説明

車室内用空気吹出装置

【課題】型内組付け方式の空気吹出装置(レジスタ)であって、各後側風向調整板を最大限揺動してフィンシャット状態を形成して、空気流の漏洩を大幅に抑制する。
【解決手段】前側風向調整板(横フィン群の横フィン)に連結する連結機構20dは、操作ノブ20cの後側に部位に一体的に設けられて縦フィン22cの前側の部位に対向するラック24、縦フィン22cに一体に形成されて前方へ開口してラック24に対向する箱状を呈する連結部位25、操作ノブ20cのラック24に噛合するピニオン26aを前側の部位に、連結部位25に前方から挿入することにより連結される連結アームを後側の部位に有し操作ノブ20cおよび縦フィン22cとは独立して形成されたギヤ部材とにより構成して、縦フィン22cと一体的に成形される部位を、隙間が小さくて少ない構造の連結部位25のみとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センタレジスタ、サイドレジスタ、ロアレジスタ、サイドデフロスタ等、車室内用空気吹出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内用空気吹出装置の一形式として、空気誘導路を形成する方形の筒体と、筒体内における先端側部位に互いに並列して回動可能に支持された複数の前側風向調整板と、筒体内における先端から後方に所定間隔離れた部位にて互いに並列して回動可能に支持されて各前側風向調整板とは直交状態に位置する複数の後側風向調整板と、前記各前側風向調整板のうちの所定の前側風向調整板に長手方向へ摺動可能に組付けられて前記各後側風向調整板のうちの所定の後側風向調整板に連結機構を介して作動的に連結された操作ノブを備える形式の車室内用空気吹出装置がある。
【0003】
当該形式の空気吹出装置においては、前記操作ノブを引き上げおよび押し下げて前記各前側風向調整板を互いに連動して揺動動作させることにより、前記筒体の先端開口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させ、また、前記操作ノブを前記所定の前側風向調整板上を長手方向へ摺動して前記各後側風向調整板を互いに連動して揺動動作させることにより、前記筒体の先端開口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させるようになっている。
【0004】
ところで、空気吹出装置においては、筒体内の途中の部位に回動可能に支持したエアダンパを備え、エアダンパを回動動作して筒体内をその中間部にて遮蔽することにより、筒体の先端開口部から吹出する空気流を遮断するようにした空気吹出装置がある。当該空気吹出装置は、必要によりエアダンパを開閉動作して、例えば、車室内に設けられている複数台の空気吹出装置の先端開口部からの空気流の吹出を許容しまたは遮断することにより、各乗員に均等に送風して快適性を向上させ、また、乗員が少ない場合や快適性の個人差に応じて送風を制御することを意図しているものである。
【0005】
このようなエアダンパを装備する空気吹出装置においては、エアダンパを回動操作するための操作機構が不可欠であり、当該操作機構は、操作ノブや、操作ノブの操作力をエアダンパに伝達するリンク機構等によって構成されている。このため、当該空気吹出装置では、エアダンパ、操作機構を構成する操作ノブやリンク機構等、構成部材の部品点数が多く、また、これらの部品を組付けるための組付け工数も多く、これらが当該空気吹出装置のコストアップの要因となっている。
【0006】
近年、このようなコストアップの要因を解消すべき空気吹出装置が多数提案されている。その代表例としては、「空調用レジスタ」の名称で特許出願されている(特許文献1,2を参照)。これらの特許文献1,2にて提案されているレジスタは、各後側風向調整板である各縦フィン(垂直フィン)が左右に揺動可能に支持されていて、各縦フィンを左右の一方向へ最大限揺動させると、隣り合う同士の縦フィンの先端部と後端部が互いに重合した状態で、各縦フィンが略水平状態を呈して筒体内を中間部で遮断する構成となっている。当該レジスタは、かかる構成により、エアダンパ、および、エアダンパの操作機構を省略している。なお、当該レジスタは一般に、フィンシャット構造のレジスタ、フィンシャット方式のレジスタを称されている。
【0007】
