車載照明装置
【課題】光の広がりのない導光を実現できる導光部材を提供すること。
【解決手段】入光部と、該入光部から入射した光を導光する導光面と、該導光面により導光された光を外部に出光する出光部とを有する導光部材であって、前記出光部及び導光面の少なくとも一方が、互いに略平行な複数本の溝を有する、導光部材。
【解決手段】入光部と、該入光部から入射した光を導光する導光面と、該導光面により導光された光を外部に出光する出光部とを有する導光部材であって、前記出光部及び導光面の少なくとも一方が、互いに略平行な複数本の溝を有する、導光部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光部材に関し、特に、車載照明装置、例えば、ヘッドライトやテールランプ等の車両用信号灯具、に適した導光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、点光源(発光ダイオード(LED)、半導体レーザーダイオード(LD)、電界発光素子(EL)等の固体発光素子)は、低電力で高輝度の光が得られることから、各種照明の光源としても使用されている。これらの点光源は発光面積が小さいため、通常、導光部材と組み合せて使用される。例えば、特許文献1にはLEDと導光部材を用いたサイドターンシグナルランプが開示されている。
導光部材は、光源から入射する光をその内部で繰り返し反射させて部材中の所望するエリアまで導光し、そこから出光機構によって外部へ出光させるという役割を果たす。このような導光部材においては、導光する際に、光が所望する出光エリアの外にまで広がり、意図した発光が得られない、光の利用効率が下がるという問題がある。
【0003】
導光部材における光の広がりを抑えるための技術として、特許文献2には、導光部材を短冊状に分割することが開示されている。また、特許文献3には、導光部材の底面に導光部材の厚さの半分以上の切り込みを設けることが開示されている。さらに、特許文献4には、導光部材の入光部に凸部を設けると共にその頂部に光源を配置すること、及び、導光部材の入光部にレンチキュラーレンズを配置すると共にその焦点位置に光源を配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−260545号公報
【特許文献2】特開2001−210122号公報
【特許文献3】特開2009−199926号公報
【特許文献4】特開2009−199927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示された技術においては、導光部材と導光部材の間に輝線又は暗線が発生するという問題がある。また、導光部材が複数あるため、各導光部材の固定や寸法管理が煩雑で、これを用いて照明装置を製造するのは実際には困難である。
【0006】
特許文献3に開示された技術においても、導光部材に深い切り込みを形成するため、輝線又は暗線の発生という問題がある。また、厚さの半分以上の切り込みを有する導光部材を製造することは困難であり、仮に製造できたとしても非常にコストがかかる。
【0007】
特許文献4に開示された技術は、光源と導光部材の位置あわせの精度が厳格に要求されるため、照明装置の製造が難しく、位置ずれが生じた場合には激しい輝度ムラが生じてしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、輝線や暗線を発生させることなく、光の広がりの少ない導光を実現できる導光部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、導光部材の表面形状と出光分布の関係について鋭意検討した結果、導光部材の導光機能を果たしている箇所(すなわち、導光面及び/又は出光部)に、導光板内における光の伝播方向に略平行な溝構造を設けると、光源からの光をその方向に直線的に出光させることができることを見出した。そして、このような導光部材を利用すれば、一枚の導光部材で、光の広がりの少ない導光を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
入光部と、該入光部から入射した光を導光する導光面と、該導光面により導光された光を外部に出光する出光部とを有する導光部材であって
前記出光部及び導光面の少なくとも一方が、互いに略平行な複数本の溝を有する、導光部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源からの光を直線的に出光させて出光部の所望のエリアのみを発光させることができるので、光の広がりの少ない導光部材を提供することができる。
さらに、本発明によれば、光源からの光を導光部材の出光部の所望のエリアのみから出光させることができるので、複数の光源を用い、各々を独立に駆動・制御することにより、一つの照明装置で複数の機能を兼ねる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の導光部材の一例の概略図である。
【図2】本発明の導光部材に形成する溝構造の一例を示す表面プロファイル図である。
【図3】本発明の導光部材の溝構造を有する面の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の導光部材の溝構造を有する面の一例を示す概略図である。
【図5】溝構造の形成方法の具体例の説明図である。
【図6】溝構造の形成方法の具体例の説明図である。
【図7】溝構造を形成した導光部材製造用多層フィルムの断面図である。
【図8】拡散角度の説明図である。
【図9】本発明の車載照明装置の一例の概略図である。
【図10】本発明の車載照明装置に利用できる点光源(LED)の概略図である。
【図11】本発明の導光部材の一例の概略図である。
【図12】本発明の導光部材の一例の概略図である。
【図13】本発明の車載照明装置の一例の概略図である。
【図14】比較例の輝度分布を示す図である。
【図15】実施例の輝度分布を示す図である。
【図16】実施例及び比較例の輝度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の導光部材の実施形態について、本発明の導光部材の一例の概略図を示す図1を用いて以下に具体的に説明する。
本発明の導光部材は、入光部と、該入光部から入射した光を導光する導光面と、当該導光面により導光された光を外部に出光する出光部を有する。図1の導光部材1は、出光部(面)11と、導光面(図示せず)が対向し、入光部12が出光部と導光面との間に挟まれているものである。図1の導光部材においては、近傍に配置された光源の光を入光部12から導光部材内に入射させ、導光面と出光部との間で繰り返し反射させて導光し、導光した光を出射機構(図示せず)によって出光部11に向け、出光部11から外部に出射させる。
なお、図1の導光部材は、形状が平板状であって、その主面の一方が出光部、他方が導光面、その側面が入光部であるが、導光部材の形状や、入光部、出光部及び導光面の位置関係はこの通りである必要はなく、例えば、図11に示すような、照明装置本体の外形に沿って湾曲した形状を有し、両主面11a、11bが導光面、向かい合う端面(側面)が、それぞれ、入光部11c及び出光部11dであるようなものであってもよい。
【0014】
本発明の導光部材は、導光面及び/又は(導光機能を果す)出光部に、互いに略平行な複数本の溝を有する。
複数本の溝は、その断面形状、ピッチ及び深さのうち少なくとも1つがランダム(不規則)に異なっていることが好ましい。ここで、ピッチ、深さが異なっているとは、標準偏差を3倍した値(3シグマ)が平均値の10%を超えることをいう。
【0015】
本発明の導光部材においては、出光部及び/又はその導光面に設けられた複数本の溝により、入光部から入光した光が複数本の溝と平行な方向に高い直進性をもって導光される。したがって、本発明の導光部材において導光方向は、複数本の溝に平行となる。ここで、導光方向とは、導光部材において入光部から入射した光を導光する方向であり、光源が配置された導光部材の入光箇所の中心と、その光が導光部材からの出光する箇所の中心とを結んだ直線の方向である。
光の直進性が向上する理由は明らかではないが、入光部から入光した光が導光部材の内側から溝に当たって全反射する際、光の伝播方向と垂直な面内においては、入射してきた方向に戻るように反射するためであると推測される。ただし、機序はこれに限定されない。
複数本の溝は、光の伝播方向と略平行である必要があり、入光部と平行でない方がよいが、必ずしも入光部に対して垂直に設けられていなくてもよい。通常(導光部材に複数本の溝が設けられていない場合)、導光部材の導光方向は入光部と垂直な方向となる。しかし、本発明においては、複数本の溝の方向を適宜設計することにより、導光方向を自在に変更することができ、例えば、図12に示すように、複数本の溝12aを入光部12bに対して鋭角の角度(例えば60°)を持って形成すれば、その方向に光を進行させることが可能となる。
【0016】
複数本の溝(以下、「複数本の溝」を「溝構造」ということがある。)は、出光部が実質的に導光機能を果す場合には、出光部及びその導光面の少なくともどちらか一方に設けられていればよく、いずれに設けても本発明の光の直進化の効果は得られる。したがって、複数本の溝をどちらに設けるかは、製造のしやすさ、取り扱いのしやすさ等を考慮して適宜決定すればよい。例えば、導光面に出光分布を均一にするための光散乱パターンを印刷等により設ける場合、溝を有する面の上に印刷を施すのが難しいこともあるので、複数本の溝を出光部の方に設ければよい。
