説明

車載用マルチメディアシステムおよび車載用マルチメディアシステムの機能を起動するための方法

本発明は、オーディオユニット、ルートガイダンス用のナビゲーションユニット、前記ユニットを制御するためのコントローラデバイス、階層的構造のメニュー項目および終了メニュー項目を持つ選択メニューを表示するためのディスプレイであって、前記終了メニュー項目は特定の機能の開始を可能にするディスプレイ、少なくとも押しボタンスイッチ、好ましくはハードキー、選択するための2方向スイッチ、好ましくは回転つまみ、メニュー項目および終了メニュー項目を起動するための押しボタンスイッチを備える選択キーユニットを備える、車載用マルチメディアシステムに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーディオユニットと、ルートガイダンス用のナビゲーションユニットと、前記ユニットを制御するためのコントローラデバイスと、階層的構造のメニュー項目および終了メニュー項目を持つ選択メニューを表示するためのディスプレイであって、前記終了メニュー項目は特定の機能の開始を可能にするディスプレイと、少なくとも押しボタンスイッチ、好ましくはハードキーと、選択するための2方向スイッチ、好ましくは回転つまみと、メニュー項目および終了メニュー項目を起動するための押しボタンスイッチとを備える選択キーユニットとを備える、車載用マルチメディアシステムに関する。本発明は、そのような車載用マルチメディアシステムの機能を起動するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
そのような車載用マルチメディアシステムが知られている。本発明の出願人は、例えば、商標「Becker」の名で、異なるタイプの車載用マルチメディアシステムを複数提供している。これらすべてのシステムには、自動車のダッシュボード内の標準取り付けスロットに収まるように設計されているという共通点がある。これらの空間要件のために、車載用マルチメディアシステムのフロントパネルの寸法は限られる。したがって、車載用マルチメディアシステムのフロントパネルは、ハードキーおよびソフトキーのような最小数の選択キー、1つまたは2つの回転式押しボタンスイッチ、ならびに、情報および選択メニューを表示するためのディスプレイを持っている。ハードキーは所定の機能を割り当てられており、一方、ソフトキーは選択される可変機能を割り当てられている。
【0003】
車載用マルチメディアシステムは、ラジオまたはCDのようなオーディオ機能、ルートガイダンスのようなナビゲーション機能、もしくは、電話、Eメール、SMSまたはWAPのような電気通信機能を含む複数の異なる機能を提供するため、階層的構造のメニューシステムが提供され、いくつかのハードキー、ソフトキーおよび/または回転式押しボタンスイッチを使用することにより、これらの機能を選択することが可能となる。
【0004】
一般に知られているように、階層的構造のメニューシステムは、メインメニューレベルにルートメニュー項目を、1つ以上のサブメニューレベルに複数のメニュー項目を含む。本発明の文脈では、最下のサブメニューレベルを終了メニュー項目と称する。
【0005】
車載用マルチメディアシステムのディスプレイは、回転式押しボタンを回転させることで選択され、それを押下することで起動されることができるメニュー項目を表示する役割を果たす。
【0006】
現在の車載用マルチメディアシステムによって提供される機能の数が増加したことにより、メニュー項目の数もサブメニューレベルの数も急速に増加し、その結果、車載用マルチメディアシステムのユーザは望ましいメニュー項目に到達するために多数のサブメニューレベルを通過しなくてはならない。よって、この選択には単にハードまたはソフトキーを押すよりも時間がかかり、その結果、ユーザの注意はトラフィックよりも「比較的長時間」車載用マルチメディアシステムに集中する。これは、危険な状況につながる場合がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記を考慮して、本発明の目的は、ユーザが自身の注意を車載用マルチメディアシステムに集中させる時間を最小化するために、より速い手法で機能を選択および起動することを可能にする上記種類の車載用マルチメディアシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、前記スイッチ、好ましくは前記ハードキーの起動を受けて終了メニュー項目を選択するように構成される識別デバイスであって、前記終了メニュー項目は、所定の基準に基づいて前記識別デバイスによって選択される、識別デバイスを備える、上記種類の車載用マルチメディアシステムによって解決される。
