説明

車室内の小物入れ

【課題】コストをかけず、簡単な構造で夜間走行時に内部の状況を明確に確認できる車室内の小物入れを提供するにある。
【解決手段】車室2に小物入れ15を備えると共に、拡散箱19を備え、この拡散箱19に設けた開口部23から他の部分を照らす光源21の光の一部を導入する一方、導入された光を拡散箱19の中で分散させてこの拡散箱19の一面20を光らせ、この光らせられた拡散箱19の一面20を小物入れ15の一部として用いたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の小物入れに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の室内には、例えばインストルメントパネルやグローブボックス、コンソールボックス等に小物入れが設置されている。ところで自動車は、夜間走行時は計器灯類以外の灯火はなく、基本的に車室内は暗いため、小物入れの内部を確認することは困難であった。
【0003】
小物入れの周辺に専用の光源を設置すればこの問題は解消するが、コストの上昇を招くと共に、光源を設置するために周辺部品の形状変更が必要になるといった不具合が生じる。
【0004】
また、小物入れを透明または半透明の樹脂で成形し、光源を照射させて光らせる方法もあるが、単純に一点だけの光源を照射するだけでは光の照射範囲は限られてしまい、樹脂成形品である小物入れは限定された範囲でしか光らなくなる。
【0005】
そこで、光源の点数を増やしたものや(例えば特許文献1参照)反射板や特殊な光拡散フィルムを用いたもの(例えば特許文献2参照)等が考案されている。
【特許文献1】特開2006−252913号公報
【特許文献2】実公平6−1476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光源の点数を増やしたり、反射板や特殊な光拡散フィルムを用いたりするとコストの上昇や部品構造の複雑化は避けられない。
【0007】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、コストをかけず、簡単な構造で夜間走行時に内部の状況を明確に確認できる車室内の小物入れを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車室内の小物入れは、上述した課題を解決するために、請求項1に記載したように、車室内に小物入れを備えると共に、拡散箱を備え、この拡散箱に設けた開口部から他の部分を照らす光源の光の一部を導入する一方、導入された光を上記拡散箱の中で分散させてこの拡散箱の一面を光らせ、この光らせられた上記拡散箱の一面を上記小物入れの一部として用いたものである。
【0009】
また、上述した課題を解決するために、請求項2に記載したように、上記拡散箱は、各部の厚みと表面のシボにより光の拡散性を発揮する構造を有し、一つの材質から一体に射出形成されたものである。
【0010】
さらに、上述した課題を解決するために、請求項3に記載したように、上記拡散箱は、肉厚3.0mm、シボなしのとき、全光線透過率Ttが20〜35%の半透明樹樹脂材料を用いたものである。
【0011】
そして、上述した課題を解決するために、請求項4に記載したように、上記拡散箱の光らせる面は、上記拡散箱の他の部分より肉厚を薄く、また表面のシボも粗くして全光線透過率Ttを35〜50%の間に設定したものである。
【0012】
そしてまた、上述した課題を解決するために、請求項5に記載したように、上記拡散箱の光らせる面以外の部分は、上記光らせる面より肉厚を厚く、また表面のシボも浅くして全光線透過率Ttを15〜25%の間に設定したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車室内の小物入れによれば、簡単な構造で夜間走行時に車室内の小物入れ内部の状況を明確に確認できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、自動車1の車室2内を示す図であり、前方を眺めた状態を示す。また、向かって右側が運転席3、左側が助手席4である。そして、座席(図示せず)の前方、フロントウインドウ5の手前にはダッシュボード6が設けられる。
【0016】
運転席3前方のダッシュボード6にはインストルメントパネル7が形成され、その手前にステアリングホイール8が配設されると共に、助手席4前方のダッシュボード6上部には物品を載せるトレー9が、下部には開閉自在の蓋を有するグローブボックス10がそれぞれ設けられる。
【0017】
ダッシュボード6の中央部分からはセンターコンソール11が下方に向かって延び、その終端部は略水平に延びてこの略水平部分に例えばシフトレバー12が配設される。
【0018】
センターコンソール11には、上方から順に例えば図示しない空調機による冷気/暖気の吹き出し口13、図示しないオーディオ装置のコントロール部14、小物入れ15、そして空調機のコントロール部16が下方に向かって配設される。
【0019】
図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図2に示すように、小物入れ15は例えばその天井部17、前壁部18、そして詳細には図示しないが両側壁部がダッシュボード6と一体的に形成され、底部のみが別体に形成される。
【0020】
別体に形成される底部は、白色の半透明樹脂材料を箱型に一体射出成形した拡散箱19の天板部分20であり、半透明樹脂材料は肉厚3.0mm、シボなしのとき、全光線透過率Ttが20〜35%の樹脂材料が用いられる。
【0021】
一方、拡散箱19の下方は、空調機のコントロール部16の裏面にあたり、図示しない車幅灯および前照灯点灯時に連動して点灯する、コントロール部16照明用の例えば電球等の光源21が配置される。そして、この光源21直上の、拡散箱19の底板部分22には光源21の光を拡散箱19内に導入する開口部23が形成される。
