車室内構造
【課題】両後方から前方に移動する物体がアシストグリップによって前方へ移動を規制されることを抑制することができる車室内構造を得る。
【解決手段】アシストグリップ取付部の構造10は、車室内側部でかつ車室上部であるルーフサイド部28に設けられ乗員Pが把持するためのアシストグリップ26と、車両後方から車両前方に向けて移動する物体Hをアシストグリップ24との非干渉方向にガイドするガイド部26と、を備えている。
【解決手段】アシストグリップ取付部の構造10は、車室内側部でかつ車室上部であるルーフサイド部28に設けられ乗員Pが把持するためのアシストグリップ26と、車両後方から車両前方に向けて移動する物体Hをアシストグリップ24との非干渉方向にガイドするガイド部26と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシストグリップが設けられている車室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アシストグリップに後方から前方に向かう衝撃力が作用した場合に、該アシストグリップをその取付面よりも凹んだ凹部に入り込ませるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−118284号公報
【特許文献2】特開平7−96790号公報
【特許文献3】特開2003−335198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、車両衝突が生じた場合等に取付板を破壊してアシストグリップを凹部に入り込ませるため、衝突予測の段階で機能させるためには改善の予知がある。
【0004】
本発明は、車両後方から前方に移動する物体がアシストグリップによって前方へ移動を規制されることを抑制することができる車室内構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る車室内構造は、車室内側部でかつ車室上部に設けられ、乗員が把持するためのアシストグリップと、車両後方から車両前方に向けて移動する物体を前記アシストグリップとの非干渉方向にガイドするガイド手段と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車室内構造では、車室内側部近傍におけるアシストグリップに対する車両後方から前方に向けて物体が移動すると、この物体は、ガイド手段によってアシストグリップとの非干渉方向にガイドされる。このため、アシストグリップの位置に拘わらず、物体がアシストグリップに干渉することが防止され、該物体がアシストグリップによって前方への移動を規制されることが防止又は効果的に抑制される。
【0007】
このように、請求項1記載の車室内構造では、車両後方から前方に移動する物体がアシストグリップによって前方へ移動を規制されることを抑制することができる。
【0008】
請求項2記載の発明に係る車室内構造は、請求項1記載の車室内構造において、前記ガイド手段は、前記アシストグリップに対する車両後方でかつ該アシストグリップの車幅方向内側の端部と同等以上に車幅方向内側に位置する位置で、車両前後方向に延在する壁部である。
【0009】
請求項2記載の車室内構造では、アシストグリップの車両後方で車両前後方向に延在する壁部がアシストグリップの車幅方向端部と同等以上に車幅方向内側に位置するため、車両前方に向かう物体は、壁部に沿って車両前後方向にガイドされ、アシストグリップとの干渉が回避される。このような壁部は、例えば車両の内装部材に一体に形成することができる。
【0010】
請求項3記載の発明に係る車室内構造は、請求項1記載の車室内構造において、前記ガイド手段は、前記アシストグリップに対する車両後方に設けられ、車両内方及び後方を共に向く傾斜部である。
【0011】
請求項3記載の車室内構造では、車両前方に向かう物体は、傾斜部によって車両内方側にガイドされ、該傾斜部に対する車両前方に位置するアシストグリップへの干渉が防止又は効果的に抑制される。この傾斜部は、例えばアシストグリップの車両後方側に一体的に形成することができる。
【0012】
請求項4記載の発明に係る車室内構造は、請求項1記載の車室内構造において、前記ガイド手段は、前記アシストグリップを車室内側面に対し接離させるように支持するリンク部材を含み、前記物体の前記アシストグリップへの車両後方からの接触に伴う前記リンク部材の回動によって該アシストグリップに形成される車両内方及び後方を共に向く傾斜部である。
【0013】
請求項4記載の車室内構造では、車両前方に向かう物体がアシストグリップ(リンク部材)に接触すると、リンク部材は、車両前方側に倒れることで車室内側及び車両後方を共に向く傾斜姿勢に姿勢変化される。そして、さらに車両前方に向かう物体は、アシストグリップの車両後方側に形成された傾斜部(例えば、上記の如く傾斜されたリンク部材自体、又はアシストグリップの後端部に形成されており上記アシストグリップの姿勢変化に伴い車両内側部に近接された傾斜部分等)によって車両内方側にガイドされ、該傾斜部に対する車両前方に位置するアシストグリップへの干渉が防止又は効果的に抑制される。これにより、アシストグリップとは別体としてガイド手段を設けることがないので、通常時の見栄えを確保しつつ、物体がアシストグリップに接触した際に該物体をアシストグリップとの非干渉方向にガイドすることができる。
【0014】
請求項5記載の発明に係る車室内構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車室内構造において、前記アシストグリップは、所定の場合に乗員を強制的に車両前方側に移動させるプリクラッシュシートの着座乗員が把持するように設けられている。
【0015】
請求項5記載の車室内構造では、例えば車両衝突が予測された場合にプリクラッシュシートは着座乗員(の上体)を強制的に車両前方に移動させる。この際、着座乗員の身体の一部がアシストグリップに向けて移動されても、上記の通りガイド手段が該身体の一部うぃアシストグリップとの非干渉位置にガイドする。これにより、本車室内構造では、衝突前に乗員を適正な姿勢にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明に係る車室内構造は、車両後方から前方に移動する物体がアシストグリップによって前方へ移動を規制されることを抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る車室内構造としてのアシストグリップ取付部の構造10について、図1〜図2に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印IN、矢印OUTは、アシストグリップ取付部の構造10が適用された自動車Aの前方向(進行方向)、上方向、車幅方向の内側、外側を示している。先ず、アシストグリップ取付部の構造10が適用される前提となる構成を説明し、次いで、アシストグリップ取付部の構造10について説明することとする。