また、当該形式の車室内用空気吹出装置においては、当該空気吹出装置を構成する記筒体、各前側風向調整板、および、各後側調整板は、合成樹脂材料にて成形されている樹脂成形品であって、一般には、これらの構成部材はそれぞれ別々に成形されていて、筒体に、各前側風向調整板を1枚1枚組付け、かつ、各後側風向調整板を1枚1枚組付けることにより、当該空気吹出装置が組立てられている。このため、当該空気吹出装置の組立てには、部品点数が多いことから、組付け工数が多くて組立て作業が面倒である。
【0008】
近年、これに対処すべく、各後側風向調整板または各前側風向調整板を1群として、かつ、各後側風向調整板または各前側風向調整板を互いに連結する連結ロッド、および/または、各後側風向調整板または各前側風向調整板を回動可能に支持する支持板を同一の成形金型内にて成形し、成形された各後側風向調整板または各前側風向調整板を1群として、連結ロッドおよび/または支持板に組付ける成形方法が提案されている(特許文献3を参照)。
【0009】
また、当該成形方法はすでに実用化されており、当該成形方法を採用して構成された車室内用空気吹出装置が、「レジスタ」なる名称で提案されている(特許文献4を参照)。特許文献4に提案されているレジスタは、後側風向調整板である複数の縦フィンと筒体であるリテーナを同一の成形金型内にて成形し、かつ、各縦フィンが同成形金型内でリテーナ内に組付けられているものである。当該レジスタは一般に、型内組付け方式のレジスタと称されている。
【0010】
ところで、当該形式のレジスタにおいては、各前側風向調整板のうちの所定の前側風向調整板に長手方向へ摺動可能に組付けられた操作ノブが、連結機構を介して、各後側風向調整板の所定の風向調整板に作動的に連結されていて、操作ノブを、所定の前側風向調整板上を長手方向に摺動させることにより、各後側風向調整板を互いに連動して揺動動作させる構成となっている。当該連結機構は、その構成が複雑であることから、型内組付け方式の成形方法を採ることには支障をきたすおそれがあり、また、当該連結機構の構成が操作ノブの操作性に影響を及ぼすおそれがある。上記した特許文献4には、これらの問題に対処し得る連結機構が提案されている。
【特許文献1】特開2005−121259号公報
【特許文献2】特開2007−55427号公報
【特許文献3】特公平4−69542号公報
【特許文献4】特開2008−126785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記した型内組付け方式のレジスタ(空気吹出装置)を、上記したフィンシャット方式のレジスタ(空気吹出装置)に構成する場合には、型内組付け方式の空気吹出装置を構成する連結機構が隙間の大きい構造であって、空気流が集中する筒体内の中央部に位置することから、フィンシャット状態にある場合、当該連結機構の隙間からの空気流の漏洩が大きいという問題がある。
【0012】
例えば、特許文献4にて提案されている空気吹出装置の連結機構は、操作ノブの後側の部位に設けた一対の連結アームと、後側風向調整板の前側に設けた連結ロッドを主体とするリンク式の連結機構であり、当該連結機構は隙間の大きい構造であって、フィンシャット方式の空気吹出装置に採用するには不適当である。
【0013】
本発明の目的は、かかる問題に対処することにあり、連結機構を隙間の少ない構造に構成して、フィンシャット状態にある場合、当該連結機構の配設部位からの空気流の漏洩を大きく抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、車室内用空気吹出装置に関する。本発明が適用対象とする空気吹出装置は、空気誘導路を形成する方形の筒体と、前記筒体内における先端側部位に互いに並列して回動可能に支持された複数の前側風向調整板と、前記筒体内における先端から後方に所定間隔離れた部位にて互いに並列して回動可能に支持されて前記各前側風向調整板とは直交状態に位置する複数の後側風向調整板と、前記各前側風向調整板のうちの所定の前側風向調整板に長手方向へ摺動可能に組付けられて前記各後側風向調整板のうちの所定の後側風向調整板に連結機構を介して作動的に連結された操作ノブを備える形式の空気吹出装置である。
【0015】
当該風向調整装置においては、前記操作ノブを引き上げおよび押し下げて前記各前側風向調整板を互いに連動して揺動動作させることにより、前記筒体の先端開口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させ、また、前記操作ノブを前記所定の前側風向調整板上を長手方向へ摺動して前記各後側風向調整板を互いに連動して揺動動作させることにより、前記筒体の先端開口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させるとともに、前記操作ノブをさらに摺動させて前記各後側風向調整板を互いに連動して最大限揺動動作させることにより、前記筒体内を途中の部位で遮蔽して同筒体内を流動する空気流を遮断するように構成されている。
