説明

車軸6分力測定システム

【課題】測定対象の軸に対する6分力荷重計の傾き角度の検出精度を高めることができる車軸6分力測定システムを提供する。
【解決手段】エンコーダのパルス信号φAの前々回の周期Tn-1における平均角速度Vn-2と、前回の周期Tn-1における平均角速度Vn-1における平均角速度Vn-1との差から、今回の周期Tnにおける角加速度αnを推定し、該Vn-1と角加速度αnと周期Tnにおける測定トリガ信号の入力時tsまでの補間パルスCpのカウント値Nxとを用いて算出した、周期Tnにおける測定トリガ信号の入力時tsまでの角度変化量dθを、パルス信号φAのカウント値に応じた検出角度θnに加算して、tsにおける傾き角度θを算出する角度検出手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6分力荷重計をタイヤのホイールに取り付けて、車両の走行時にホイールに作用する外力を測定するシステムに関し、特に鉛直方向に対する6分力荷重計の傾き角度を検出する構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤのホイールに6分力荷重計を取り付けて車両を走行させ、走行中の6分力荷重計の検出値により、ホイールが路面から受ける外力を直交する3軸(x:車両走行方向、y:車軸方向、z:鉛直方向)方向の分力、及びその回りの3モーメント(Mx,My,Mz)を測定する車軸6分力測定システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、6分力荷重計は、直交する3軸(u,v,w)のうちの1軸(例えばv軸)を車軸方向(y軸方向)に合わせて取り付けられ、該3軸(u,v,w)方向の分力(Fu,Fv,Fw)及びその回りの3モーメント(Mu,Mv,Mw)を検出する。そして、6分力荷重計の検出結果を回転座標変換して、測定対象である上記3軸(x,y,z)方向の分力と、その周りの3モーメント(Mx,My,Mz)を得るために、z軸に対するw軸の傾き角度θを検出する必要がある。
【0004】
そこで、該傾き角度θを検出するため、車軸6分力測定システムにはエンコーダ等の角度センサが備えられている。そして、傾き角度θの検出誤差が大きいと、傾き角度θに基づく回転角度変換に算出される角度3軸(x、y、z)方向の分力及びその回りの3モーメント(Mx,My,Mz)の測定誤差が大きくなるため、傾き角度θの検出精度は極力高いことが望ましい。
【0005】
しかし、角度センサは分解能が高くなるに従ってコストが高くなり、また、物理的な制約や堅牢性の確保のため、角度センサの分解能には限界があるという不都合がある。
【特許文献1】特開昭62−87823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記不都合を解消し、測定対象の軸に対する6分力荷重計の傾き角度の検出精度を高めることができる車軸6分力測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するためになされたものであり、第1の軸(v)を車軸方向としてホイールに装着されて、直交3軸(u,v,w)方向の分力(Fu,Fv,Fw)及びその回りのモーメント(Mu,Mv,Mw)を検出する6分力荷重計と、鉛直方向に対する第2の軸(u)の傾き角度(θ)を検出する角度検出手段とを備え、前記6分力荷重計の検出値に対して該傾き角度(θ)に基づく回転座標変換を行って、直交3軸(x:車両走行方向、y:車軸方向、z:鉛直方向)方向の分力、及びその回りの3モーメント(Mx,My,Mz)を、車両走行時にホイールが受ける外力として測定する車軸6分力測定システムの改良に関する。
【0008】