【0018】
図2には、自動車Aの車室Cの内部が模式的な側面図にて示されている。この図に示される如く、車室C内の後部には、車両用シートであるリヤシート11が配設されている。リヤシート11は、乗員Pが着座するためのシートクッション12と、シートクッション12の後端に設けられ該シートクッション12へ着座乗員Pの上体を車両後方から支持するシートバック14と、シートバック14の上端に設けられたヘッドレスト15とを備えている。リヤシート11は、車幅方向に3人の乗員が並んで着座し得る3人掛けの後席における車幅方向外側の座席として構成されている。
【0019】
この実施形態では、リヤシート11には、自動車Aの衝突(前面衝突又は後面衝突)が予測された場合に、リクライニングされたシートバック14を前方に起きる方向(図2の矢印FW方向)に駆動するプリクラッシュシートバック機構16を備えている。プリクラッシュシートバック機構16は、シートバック14をシートクッション12に対し矢印FW方向に駆動するアクチュエータ18と、アクチュエータ18の作動を制御する制御装置としてのECU20と、自動車Aの前面衝突又は後面衝突を予測するためのプリクラッシュセンサ22とを主要部として構成されている。
【0020】
アクチュエータ18は、例えばシートクッション12とシートバック14との傾斜角度を調整可能な連結部を構成するリクライナに組み込まれている。このリクライナが電動リクライナである場合には、該電動リクライナとアクチュエータ18とでモータ等の駆動源を共通化することも可能である。プリクラッシュセンサ22は、例えばミリ波レーダ等の距離センサとされ、自動車Aの前方又は後方の障害物(他の車や路上固定物等)との距離に応じた信号を、ECU20に出力するようになっている。
【0021】
ECU20は、プリクラッシュセンサ22からの信号に基づいて自動車Aの前面衝突又は後面衝突が予測された場合には、シートバック14が図2に実線にて示されるリクライニング位置から同図に想像線にて示される適正位置である初期位置まで矢印FW方向に駆動されて起されるように、アクチュエータ18を制御するようになっている。この初期位置は、図示しないシートベルト装置や各種エアバッグ装置によるリヤシート11の着座乗員の保護が良好に果たされる位置(十分な保護性能が発揮される位置)として設定されている。
【0022】
なお、ECU20は、例えばリヤシート11に設けられた着座センサやシートベルト装置のバックルスイッチからの信号に基づいて、リヤシート11の着座乗員Pの存在やシートベルト装置の装着を条件に、上記の如く衝突が予測された場合にアクチュエータ18を作動させるように構成されても良い。
【0023】
また、自動車Aの車室C内におけるルーフサイド部28には、リヤシート11の乗員が把持するためのアシストグリップ24が設けられている。この実施形態におけるアシストグリップ24は、この実施形態では、シートバック14が初期位置に位置する際に、図2に想像線にて示される如く、リヤシート11の着座乗員Pの身体の一部(頭部H)が側面視でオーバラップし得る位置が含まれる。
【0024】
この実施形態では、アシストグリップ24は、車両前後方向に長手とされリヤシート11の着座乗員Pが把持する把持部24Aと、把持部24Aの長手方句両端から車幅方向外側に突出され車体(ルーフサイド部28)に固定された前後一対の固定脚部24Bとを主要部として構成されている。
【0025】
そして、アシストグリップ取付部の構造10では、プリクラッシュシートバック機構16によってシートバック14がリクライニング位置から初期位置(所定位置)に駆動される際に、リヤシート11の着座乗員Pの身体がアシストグリップ24との非干渉方向にガイドするガイド部26が設けられている。この実施形態では、ガイド部26は、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hをアシストグリップ24との非干渉方向にガイドするようになっている。
【0026】
具体的には、図1に示される如く、ガイド部26は、アシストグリップ24に対する車両後方に設けられたガイド壁26Aを主要部として構成されている。ガイド壁26Aは、アシストグリップ24の把持部24Aの車幅方向位置と略一致する車幅方向の位置において、車両前後方向に延在されている。換言すれば、ガイド部26のガイド壁26Aは、アシストグリップ24における各固定脚部24Bの固定位置であるルーフサイド部28からの突出高h1が、ルーフサイド部28からの把持部24Aの突出高h2と同等とされている。なお、ガイド部26の突出高h1が把持部24Aの突出高h2よりも若干大である構成(h1>h2)としても良い。
【0027】
ガイド部26では、ガイド壁26Aの車両前端26Bは、アシストグリップ24の車両後方側の固定脚部24Bに近接して位置している。ガイド壁26Aの車両前端26Bとアシストグリップ24の車両後方側の固定脚部24Bとの隙間Gは、頭部Hの大きさ(前後長、直径)に対し十分小とされている。以上説明したガイド部26は、例えばルーフヘッドライニングやルーフレールガーニッシュ等の内装部材に一体に形成されている。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0029】
上記構成のアシストグリップ取付部の構造10が適用された自動車Aでは、シートバック14がリクライニングされている場合であってプリクラッシュセンサ22からの信号に基づいて自動車Aの前面衝突又は後面衝突が予測された場合、ECU20は、例えばリヤシート11への乗員Pの着座を条件にアクチュエータ18を作動させる。すると、リヤシート11のシートバック14がヘッドレスト15と共に矢印FW方向に回動されてリクライニング位置から初期位置(所定位置)に移動される。自動車Aが衝突に至ると、この初期位置(所定位置)において、リヤシート11の着座乗員Pは、シートベルト装置やエアバッグ装置によって適正に保護される。
【0030】
