説明

車体フレーム

【課題】左右のサイドメンバに設けられる孔を、一つのカットピアス型を用いたプレス加工によって左右のサイドメンバともコ字の内側が剪断面となるように成形でき、低コストで製造可能な車体フレームを提供する。
【解決手段】車幅方向左右のサイドメンバ1R、1Lの夫々が、車体前後方向に延びる車両中心軸Xに対して点対称の孔7を複数有する。これらの孔7は、車両中心軸Xに対して点対称の配置なので、左右のサイドメンバ1R、1Lとも一つのカットピアス型を用いてコ字の内側となる面から打ち抜いて形成できる。よって、低コストで車体フレームを製造できる。また、サイドメンバ1R、1Lのコ字の内側に孔7の位置に合わせてナット8を装着する際、孔7に挿入されるガイド9を有するナット8を用いることで、ガイド9が孔7の打抜側に形成される剪断面7aに接触することになり、ナット8の取付位置精度が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面コ字状のサイドメンバ(サイドレール)が車幅方向に間隔を隔てて向き合うように配置され、左右の各サイドメンバに部品取り付け等に使用される孔が複数形成された車体フレームに関する。
【背景技術】
【0002】
トラック、バス、RV又はピックアップ等の車両に用いられる車体フレームは、図1(a)、図1(b)に示すように、車体の前後方向に沿って形成されたサイドメンバ1が車幅方向に間隔を隔てて一対配置されており、左右のサイドメンバ1が車体の前後方向に間隔が隔てられた図示しない複数のクロスメンバによって連結され、所謂はしご型フレーム(ラダーフレーム)となっている。サイドメンバ1は、ウェブ2とその上下に直角に形成されたフランジ3、4とから断面コ字状に形成されており、コ字の内側が向き合うように配置されている。サイドメンバ1のウェブ2及びフランジ3、4には、部品取り付け等に使用される孔(図示せず)が複数形成されている(特許文献1、2)。
【0003】
トラック用等の車体フレームのサイドメンバ1は、車体レイアウト上の制約から、図1(a)、図1(b)に示すように先端部の上面フランジ3fが前下がりに形成されてキックダウンされたものや、図2(a)、図2(b)に示すように後端部の下面フランジ4rが後ろ上がりに形成されてキックアップされたもの等があり、これらサイドメンバ1は、形状(外形)が左右で鏡面対称(シンメトリ)となっている。また、サイドメンバ1に開けられる孔は、左右のサイドメンバ1で左右鏡面対称若しくは左右各々自由(ランダム)に配置されている。このようなサイドメンバ1の製造工程を図3を用いて説明する。
【0004】
先ず、図3(a)に示す素材板(鋼板)5に、図3(b)に示すようにカットカットピアス加工(カットピアス型による打ち抜き加工)によって外周形状のトリミング及び孔開けを行い、図3(c1)、図3(c2)に示すブランク品6を製造する。次に、図3(d1)、図3(d2)に示すように、そのブランク品6にフォーム加工(プレス加工)を施し、断面コ字状のサイドメンバ1R、1Lを成形する。カットピアス加工は、通常は低コスト化を図るため、右側サイドメンバ(RH(right hand)用)1Rと左側サイドメンバ(LH(left hand)用)1Lとで同じ金型(カットピアス型)を用い、左右同一のブランク品6を製作する。
【0005】
よって、形状が左右鏡面対称の一対のサイドメンバ1R、1Lを得るためには、RH用のブランク品6はそのままフォーム加工を行うが、LH用のブランク品6は上下ひっくり返してフォーム加工を行うことになる。図3において、カットピアス方向Aを矢印で、カットピアス面Bをドットで表すと、図4にも示すように、RH用のサイドメンバ1Rは、コ字の内側がカットピアス面Bとなるが、LH用のサイドメンバ1Lはコ字の外側がカットピアス面Bとなる。
【0006】
カットピアス加工により開けられる孔7は、カットピアス面B側が剪断面7aとなり、その反対側が破断面7bとなる。従って、図5(a)に示すようにLH用のサイドメンバ1Lにおいてはコ字の外側が剪断面7a、コ字の内側が破断面7bとなり、図5(b)に示すようにRH用のサイドメンバ1Rにおいてはコ字の内側が剪断面7a、コ字の外側が破断面7bとなる。孔7の剪断面7a側の径はピアス型に基づいて所定の精度となるが、孔7の破断面7b側の径は打ち抜きの途中で引き千切られるためピアス型で狙った径よりも不規則に大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−153810号公報