【0009】
換言すれば、識別デバイスは、選択プロセス、すなわち終了メニュー項目の選択を、スイッチのワンタッチに短縮する。よって、ルートメニュー項目と終了メニュー項目との間にあるサブレベルおよびメニュー項目はすべて省略される。識別デバイスは、ユーザがあらかじめ設定できる、またはシステムによってあらかじめ設定される所定の基準に基づいて、終了メニュー項目を選択する。
【0010】
ユーザは、回転式押しボタンスイッチを押下してこの終了メニュー項目を起動することにより、識別デバイスの選択を確認するだけでよい。
【0011】
識別デバイスは、(終了メニュー項目に割り当てられた)特定の機能の選択および起動に必要な時間を短縮し、よってユーザの注意が車載用マルチメディアシステムの操作に集中する時間を最小限に保持するのを可能にすることが明らかである。
【0012】
好適な実施形態において、前記識別デバイスは、前記終了メニュー項目の選択および起動の両方を行うように構成される。
【0013】
換言すれば、ユーザは、回転式押しボタンスイッチを押下することによる選択された終了メニュー項目の起動から解放される。代わりに、識別デバイスがこのタスクを遂行し、選択された終了メニュー項目の起動も行う。
【0014】
この方策は、機能を選択および起動するための時間が、また、それとともにユーザのトラフィックからの注意散漫がさらに削減されるという利点を有する。
【0015】
さらに好適な実施形態において、前記基準は、前記スイッチ、好ましくは前記ハードキーに割り当てられた終了メニュー項目の前回の選択の数である。好ましくは、前記識別デバイスは、前回の選択の数が最大である前記終了メニュー項目を選択するように構成される。
【0016】
換言すれば、識別デバイスは、以前ユーザが最も頻繁に使用したそれらの終了メニュー項目を選択する。このようにして、識別デバイスは、ハードキーによって選択および起動される共通ルートメニュー項目に属する終了メニュー項目から、お気に入りを判断する。
【0017】
これらの方策は、人間工学の向上をもたらし、ユーザに普段の行動を考慮させる。本発明の発明者等は、複数の選択可能な機能があるにもかかわらず、概して車載用マルチメディアシステムのユーザが実際にはほんのわずかな機能しか使用しないことを見出した。
【0018】
好適な実施形態において、それぞれ終了メニュー項目に割り当てられたデータパケットを格納するためのデータメモリが提供され、各データパケットは前記割り当てられた終了メニュー項目の選択の数を伝える。好ましくは、各データパケットは、前記割り当てられた終了メニュー項目の最終使用日をさらに伝える。最も好ましくは、前記データメモリは、各割り当てられた終了メニュー項目のために少なくとも2つのデータパケットを格納する。
【0019】
これらの方策は、お気に入りの終了メニュー項目のリストの構築を可能にするデータ構造を実装する。これらの終了メニュー項目リストは、識別デバイスによって管理され、システム全体の人間工学をさらに向上させる役割を果たす。特に、そのようなリストの実装および保守は、ユーザの要求に対するよりよい対応を可能にする。
【0020】
好適な実施形態において、前記識別デバイスは、回転式押しボタンを使用することにより、階層的構造によるメニュー項目の選択を可能にする(却下モード)ように構成される。好ましくは、前記却下モードは、前記ハードキーのダブル起動によって起動される。
【0021】
換言すれば、ユーザは、メニュー階層を通過することによって終了メニュー項目の通常の選択および起動が可能なように、識別デバイスの「スイッチを切る」ことができる。この却下モードはハードキーを2回押下することによって選択できるため、ユーザは、このモードを選択するために車載用マルチメディアシステムのフロントパネル上で別のハードまたはソフトキーを探すことによって気がそれることがない。
【0022】
好適な実施形態において、前記コントローラデバイスは、前記選択キーユニットを介した所定の入力を受けて、前記終了メニュー項目の少なくとも1つに割り当てられた前記データパケットを削除するように構成される。
【0023】
換言すれば、ユーザは、お気に入りリストの少なくとも1つの要素を削除することができる。この方策は、当該システムはさらにユーザ要求に適合することができるという利点を有する。
【0024】
