説明

車椅子搭載用車両の空調装置

【課題】車両の後部空間に車椅子に着座したまま乗った者に対して快適な車内環境を与えると共に車椅子を不用意に動かして空調設備と車椅子の空調用通路部とを接続する空気案内通路の接続部が破損するのを回避し、車椅子4に着座した者の安全性も高める。
【解決手段】車椅子4の本体部27内に空調用通路部5を設ける。空調用通路部5は、空調設備3のエアミックスチャンバ15より風下側部位から延びる空気案内通路23の接続部48と一時的に接続されており、空気案内通路23の途中には空調用通路部5に送られる空気量を調整する開閉ドア47が設けられている。車椅子4の昇降機構34は、接続部48が空調用通路部5に連結していながら当該昇降機構34が誤って稼働されることで車椅子4が動かないように制御部59で制御されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、福祉車両等の後部に設けられた空間に車椅子を搭載可能な車両において、この車椅子に着座したまま車両に乗っている者に対して快適な車内環境を提供するための空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の福祉車両においては、例えば特許文献1に示されるように、車両の後部に座席シートのないフロアが画成されて、このフロアに車両の側方に設けられたスライドステップから、車椅子に人が着座したままで当該車椅子を搭載することが可能な車椅子搭載用の車両の発明が既に公知となっている。
【0003】
また、一般車両においても、例えば特許文献2に示されるように、後席を車両室内空間のフロアに設けられた収納凹部に収納可能とすることにより車両の後部に空間を画成して、この空間に車両進行方向の後側から人が着座したまま車椅子を搭載することができるようにした発明が既に公知となっている。
【0004】
そして、車椅子に座った者に対して冬季や夜間等における防寒用として、例えば特許文献3に示されるように、車椅子の着座部に電熱線を配してなる電熱座を組み込むと共にこの電熱座に電気を供給するバッテリを車椅子の座部の下方に配置した構造から成る発明が既に公知となっている。更に、例えば特許文献4に示されるように、車椅子等の椅子とは別体の加温シートを椅子の表面に装着する構成の発明も既に公知となっている。
【0005】
その一方で、本願出願人は、例えば特許文献5に示されるように、車両に設置された搭乗者用のシートへ所定の空調設備から空調された空気を送ることにより、シートから空調空気を搭乗者側に吹き出させて、シート搭乗者の快適性の向上を図るシート空調装置について、これまで開発してきた。
【特許文献1】特開2007−331621号公報
【特許文献2】特開平11−198697号公報
【特許文献3】特開平10−165445号公報
【特許文献4】特開2002−1641455号公報
【特許文献5】特開2007−237999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に示されるような車椅子を搭載可能な構造の車両であっても、これまでその車両後部空間に固定された状態の車椅子に着座した者を考慮した構造の空調装置を備えておらず、車椅子に着座した者は一般的において身体的弱者であるにも関わらず当該車椅子に着座した者にとって快適な車内環境が提供されてこなかった。
【0007】
また、特許文献3に示すように、車椅子に電熱座とこの電熱座に電気を供給するためのバッテリを組み付けた構成とした場合には、車椅子の製造費用が相対的に高くなると共に車椅子の重量も相対的に増加し、車椅子の操作が困難になるという不具合を有する。そして、特許文献3に示される車椅子及び特許文献4に示される椅子用加温シートでは、当然ながら車椅子に着座した者に対して夏季や昼間等における防暑用として用いることができない。
【0008】
更に、車椅子は搭乗者用シートとは異なり車両に常に固定された状態にはないので、特許文献5に示される搭乗者シートを前提としたシート空調装置の構成をそのまま用いることは、空調設備と車椅子への空気供給手段とが接続されたまま車椅子を不用意に動かしてしまい、空調設備と車椅子への空気供給手段とを接続するダクトが破損し、車椅子が転倒する等のさまざまな事態が想定される。しかも、このような身体的弱者である車椅子に着座した者に対して他の車両搭乗者よりも優先的に快適な空調性を与えたいとの要請があるところ、特許文献5に示されるシート空調装置ではこの要請に応えるものとはなっていない。
【0009】
そこで、本発明は、車椅子搭載用車両の後部の空間に車椅子に着座したまま搭乗した者に対して快適な車内環境を与え、しかも、車椅子に着座した者が身体的弱者であるため他の車両搭乗者よりも優先的に快適な車内環境を車椅子に着座した者に与えると共に、車椅子を不用意に動かすことで空調設備と車椅子への空気供給手段とを接続する手段が破損するのも回避し、車椅子の安全性も高めた車椅子搭載用車両の空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置は、車椅子を人員が着座したまま搭乗させることができる空間部と、この搭載された車椅子を前記車両に固定する固定機構とを少なくとも有する車両において、前記車両の車内又は車外から空気を導入する空気導入手段、この導入された空気を空調する空調手段及び、この空調された空気を前記車両内に適宜供給する空気供給手段を備えた空調設備を前記車両に搭載し、前記車椅子の本体部内に、外部から空気を取り込む空気取込み口を有すると共に前記車椅子に着座した者側に開口する吹出口を有する空調用通路部を設け、前記空調設備の空気供給手段と前記空調用通路部の空気取込み口とを、空気案内手段を介して前記空気案内手段から前記空気取込み口に空気が案内されるように連結したものとなっている(請求項1)。
【0011】
空調設備において、空気導入手段は、例えば、内気導入口、外気導入口のいずれか一方又は双方、内外気導入口の双方の場合にはインテークドア、及び、送風機等が該当する。空調手段は、例えば、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器、エアミックスドア、エアミックスチャンバ等が該当する。空気供給手段は、例えば、デフ用吹出口及びこのデフ用吹出口を開閉するデフ開閉ドア、ベント用吹出口及びこのベント用吹出口を開閉するベント開閉ドア、フット用吹出口及びこのフット用吹出口を開閉するフット開閉ドア等が該当する。そして、空気供給手段は、車椅子の空調用通路部に空気を供給するために、例えば空調手段のエアミックスチャンバにおいて空気案内手段の上流側が連接されるようになっている。
【0012】
空気案内手段は、例えば、空調設備の空気供給手段と空調用通路部の空気取込み口とを連結する例えばダクト状の通路であるところ、その一部が周囲を側壁で覆われておらず空気のみが通過する部位を有していても良い。また、固定機構は、車椅子の車輪と車両の車椅子載置面との間に差し込まれる例えば楔形状のロック部材等の道具であっても、車椅子の車輪が通過した後にプレートが自動的に持ち上がる等の電動又は弾性機構の復元力を利用した構造体であっても良い。