【特許文献2】実開2009−269584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4に示すように、サイドメンバ1L、1Rの内側(コ字の内側)には、フレーム組立や車両組立時の作業性を考慮して、孔7の位置に合わせてナット8が複数取り付けられる。
【0009】
ナット8は、その取付位置の精度を高めるため、図6、図7に示すように、孔7に挿入(圧入)されるガイド9を備えたもの(位置決めナット、プレスかしめナット、打込ナット等)が用いられる。ガイド9の外周にはセレーション等を形成してもよい。ガイド9のサイズは、孔7の剪断面7a側の径に基づいて設定されている。このため、図6に示すようにガイド9が孔7の剪断面7a側に挿入される場合にはナット8の取付位置の精度が確保できるが、図7に示すようにガイド9が孔7の破断面7b側に挿入される場合にはガイド9と孔7との間に不規則な隙間が生じるためナット8の取付位置精度が悪化してしまう。
【0010】
この対策として、現状では、図8に示すように、ナット8をサイドメンバ1の内側に孔7の位置に合わせて当てがった状態で反対側からボルト10で仮止めし、ボルト10の軸部10aを孔7の剪断面7aに接触させることでナット8の位置精度を確保し、その状態でナット8をサイドメンバ1に溶接(アーク溶接)した後、ボルト10を除去するという作業を行っている。12は溶接部である。しかし、このようなナット8の取付作業は、工数が多く面倒であり、作業時間が増大してコストアップを招き、また溶接の必要があるためアークの火花やスパッタ飛散等が避けられず、作業環境がよいとは言えないという問題が生じる。
【0011】
サイドメンバ1の孔7をRH用LH用ともコ字の内側を剪断面7a側とできれば、左右のサイドメンバ1R、1Lの夫々に上述したガイド9を有するナット(位置決めナット等)8を用いることができるので、ボルト10の仮止めを行う必要がなく、前記問題は解決する。そのためにはRH用サイドメンバ1RとLH用サイドメンバ1Lとで各々異なるカットピアス型(金型)を用い、左右夫々について将来コ字断面の内側となる面側から打ち抜き加工することや、タレットパンチを用いて左右とも将来コ字断面の内側となる面側から打ち抜くことで、RH用とLH用とで裏表別々のブランク品6を製作することも考えられる。しかし、前者は金型費用が2倍になり、後者は金型加工に比べてコストが高いというデメリットがある。
【0012】
また、ドリルやレーザー加工によって孔を開けることでも破断面7bのない孔7を形成できるため前記問題は解決するが、どちらもプレス加工に比べて加工費が高いというデメリットがある。
【0013】
以上の事情を考慮して創案された本発明の第1の目的は、サイドメンバに設けられる孔を、一つのカットピアス型を用いたプレス加工によって左右のサイドメンバともコ字の内側が剪断面となるように成形でき、低コストで製造可能な車体フレームを提供することにある。
【0014】
本発明の第2の目的は、前記孔の位置に合わせて左右のサイドメンバのコ字の内側に取り付けられるナットに前述のガイドを備えたナットを用いることで取付工数の低減を図り、且つナットの溶接作業を省略して作業環境の改善を図った車体フレームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために創案された請求項1に係る発明は、断面コ字状のサイドメンバが車幅方向に間隔を隔ててコ字の内側が向き合うように配置された車体フレームであって、車幅方向左右の前記サイドメンバの夫々が、車体前後方向に延びる車両中心軸に対して点対称の孔を複数有し、該孔が、前記サイドメンバのコ字の内側から打ち抜かれて形成されたことを特徴とする車体フレームである。
【0016】
請求項2に係る発明は、前記孔に、前記サイドメンバのコ字の内側からナットが装着され、該ナットが、前記孔に挿入されるガイドを備えている請求項1に記載の車体フレームである。
【0017】
請求項3に係る発明は、車幅方向左右の前記サイドメンバが、夫々単体で上下対称の形状である請求項1又は2に記載の車体フレームである。
【0018】