そして、前記ホイールが所定回転位置となったときに原点パルスを出力すると共に、前記ホイールが所定角度回転する毎に角度パルスを出力する角度センサと、前記原点パルスが出力された時から次に前記原点パルスが出力されるまでの間、前記角度センサから出力される前記角度パルスをカウントする角度パルスカウンタと、前記ホイールが受ける外力の測定時に前記角度センサから出力される前記角度パルスの周波数よりも、周波数が高い補間パルスを出力する補間パルス出力手段と、前記角度パルスの各周期において、前記補間パルス出力手段から出力される前記補間パルスをカウントする補間パルスカウンタと、前記ホイールが受ける外力の測定を指示する測定指示手段とを備え、前記角度検出手段は、前記測定指示手段により前記ホイールが受ける外力の測定が指示された時に、前回の前記角度パルスの周期(Tn-1)における前記補間パルスカウンタのカウント値(Nn-1)に基づいて算出した平均角速度(Vn-1)と、前々回の前記角度パルスの周期(Tn-2)における前記補間パルスカウンタのカウント値(Nn-2)に基づいて算出した平均角速度(Vn-2)との差から、前記ホイールが受ける外力の測定が指示された時点(ts)の前記角度パルスの周期(Tn)における角加速度(αn)を推定し、該周期(Tn)における該時点(ts)までの前記補間パルスカウンタのカウント値(Nx)と該角加速度(αn)と前記平均角速度(Vn-1)とに基づいて算出した、該周期(Tn)における該時点(ts)までの前記ホイールの回転角度(dθ)を用いて、該時点(ts)における鉛直方向に対する前記6分力荷重計の第2の軸(u)の傾き角度(θ)を検出することを特徴とする。
【0009】
かかる本発明によれば、前記角度検出手段は、前記ホイールが受ける外力の測定が指示された時点(ts)の前記角度パルスの周期(Tn)における角加速度(αn)を、前回の前記角度パルスの周期(Tn-1)における平均角速度(Vn-1)と前々回の前記角度パルスの周期(Tn-2)における平均角速度(Vn-2)との差から推定し、該周期(Tn)における該時点(ts)までの前記補間パルスカウンタのカウント値(Nx)と該角加速度(αn)と前記平均角速度(Vn-1)とに基づいて、該周期(Tn)における該時点(ts)までの前記ホイールの回転角度(dθ)を算出する。これにより、ホイールの角加速度を考慮した上で、該周期(Tn)における該時点(ts)までの前記ホイールの回転角度(dθ)を、前記角度パルスよりも周波数が高い前記補間パルスにより該周期(Tn)を細分化して検出することができる。
【0010】
そして、このようにして算出した周期(Tn)における該時点(ts)までの前記ホイールの回転角度(dθ)を用いることで、該周期(Tn)内における傾き角度(θ)の変化を検出することができ、これにより、前記角度パルスのカウント値から直接傾き角度(θ)を検出する場合よりも、傾き角度(θ)の検出精度を高めることができる。
【0011】
また、前記角度検出手段は、前記ホイールが受ける外力の測定が指示された時点(ts)における前記角度パルスカウンタのカウント値(CT1)に前記所定角度を乗じたセンサ検出角度(θn)に、該時点(ts)の前記角度パルスの周期(Tn)における該時点(ts)までの前記ホイールの回転角度(dθ)を加算して、該時点(ts)における鉛直方向に対する前記6分力荷重計の第2の軸(u)の傾き角度(θ)を検出することを特徴とする。
【0012】
かかる本発明によれば、前記ホイールが受ける外力の測定が指示された時点(ts)における前記角度パルスカウンタのカウント値(CT1)に前記所定角度を乗じることで、前回の制御サイクル(Tn-1)の終了時における傾き角度(θn)を算出することができる。そのため、このようにして算出した該傾き角度(θn)に、前記時点(ts)の前記角度パルスの周期(Tn)における該時点(ts)までの前記ホイールの回転角度(dθ)を加算することで、該時点(ts)における前記傾き角度(θ)を容易に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施の形態の一例について、図1〜図8を参照して説明する。図1は車軸6分力測定システム及び6分力荷重計の装着態様の説明図、図2は6分力荷重計の検出データの回転座標変換の説明図、図3は車軸6分力測定システムの構成図、図4〜図6は6分力荷重計の傾き角度の算出手順を示したフローチャート、図7は加速状態における6分力荷重計の傾き角度の算出態様の説明図、図8は減速状態における6分力荷重計の傾き角度の算出態様の説明図である。
【0014】
図1を参照して、本発明の車軸6分力測定システムは、車両1の走行時にタイヤ2を介してホイール3が路面から受ける外力を、車両進行方向のx軸と車軸方向のy軸と鉛直方向のz軸という直交3軸方向の3分力(Fx,Fy,Fz)と、これらの軸回りの3モーメント成分(Mx,My,Mz)により測定するものである。
【0015】