ここで、アシストグリップ取付部の構造10では、アシストグリップ24の車両後方にガイド部26が設けられているため、シートバック14がリクライニング位置から初期位置に移動するのに伴って、図1に矢印Aにて示される如く、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがアシストグリップ24に対する非干渉方向にガイドされる。すなわち、仮にリヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがルーフサイド部28の近傍に位置している状態でプリクラッシュシートバック機構16が作動された場合でも、ガイド部26によって頭部Hが車両前後方向にガイドされるので、該頭部Hのアシストグリップ24への干渉が防止される。
【0031】
これにより、アシストグリップ取付部の構造10では、プリクラッシュシートバック機構16の作動時に、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hとアシストグリップ24との干渉によってシートバック14が初期位置に至ることが阻害されたり、初期位置に至るタイミングが遅れたりすることが防止又は著しく抑制される。すなわち、アシストグリップ取付部の構造10が適用された自動車Aでは、アシストグリップ24がプリクラッシュシートバック機構16の適正な作動を妨げることがなく、リヤシート11の着座乗員Pは、シートバック14が初期位置に位置する状態で、シートベルト装置やエアバッグ装置にて良好に保護される。
【0032】
このように、第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10では、プリクラッシュシートバック機構16の作動の際に車両後方から前方に移動する頭部Hがアシストグリップ24に干渉することを抑制することができる。
【0033】
特に、3人掛けの後席では、車幅方向外側に位置するリヤシート11は、その着座乗員Pの頭部Hをルーフサイド部28に近接して位置させやすいが、ガイド部26のガイド壁26Aによって、該着座乗員Pの頭部Hがアシストグリップ24に干渉することを効果的に防止することができる。
【0034】
そして、アシストグリップ取付部の構造10では、アシストグリップ24に対し相対変位しないようにガイド部26が設けられているためアシストグリップ24やその周辺を不可逆的に変化(破壊等)させることなく、ガイド部26によって頭部Hをアシストグリップ24に対する非干渉方向にガイドすることができる。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
(第2の実施形態)
図3には、第2の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造30が図1に対応する模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く、アシストグリップ取付部の構造30は、車両前後方向に延在するガイド壁26Aを有するガイド部26に代えて、平面視で車両前後方向に対し傾斜されたガイド壁32Aを有するガイド部32を備える点で、第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10とは異なる。
【0037】
具体的には、ガイド部32のガイド壁32Aは、車両前端32Bにおけるルーフサイド部28からの突出高h1が把持部24Aの突出高h2と略同等とされると共に、車両後端32Cにおける突出高が略0とされるように、車両前後方向に対し略一定角度で傾斜されている。この実施形態では、ガイド部32の車両前端32Bは、アシストグリップ24における車両後方の固定脚部24Bに一体化されている。
【0038】
以上により、アシストグリップ取付部の構造30では、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがルーフサイド部28に近接して位置する場合、プリクラッシュシートバック機構16の作動によってシートバック14がリクライニング位置から初期位置に移動するのに伴って、該頭部Hは、ガイド壁32Aに沿って車両内方に向けた斜め前方(図3の矢印B参照)にガイドされるようになっている。なお、ガイド部32の車両前端32Bと、アシストグリップ24における車両後方の固定脚部24Bとの間に、アシストグリップ取付部の構造10と同様に隙間Gを設定しても良い。アシストグリップ取付部の構造30における他の構成は、アシストグリップ取付部の構造10の対応する構成と同じである。
【0039】
したがって、第2の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造30によっても、基本転記に第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図4(A)には、第3の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造40が図1に対応する模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く、アシストグリップ取付部の構造40は、固定式のアシストグリップ24に代えて、可動式のアシストグリップ42を備える点で、第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10とは異なる。
【0041】
具体的には、アシストグリップ42は、車両前後方向に長手とされリヤシート11の着座乗員Pが把持する把持部42Aと、それぞれ一端が把持部42Aの長手方句両端に相対角変位可能に連結されると共に他端が車体(ルーフサイド部28)に相対角変位可能に連結された前後一対のリンク部材42Bとを主要部として構成されている。
【0042】
これにより、アシストグリップ42は、図4(A)に示される如く前後一対のリンク部材42Bが方向に延車幅方向に延在する使用姿勢と、図4(B)に示される如く使用状態に対し把持部42Aが車両前方に移動するように前後一対のリンク部材42Bが傾斜されるガイド姿勢とをとり得る構成とされている。この実施形態では、把持部42Aの後端部に作用する前向きの荷重に対し、前後一対のリンク部材42Bをガイド姿勢で保持するためのストッパ42Cが設けられている。
【0043】
すなわち、ストッパ42Cは、前後一対のリンク部材42Bが使用姿勢からガイド姿勢を超えて大きく傾くことを防止する構成とされている。また、図示は省略するが、アシストグリップ取付部の構造40は、通常はアシストグリップ42を使用姿勢に保持するための付勢部材が設けられている。これにより、アシストグリップ42は、ガイド姿勢に移動した後に後方からの荷重を除去すると、付勢部材の付勢力によってリクライニング位置に復帰するようになっている。
【0044】