請求項4に係る発明は、車幅方向左右の前記サイドメンバが、左右で鏡面対称の形状である請求項1又は2に記載の車体フレームである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば次のような効果を発揮できる。
【0020】
(1)請求項1に係る車体フレームによれば、左右のサイドメンバの夫々が車両中心軸に対して点対称の孔を複数有しているので、これらの孔を一つのカットピアス型を用いたプレス加工によって左右のサイドメンバともコ字の内側から打ち抜いて形成できる。すなわち、一つのカットピアス型を用いたプレス加工により、左右のサイドメンバの双方にコ字の内側が剪断面となる孔を形成できる。よって、車体フレームを低コストで製造できる。
【0021】
(2)請求項2に係る車体フレームによれば、左右のサイドメンバのコ字の内側に前記孔に挿入されるガイドを備えたナットを装着しているので、ナットのガイドが前記孔の剪断面に接触し、ナットの位置決めがなされる。よって、左右のサイドメンバとも、ナットの装着位置の精度を確保できる。よって、ボルトの仮止め(図8参照)が不要となり、ナットの取付工数を低減できる。また、ガイドを孔に圧入してナットを固定するようにすれば、ナットの溶接(図8参照)が不要となり、ナット取付作業環境の改善を図れる。
【0022】
(3)請求項3に係る車体フレームによれば、左右のサイドメンバの夫々に形成される孔が車両中心軸に対して点対称であることに加え、左右のサイドメンバが夫々単体で上下対称の形状であるので、左右のサイドメンバを一つのカットピアス型を用いてプレス加工によって打ち抜くことで製造できる。よって、低コストで製造できる。
【0023】
(4)請求項4に係る車体フレームによれば、左右のサイドメンバが車両中心軸に対して点対称の孔を複数有し、左右のサイドメンバが左右鏡面対称の形状であるので、一つのカットピアス型にトリミング用の切り刃を出し入れ可能に内蔵させてトリミングを左右で異ならせる一方、孔を打ち抜くピアス位置を左右で共通とすることで、一つのカットピアス型で左右のサイドメンバを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来例を示す車体フレームの概要図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図2】別の従来例を示す車体フレームの概要図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図3】図2の車体フレームのサイドメンバの製造工程を示す説明図である。
【図4】従来のサイドメンバの断面図である。
【図5】(a)は図4のLH用サイドメンバの断面図、(b)は図4のRH用サイドメンバの断面図である。
【図6】サイドメンバの孔の剪断面側に位置決めナットを装着した断面図である。
【図7】サイドメンバの孔の破断面側に位置決めナットを装着した断面図である。
【図8】サイドメンバの孔にナットを当てがった状態でボルトを仮止めしてナットを溶接した断面図である。
【図9】本発明の一実施形態を示す車体フレームの概要を表す斜視図である。
【図10】図9の車体フレームのサイドメンバの説明図であり、(a1)はRH用サイドメンバの内側面図、(b1)はRH用サイドメンバの正面図、(a2)はLH用サイドメンバの外側面図、(b2)はLH用サイドメンバの正面図である。
【図11】図9のサイドメンバの断面図である。
【図12】図9のサイドメンバの製造工程を示す説明図である。
【図13】本発明の第1変形実施形態を示す車体フレームの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図である。
【図14】本発明の第2変形実施形態を示す車体フレームの側面図である。
【図15】本発明の第3変形実施形態を示す車体フレームのサイドメンバの製造工程を示す説明図である。
【図16】(a)は本発明の第4変形実施形態を示す車体フレームの側面図、(b)は本発明の第5変形実施形態を示す車体フレームの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の好適実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