【0016】
しかして、本発明に係る車室内用空気吹出装置は、上記した形式の空気吹出装置であって、前記連結機構は、前記操作ノブの後側に部位に一体的に設けられて前記所定の後側風向調整板の前側の部位に対向するラックと、前記所定の後側風向調整板に一体に形成されて前方へ開口して前記ラックに対向する箱状を呈する連結部位と、前記操作ノブのラックに噛合するピニオンを前側の部位に有するとともに前記連結部位に前方から挿入することにより連結される連結アームを後側の部位に有し前記操作ノブおよび前記所定の後側風向調整板とは独立して形成されたギヤ部材とにより構成されていて、前記ギヤ部材は、前記所定の後側風向調整板の前記連結部位に前記連結アームを前方から挿入して連結されていることを特徴とするものである(請求項1に係る発明)。
【0017】
本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、前記所定の後側風向調整板に隣り合う後側風向調整板は、前記ギヤ部材が回動時に前記ピニオンを外周から覆蓋する収容部を備えた構成とし、前記収容部を、前記後側風向調整板の調整板本体の中間部から同調整板本体に平行して後方に延びる箱状に形成することができる(請求項2に係る発明)。
【0018】
また、本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、前記各後側風向調整板の互いに隣り合う後側風向調整板の側面を片凸状に形成して、前記各後側風向調整板が最大限揺動した際には、互いに隣り合う一方の後側風向調整板の後側の部位が他方の後側風向調整板の前側の部位に受承されて重合される構成とすることができる(請求項3に係る発明)。
【0019】
また、本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、空気誘導路を形成する方形の筒体における各端部側の後側風向調整板に沿う各内壁部には、前記各後側風向調整板が最大限揺動した際、各端部側の後側風向調整板の後側または前側の部位がそれぞれ当接する段部を備える構成とすることができる(請求項4に係る発明)。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、連結機構を、後側風向調整板に設けた連結部位に連結されるギヤ部材のピニオンと、操作ノブの後側に設けられてピニオンに噛合するラックを主体とするギヤ式の連結機構とし、後側風向調整板には、ギヤ部材の連結アームが前方から挿入される連結部位を形成する構成としている。当該連結部位は、ギヤ部材の連結アームが前方から挿入することができる構造であればよくて、小さい箱状とすることができることから、当該フィンシャット状態における連結部位は隙間が小さくて少ない構造とすることができる。
【0021】
このため、本発明に係る車室内空気吹出装置においては、フィンシャット状態にある場合、当該連結機構の配設部位からの空気流の漏洩を大きく抑制することにある。また、当該空気吹出装置においては、連結機構を構成する連結部位は、ギヤ部材の連結アームを前側から挿入することができる簡単な構造であることから、成形金型の固定型と可動型の互いに対向するパーテーションラインPLを簡単な形状とすることができ、両型の境界部を、幅狭な突出部が複数存在することがない型とすることができ、成形金型の強度を向上させることができる(各請求項に係る発明)。
【0022】
また、本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、所定の後側風向調整板における当該連結機構の構成部位が簡単な構造で隙間の少ない構造であることから、各後側風向調整板によるフィンシャット状態にある場合、フィンシャット状態の連結機構の構成部位からの空気流の漏洩を大幅に抑制することができる(各請求項に係る発明)。
【0023】
一方、本発明に係る車室内用空気吹出装置において、前記所定の後側風向調整板に隣り合う後側風向調整板を、ギヤ部材が回動時にピニオンを外周から覆蓋する収容部を備えた構成として、収容部を、後側風向調整板の調整板本体の中間部から同調整板本体に平行して後方に延びる箱状に形成するようにすることができる。
【0024】