そして、アシストグリップ取付部の構造40では、ガイド姿勢をとるアシストグリップ42における車両後方側のリンク部材42B(把持部42Aの後端部)が、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hを、把持部42Aに対する非干渉方向である車両内方に向けた斜め前方(図4(B)の矢印C参照)にガイドする構成とされている。したがって、この実施形態では、ガイド姿勢をとるアシストグリップ42における車両後方側のリンク部材42Bが本発明におけるガイド手段に相当する。換言すれば、この実施形態では、把持部42Aが単体で本発明におけるアシストグリップに相当するものと把握することも可能である。アシストグリップ取付部の構造40における他の構成は、アシストグリップ取付部の構造10の対応する構成と同じである。
【0045】
このアシストグリップ取付部の構造40では、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがルーフサイド部28の近傍に位置している状態でプリクラッシュシートバック機構16が作動されると、シートバック14がリクライニング位置から初期位置(所定位置)に移動されるのに伴って、頭部Hがアシストグリップ42の車両後端に干渉する。すると、アシストグリップ42は、把持部42Aが前方に移動されつつ前後一対のリンク部材42Bが傾斜され、ガイド姿勢に姿勢変化される。これにより、仮にリヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがルーフサイド部28の近傍に位置している状態でプリクラッシュシートバック機構16が作動された場合でも、頭部Hは、車両後方側のリンク部材42Bによって把持部42Aとの非干渉方向にガイドされる。
【0046】
このように、第3の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造40によっても、基本転記に第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、上記第3の実施形態では、アシストグリップ42を使用姿勢に保持するための付勢部座位を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、付勢部材に代えて、所定値以上の荷重で破断する係合部によってアシストグリップ42を使用姿勢に保持する構成としても良い。この係合部の破断荷重は、プリクラッシュシートバック機構16の作動によるアシストグリップ42と頭部Hとの接触荷重に対応して設定され、自動車Aの衝突に伴って頭部Hとアシストグリップ42とが衝突荷重(慣性力)に対し十分に小さい値とされる。
【0048】
また、上記第3の実施形態では、車両後方側のリンク部材42Bがガイド手段を構成する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、把持部42Aの後端部を、車両前後方向に対し車両後方及び内方を向くよう傾斜させ、アシストグリップ42がガイド姿勢をとる場合に頭部Hを非干渉方向にガイドする傾斜部として構成しても良い。
【0049】
また、上記した実施形態では、アシストグリップ取付部の構造10、30、40が3人掛けの後席を構成するリヤシート11に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、前席シート、2人掛けの後席シート、独立した2つの車両用シートが車幅方向に並列された2列目、3列目シート等に本発明が適用された構成としても良い。さらに、上記した実施形態では、衝突を予知した際に、シートバック角度を所定位置まで起すものとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、衝突を予知又は検知した際にシートの一部又は全体を可動させるものに対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造が適用された自動車のリヤシート廻りを模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造を模式的に示す図であって、(A)はアシストグリップの使用姿勢を示す平面図、(B)はアシストグリップのガイド姿勢を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 アシストグリップ取付部の構造
11 リヤシート(プリクラッシュシート)
16 プリクラッシュシートバック機構(プリクラッシュシート)
24 アシストグリップ
26 ガイド部(ガイド手段)
26A ガイド壁(壁部)
28 ルーフサイド部(車室内側部)
30・40 アシストグリップ取付部の構造
32 ガイド部(ガイド手段)
32A ガイド壁(傾斜部)
42 アシストグリップ(ガイド手段)
42A 把持部(アシストグリップ)
42B リンク部材(ガイド手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、アシストグリップが設けられている車室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
アシストグリップに後方から前方に向かう衝撃力が作用した場合に、該アシストグリップをその取付面よりも凹んだ凹部に入り込ませるようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−118284号公報
【特許文献2】特開平7−96790号公報
【特許文献3】特開2003−335198号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の技術では、車両衝突が生じた場合等に取付板を破壊してアシストグリップを凹部に入り込ませるため、衝突予測の段階で機能させるためには改善の予知がある。
【0004】
本発明は、車両後方から前方に移動する物体がアシストグリップによって前方へ移動を規制されることを抑制することができる車室内構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明に係る車室内構造は、車室内側部でかつ車室上部に設けられ、乗員が把持するためのアシストグリップと、車両後方から車両前方に向けて移動する物体を前記アシストグリップとの非干渉方向にガイドするガイド手段と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車室内構造では、車室内側部近傍におけるアシストグリップに対する車両後方から前方に向けて物体が移動すると、この物体は、ガイド手段によってアシストグリップとの非干渉方向にガイドされる。このため、アシストグリップの位置に拘わらず、物体がアシストグリップに干渉することが防止され、該物体がアシストグリップによって前方への移動を規制されることが防止又は効果的に抑制される。