【0022】
小物入れ15の底部となる拡散箱19の天板部分20は、光の透過効率をよくして全体を均一に光らせるため、拡散箱19の他の部分より肉厚を薄く、例えば1.5〜2.0mmとし、また表面のシボも粗く、例えばシボ深さ30μm以上として全光線透過率Ttを35〜50%の間に設定される。
【0023】
一方、拡散箱19の天板部分20以外の底板部分22、前壁部分24および側壁部分25は、天板部分20より肉厚を厚く、例えば3.0〜3.5mmとし、また表面のシボも浅く、例えばシボ深さ10μm以下として全光線透過率Ttを15〜25%の間に設定される。
【0024】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0025】
例えば運転者が夜間等に車幅灯または前照灯を点灯すると、空調機のコントロール部16の裏面に配置された電球等の光源21も連動して点灯し、その光で空調機のコントロール部16を裏側から照らす。
【0026】
また、光源21からの光の一部は拡散箱19の底板部分22の開口部23から拡散箱19内に導入され、拡散箱19内にて拡散および反射される。
【0027】
小物入れ15の底部となる拡散箱19の天板部分20は、拡散箱19の他の部分より肉厚を薄く、また表面のシボも粗くして全光線透過率Ttを35〜50%の間に設定されるため、内部に導入された光の透過効率がよく全体が均一に光る。また、拡散箱19の天板部分20以外の底板部分22、前壁部分24および側壁部分25は、天板部分20より肉厚を厚く、また表面のシボも浅くして全光線透過率Ttを15〜25%の間に設定されるため、内部に導入された光を拡散および反射させる効率が高まる。
【0028】
上述した構造により、小物入れ15の一面、本実施形態においては底部を均一に光らせることができ、夜間運転時の、小物入れ15の内部の視認性を向上させることができると共に、車室2の意匠性も高まる。
【0029】
また、拡散箱19は白色の半透明樹脂材料を箱型に一体射出成形したものであるため、製作が容易であり、コストがかからない。
【0030】
さらに、半透明樹脂材料として、肉厚3.0mm、シボなしのとき、全光線透過率Ttが20〜35%の樹脂材料を用いることにより、肉厚やシボの粗さを変更することで一つの部品、すなわち拡散箱19の中に異なる光の透過率および反射率を任意の場所に得ることができる。
【0031】
そして、光源21から直接来る光はまぶしいが、全体を均一に光らせる小物入れ15の底部となる拡散箱19の天板部分20を、拡散箱19の他の部分より肉厚を薄く、また表面のシボも粗くして全光線透過率Ttを35〜50%の間に設定したことにより、光が淡くなって運転の妨げにはならない。
【0032】
なお、上述した実施形態においては小物入れ15の底部を光らせるため、拡散箱19の天板部分20を光らせるようにしたが、詳細には図示しないが、小物入れ15の天井部17分や側板部分を光らせるようにしてもよい。その場合、光らせたい部分に拡散箱19の肉厚の薄い部分を配置するようにすればよい。
【0033】
また、車室2内で使用する他の光源21(例えばメータ類や室内灯等)を活用して車室2内の他の部分(例えばカップホルダやグローブボックス10等)を光らせることにより、利便性の向上だけではなく意匠性の向上を図ることもできる。
【0034】
さらに、車室2内の意匠性向上のための加飾目的でいろいろな部分を光らせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係る車室内の小物入れの一実施形態を示す自動車の室内を示す図。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 自動車
2 車室
15 小物入れ
16 空調機のコントロール部
19 拡散箱
20 天板部分(拡散箱の光らせる一面)
21 光源
22 底板部分(拡散箱の光らせる一面以外の部分)
23 開口部
24 前壁部分(拡散箱の光らせる一面以外の部分)
25 側壁部分(拡散箱の光らせる一面以外の部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に小物入れを備えると共に、拡散箱を備え、この拡散箱に設けた開口部から他の部分を照らす光源の光の一部を導入する一方、導入された光を上記拡散箱の中で分散させてこの拡散箱の一面を光らせ、この光らせられた上記拡散箱の一面を上記小物入れの一部として用いたことを特徴とする車室内の小物入れ。
【請求項2】
上記拡散箱は、各部の厚みと表面のシボにより光の拡散性を発揮する構造を有し、一つの材質から一体に射出形成されたものである請求項1記載の車室内の小物入れ。
【請求項3】
上記拡散箱は、肉厚3.0mm、シボなしのとき、全光線透過率Ttが20〜35%の半透明樹樹脂材料を用いた請求項2記載の車室内の小物入れ。
【請求項4】
上記拡散箱の光らせる面は、上記拡散箱の他の部分より肉厚を薄く、また表面のシボも粗くして全光線透過率Ttを35〜50%の間に設定した請求項3記載の車室内の小物入れ。
【請求項5】
上記拡散箱の光らせる面以外の部分は、上記光らせる面より肉厚を厚く、また表面のシボも浅くして全光線透過率Ttを15〜25%の間に設定した請求項4記載の車室内の小物入れ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−154737(P2009−154737A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−335906(P2007−335906)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】