かかる構成を採れば、前記収容部をギヤ部材が回動時にピニオンの逃がし部として機能するとともに、ピニオンの近傍の隙間部位を収容部にて覆蓋することができて、フィンシャット状態で連結機構の構成部位からの空気流の漏洩を一層大幅に抑制することができる。また、前記収容部は、後側風向調整板の調整板本体の中間部から同調整板本体に平行して後方に延びる箱状を呈していることから、固定側金型と可動側金型の互いに対向するパーテーションラインPLの簡単な形状を大きく損なうことはない(請求項2に係る発明)。
【0025】
また、本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、前記各後側風向調整板の互いに隣り合う後側風向調整板の側面を片凸状に形成して、前記各後側風向調整板が最大限揺動した際には、互いに隣り合う一方の後側風向調整板の後側の部位が他方の後側風向調整板の前側の部位に受承されて重合される構成とすることができる。かかる構成を採れば、フィンシャット状態での隣り合う同士の後側風向調整板の重合部位からの空気流の漏洩をほぼ確実に防止することができる。また、各後側風向調整板の側面の凸状段部を、固定型と可動型の互いに対向するパーテーションラインPL上に位置させることにより、パーテーションラインPLの簡単な形状を損なうようなことはない(請求項3に係る発明)。
【0026】
また、本発明に係る車室内用空気吹出装置においては、空気誘導路を形成する方形の筒体における各端部側の後側風向調整板に沿う各内壁部には、前記各後側風向調整板が最大限揺動した際、各端部側の後側風向調整板の後側または前側の部位がそれぞれ当接する段部を備える構成とすることができる。かかる構成を採れば、各端部側の後側風向調整板の先端部と筒体の壁部間からの空気流の漏洩をほぼ確実に防止することができる(請求項4に係る発明)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、車室内用空気吹出装置に関する。図1〜図4には、本発明に係る空気吹出装置の一実施形態であるレジスタを示している。当該レジスタは、車室内の前面側のインストルメントパネルの背面側に位置する空調装置の空気ダクトの先端側に接続されて、インストルメントパネルに組付けられるもので、インストルメントパネルに組付けられている状態では、空気吹出口部が車室内に臨んでいる。
【0028】
図1は当該レジスタを斜め前方から見た斜視図、図2は当該レジスタを左右の中央部にて縦断した縦断側面図、図3は当該レジスタを上下の中央部にて横断した横断平面図、図4は当該レジスタを上下の中央部より所定高さ上方にて横断した横断平面図である。なお、当該レジスタを上下の中央部より所定高さ下方にて横断した横断平面図は、図4の横断平面図と略同様であり、特に、後側風向調整板である縦フィンの群の断面形状については同様である。
【0029】
当該レジスタは、空気誘導路を形成する方形の筒体であるリテーナ10aと、リテーナ10aの先端開口部と嵌合して空気吹出口を形成するとともに、当該レジスタの表側を装飾するベゼル10bをレジスタ本体とするもので、リテーナ10aの先端開口部の近傍に回動可能に支持されて上下方向に並列する3枚の横フィンからなる横フィン群20aと、リテーナ10a内における横フィン群20aより所定距離後方の部位に支持されて左右方向に並列する6枚の縦フィンからなる縦フィン群20bと、操作ノブ20cと、操作ノブ20cを所定の縦フィンに作動的に連結する連結機構20dを備えている。
【0030】
当該レジスタにおいては、横フィン群20aを形成する3枚の横フィン21a〜21cは、本発明で規定する前側風向調整板に該当し、縦フィン群20bを形成する6枚の縦フィン22a〜22fは、本発明で規定する後側風向調整板に該当する。当該レジスタを構成する全ての構成部材は、合成樹脂材料を使用して形成されている樹脂成型品である。なお、当該レジスタは、リテーナ10a内をその途中で開閉するエアダンパを備えていないフィンシャット方式のレジスタである。
【0031】
当該レジスタの横フィン群20aを形成する3枚の横フィン21a〜21cは、リテーナ10aの先端開口部の近傍にて、リテーナ10aの左右の壁部に組付けられている左右の支持板11,12に回動可能に支持されている。これらの全ての横フィン21a〜21cは、図示しない連結ロッドにて連結されていて、互いに連動して上下方向へ揺動可能に構成されている。横フィン群20aを形成する中央に位置する第2の横フィン21b上には、操作ノブ20cが摺動可能に組付けられている。操作ノブ20cは、第2の横フィン21b上を左右方向に摺動可能に組付けられている。
【0032】