また、複数本の溝は、出光部及び導光面の両方に設けてもよい。
【0017】
図1の導光部材は、溝構造を出光部11に設けた例であり、ここでは、複数本の溝13は、入光部12に垂直(入光部12の出光部11と接する辺15に垂直)に形成されている。
【0018】
各溝の断面形状に限定はなく、例えば、V字形状やU字形状とすることができる。また、溝の断面形状や幅が溝の延在方向に沿って変化していてもよい。
溝のピッチとは、隣合う溝の谷底の間の水平距離(溝構造を有する面に平行な方向の水平距離)をいう。なお、谷底が平坦である場合には、その中心を谷底としてピッチを決定する。
また、溝の深さは、各溝を構成する両側の山のうち高い方の山の山頂と溝の谷底の間の垂直距離(溝構造を有する面に垂直な方向の距離)(山頂と谷底の標高差)をいう。
溝の断面形状、ピッチ及び深さは、溝構造を有する面の任意の垂直断面(溝に垂直な垂直断面)を顕微鏡(走査型電子顕微鏡やレーザー共焦点顕微鏡等)により観察・測定することによって決定することができる。
【0019】
本発明において好ましく利用できる溝構造の具体例を図2A及びBに示す。図2Aは溝構造に垂直な方向への拡散角度(後述)が30度、溝構造に水平な方向への拡散角度が1度の異方性の拡散特性を有する溝構造の具体例を示す表面プロファイル図である。図2Bは溝構造に垂直な方向への拡散角度が60度、溝構造に水平な方向への拡散角度が1度の異方性の拡散特性を有する溝構造の具体例を示す表面プロファイル図である。
【0020】
溝構造の平均ピッチに限定はないが、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また、溝構造の平均ピッチは580nm(可視光の中心波長)以上であることが好ましく、より好ましくは780nm(可視光全域)以上である。
溝構造の平均ピッチをこのような値に設定すれば、取り扱い時に溝構造に爪などが引掛かることも少なく、ハンドリング性が向上する。さらに、本発明の導光部材によって導光する光は可視光線(380nm〜780nmの電磁波)であるので、溝構造による光の直進化の効果を十分に発揮するためには平均ピッチの下限値は上記のような値であることが好ましい。
溝構造の平均深さにも限定はないが、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜10μmである。
なお、溝構造の平均ピッチ及び平均深さは、溝構造を有する面の任意の垂直断面(溝に垂直な垂直断面)から任意に抽出した100μmの距離の間に存在する溝のピッチ及び深さの平均値とする。
【0021】
また、溝構造のピッチや深さ(ピッチや深さの数値範囲)をエリア毎に変化させることによって、より積極的に光の直進性をコントロールしたり、光の出光部中央への到達度を向上させることが可能となる。
例えば、図3のように、溝構造を有する面の中心部分とその両側部分で溝構造のピッチや深さの数値範囲(平均ピッチや平均深さ)を変えてもよい。さらに、例えば、入光部から離れるにしたがって溝構造のピッチや深さの数値範囲(平均ピッチや平均深さ)が徐々に変化していくように(グラデーションがかかって順次変化していくように)することも好ましい。
【0022】
なお、図1、3においては、溝13、33は溝構造を有する面を端から端まで横断しているが、必ずしも端から端まで横断していなくても溝構造による光の直進化の効果は得られる。したがって、導光部材の製造条件、出光させたい出光面上のエリア、求められる品質等を考慮して、図4のように、溝を導光面や出光部の端部より内側から設けてもよい。
【0023】
本発明の導光部材に溝構造を形成する方法に限定はない。例えば、(1)溝構造に対応する凹凸パターンを有する型を用いて当初から溝構造を有する導光部材を成形する方法、(2)溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写型を用いて導光部材に溝構造を転写する方法、及び、(3)溝構造を有するフィルムを導光部材に貼り合せる方法等を用いることができる。
【0024】
(1)の方法として、例えば、射出成形の場合には、導光部材を成形する金型の溝構造を形成する面に相対する位置に溝構造に対応する凹凸パターンを有するスタンパーを配置することにより、当初から溝構造を有する導光部材を成形することができる。この方法は、比較的小型の導光部材を製造するのに適している。
また、キャスト成形の場合には、キャストした樹脂又は樹脂組成物を固める際に使用するベース板(型)に溝構造に対応する凹凸パターンを設けておくことにより、当初から溝構造を有する導光部材製造用シートを成形することができる。成形後、シートを所定のサイズにカットして(さらに必要に応じて切削加工等を施して)導光部材を製造する。
さらに、押出成形の場合には、ダイ51から出てきた樹脂又は樹脂組成物52が熱いうちに、溝構造に対応する凹凸パターンを有するローラー53の間を通すことにより、当初から溝構造を有する導光部材原反シートを成形することができる(図5参照)。成形後、シートを所定のサイズにカットして(さらに必要に応じて切削加工等を施して)導光部材を製造する。
【0025】
(2)の方法として、例えば、溝構造を有していない導光部材(導光部材製造用原反シート)を押出成形やキャスト成形等により成形した後、溝構造を形成する面に溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写型を用いて溝構造を転写することができる。
図6にこの方法の具体例を示す。図6の方法においては、所定のサイズにカットした透明基板61に溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写ローラー62を加熱しながら押し付けて溝構造を転写する。なお、転写ローラー62に代えてフラットなスタンパーを用いてもよい。
【0026】
(3)の方法としては、次のような方法が挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等からなる透明なベースフィルム上に、例えば、紫外線硬化樹脂層を塗布し、後述するスペックルパターンを用いた方法により紫外線硬化樹脂層に溝構造を形成するなどして、溝構造を有する層を形成する。ベースフィルムの厚さに限定はないが、例えば、20〜150μmとすることができる。
次いで、上記ベースフィルムの溝構造を形成した面とは反対側の面に、透光性の粘着剤を塗布すると共にその上にポリエチレンテレフタレート等からなる剥離フィルムを貼り合わせるか、又は、剥離フィルム付きの粘着フィルムの透光性粘着層を貼り合わせる等して、粘着剤側が剥離フィルムでカバーされた多層フィルムを製造する。このような多層フィルムの層構成の具体例を図7に示す。図7の7a、7bは、共に、剥離フィルムを片側に設けた多層フィルムである。多層フィルム7aにおいては、下から順に、剥離フィルム71、粘着層72、ベースフィルム73及び溝構造が形成された層74が積層されている。また、多層フィルム7bにおいては、溝構造が形成された層74の上にさらに、粘着層及び台紙フィルム層が設けられ、下から順に、剥離フィルム71、粘着層72、ベースフィルム73、溝構造が形成された層74、粘着層75及び台紙フィルム76が積層されている。なお、剥離フィルム71及び台紙フィルム76は、導光部材の製造中、台紙又は保護フィルムの役割を果たすものであり、その厚みに限定はなく、例えば(その材質にもよるが)、20〜100μmとすることができる。
【0027】
次に、この多層フィルム7a又は7bを所望のサイズに切断する。このときのサイズは、導光部材の溝構造を形成する面と同じとしてもよいし、これより若干小さくしてもよい。多層フィルム7a又は7bを、導光部材の溝構造を形成する面より小さくカットしておくと、貼り合わせの際に、多少のずれがあってもはみ出しが起きる心配がなく、剥がれにくい高信頼性の導光部材が提供できる。また、貼り合わせ精度にも尤度が生まれ生産性も向上する。
次に、カットした多層フィルム7a又は7bを、導光部材の製造工程や導光部材を有する照明装置の組立工程において、導光部材に貼り合わせる。多層フィルム7aの場合は上記溝構造が形成されたフィルム(72〜74)を剥離フィルム71から剥がして粘着層72を介して導光部材に貼り合せる。多層フィルム7bの場合は、上記溝構造が形成されたフィルム(71〜74)を粘着層75から剥がし、次いで剥離フィルム71を剥がして粘着層72を介して導光部材に貼り合わせる。最後に、必要に応じてフィルムと導光部材との間の空気をローラー等により抜くことにより密着させてもよい。
なお、貼り合わせに先立ち、粘着層72及び/又は導光部材の溝構造を設ける面にエキシマUV処理やコロナ処理等の表面処理を施すことによって表面の分子結合を切断した後、直ちに粘着層72と導光部材とを密着させることによって、貼り合わせ強度を向上させることもできる。さらに、このような表面処理を利用すれば、粘着剤を使用せずに溝構造を有するフィルムのベースフィルムと導光部材とを貼り合せることも可能であり、低コスト化、信頼性向上を図ることができる。
【0028】