図9に示すように、本実施形態に係る車体フレームSは、断面コ字状のサイドメンバ1が車幅方向に間隔を隔ててコ字の内側が向き合うように配置されており、左右のサイドメンバ1が車体の前後方向に間隔が隔てられた図示しない複数のクロスメンバにより連結され、所謂はしご型フレームとなっている。サイドメンバ1は、鉛直に配置されるウェブ2とその上下に直角に配設されたフランジ3、4とを有し、車体の前後方向に沿って断面コ字状に形成されている。左右のサイドメンバ1は、全長に亘って断面が均一なストレート形状であり、夫々単体で側面視上下対称の形状となっている。
【0027】
図10に示すように、左右のサイドメンバ1R、1Lには、部品取り付け等に使用される孔7が複数形成されている。孔7は、サイドメンバ1R、1Lのウェブ2のみならず、上下のフランジ3、4の一方又は両方に形成されていてもよい。これらの孔7は、図11にも示すように、車体前後方向に延びる車両中心軸Xに対して点対称(180度回転対称)の配置となっている。例えば、RH用サイドメンバ1Rの上側の孔7は、車両中心軸Xに対して点対称の位置に移動され、LH用サイドメンバ1Lの下側の孔7に相当する。車両中心軸Xは、左右のサイドメンバ1R、1Lのウェブ2からの水平距離が等しく且つ上下のフランジ3、4からの上下高さ差が等しい位置に配置され、車体の前後方向に延びる仮想軸である。
【0028】
かかるサイドメンバ1R、1Lの製造工程を図12に示す。先ず、図12(a)に示す素材板(鋼板)5にカットピアス加工を施し、図12(b1)、図12(b2)に示すように、孔7を開け、ブランク品6を得る。本実施形態では、サイドメンバ1R、1Lがストレート形状なので、カット加工を行うことなくピアス加工のみでもよい。カットピアス方向Aを矢印で、カットピアス面Bをドットで表す。その後、左右のブランク品6についてカットピアス面B側からプレスによるフォーム加工を施し、図12(c1)、図12(c2)に示すように断面コ字状のサイドメンバ1R、1Lを製作する。
【0029】
この結果、図11に示すように、左右のサイドメンバ1R、1Lに形成される孔7は、共にコ字の内側からピアス加工されることになり、コ字の内側が孔7の剪断面7a側となる。従って、コ字の内側に孔7の位置に合わせてナット8を装着する際、図6に示すように、孔7に挿入されるガイド9を備えたナット(位置決めナット、プレスかしめナット、打込ナット等)8を用いると、ガイド9が孔7の剪断面7aに接触することになり、ナット8の取付位置の精度を左右のサイドメンバ1R、1Lの夫々について確保できる。よって、図8を用いて説明したように、従来行っていたボルト10の仮止めやナット8の溶接(溶接部12)が不要となってナット8の取付工数を低減できる。加えて、溶接の火花やスパッタの飛散等がなくなるためナット8の取付作業環境の改善を図ることができる。
【0030】
また、左右のサイドメンバ1R、1Lの孔7が車両中心軸Xに対して点対称であり、左右のサイドメンバ1R、1Lの形状がストレート状すなわち側面視上下対称形状なので、カットピアス加工に用いるカットピアス型は、RH用及びLH用とも共通のものを用いることができる。よって、ブランク品6を低コストで製造できる。また、左右のサイドメンバ1R、1Lが共にストレート形状(側面視上下対称形状)なので、フォーム加工に用いるプレス用の金型もRH用とLH用とで共通のものを用いることができ、低コストでサイドメンバ1R、1Lを製造できる。
【0031】
ここで、RH用サイドメンバ1RとLH用サイドメンバ1Lとで孔7の配置パターンが完全に点対称であれば、形状が左右のサイドメンバ1R、1Lともストレート形状(側面視上下対称形状)であるので、左右のサイドメンバ1R、1Lは同一品となる。すなわち、図11にてRH用のサイドメンバ1Rを車両中心軸Xに対して180度回転させるとLH用のサイドメンバ1Lとなる。よって、既述のように、左右のサイドメンバ1R、1Lをカットピアス加工するカットピアス型に、完全に同一の金型を用いることができる。
【0032】
但し、カットピアス型(金型)の幾つかのピアスパンチを抜き差しする、或いは幾つかのピアスパンチに空ストローク機構を付加することで、孔7の有無を作り分けることが可能なので、左右のサイドメンバ1R、1Lに点対称ではない孔7が幾つか存在しても一つのカットピアス型で対応できる。この場合でも、カットピアス型自体は一つのものを使用するため、RH用サイドメンバ1RとLH用サイドメンバ1Lとで別々のカットピアス型を用いる場合と比べると、低コストとなる。
