】
本発明者等は、塗装面の加熱に必要な熱量を低減することができる車体の生産方法を先に提案した(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−229671公報(図1)
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10は従来の車体の生産方法を説明するフロー図であり、ステップ(以下STと記す。)01において、車体の表面に電着塗装を施し、電着塗装面を170℃で20分加熱する。ST02において、電着塗膜に中塗り塗装を施す。ST03において、中塗り塗装面を70℃で5分加熱する。ST04において、中塗り塗装面の上に上塗りベース塗装を施す。ST05において、上塗りベース塗装面を80℃で10分加熱する。ST06において、上塗りベース塗装面の上に上塗りクリア塗装を施す。ST07において、上塗りクリア塗装面を140℃で30分加熱する。
【0005】
ST03の第1予備加熱とST05の第2予備加熱では、ST07の加熱に比べて低い温度、短い時間で加熱しているので、加熱に必要な熱量を低減することができる。このような塗装方式は、3回塗装した後に1回加熱を行うことから3コート1ベークと呼ばれている。
【0006】
さて、下塗りの電着塗膜の表面に突起が生成されることがある。この突起は塗装外観を悪化させるため、突起を除去して塗膜表面を平滑にすることが要求される。従来、電着塗膜を形成した後に、電着塗膜表面を平滑にする作業としての研磨作業を含んだ車体の生産方法が各種提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献2】特開平8−187652号公報(図8)
【0007】
特許文献2を次図に基づいて説明する。
図11は従来の研磨作業を含んだ車体の生産方法を説明する図であり、車体は左から右へ搬送されるものとする。電着塗装装置300は、車体301に電着塗装を施す電着槽302と、車体301に付着した余剰の電着塗料を除去する水洗部303と、車体載せ替え部304と、車体301の電着塗装面を加熱する乾燥炉305と、車体301の外表面の電着塗膜の研磨が作業員によって行われる研磨部306とで構成される。
【0008】
特許文献2の電着塗装装置300では、電着塗膜の表面を研磨部306で研磨しているので、電着塗膜表面に突起が生成されていた場合でも、突起を除去して塗膜表面を平滑にすることができる。
【0009】
しかしながら、電着塗膜の厚さは数十μmと非常に薄いので、研磨作業は塗膜を剥がさないように慎重に行われる。研磨作業を慎重に行うと、研磨代が不足気味となり、突起の除去量が十分でなく突起が残ってしまう虞がある。
【0010】
突起が残っている電着塗膜の上に、図10のST02に示す中塗り塗装とST04に示す上塗りベース塗装とST06に示す上塗りクリア塗装とを施す。次にST07に示す加熱を行うと、中塗り塗膜と上塗りベース塗膜と上塗りクリア塗膜は断面で見たときに突起に沿うように形成されるので、上塗りクリア塗膜の表面に突起が生成される。このように突起が車体の外表面にあると、塗装品質を低下させる。
【0011】
そのため、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法の開発が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、塗装の前処理を行った後の車体に中塗り塗装と上塗り塗装を行う車体の生産方法において、前記車体の脱脂や洗浄等を行う前処理工程の前に、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明では、中塗り塗装で用いられる中塗り塗料は、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の塗料であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明では、車体のホワイトボディを塗装する車体の生産方法において、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程と、車体を液体で洗浄する前処理工程と、車体を電着槽に沈め、前記車体の表面に電着塗装を施す電着塗装工程と、電着塗装面を加熱して電着塗膜を得る中間焼付け工程と、前記電着塗膜の上に中塗り塗装を施す中塗り塗装工程と、中塗り塗装面の上に上塗りベース塗装を施す上塗りベース塗装工程と、上塗りベース塗装面の上に上塗りクリア塗装を施す上塗りクリア塗装工程と、前記中塗り塗装面と前記上塗りベース塗装面と上塗りクリア塗装面とを一括して加熱する最終焼付け工程と、からなることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明では、研磨工程は、車体の外表面に接触させる研磨工具を備えた研磨装置で実施されることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明では、研磨工程は、車体の外表面に接触させる研磨工具を備えた研磨ロボットで実施されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、前処理工程の前に研磨工程を行うことにより、車体研磨後の洗浄工程及び乾燥工程を新たに追加する必要がないので、コンパクトな塗装ラインを用いた車体の生産方法を提供することができる。また、省エネルギーを実現することができ、且つCO2の排出量を低減することができる車体の生産方法を提供することができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、中塗り塗料にイソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の塗料を用いた。本発明者等は、先に出願した特許文献1(特開2007−229671公報)の明細書段落番号[0033]に記載しているように、3コート1ベーク方式にイソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の中塗り塗料を適用することにより、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化することを防止できることを確認した。
【0020】
また、本発明者等は、車体の外表面と電着塗膜が平坦であると、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の中塗り塗料による上塗り塗料との混合防止機能が安定して発揮されて、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化しないことを確認した。そのため、塗装外観が向上する。
【0021】
更に、本発明では、研磨工程を行った後に前処理工程を行う。そのため、前処理工程の後の電着塗装工程と中間焼付け工程を経て、良好な電着塗膜を得ることができる。
【0022】
この電着塗膜に上記中塗り塗料を用いて中塗り塗装を施し、上塗り塗装を施し、上塗り塗装面に最終焼付けを行うと、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化することがない。よって、仕上がりが良好な塗装外観を得ることができる。
【0023】
請求項3に係る発明では、研磨工程は、前処理工程よりも前に車体の外表面を研磨する工程である。そのため、上記研磨工程では、例えば厚さ数十μmで形成されている電着塗膜の表面を研磨する場合に比べ、楽に研磨することができる。
【0024】
そこで、本発明者等は、前処理前に研磨せずに電着塗装を行って得られた電着塗膜と、前処理前に研磨して電着塗装を行って得られた電着塗膜とに関して、各々の表面粗さを測定した。その結果、研磨せずに得られた電着塗膜の表面粗さは、中心線平均粗さRa(以下、Raのみで記す。)=0.25μm〜0.30μmであった。また、研磨して得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra=0.1μm〜0.15μmであった。すなわち、本発明者等は、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を前処理工程よりも前に行うことで、電着塗膜の表面粗さが向上することを確認した。
【0025】
そのため、電着塗膜の上に中塗り塗装、上塗りベース塗装、上塗りクリア塗装を施し、焼付け作業を行った場合、平滑な上塗りクリア塗膜(最外塗膜)を得ることができる。請求項3によれば、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することができる。
【0026】
従来技術では、電着塗膜の突起を除去するために塗膜の研磨をしすぎて、逆に電着塗膜の品質を悪化させるケースもあったが、本発明では、厚さ20μm程度の電着塗膜の研磨という熟練技能を要する作業がないので、電着塗膜の品質を低下させることはなくなる。
【0027】
請求項4に係る発明では、研磨工程を研磨装置で実施するので、人手で研磨する場合に比べ、省力化を実現した車体の生産方法を提供することができる。
【0028】
請求項5に係る発明では、研磨工程を研磨ロボットで実施するので、車体の外表面が平坦でなく不規則に変化していても、外表面の不規則に変化する部位に研磨工具を容易に追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明の研磨装置の斜視図であり、車体は乗用車の車体(以下、車体と略記する。)を例にして説明する。また、以下の説明では、図右下方向を前、左上方向を後、右上方向を左、左下方向を右とする。
【0030】