【0007】
このように、請求項1記載の車室内構造では、車両後方から前方に移動する物体がアシストグリップによって前方へ移動を規制されることを抑制することができる。
【0008】
請求項2記載の発明に係る車室内構造は、請求項1記載の車室内構造において、前記ガイド手段は、前記アシストグリップに対する車両後方でかつ該アシストグリップの車幅方向内側の端部と同等以上に車幅方向内側に位置する位置で、車両前後方向に延在する壁部である。
【0009】
請求項2記載の車室内構造では、アシストグリップの車両後方で車両前後方向に延在する壁部がアシストグリップの車幅方向端部と同等以上に車幅方向内側に位置するため、車両前方に向かう物体は、壁部に沿って車両前後方向にガイドされ、アシストグリップとの干渉が回避される。このような壁部は、例えば車両の内装部材に一体に形成することができる。
【0010】
請求項3記載の発明に係る車室内構造は、請求項1記載の車室内構造において、前記ガイド手段は、前記アシストグリップに対する車両後方に設けられ、車両内方及び後方を共に向く傾斜部である。
【0011】
請求項3記載の車室内構造では、車両前方に向かう物体は、傾斜部によって車両内方側にガイドされ、該傾斜部に対する車両前方に位置するアシストグリップへの干渉が防止又は効果的に抑制される。この傾斜部は、例えばアシストグリップの車両後方側に一体的に形成することができる。
【0012】
請求項4記載の発明に係る車室内構造は、請求項1記載の車室内構造において、前記ガイド手段は、前記アシストグリップを車室内側面に対し接離させるように支持するリンク部材を含み、前記物体の前記アシストグリップへの車両後方からの接触に伴う前記リンク部材の回動によって該アシストグリップに形成される車両内方及び後方を共に向く傾斜部である。
【0013】
請求項4記載の車室内構造では、車両前方に向かう物体がアシストグリップ(リンク部材)に接触すると、リンク部材は、車両前方側に倒れることで車室内側及び車両後方を共に向く傾斜姿勢に姿勢変化される。そして、さらに車両前方に向かう物体は、アシストグリップの車両後方側に形成された傾斜部(例えば、上記の如く傾斜されたリンク部材自体、又はアシストグリップの後端部に形成されており上記アシストグリップの姿勢変化に伴い車両内側部に近接された傾斜部分等)によって車両内方側にガイドされ、該傾斜部に対する車両前方に位置するアシストグリップへの干渉が防止又は効果的に抑制される。これにより、アシストグリップとは別体としてガイド手段を設けることがないので、通常時の見栄えを確保しつつ、物体がアシストグリップに接触した際に該物体をアシストグリップとの非干渉方向にガイドすることができる。
【0014】
請求項5記載の発明に係る車室内構造は、請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車室内構造において、前記アシストグリップは、所定の場合に乗員を強制的に車両前方側に移動させるプリクラッシュシートの着座乗員が把持するように設けられている。
【0015】
請求項5記載の車室内構造では、例えば車両衝突が予測された場合にプリクラッシュシートは着座乗員(の上体)を強制的に車両前方に移動させる。この際、着座乗員の身体の一部がアシストグリップに向けて移動されても、上記の通りガイド手段が該身体の一部うぃアシストグリップとの非干渉位置にガイドする。これにより、本車室内構造では、衝突前に乗員を適正な姿勢にすることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明に係る車室内構造は、車両後方から前方に移動する物体がアシストグリップによって前方へ移動を規制されることを抑制することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る車室内構造としてのアシストグリップ取付部の構造10について、図1〜図2に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印IN、矢印OUTは、アシストグリップ取付部の構造10が適用された自動車Aの前方向(進行方向)、上方向、車幅方向の内側、外側を示している。先ず、アシストグリップ取付部の構造10が適用される前提となる構成を説明し、次いで、アシストグリップ取付部の構造10について説明することとする。
【0018】
図2には、自動車Aの車室Cの内部が模式的な側面図にて示されている。この図に示される如く、車室C内の後部には、車両用シートであるリヤシート11が配設されている。リヤシート11は、乗員Pが着座するためのシートクッション12と、シートクッション12の後端に設けられ該シートクッション12へ着座乗員Pの上体を車両後方から支持するシートバック14と、シートバック14の上端に設けられたヘッドレスト15とを備えている。リヤシート11は、車幅方向に3人の乗員が並んで着座し得る3人掛けの後席における車幅方向外側の座席として構成されている。
【0019】
この実施形態では、リヤシート11には、自動車Aの衝突(前面衝突又は後面衝突)が予測された場合に、リクライニングされたシートバック14を前方に起きる方向(図2の矢印FW方向)に駆動するプリクラッシュシートバック機構16を備えている。プリクラッシュシートバック機構16は、シートバック14をシートクッション12に対し矢印FW方向に駆動するアクチュエータ18と、アクチュエータ18の作動を制御する制御装置としてのECU20と、自動車Aの前面衝突又は後面衝突を予測するためのプリクラッシュセンサ22とを主要部として構成されている。
【0020】
アクチュエータ18は、例えばシートクッション12とシートバック14との傾斜角度を調整可能な連結部を構成するリクライナに組み込まれている。このリクライナが電動リクライナである場合には、該電動リクライナとアクチュエータ18とでモータ等の駆動源を共通化することも可能である。プリクラッシュセンサ22は、例えばミリ波レーダ等の距離センサとされ、自動車Aの前方又は後方の障害物(他の車や路上固定物等)との距離に応じた信号を、ECU20に出力するようになっている。
【0021】