一方、縦フィン群20bを形成する6枚の縦フィン22a〜22fは、リテーナ10aの上下の壁部に組付けられている上下の支持板13,14に回動可能に支持されている。これらの縦フィン22a〜22fは、連結ロッド23にて連結されていて、互いに連動して左右方向へ揺動可能に構成されている。縦フィン群20bを形成する中央側に位置する第3の縦フィン22cは、操作ノブ20cに対向し得る位置にある。
【0033】
当該レジスタを構成する縦フィン20b群を構成する各縦フィン22a〜22f、各縦フィン22a〜22fを互いに連結する連結ロッド23、各縦フィン22a〜22fを回動可能に支持する支持板13,14は、分割タイプの成形金型内にて一体的に成形される。当該成形金型は、成形された縦フィン群20bの各縦フィン22a〜22fを、当該成形金型内にて、成形された連結ロッド23に組付けるとともに、成形された支持板13,14に組付けることができるように構成されている。なお、図3に示す符号PLは、当該成形金型を構成する可動型を固定型から離間することができるパーテーションラインを示している。
【0034】
当該レジスタにおける最大の特徴は、操作ノブ20cを第3の縦フィン22cに作動的に連結する連結機構20dの構成にある。当該連結機構20dは、当該レジスタがフィンシャット方式のレジスタであることから、縦フィン群20bがフィンシャット状態を形成している場合、連結機構20dからの空気流の漏洩を大きく抑制すべく意図して構成されたものである。連結機構20dは、図2,図3,図5に示すように、操作ノブ20cの後側の部位に取付けられたラック24と、第3の縦フィン22cに一体に形成された連結部位25と、ラック24および連結部位25とは独立して形成されたギヤ部材26とにより構成されている。
【0035】
ラック24は、操作ノブ20cのノブ本体の後側に一体的に取付けられて、第2の横フィン21bの長手方向に沿って所定長さ延びていて、その歯部は後側に位置している。連結部位25は、ギヤ部材26を第3の縦フィン22cの前側に連結すべく機能するもので、縦フィン22cの上下の中間に設けた上下一対の平台25a,25b間にて前方へ延びて前方に開口する嵌合凹部25cを備えるとともに、両平台25a,25b間の左右の後側隅部に係止部25d,25eを備えている。
【0036】
ギヤ部材26は、操作ノブ20cを第3の縦フィン22cに作動的に連結すべく機能するもので、円弧状のピニオン26aと、ピニオン26aの後側に一体的に形成されて後方へ所定間隔を保持して延びる左右一対の連結アーム26b,26cと、両連結アーム26b,26c間の左右の中央部に一体に形成されて後方へ所定長さ延びる連結凸部26dを備えている。
【0037】
ギヤ部材26は、その連結アーム26b,26aを、第3の縦フィン22cに設けた連結部位25の両平台25a,25b間の前方から挿入することにより、第3の縦フィン23cに連結される。ギヤ部材26の連結アーム26b,26cを、連結部位25の両平台25a,25b間の前方から最大限挿入した状態では、各連結アーム26b,26cの先端側の係止部が連結部位25の各係止部25d,25eに係止され、かつ、ギヤ部材26の連結凸部26dが連結部位25の嵌合凹部25cに嵌合する。
【0038】
ギヤ部材26のかかる連結状態では、ギヤ部材26は、両連結アーム26b、26c、および、連結凸部26dを介して、連結部位25に位置決めされた状態で連結されており、ギヤ部材26のピニオン26aは、操作ノブ20cの後側に位置するラック24に噛合する。連結機構20dによるこのような連結状態は、操作ノブ20cを第3の縦フィン22cに作動的に連結した状態にあり、操作ノブ20cの引き上げおよび押し下げ操作時には、ラック24はピニオン26aには係合せずに操作ノブ20cの引き上げおよび押し下げ動作を許容する。また、操作ノブ20cの横方向への摺動操作時には、ラック24はピニオン26aに係合してピニオン26aを介してギヤ部材26を左右方向へ回動させる。
【0039】
また、当該レジスタはフィンシャット方式のレジスタであることから、縦フィン群20bが最大限揺動してフィンシャット状態にある場合、連結機構20dからの空気流の漏洩を阻止しまたは大きく抑制すべく、各縦フィン22a〜22fの構成に配慮している。各縦フィン22a〜22fの基本的な横断面形状は、図4に示す通りである。第1の縦フィン22a、第5の縦フィン22e、および、第6の縦フィン22fは、上端縁から下端縁まで、図4に示す断面形状と同一の断面形状を呈している。
【0040】