研磨装置10は、後側のレール11上に設けられ車体搬送機12に載せた第1車体13の上面を研磨する第1研磨機構20を備えている第1研磨装置30(詳細後述)と、この第1研磨装置30の前方にあるレール31、31上に設けられ車体搬送機12に載せた第2車体32の左側面を研磨する第2左側研磨機構80を備えている第2左側研磨装置90(詳細後述)と、この第2左側研磨装置90と第2車体32を挟むように右側のレール136、136上に設けられ第2車体32の右側面を研磨する第2右側研磨機構を備えている第2右側研磨装置140とからなる。
【0031】
なお、第2左側研磨装置90と第2右側研磨装置140の構造は同じであるため、以下では第2左側研磨装置90の構造のみを説明し、第2右側研磨装置140の構造説明は省略する。
【0032】
図2は図1の2−2線断面図であり、第1研磨装置30は、レール11、11上に車輪33、33を介して載せられ上方に向けて形成されているケース34と、このケース34に設けられている例えばねじ式の第1昇降機構40(詳細後述)と、この第1昇降機構40に連結されている第1研磨機構20(詳細後述)とで構成される。
【0033】
第1昇降機構40は、ケース34の側面に支持されている昇降用モータ41と、ケース34に取り付けた軸受ケース42で支持されている中間軸43と、この中間軸43の前端と昇降用モータ41の出力軸とを連結している昇降用伝動機構44と、中間軸43の後端に取り付けられている駆動ギヤ45と、ケース34の底部に設けられている底部軸受46と、ケース34の上部に設けられている上部軸受47と、この上部軸受47に上端が支持され底部軸受46に下端が支持されているねじ軸48と、このねじ軸48に形成されたねじで保持されている移動ブロック49と、ねじ軸48の下端部に取り付けられ駆動ギヤ45と噛み合っている従動ギヤ51とで構成される。
【0034】
なお、第1昇降機構40はねじ式を用いて説明したが、この他にラックとピニオン、シリンダユニットを適用することができるため、他の機構に変更することは差し支えない。
【0035】
第1研磨機構20は、移動ブロック49に取り付けられているフレーム52と、このフレーム52の下端に回転自在に取り付けられているコンタクトホイール53と、フレーム52の上部に回転自在に取り付けられているアイドラ54と、このアイドラ54の外周面とコンタクトホイール53の外周面とに接触するように掛ける例えば研磨工具としての研磨ベルト55と、フレーム52に取り付けられている研磨用モータ56と、この研磨用モータ56の出力軸とコンタクトホイール53の入力軸とを連結している研磨用伝動機構57とで構成される。
【0036】
なお、第1研磨機構20の研磨工具は研磨ベルト55で説明したが、この他に研磨ディスクや研磨ブラシを採用することができるため、他の研磨工具に変更することは差し支えない。また、水を供給して行う水研に置き換えることもできる。
【0037】
加えて、車体搬送機12は、床58の上に設けられ第1車体13を位置決めしている第1台車59と、この第1台車59の下端に設けられているガイドローラ61、61と、これらのガイドローラ61、61を案内するために地下62に設けられているガイドレール63、63と、第1台車59の下部に設けられている動力受け部材64と、地下62に設けられている車体搬送用モータ65と、この車体搬送用モータ65に連結されている車体搬送用伝動機構66と、この車体搬送用伝動機構66の出力軸に取り付けられ動力受け部材64に接触しているフリクションローラ67とを備えている。
【0038】
68は車輪用モータ、69は車輪用伝動機構、71は車軸、72は安全カバー、73は軸受押さえである。
【0039】
車輪用モータ68を起動させると、車輪用モータ68の動力は車輪用伝動機構69を介して車軸71と車輪33、33に伝達される。これにより、車輪33、33がレール11、11上を走行するので、第1研磨装置30は図表裏方向に移動することができる。
【0040】
また、車体搬送用モータ65を起動させると、車体搬送用モータ65の動力は車体搬送用伝動機構66を介してフリクションローラ67に伝達されるので、フリクションローラ67は回転する。フリクションローラ67の回転と同時に、動力受け部材64にはフリクションローラ67からの動力が伝達されるので、第1車体13と第1台車59は図表裏方向に移動することができる。
【0041】
第1研磨装置30と第1車体13の図表裏方向の移動を停止させた状態で、研磨用モータ56を起動させると、コンタクトホイール53が回転する。これにより、研磨ベルト55に送りが与えられ、研磨の準備が完了する。
【0042】
次に、昇降用モータ41を起動させると、昇降用モータ41の動力は昇降用伝動機構44、中間軸43、駆動ギヤ45、従動ギヤ51、ねじ軸48の順に伝達される。これによりねじ軸48が回転し、移動ブロック49は矢印(1)のように想像線の位置まで下降する。移動ブロック49の下降と同時に、第1研磨機構20も矢印(2)のように想像線の位置まで下降するので、送りが与えられた研磨ベルト55を第1車体13の上面74に接触させることができる。移動ブロック49を想像線の位置まで下降させた時点で昇降用モータ41を停止させる。
【0043】
研磨終了後、昇降用モータ41を起動させ、ねじ軸48に第1研磨機構20の下降時とは逆の回転を与える。これにより、第1研磨機構20を実線の位置まで上昇させることができる。昇降用モータ41は、第1研磨機構20を実線の位置まで上昇させた時点で停止させる。
【0044】
図3は図1の3−3線断面図であり、第2左側研磨装置90は、レール31、31上に車輪91、91を介して載せられ上方に向けて形成されているケース92と、このケース92に設けられている例えばねじ式の第2左側昇降機構100(詳細後述)と、この第2左側昇降機構100に連結されている第2左側研磨機構80(詳細後述)とで構成される。
【0045】
第2左側昇降機構100は、ケース92の側面に支持されている昇降用モータ101と、ケース92に取り付けた軸受ケース102で支持されている中間軸103と、この中間軸103の前端と昇降用モータ101の出力軸とを連結している前側昇降用伝動機構104と、中間軸103の後端に取り付けられている駆動ギヤ105と、ケース92の底部に設けられている底部軸受106と、ケース92の上部に設けられている上部軸受107と、この上部軸受107に上端が支持され底部軸受106に下端が支持されている前側ねじ軸108と、この前側ねじ軸108に形成されたねじで保持されている移動ブロック109と、前側ねじ軸108の下端部に取り付けられ駆動ギヤ105と噛み合っている従動ギヤ111と、昇降用モータ101の出力軸に連結され後側ねじ軸(図1の符号112)を駆動する後側昇降用伝動機構113とで構成される。
【0046】
なお、第2左側昇降機構100はねじ式を用いて説明したが、この他にラックとピニオン、シリンダユニットを適用することができるため、他の機構に変更することは差し支えない。
【0047】
第2左側研磨機構80は、移動ブロック109の上端に設けられている上側シリンダユニット114と、移動ブロック109の下端に設けられている下側シリンダユニット115と、この下側シリンダユニット115のピストンロッドの先端と上側シリンダユニット114のピストンロッドの先端とに各々ピン116で回転可能に留められているフレーム117と、このフレーム117の前端に回転自在に取り付けられているコンタクトホイール118と、フレーム117の後部に回転自在に取り付けられているアイドラ119と、このアイドラ119の外周面とコンタクトホイール118の外周面とに接触するように掛ける例えば研磨工具としての研磨ベルト121と、フレーム117に取り付けられている研磨用モータ122と、この研磨用モータ122の出力軸とコンタクトホイール118の入力軸とを連結している研磨用伝動機構123とで構成される。
【0048】
なお、第2左側研磨機構80の研磨工具は研磨ベルト121で説明したが、この他に研磨ディスクや研磨ブラシを採用することができるため、他の研磨工具に変更することは差し支えない。また、水を供給して行う水研に置き換えることもできる。
【0049】
124は車輪用モータ、125は車輪用伝動機構、126は車軸、127は安全カバー、128は軸受押さえである。
【0050】
車輪用モータ124を起動させると、車輪用モータ124の動力は車輪用伝動機構125を介して車軸126と車輪91、91に伝達される。これにより、車輪91、91がレール31、31上を走行するので、第2左側研磨機構80は図表裏方向に移動することができる。
【0051】
また、車体搬送用モータ(図2の符号65)を起動させると、第2車体32と第2台車129は、第1車体(図2の符号13)、第1台車(図2の符号59)と同時に図表裏方向に移動することができる。
【0052】
さらに、昇降用モータ101を起動させると、昇降用モータ101の動力は前側昇降用伝動機構104、中間軸103、駆動ギヤ105、従動ギヤ111、前側ねじ軸108の順に伝達される。同時に、昇降用モータ101の動力は後側昇降用伝動機構113、中間軸、駆動ギヤ、従動ギヤ、後側ねじ軸(図1の符号112)の順に伝達される。これにより前側ねじ軸108と後側ねじ軸が回転するので、移動ブロック109と第2左側研磨機構80を下降させることができる。
【0053】
第2左側研磨機構80と第2車体32の図表裏方向の移動を停止させた状態で、研磨用モータ122を起動させると、コンタクトホイール118が回転する。これにより、研磨ベルト121に送りが与えられ、研磨の準備が完了する。
【0054】
次に、上側ピストンロッド133を矢印(3)のように押し出し、下側ピストンロッド134を矢印(4)のように押し出すと同時に、昇降用モータ101の駆動力により移動ブロック109を矢印(5)のように下降させる。移動ブロック109を想像線の位置まで下降させた時点で昇降用モータ101を停止させる。この結果、想像線で示すように第2左側研磨機構80の研磨ベルト121を第2車体32の上部側面131に接触させることができる。