さらに好適な実施形態において、前記制御デバイスは、前記選択キーユニットを介して、所定の基準リストの中からの基準の選択を可能にするように構成される。
【0025】
換言すれば、ユーザは、識別デバイスが終了メニュー項目を選択するための基礎となる基準を判断することが可能である。既に述べたように、好適な基準は終了メニュー項目の使用頻度である。しかしながら、その他の基準も考えられる。
【0026】
この方策は、当該システムをユーザ要求および需要にさらに適合させることを可能にする。
【0027】
好適な実施形態において、Eメール、SMS伝送、WAP、およびその他の電気通信サービスを可能にする電話モジュールおよびインターネットモジュールを備える電気通信ユニットが提供される。さらに、当該オーディオユニットは、無線モジュールとCDモジュールとを備える。
【0028】
本発明は、特に、車載用マルチメディアシステムが複数の異なる機能を提供する場合に有用である。
【0029】
既に述べたように、メニュー項目の選択および起動は、前記回転式押しボタンスイッチによって行われる。しかしながら、当業者には、回転式押しボタンスイッチは、両方を統合した単一ユニットではなく、2つの単一ユニット、すなわち回転つまみと押しボタンスイッチとして提供され得ることが明らかである。さらに、回転式スイッチは、2方向スイッチまたは4方向スイッチで代替してもよい。
【0030】
好適な実施形態において、前記ハードキーは、前記ナビゲーションユニットを起動するために提供される。
【0031】
ナビゲーションユニットが、それぞれ複数のメニュー項目を持つ複数の機能を提供するという事実により、本発明は特に有用となる。
【0032】
しかしながら、オーディオユニット、電気通信ユニット等、その他のユニットを起動させるために、さらなるハードキーが提供され得ることが明らかである。各ハードキーは、メニュー項目および終了メニュー項目によって階層的構造のメニューを割り当てられる。各階層的構造のメニューに関して、各ハードキーの起動を受けて、識別デバイスにより少なくとも1つのお気に入り終了メニュー項目が格納され、選択される。
【0033】
本発明の目的は、前記車載用マルチメディアシステムの機能を起動するための方法であって、前記ハードキーの起動を受けて終了メニュー項目を選択するステップを含み、前記終了メニュー項目は所定の基準に基づいて選択される方法によっても解決される。
【0034】
この方法は、上述のような発明の車載用マルチメディアシステムと同様の利点を実現するため、該当する説明を参照されたい。
【0035】
好適な実施形態において、前記終了メニュー項目は、前記ハードキーの前記起動を受けて、選択および起動の両方を行われる。
【0036】
好ましくは、前記基準は、前記ハードキーに割り当てられた前記終了メニュー項目の前回の選択の数である。
【0037】
選択の数が最大である前記終了メニュー項目が選択されることも好ましい。好ましくは、終了メニュー項目の各選択により、前記終了メニュー項目に割り当てられたカウンタ値は1ずつ増加する。さらに、実際の使用日は、終了メニュー項目の各選択により、前記終了メニュー項目に格納される。
【0038】
好ましくは、階層的構造に従ったメニュー項目の選択および起動は、前記選択ユニットの所定の動作、好ましくは前記ハードキーのダブル起動を受けて可能になる(却下モード)。
【0039】
好ましくは、前記カウンタ値は、前記選択キーユニットを介して、単独あるいは共同で削除され得る。
【0040】
上記において、前記識別デバイスは前記ハードキーの起動を受けて終了メニュー項目を選択することを説明した。しかしながら、識別デバイスは、車載用マルチメディアシステムのソフトキーまたはその他任意のスイッチの起動を受けて終了メニュー項目を選択するように構成されてもよいことを理解すべきである。
【0041】
以下の記述および添付の図面から、さらなる特徴および利点が得られる。
【0042】
上述した特徴および以下で説明する特徴は、示されている各組み合わせにおいてのみではなく、その他の組み合わせにおいて、または単独でも、本発明の範囲を逸脱することなく使用され得ることを理解すべきである。
【0043】
本発明の実施形態を図面に示し、以下の記述において、図面を参照しさらに詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