そして、直交3分力(Fx,Fy,Fz)と3モーメント成分(Mx,My,Mz)を測定するため、タイヤ2のホイール3には、直交3分力(Fu,Fv,Fw)とその回りの3モーメント成分(Mu,Mv,Mw)を検出する6分力荷重計4が、v軸(本発明の第1の軸に相当する)の方向を車軸方向(y軸方向)に合わせて装着されている。
【0016】
6分力荷重計4には、測定対象の直交3軸(x,y,z)に対する6分力荷重計4の直交3軸(u,v,w)の傾きを検出するために、エンコーダ5(本発明の角度検出手段に相当する)が内蔵されている。エンコーダ5は、1回転するごとにZ相のパルス信号φZ(本発明の原点パルスに相当し、φZが出力されるホイール3の回転位置が本発明の所定回転位置に相当する)を1パルス出力すると共に、1回転あたり360パルスの分解能で、1度(本発明の所定角度に相当する)回転するごとにA相のパルス信号φA(本発明の角度パルスに相当する)を1パルス出力するものである。
【0017】
6分力荷重計4による6分力検出データ(Fu,Fv,Fw,Mu,Mv,Mw)と、エンコーダ5のパルス信号φZ,φAは、スリップリング25(図1(b)参照)を介して接続された6分力測定器10に入力される。なお、エンコーダ5は、パルス信号φZが出力される位置を、6分力荷重計4のu軸(本発明の第2の軸に相当する)がz軸(鉛直方向)に一致する位置に合わせて装着されている。
【0018】
図1(b)に示したように、6分力荷重計4は、ホイール3のネジ穴20に6分力荷重計4の貫通穴21を介してボルト22を螺着することにより、ホイール3に締結される。車両1の車軸(図示しない)に連結されたハブ30にはボルト31が立設されており、ボルト31をハブアダプタ40の貫通穴41に貫通させてナット42を螺着させることにより、ハブアダプタ40がハブ30に締結される。そして、ハブアダプタ40に立設されたボルト43を、6分力荷重計4の貫通穴50に貫通させ、ワッシャ51を嵌めてナット52を螺着することにより、6分力荷重計4がハブアダプタ40に締結される。
【0019】
なお、図1(a)では車両1の左前輪のホイール3に6分力荷重計4を装着した状態を示しているが、車両1の他のホイール(右前輪、右後輪、左後輪)についても、同様にして6分力荷重計4が装着され、各ホイールがタイヤを介して路面から受ける外力(Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mz)が測定される。
【0020】
次に、図2に示したように、6分力測定器10は、6分力荷重計4の鉛直方向(z軸方向)に対する傾き角度(θ)により、6分力荷重計4の6分力検出データ(Fu,Fv,Fw,Mu,Mv,Mw)の回転座標変換を行って、静止座標の測定値(Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mz)を算出する。
【0021】
図3に示したように、6分力測定器10には、6分力荷重計4から6分力検出データ(Fu,Fv,Fw,Mu,Mv,Mw)が入力され、エンコーダ5からパルス信号φZ,φAが入力される。また、6分力測定器10は外部機器8(記録器、パソコン等)と通信可能に接続されている。
【0022】
そして、6分力測定器10は、6分力検出手段12と角度検出手段13とを備えたCPU11、パルス信号φAをカウントする角度パルスカウンタ14、補間パルスCpを生成する補間パルス発振器16、補間パルスCpをカウントする補間パルスカウンタ15、ROM17、及びRAM18を備えている。
【0023】
6分力測定器10は、外部機器8から送信される測定トリガ信号(MST)を受信したときに、角度検出手段13により6分力荷重計4の傾き角度(θ)を検出する。そして、6分力検出手段12は、該傾き角度(θ)により、6分力荷重計4による6分力検出データ(Fu,Fv,Fw,Mu,Mv,Mw)を回転座標変換して、静止座標の測定値(Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mz)を算出する。そして、6分力測定器10は、該静止座標の測定値のデータ(MDAT)を外部機器8に送信する。
【0024】
補間パルス発振器16と補間パルスカウンタ15は、エンコーダ5により傾き角度(θ)を検出する際の分解能を高めて、傾き角度(θ)の検出精度を高めるためのものであり、角度検出手段13は、角度パルスカウンタ14のカウント値CT1と補間パルスカウンタ15のカウント値CT2とを用いて、傾き角度(θ)を算出する。以下、図4〜図6に示したフローチャートに従って、角度検出手段13による傾き角度(θ)の算出手順について説明する。
