説明

車椅子用頭部支持装置

【課題】頸部に障害がある使用者であっても頭部を安定に保持することができ、また洗髪・整容にも好適な車椅子用頭部支持装置を提供する。
【解決手段】車椅子用頭部支持装置は、車椅子の背もたれの上部に、頭部支持部10と頸部支持部20とを上下2段に形成したものである。頭部支持部は外側端を左右の支柱1に支持され、かつ相互間に面ファスナーを備えた一対の頭部支持ベルト11からなり、頸部支持部は外側端を左右の支柱に支持された左右一対の屈曲バー21からなる。使用者の頭部と頸部とを個別に支持することができる。また洗髪・整容の場合には頸部を支持したままで頭部支持部のみを開放することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子使用者の頭部を支持する車椅子用頭部支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車椅子用頭部支持装置としては、座席の背もたれの上部にヘッドサポートを一体に、あるいは着脱可能に設けたものが従来から知られている。しかしヘッドサポートは使用者の後頭部のみを支持するものであるから頭部が左右に振れ易く、頸部に障害がある使用者にとっては頭部の安定性に欠けるという問題があった。
【0003】
また特許文献1には、折畳み式車椅子の手押しハンドルに装着して使用する折畳み可能な頭部支持装置が記載されている。しかしこの頭部支持装置も単一のヘッドサポートにより使用者の後頭部のみを支持するものであるから、上記と同様の問題があった。
【0004】
また使用者を車椅子に乗せたままで後方にリクライニングさせて洗髪・整容を行いたい場合には、ヘッドサポートが邪魔になる。そこでヘッドサポートを取り外すと頸部の支えがないために頸部が後に折れ曲がってしまい、使用者に苦痛を感じさせるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−293036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、頸部に障害がある使用者であっても頭部を安定に保持することができ、また洗髪・整容にも好適な車椅子用頭部支持装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の車椅子用頭部支持装置は、車椅子の背もたれの上部に装着される頭部支持装置であって、頭部支持部と頸部支持部とを上下2段に形成したことを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2のように、頭部支持部と頸部支持部とが、車椅子の背もたれの上部に装着される左右の支柱間に、上下方向の位置調節可能に取り付けられたものであることが好ましい。また請求項3のように、頭部支持部が外側端を左右の支柱に支持され、かつ相互間に面ファスナーを備えた一対の頭部支持ベルトからなることが好ましい。さらに請求項4のように、頸部支持部が外側端を左右の支柱に支持された左右一対の屈曲バーからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車椅子用頭部支持装置は、車椅子の背もたれの上部に、頭部支持部と頸部支持部とを上下2段に形成したものであるから、使用者の頭部と頸部とを個別に支持することができる。また頭部支持部と頸部支持部とを個別に調整することができるので、使用者の身体特性に合わせた最適ポジションに設定することができる。このため頸部に障害がある使用者であっても頭部を安定に保持することができる。さらに洗髪・整容の場合には頸部を支持したままで頭部支持部のみを開放することができるので、使用者に苦痛を感じさせることがない。
【0010】
請求項2の発明によれば、頭部支持部と頸部支持部とが、車椅子の背もたれの上部に装着される左右の支柱間に、上下方向の位置調節可能に取り付けられているため、使用者の身体特性に合わせた最適ポジションに設定することが容易である。
【0011】
請求項3の発明によれば、頭部支持部が外側端を左右の支柱に支持され、かつ相互間に面ファスナーを備えた一対の頭部支持ベルトからなるため、頭部のサイズや体格により頭部支持部を調節し易いうえ、面ファスナーによる接合を解除して一対の頭部支持ベルトを後方に回せば、洗髪・整容も容易に行うことができる。
【0012】
さらに請求項4の発明によれば、頸部支持部が外側端を左右の支柱に支持された左右一対の屈曲バーからなるため、頸部を安定に保持することができ、また前後方向に回転させることによって、使用者の身体特性に合わせた最適ポジションに設定することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
【図2】使用状態の説明図である。
【図3】本発明の車椅子用頭部支持装置を装着した車椅子の全体斜視図である。
【図4】本発明の車椅子用頭部支持装置を装着した車椅子の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
図1において、1は車椅子の背もたれの上部に装着される左右の支柱である。この実施形態では支柱1は下端部を小径の差込み部2とした金属パイプからなり、車椅子の背もたれの上端に差し込んで使用し、また不要な場合には抜き取ることができるようになっている。しかし背もたれの上部に溶接等によって一体化しておくことも可能である。左右の支柱1の上端部及び下部には、U字状に後方に屈曲させた連結部3をそれぞれ溶接して連結し、全体を一体化してある。
【0015】
これらの左右の支柱1、1間には、頭部支持部10と頸部支持部20とが上下2段に設けられている。この実施形態では、上方の頭部支持部10は、相互間に面ファスナーを備えた一対の頭部支持ベルト11からなる。各頭部支持ベルト11の外側端12は円筒状に丸められている。また左右の支柱1、1には固定具13によって支柱1と垂直方向に延びる短いアーム14が取り付けられており、各アーム14の先端には支柱1と平行方向に延びる縦棒15が溶接されている。各頭部支持ベルト11は円筒状に丸められた外側端12をこの縦棒15に通し、アーム14を介して左右の支柱1、1に支持されている。