図1では、車載用マルチメディアシステム10のフロントパネル12は概略的に示されている。車載用マルチメディアシステム10は、車両のダッシュボード内の標準取り付けスロットに収まるデバイスとして設計される。ダッシュボード内に配置されているデバイスに加えて、車両内、例えばグローブボックスに、さらなるデバイスが置かれる。この第2のデバイスは、ナビゲーションおよび電気通信サービスを提供する、いわゆるGSM/GPSボックスである。GSM/GPSボックスは、ダッシュボード内のデバイスと電気的に接続される(いずれのデバイスも、車載用マルチメディアシステム10を定義付けるものである)。
【0045】
いずれのデバイスも、イヤホン、GSMアンテナ、GPSアンテナ、ハンズフリーマイクロフォン、ラジオアンテナ、ラウドスピーカ等のような、必要なハードウェアへの接続を可能にする複数のコネクタを有する。簡単にするため、これらの部分は図1に示していない。
【0046】
車載用マルチメディアシステムは、複数の異なる機能およびサービス、例えば、ラジオ、ナビゲーション、電話、Eメール、SMS等を提供する。これらすべての機能およびサービスは、フロントパネル12を介して、車載用マルチメディアシステム10のユーザによって選択されることができる。
【0047】
フロントパネル12は、第1の回転式押しボタンスイッチ14を備える。この回転式押しボタン14を回転させることによって音量の制御を可能にし、回転式押しボタンスイッチ14を押下することによって車載用マルチメディアシステム10のスイッチを入れたり切ったりすることを可能にする。回転式押しボタンスイッチ14は、フロントパネル12の左手側に置かれる。右手側には、回転させることによってメニュー項目を選択し、回転式押しボタンスイッチ16を押下することによってそれを起動できる、第2の回転式押しボタン16が提供される。
【0048】
押しボタンスイッチの形態のさらなる選択キーがフロントパネルの上部領域に設けられる。これらの選択キーのうち3つは、参照番号18a、18b、および18cで参照される。選択キー18は、車載用マルチメディアシステム10の所定の機能、この場合は、選択キー18aでCD機能を、選択キー18bでラジオ機能を、選択キー18cでナビゲーション機能を選択する役割を果たす。概して、1つの特定の機能を選択するために提供されるそのような選択キーは、「ハードキー」と称される。
【0049】
これらのハードキーに加えて、フロントパネル12はいわゆるソフトキー20も持っている。これらのソフトキーは、車載用マルチメディアシステムが操作されるモードに応じて、可変機能を選択する役割を果たす。本実施形態においては、フロントパネル12の下部余白領域に10個のソフトキーが設けられる。
【0050】
フロントパネル12の中央に、ディスプレイ22が配置される。本実施形態において、ディスプレイ22はドットマトリクスディスプレイであり、いくつかの情報のラインを、キャラクタ、語または写真、アイコンまたは絵文字の形態で表示することを可能にする。
【0051】
図1において、ディスプレイ22は、3つの異なるメニュー項目24a、24bおよび24cの形態で3ラインの情報を表示する。中央のライン24bに示されるメニュー項目は、第1および第3のライン24a、24cと比較して大きなフォントで表示される。大きなフォントは、ライン24bのメニュー項目が選択されていることを示す。
【0052】
さらに、ディスプレイ22は2つの矢印26a、26bを表示し、上矢印26aは上方向に向き、下矢印26bは下方向に向いている。いずれの矢印も、表示されているより多くのメニュー項目に到達可能であることを示す。
【0053】
ユーザは、中央のライン24bに望ましいメニュー項目が表示されるまで回転式押しボタン16を回転させることにより、メニュー項目を選択することができる。この選択したメニュー項目を起動させるために、その後ユーザは回転式押しボタン16を押下しなくてはならない。選択および起動されたメニュー項目に応じて、さらなるメニュー項目が表示されるか、望ましい機能が開始されるかのいずれかである。
【0054】
階層的構造のメニューの使用法は既知であるが、本発明をより深く理解するために、例となるメニューを図2に示し、以下に説明する。特に、図2は、車載用マルチメディアシステム10の一部であるナビゲーションシステムを操作するための階層的構造のメニューの一部を示すものである。
【0055】
概して、メニューは、第1のサブメニューレベルに複数のメニュー項目32を、第2のサブメニューレベルに複数のメニュー項目34を含む。図示されているすべてのメニュー項目32、34は、メインメニューレベルのうち1つのメインメニュー項目36(ルートメニュー項目)に属する。
【0056】