【0025】
角度検出手段13は、エンコーダ5からパルス信号φZを入力したときに、図3のSTEP1で、角度パルスカウンタ14と補間パルスカウンタ15のカウント値をリセットし、STEP2で角度パルスカウンタ14によるパルス信号φAのカウントを開始する。そして、続くSTEP3でパルス信号φAの立上がりを検出したときにSTEP4に進み、その時点の角度パルスカウンタ14のカウント値CT1をθn-2としてRAM18に保持する。
【0026】
続くSTEP5で、角度検出手段13は、補間パルスカウンタ15による補間パルスCpのカウントを開始する。そして、次のSTEP6でパルス信号φAの立上がりを検出したときにSTEP7に進み、角度検出手段13は、その時点の角度パルスカウンタ14のカウント値CT1をθn-1としてRAM18に保持する。また、STEP8で、角度検出手段13は、補間パルスカウンタ15のカウントを終了して、その時点の補間パルスカウンタ15のカウント値CT2を、周期Tn-2における補間パルスCpのカウント値Nn-2としてRAM18に保持する。
【0027】
そして、角度検出手段13は、以下の式(1)により、周期Tn-2における平均角速度Vn-2を算出する。Vn-2は、周期Tn-2における補間パルスCpの1パルスあたりの角度変化量の平均値となる。
【0028】
n-2 = (θn-1−θn-2)/Nn-2 ・・・・・(1)
但し、上記式(1)におけるNn-2は補間パルスCpのカウント数であるが、1パルス当たりの時間が決められているため、時間のディメンジョンとすることができる。後述する式(2)、式(3)、式(4)、式(6)、式(7)におけるNn-1、Nn-2、Nxについても同様である。
【0029】
続くSTEP10で、角度検出手段13は、補間パルスカウンタ15をリセットして、補間パルスカウンタ15による補間パルスCpのカウントを開始する。そして、図5のSTEP11で、パルス信号φAの立上がりを検出したときにSTEP12に進んで、その時点の角度パルスカウンタ14のカウント値CT1を、周期Tnの検出角度θnとしてRAM18に保持する。また、STEP13で、角度検出手段13は、補間パルスカウンタ15のカウントを終了し、その時点の補間パルスカウンタ15のカウント値CT2を、周期Tn-1における補間パルスCpのカウント値Nn-1として、RAM18に保持する。
【0030】
そして、角度検出手段13は、以下の式(2)により、周期Tn-1における平均角速度Vn-1を算出する。Vn-1は、周期Tn-1における補間パルスCpの1パルスあたりの角度変化量の平均値となる。
【0031】
n-1 = (θn−θn-1)/Nn-1 ・・・・・(2)
続くSTEP15で、角度検出手段13は、補間パルスカウンタ15をリセットして、補間パルスカウンタ15による補間パルスCpのカウントを開始する。また、STEP16で、角度検出手段13は、周期Tnにおける角加速度αnの推定値を、以下の式(3)により算出する。
【0032】
αn = (Vn-1−Vn-2)/{(Nn-1+Nn-2)/2} ・・・・・(3)
そして、角度検出手段13は、次のSTEP17とSTEP30とからなるループを実行し、STEP17でパルス信号φAの立上がりが検出されたときは、STEP18に進んで周期Tn+1以降の処理を実行する。周期Tn+1以降の各周期においては、STEP12からSTEP17及びSTEP30と同様の処理が実行される。
【0033】
一方、STEP17でパルス信号φAの立上がりが検出されないときには、STEP30に分岐する。そして、STEP30で外部機器8からの測定トリガ信号(MST)を入力したときは図6のSTEP31に進み、STEP30で外部機器8からの測定トリガ信号(MST)を入力しなかったときにはSTEP17に戻る。
【0034】
図6のSTEP31で、角度検出手段13は、その時点における補間パルスカウンタ15のカウント値CT2を、周期Tnにおける測定トリガ信号(MST)入力時までのカウント値Nxとして、RAM18に保持する。そして、角度検出手段13は、以下の式(4)により、周期Tnにおける測定トリガ信号(MST)入力時までの角度変化量dθを算出し、以下の式(5)により、測定トリガ信号(MST)入力時の傾き角度(θ)を算出する。