上述の(1)、(2)の方法で使用する金型(スタンパー)、転写型(転写ローラー)や(3)の方法で使用するフィルム等に、溝構造に対応する凹凸パターンや溝構造を形成する方法に限定はなく、例えば、切削、サンドブラスト等の機械加工によって形成してもよいし、レーザーのスペックルパターン露光により形成することもできる。スペックルパターン露光を利用する方法は、機械加工では困難な10μm程度以下の微細な3次元構造の形成に適している。
【0029】
スペックルパターン露光を利用する場合には、具体的には次のようにしてランダムな溝構造を形成することができる。
例えば、レーザー光を用いた干渉露光によりランダムな縞模様のスペックルパターンを発生させ、これをフォトレジスト等の感光性材料に照射する。次いで、露光した感光性材料を公知の方法によって現像すると、感光性材料に上記スペックルパターンに対応したランダムな溝構造が形成される。
なお、ランダムな縞模様のスペックルパターンは、例えば、レーザー光を異方性の強い拡散層等で拡散させることによって発生させることができる。通常、レーザー光を拡散層で拡散させて露光面に照射すると、スペックルは円形ムラとして発生するが、拡散層を異方性の強いものとすると、スペックルを縞模様状にすることができる。さらに、レーザー光の波長やレーザー光を拡散させる条件等を適宜変更することにより、所望のランダム縞模様を得ることが可能となる。具体的には、特表2004−508585号公報の段落0047〜0057に開示される方法等によって発生させることができる。
【0030】
溝構造に対応する凹凸パターンを有する金型や転写型は、さらに、上記のようにして作成した溝構造をサブマスタ型とし、このサブマスタ型に電鋳等の方法で金属を被着してこの金属に上記溝構造に対応する凹凸パターンを転写すること等によって作製することができる。
【0031】
なお、干渉露光によるスペックルパターンを用いた微細な凹凸パターンの作製方法は周知であり、例えば、特許第3413519号、特表2003−525472号公報及び特表2004−508585号公報等に開示されている。
【0032】
本発明の導光部材は、入光部、出光部及び導光面を有していれば、その形状(外形)や、入光部、出光部及び導光面の位置関係に特に限定はない。また、入光部は少なくとも1つあればよく、2つあってもよい。
導光部材の大きさに限定はなく、用途に応じて適宜設定される。
【0033】
本発明の導光部材の一つの実施態様としては、出光部(面)とこれに対向する導光面とを主面とする平板形状又は湾曲板形状(出光部側を凸とする湾曲板形状)を有し、入光部が、出光部と導光面との間に挟まれた側面に位置するものが挙げられる。この場合には、出光部も導光機能を果たし、入光部から入射した光は、導光面と出光部との間で繰り返し反射されて導光され、出光部から出射される。
また、この場合において導光部材が入光部を2つ有する場合、導光部材の形状は出光面と導光面を主面とする平板状の直方体であることが好ましく、さらに、2つの入光部が対向していることが好ましい。この場合、対向する二つの入光部は長さが同じであるため、点光源の数や種類を同一にし、部品の共通化を図ることができるというメリットがある。
この実施態様の導光部材は、発光面積の比較的広い制動灯、車幅灯、表示灯(例:メーターパネル等を照明する表示灯)等に適している。
【0034】
さらに別の態様によれば、本発明の導光部材は、2つの導光面を主面とする平板形状又は湾曲板形状を有し、入光部及び出光部が、向かい合う端面(側面)に位置するものとしてもよい。
この実施態様の導光部材は、サイドミラーに一体化された方向指示灯等に適している。
【0035】
なお、上述の実施態様のうち、湾曲板形状は、車載照明装置の外形に沿って湾曲していることが好ましく、複数本の溝は凹面の側、すなわち、車載された時に内側になる部分、に形成されていることが好ましい。複数本の溝を内側にすることにより、溝の傷付き等を防止して、安定して性能を発揮させることができる。
【0036】
本発明の導光部材の材質は、透光性のものであれば特に限定はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン系共重合体等の光学部品の材料として一般に使用されている透明性の高い高分子材料やガラス等の無機材料を用いることができる。
また、本発明の導光部材は、必要に応じて有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整剤及び離型剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0037】
本発明の導光部材に設けられる溝構造は、その表面形状により、溝構造に垂直な方向への拡散角度が最大で、溝構造に平行な方向への拡散角度が最小である異方性の拡散特性を示す。
拡散角度(溝構造に垂直に光線を入射させたときの出射光の拡散角度(FWHM))の具体的な値に限定はないが、溝構造に垂直な方向への拡散角度は20°〜90°としてもよいし、50°〜70°としてもよいし、65°としてもよい。一方、溝構造に平行な方向への拡散角度は、例えば20°以下とすることができる。
溝構造がこのような拡散角度を与える表面形状を有していると、光の直進化の効果が十分に得られる。
溝構造に対して平行な方向、垂直な方向の拡散角度は、共に、各溝の形状や溝構造の深さ及びピッチ等を適宜変更することによって調整することができ、スペックルパターンを利用して溝構造を形成する場合、これらはレーザー光を拡散させる条件等を適宜変更することによって調整できる。
また、拡散特性は溝構造の全領域において略一定であることが好ましい。
【0038】
ここで、「拡散角度」とは、透過光強度がピーク強度の半分に減衰する角(半値角)の2倍の角度(FWHM:Full Width Half Maximum)をいう(図8参照)。この拡散角度は、例えば、Photon Inc.製のGoniometric Radiometers Real−Time Far−Field Angular Profiles Model LD8900や日本電色工業株式会社製のGC5000L等の変角色差計を用いて、溝構造の法線方向から、溝構造(溝構造を形成した材料)に入射した光の透過光強度の角度分布(透過光の強度の出射角度に対する分布)を測定することによって求めることができる。ここで、溝構造の法線方向とは、図1の16に示す方向を指す。
【0039】
本発明の導光部材の導光面及び/又は出光部には、導光した光を出光部から出射させるための出射機構を設けることができる。
出射機構の具体例としては、白色インクや拡散インク(拡散材を含有する透明インク)等による印刷パターン、熱転写・射出成形によるシボパターン、CO2レーザー等を利用
したレーザーパターン(スパッタリングによる凹のシボパターン)等の光散乱パターンが挙げられる。
出光部における出光分布(輝度分布)を均一にするために、出射機構は、入光部近傍では疎に、入光部から離れるにしたがって密に設けることが好ましい。例えば、入光部から遠ざかる方向に向かってグラデーションを有する光散乱パターンを形成することができる。
光散乱パターンとしては、例えば、反射性あるいは拡散性の材料を積層(印刷)した部分や凹凸形状を形成した部分(以下まとめて「ドット」という。)を、入光部から離れるに従って徐々に面積が広くなるようなグラデーションパターン(印刷の場合は、徐々に濃くなるグラデーションパターンにしてもよい)にしたものや、同一大のドットや凹凸形状を光源から離れるに従ってピッチが狭くなるようにしたグラデーションパターンが挙げられる。この場合のドットや凹凸の形状には円形、四角形などが挙げられ、その大きさは例えば、0.1〜2.0mm程度とすることができる。
【0040】
次に、本発明の車載照明装置について説明する。
本発明の車載照明装置は、本発明の導光部材と、導光部材の入光部の近傍に配置された光源とを有する。
図9、13に本発明の車載照明装置の一例の概略図を示す。
図9の車載照明装置9は制動灯と方向指示灯を兼ねる後方照明であり、導光部材91として、出光部(面)911とこれに対向する導光面(図示せず)とを主面とする湾曲板形状(出光部側を凸とする)を有し、入光部912が、出光部と導光面との間に挟まれた側面に位置するものを用い、光源として、複数の点光源92a〜eを用いている。点光源92a〜cは赤色、92d〜eは黄色に発光し、それぞれ、独立して駆動・制御され制動灯、方向指示灯として機能する。なお、前記赤色または黄色の点光源にかえて、白色光源と赤色または黄色のカラーフィルターを組合せたものでもよい。
図13の車載照明装置13は、導光部材131が平板形状である場合の例である(その他はすべて車載照明装置9と同様である)。
【0041】
本発明の車載照明装置に使用する光源に限定はないが、点光源であることが好ましく、LED(発光ダイオード)であることが好ましい。LEDは低消費電力で高輝度の光が得られ、温度が低い場合でも明るく発光するので、点灯直後から十分な照度を有する車載照明装置を提供することができる。LEDの種類に限定はなく、例えば、青色LEDにより緑色、赤色蛍光体を励起するワンチップタイプの擬似白色LED、赤色/緑色/青色LEDを組み合わせて白色光を作るマルチチップタイプ、更には近紫外LEDと赤色/緑色/青色蛍光体を組み合わせたワンチップタイプの擬似白色LED等の白色LEDや、赤色LED、黄色LED等が挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。
図10に本発明で使用できる箱型のLED10の一例の概略図を示す。なお、LEDの外形や発光面のサイズに限定はないが、外形が5.6mm(幅)×3.0mm(高さ)×1.0mm(厚み)程度で、発光面101の横幅102が5mm以下のものが一般的に使用されている。