ECU20は、プリクラッシュセンサ22からの信号に基づいて自動車Aの前面衝突又は後面衝突が予測された場合には、シートバック14が図2に実線にて示されるリクライニング位置から同図に想像線にて示される適正位置である初期位置まで矢印FW方向に駆動されて起されるように、アクチュエータ18を制御するようになっている。この初期位置は、図示しないシートベルト装置や各種エアバッグ装置によるリヤシート11の着座乗員の保護が良好に果たされる位置(十分な保護性能が発揮される位置)として設定されている。
【0022】
なお、ECU20は、例えばリヤシート11に設けられた着座センサやシートベルト装置のバックルスイッチからの信号に基づいて、リヤシート11の着座乗員Pの存在やシートベルト装置の装着を条件に、上記の如く衝突が予測された場合にアクチュエータ18を作動させるように構成されても良い。
【0023】
また、自動車Aの車室C内におけるルーフサイド部28には、リヤシート11の乗員が把持するためのアシストグリップ24が設けられている。この実施形態におけるアシストグリップ24は、この実施形態では、シートバック14が初期位置に位置する際に、図2に想像線にて示される如く、リヤシート11の着座乗員Pの身体の一部(頭部H)が側面視でオーバラップし得る位置が含まれる。
【0024】
この実施形態では、アシストグリップ24は、車両前後方向に長手とされリヤシート11の着座乗員Pが把持する把持部24Aと、把持部24Aの長手方句両端から車幅方向外側に突出され車体(ルーフサイド部28)に固定された前後一対の固定脚部24Bとを主要部として構成されている。
【0025】
そして、アシストグリップ取付部の構造10では、プリクラッシュシートバック機構16によってシートバック14がリクライニング位置から初期位置(所定位置)に駆動される際に、リヤシート11の着座乗員Pの身体がアシストグリップ24との非干渉方向にガイドするガイド部26が設けられている。この実施形態では、ガイド部26は、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hをアシストグリップ24との非干渉方向にガイドするようになっている。
【0026】
具体的には、図1に示される如く、ガイド部26は、アシストグリップ24に対する車両後方に設けられたガイド壁26Aを主要部として構成されている。ガイド壁26Aは、アシストグリップ24の把持部24Aの車幅方向位置と略一致する車幅方向の位置において、車両前後方向に延在されている。換言すれば、ガイド部26のガイド壁26Aは、アシストグリップ24における各固定脚部24Bの固定位置であるルーフサイド部28からの突出高h1が、ルーフサイド部28からの把持部24Aの突出高h2と同等とされている。なお、ガイド部26の突出高h1が把持部24Aの突出高h2よりも若干大である構成(h1>h2)としても良い。
【0027】
ガイド部26では、ガイド壁26Aの車両前端26Bは、アシストグリップ24の車両後方側の固定脚部24Bに近接して位置している。ガイド壁26Aの車両前端26Bとアシストグリップ24の車両後方側の固定脚部24Bとの隙間Gは、頭部Hの大きさ(前後長、直径)に対し十分小とされている。以上説明したガイド部26は、例えばルーフヘッドライニングやルーフレールガーニッシュ等の内装部材に一体に形成されている。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0029】
上記構成のアシストグリップ取付部の構造10が適用された自動車Aでは、シートバック14がリクライニングされている場合であってプリクラッシュセンサ22からの信号に基づいて自動車Aの前面衝突又は後面衝突が予測された場合、ECU20は、例えばリヤシート11への乗員Pの着座を条件にアクチュエータ18を作動させる。すると、リヤシート11のシートバック14がヘッドレスト15と共に矢印FW方向に回動されてリクライニング位置から初期位置(所定位置)に移動される。自動車Aが衝突に至ると、この初期位置(所定位置)において、リヤシート11の着座乗員Pは、シートベルト装置やエアバッグ装置によって適正に保護される。
【0030】
ここで、アシストグリップ取付部の構造10では、アシストグリップ24の車両後方にガイド部26が設けられているため、シートバック14がリクライニング位置から初期位置に移動するのに伴って、図1に矢印Aにて示される如く、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがアシストグリップ24に対する非干渉方向にガイドされる。すなわち、仮にリヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがルーフサイド部28の近傍に位置している状態でプリクラッシュシートバック機構16が作動された場合でも、ガイド部26によって頭部Hが車両前後方向にガイドされるので、該頭部Hのアシストグリップ24への干渉が防止される。
【0031】
これにより、アシストグリップ取付部の構造10では、プリクラッシュシートバック機構16の作動時に、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hとアシストグリップ24との干渉によってシートバック14が初期位置に至ることが阻害されたり、初期位置に至るタイミングが遅れたりすることが防止又は著しく抑制される。すなわち、アシストグリップ取付部の構造10が適用された自動車Aでは、アシストグリップ24がプリクラッシュシートバック機構16の適正な作動を妨げることがなく、リヤシート11の着座乗員Pは、シートバック14が初期位置に位置する状態で、シートベルト装置やエアバッグ装置にて良好に保護される。
【0032】
このように、第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10では、プリクラッシュシートバック機構16の作動の際に車両後方から前方に移動する頭部Hがアシストグリップ24に干渉することを抑制することができる。
【0033】
特に、3人掛けの後席では、車幅方向外側に位置するリヤシート11は、その着座乗員Pの頭部Hをルーフサイド部28に近接して位置させやすいが、ガイド部26のガイド壁26Aによって、該着座乗員Pの頭部Hがアシストグリップ24に干渉することを効果的に防止することができる。
【0034】
そして、アシストグリップ取付部の構造10では、アシストグリップ24に対し相対変位しないようにガイド部26が設けられているためアシストグリップ24やその周辺を不可逆的に変化(破壊等)させることなく、ガイド部26によって頭部Hをアシストグリップ24に対する非干渉方向にガイドすることができる。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態又は前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