【0035】
dθ = {Vn-1+αn(Nn-1/2+Nx)}×Nx ・・・・・(4)
θ = θn+dθ ・・・・・(5)
そして、6分力検出手段12は、このようにして角度検出手段13により算出された傾き角度(θ)を用いて、測定トリガ信号(MST)入力時に6分力荷重計4から取り込んだ6分力検出データ(Fu,Fv,Fw,Mu,Mv,Mw)の回転座標変換を行って、静止座標の測定値(Fx,Fy,Fz,Mx,My,Mz)を算出する。
【0036】
図7は、以上説明した傾き角度θの検出処理を、車両が加速している状態で行った場合の態様を説明した図であり、横軸が時間(t)に設定されている。また、縦軸は、上から、パルス信号φA、パルス信号φAの周期T、補間パルスCp、角速度Vに設定されている。車両が加速している状態では、パルス信号φAの周期Tが次第に短くなり、それに応じて1周期Tに含まれる補間パルスCpのパルス数が減少する。
【0037】
図中、tn-2,tn-1,tn,…は、パルス信号φAの周期Tn-2,Tn-1,Tnの開始時点を示し、tsは測定トリガ(MST)の入力時点を示している。なお、図中のSTEP3,STEP6,STEP11,STEP18,及びSTEP33は、図4〜図6のフローチャートにおける該当STEPの実行タイミングを示している。
【0038】
この場合、角度検出手段13は、周期Tnの開始時点tnにおける角速度を、周期Tn-1の中間点における角速度が平均角速度Vn-1であるとして、以下の式(6)により算出する。また、角度検出手段13は、tsにおける角速度を以下の式(7)により算出して、上記式(4)により周期Tnにおけるtsまでの角度の変化量dθを算出する。
【0039】
V(tn) = Vn-1+αn×Nn-1/2 ・・・・・(6)
V(ts) = Vn-1+αn×(Nn-1/2+Nx) ・・・・・(7)
次に、図8は、上述した傾き角度θの検出処理を、車両が減速している状態で行った場合の態様を示した図であり、図7と同様に、横軸が時間(t)に設定され、縦軸が上から、パルス信号φA,パルス信号φAの周期T、補間パルスCp、角速度Vに設定されている。車両が減速している状態では、パルス信号φAの周期Tが次第に長くなり、それに応じて1周期に含まれる補間パルスCpのパルス数が増加する。
【0040】
図中、tn-2,tn-1,tn,…は、パルス信号φAの周期Tn-2,Tn-1,Tnの開始時点を示し、tsは測定トリガ(MST)の入力時点を示している。なお、図中のSTEP3,STEP6,STEP11,STEP18,及びSTEP33は、図4〜図6のフローチャートにおける該当STEPの実行タイミングを示している。
【0041】
この場合、角度検出手段13は、周期Tn-1の中間点の角速度が平均角速度Vn-1であると想定して、周期Tnの開始時点tnにおける角速度を上記式(6)により算出する。また、角度検出手段13は、tsにおける角速度を上記式(7)により算出して、上記式(5)により周期Tnにおけるtsまでの角度の変化量dθを算出する。
【0042】
本発明の6分力測定システムによれば、図7,図8に示したように、パルス信号φAの各周期Tを補間パルスCpで細分化することで傾き角度(θ)の検出分解能を高めることができる。そして、上記式(1)〜式(5)により、角加速度αnによる速度の変化を考慮して周期Tnにおける測定トリガ(MST)の入力時点tsまでの角度の変化量dθを算出して、傾き角度(θ)を算出することで、角速度の変化による傾き角度(θ)の検出誤差を減少させて、精度良く傾き角度(θ)を検出することができる。
【0043】
なお、本実施の形態では、本発明の角度検出手段としてエンコーダ5を用いたが、レゾルバ等、他の種類の角度検出手段を用いてもよい。
【0044】
また、本実施の形態では、上記式(1)〜式(3)により、周期Tnにおける角加速度αnを、前回の周期Tn-1の平均角速度Vn-1及び前々回の周期Tn-2の平均角速度Vn-2を用いて算出したが、さらに以前の周期(周期Tn-3,Tn-4,…)における平均角速度を併用して角加速度αnを算出するようにしてもよい。
【0045】
また、上記式(1)〜式(4)は周期Tnにおける角加速度αn及び測定トリガ信号(MST)入力時までの角度変化量の算出式の一例に過ぎず、他の算出式により角加速度αn及び測定トリガ信号(MST)入力時までの角度変化量を算出するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】車軸6分力測定システム及び6分力荷重計の装着状態の説明図。