【0042】
光源の発光面と導光部材の入光部の距離は、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは0.3mm以上1.0mm以下である。導光部材と発光面の距離を離すと、導光部材に入射する光の量は、逆2乗の法則により減少し、結果的に出光部からでる光の総量も減少してしまう。従って、光源の発光面と本発明の導光部材の入光部の距離は近いことが好ましい。一方、光源の周辺では熱が発生し、導光部材が膨張するため、膨張に耐えうる隙間を残しておく必要がある。
【0043】
光源が複数の点光源である場合、その配置方法に限定はないが、導光部材の入光部に沿って一直線上に配置することが好ましく、後述する各グループ内では等間隔(「等間隔」には±10%の誤差を含むものとする)に配置することが好ましい。この場合、点光源の配列ピッチPは、例えば、点光源の幅(外形)〜200mm程度にすることができる。輝度ムラ防止の観点からは、点光源はなるべく密に配置されている方がよく、基板上への実装制約や製造コストの観点ではある程度距離が開いている方が良い。点光源の配列ピッチは、好ましくは6mm〜200mm、より好ましくは10〜100mmである。
【0044】
また、本発明の車載照明装置は、導光部材として、入光部から入射した光を、出光部の全領域に広がることなく、出光部上の所望のエリアからのみ出光させることのできる本発明の導光部材を使用しているので、入光部近傍に複数の点光源を配置すると共に、これらの複数の点光源を2つ以上のグループに区画し、各点光源の色をグループ毎に異なるようにしたり、各点光源の点滅や明るさをグループ毎に独立して駆動(制御)できるようにして、1つの照明装置で2種類以上の用途を兼ねるようにしてもよい。
兼用できる用途の組合せとしては、例えば、制動灯と方向指示灯、後方車幅灯と方向指示灯、前方車幅灯と方向指示灯等が挙げられるがこれに限定されない。
【0045】
本発明の車載照明装置においては、導光部材及び光源に加え、拡散シートや反射シート等の、所謂エッジライト方式の照明装置において一般に採用される光学要素をさらに含むことができる。具体的には、拡散シートを導光部材の出光部上方に配置したり、反射シートを導光部材の導光面下方に配置することができる。さらに、導光部材の出光部上方には、拡散シート以外にも、プリズムシートや、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズシートなどの集光シートや、液晶パネルの偏光板での光学損失を回避するための偏光反射シートなどを一枚又は複数枚組み合せて配置することもできる。
【実施例】
【0046】
[比較例(従来品)]
LEDが10.5mmの配列ピッチで配置されている市販のLEDテレビ(ソニー株式会社製 BRAVIA KDL−32EX700)から、面光源装置を取り出し、LEDのうち中心部に配置された9個のみ点灯させて、出光部の輝度を測定した。
なお、この比較例の面光源装置に含まれる導光部材は、図1に示した導光部材と同様の形状、すなわち、平板状(直方体)であって、その主面の一方が出光部、他方が導光面、両主面に挟まれた側面が入光部である形状、を有していた。
[実施例]
比較例の面光源装置において、導光部材の出光部に本発明の溝構造を形成した平均厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを、透明両面接着シート(日東電工株式会社製CS9621T)を用いて貼り付け、中心部に配置された9個のLEDのみ点灯させて、出光部の輝度を測定した。なお、溝構造は図4Aに示したスペックルパターン露光により製造したものであり、平均ピッチは約6μm、平均深さは約4μmである。
【0047】
比較例及び実施例の導光部材の出光部の輝度分布を、それぞれ、図14及び図15に示す。また、図16に、図14、15の点線部分における輝度分布を示す。図16において、縦軸は図14、15の点線部分における輝度、横軸は点線上の測定位置である。
従来の導光部材を使用した比較例においては、LEDからの光が左右に広がっていたが(図14、16)、本発明の導光部材を使用した実施例においては、LEDからの光はまっすぐに直進していた(図15、16)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の導光部材は、光源からの光を非常に高い直進性をもって導光できるので、発光エリアを厳密に制御することが求められる各種照明装置、例えば、車両用信号灯、例えば、メーターパネル等を照明する表示灯(例:白色);制動灯(例:赤色);後方又は前方車幅灯(例:赤色、白色);方向指示灯(例:黄色)等の車載照明装置に好適に使用できる。
特に、本発明の導光部材は、入光部から入射した光を出光部上の所望のエリアのみから出光させることができるので、制動灯と向指示灯、後方車幅灯と方向指示灯、前方車幅灯と方向指示灯等といった組合せで、1台で複数の用途を兼ねる照明装置にとりわけ好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 導光部材
11 出光部
12 入光部
13 溝
15 入光部の出光部と接する辺
16 出光部の法線方向
33 溝
41 入光部
51 ダイ
52 樹脂又は樹脂組成物
53 構造に対応する凹凸パターンを有するローラー
61 透明基板
62 転写ローラー
7a 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
7b 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
71 剥離フィルム
72 粘着層
73 ベースフィルム
74 溝構造が形成された層
75 粘着層
76 台紙フィルム
9 車載照明装置
91 導光部材
911 出光部
912 入光部
92 点光源
10 LED
101 発光面
102 発光面の横幅
11a 導光面
11b 導光面
11c 入光部
11d 出光部
12a 溝
12b 入光部
131 導光部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光部材に関し、特に、車載照明装置、例えば、ヘッドライトやテールランプ等の車両用信号灯具、に適した導光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、点光源(発光ダイオード(LED)、半導体レーザーダイオード(LD)、電界発光素子(EL)等の固体発光素子)は、低電力で高輝度の光が得られることから、各種照明の光源としても使用されている。これらの点光源は発光面積が小さいため、通常、導光部材と組み合せて使用される。例えば、特許文献1にはLEDと導光部材を用いたサイドターンシグナルランプが開示されている。
導光部材は、光源から入射する光をその内部で繰り返し反射させて部材中の所望するエリアまで導光し、そこから出光機構によって外部へ出光させるという役割を果たす。このような導光部材においては、導光する際に、光が所望する出光エリアの外にまで広がり、意図した発光が得られない、光の利用効率が下がるという問題がある。
【0003】
導光部材における光の広がりを抑えるための技術として、特許文献2には、導光部材を短冊状に分割することが開示されている。また、特許文献3には、導光部材の底面に導光部材の厚さの半分以上の切り込みを設けることが開示されている。さらに、特許文献4には、導光部材の入光部に凸部を設けると共にその頂部に光源を配置すること、及び、導光部材の入光部にレンチキュラーレンズを配置すると共にその焦点位置に光源を配置することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−260545号公報
【特許文献2】特開2001−210122号公報
【特許文献3】特開2009−199926号公報
【特許文献4】特開2009−199927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示された技術においては、導光部材と導光部材の間に輝線又は暗線が発生するという問題がある。また、導光部材が複数あるため、各導光部材の固定や寸法管理が煩雑で、これを用いて照明装置を製造するのは実際には困難である。
【0006】
特許文献3に開示された技術においても、導光部材に深い切り込みを形成するため、輝線又は暗線の発生という問題がある。また、厚さの半分以上の切り込みを有する導光部材を製造することは困難であり、仮に製造できたとしても非常にコストがかかる。
【0007】
特許文献4に開示された技術は、光源と導光部材の位置あわせの精度が厳格に要求されるため、照明装置の製造が難しく、位置ずれが生じた場合には激しい輝度ムラが生じてしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、輝線や暗線を発生させることなく、光の広がりの少ない導光を実現できる導光部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、導光部材の表面形状と出光分布の関係について鋭意検討した結果、導光部材の導光機能を果たしている箇所(すなわち、導光面及び/又は出光部)に、導光板内における光の伝播方向に略平行な溝構造を設けると、光源からの光をその方向に直線的に出光させることができることを見出した。そして、このような導光部材を利用すれば、一枚の導光部材で、光の広がりの少ない導光を実現できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