(第2の実施形態)
図3には、第2の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造30が図1に対応する模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く、アシストグリップ取付部の構造30は、車両前後方向に延在するガイド壁26Aを有するガイド部26に代えて、平面視で車両前後方向に対し傾斜されたガイド壁32Aを有するガイド部32を備える点で、第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10とは異なる。
【0037】
具体的には、ガイド部32のガイド壁32Aは、車両前端32Bにおけるルーフサイド部28からの突出高h1が把持部24Aの突出高h2と略同等とされると共に、車両後端32Cにおける突出高が略0とされるように、車両前後方向に対し略一定角度で傾斜されている。この実施形態では、ガイド部32の車両前端32Bは、アシストグリップ24における車両後方の固定脚部24Bに一体化されている。
【0038】
以上により、アシストグリップ取付部の構造30では、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがルーフサイド部28に近接して位置する場合、プリクラッシュシートバック機構16の作動によってシートバック14がリクライニング位置から初期位置に移動するのに伴って、該頭部Hは、ガイド壁32Aに沿って車両内方に向けた斜め前方(図3の矢印B参照)にガイドされるようになっている。なお、ガイド部32の車両前端32Bと、アシストグリップ24における車両後方の固定脚部24Bとの間に、アシストグリップ取付部の構造10と同様に隙間Gを設定しても良い。アシストグリップ取付部の構造30における他の構成は、アシストグリップ取付部の構造10の対応する構成と同じである。
【0039】
したがって、第2の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造30によっても、基本転記に第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0040】
(第3の実施形態)
図4(A)には、第3の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造40が図1に対応する模式的な平面図にて示されている。この図に示される如く、アシストグリップ取付部の構造40は、固定式のアシストグリップ24に代えて、可動式のアシストグリップ42を備える点で、第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10とは異なる。
【0041】
具体的には、アシストグリップ42は、車両前後方向に長手とされリヤシート11の着座乗員Pが把持する把持部42Aと、それぞれ一端が把持部42Aの長手方句両端に相対角変位可能に連結されると共に他端が車体(ルーフサイド部28)に相対角変位可能に連結された前後一対のリンク部材42Bとを主要部として構成されている。
【0042】
これにより、アシストグリップ42は、図4(A)に示される如く前後一対のリンク部材42Bが方向に延車幅方向に延在する使用姿勢と、図4(B)に示される如く使用状態に対し把持部42Aが車両前方に移動するように前後一対のリンク部材42Bが傾斜されるガイド姿勢とをとり得る構成とされている。この実施形態では、把持部42Aの後端部に作用する前向きの荷重に対し、前後一対のリンク部材42Bをガイド姿勢で保持するためのストッパ42Cが設けられている。
【0043】
すなわち、ストッパ42Cは、前後一対のリンク部材42Bが使用姿勢からガイド姿勢を超えて大きく傾くことを防止する構成とされている。また、図示は省略するが、アシストグリップ取付部の構造40は、通常はアシストグリップ42を使用姿勢に保持するための付勢部材が設けられている。これにより、アシストグリップ42は、ガイド姿勢に移動した後に後方からの荷重を除去すると、付勢部材の付勢力によってリクライニング位置に復帰するようになっている。
【0044】
そして、アシストグリップ取付部の構造40では、ガイド姿勢をとるアシストグリップ42における車両後方側のリンク部材42B(把持部42Aの後端部)が、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hを、把持部42Aに対する非干渉方向である車両内方に向けた斜め前方(図4(B)の矢印C参照)にガイドする構成とされている。したがって、この実施形態では、ガイド姿勢をとるアシストグリップ42における車両後方側のリンク部材42Bが本発明におけるガイド手段に相当する。換言すれば、この実施形態では、把持部42Aが単体で本発明におけるアシストグリップに相当するものと把握することも可能である。アシストグリップ取付部の構造40における他の構成は、アシストグリップ取付部の構造10の対応する構成と同じである。
【0045】
このアシストグリップ取付部の構造40では、リヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがルーフサイド部28の近傍に位置している状態でプリクラッシュシートバック機構16が作動されると、シートバック14がリクライニング位置から初期位置(所定位置)に移動されるのに伴って、頭部Hがアシストグリップ42の車両後端に干渉する。すると、アシストグリップ42は、把持部42Aが前方に移動されつつ前後一対のリンク部材42Bが傾斜され、ガイド姿勢に姿勢変化される。これにより、仮にリヤシート11の着座乗員Pの頭部Hがルーフサイド部28の近傍に位置している状態でプリクラッシュシートバック機構16が作動された場合でも、頭部Hは、車両後方側のリンク部材42Bによって把持部42Aとの非干渉方向にガイドされる。
【0046】
このように、第3の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造40によっても、基本転記に第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造10と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0047】