【0013】
これにより、空調設備の空調手段で空調された空気が空気供給手段から空気案内手段を経て車椅子の空調用通路部の通路内に入り、風上側の吹出口から車椅子に着座した者に対して吹き出されることとなるので、車両の後部空間に車椅子に着座したまま乗った者に対して、快適な車内環境が提供される。また、空調設備の空調手段により、空調されて空気供給手段から供給される空気を冷風とすることもできるので、夏季や昼間等における防暑用として用いることも可能である。
【0014】
ここで、この発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置は、前記空調設備の各手段に対する稼働状態についての入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記空調設備の各手段の作動状況を判定すると共に、この判定結果に基づいて前記空気案内手段を開閉する開閉機構の駆動手段に対し前記空気案内手段を開閉するための信号を出力することができる制御部を有し、この制御部は、前記空調設備の各手段の作動状態について所定の判定をしたことを条件に、前記開閉機構に対し前記空気案内手段を開放させるものとなっている(請求項2)。前記所定の判定の条件とは、前記制御部が前記送風手段を構成する送風機による送風の有無を検出する送風状態検出手段からの入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記送風機が送風状態にあるとの判定を行うとの条件である(請求項3)。
【0015】
これにより、空調設備の作動状況と車椅子の空調用通路の作動状況とを常に連動させることができ、空調設備の各手段、特に空調設備外から空気を取り込むために空気導入手段の送風機が送風状態にないのにもかかわらず、車椅子の空調用通路部に空気が送られようとするという不具合をなくすことができる。
【0016】
そして、この発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置では、前記空調設備の空気供給手段がデフ用吹出口及びこのデフ用吹出口を開閉するデフ開閉ドアを有する場合に、前記制御部は、前記送風機が送風状態にあると判定をしても、デフ開閉ドアの開閉を検出する開度検出手段からの入力信号を受け、前記デフ開閉ドアが全開であると判定をした場合には、前記開閉機構に対し前記空気案内手段を閉じた状態を維持させるものとなっている(請求項4)。
【0017】
これにより、フルデフロストモード時においても、空気が車椅子の本体部内に設けられた空調用通路部から車椅子に着座した者に供給されてしまうことで、デフ用吹出口からの吹出空気量が不足するのを防止することができる。
【0018】
また、この発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置では、前記車両が前記空間部内に前記車椅子を昇降させるための昇降機構とこの昇降スイッチの昇降を操作するためのスイッチとを有する場合に、前記制御部は、前記昇降機構のスイッチからの入力信号を受け、この信号に基づき降車用スイッチがONになったか否かを判定すると共に、前記空気供給手段と前記空気取込み口との連結状態を検出する連結状態検出手段からの入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記空気供給手段と前記空気取込み口との連結の有無を判定し、更に、前記昇降機構の駆動手段に対しこの昇降機構の駆動手段をON/OFFするための信号を出力するものとなっており、前記昇降機構の降車用スイッチがONになったとの判定をしても前記空気供給手段と前記空気取込み口とが連結されているとの判定をした場合には、前記昇降機構の駆動手段に対しこの昇降機構の駆動手段をOFF状態に維持させるものとなっている(請求項5)。車両の昇降機構は、例えばワイヤ等で車椅子を引っ張り又は引き出す構造のものや、車椅子が乗った昇降板が上下動する構造のもの等がある。
【0019】
これにより、空調設備の空気供給手段と空調用通路部の空気取込み口とが連結されたままであるにも関わらず、昇降機構の降車用スイッチをONにして不用意に車椅子を車両から降ろそうとしてしまうことにより、空気導入手段を破損する不具合が防止され、安全性の確保が図られる。
【0020】
一方、この発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置は、車椅子を人員が着座したまま搭乗させることができる空間部と、この搭載された車椅子を前記車両に固定する固定機構とを少なくとも有する車両において、前記車両の車内又は車外から空気を導入する空気導入手段、この導入された空気を空調する空調手段及び、この空調された空気を前記車室内に適宜供給する空気供給手段を備えた空調設備を前記車両に搭載し、前記車椅子の本体部内に、前記シートを温める加温装置を組み込み、前記空調設備の各手段と前記車椅子の加温装置とは、前記車両内に搭載された共通の電源から電気が供給されると共に、前記空調設備の各手段に対する電気の供給状態及び前記加温装置に対する電気の供給状態についての入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記電源に対し前記空調設備の各手段への電気の供給量を調整することができる制御部を有するものとなっている(請求項6)。
【0021】
空調設備において、空気導入手段は、例えば、内気導入口、外気導入口のいずれか一方又は双方、内外気導入口の双方の場合にはインテークドア、及び、送風機等が該当する。空調手段は、例えば、冷却用熱交換器、加熱用熱交換器、エアミックスドア、エアミックスチャンバ等が該当する。空気供給手段は、例えば、デフ用吹出口及びこのデフ用吹出口を開閉するデフ開閉ドア、ベント用吹出口及びこのベント用吹出口を開閉するベント開閉ドア、フット用吹出口及びこのフット用吹出口を開閉するフット開閉ドア等が該当する。そして、空気供給手段は、車椅子の空調用通路部に空気を供給するために、例えば空調手段のエアミックスチャンバにおいて空気案内手段の上流側が連接されるようになっている。
【0022】
固定機構は、車椅子の車輪と車両の車椅子載置面との間に差し込まれる例えば楔形状のロック部材等の道具であっても、車椅子の車輪が通過した後にプレートが自動的に持ち上がる等の機械構造体であっても良い。
【0023】
これにより、車両の後部空間に搭載された車椅子であっても、車椅子に着座した者には、当該車椅子の本体部内に設けられた加温装置から発せられた熱で温められるので、車椅子に着座したまま車両に乗った者に対して、快適な車内環境が提供される。そして、加温装置の電源として車両の電源を用いることができるので、車椅子に加温装置の電源を搭載することにより車椅子の重量が相対的に大きくなることを防止することが可能である。
【0024】