入光部と、該入光部から入射した光を導光する導光面と、該導光面により導光された光を外部に出光する出光部とを有する導光部材であって
前記出光部及び導光面の少なくとも一方が、互いに略平行な複数本の溝を有する、導光部材。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源からの光を直線的に出光させて出光部の所望のエリアのみを発光させることができるので、光の広がりの少ない導光部材を提供することができる。
さらに、本発明によれば、光源からの光を導光部材の出光部の所望のエリアのみから出光させることができるので、複数の光源を用い、各々を独立に駆動・制御することにより、一つの照明装置で複数の機能を兼ねる照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の導光部材の一例の概略図である。
【図2】本発明の導光部材に形成する溝構造の一例を示す表面プロファイル図である。
【図3】本発明の導光部材の溝構造を有する面の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の導光部材の溝構造を有する面の一例を示す概略図である。
【図5】溝構造の形成方法の具体例の説明図である。
【図6】溝構造の形成方法の具体例の説明図である。
【図7】溝構造を形成した導光部材製造用多層フィルムの断面図である。
【図8】拡散角度の説明図である。
【図9】本発明の車載照明装置の一例の概略図である。
【図10】本発明の車載照明装置に利用できる点光源(LED)の概略図である。
【図11】本発明の導光部材の一例の概略図である。
【図12】本発明の導光部材の一例の概略図である。
【図13】本発明の車載照明装置の一例の概略図である。
【図14】比較例の輝度分布を示す図である。
【図15】実施例の輝度分布を示す図である。
【図16】実施例及び比較例の輝度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の導光部材の実施形態について、本発明の導光部材の一例の概略図を示す図1を用いて以下に具体的に説明する。
本発明の導光部材は、入光部と、該入光部から入射した光を導光する導光面と、当該導光面により導光された光を外部に出光する出光部を有する。図1の導光部材1は、出光部(面)11と、導光面(図示せず)が対向し、入光部12が出光部と導光面との間に挟まれているものである。図1の導光部材においては、近傍に配置された光源の光を入光部12から導光部材内に入射させ、導光面と出光部との間で繰り返し反射させて導光し、導光した光を出射機構(図示せず)によって出光部11に向け、出光部11から外部に出射させる。
なお、図1の導光部材は、形状が平板状であって、その主面の一方が出光部、他方が導光面、その側面が入光部であるが、導光部材の形状や、入光部、出光部及び導光面の位置関係はこの通りである必要はなく、例えば、図11に示すような、照明装置本体の外形に沿って湾曲した形状を有し、両主面11a、11bが導光面、向かい合う端面(側面)が、それぞれ、入光部11c及び出光部11dであるようなものであってもよい。
【0014】
本発明の導光部材は、導光面及び/又は(導光機能を果す)出光部に、互いに略平行な複数本の溝を有する。
複数本の溝は、その断面形状、ピッチ及び深さのうち少なくとも1つがランダム(不規則)に異なっていることが好ましい。ここで、ピッチ、深さが異なっているとは、標準偏差を3倍した値(3シグマ)が平均値の10%を超えることをいう。
【0015】
本発明の導光部材においては、出光部及び/又はその導光面に設けられた複数本の溝により、入光部から入光した光が複数本の溝と平行な方向に高い直進性をもって導光される。したがって、本発明の導光部材において導光方向は、複数本の溝に平行となる。ここで、導光方向とは、導光部材において入光部から入射した光を導光する方向であり、光源が配置された導光部材の入光箇所の中心と、その光が導光部材からの出光する箇所の中心とを結んだ直線の方向である。
光の直進性が向上する理由は明らかではないが、入光部から入光した光が導光部材の内側から溝に当たって全反射する際、光の伝播方向と垂直な面内においては、入射してきた方向に戻るように反射するためであると推測される。ただし、機序はこれに限定されない。
複数本の溝は、光の伝播方向と略平行である必要があり、入光部と平行でない方がよいが、必ずしも入光部に対して垂直に設けられていなくてもよい。通常(導光部材に複数本の溝が設けられていない場合)、導光部材の導光方向は入光部と垂直な方向となる。しかし、本発明においては、複数本の溝の方向を適宜設計することにより、導光方向を自在に変更することができ、例えば、図12に示すように、複数本の溝12aを入光部12bに対して鋭角の角度(例えば60°)を持って形成すれば、その方向に光を進行させることが可能となる。
【0016】
複数本の溝(以下、「複数本の溝」を「溝構造」ということがある。)は、出光部が実質的に導光機能を果す場合には、出光部及びその導光面の少なくともどちらか一方に設けられていればよく、いずれに設けても本発明の光の直進化の効果は得られる。したがって、複数本の溝をどちらに設けるかは、製造のしやすさ、取り扱いのしやすさ等を考慮して適宜決定すればよい。例えば、導光面に出光分布を均一にするための光散乱パターンを印刷等により設ける場合、溝を有する面の上に印刷を施すのが難しいこともあるので、複数本の溝を出光部の方に設ければよい。
また、複数本の溝は、出光部及び導光面の両方に設けてもよい。
【0017】
図1の導光部材は、溝構造を出光部11に設けた例であり、ここでは、複数本の溝13は、入光部12に垂直(入光部12の出光部11と接する辺15に垂直)に形成されている。
【0018】
各溝の断面形状に限定はなく、例えば、V字形状やU字形状とすることができる。また、溝の断面形状や幅が溝の延在方向に沿って変化していてもよい。
溝のピッチとは、隣合う溝の谷底の間の水平距離(溝構造を有する面に平行な方向の水平距離)をいう。なお、谷底が平坦である場合には、その中心を谷底としてピッチを決定する。
また、溝の深さは、各溝を構成する両側の山のうち高い方の山の山頂と溝の谷底の間の垂直距離(溝構造を有する面に垂直な方向の距離)(山頂と谷底の標高差)をいう。
溝の断面形状、ピッチ及び深さは、溝構造を有する面の任意の垂直断面(溝に垂直な垂直断面)を顕微鏡(走査型電子顕微鏡やレーザー共焦点顕微鏡等)により観察・測定することによって決定することができる。
【0019】
本発明において好ましく利用できる溝構造の具体例を図2A及びBに示す。図2Aは溝構造に垂直な方向への拡散角度(後述)が30度、溝構造に水平な方向への拡散角度が1度の異方性の拡散特性を有する溝構造の具体例を示す表面プロファイル図である。図2Bは溝構造に垂直な方向への拡散角度が60度、溝構造に水平な方向への拡散角度が1度の異方性の拡散特性を有する溝構造の具体例を示す表面プロファイル図である。
【0020】
溝構造の平均ピッチに限定はないが、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また、溝構造の平均ピッチは580nm(可視光の中心波長)以上であることが好ましく、より好ましくは780nm(可視光全域)以上である。
溝構造の平均ピッチをこのような値に設定すれば、取り扱い時に溝構造に爪などが引掛かることも少なく、ハンドリング性が向上する。さらに、本発明の導光部材によって導光する光は可視光線(380nm〜780nmの電磁波)であるので、溝構造による光の直進化の効果を十分に発揮するためには平均ピッチの下限値は上記のような値であることが好ましい。
溝構造の平均深さにも限定はないが、1〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜10μmである。
なお、溝構造の平均ピッチ及び平均深さは、溝構造を有する面の任意の垂直断面(溝に垂直な垂直断面)から任意に抽出した100μmの距離の間に存在する溝のピッチ及び深さの平均値とする。
【0021】
また、溝構造のピッチや深さ(ピッチや深さの数値範囲)をエリア毎に変化させることによって、より積極的に光の直進性をコントロールしたり、光の出光部中央への到達度を向上させることが可能となる。
例えば、図3のように、溝構造を有する面の中心部分とその両側部分で溝構造のピッチや深さの数値範囲(平均ピッチや平均深さ)を変えてもよい。さらに、例えば、入光部から離れるにしたがって溝構造のピッチや深さの数値範囲(平均ピッチや平均深さ)が徐々に変化していくように(グラデーションがかかって順次変化していくように)することも好ましい。
【0022】
なお、図1、3においては、溝13、33は溝構造を有する面を端から端まで横断しているが、必ずしも端から端まで横断していなくても溝構造による光の直進化の効果は得られる。したがって、導光部材の製造条件、出光させたい出光面上のエリア、求められる品質等を考慮して、図4のように、溝を導光面や出光部の端部より内側から設けてもよい。
【0023】