【0033】
すなわち、左右のサイドメンバ1R、1Lが車両中心軸Xに対して点対称の孔7を複数有していれば、点対称ではない孔7が幾つか存在していても、形状がストレート形状(側面視上下対称形状)であれば、一つのカットピアス型を用いて左右のサイドメンバ1R、1Lのブランク品6を打ち抜くことができる。その後、左右のブランク品6を一つのプレス金型を用いてフォーム加工することで、左右のサイドメンバ1R、1Lを製造できる。
【0034】
図13に本発明の第1変形実施形態に係る車体フレームS1を示す。
【0035】
この実施形態に係る車体フレームS1は、図9〜図12を用いて既述した最初の実施形態の車体フレームSと基本的な構成は同一であり、サイドメンバ1の先端部の上面フランジ3fが前下がりに形成されてキックダウンされ、下面フランジ4fが後ろ上がりに形成されてキックアップされている点のみが最初の実施形態と異なる。
【0036】
上面フランジ3fのキックアップ部と下面フランジ4fキックダウン部とは、側面視で上下対称に形成されている。すなわち、この実施形態のサイドメンバ1も、最初の実施形態のストレート形状のサイドメンバ1と同様に側面視上下対称の形状となっている。また、この実施形態の左右のサイドメンバ1の孔7(図13では省略)も、最初の実施形態と同様に、左右で車両中心軸Xに対して点対称となっている。
【0037】
従って、この実施形態においても左右のサイドメンバ1は同一品となり、最初の実施形態と同様に一つのカットピアス型を用いて左右のサイドメンバ1のブランク品6を製造でき、その後、左右のブランク品6の夫々についてカットピアス面B側から一つのプレス金型を用いてフォーム加工することで、左右のサイドメンバ1のコ字の内側を孔7の剪断面7a側とすることができる。
【0038】
その他、この実施形態の基本的な作用効果は、最初の実施形態と同様であるので、説明を省略する。例えば、左右のサイドメンバ1が車両中心軸Xに対して点対称の孔7を複数有していれば、点対称ではない孔7が幾つか存在していても、一つのカットピアス型で対応できることは、前実施形態と同様である。
【0039】
図14に本発明の第2変形実施形態に係る車体フレームS2を示す。
【0040】
この実施形態に係る車体フレームS2は、図13を用いて述べた前実施形態の車体フレームS1と基本的な構成は同一であり、サイドメンバ1の後端部の上面フランジ3rが後ろ下がりにスロープ状に形成されてキックダウンされ、下面フランジ4rが後ろ上がりにスロープ状に形成されてキックアップされている点のみが前実施形態と異なる。
【0041】
後端部の下面フランジ4rのキックアップ部と上面フランジ3rのキックダウン部とは側面視で上下対称に形成されており、左右のサイドメンバ1の孔7(図14では省略)の配置は車両中心軸Xに対して点対称となっている。よって、この実施形態においても、左右のサイドメンバ1は同一品となり、前実施形態と同様の作用効果を奏することになる。
【0042】
これまでの実施形態は、左右のサイドメンバ1が単体で側面視上下対称形状のものを説明してきたが、左右のサイドメンバ1が単体で上下対称形状ではなくても、左右のサイドメンバ1の孔7の配置が車両中心軸Xに対して点対称であれば、これまでの実施形態と略同様の効果を奏することができる。その点について以下に述べる。
【0043】
図15に本発明の第3変形実施形態に係る車体フレームの製造工程を示す。
【0044】
図15は、形状が単体で上下非対称、且つ孔7が左右で車両中心Xに対して点対称のサイドメンバ1R、1Lを製造する工程を示す。図15(a)は素材板5を示し、図15(b)は素材板5のカットピアス面B(ドット)、カットラインC(一点鎖線)、孔位置(細線)を示す。この素材板5にカットピアス加工を施す。
【0045】
それに用いられるカットピアス型においては、キックアップ部分のトリミング用の切り刃をカットピアス型の上側と下側との両側に設置し、RH用を加工する場合には上側の切り刃のみを作動させ、LH用を加工する場合には下側の切り刃のみを作動させることで、トリミング形状の異なる左右のブランク品6を製造する。
【0046】