そして、この発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置では、前記空調設備の空調手段が電気ヒータを有する場合に、前記制御部は、前記電源の電圧を検出する電圧検出手段からの入力信号を受けて、この入力信号に基づき電源の電圧の数値が所定値よりも高いか低いかを判定し、前記電源の電圧が所定値よりも低いとの判定をした場合には、前記電源に対し前記電気ヒータへの電気の供給量を相対的に小さくするものとなっている(請求項7)。車両の昇降機構は、例えばワイヤ等で車椅子を引っ張り又は引き出す構造のものや、車椅子が乗った昇降板が上下動する構造のもの等がある。電気ヒータとしては、例えばPTCヒータ等が挙げられる。
【0025】
これにより、車両の電源の電圧が相対的に低くなっているとの不具合があっても、車椅子の加温装置に対してPTCヒータ等の電気ヒータよりも優先的に電気が供給されるので、身体的弱者である車椅子利用者に対し、他の搭乗者よりも優先的・積極的に保護を図ることが可能である。
【0026】
また、この発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置では、前記車両が前記空間部内に前記車椅子を昇降させるための昇降機構とこの昇降スイッチの昇降を操作するためのスイッチとを有する場合に、前記制御部は、前記昇降機構のスイッチからの入力信号を受け、この信号に基づき降車用スイッチがONになったか否かを判定すると共に、前記車両の電源と前記加温装置との電気的接続状況を検出する接続状況検出手段からの入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記車両の電源と前記加温装置との電気的接続の有無を判定し、更に、前記昇降機構の駆動手段に対しこの昇降機構の駆動手段をON/OFFするための信号を出力するものとなっており、前記昇降機構の降車用スイッチがONになったとの判定をしても前記車両の電源と前記加温装置とが電気的に接続されているとの判定をした場合には、前記昇降機構の駆動手段に対しこの昇降機構の駆動手段をOFF状態に維持させるものとなっている(請求項8)。
【0027】
これにより、車両の電源と加温装置とがハーネス等により電気的に接続されたままであるにも関わらず、固定機構の固定解除スイッチをONにして不用意に車椅子を車両との固定状態から解除して動かしてしまうことにより、空気導入手段を破損する不具合が防止され、また、車椅子の転倒が防止され、車椅子の安全性の確保が図られる。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、請求項1から請求項6に記載の発明によれば、空調設備の空調手段で空調された空気が空気供給手段から空気案内手段を経て車椅子の空調用通路部の通路内に入り、風上側の吹出口から車椅子に着座した者に対して吹き出させることができるので、車両の後部空間に車椅子に着座したまま乗った者に対して、快適な車内環境を提供することが可能である。また、請求項1から請求項6に記載の発明によれば、空調設備の空調手段によって空調されて空気供給手段から供給される空気を冷風とすることもできるので、車椅子搭載用車両の空調装置を夏季や昼間等における防暑用として用いることも可能であり、車椅子に着座した者への空調機能も高めることができる。
【0029】
特に請求項3に記載の発明によれば、空調設備の稼働と車椅子の空調用通路部の稼働とを常に連動させることができるようになり、空調設備の各手段、特に空気導入手段の送風機が送風状態にないため、空調設備内に外部から空気が取り込まれていない状態であるにも関わらず、車椅子の空調用通路部に空気が送られようとするという不具合をなくすことが可能となる。
【0030】
特に請求項4に記載の発明によれば、フルデフロストモード時においても、空気が車椅子の本体部内に設けられた空調用通路部から車椅子に着座した者に供給されてしまうことで、デフ用吹出口からの吹出空気量が不足するのを防止することができ、フルデフロストモードを十分に実現することが可能となる。
【0031】
特に請求項5に記載の発明によれば、空調設備の空気供給手段と空調用通路部の空気取込み口とが連結されたままであるにも関わらず、昇降機構の降車用スイッチをONにして不用意に車椅子を車両から降ろそうとしてしまうことにより、空気導入手段を破損する不具合が防止され、車椅子の転倒が回避されるので、空調装置及び車椅子の安全性の確保が図られる。
【0032】
これに対し、請求項6から請求項8に記載の発明によれば、車両の後部空間に搭載された車椅子であっても、車椅子に着座した者は当該車椅子の本体部内に設けられた加温装置から発せられた熱で温められるので、車椅子に着座したまま車両に乗った者に対して快適な車内環境を提供することができる。しかも、請求項7から請求項10に記載の発明によれば、加温装置の電源として車両の電源を用いることができるので、車椅子に加温装置の電源を搭載することにより車椅子の重量が相対的に大きくなることを防止することが可能である。
【0033】
特に請求項7に記載の発明によれば、車両の電源の電圧が相対的に低くなっているとの不具合があっても、車椅子の加温装置に対してPTCヒータよりも優先的に電気が供給されるので、身体的弱者である車椅子利用者の保護を優先的・積極的に図ることが可能であり、車椅子に着座したまま車両に乗った者に対してより一層の快適な車内環境を提供することができる。
【0034】
特に請求項8に記載の発明によれば、車両の電源と加温装置とがハーネス等により電気的に接続されたままであるにも関わらず、固定機構の固定解除スイッチをONにして不用意に車椅子を車両との固定状態から解除して動かしてしまうことにより、空気導入手段が破損するのを防止し、車椅子が転倒するのを回避することが可能となり、空調装置及び車椅子の安全性の確保を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、この発明の実施形態の一例を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0036】
図1に示すのは、本発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置1の実施例1を模式的に示す図であり、この車椅子搭載用車両の空調装置1は、車両2の進行方向の前方側に搭載された空調設備(HVAC)3と、車椅子4内に形成された空調用通路部5と、空調設備3と空調用通路部5とを連結する空気案内通路23とを有して構成されている。
【0037】
空調設備3は、車室内6の温度を調整するための公知のものであり、内外気導入口7、8、この内外気導入口7、8を切り換えるためのインテークドア9、及びモータ11で稼働する送風機10から成る空気導入手段と、エバポレータ等の冷却用熱交換器12、ヒータコア等の加熱用熱交換器13、冷却用熱交換器12及び加熱用熱交換器13の間に配置されて加熱用熱交換器13を通過する空気量と加熱用熱交換器13をバイパスする空気量との割合を調整するエアミックスドア14及び、加熱用熱交換器13で加熱された空気と加熱用熱交換器をバイパスした空気とが混合されるエアミックスチャンバ15から成る空調手段と、デフ用通路16及びデフ用通路16の風上側開口を開閉するデフ開閉ドア17、ベント用通路18及びベント用通路18の風上側開口を開閉するベント開閉ドア19及び、フット用通路20及びフット用通路20の風上側開口を開閉するフット開閉ドア21から成る空気供給手段を有して構成されている。尚、インテークドア9と、エアミックスドア14と、デフ開閉ドア17、ベント開閉ドア19及びフット開閉ドア21の各種モードドアとは、アクチュエータ60、61、62により開閉動作が行われる。