本発明の導光部材に溝構造を形成する方法に限定はない。例えば、(1)溝構造に対応する凹凸パターンを有する型を用いて当初から溝構造を有する導光部材を成形する方法、(2)溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写型を用いて導光部材に溝構造を転写する方法、及び、(3)溝構造を有するフィルムを導光部材に貼り合せる方法等を用いることができる。
【0024】
(1)の方法として、例えば、射出成形の場合には、導光部材を成形する金型の溝構造を形成する面に相対する位置に溝構造に対応する凹凸パターンを有するスタンパーを配置することにより、当初から溝構造を有する導光部材を成形することができる。この方法は、比較的小型の導光部材を製造するのに適している。
また、キャスト成形の場合には、キャストした樹脂又は樹脂組成物を固める際に使用するベース板(型)に溝構造に対応する凹凸パターンを設けておくことにより、当初から溝構造を有する導光部材製造用シートを成形することができる。成形後、シートを所定のサイズにカットして(さらに必要に応じて切削加工等を施して)導光部材を製造する。
さらに、押出成形の場合には、ダイ51から出てきた樹脂又は樹脂組成物52が熱いうちに、溝構造に対応する凹凸パターンを有するローラー53の間を通すことにより、当初から溝構造を有する導光部材原反シートを成形することができる(図5参照)。成形後、シートを所定のサイズにカットして(さらに必要に応じて切削加工等を施して)導光部材を製造する。
【0025】
(2)の方法として、例えば、溝構造を有していない導光部材(導光部材製造用原反シート)を押出成形やキャスト成形等により成形した後、溝構造を形成する面に溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写型を用いて溝構造を転写することができる。
図6にこの方法の具体例を示す。図6の方法においては、所定のサイズにカットした透明基板61に溝構造に対応する凹凸パターンを有する転写ローラー62を加熱しながら押し付けて溝構造を転写する。なお、転写ローラー62に代えてフラットなスタンパーを用いてもよい。
【0026】
(3)の方法としては、次のような方法が挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等からなる透明なベースフィルム上に、例えば、紫外線硬化樹脂層を塗布し、後述するスペックルパターンを用いた方法により紫外線硬化樹脂層に溝構造を形成するなどして、溝構造を有する層を形成する。ベースフィルムの厚さに限定はないが、例えば、20〜150μmとすることができる。
次いで、上記ベースフィルムの溝構造を形成した面とは反対側の面に、透光性の粘着剤を塗布すると共にその上にポリエチレンテレフタレート等からなる剥離フィルムを貼り合わせるか、又は、剥離フィルム付きの粘着フィルムの透光性粘着層を貼り合わせる等して、粘着剤側が剥離フィルムでカバーされた多層フィルムを製造する。このような多層フィルムの層構成の具体例を図7に示す。図7の7a、7bは、共に、剥離フィルムを片側に設けた多層フィルムである。多層フィルム7aにおいては、下から順に、剥離フィルム71、粘着層72、ベースフィルム73及び溝構造が形成された層74が積層されている。また、多層フィルム7bにおいては、溝構造が形成された層74の上にさらに、粘着層及び台紙フィルム層が設けられ、下から順に、剥離フィルム71、粘着層72、ベースフィルム73、溝構造が形成された層74、粘着層75及び台紙フィルム76が積層されている。なお、剥離フィルム71及び台紙フィルム76は、導光部材の製造中、台紙又は保護フィルムの役割を果たすものであり、その厚みに限定はなく、例えば(その材質にもよるが)、20〜100μmとすることができる。
【0027】
次に、この多層フィルム7a又は7bを所望のサイズに切断する。このときのサイズは、導光部材の溝構造を形成する面と同じとしてもよいし、これより若干小さくしてもよい。多層フィルム7a又は7bを、導光部材の溝構造を形成する面より小さくカットしておくと、貼り合わせの際に、多少のずれがあってもはみ出しが起きる心配がなく、剥がれにくい高信頼性の導光部材が提供できる。また、貼り合わせ精度にも尤度が生まれ生産性も向上する。
次に、カットした多層フィルム7a又は7bを、導光部材の製造工程や導光部材を有する照明装置の組立工程において、導光部材に貼り合わせる。多層フィルム7aの場合は上記溝構造が形成されたフィルム(72〜74)を剥離フィルム71から剥がして粘着層72を介して導光部材に貼り合せる。多層フィルム7bの場合は、上記溝構造が形成されたフィルム(71〜74)を粘着層75から剥がし、次いで剥離フィルム71を剥がして粘着層72を介して導光部材に貼り合わせる。最後に、必要に応じてフィルムと導光部材との間の空気をローラー等により抜くことにより密着させてもよい。
なお、貼り合わせに先立ち、粘着層72及び/又は導光部材の溝構造を設ける面にエキシマUV処理やコロナ処理等の表面処理を施すことによって表面の分子結合を切断した後、直ちに粘着層72と導光部材とを密着させることによって、貼り合わせ強度を向上させることもできる。さらに、このような表面処理を利用すれば、粘着剤を使用せずに溝構造を有するフィルムのベースフィルムと導光部材とを貼り合せることも可能であり、低コスト化、信頼性向上を図ることができる。
【0028】
上述の(1)、(2)の方法で使用する金型(スタンパー)、転写型(転写ローラー)や(3)の方法で使用するフィルム等に、溝構造に対応する凹凸パターンや溝構造を形成する方法に限定はなく、例えば、切削、サンドブラスト等の機械加工によって形成してもよいし、レーザーのスペックルパターン露光により形成することもできる。スペックルパターン露光を利用する方法は、機械加工では困難な10μm程度以下の微細な3次元構造の形成に適している。
【0029】
スペックルパターン露光を利用する場合には、具体的には次のようにしてランダムな溝構造を形成することができる。
例えば、レーザー光を用いた干渉露光によりランダムな縞模様のスペックルパターンを発生させ、これをフォトレジスト等の感光性材料に照射する。次いで、露光した感光性材料を公知の方法によって現像すると、感光性材料に上記スペックルパターンに対応したランダムな溝構造が形成される。
なお、ランダムな縞模様のスペックルパターンは、例えば、レーザー光を異方性の強い拡散層等で拡散させることによって発生させることができる。通常、レーザー光を拡散層で拡散させて露光面に照射すると、スペックルは円形ムラとして発生するが、拡散層を異方性の強いものとすると、スペックルを縞模様状にすることができる。さらに、レーザー光の波長やレーザー光を拡散させる条件等を適宜変更することにより、所望のランダム縞模様を得ることが可能となる。具体的には、特表2004−508585号公報の段落0047〜0057に開示される方法等によって発生させることができる。
【0030】
溝構造に対応する凹凸パターンを有する金型や転写型は、さらに、上記のようにして作成した溝構造をサブマスタ型とし、このサブマスタ型に電鋳等の方法で金属を被着してこの金属に上記溝構造に対応する凹凸パターンを転写すること等によって作製することができる。
【0031】
なお、干渉露光によるスペックルパターンを用いた微細な凹凸パターンの作製方法は周知であり、例えば、特許第3413519号、特表2003−525472号公報及び特表2004−508585号公報等に開示されている。
【0032】
本発明の導光部材は、入光部、出光部及び導光面を有していれば、その形状(外形)や、入光部、出光部及び導光面の位置関係に特に限定はない。また、入光部は少なくとも1つあればよく、2つあってもよい。
導光部材の大きさに限定はなく、用途に応じて適宜設定される。
【0033】
本発明の導光部材の一つの実施態様としては、出光部(面)とこれに対向する導光面とを主面とする平板形状又は湾曲板形状(出光部側を凸とする湾曲板形状)を有し、入光部が、出光部と導光面との間に挟まれた側面に位置するものが挙げられる。この場合には、出光部も導光機能を果たし、入光部から入射した光は、導光面と出光部との間で繰り返し反射されて導光され、出光部から出射される。
また、この場合において導光部材が入光部を2つ有する場合、導光部材の形状は出光面と導光面を主面とする平板状の直方体であることが好ましく、さらに、2つの入光部が対向していることが好ましい。この場合、対向する二つの入光部は長さが同じであるため、点光源の数や種類を同一にし、部品の共通化を図ることができるというメリットがある。
この実施態様の導光部材は、発光面積の比較的広い制動灯、車幅灯、表示灯(例:メーターパネル等を照明する表示灯)等に適している。
【0034】
さらに別の態様によれば、本発明の導光部材は、2つの導光面を主面とする平板形状又は湾曲板形状を有し、入光部及び出光部が、向かい合う端面(側面)に位置するものとしてもよい。
この実施態様の導光部材は、サイドミラーに一体化された方向指示灯等に適している。
【0035】
なお、上述の実施態様のうち、湾曲板形状は、車載照明装置の外形に沿って湾曲していることが好ましく、複数本の溝は凹面の側、すなわち、車載された時に内側になる部分、に形成されていることが好ましい。複数本の溝を内側にすることにより、溝の傷付き等を防止して、安定して性能を発揮させることができる。
【0036】