また、第2の縦フィン22b〜第4の縦フィン22dは、図3に示すように、上下の略中央部の断面形状のみを、その上下部の断面形状とは異にしている。当該略中央部の断面形状が他の部位の断面形状とは相違している理由は、第2の縦フィン22b〜第4の縦フィン22dの上下の略中央部が、連結機構20dの配設部位に対応する部位であって、連結機構20dの配設、および、連結機構20dの動作と縦フィンの揺動動作との干渉を回避することに起因している。
【0041】
第1の縦フィン22aにおいては、その右側面が片凸形状に形成されていて、右前側面が受承面部22a1に、左後側面が被受承面22b2になっている。第2の縦フィン22bにおいては、その左右側面が片凸形状に形成されていて、右前側面が受承面22b
1になっている。なお、第1の縦フィン22aの左後側面は、リテーナ10aの左側壁部に設けた左側段部15に受承される被受承面22a2になっている。また、第2の縦フィン22bにおいては、その上下の略中央部の前側部が、図3に示すように切欠状態を呈していて、連結機構20dとの干渉を回避している。
【0042】
第3の縦フィン22cにおいては、その右側面が片凸形状に形成されていて、右前側面が受承面部22c1に、左後側面が被受承面22c2になっている。また、第3の縦フィン22cにおいては、その上下の略中央部に、図2に示すように、連結機構20cを構成する連結部位24が形成されている。
【0043】
第4の縦フィン22dにおいては、その右側面が片凸形状に形成されていて、右前側面が受承面部22d1に、左後側面が被受承面22d2になっている。また、第4の縦フィン22dにおいては、その上下の略中央部に、図3に示すように、連結機構20dを構成するギヤ部材25のピニオン25aを外周から覆蓋する収容部22d3が形成されている。収容部22d3は、縦フィン22dに沿って後方へ延びる箱状を呈していて、左側に開口している。
【0044】
第5の縦フィン22eにおいては、その右側面が片凸形状に形成されていて、右前側面が受承面部22e1に、左後側面が被受承面22e2になっている。第6の縦フィン22fにおいては、その左側面が片凸形状に形成されていて、左後側面が被受承面22f2になっている。なお、第6の縦フィン22fの右前側面は、リテーナ10aの右側壁部に設けた右側段部16に受承される被受承面22f1になっている。
【0045】
これらの縦フィン22a〜22fにおいては、各縦フィン22a〜22fが最大限揺動して、フィンシャット状態を形成した場合には、隣り合う縦フィン同士がその受承面にて被受承面を重合的に受承する。また、この際には、第1の縦フィン22aの後側面の被受承面22a2の先端がリテーナ10aの左側段部15に当接して受承され、また、第6の縦フィン22fの前側面の被受承面22f1の先端がリテーナ10aの右側段部16に当接して受承される。なお、各縦フィンの側面を片凸形状に形成する段部は、成形金型を構成する固定型と可動型の互いに対向するパーテーションラインPL上に位置している。
【0046】
かかる構成の連結機構20dを装備した当該レジスタにおいては、前側に位置する横フィン群20aを揺動動作させて、空気吹出口部から吹出する空気流を上下方向の一方に指向させるには、操作ノブ20cを、第2の横フィン21b上で上下方向の一方に引き上げまたは押し下げ操作する。これにより、第2の横フィン21bは上下方向の一方に揺動動作し、同時に第2の横フィン21bと連結ロッドを介して互いに連結している第1,第3の横フィン21a,21cが連動して同方向に揺動動作する。横フィン群20aのかかる揺動動作により、空気吹出口部から吹出する空気流は横フィン群20aの揺動方向に指向される。
【0047】
また、後側に位置する縦フィン群20bを揺動動作させて、空気吹出口部から吹出する空気流を左右方向の一方に指向させるには、操作ノブ20cを、第2の横フィン21b上を左右方向の一方へ摺動操作する。これにより、操作ノブ20cと連結機構20dを介して連結している第3の縦フィン22cは左右方向の一方に揺動動作し、同時に、第3の縦フィン22cと連結ロッド23を介して互いに連結している他の全ての縦フィン22a,22b,22d〜22fが連動して同方向に揺動動作する。
【0048】
縦フィン群20bのかかる揺動動作により、空気吹出口部から吹出する空気流は縦フィン群20bの揺動方向に指向される。図6には、操作ノブ20cを、第2の横フィン21b上を左方向へ摺動操作させた状態の縦フィン群20bの揺動状態を示していて、この場合には、縦フィン群20bは図示時計回り方向に揺動する。また、操作ノブ20cを、第2の横フィン21b上を右方向へ摺動操作させた場合には、図6にて2点鎖線で示すように、縦フィン群20bは図示反時計回り方向に揺動する。