【0055】
上記状態から上側ピストンロッド133を矢印(6)のように引き、下側ピストンロッド134を矢印(7)のように引くと同時に、昇降用モータ101の駆動力により移動ブロック109を矢印(8)のように下降させる。移動ブロック109を想像線の位置まで下降させた時点で昇降用モータ101を停止させる。この結果、第2左側研磨機構80の研磨ベルト121を第2車体32の下部側面132に接触させることができる。
【0056】
研磨終了後、上側ピストンロッド133を矢印(9)のように引き、下側ピストンロッド134を矢印(10)のように引く。ここで、昇降用モータ101を起動させ、前側ねじ軸108と後側ねじ軸(図1の符号112)に第2左側研磨機構80の下降時とは逆の回転を与えることにより、第2左側研磨機構80を実線の位置まで上昇させることができる。昇降用モータ101は、第2左側研磨機構80を実線の位置まで上昇させた時点で停止させる。
以上の構成からなる第1研磨装置と第2左側研磨装置の作用を次に説明する。
【0057】
図4は第1研磨装置の作用図であり、(a)は図2の4a−4a線断面図に相当する。コンタクトホイール53が矢印(11)のように回転することにより、矢印(12)のように送られている研磨ベルト55は、第1車体13の上面74に接触している。この状態から第1研磨機構20を矢印(13)のように移動させる。
【0058】
(b)は(a)のb部拡大図に相当し、上面74の非常に小さい凹凸に研磨ベルト55を接触させることで研磨を行っている。H1は、研磨前の凹凸の高低差を示す寸法である。
【0059】
(c)は研磨後の上面75を示す。H2は、研磨後の凹凸の高低差を示す寸法である。(b)と(c)の高低差寸法を比較すると、研磨後の高低差寸法H2は、研磨前の高低差寸法H1に比べて小さくなる。
【0060】
ところで、本発明者等は、前処理前に研磨せずに電着塗装を行って得られた電着塗膜と、前処理前に研磨して電着塗装を行って得られた電着塗膜とに関して、各々の表面粗さを測定した。その結果、研磨せずに得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra1=0.25μm〜0.30μmであった。また、研磨して得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra2=0.1μm〜0.15μmであった。すなわち、本発明者等は、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨を前処理よりも前に行うことで、電着塗膜の表面粗さが向上することを確認した。
【0061】
そのため、研磨前の高低差寸法H1からRa1=0.25μm〜0.30μmが得られ、研磨後の高低差寸法H2からRa2=0.1μm〜0.15μmが得られるとすれば、前処理よりも前に第1研磨装置(図2の符号30)で研磨することで電着塗膜の表面粗さを向上させることができる。
【0062】
図5は第2左側研磨装置の作用図であり、(a)は図3の5a−5a線断面図に相当する。コンタクトホイール118が矢印(14)のように回転することにより、矢印(15)のように送られている研磨ベルト121は、第2車体32の上部側面131に接触している。この状態から第2左側研磨機構80を矢印(16)のように移動させる。
【0063】
(b)は(a)のb部拡大図に相当し、上部側面131の非常に小さい凹凸に研磨ベルト121を接触させることで研磨を行っている。H3は、研磨前の凹凸の高低差を示す寸法である。
【0064】
(c)は研磨後の上部側面135を示す。H4は、研磨後の凹凸の高低差を示す寸法である。(b)と(c)の高低差寸法を比較すると、研磨後の高低差寸法H4は、研磨前の高低差寸法H3に比べて小さくなる。
【0065】
ところで、本発明者等は、前処理前に研磨せずに電着塗装を行って得られた電着塗膜と、前処理前に研磨して電着塗装を行って得られた電着塗膜とに関して、各々の表面粗さを測定した。その結果、研磨せずに得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra3=0.25μm〜0.30μmであった。また、研磨して得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra4=0.1μm〜0.15μmであった。すなわち、本発明者等は、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を前処理工程よりも前に行うことで、電着塗膜の表面粗さが向上することを確認した。
【0066】
そのため、研磨前の高低差寸法H3からRa3=0.25μm〜0.30μmが得られ、研磨後の高低差寸法H4からRa4=0.1μm〜0.15μmが得られるとすれば、前処理よりも前に第2左側研磨装置(図3の符号90)で研磨することで電着塗膜の表面粗さを向上させることができる。
【0067】
なお、上記効果は第2車体32の上部側面131に適用することで得られることを説明したが、第2車体32の下部側面(図3の符号132)に適用しても同様の効果を得ることができる。
次に、研磨装置を用いて行われる車体の生産方法を説明する。
【0068】
図6は本発明に係る車体の生産方法を説明するフロー図であり、ST08において、車体の外表面を研磨する。具体的には、図4に示すように第1研磨機構20の研磨ベルト55で第1車体13の上面74を研磨する。また、図5に示すように第2左側研磨機構80の研磨ベルト121で第2車体32の上部側面131を研磨する。
【0069】
図6のST09において、車体を酸性溶液とアルカリ性溶液で洗浄する。すなわち、車体の脱脂や洗浄等を行う前処理工程の前に、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を設けたことを特徴とする。
【0070】
前処理工程の前に研磨工程を行うことにより、車体研磨後の洗浄工程及び乾燥工程を新たに追加する必要がないので、コンパクトな塗装ラインを用いた車体の生産方法を提供することができる。また、省エネルギーを実現することができ、且つCO2の排出量を低減することができる車体の生産方法を提供することができる。
【0071】
ST10において、車体を電着槽に沈め、車体の表面に電着塗装を施す。
ST11において、電着塗装面を例えば170℃で20分加熱して電着塗膜を得る。
【0072】
ST12において、電着塗膜の上に中塗り塗装を施す。
ST13において、中塗り塗装面の上に上塗りベース塗装を施す。
ST14において、上塗りベース塗装面の上に上塗りクリア塗装を施す。
【0073】
ST15において、中塗り塗装面と上塗りベース塗装面と上塗りクリア塗装面とを一括して例えば140℃で30分加熱する。
【0074】
なお、ST11とST15で説明した加熱温度、加熱時間は、任意であって上記温度、上記時間に限定されるものではない。
【0075】
この車体の生産方法では、研磨工程は、前処理工程よりも前に車体の外表面を研磨する工程である。そのため、上記研磨工程では、例えば厚さ数十μmで形成されている電着塗膜の表面を研磨する場合に比べ、楽に研磨することができる。
【0076】
そこで、本発明者等は、図4と図5で説明したように、前処理工程前に車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を行うことで、電着塗膜の表面粗さが向上することを確認した。具体的に、車体の外表面を研磨して得られる表面粗さは、車体外表面を研磨しない場合の電着塗膜の表面粗さRa=0.25μm〜0.30μmよりも向上し、Ra=0.1μm〜0.15μmとなった。
【0077】
そのため、電着塗膜の上に中塗り塗装、上塗りベース塗装、上塗りクリア塗装を施し、焼付け作業を行った場合、平滑な上塗りクリア塗膜(最外塗膜)を得ることができる。よって、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することができる。
【0078】
従来技術では、電着塗膜の突起を除去するために塗膜の研磨をしすぎて、逆に電着塗膜の品質を悪化させるケースもあったが、本発明では、厚さ20μm程度の電着塗膜の研磨という熟練技能を要する作業がないので、電着塗膜の品質を低下させることはなくなる。
【0079】
加えて、図1に示すように、研磨工程は、第1車体13の上面に接触させる研磨ベルトを備えた第1研磨装置30と、第2車体32の左側面に接触させる研磨ベルトを備えた第2左側研磨装置90と、第2車体32の右側面に接触させる研磨ベルトを備えた第2右側研磨装置140とで実施されることを特徴とする。
【0080】
そのため、人手で研磨する場合に比べ、省力化を実現した車体の生産方法を提供することができる。
【0081】
さらに図6のST12において、中塗り塗装で用いられる中塗り塗料は、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の塗料であることを特徴とする。
本発明者等は、先に出願した特許文献1(特開2007−229671公報)の明細書段落番号[0033]に記載しているように、3コート1ベーク方式にイソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の中塗り塗料を適用することにより、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化することを防止できることを確認した。
【0082】
ところで、本発明では、ST08の研磨工程を行った後にST09の前処理工程を行う。そのため、前処理工程の後のST10の電着塗装工程とST11の中間焼付け工程を経て、良好な電着塗膜を得ることができる。
【0083】