本発明の導光部材の材質は、透光性のものであれば特に限定はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、メチルメタクリレート−スチレン系共重合体等の光学部品の材料として一般に使用されている透明性の高い高分子材料やガラス等の無機材料を用いることができる。
また、本発明の導光部材は、必要に応じて有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整剤及び離型剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で含有していてもよい。
【0037】
本発明の導光部材に設けられる溝構造は、その表面形状により、溝構造に垂直な方向への拡散角度が最大で、溝構造に平行な方向への拡散角度が最小である異方性の拡散特性を示す。
拡散角度(溝構造に垂直に光線を入射させたときの出射光の拡散角度(FWHM))の具体的な値に限定はないが、溝構造に垂直な方向への拡散角度は20°〜90°としてもよいし、50°〜70°としてもよいし、65°としてもよい。一方、溝構造に平行な方向への拡散角度は、例えば20°以下とすることができる。
溝構造がこのような拡散角度を与える表面形状を有していると、光の直進化の効果が十分に得られる。
溝構造に対して平行な方向、垂直な方向の拡散角度は、共に、各溝の形状や溝構造の深さ及びピッチ等を適宜変更することによって調整することができ、スペックルパターンを利用して溝構造を形成する場合、これらはレーザー光を拡散させる条件等を適宜変更することによって調整できる。
また、拡散特性は溝構造の全領域において略一定であることが好ましい。
【0038】
ここで、「拡散角度」とは、透過光強度がピーク強度の半分に減衰する角(半値角)の2倍の角度(FWHM:Full Width Half Maximum)をいう(図8参照)。この拡散角度は、例えば、Photon Inc.製のGoniometric Radiometers Real−Time Far−Field Angular Profiles Model LD8900や日本電色工業株式会社製のGC5000L等の変角色差計を用いて、溝構造の法線方向から、溝構造(溝構造を形成した材料)に入射した光の透過光強度の角度分布(透過光の強度の出射角度に対する分布)を測定することによって求めることができる。ここで、溝構造の法線方向とは、図1の16に示す方向を指す。
【0039】
本発明の導光部材の導光面及び/又は出光部には、導光した光を出光部から出射させるための出射機構を設けることができる。
出射機構の具体例としては、白色インクや拡散インク(拡散材を含有する透明インク)等による印刷パターン、熱転写・射出成形によるシボパターン、CO2レーザー等を利用
したレーザーパターン(スパッタリングによる凹のシボパターン)等の光散乱パターンが挙げられる。
出光部における出光分布(輝度分布)を均一にするために、出射機構は、入光部近傍では疎に、入光部から離れるにしたがって密に設けることが好ましい。例えば、入光部から遠ざかる方向に向かってグラデーションを有する光散乱パターンを形成することができる。
光散乱パターンとしては、例えば、反射性あるいは拡散性の材料を積層(印刷)した部分や凹凸形状を形成した部分(以下まとめて「ドット」という。)を、入光部から離れるに従って徐々に面積が広くなるようなグラデーションパターン(印刷の場合は、徐々に濃くなるグラデーションパターンにしてもよい)にしたものや、同一大のドットや凹凸形状を光源から離れるに従ってピッチが狭くなるようにしたグラデーションパターンが挙げられる。この場合のドットや凹凸の形状には円形、四角形などが挙げられ、その大きさは例えば、0.1〜2.0mm程度とすることができる。
【0040】
次に、本発明の車載照明装置について説明する。
本発明の車載照明装置は、本発明の導光部材と、導光部材の入光部の近傍に配置された光源とを有する。
図9、13に本発明の車載照明装置の一例の概略図を示す。
図9の車載照明装置9は制動灯と方向指示灯を兼ねる後方照明であり、導光部材91として、出光部(面)911とこれに対向する導光面(図示せず)とを主面とする湾曲板形状(出光部側を凸とする)を有し、入光部912が、出光部と導光面との間に挟まれた側面に位置するものを用い、光源として、複数の点光源92a〜eを用いている。点光源92a〜cは赤色、92d〜eは黄色に発光し、それぞれ、独立して駆動・制御され制動灯、方向指示灯として機能する。なお、前記赤色または黄色の点光源にかえて、白色光源と赤色または黄色のカラーフィルターを組合せたものでもよい。
図13の車載照明装置13は、導光部材131が平板形状である場合の例である(その他はすべて車載照明装置9と同様である)。
【0041】
本発明の車載照明装置に使用する光源に限定はないが、点光源であることが好ましく、LED(発光ダイオード)であることが好ましい。LEDは低消費電力で高輝度の光が得られ、温度が低い場合でも明るく発光するので、点灯直後から十分な照度を有する車載照明装置を提供することができる。LEDの種類に限定はなく、例えば、青色LEDにより緑色、赤色蛍光体を励起するワンチップタイプの擬似白色LED、赤色/緑色/青色LEDを組み合わせて白色光を作るマルチチップタイプ、更には近紫外LEDと赤色/緑色/青色蛍光体を組み合わせたワンチップタイプの擬似白色LED等の白色LEDや、赤色LED、黄色LED等が挙げられ、用途に応じて適宜選択することができる。
図10に本発明で使用できる箱型のLED10の一例の概略図を示す。なお、LEDの外形や発光面のサイズに限定はないが、外形が5.6mm(幅)×3.0mm(高さ)×1.0mm(厚み)程度で、発光面101の横幅102が5mm以下のものが一般的に使用されている。
【0042】
光源の発光面と導光部材の入光部の距離は、0.1mm以上1.5mm以下であることが好ましい。より好ましくは0.3mm以上1.0mm以下である。導光部材と発光面の距離を離すと、導光部材に入射する光の量は、逆2乗の法則により減少し、結果的に出光部からでる光の総量も減少してしまう。従って、光源の発光面と本発明の導光部材の入光部の距離は近いことが好ましい。一方、光源の周辺では熱が発生し、導光部材が膨張するため、膨張に耐えうる隙間を残しておく必要がある。
【0043】
光源が複数の点光源である場合、その配置方法に限定はないが、導光部材の入光部に沿って一直線上に配置することが好ましく、後述する各グループ内では等間隔(「等間隔」には±10%の誤差を含むものとする)に配置することが好ましい。この場合、点光源の配列ピッチPは、例えば、点光源の幅(外形)〜200mm程度にすることができる。輝度ムラ防止の観点からは、点光源はなるべく密に配置されている方がよく、基板上への実装制約や製造コストの観点ではある程度距離が開いている方が良い。点光源の配列ピッチは、好ましくは6mm〜200mm、より好ましくは10〜100mmである。
【0044】
また、本発明の車載照明装置は、導光部材として、入光部から入射した光を、出光部の全領域に広がることなく、出光部上の所望のエリアからのみ出光させることのできる本発明の導光部材を使用しているので、入光部近傍に複数の点光源を配置すると共に、これらの複数の点光源を2つ以上のグループに区画し、各点光源の色をグループ毎に異なるようにしたり、各点光源の点滅や明るさをグループ毎に独立して駆動(制御)できるようにして、1つの照明装置で2種類以上の用途を兼ねるようにしてもよい。
兼用できる用途の組合せとしては、例えば、制動灯と方向指示灯、後方車幅灯と方向指示灯、前方車幅灯と方向指示灯等が挙げられるがこれに限定されない。
【0045】
本発明の車載照明装置においては、導光部材及び光源に加え、拡散シートや反射シート等の、所謂エッジライト方式の照明装置において一般に採用される光学要素をさらに含むことができる。具体的には、拡散シートを導光部材の出光部上方に配置したり、反射シートを導光部材の導光面下方に配置することができる。さらに、導光部材の出光部上方には、拡散シート以外にも、プリズムシートや、レンチキュラーレンズシート、マイクロレンズシートなどの集光シートや、液晶パネルの偏光板での光学損失を回避するための偏光反射シートなどを一枚又は複数枚組み合せて配置することもできる。
【実施例】
【0046】
[比較例(従来品)]
LEDが10.5mmの配列ピッチで配置されている市販のLEDテレビ(ソニー株式会社製 BRAVIA KDL−32EX700)から、面光源装置を取り出し、LEDのうち中心部に配置された9個のみ点灯させて、出光部の輝度を測定した。
なお、この比較例の面光源装置に含まれる導光部材は、図1に示した導光部材と同様の形状、すなわち、平板状(直方体)であって、その主面の一方が出光部、他方が導光面、両主面に挟まれた側面が入光部である形状、を有していた。
[実施例]
比較例の面光源装置において、導光部材の出光部に本発明の溝構造を形成した平均厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを、透明両面接着シート(日東電工株式会社製CS9621T)を用いて貼り付け、中心部に配置された9個のLEDのみ点灯させて、出光部の輝度を測定した。なお、溝構造は図4Aに示したスペックルパターン露光により製造したものであり、平均ピッチは約6μm、平均深さは約4μmである。
【0047】
比較例及び実施例の導光部材の出光部の輝度分布を、それぞれ、図14及び図15に示す。また、図16に、図14、15の点線部分における輝度分布を示す。図16において、縦軸は図14、15の点線部分における輝度、横軸は点線上の測定位置である。