なお、上記第3の実施形態では、アシストグリップ42を使用姿勢に保持するための付勢部座位を備えた例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、付勢部材に代えて、所定値以上の荷重で破断する係合部によってアシストグリップ42を使用姿勢に保持する構成としても良い。この係合部の破断荷重は、プリクラッシュシートバック機構16の作動によるアシストグリップ42と頭部Hとの接触荷重に対応して設定され、自動車Aの衝突に伴って頭部Hとアシストグリップ42とが衝突荷重(慣性力)に対し十分に小さい値とされる。
【0048】
また、上記第3の実施形態では、車両後方側のリンク部材42Bがガイド手段を構成する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、把持部42Aの後端部を、車両前後方向に対し車両後方及び内方を向くよう傾斜させ、アシストグリップ42がガイド姿勢をとる場合に頭部Hを非干渉方向にガイドする傾斜部として構成しても良い。
【0049】
また、上記した実施形態では、アシストグリップ取付部の構造10、30、40が3人掛けの後席を構成するリヤシート11に適用された例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、前席シート、2人掛けの後席シート、独立した2つの車両用シートが車幅方向に並列された2列目、3列目シート等に本発明が適用された構成としても良い。さらに、上記した実施形態では、衝突を予知した際に、シートバック角度を所定位置まで起すものとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、衝突を予知又は検知した際にシートの一部又は全体を可動させるものに対しても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造を模式的に示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造が適用された自動車のリヤシート廻りを模式的に示す側面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造を模式的に示す平面図である。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るアシストグリップ取付部の構造を模式的に示す図であって、(A)はアシストグリップの使用姿勢を示す平面図、(B)はアシストグリップのガイド姿勢を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10 アシストグリップ取付部の構造
11 リヤシート(プリクラッシュシート)
16 プリクラッシュシートバック機構(プリクラッシュシート)
24 アシストグリップ
26 ガイド部(ガイド手段)
26A ガイド壁(壁部)
28 ルーフサイド部(車室内側部)
30・40 アシストグリップ取付部の構造
32 ガイド部(ガイド手段)
32A ガイド壁(傾斜部)
42 アシストグリップ(ガイド手段)
42A 把持部(アシストグリップ)
42B リンク部材(ガイド手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内側部でかつ車室上部に設けられ、乗員が把持するためのアシストグリップと、
車両後方から車両前方に向けて移動する物体を前記アシストグリップとの非干渉方向にガイドするガイド手段と、
を備えた車室内構造。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記アシストグリップに対する車両後方でかつ該アシストグリップの車幅方向内側の端部と同等以上に車幅方向内側に位置する位置で、車両前後方向に延在する壁部である請求項1記載の車室内構造。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記アシストグリップに対する車両後方に設けられ、車両内方及び後方を共に向く傾斜部である請求項1記載の車室内構造。
【請求項4】
前記ガイド手段は、前記アシストグリップを車室内側面に対し接離させるように支持するリンク部材を含み、前記物体の前記アシストグリップへの車両後方からの接触に伴う前記リンク部材の回動によって該アシストグリップに形成される車両内方及び後方を共に向く傾斜部である請求項1記載の車室内構造。
【請求項5】
前記アシストグリップは、所定の場合に乗員を強制的に車両前方側に移動させるプリクラッシュシートの着座乗員が把持するように設けられている請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車室内構造。
【請求項1】
車室内側部でかつ車室上部に設けられ、乗員が把持するためのアシストグリップと、
車両後方から車両前方に向けて移動する物体を前記アシストグリップとの非干渉方向にガイドするガイド手段と、
を備えた車室内構造。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記アシストグリップに対する車両後方でかつ該アシストグリップの車幅方向内側の端部と同等以上に車幅方向内側に位置する位置で、車両前後方向に延在する壁部である請求項1記載の車室内構造。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記アシストグリップに対する車両後方に設けられ、車両内方及び後方を共に向く傾斜部である請求項1記載の車室内構造。
【請求項4】
前記ガイド手段は、前記アシストグリップを車室内側面に対し接離させるように支持するリンク部材を含み、前記物体の前記アシストグリップへの車両後方からの接触に伴う前記リンク部材の回動によって該アシストグリップに形成される車両内方及び後方を共に向く傾斜部である請求項1記載の車室内構造。
【請求項5】
前記アシストグリップは、所定の場合に乗員を強制的に車両前方側に移動させるプリクラッシュシートの着座乗員が把持するように設けられている請求項1〜請求項4の何れか1項記載の車室内構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2010−120429(P2010−120429A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293661(P2008−293661)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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