【0038】
車椅子4は、図1及び図2に示されるように、座部24、背もたれ部25、及び座部24から背もたれ部に延びる肘掛け部26を有する本体部27に、前輪28と後輪29とが地面等の面を転動可能に装着された構成となっている。更に、この車椅子4では、後述する固定機構35のフック39が引き掛けられるように例えば環状の引き掛け部30を有している。もっとも、固定機構35からのワイヤ38で引っ張ったり、引き出ししたりしてもワイヤ38が外れない構成であれば特にその構成は限定されない。
【0039】
そして、この車両2は、車椅子4を人が着座したまま乗車できるようにするために、図3に示されるように、車室内6の後方に大きな空間部6Aを有すると共に、車両2の後方のドア32が上方に向けて大きく開き、更に、車椅子4の乗降用プレート33を配置することができるようになっている。この乗降用プレート33は、車両2の構成部品として伸縮自在に収納されたものであっても、車両2に対し必要に応じて着脱自在に取り付けられるものであっても良い。
【0040】
更に、この車両2では、車椅子4を人が着座したまま乗車できるようにするために、
図2及び図3に示されるように、車椅子4を乗降用プレート33に沿って昇降させるための昇降機構34と、車両2の空間部6A内にて車椅子4を固定するための固定機構35とを備えている。
【0041】
このうち、昇降機構34は、モータ36と、このモータ36の駆動軸に接続されたリール37と、リール37に巻き回されるワイヤ38とを有して構成され、ワイヤ38の先端側には特に図2に示されるように車椅子4の引き掛け部30に引き掛けるためのフック39が形成されている。そして、この昇降機構34は、図1及び図3に示されるように、空間部6Aの内壁面に配置された操作部40と接続されているもので、この操作部40は、ワイヤ38を巻き上げるためにリール37を回転させる乗車用スイッチ41と、ワイヤ38を送り出すためにリール37を上記とは逆回転させる降車用スイッチ42とを備え、車椅子4を昇降させるためにはこの乗車用スイッチ41又は降車用スイッチ42をON/OFFする。
【0042】
固定機構35は、この実施例では、特に図2に示されるように、車両2に固定された台座44と、この台座44に連結されたフラップ45とを有して構成され、このフラップ45は台座44に収納された図示しないモータにより先端が揺動するものとなっている。但し、固定機構35は、図示しないが、フラップ45がバネ等の弾性機構の復元力により昇降する装置であっても、車椅子4の後輪29と車両2の面との間に差し込む例えば楔形状等を成すロック部材であっても良い。
【0043】
ところで、前述した空調設備3は、この実施例では、空気供給手段として、図1に示されるように、エアミックスチャンバ15よりも風下側において、空調設備3で空調された空気を空調用通路部5まで案内するために、空気案内通路23と接続される中継通路46が配置されている。エアミックスチャンバ15から中継通路46への境界部位及びこの中継通路46内には、この中継通路46を開閉するための開閉ドアは配置されていない。
【0044】
空気案内通路23は、図1に示されるように、車両進行方向に沿って昇降機構34及び固定装置35側まで延びているもので、この空気案内通路23の途中において、この空気案内通路23を開閉する開閉ドア47が配置されている。そして、空気案内通路23の最風下側は、車両2の上下方向に沿って可動可能な接続部48が設けられている。この接続部48は、この実施例では、先端が後述する空調用通路部5の空気取込み口部55に装着可能な頭部49と、空調用通路部5と頭部49とを結ぶ蛇腹形状の伸縮部50とから構成されている。尚、開閉ドア47もアクチュエータ67により開閉動作が行われる。
【0045】
そして、開閉ドア47は、図1及び図3に示されるように、空間部6Aの内壁面に配置された操作部51と接続されているもので、この操作部51は、開閉ドア47を開くための開スイッチ52と、開閉ドア47を閉じるための閉スイッチ53とを備えている。これに伴い、開閉ドア47は、AUTOスイッチのONで自動的に開閉されると共に、この開スイッチ52又は閉スイッチ53をON/OFFすることでも開閉を行うことができるものとなっている。
【0046】
車椅子4の空調用通路部5は、この発明では、図2に示されるように、本体部27内において座部24から背もたれ部25まで連通した空洞状のものとなっていると共に、本体部27の下部に開口した空気取込み口部55と、座部24及び背もたれ部25の車椅子4に着座する人側に開口した複数の吹出口56とを有している。
【0047】
以上の構成によれば、空調設備3の加熱用熱交換器13で加熱された温風や空調設備3の冷却用熱交換器12で冷却されて加熱用熱交換器13をバイパスした冷風が、中継通路46、空気案内通路23を経て空気取込み口部55から空調用通路部5内に入って、吹出口56から車椅子4に着座する者に対して吹き出されることとなる。
【0048】
そして、上記したインテークドア9、エアミックスドア14、開閉ドア17、19、21を駆動するアクチュエータ60、61、62、送風機10のモータ11、空気案内通路23の開閉ドア47、昇降機構34のモータ36は、制御部59からの出力信号によって制御されるようになっている。
【0049】
制御部59は、図示しない中央演算処理装置(CPU)、読出専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力ポート(I/O)等を備えると共に、インテークドア9、エアミックスドア14、開閉ドア17、19、21を駆動するアクチュエータ60、61、62、送風機10のモータ11、空気案内通路23の開閉ドア47、昇降機構34のモータ36のそれぞれを駆動制御する駆動回路等を有して構成され、送風機10のモータ11の回転数を検出する送風状態センサ63からの信号、デフ開閉ドア17の開度を検出するドアセンサ64からの信号、空気案内通路23の接続部48と空調用通路部5の空気取込み口部55との接続状況を検出する連結状況センサ65からの信号、昇降機構34の降車用スイッチ42をONした際の信号等が入力されるようになっている。
【0050】
また、制御部59には、車室側からの操作によって制御信号を出力する操作部22からの信号等が入力されるようになっている。この操作部22は、特に図示しないが、各種ドア17、19、21、47、冷凍サイクルを構成するコンプレッサ、送風機10等の各空調機器を自動制御する指令を出力するAUTOスイッチ、吸気モードを内気循環モード(REC)又は外気導入モード(FRESH)にマニュアル設定するRECスイッチ、吹出モードを強制的にフルデフロストモードにするDEFスイッチ、各空調機器をOFFモードに設定するOFFスイッチ、送風能力を切り換えるFANスイッチ、吹出モードをマニュアル設定するMODEスイッチ等を有すると共に、これらのスイッチで設定された目標温度、送風能力、吹出モード等が表示部に表示されるようになっている。