従来の導光部材を使用した比較例においては、LEDからの光が左右に広がっていたが(図14、16)、本発明の導光部材を使用した実施例においては、LEDからの光はまっすぐに直進していた(図15、16)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の導光部材は、光源からの光を非常に高い直進性をもって導光できるので、発光エリアを厳密に制御することが求められる各種照明装置、例えば、車両用信号灯、例えば、メーターパネル等を照明する表示灯(例:白色);制動灯(例:赤色);後方又は前方車幅灯(例:赤色、白色);方向指示灯(例:黄色)等の車載照明装置に好適に使用できる。
特に、本発明の導光部材は、入光部から入射した光を出光部上の所望のエリアのみから出光させることができるので、制動灯と向指示灯、後方車幅灯と方向指示灯、前方車幅灯と方向指示灯等といった組合せで、1台で複数の用途を兼ねる照明装置にとりわけ好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 導光部材
11 出光部
12 入光部
13 溝
15 入光部の出光部と接する辺
16 出光部の法線方向
33 溝
41 入光部
51 ダイ
52 樹脂又は樹脂組成物
53 構造に対応する凹凸パターンを有するローラー
61 透明基板
62 転写ローラー
7a 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
7b 溝構造が形成された層を有する多層フィルム
71 剥離フィルム
72 粘着層
73 ベースフィルム
74 溝構造が形成された層
75 粘着層
76 台紙フィルム
9 車載照明装置
91 導光部材
911 出光部
912 入光部
92 点光源
10 LED
101 発光面
102 発光面の横幅
11a 導光面
11b 導光面
11c 入光部
11d 出光部
12a 溝
12b 入光部
131 導光部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入光部と、該入光部から入射した光を導光する導光面と、該導光面により導光された光を外部に出光する出光部とを有する導光部材であって
前記出光部及び導光面の少なくとも一方が、互いに略平行な複数本の溝を有する、導光部材。
【請求項2】
前記複数本の溝の断面形状、ピッチ及び深さのうち少なくとも1つが不規則に異なる、請求項1に記載の導光部材。
【請求項3】
前記複数本の溝の平均ピッチが20μm以下である、請求項1又は2に記載の導光部材。
【請求項4】
前記複数本の溝の平均深さが1〜50μmである、請求項1〜3いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項5】
前記複数本の溝が、スペックルパターン露光により形成されたものである、請求項1〜4いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項6】
前記導光面が、前記複数本の溝を有する、請求項1〜5いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項7】
互いに対向する2枚の主面を有し、その一方の側を凸とする湾曲板形状を有し、
前記複数本の溝が、前記2枚の主面うち凹面側の面にのみ設けられている、
請求項1〜6いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項8】
前記複数本の溝の方向が入光部に対して垂直でない、請求項1〜7いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の導光部材と、
該導光板の前記入光部の近傍に配置された少なくとも1つの光源と、
を有する車載照明装置。
【請求項10】
前記光源を複数有する、請求項9に記載の車載照明装置。
【請求項11】
前記複数の光源が2つ以上のグループに区画され、各光源がグループ毎に独立して制御可能である、請求項10に記載の車載照明装置。
【請求項12】
前記複数の光源が2つ以上のグループに区画され、各光源の色がグループ毎に異なる、請求項10又は11に記載の車載照明装置。
【請求項13】
前記各光源の色が、少なくとも黄色と赤色を含む、請求項12に記載の車載照明装置。
【請求項14】
前記各光源の色が、少なくとも黄色と白色を含む、請求項12に記載の車載照明装置。
【請求項15】
前記光源が発光ダイオード(LED)である、請求項9〜14いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項16】
表示灯である、請求項9〜15いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項17】
赤色に発光する制動灯と黄色に点滅する方向指示灯を兼ねる照明である、請求項9〜15いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項18】
赤色に発光する後方車幅灯と黄色に点滅する方向指示灯を兼ねる照明である、請求項9〜15いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項19】
白色に発光する前方車幅灯と黄色に点滅する方向指示灯を兼ねる照明である、請求項9〜15いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項1】
入光部と、該入光部から入射した光を導光する導光面と、該導光面により導光された光を外部に出光する出光部とを有する導光部材であって
前記出光部及び導光面の少なくとも一方が、互いに略平行な複数本の溝を有する、導光部材。
【請求項2】
前記複数本の溝の断面形状、ピッチ及び深さのうち少なくとも1つが不規則に異なる、請求項1に記載の導光部材。
【請求項3】
前記複数本の溝の平均ピッチが20μm以下である、請求項1又は2に記載の導光部材。
【請求項4】
前記複数本の溝の平均深さが1〜50μmである、請求項1〜3いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項5】
前記複数本の溝が、スペックルパターン露光により形成されたものである、請求項1〜4いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項6】
前記導光面が、前記複数本の溝を有する、請求項1〜5いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項7】
互いに対向する2枚の主面を有し、その一方の側を凸とする湾曲板形状を有し、
前記複数本の溝が、前記2枚の主面うち凹面側の面にのみ設けられている、
請求項1〜6いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項8】
前記複数本の溝の方向が入光部に対して垂直でない、請求項1〜7いずれか1項に記載の導光部材。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項に記載の導光部材と、
該導光板の前記入光部の近傍に配置された少なくとも1つの光源と、
を有する車載照明装置。
【請求項10】
前記光源を複数有する、請求項9に記載の車載照明装置。
【請求項11】
前記複数の光源が2つ以上のグループに区画され、各光源がグループ毎に独立して制御可能である、請求項10に記載の車載照明装置。
【請求項12】
前記複数の光源が2つ以上のグループに区画され、各光源の色がグループ毎に異なる、請求項10又は11に記載の車載照明装置。
【請求項13】
前記各光源の色が、少なくとも黄色と赤色を含む、請求項12に記載の車載照明装置。
【請求項14】
前記各光源の色が、少なくとも黄色と白色を含む、請求項12に記載の車載照明装置。
【請求項15】
前記光源が発光ダイオード(LED)である、請求項9〜14いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項16】
表示灯である、請求項9〜15いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項17】
赤色に発光する制動灯と黄色に点滅する方向指示灯を兼ねる照明である、請求項9〜15いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項18】
赤色に発光する後方車幅灯と黄色に点滅する方向指示灯を兼ねる照明である、請求項9〜15いずれか1項に記載の車載照明装置。
【請求項19】
白色に発光する前方車幅灯と黄色に点滅する方向指示灯を兼ねる照明である、請求項9〜15いずれか1項に記載の車載照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−89467(P2012−89467A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21892(P2011−21892)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【Fターム(参考)】
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