この電着塗膜にST12において上記中塗り塗料を用いて中塗り塗装を施し、ST13とST14において上塗り塗装を施し、ST15において上塗り塗装面に最終焼付けを行うと、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化することがない。よって、仕上がりが良好な塗装外観を得ることができる。
次に最終焼付け後の塗膜を具体的に説明する。
【0084】
図7は最終焼付け後の塗膜の比較例と実施例の対比図である。
(a)は比較例であり、前処理の前に研磨を行わなかった車体301の上面307の上に、電着塗膜308、中塗り塗膜309、上塗りベース塗膜311、上塗りクリア塗膜312が順番に形成されている。
【0085】
車体301の上面307の凹凸が大きいので、塗膜308、309、311、312は波がうねるような形状を呈する。また、本発明者等は、うねり形状の影響により、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化し、塗装外観が低下することを確認した。
【0086】
(b)は実施例であり、前処理工程の前に研磨工程を行った車体13の上面74の上に、電着塗膜141、中塗り塗膜142、上塗りベース塗膜143、上塗りクリア塗膜144が順番に形成されている。このとき、車体13の上面74の凹凸は小さい。すなわち、上面74は平坦に近い形状である。そのため、塗膜141、142、143、144は平坦に近い形状を呈する。
【0087】
また、本発明者等は、上面74と電着塗膜141が平坦であると、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の中塗り塗料による上塗り塗料との混合防止機能が安定して発揮されて、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化しないことを確認した。そのため、塗装外観が向上する。
【0088】
(a)と(b)を対比すると、(b)のように前処理工程の前に車体13の上面74の表面粗さを向上させる研磨工程を行った方が、塗装外観の向上を実現できることが分かる。
【0089】
さて、車体の外表面は、平坦でなく不規則に変化している部位がある。このような部位を研磨するには、不規則な変化に追従できる機能を持つ機械が必要となる。そこで、車体の外表面の研磨をロボットで行う例を次に説明する。
【0090】
図8は図1の変更実施例図であり、図1と共通の構造については符号を流用して説明を省略する。主たる変更点は、研磨ベルトを備えた研磨機構をロボットに持たせたことである。
【0091】
研磨ロボット150は、左側のレール151、151上に設けられ車体搬送機12に載せた第2車体32の外表面を研磨する左研磨機構160(詳細後述)を備えている左研磨ロボット170と、右側のレール181、181上に設けられ車体搬送機12に載せた第2車体32の外表面を研磨する右研磨機構190を備えている右研磨ロボット200とからなる。
【0092】
左研磨機構160は、ロボットのアーム161の先端に設けられているフレーム162と、このフレーム162の前端に回転自在に取り付けられているコンタクトホイール163と、フレーム162の後端部に回転自在に取り付けられているアイドラ164と、このアイドラ164の外周面とコンタクトホイール163の外周面とに接触するように掛ける例えば研磨工具としての研磨ベルト165と、フレーム162に取り付けられている研磨用モータ166と、この研磨用モータ166の出力軸とコンタクトホイール163の入力軸とを連結する研磨用伝動機構を覆っている安全カバー167とで構成される。
【0093】
なお、左研磨機構160の研磨工具は研磨ベルト165で説明したが、この他に研磨ディスクや研磨ブラシを採用することができるため、他の研磨工具に変更することは差し支えない。また、水を供給して行う水研に置き換えることもできる。
【0094】
また、右研磨機構190の構造は、左研磨機構160と同様であるため、説明を省略する。
次に、研磨ロボットの作用を説明する。
【0095】
図9は左研磨ロボットの作用図であり、(a)は図8の9a−9a線断面図に相当する。なお、左研磨機構160は、第2車体32の上方に位置しているものとする。また、研磨ベルト165は、研磨用モータ166の駆動力により既に送りが与えられているものとして説明する。
【0096】
左研磨ロボット170は、左研磨機構160の研磨ベルト165を第2車体32の上面74に接触させることで、上面74を研磨している。上面74の研磨が終了したら、左研磨ロボット170の動作により矢印(17)のように左研磨機構160を移動させ、想像線で示すように研磨ベルト165で上部側面131を研磨する。
【0097】
上部側面131の研磨が終了したら、左研磨ロボット170の動作により矢印(18)のように左研磨機構160を移動させ、想像線で示すように研磨ベルト165で下部側面132を研磨する。
【0098】
なお、第2車体32の右側の上部側面201と下部側面202(図左側)の研磨は、右研磨ロボット(図8の符号200)で行うものとする。
【0099】
上記のように左研磨ロボット170は、第2車体32の上面74と上部側面131と下部側面132の研磨を一台で行うことができる。そのため、研磨作業の効率を向上させることができる。
【0100】
(b)は図8の9b矢視図に相当し、左研磨機構160は、第2車体32のフロントピラー203の外表面を研磨している。フロントピラー203の研磨が終了したら、左研磨ロボット170の動作により、矢印(19)、(20)、(21)の順番でボンネット204の外表面を想像線で示す研磨ベルト165で研磨することができる。
【0101】
研磨を左研磨ロボット170で実施するので、第2車体32の外表面が平坦でなく不規則に変化していても、外表面の不規則に変化する部位に研磨ベルト165を容易に追従させることができる。
【0102】
ここで、図6に戻ってST08において、研磨工程は、車体の外表面に接触させる研磨ベルトを備えた研磨ロボットで実施されることを特徴とする。
そのため、車体の外表面が平坦でなく不規則に変化していても、外表面の不規則に変化する部位に研磨ベルトを容易に追従させることができる。
【0103】
尚、本発明に係る車体は、実施の形態では乗用車に適用したが、バス、トラックにも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の車体の生産方法は、乗用車の塗装工程に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る研磨装置の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】第1研磨装置の作用図である。
【図5】第2左側研磨装置の作用図である。
【図6】本発明に係る車体の生産方法を説明するフロー図である。
【図7】最終焼付け後の塗膜の比較例と実施例の対比図である。
【図8】図1の変更実施例図である。
【図9】左研磨ロボットの作用図である。
【図10】従来の車体の生産方法を説明するフロー図である。
【図11】従来の研磨作業を含んだ車体の生産方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0106】
10…研磨装置、13…第1車体(車体)、20…第1研磨機構、30…第1研磨装置、32…第2車体(車体)、40…第1昇降機構、53、118、163…コンタクトホイール、54、119、164…アイドラ、55、121、165…研磨ベルト(研磨工具)、74…上面(外表面)、75…研磨後の上面、80…第2左側研磨機構、90…第2左側研磨装置、100…第2左側昇降機構、131…上部側面(外表面)、132…下部側面(外表面)、135…研磨後の上部側面、140…第2右側研磨装置、150…研磨ロボット、160…左研磨機構、170…左研磨ロボット、190…右研磨機構、200…右研磨ロボット。
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体の塗装工程では、一般に電着塗装後、中塗り塗装後、上塗りベース塗装後、上塗りクリア塗装後の各々の時点で、塗装面を加熱する焼付け作業が実施される。このように焼付け作業の回数が多いと乾燥炉の数量も多くなるので、塗装工程で消費される熱量は膨大になる。省エネルギーの観点から、熱量の低減化が必要とされる。
【0003】
本発明者等は、塗装面の加熱に必要な熱量を低減することができる車体の生産方法を先に提案した(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2007−229671公報(図1)
【0004】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図10は従来の車体の生産方法を説明するフロー図であり、ステップ(以下STと記す。)01において、車体の表面に電着塗装を施し、電着塗装面を170℃で20分加熱する。ST02において、電着塗膜に中塗り塗装を施す。ST03において、中塗り塗装面を70℃で5分加熱する。ST04において、中塗り塗装面の上に上塗りベース塗装を施す。ST05において、上塗りベース塗装面を80℃で10分加熱する。ST06において、上塗りベース塗装面の上に上塗りクリア塗装を施す。ST07において、上塗りクリア塗装面を140℃で30分加熱する。
【0005】
ST03の第1予備加熱とST05の第2予備加熱では、ST07の加熱に比べて低い温度、短い時間で加熱しているので、加熱に必要な熱量を低減することができる。このような塗装方式は、3回塗装した後に1回加熱を行うことから3コート1ベークと呼ばれている。
【0006】
さて、下塗りの電着塗膜の表面に突起が生成されることがある。この突起は塗装外観を悪化させるため、突起を除去して塗膜表面を平滑にすることが要求される。従来、電着塗膜を形成した後に、電着塗膜表面を平滑にする作業としての研磨作業を含んだ車体の生産方法が各種提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献2】特開平8−187652号公報(図8)