【0051】
そして、制御部59は、ROM又はRAMに与えられた所定のプログラムにしたがって各種入力信号を処理し、送風能力の切り換え、吸気モードの切り換え、吹出モードの切り換え、エアミックスドア14の開度、吹出モード用の開閉ドア17、19、21の開度、空気案内通路23の開閉ドア47の開度、及び昇降機構34のモータ36等を制御するようになっている。
【0052】
図4において、制御部59による空気案内通路23の開閉ドア47の制御動作例のプログラムがフローチャートとして示されており、以下において、このフローチャートに基づき空気案内通路23の開閉ドア47の制御動作例のプログラムを説明する。
【0053】
このプログラムは、図示しないメイン制御ルーチンからタイマの割り込み又はジャンプ命令によって定期的に実行されるもので、ステップ100から開始されるものである。
【0054】
ステップ101において、このプログラムに必要とされるデータの信号が入力される。このデータは、送風状態センサ63からの送風機10の送風状態(送風機10のモータ11の回転数)、ドアセンサ64からのデフ開閉ドア17の開度である。
【0055】
ステップ102において、送風状態センサ63からの入力信号に基づき送風機10が送風状態か否か(送風機10のモータ11の回転数が0か0より上か又は所定数値以上か否か)が判定される。このステップ102で送風機10が送風状態であると判定された場合には、次のステップ103に進み、これに対し、ステップ102で送風機10が送風状態にないと判定された場合には、ステップ101の前まで戻るので、開閉ドア47を開くとの信号が制御部59から開閉ドア47のアクチュエータ67に送られないので、開閉ドア47は閉じた状態が維持される。
【0056】
ステップ103において、ドアセンサ47からの入力信号に基づきデフ開閉ドア17が全開(フルデフロストモード)か否かが判定される。このステップ103でデフ開閉ドア17が全開でないと判定された場合には、次のステップ104に進み、開閉ドア47を開かせる処理をした後、ステップ105からメインルーチンに抜ける。これに対し、ステップ103でデフ開閉ドア17が全開であると判定された場合には、ステップ101の前まで戻るため、開閉ドア47を開くとの信号が制御部59から開閉ドア47のアクチュエータ67に送られないので、開閉ドア47は閉じた状態が維持される。
【0057】
これにより、送風機10のモータ11が停止しているか低回転のために好適な送風状態にないので、空調設備3内に車室内外から空気が送風される状態にないにもかかわらず、空気案内通路23の開閉ドア47が開放されて空調設備3から車椅子4の空調用通路部5に空気が送られようとするのを止めることができる。また、吹出モードがフルデフロストモードであるにもかかわらず、空気案内通路23の開閉ドア47が開放されて空調設備3から車椅子4の空調用通路部5に空気が送られようとするのを止めることもできる。
【0058】
尚、マニュアル操作で操作部51の開スイッチ52をONにし、この信号がステップ107で制御部59に対し入力された場合にもステップ102から104において同様の制御動作が行われる。
【0059】
図5において、制御部59による昇降機構34のモータ36の制御動作例のプログラムがフローチャートとして示されており、以下において、このフローチャートに基づき昇降機構34のモータ36の制御動作例のプログラムを説明する。
【0060】
このプログラムも、図示しないメイン制御ルーチンからタイマの割り込み又はジャンプ命令によって定期的に実行されるもので、ステップ106から開始されるものである。
【0061】
ステップ107において、このプログラムに必要とされるデータの信号が入力される。このデータは、操作部40の乗車用スイッチ41のON/OFF及び降車用スイッチ42のON/OFF、連結センサ65からの空調用通路部5と空気案内通路23の接続部48との連結状況である。
【0062】
ステップ108において、操作部40の降車用スイッチ42がONされたか否かが判定されて、操作部40の降車用スイッチ42がONされたと判定された場合には次のステップ109に進み、操作部40の降車用スイッチ42がONされていないと判定された場合には、ステップ111に進み、昇降機構34のモータ36のOFF状態が維持される処理がされて、ステップ112からメインルーチンに抜ける。
【0063】
ステップ109において、連結状況センサ65からの入力信号に基づき、空調用通路部5と空気案内通路23の接続部48とが連結中か否かが判定されて、空調用通路部5と空気案内通路23の接続部48とが連結中でないとの判定がなされた場合には、ステップ110に進んで、昇降機構34のモータ36をONにする処理をした後、ステップ112からメインルーチンに抜けるので、リール37の回転によりワイヤ38が引き出され、車椅子4を車両2から降ろす動作が行われる。これに対し、空調用通路部5と空気案内通路23の接続部48とが連結中の判定がなされた場合には、ステップ111に進み、昇降機構34のモータ36のOFF状態が維持される処理がされた後、ステップ112からメインルーチンに抜ける。
【0064】
これにより、空調用通路部5と空気案内通路23の接続部48とが連結中であるにもかかわらず、誤って操作部40の降車用スイッチ42をONにした場合でも、昇降機構34のモータ36は駆動しないため、車椅子4の移動により空気案内通路23の接続部48や車椅子4が破損したり、車椅子4が転倒したりすることが回避され、空調装置1や車椅子4に着座した者に対する安全が確保される。
【実施例2】
【0065】
図6に示すのは、本発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置1の実施例2を模式的に示す図であり、この車椅子搭載用車両の空調装置1は、車両2の進行方向の前方側に搭載された空調設備(HVAC)3と、車椅子4内に設けられた加温装置71とを有して構成されている。
【0066】
空調設備3は、車室内6の温度を調整するための公知のものであり、内外気導入口7、8、この内外気導入口7、8を切り換えるためのインテークドア9、及びモータ11で稼働する送風機10から成る空気導入手段と、エバポレータ等の冷却用熱交換器12、ヒータコア等の加熱用熱交換器13、冷却用熱交換器12及び加熱用熱交換器13の間に配置されて加熱用熱交換器13を通過する空気量と加熱用熱交換器13をバイパスする空気量との割合を調整するエアミックスドア14、車両2に搭載された電源69からの電気の供給を受けて、加熱用熱交換器13を通過してきた空気を更に加熱する補助的加熱装置たる電気ヒータ(PTCヒータ)70及び、加熱用熱交換器13とPTCヒータ70で加熱された空気と加熱用熱交換器をバイパスした空気とが混合されるエアミックスチャンバ15から成る空調手段と、デフ用通路16及びデフ用通路16の風上側開口を開閉するデフ開閉ドア17、ベント用通路18及びベント用通路18の風上側開口を開閉するベント開閉ドア19及び、フット用通路20及びフット用通路20の風上側開口を開閉するフット開閉ドア21から成る空気供給手段を有して構成されている。