【0049】
また、後側に位置する縦フィン群20bを最大限揺動動作させて、空気吹出口部から吹出する空気流を遮断するには、操作ノブ20cを図7に示すように、右方向へ最大限摺動操作する。これにより、操作ノブ20cと連結機構20dを介して連結している第3の縦フィン22cは図示反時計回り方向へ最大限揺動動作し、同時に、第3の縦フィン22cと連結ロッド23を介して互いに連結している他の全ての縦フィン22a,22b,22d〜22fが連動して同方向に最大限揺動動作する。
【0050】
縦フィン群20bが図示反時計回り左方向へ最大限揺動動作した場合には、第1の縦フィン22aは、後側の受承面22a2をリテーナ10aの左側段部15に後方から当接して受承され、また、前側の被受承面22a2には、第2の縦フィン22bの後側の被受承面22b2が後方から当接して重合状態に受承される。第3の縦フィン22c、第4の縦フィン22d、および、第5の縦フィン22eも、第2の縦フィン22bと同様に、隣り合う第2の縦フィン22b、第3の縦フィン22c、および、第4の縦フィン22dの受承面に当接して重合状態に受承される。第6の縦フィン22fにおいては、後側の被受承面22f2は第5の縦フィン22eの前側の受承面22e1に受承されるとともに、前側の被受承面22f1はリテーナ10aの右側段部16に前方から当接して受承される。
【0051】
縦フィン群20bが反時計回り方向へ最大限揺動してフィンシャット状態を形成した状態では、第4の縦フィン22dの収容部22d3がギヤ部材26のピニオン26aを収容した状態でその外周を覆蓋し、ギヤ部材26と連結部位25の間に存在している隙間を空気流の上流側から覆蓋する。このため、縦フィン群20bが形成するフィンシャット状態では、各縦フィン22a〜縦フィン22fの重合部間、リテーナ10aの左側壁と第1の縦フィン22a間、および、リテーナ10aの右側壁と第6の縦フィン22f間の各間の隙間はほとんどない。また、第3の縦フィン22dの連結部位25はそれ自体、箱状を呈して小さく隙間の少ない構造であり、また、当該の隙間も、第4の縦フィン22dの収容部22d3にて覆蓋された状態にある。
【0052】
従って、当該レジスタにおける縦フィン群20bがフィンシャット状態を形成した状態では、リテーナ20a内の中間部はほぼ遮蔽された状態にあって、リテーナ20a内を流れる空気流はほぼ遮断され、当該レジスタの先端開口部からの空気流の漏れを大幅に抑制することができる。
【0053】
ところで、当該レジスタにおいては、操作ノブ20cと第3の縦フィン22cを作動的に連結する連結機構20dは、操作ノブ20cおよび第3の縦フィン22cとは独立して形成されたギヤ部材26を主構成部材とし、ギヤ部材26を第3の縦フィン22c側に連結する連結部位25を第3の縦フィン22cの前側に形成し、ギヤ部材26のピニオン26aに噛合するラック24を操作ノブ20cの後側に形成している。
【0054】
かかる構成の連結部位25は、縦フィン群20bがフィンシャット状態を形成した状態では、隙間を形成し難い形状であって、フィンシャット状態での空気流の漏洩を大幅に抑制し得るという利点がある。また、当該連結部位25における固定型と可動型の互いに対向するパーテーションラインPLには、ラック24やギヤ部材26が存在しないことから、パーテーションラインPLを簡単な形状とすることができ、固定型と可動型の両型を、幅狭な突出部が複数存在するようなことがない簡単なものとすることができて、成形金型の強度を従来の成形金型より向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係る車室内用空気吹出装置の一実施形態であるレジスタの斜め前方から見た斜視図である。
【図2】同レジスタの左右の中央部を縦断した縦断側面図である。
【図3】同レジスタの上下の中央部を横断した横断平面図である。
【図4】同レジスタの上下の中央部より上方の部位を横断した横断平面図である。
【図5】同レジスタを構成する連結機構の各構成部材を前側からみた斜視図である。
【図6】同レジスタを構成する縦フレーム群を時計回り方向へ揺動させた状態を示す図3に対応する横断平面図である。
【図7】同レジスタを構成する縦フレーム群を反時計回り方向へ最大限揺動させたフィンシャット状態を示す図3に対応する横断平面図である。
【符号の説明】
【0056】