【0007】
特許文献2を次図に基づいて説明する。
図11は従来の研磨作業を含んだ車体の生産方法を説明する図であり、車体は左から右へ搬送されるものとする。電着塗装装置300は、車体301に電着塗装を施す電着槽302と、車体301に付着した余剰の電着塗料を除去する水洗部303と、車体載せ替え部304と、車体301の電着塗装面を加熱する乾燥炉305と、車体301の外表面の電着塗膜の研磨が作業員によって行われる研磨部306とで構成される。
【0008】
特許文献2の電着塗装装置300では、電着塗膜の表面を研磨部306で研磨しているので、電着塗膜表面に突起が生成されていた場合でも、突起を除去して塗膜表面を平滑にすることができる。
【0009】
しかしながら、電着塗膜の厚さは数十μmと非常に薄いので、研磨作業は塗膜を剥がさないように慎重に行われる。研磨作業を慎重に行うと、研磨代が不足気味となり、突起の除去量が十分でなく突起が残ってしまう虞がある。
【0010】
突起が残っている電着塗膜の上に、図10のST02に示す中塗り塗装とST04に示す上塗りベース塗装とST06に示す上塗りクリア塗装とを施す。次にST07に示す加熱を行うと、中塗り塗膜と上塗りベース塗膜と上塗りクリア塗膜は断面で見たときに突起に沿うように形成されるので、上塗りクリア塗膜の表面に突起が生成される。このように突起が車体の外表面にあると、塗装品質を低下させる。
【0011】
そのため、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法の開発が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1に係る発明は、塗装の前処理を行った後の車体に中塗り塗装と上塗り塗装を行う車体の生産方法において、前記車体の脱脂や洗浄等を行う前処理工程の前に、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に係る発明では、中塗り塗装で用いられる中塗り塗料は、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の塗料であることを特徴とする。
【0015】
請求項3に係る発明では、車体のホワイトボディを塗装する車体の生産方法において、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程と、車体を液体で洗浄する前処理工程と、車体を電着槽に沈め、前記車体の表面に電着塗装を施す電着塗装工程と、電着塗装面を加熱して電着塗膜を得る中間焼付け工程と、前記電着塗膜の上に中塗り塗装を施す中塗り塗装工程と、中塗り塗装面の上に上塗りベース塗装を施す上塗りベース塗装工程と、上塗りベース塗装面の上に上塗りクリア塗装を施す上塗りクリア塗装工程と、前記中塗り塗装面と前記上塗りベース塗装面と上塗りクリア塗装面とを一括して加熱する最終焼付け工程と、からなることを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明では、研磨工程は、車体の外表面に接触させる研磨工具を備えた研磨装置で実施されることを特徴とする。
【0017】
請求項5に係る発明では、研磨工程は、車体の外表面に接触させる研磨工具を備えた研磨ロボットで実施されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、前処理工程の前に研磨工程を行うことにより、車体研磨後の洗浄工程及び乾燥工程を新たに追加する必要がないので、コンパクトな塗装ラインを用いた車体の生産方法を提供することができる。また、省エネルギーを実現することができ、且つCO2の排出量を低減することができる車体の生産方法を提供することができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、中塗り塗料にイソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の塗料を用いた。本発明者等は、先に出願した特許文献1(特開2007−229671公報)の明細書段落番号[0033]に記載しているように、3コート1ベーク方式にイソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の中塗り塗料を適用することにより、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化することを防止できることを確認した。
【0020】
また、本発明者等は、車体の外表面と電着塗膜が平坦であると、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の中塗り塗料による上塗り塗料との混合防止機能が安定して発揮されて、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化しないことを確認した。そのため、塗装外観が向上する。
【0021】
更に、本発明では、研磨工程を行った後に前処理工程を行う。そのため、前処理工程の後の電着塗装工程と中間焼付け工程を経て、良好な電着塗膜を得ることができる。
【0022】
この電着塗膜に上記中塗り塗料を用いて中塗り塗装を施し、上塗り塗装を施し、上塗り塗装面に最終焼付けを行うと、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化することがない。よって、仕上がりが良好な塗装外観を得ることができる。
【0023】
請求項3に係る発明では、研磨工程は、前処理工程よりも前に車体の外表面を研磨する工程である。そのため、上記研磨工程では、例えば厚さ数十μmで形成されている電着塗膜の表面を研磨する場合に比べ、楽に研磨することができる。
【0024】
そこで、本発明者等は、前処理前に研磨せずに電着塗装を行って得られた電着塗膜と、前処理前に研磨して電着塗装を行って得られた電着塗膜とに関して、各々の表面粗さを測定した。その結果、研磨せずに得られた電着塗膜の表面粗さは、中心線平均粗さRa(以下、Raのみで記す。)=0.25μm〜0.30μmであった。また、研磨して得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra=0.1μm〜0.15μmであった。すなわち、本発明者等は、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を前処理工程よりも前に行うことで、電着塗膜の表面粗さが向上することを確認した。
【0025】
そのため、電着塗膜の上に中塗り塗装、上塗りベース塗装、上塗りクリア塗装を施し、焼付け作業を行った場合、平滑な上塗りクリア塗膜(最外塗膜)を得ることができる。請求項3によれば、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することができる。
【0026】
従来技術では、電着塗膜の突起を除去するために塗膜の研磨をしすぎて、逆に電着塗膜の品質を悪化させるケースもあったが、本発明では、厚さ20μm程度の電着塗膜の研磨という熟練技能を要する作業がないので、電着塗膜の品質を低下させることはなくなる。
【0027】
請求項4に係る発明では、研磨工程を研磨装置で実施するので、人手で研磨する場合に比べ、省力化を実現した車体の生産方法を提供することができる。
【0028】
請求項5に係る発明では、研磨工程を研磨ロボットで実施するので、車体の外表面が平坦でなく不規則に変化していても、外表面の不規則に変化する部位に研磨工具を容易に追従させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明の研磨装置の斜視図であり、車体は乗用車の車体(以下、車体と略記する。)を例にして説明する。また、以下の説明では、図右下方向を前、左上方向を後、右上方向を左、左下方向を右とする。
【0030】
研磨装置10は、後側のレール11上に設けられ車体搬送機12に載せた第1車体13の上面を研磨する第1研磨機構20を備えている第1研磨装置30(詳細後述)と、この第1研磨装置30の前方にあるレール31、31上に設けられ車体搬送機12に載せた第2車体32の左側面を研磨する第2左側研磨機構80を備えている第2左側研磨装置90(詳細後述)と、この第2左側研磨装置90と第2車体32を挟むように右側のレール136、136上に設けられ第2車体32の右側面を研磨する第2右側研磨機構を備えている第2右側研磨装置140とからなる。
【0031】
なお、第2左側研磨装置90と第2右側研磨装置140の構造は同じであるため、以下では第2左側研磨装置90の構造のみを説明し、第2右側研磨装置140の構造説明は省略する。
【0032】
図2は図1の2−2線断面図であり、第1研磨装置30は、レール11、11上に車輪33、33を介して載せられ上方に向けて形成されているケース34と、このケース34に設けられている例えばねじ式の第1昇降機構40(詳細後述)と、この第1昇降機構40に連結されている第1研磨機構20(詳細後述)とで構成される。
【0033】
第1昇降機構40は、ケース34の側面に支持されている昇降用モータ41と、ケース34に取り付けた軸受ケース42で支持されている中間軸43と、この中間軸43の前端と昇降用モータ41の出力軸とを連結している昇降用伝動機構44と、中間軸43の後端に取り付けられている駆動ギヤ45と、ケース34の底部に設けられている底部軸受46と、ケース34の上部に設けられている上部軸受47と、この上部軸受47に上端が支持され底部軸受46に下端が支持されているねじ軸48と、このねじ軸48に形成されたねじで保持されている移動ブロック49と、ねじ軸48の下端部に取り付けられ駆動ギヤ45と噛み合っている従動ギヤ51とで構成される。