【0067】
尚、インテークドア9と、エアミックスドア14と、デフ開閉ドア17、ベント開閉ドア19及びフット開閉ドア21の各種モードドアとは、アクチュエータ60、61、62により開閉動作が行われる。また、電源69は、PTCヒータ70のみならず他の空調機器、操作部22、40、74等を稼働させるための電気を供給させるためにも用いられるもので、この電源69の電圧は電圧センサ81により検出されるようになっている。
【0068】
車椅子4は、図6に示されるように、座部24、背もたれ部25、及び座部24から背もたれ部に延びる肘掛け部(図示せず)を有する本体部27に、前輪28と後輪29とが地面等の面を転動可能に装着された構成となっている。尚、肘掛け部は、加温装置71についての説明を考慮して省略したものであるが、その構成は図2に示される肘掛け部26と同様である。更に、この車椅子4では、後述する固定機構35のフック39が引き掛けられるように例えば環状の引き掛け部30を有している。
【0069】
また、車椅子4は、図6に示されるように、本体部27内のうち座部24から背もたれ部25にかけて加温装置71が内蔵されている。この加温装置71は、例えば車椅子4の本体部27の下部等に収納されたバッテリ72と、電熱線等からなって熱を放射するヒータ部73とを有して構成されている。加温装置71のバッテリ72は、図6に示されるように、このバッテリ72から延びるハーネス75が操作部74から延びるハーネス76とコネクタ77を介して接続されている。そして、このコネクタ77による加温装置71のハーネス75と操作部74及び下記するハーネス78を介して電源69と繋がるハーネス76との接続状況は、接続状況センサ82により検出することができるようになっている。また、操作部74は、ハーネス78を介して電源69と接続されている。すなわち、加温装置71とPTCヒータ70とは同一の電源69から電気が供給されるものとなっている。そして、操作部74は、バッテリ72への電気の供給を行うためのONスイッチ79と、バッテリ72への電気の供給を停止するためのOFFスイッチ80とを備えている。これに伴い、加温装置71は、AUTOスイッチのONで自動的に電気供給の有無が制御されると共に、このONスイッチ79又はOFFスイッチ80を入れることでも電気供給の有無を設定することができるものとなっている。
【0070】
更に、この車両2は、車椅子4を人が着座したまま乗車できるようにするために、図6に示されるように、車室内6の後方に大きな空間部6Aを有すると共に、図2で示される実施例1と同様に、車両2の後方のドアが上方に向けて大きく開き、更に、図2で示される実施例1と同様に、車椅子4の乗降用プレートを配置することができるようになっている。
【0071】
更にまた、この車両2では、車椅子4を人が着座したまま乗車できるようにするために、図6に示されるように、車椅子4を乗降用プレートに沿って昇降させるための昇降機構34と、車両2の空間部6A内にて車椅子4を固定するための固定機構35とを備えている。
【0072】
このうち、昇降機構34は、モータ36と、このモータ36の駆動軸に接続されたリール37と、リール37に巻き回されるワイヤ38とを有して構成され、ワイヤ38の先端側には、先の実施例1の図2と同様に車椅子4の引き掛け部30に引き掛けるためのフックが形成されている。そして、この昇降機構34は、図6に示されるように、空間部6Aの内壁面に配置された操作部40と接続されているもので、この操作部40は、ワイヤ38を巻き上げるためにリール37を回転させる乗車用スイッチ41と、ワイヤ38を送り出すためにリール37を上記とは逆回転させる降車用スイッチ42とを備え、車椅子4を昇降させるためにはこの乗車用スイッチ41又は降車用スイッチ42をON/OFFする。
【0073】
固定機構35は、この実施例では、先の実施例1の図2で示される構成と同様に、図6に示されるように、車両2に固定された台座44と、この台座44に連結されたフラップ45とを有して構成され、このフラップ45は台座44に収納された図示しないモータにより先端が揺動するものとなっている。但し、この固定機構35についても、フラップ45がバネ等の弾性機構の復元力により昇降する装置であったり、車椅子4の後輪29と車両2の面との間に差し込まれる例えば楔形状等を成すロック部材であったりしても良い。
【0074】
以上の構成によれば、車椅子4は、車両2の電源69から供給される電力によりヒータ部73が加熱される加温装置71を有するので、車椅子4に着座した者を温めることができる。また、加温装置71とPTCヒータ70等との電源69が共通するので、かかる加温装置71とPTCヒータ70等とを電源69からの電気の供給を一律にON/OFFすることで連動させることができる。
【0075】
そして、上記したインテークドア9、エアミックスドア14、開閉ドア17、19、21を駆動するアクチュエータ60、61、62、送風機10のモータ11、電源69からPTCヒータ70、加温装置71等への電気の供給、及び昇降機構34のモータ36は、制御部59からの出力信号によって制御されるようになっている。
【0076】
制御部59は、図示しない中央演算処理装置(CPU)、読出専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、入出力ポート(I/O)等を備えると共に、インテークドア9、エアミックスドア14、開閉ドア17、19、21を駆動するアクチュエータ60、61、62、送風機10のモータ11、昇降機構34のモータ36のそれぞれを駆動制御する駆動回路等を有して構成され、電源69の電圧についての電圧センサ81からの信号、加温装置71のハーネス75と操作部74、ハーネス78を介して電源69に繋がるハーネス76との接続状況についての接続状況センサ82からの信号、昇降機構34の降車用スイッチ42をONした際の信号等が入力されるようになっている。
【0077】
また、制御部59には、車室側からの操作によって制御信号を出力する操作部22からの信号等が入力されるようになっている。この操作部22は、特に図示しないが、各種ドア17、19、21、冷凍サイクルを構成するコンプレッサ、送風機10等の各空調機器を自動制御する指令を出力するAUTOスイッチ、吸気モードを内気循環モード(REC)又は外気導入モード(FRESH)にマニュアル設定するRECスイッチ、吹出モードを強制的にフルデフロストモードにするDEFスイッチ、各空調機器をOFFモードに設定するOFFスイッチ、送風能力を切り換えるFANスイッチ、吹出モードをマニュアル設定するMODEスイッチ等を有すると共に、これらのスイッチで設定された目標温度、送風能力、吹出モード等が表示部に表示されるようになっている。
【0078】