【0016】
固定具13のねじを緩めることによって、アーム14及び縦棒15は高さ調整が可能であり、また回すことによって前後方向の位置調整も可能である。従って頭部支持部10の全体の高さ及び前後方向の支持位置を変えることができる。
【0017】
各頭部支持ベルト11は幅が10〜15cm程度の広幅の合成樹脂頭部支持ベルトである。左右の頭部支持ベルト11、11相互間は面ファスナーにより連結されているので、連結距離を変えることによって直線状に連結することも、あるいは大きく後方に湾曲させた上体で連結することもできる。さらに相互間の連結を解除することも可能である。
【0018】
この実施形態では、頸部支持部20は図示のような左右一対の屈曲バー21からなる。各屈曲バー21は金属パイプを平面方向(支柱1に対して垂直方向)にくの字状に成形したもので、各外側端はハンドル付固定具22に固定されている。これらのハンドル付固定具22は自転車の車軸を固定するために用いられているクイックリリースレバーと同様のもので、ハンドル23を引いたうえでねじ24を回転させ、再びハンドル23を押し込むとクランプできる構造のものである。これらのハンドル付固定具22によって各屈曲バー21は左右の支柱1、1に上下方向及び前後方向に位置調節できるように取り付けられている。なおハンドル付固定具22のエッジ部は丸く面取り加工を施すかゴムらでカバーすることにより、安全性を高めておくことが好ましい。
【0019】
この頸部支持部20は後方に屈曲させた部分で使用者の頸部を左右両側から支持するものであるが、長時間にわたり使用すると接触部に痛みを感ずるおそれがある。そこで図示のように全体をスポンジ状の弾性チューブ25によって覆い、痛みをなくすることが好ましい。またこの弾性チューブ25によって左右が連結されるため、使用者の不安解消にも効果的である。スポンジ状の弾性チューブ25としては、例えば発泡ネオプレンゴムを使用することができる。
【0020】
なお、図1に示される30は必要に応じて左右の支柱1、1間に装着されるカバーシートである。このカバーシート30は上部の両端部を左右の支柱1、1に嵌め、下方のエプロン状の垂下部を背もたれの後方にたらして使用される。これは背もたれと頸部支持部20との間の空間が使用者に不安を与えることを防止するための部品であり、機械的な機能上は省略することも可能である。
【0021】
このように構成された本発明の車椅子用頭部支持装置は、図3に示すように車椅子本体4の背もたれ5の上部に装着して用いられるものである。なお図示の車椅子は座面6を水平に保ったままで、手押しハンドル7とともに背もたれ5を後方にリクライニングすることができる構造である。背もたれ5を立てた状態においては、図2に示すように頭部支持部10と頸部支持部20とが個別に使用者の頭部と頸部とを支持することができ、頸部に障害がある使用者であっても頭部を安定させることができ、快適である。
【0022】
また、図4に示すように頭部支持部10の頭部支持ベルト11、11間の面ファスナーをはがして左右の連結を解き、頭部支持ベルト11、11を下方に垂らせば使用者の頭部後方が開放されるため、リクライニングさせた姿勢で洗髪・整容することができる。なお使用者の頸部は頸部支持部20が支持したままであるから、頭部全体が後方に屈曲して苦痛を与えることもない。もちろん、頸部に障害のない使用者である場合には、洗髪・整容時には頸部支持部20を取り外すことも可能である。なお本発明の車椅子用頭部支持装置は、リクライニング機能のない通常の車椅子にも用いることができることはいうまでもない。
【0023】
以上に説明したように、本発明の車椅子用頭部支持装置は、頸部に障害がある使用者であっても頭部を安定に保持することができ、またリクライニング機能を備えた車椅子と組み合わせて用いれば、洗髪・整容にも好適な利点がある。
【符号の説明】
【0024】
1 支柱
2 差込み部
3 連結部
4 車椅子本体
5 背もたれ
6 座面
7 手押しハンドル
10 頭部支持部
11 頭部支持ベルト
12 外側端
13 固定具
14 アーム
15 縦棒
20 頸部支持部
21 屈曲バー
22 ハンドル付固定具
23 ハンドル
24 ねじ
25 弾性チューブ
30 カバーシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子の背もたれの上部に装着される頭部支持装置であって、頭部支持部と頸部支持部とを上下2段に形成したことを特徴とする車椅子用頭部支持装置。
【請求項2】
頭部支持部と頸部支持部とが、車椅子の背もたれの上部に装着される左右の支柱間に、上下方向の位置調節可能に取り付けられたものであることを特徴とする請求項1記載の車椅子用頭部支持装置。
【請求項3】
頭部支持部が、外側端を左右の支柱に支持され、かつ相互間に面ファスナーを備えた一対の頭部支持ベルトからなることを特徴とする請求項2記載の車椅子用頭部支持装置。
【請求項4】
頸部支持部が、外側端を左右の支柱に支持された左右一対の屈曲バーからなることを特徴とする請求項2記載の車椅子用頭部支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−268868(P2010−268868A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121510(P2009−121510)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(000226839)日進医療器株式会社 (11)
【Fターム(参考)】