【0034】
なお、第1昇降機構40はねじ式を用いて説明したが、この他にラックとピニオン、シリンダユニットを適用することができるため、他の機構に変更することは差し支えない。
【0035】
第1研磨機構20は、移動ブロック49に取り付けられているフレーム52と、このフレーム52の下端に回転自在に取り付けられているコンタクトホイール53と、フレーム52の上部に回転自在に取り付けられているアイドラ54と、このアイドラ54の外周面とコンタクトホイール53の外周面とに接触するように掛ける例えば研磨工具としての研磨ベルト55と、フレーム52に取り付けられている研磨用モータ56と、この研磨用モータ56の出力軸とコンタクトホイール53の入力軸とを連結している研磨用伝動機構57とで構成される。
【0036】
なお、第1研磨機構20の研磨工具は研磨ベルト55で説明したが、この他に研磨ディスクや研磨ブラシを採用することができるため、他の研磨工具に変更することは差し支えない。また、水を供給して行う水研に置き換えることもできる。
【0037】
加えて、車体搬送機12は、床58の上に設けられ第1車体13を位置決めしている第1台車59と、この第1台車59の下端に設けられているガイドローラ61、61と、これらのガイドローラ61、61を案内するために地下62に設けられているガイドレール63、63と、第1台車59の下部に設けられている動力受け部材64と、地下62に設けられている車体搬送用モータ65と、この車体搬送用モータ65に連結されている車体搬送用伝動機構66と、この車体搬送用伝動機構66の出力軸に取り付けられ動力受け部材64に接触しているフリクションローラ67とを備えている。
【0038】
68は車輪用モータ、69は車輪用伝動機構、71は車軸、72は安全カバー、73は軸受押さえである。
【0039】
車輪用モータ68を起動させると、車輪用モータ68の動力は車輪用伝動機構69を介して車軸71と車輪33、33に伝達される。これにより、車輪33、33がレール11、11上を走行するので、第1研磨装置30は図表裏方向に移動することができる。
【0040】
また、車体搬送用モータ65を起動させると、車体搬送用モータ65の動力は車体搬送用伝動機構66を介してフリクションローラ67に伝達されるので、フリクションローラ67は回転する。フリクションローラ67の回転と同時に、動力受け部材64にはフリクションローラ67からの動力が伝達されるので、第1車体13と第1台車59は図表裏方向に移動することができる。
【0041】
第1研磨装置30と第1車体13の図表裏方向の移動を停止させた状態で、研磨用モータ56を起動させると、コンタクトホイール53が回転する。これにより、研磨ベルト55に送りが与えられ、研磨の準備が完了する。
【0042】
次に、昇降用モータ41を起動させると、昇降用モータ41の動力は昇降用伝動機構44、中間軸43、駆動ギヤ45、従動ギヤ51、ねじ軸48の順に伝達される。これによりねじ軸48が回転し、移動ブロック49は矢印(1)のように想像線の位置まで下降する。移動ブロック49の下降と同時に、第1研磨機構20も矢印(2)のように想像線の位置まで下降するので、送りが与えられた研磨ベルト55を第1車体13の上面74に接触させることができる。移動ブロック49を想像線の位置まで下降させた時点で昇降用モータ41を停止させる。
【0043】
研磨終了後、昇降用モータ41を起動させ、ねじ軸48に第1研磨機構20の下降時とは逆の回転を与える。これにより、第1研磨機構20を実線の位置まで上昇させることができる。昇降用モータ41は、第1研磨機構20を実線の位置まで上昇させた時点で停止させる。
【0044】
図3は図1の3−3線断面図であり、第2左側研磨装置90は、レール31、31上に車輪91、91を介して載せられ上方に向けて形成されているケース92と、このケース92に設けられている例えばねじ式の第2左側昇降機構100(詳細後述)と、この第2左側昇降機構100に連結されている第2左側研磨機構80(詳細後述)とで構成される。
【0045】
第2左側昇降機構100は、ケース92の側面に支持されている昇降用モータ101と、ケース92に取り付けた軸受ケース102で支持されている中間軸103と、この中間軸103の前端と昇降用モータ101の出力軸とを連結している前側昇降用伝動機構104と、中間軸103の後端に取り付けられている駆動ギヤ105と、ケース92の底部に設けられている底部軸受106と、ケース92の上部に設けられている上部軸受107と、この上部軸受107に上端が支持され底部軸受106に下端が支持されている前側ねじ軸108と、この前側ねじ軸108に形成されたねじで保持されている移動ブロック109と、前側ねじ軸108の下端部に取り付けられ駆動ギヤ105と噛み合っている従動ギヤ111と、昇降用モータ101の出力軸に連結され後側ねじ軸(図1の符号112)を駆動する後側昇降用伝動機構113とで構成される。
【0046】
なお、第2左側昇降機構100はねじ式を用いて説明したが、この他にラックとピニオン、シリンダユニットを適用することができるため、他の機構に変更することは差し支えない。
【0047】
第2左側研磨機構80は、移動ブロック109の上端に設けられている上側シリンダユニット114と、移動ブロック109の下端に設けられている下側シリンダユニット115と、この下側シリンダユニット115のピストンロッドの先端と上側シリンダユニット114のピストンロッドの先端とに各々ピン116で回転可能に留められているフレーム117と、このフレーム117の前端に回転自在に取り付けられているコンタクトホイール118と、フレーム117の後部に回転自在に取り付けられているアイドラ119と、このアイドラ119の外周面とコンタクトホイール118の外周面とに接触するように掛ける例えば研磨工具としての研磨ベルト121と、フレーム117に取り付けられている研磨用モータ122と、この研磨用モータ122の出力軸とコンタクトホイール118の入力軸とを連結している研磨用伝動機構123とで構成される。
【0048】
なお、第2左側研磨機構80の研磨工具は研磨ベルト121で説明したが、この他に研磨ディスクや研磨ブラシを採用することができるため、他の研磨工具に変更することは差し支えない。また、水を供給して行う水研に置き換えることもできる。
【0049】
124は車輪用モータ、125は車輪用伝動機構、126は車軸、127は安全カバー、128は軸受押さえである。
【0050】
車輪用モータ124を起動させると、車輪用モータ124の動力は車輪用伝動機構125を介して車軸126と車輪91、91に伝達される。これにより、車輪91、91がレール31、31上を走行するので、第2左側研磨機構80は図表裏方向に移動することができる。
【0051】
また、車体搬送用モータ(図2の符号65)を起動させると、第2車体32と第2台車129は、第1車体(図2の符号13)、第1台車(図2の符号59)と同時に図表裏方向に移動することができる。
【0052】
さらに、昇降用モータ101を起動させると、昇降用モータ101の動力は前側昇降用伝動機構104、中間軸103、駆動ギヤ105、従動ギヤ111、前側ねじ軸108の順に伝達される。同時に、昇降用モータ101の動力は後側昇降用伝動機構113、中間軸、駆動ギヤ、従動ギヤ、後側ねじ軸(図1の符号112)の順に伝達される。これにより前側ねじ軸108と後側ねじ軸が回転するので、移動ブロック109と第2左側研磨機構80を下降させることができる。
【0053】
第2左側研磨機構80と第2車体32の図表裏方向の移動を停止させた状態で、研磨用モータ122を起動させると、コンタクトホイール118が回転する。これにより、研磨ベルト121に送りが与えられ、研磨の準備が完了する。
【0054】
次に、上側ピストンロッド133を矢印(3)のように押し出し、下側ピストンロッド134を矢印(4)のように押し出すと同時に、昇降用モータ101の駆動力により移動ブロック109を矢印(5)のように下降させる。移動ブロック109を想像線の位置まで下降させた時点で昇降用モータ101を停止させる。この結果、想像線で示すように第2左側研磨機構80の研磨ベルト121を第2車体32の上部側面131に接触させることができる。
【0055】
上記状態から上側ピストンロッド133を矢印(6)のように引き、下側ピストンロッド134を矢印(7)のように引くと同時に、昇降用モータ101の駆動力により移動ブロック109を矢印(8)のように下降させる。移動ブロック109を想像線の位置まで下降させた時点で昇降用モータ101を停止させる。この結果、第2左側研磨機構80の研磨ベルト121を第2車体32の下部側面132に接触させることができる。
【0056】
研磨終了後、上側ピストンロッド133を矢印(9)のように引き、下側ピストンロッド134を矢印(10)のように引く。ここで、昇降用モータ101を起動させ、前側ねじ軸108と後側ねじ軸(図1の符号112)に第2左側研磨機構80の下降時とは逆の回転を与えることにより、第2左側研磨機構80を実線の位置まで上昇させることができる。昇降用モータ101は、第2左側研磨機構80を実線の位置まで上昇させた時点で停止させる。
以上の構成からなる第1研磨装置と第2左側研磨装置の作用を次に説明する。
【0057】
図4は第1研磨装置の作用図であり、(a)は図2の4a−4a線断面図に相当する。コンタクトホイール53が矢印(11)のように回転することにより、矢印(12)のように送られている研磨ベルト55は、第1車体13の上面74に接触している。この状態から第1研磨機構20を矢印(13)のように移動させる。
【0058】
(b)は(a)のb部拡大図に相当し、上面74の非常に小さい凹凸に研磨ベルト55を接触させることで研磨を行っている。H1は、研磨前の凹凸の高低差を示す寸法である。
【0059】