10a…リテーナ、10b…ベゼル、20a…横フィン群、20b…縦フィン群、20c…操作ノブ、20d…連結機構、PL…パーテーションライン、11〜14…支持板、15…左側段部、16…右側段部、21a…第1の横フィン、21b…第2の横フィン、21c…第3の横フィン、22a…第1の縦フィン、22b…第2の縦フィン、22c…第3の縦フィン、22d…第4の縦フィン、22e…第5の縦フィン、22f…第6の縦フィン、22a1〜22f1,22f2…被受承面、22a2〜22e2…受承面、22d3…収容部、23…連結ロッド、24…ラック、25…連結部位、25a,25b…平台、25c…嵌合凹部、25d,25e…係止部、26…ギヤ部材、26a…ピニオン、26b,26c…連結アーム、26d…連結凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気誘導路を形成する方形の筒体と、前記筒体内における先端側部位に互いに並列して回動可能に支持された複数の前側風向調整板と、前記筒体内における先端から後方に所定間隔離れた部位にて互いに並列して回動可能に支持されて前記各前側風向調整板とは直交状態に位置する複数の後側風向調整板と、前記各前側風向調整板のうちの所定の前側風向調整板に長手方向へ摺動可能に組付けられて前記各後側風向調整板のうちの所定の後側風向調整板に連結機構を介して作動的に連結された操作ノブを備え、前記操作ノブを引き上げおよび押し下げて前記各前側風向調整板を互いに連動して揺動動作させることにより、前記筒体の先端開口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させ、また、前記操作ノブを前記所定の前側風向調整板上を長手方向へ摺動して前記各後側風向調整板を互いに連動して揺動動作させることにより、前記筒体の先端開口部から吹出する空気流を所望の方向に指向させるとともに、前記操作ノブをさらに摺動させて前記各後側風向調整板を互いに連動して最大限揺動動作させることにより、前記筒体内を途中の部位で遮蔽して同筒体内を流動する空気流を遮断する車室内用空気吹出装置であり、前記連結機構は、前記操作ノブの後側に部位に一体的に設けられて前記所定の後側風向調整板の前側の部位に対向するラックと、前記所定の後側風向調整板に一体に形成されて前方へ開口して前記ラックに対向する箱状を呈する連結部位と、前記操作ノブのラックに噛合するピニオンを前側の部位に有するとともに前記連結部位に前方から挿入することにより連結される連結アームを後側の部位に有し前記操作ノブおよび前記所定の後側風向調整板とは独立して形成されたギヤ部材とにより構成されていて、前記ギヤ部材は、前記所定の後側風向調整板の前記連結部位に前記連結アームを前方から挿入して連結されていることを特徴とする車室内用空気吹出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車室内用空気吹出装置において、前記所定の後側風向調整板に隣り合う後側風向調整板は、前記ギヤ部材が回動時に前記ピニオンを外周から覆蓋する収容部を備え、前記収容部は、前記後側風向調整板の調整板本体の中間部から同調整板本体に平行して後方に延びる箱状に形成されていることを特徴とする車室内用空気吹出装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車室内用空気吹出装置において、前記各後側風向調整板の互いに隣り合う後側風向調整板の側面が片凸状に形成されていて、前記各後側風向調整板が最大限揺動した際には、互いに隣り合う一方の後側風向調整板の後側の部位が他方の後側風向調整板の前側の部位に受承されて重合されることを特徴とする車室内用空気吹出装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の車室内用空気吹出装置において、空気誘導路を形成する方形の筒体における各端部側の後側風向調整板に沿う各内壁部には、前記各後側風向調整板が最大限揺動した際、各端部側の後側風向調整板の後側または前側の部位がそれぞれ当接する段部を備えていることを特徴とする車室内用空気吹出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−89529(P2010−89529A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258327(P2008−258327)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(308016242)豊和化成株式会社 (65)
【Fターム(参考)】