そして、制御部59は、ROM又はRAMに与えられた所定のプログラムにしたがって各種入力信号を処理し、送風能力の切り換え、吸気モードの切り換え、吹出モードの切り換え、エアミックスドア14の開度、吹出モード用の開閉ドア17、19、21の開度、PTCヒータ70への電気の供給量、及び昇降機構34のモータ36等を制御するようになっている。
【0079】
図7において、制御部59によるPTCヒータ70への電気の供給量の制御動作例のプログラムがフローチャートとして示されており、以下において、このフローチャートに基づきPTCヒータ70への電気の供給量の制御動作例のプログラムを説明する。
【0080】
このプログラムは、図示しないメイン制御ルーチンからタイマの割り込み又はジャンプ命令によって定期的に実行されるもので、ステップ113から開始されるものである。
【0081】
ステップ114において、このプログラムに必要とされるデータの信号が入力される。このデータは、PTCヒータ70への電源69からの電気の供給の有無、車椅子4の加温装置71への電源69からの電気の供給の有無、電源69の電圧の数値等である。
【0082】
ステップ115において、PTCヒータ70への電気の供給の有無が判定され、PTCヒータ70へ電気が供給されていると判定されるとステップ116に進み、PTCヒータ70へ電気が供給されていないと判定されるとステップ114の前まで戻る。
【0083】
ステップ116において、車椅子4の加温装置71への電気の供給の有無が判定され、加温装置71へ電気が供給されていると判定されるとステップ117に進み、加温装置71へ電気が供給されていないと判定されるとステップ119に進み、PTCヒータ70への電気供給量を維持すると処理がなされた後、ステップ120からメインルーチンに抜ける。これに対し、加温装置71へ電気が供給されていると判定されればステップ117に進む。
【0084】
ステップ117では、電源69の電圧が所定値αよりも小さいか否かが判定され、電源69の電圧が所定値αよりも小さいと判定されるとステップ118に進み、PTCヒータ70への電気供給量を削減するとの信号が出された後、ステップ120から抜ける。これに対し、電源69の電圧が所定値αよりも大きいと判定されるとステップ119に進み、PTCヒータ70への電気供給量を維持するとの信号が出された後、ステップ120からメインルーチンに抜ける。
【0085】
これにより、電源69の電圧が通常の状態の数値(α)よりも相対的に低いために、PTCヒータ70と加温装置71とへの電気供給量の総和も相対的に小さくなる場合でも、加温装置71に対し優先的に電気を供給するので、車椅子に着座した者に対しては加温装置71により十分に温めることができ、身体的弱者である車椅子4に着座した者を積極的、優先的に遇することが可能となる。
【0086】
図8において、制御部59による昇降機構34のモータ36の制御動作例のプログラムがフローチャートとして示されており、以下において、このフローチャートに基づき昇降機構34のモータ36の制御動作例のプログラムを説明する。
【0087】
このプログラムも、図示しないメイン制御ルーチンからタイマの割り込み又はジャンプ命令によって定期的に実行されるもので、ステップ121から開始されるものである。
【0088】
ステップ122において、このプログラムに必要とされるデータの信号が入力される。このデータは、操作部40の乗車用スイッチ41のON/OFF及び降車用スイッチ42のON/OFF、加温装置71のハーネス75と操作部74、ハーネス78を介して電源69に繋がるハーネス76との接続状況である。
【0089】
ステップ123において、操作部40の降車用スイッチ42がONされたか否かが判定されて、操作部40の降車用スイッチ42がONされたと判定された場合には次のステップ124に進み、操作部40の降車用スイッチ42がONされていないと判定された場合には、ステップ126に進み、昇降機構34のモータ36のOFF状態を維持する処理がされて、ステップ127からメインルーチンに抜ける。
【0090】
ステップ124において、接続状況センサ82からの入力信号に基づき、加温装置71のハーネス75と操作部74、ハーネス78を介して電源69に繋がるハーネス76とがコネクタ77で接続中か否かが判定されて、加温装置71のハーネス75と電源69に繋がるハーネス76とが接続中にないとの判定がなされた場合には、ステップ125に進んで昇降機構34のモータ36をONにする処理をした後、ステップ127からメインルーチンに抜けるので、リール37の回転によりワイヤ38が引き出され、車椅子4を車両2から降ろす動作が行われる。これに対し、加温装置71のハーネス75と電源69に繋がるハーネス76とが接続中との判定がなされた場合には、ステップ126に進み、昇降機構34のモータ36のOFF状態を維持する処理がされて、ステップ127からメインルーチンに抜ける。
【0091】
これにより、加温装置71のハーネス75と操作部74、ハーネス78を介して電源69に繋がるハーネス76とが接続中であるにもかかわらず、誤って操作部40の降車用スイッチ42をONにした場合でも、昇降機構34のモータ36は駆動しないため、車椅子4の移動によりハーネス75、76や車椅子4が破損したり、車椅子4が転倒したりすることが回避され、空調装置1や車椅子4に着座した者に対する安全が確保される。
【0092】
最後に、空調設備3は図1及び図6において車両2の前方側に配置されるものとして図示してきたが必ずしもこれに限定されず、車両2の後方側に配置されたものとしても良い。また、空調設備3は、温暖地向けの通常仕様の他、冷却用熱交換器を有しない寒冷地仕様、加熱用熱交換器を有しない熱帯地仕様のものとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1は、この発明に係る車椅子搭載用車両の空調装置の実施例1における模式図である。
【図2】図2は、同上の車椅子搭載用車両の空調装置の実施例1で用いられる車椅子の概略断面図である。
【図3】図3は、同上の車椅子搭載用車両の空調装置の実施例1で用いられる車椅子を車両の後部空間から降ろしている状態について示す説明図である。
【図4】図4は、同上の車椅子搭載用車両の空調装置の実施例1における空気案内通路の開閉ドアの制御動のためのプログラムを示したフローチャートである。
【図5】図5は、同上の車椅子搭載用車両の空調装置の実施例1における昇降機構の制御のためのプログラムを示したフローチャートである。
【図6】図6は、同上の車椅子搭載用車両の空調装置の実施例2における模式図である。
【図7】図7は、同上の車椅子搭載用車両の空調装置の実施例2におけるPTCヒータへの電気供給の制御のためのプログラムを示したフローチャートである。
【図8】図8は、同上の車椅子搭載用車両の空調装置の実施例1における昇降機構の制御のためのプログラムを示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0094】
1 空調装置
2 車両
3 空調設備
4 車椅子
5 空調用通路部
6 車室内
6A 後部空間
7、8 内外気導入口
9 インテークドア
10 送風機
11 送風機のモータ
12 冷却用熱交換器
13 加熱用熱交換器
14 エアミックスドア