(c)は研磨後の上面75を示す。H2は、研磨後の凹凸の高低差を示す寸法である。(b)と(c)の高低差寸法を比較すると、研磨後の高低差寸法H2は、研磨前の高低差寸法H1に比べて小さくなる。
【0060】
ところで、本発明者等は、前処理前に研磨せずに電着塗装を行って得られた電着塗膜と、前処理前に研磨して電着塗装を行って得られた電着塗膜とに関して、各々の表面粗さを測定した。その結果、研磨せずに得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra1=0.25μm〜0.30μmであった。また、研磨して得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra2=0.1μm〜0.15μmであった。すなわち、本発明者等は、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨を前処理よりも前に行うことで、電着塗膜の表面粗さが向上することを確認した。
【0061】
そのため、研磨前の高低差寸法H1からRa1=0.25μm〜0.30μmが得られ、研磨後の高低差寸法H2からRa2=0.1μm〜0.15μmが得られるとすれば、前処理よりも前に第1研磨装置(図2の符号30)で研磨することで電着塗膜の表面粗さを向上させることができる。
【0062】
図5は第2左側研磨装置の作用図であり、(a)は図3の5a−5a線断面図に相当する。コンタクトホイール118が矢印(14)のように回転することにより、矢印(15)のように送られている研磨ベルト121は、第2車体32の上部側面131に接触している。この状態から第2左側研磨機構80を矢印(16)のように移動させる。
【0063】
(b)は(a)のb部拡大図に相当し、上部側面131の非常に小さい凹凸に研磨ベルト121を接触させることで研磨を行っている。H3は、研磨前の凹凸の高低差を示す寸法である。
【0064】
(c)は研磨後の上部側面135を示す。H4は、研磨後の凹凸の高低差を示す寸法である。(b)と(c)の高低差寸法を比較すると、研磨後の高低差寸法H4は、研磨前の高低差寸法H3に比べて小さくなる。
【0065】
ところで、本発明者等は、前処理前に研磨せずに電着塗装を行って得られた電着塗膜と、前処理前に研磨して電着塗装を行って得られた電着塗膜とに関して、各々の表面粗さを測定した。その結果、研磨せずに得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra3=0.25μm〜0.30μmであった。また、研磨して得られた電着塗膜の表面粗さは、Ra4=0.1μm〜0.15μmであった。すなわち、本発明者等は、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を前処理工程よりも前に行うことで、電着塗膜の表面粗さが向上することを確認した。
【0066】
そのため、研磨前の高低差寸法H3からRa3=0.25μm〜0.30μmが得られ、研磨後の高低差寸法H4からRa4=0.1μm〜0.15μmが得られるとすれば、前処理よりも前に第2左側研磨装置(図3の符号90)で研磨することで電着塗膜の表面粗さを向上させることができる。
【0067】
なお、上記効果は第2車体32の上部側面131に適用することで得られることを説明したが、第2車体32の下部側面(図3の符号132)に適用しても同様の効果を得ることができる。
次に、研磨装置を用いて行われる車体の生産方法を説明する。
【0068】
図6は本発明に係る車体の生産方法を説明するフロー図であり、ST08において、車体の外表面を研磨する。具体的には、図4に示すように第1研磨機構20の研磨ベルト55で第1車体13の上面74を研磨する。また、図5に示すように第2左側研磨機構80の研磨ベルト121で第2車体32の上部側面131を研磨する。
【0069】
図6のST09において、車体を酸性溶液とアルカリ性溶液で洗浄する。すなわち、車体の脱脂や洗浄等を行う前処理工程の前に、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を設けたことを特徴とする。
【0070】
前処理工程の前に研磨工程を行うことにより、車体研磨後の洗浄工程及び乾燥工程を新たに追加する必要がないので、コンパクトな塗装ラインを用いた車体の生産方法を提供することができる。また、省エネルギーを実現することができ、且つCO2の排出量を低減することができる車体の生産方法を提供することができる。
【0071】
ST10において、車体を電着槽に沈め、車体の表面に電着塗装を施す。
ST11において、電着塗装面を例えば170℃で20分加熱して電着塗膜を得る。
【0072】
ST12において、電着塗膜の上に中塗り塗装を施す。
ST13において、中塗り塗装面の上に上塗りベース塗装を施す。
ST14において、上塗りベース塗装面の上に上塗りクリア塗装を施す。
【0073】
ST15において、中塗り塗装面と上塗りベース塗装面と上塗りクリア塗装面とを一括して例えば140℃で30分加熱する。
【0074】
なお、ST11とST15で説明した加熱温度、加熱時間は、任意であって上記温度、上記時間に限定されるものではない。
【0075】
この車体の生産方法では、研磨工程は、前処理工程よりも前に車体の外表面を研磨する工程である。そのため、上記研磨工程では、例えば厚さ数十μmで形成されている電着塗膜の表面を研磨する場合に比べ、楽に研磨することができる。
【0076】
そこで、本発明者等は、図4と図5で説明したように、前処理工程前に車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を行うことで、電着塗膜の表面粗さが向上することを確認した。具体的に、車体の外表面を研磨して得られる表面粗さは、車体外表面を研磨しない場合の電着塗膜の表面粗さRa=0.25μm〜0.30μmよりも向上し、Ra=0.1μm〜0.15μmとなった。
【0077】
そのため、電着塗膜の上に中塗り塗装、上塗りベース塗装、上塗りクリア塗装を施し、焼付け作業を行った場合、平滑な上塗りクリア塗膜(最外塗膜)を得ることができる。よって、電着塗膜上の突起除去を行うことなく、塗装品質を向上させることができる車体の生産方法を提供することができる。
【0078】
従来技術では、電着塗膜の突起を除去するために塗膜の研磨をしすぎて、逆に電着塗膜の品質を悪化させるケースもあったが、本発明では、厚さ20μm程度の電着塗膜の研磨という熟練技能を要する作業がないので、電着塗膜の品質を低下させることはなくなる。
【0079】
加えて、図1に示すように、研磨工程は、第1車体13の上面に接触させる研磨ベルトを備えた第1研磨装置30と、第2車体32の左側面に接触させる研磨ベルトを備えた第2左側研磨装置90と、第2車体32の右側面に接触させる研磨ベルトを備えた第2右側研磨装置140とで実施されることを特徴とする。
【0080】
そのため、人手で研磨する場合に比べ、省力化を実現した車体の生産方法を提供することができる。
【0081】
さらに図6のST12において、中塗り塗装で用いられる中塗り塗料は、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の塗料であることを特徴とする。
本発明者等は、先に出願した特許文献1(特開2007−229671公報)の明細書段落番号[0033]に記載しているように、3コート1ベーク方式にイソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の中塗り塗料を適用することにより、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化することを防止できることを確認した。
【0082】
ところで、本発明では、ST08の研磨工程を行った後にST09の前処理工程を行う。そのため、前処理工程の後のST10の電着塗装工程とST11の中間焼付け工程を経て、良好な電着塗膜を得ることができる。
【0083】
この電着塗膜にST12において上記中塗り塗料を用いて中塗り塗装を施し、ST13とST14において上塗り塗装を施し、ST15において上塗り塗装面に最終焼付けを行うと、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化することがない。よって、仕上がりが良好な塗装外観を得ることができる。
次に最終焼付け後の塗膜を具体的に説明する。
【0084】
図7は最終焼付け後の塗膜の比較例と実施例の対比図である。
(a)は比較例であり、前処理の前に研磨を行わなかった車体301の上面307の上に、電着塗膜308、中塗り塗膜309、上塗りベース塗膜311、上塗りクリア塗膜312が順番に形成されている。
【0085】
車体301の上面307の凹凸が大きいので、塗膜308、309、311、312は波がうねるような形状を呈する。また、本発明者等は、うねり形状の影響により、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化し、塗装外観が低下することを確認した。
【0086】
(b)は実施例であり、前処理工程の前に研磨工程を行った車体13の上面74の上に、電着塗膜141、中塗り塗膜142、上塗りベース塗膜143、上塗りクリア塗膜144が順番に形成されている。このとき、車体13の上面74の凹凸は小さい。すなわち、上面74は平坦に近い形状である。そのため、塗膜141、142、143、144は平坦に近い形状を呈する。
【0087】
また、本発明者等は、上面74と電着塗膜141が平坦であると、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の中塗り塗料による上塗り塗料との混合防止機能が安定して発揮されて、中塗り塗膜と上塗り塗膜とが混合した状態で硬化しないことを確認した。そのため、塗装外観が向上する。
【0088】