【図2】6分力荷重計の検出データの回転座標変換の説明図。
【図3】車軸6分力測定システムの構成図。
【図4】6分力荷重計の傾き角度の算出手順を示したフローチャート。
【図5】6分力荷重計の傾き角度の算出手順を示したフローチャート。
【図6】6分力荷重計の傾き角度の算出手順を示したフローチャート。
【図7】加速状態における6分力荷重計の傾き角度の算出態様の説明図。
【図8】減速状態における6分力荷重計の傾き角度の算出態様の説明図。
【符号の説明】
【0047】
1…車両、2…タイヤ、3…ホイール、4…6分力荷重計、5…エンコーダ、10…6分力測定器、11…CPU、12…6分力検出手段、13…角度検出手段、14…角度パルスカウンタ、15…補間パルスカウンタ、16…補間パルス発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の軸(v)を車軸方向としてホイールに装着されて、直交3軸(u,v,w)方向の分力(Fu,Fv,Fw)及びその回りのモーメント(Mu,Mv,Mw)を検出する6分力荷重計と、鉛直方向に対する第2の軸(u)の傾き角度(θ)を検出する角度検出手段とを備え、前記6分力荷重計の検出値に対して該傾き角度(θ)に基づく回転座標変換を行って、直交3軸(x:車両走行方向、y:車軸方向、z:鉛直方向)方向の分力、及びその回りの3モーメント(Mx,My,Mz)を、車両走行時にホイールが受ける外力として測定する車軸6分力計測システムにおいて、
前記ホイールが所定回転位置となったときに原点パルスを出力すると共に、前記ホイールが所定角度回転する毎に角度パルスを出力する角度センサと、
前記原点パルスが出力された時から次に前記原点パルスが出力されるまでの間、前記角度センサから出力される前記角度パルスをカウントする角度パルスカウンタと、
前記ホイールが受ける外力の測定時に前記角度センサから出力される前記角度パルスの周波数よりも、周波数が高い補間パルスを出力する補間パルス出力手段と、
前記角度パルスの各周期において、前記補間パルス出力手段から出力される前記補間パルスをカウントする補間パルスカウンタと、
前記ホイールが受ける外力の測定を指示する測定指示手段とを備え、
前記角度検出手段は、前記測定指示手段により前記ホイールが受ける外力の測定が指示された時に、前回の前記角度パルスの周期(Tn-1)における前記補間パルスカウンタのカウント値(Nn-1)に基づいて算出した平均角速度(Vn-1)と、前々回の前記角度パルスの周期(Tn-2)における前記補間パルスカウンタのカウント値(Nn-2)に基づいて算出した平均角速度(Vn-2)との差から、前記ホイールが受ける外力の測定が指示された時点(ts)の前記角度パルスの周期(Tn)における角加速度(αn)を推定し、該周期(Tn)における該時点(ts)までの前記補間パルスカウンタのカウント値(Nx)と該角加速度(αn)と前記平均角速度(Vn-1)とに基づいて算出した、該周期(Tn)における該時点(ts)までの前記ホイールの回転角度(dθ)を用いて、該時点(ts)における鉛直方向に対する前記6分力荷重計の第2の軸(u)の傾き角度(θ)を検出することを特徴とする車軸6分力測定システム。
【請求項2】
前記角度検出手段は、前記ホイールが受ける外力の測定が指示された時点(ts)における前記角度パルスカウンタのカウント値CT1に前記所定角度を乗じたセンサ検出角度(θn)に、該時点(ts)の前記角度パルスの周期(Tn)における該時点(ts)までの前記ホイールの回転角度(dθ)を加算して、該時点(ts)における鉛直方向に対する前記6分力荷重計の第2の軸(u)の傾き角度(θ)を検出することを特徴とする請求項1記載の車軸6分力測定システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−132825(P2007−132825A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326878(P2005−326878)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000151520)株式会社東京測器研究所 (29)
【Fターム(参考)】