15 エアミックスチャンバ
16 デフ用通路
17 デフ開閉ドア
18 ベント用通路
19 ベント開閉ドア
20 フット用通路
21 フット開閉ドア
23 空気案内通路
27 本体部
34 昇降機構
35 固定機構
46 中継通路
47 開閉ドア
48 接続部
55 空気取込み口
56 吐出口
59 制御部
63 送風機の送風状態センサ
64 デフ開閉ドアの開度センサ
65 空気案内通路の接続部と空調用通路部との連結状況センサ
69 電源
70 PTCヒータ
71 加温装置
75 ハーネス
76 ハーネス
77 コネクタ
78 ハーネス
81 電源の電圧センサ
82 加温装置からのハーネスと電源に繋がるハーネスとの接続状況センサ




【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子を人員が着座したまま搭乗させることができる空間部と、この搭載された車椅子を前記車両に固定する固定機構とを少なくとも有する車両において、
前記車両の車内又は車外から空気を導入する空気導入手段、この導入された空気を空調する空調手段及び、この空調された空気を前記車両内に適宜供給する空気供給手段を備えた空調設備を前記車両に搭載し、
前記車椅子の本体部内に、外部から空気を取り込む空気取込み口を有すると共に前記車椅子に着座した者側に開口する吹出口を有する空調用通路部を設け、
前記空調設備の空気供給手段と前記空調用通路部の空気取込み口とを、空気案内手段を介して前記空気案内手段から前記空気取込み口に空気が案内されるように連結したことを特徴とする車椅子搭載用車両の空調装置。
【請求項2】
前記空調設備の各手段に対する稼働状態についての入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記空調設備の各手段の作動状況を判定すると共に、この判定結果に基づいて前記空気案内手段を開閉する開閉機構の駆動手段に対し前記空気案内手段を開閉するための信号を出力することができる制御部を有し、
この制御部は、前記空調設備の各手段の作動状態について所定の判定をしたことを条件に、前記開閉機構に対し前記空気案内手段を開放させることを特徴とする請求項1に記載の車椅子搭載用車両の空調装置。
【請求項3】
前記所定の判定の条件とは、前記制御部が前記送風手段を構成する送風機による送風の有無を検出する送風状態検出手段からの入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記送風機が送風状態にあるとの判定を行うとの条件であることを特徴とする請求項2に記載の車椅子搭載用車両の空調装置。
【請求項4】
前記空調設備の空気供給手段がデフ用吹出口及びこのデフ用吹出口を開閉するデフ開閉ドアを有する場合に、
前記制御部は、前記送風機が送風状態にあると判定をしても、デフ開閉ドアの開閉を検出する開度検出手段からの入力信号を受け、前記デフ開閉ドアが全開であると判定をした場合には、前記開閉機構に対し前記空気案内手段を閉じた状態を維持させることを特徴とする請求項3に記載の車椅子搭載用車両の空調装置。
【請求項5】
前記車両が前記空間部内に前記車椅子を昇降させるための昇降機構とこの昇降スイッチの昇降を操作するためのスイッチとを有する場合に、
前記制御部は、前記昇降機構のスイッチからの入力信号を受け、この信号に基づき降車用スイッチがONになったか否かを判定すると共に、前記空気供給手段と前記空気取込み口との連結状態を検出する連結状態検出手段からの入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記空気供給手段と前記空気取込み口との連結の有無を判定し、更に、前記昇降機構の駆動手段に対しこの昇降機構の駆動手段をON/OFFするための信号を出力するものとなっており、
前記昇降機構の降車用スイッチがONになったとの判定をしても前記空気供給手段と前記空気取込み口とが連結されているとの判定をした場合には、前記昇降機構の駆動手段に対しこの昇降機構の駆動手段をOFF状態に維持させることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の車椅子搭載用車両の空調装置。
【請求項6】
車椅子を人員が着座したまま搭乗させることができる空間部と、この搭載された車椅子を前記車両に固定する固定機構とを少なくとも有する車両において、 前記車両の車内又は車外から空気を導入する空気導入手段、この導入された空気を空調する空調手段及び、この空調された空気を前記車室内に適宜供給する空気供給手段を備えた空調設備を前記車両に搭載し、
前記車椅子の本体部内に、前記シートを温める加温装置を組み込み、
前記空調設備の各手段と前記車椅子の加温装置とは、前記車両内に搭載された共通の電源から電気が供給されると共に、
前記空調設備の各手段に対する電気の供給状態及び前記加温装置に対する電気の供給状態についての入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記電源に対し前記空調設備の各手段への電気の供給量を調整することができる制御部を有することを特徴とする車椅子搭載用車両の空調装置。
【請求項7】
前記空調設備の空調手段が電気ヒータを有する場合に、
前記制御部は、前記電源の電圧を検出する電圧検出手段からの入力信号を受けて、この入力信号に基づき電源の電圧の数値が所定値よりも高いか低いかを判定し、前記電源の電圧が所定値よりも低いとの判定をした場合には、前記電源に対し前記電気ヒータへの電気の供給量を相対的に小さくすることを特徴とする請求項6に記載の車椅子搭載用車両の空調装置。
【請求項8】
前記車両が前記空間部内に前記車椅子を昇降させるための昇降機構とこの昇降スイッチの昇降を操作するためのスイッチとを有する場合に、
前記制御部は、前記昇降機構のスイッチからの入力信号を受け、この信号に基づき降車用スイッチがONになったか否かを判定すると共に、前記車両の電源と前記加温装置との電気的接続状況を検出する接続状況検出手段からの入力信号を受け、この入力信号に基づいて前記車両の電源と前記加温装置との電気的接続の有無を判定し、更に、前記昇降機構の駆動手段に対しこの昇降機構の駆動手段をON/OFFするための信号を出力するものとなっており、
前記昇降機構の降車用スイッチがONになったとの判定をしても前記車両の電源と前記加温装置とが電気的に接続されているとの判定をした場合には、前記昇降機構の駆動手段に対しこの昇降機構の駆動手段をOFF状態に維持させることを特徴とする請求項6又は7に記載の車椅子搭載用車両の空調装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−196519(P2009−196519A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41068(P2008−41068)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(500309126)株式会社ヴァレオサーマルシステムズ (282)
【Fターム(参考)】