(a)と(b)を対比すると、(b)のように前処理工程の前に車体13の上面74の表面粗さを向上させる研磨工程を行った方が、塗装外観の向上を実現できることが分かる。
【0089】
さて、車体の外表面は、平坦でなく不規則に変化している部位がある。このような部位を研磨するには、不規則な変化に追従できる機能を持つ機械が必要となる。そこで、車体の外表面の研磨をロボットで行う例を次に説明する。
【0090】
図8は図1の変更実施例図であり、図1と共通の構造については符号を流用して説明を省略する。主たる変更点は、研磨ベルトを備えた研磨機構をロボットに持たせたことである。
【0091】
研磨ロボット150は、左側のレール151、151上に設けられ車体搬送機12に載せた第2車体32の外表面を研磨する左研磨機構160(詳細後述)を備えている左研磨ロボット170と、右側のレール181、181上に設けられ車体搬送機12に載せた第2車体32の外表面を研磨する右研磨機構190を備えている右研磨ロボット200とからなる。
【0092】
左研磨機構160は、ロボットのアーム161の先端に設けられているフレーム162と、このフレーム162の前端に回転自在に取り付けられているコンタクトホイール163と、フレーム162の後端部に回転自在に取り付けられているアイドラ164と、このアイドラ164の外周面とコンタクトホイール163の外周面とに接触するように掛ける例えば研磨工具としての研磨ベルト165と、フレーム162に取り付けられている研磨用モータ166と、この研磨用モータ166の出力軸とコンタクトホイール163の入力軸とを連結する研磨用伝動機構を覆っている安全カバー167とで構成される。
【0093】
なお、左研磨機構160の研磨工具は研磨ベルト165で説明したが、この他に研磨ディスクや研磨ブラシを採用することができるため、他の研磨工具に変更することは差し支えない。また、水を供給して行う水研に置き換えることもできる。
【0094】
また、右研磨機構190の構造は、左研磨機構160と同様であるため、説明を省略する。
次に、研磨ロボットの作用を説明する。
【0095】
図9は左研磨ロボットの作用図であり、(a)は図8の9a−9a線断面図に相当する。なお、左研磨機構160は、第2車体32の上方に位置しているものとする。また、研磨ベルト165は、研磨用モータ166の駆動力により既に送りが与えられているものとして説明する。
【0096】
左研磨ロボット170は、左研磨機構160の研磨ベルト165を第2車体32の上面74に接触させることで、上面74を研磨している。上面74の研磨が終了したら、左研磨ロボット170の動作により矢印(17)のように左研磨機構160を移動させ、想像線で示すように研磨ベルト165で上部側面131を研磨する。
【0097】
上部側面131の研磨が終了したら、左研磨ロボット170の動作により矢印(18)のように左研磨機構160を移動させ、想像線で示すように研磨ベルト165で下部側面132を研磨する。
【0098】
なお、第2車体32の右側の上部側面201と下部側面202(図左側)の研磨は、右研磨ロボット(図8の符号200)で行うものとする。
【0099】
上記のように左研磨ロボット170は、第2車体32の上面74と上部側面131と下部側面132の研磨を一台で行うことができる。そのため、研磨作業の効率を向上させることができる。
【0100】
(b)は図8の9b矢視図に相当し、左研磨機構160は、第2車体32のフロントピラー203の外表面を研磨している。フロントピラー203の研磨が終了したら、左研磨ロボット170の動作により、矢印(19)、(20)、(21)の順番でボンネット204の外表面を想像線で示す研磨ベルト165で研磨することができる。
【0101】
研磨を左研磨ロボット170で実施するので、第2車体32の外表面が平坦でなく不規則に変化していても、外表面の不規則に変化する部位に研磨ベルト165を容易に追従させることができる。
【0102】
ここで、図6に戻ってST08において、研磨工程は、車体の外表面に接触させる研磨ベルトを備えた研磨ロボットで実施されることを特徴とする。
そのため、車体の外表面が平坦でなく不規則に変化していても、外表面の不規則に変化する部位に研磨ベルトを容易に追従させることができる。
【0103】
尚、本発明に係る車体は、実施の形態では乗用車に適用したが、バス、トラックにも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の車体の生産方法は、乗用車の塗装工程に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係る研磨装置の斜視図である。
【図2】図1の2−2線断面図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】第1研磨装置の作用図である。
【図5】第2左側研磨装置の作用図である。
【図6】本発明に係る車体の生産方法を説明するフロー図である。
【図7】最終焼付け後の塗膜の比較例と実施例の対比図である。
【図8】図1の変更実施例図である。
【図9】左研磨ロボットの作用図である。
【図10】従来の車体の生産方法を説明するフロー図である。
【図11】従来の研磨作業を含んだ車体の生産方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0106】
10…研磨装置、13…第1車体(車体)、20…第1研磨機構、30…第1研磨装置、32…第2車体(車体)、40…第1昇降機構、53、118、163…コンタクトホイール、54、119、164…アイドラ、55、121、165…研磨ベルト(研磨工具)、74…上面(外表面)、75…研磨後の上面、80…第2左側研磨機構、90…第2左側研磨装置、100…第2左側昇降機構、131…上部側面(外表面)、132…下部側面(外表面)、135…研磨後の上部側面、140…第2右側研磨装置、150…研磨ロボット、160…左研磨機構、170…左研磨ロボット、190…右研磨機構、200…右研磨ロボット。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装の前処理を行った後の車体に中塗り塗装と上塗り塗装を行う車体の生産方法において、
前記車体の脱脂や洗浄等を行う前処理工程の前に、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を設けたことを特徴とする車体の生産方法。
【請求項2】
前記中塗り塗装で用いられる中塗り塗料は、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の塗料であることを特徴とする請求項1記載の車体の生産方法。
【請求項3】
車体のホワイトボディを塗装する車体の生産方法において、
車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程と、
車体を液体で洗浄する前処理工程と、
車体を電着槽に沈め、前記車体の表面に電着塗装を施す電着塗装工程と、
電着塗装面を加熱して電着塗膜を得る中間焼付け工程と、
前記電着塗膜の上に中塗り塗装を施す中塗り塗装工程と、
中塗り塗装面の上に上塗りベース塗装を施す上塗りベース塗装工程と、
上塗りベース塗装面の上に上塗りクリア塗装を施す上塗りクリア塗装工程と、
前記中塗り塗装面と前記上塗りベース塗装面と上塗りクリア塗装面とを一括して加熱する最終焼付け工程と、からなることを特徴とする車体の生産方法。
【請求項4】
前記研磨工程は、前記車体の外表面に接触させる研磨工具を備えた研磨装置で実施されることを特徴とする請求項3記載の車体の生産方法。
【請求項5】
前記研磨工程は、前記車体の外表面に接触させる研磨工具を備えた研磨ロボットで実施されることを特徴とする請求項3記載の車体の生産方法。
【請求項1】
塗装の前処理を行った後の車体に中塗り塗装と上塗り塗装を行う車体の生産方法において、
前記車体の脱脂や洗浄等を行う前処理工程の前に、車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程を設けたことを特徴とする車体の生産方法。
【請求項2】
前記中塗り塗装で用いられる中塗り塗料は、イソシアネート化合物を架橋剤とする2液型の塗料であることを特徴とする請求項1記載の車体の生産方法。
【請求項3】
車体のホワイトボディを塗装する車体の生産方法において、
車体の外表面の表面粗さを向上させる研磨工程と、
車体を液体で洗浄する前処理工程と、
車体を電着槽に沈め、前記車体の表面に電着塗装を施す電着塗装工程と、
電着塗装面を加熱して電着塗膜を得る中間焼付け工程と、
前記電着塗膜の上に中塗り塗装を施す中塗り塗装工程と、
中塗り塗装面の上に上塗りベース塗装を施す上塗りベース塗装工程と、
上塗りベース塗装面の上に上塗りクリア塗装を施す上塗りクリア塗装工程と、
前記中塗り塗装面と前記上塗りベース塗装面と上塗りクリア塗装面とを一括して加熱する最終焼付け工程と、からなることを特徴とする車体の生産方法。
【請求項4】
前記研磨工程は、前記車体の外表面に接触させる研磨工具を備えた研磨装置で実施されることを特徴とする請求項3記載の車体の生産方法。
【請求項5】
前記研磨工程は、前記車体の外表面に接触させる研磨工具を備えた研磨ロボットで実施されることを特徴とする請求項3記載の車体の生産方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−226266(P2009−226266A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−72409(P2008−72409)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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