図15(c1)、図15(c2)に左右のブランク品6を示す。左右のブランク品6のカット形状は、左右鏡面対称となっている。カットピアス型を用いて左右のブランク品6をカットピアス加工する際、上述したカットピアス型のピアスパンチの位置を左右のブランク品6について固定しておけば、孔7の配置は左右のサイドメンバ1R、1Lで車両中心軸Xに対して点対称となる。
【0047】
このように、サイドメンバ1R、1Lの単体の形状が上下非対称であっても、左右の孔7の配置が点対称であれば、一つのカットピアス型を用いて左右のブランク品6を打ち抜くことができ、RH用とLH用との二つのカットピアス型を用いた場合と比べると、低コストで左右のブランク品を製造できる。
【0048】
その後、キックダウン部分のトリミング違いの左右のブランク品6は、それぞれのキックダウン形状を有するフォーム型によってカットピアス面B側からフォーム加工が施され、図15(c1)、図15(c2)に示すように断面コ字状のサイドメンバ1R、1Lが製作される。
【0049】
これら左右のサイドメンバ1R、1Lを用いることで、車幅方向左右のサイドメンバ1R、1Lが左右で鏡面対称の形状であり(図2参照)、左右のサイドメンバ1R、1Lの夫々が車両中心軸Xに対して点対称の孔7を複数有し(図11参照)、各孔7がサイドメンバのコ字の内側から打ち抜かれた車体フレーム(図11参照)を得ることができる。
【0050】
なお、この実施形態においても、左右のサイドメンバ1R、1Lが車両中心軸Xに対して点対称の孔7を複数有していれば、点対称ではない孔7が幾つか存在していても、幾つかのピアスパンチに空ストローク機構を付加する等したカットピアス型を用いることで、一つのカットピアス型で対応できることは、これまでの実施形態と同様である。
【0051】
図16(a)に本発明の第4変形実施形態に係る車体フレームを、図16(b)に本発明の第5変形実施形態に係る車体フレームを示す。
【0052】
これらの実施形態は、キックアップ部やキックダウン部を有するサイドメンバ1を、ストレート部1aとそれ以外の部分1bとに長手方向に分割して連結するようにし、そのストレート部1aについて、図9〜図12を用いて既述した最初の実施形態を適用したものである。
【0053】
サイドメンバ1は、通常、ストレート部1aの長さがそれ以外の部分1bの長さよりも遙かに長いので、サイドメンバ1の長さの殆どの部分について本発明を適用でき、コストダウンを推進できる。
【0054】
本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明を逸脱しない範囲内であれば、様々な実施形態が含まれる。
【符号の説明】
【0055】
1 サイドメンバ
1R RH用のサイドメンバ
1L LH用のサイドメンバ
2 ウェブ
3 上側のフランジ
4 下側のフランジ
5 素材板
6 ブランク品
7 孔
7a 孔の剪断面
7b 孔の破断面
8 ナット
9 ガイド
S 車体フレーム
X 車両中心軸
A カットピアス方向
B カットピアス面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面コ字状のサイドメンバが車幅方向に間隔を隔ててコ字の内側が向き合うように配置された車体フレームであって、
車幅方向左右の前記サイドメンバの夫々が、車体前後方向に延びる車両中心軸に対して点対称の孔を複数有し、
該孔が、前記サイドメンバのコ字の内側から打ち抜かれて形成された
ことを特徴とする車体フレーム。
【請求項2】
前記孔に、前記サイドメンバのコ字の内側からナットが装着され、
該ナットが、前記孔に挿入されるガイドを備えている
請求項1に記載の車体フレーム。
【請求項3】
車幅方向左右の前記サイドメンバが、夫々単体で上下対称の形状である
請求項1又は2に記載の車体フレーム。
【請求項4】
車幅方向左右の前記サイドメンバが、左右で鏡面対称の形状である
請求項1又は2に記載の車体フレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−111306(P2012−111306A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260786(P2010−260786)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】