本実施形態において、第1のサブメニューレベルは、車載用マルチメディアシステム10のナビゲーションシステムのメニューに属するメニュー項目「宛先エントリ」、「宛先メモリ」および「最終宛先」を含む。メインメニュー項目36を選択し起動させることによって、第1のサブメニューレベル、すなわちメニュー項目32に到達する。これは、例えばハードキー18cを押下することによって実現される。
【0057】
第2のサブメニューレベルのメニュー項目34は、第1のサブメニューレベルの特定のメニュー項目、本実施形態では、メニュー項目「宛先メモリ」に属する。第2のサブメニューレベルのメニュー項目34に到達するためには、回転式押しボタンスイッチ16を介して、第1のサブメニューレベルのメニュー項目「宛先メモリ」が選択および起動されなければならない。
【0058】
簡単にするため、第1のサブメニューレベルのメニュー項目「宛先メモリ」および「最終宛先」に属する第2のサブメニューレベルのその他のメニュー項目は示していない。
【0059】
図2から明らかなように、第2のサブメニューレベルは最終または最下のメニューレベルを定義し、これは、このサブメニューレベルのメニュー項目34を選択し起動させることによって、さらなるメニュー項目を表示する代わりに機能が開始されることを意味する。したがって、この第2のサブメニューレベルを以後「終了メニュー項目」と称する。
【0060】
示されている実施形態では、終了メニュー項目「Becker」は、名称「Becker」に関連し格納されているアドレスへのルートガイダンスを開始するために、選択および起動される。
【0061】
この階層的構造のメニューはより例示的なものであり、2つを超えるサブメニューレベルにおいてさらなるメニュー項目を提供することによって修正され得ることを理解すべきである。
【0062】
上記の説明から、終了メニュー項目「Becker」を選択し起動させるために、ユーザは、それぞれ回転式押しボタンスイッチ16を操作することによって、まずハードキー18cを押下し、次にメニュー項目「宛先メモリ」を選択し起動させ、最後に終了メニュー項目「Becker」を選択し起動させなければならないことがわかる。少なくともメニュー項目または終了メニュー項目32、34に関しては、ユーザは、ダッシュボード内の車載用マルチメディアシステム10のディスプレイ22に自身の注意を集中させなくてはならない。これは概してユーザの視界が車道からそれることを意味し、回避すべきことである。
【0063】
終了メニュー項目の選択および起動中の注意散漫な時間を最小限にするために、車載用マルチメディアシステム10は、ハードキー18の操作を受けて終了メニュー項目34を自動的に選択する機能を実装した。特に、当該システムは、所定の基準、この場合はメインメニュー項目に属する終了メニュー項目の使用頻度に基づいて終了メニュー項目を選択する。
【0064】
図2に関して、これは、ハードキー18cの操作時、この終了メニュー項目34は過去において最も頻繁に使用されたという推測のもとに、終了メニュー項目「Becker」が選択されることを意味する。その後ユーザは、ルートガイダンス機能を開始するために、回転式押しボタンスイッチ16を押下することにより、選択された終了メニュー項目「Becker」を起動するだけでよい。
【0065】
結果として、2つの処理ステップ、すなわち、第1のサブメニューにおいてメニュー項目を選択し起動させるステップと、第2のサブメニューレベルにおいて終了メニュー項目を選択するステップが省略されるため、操作は簡略化される。従来の操作と本発明による操作との間の相違点は、図2において矢印37および38によって示されている。
【0066】
好適な実施形態において、当該システムは、選択された終了メニュー項目34の自動的な起動も行う。図2に関して、これは、ハードキー18cの操作を受けて、終了メニュー項目「Becker」が自動的に選択および起動されることを意味する。よって、この実施形態によると、ユーザは、たった1回の切り替え動作により、「Becker」に関連するアドレスへのルートガイダンスを開始することができる。
【0067】
基準「使用頻度」は、単に1つの、しかし好ましい選択手法であることを理解すべきである。当業者であれば、その他の基準も考えられることを認識するであろう。本発明は、基準「使用頻度」に限定されるものではない。
【0068】
基準は選択されたルートメニュー項目に応じて可変であることも実装され得る。換言すれば、ルートメニュー項目「ナビゲーション」に属する終了メニュー項目の選択は、例えばルートメニュー項目CDまたはラジオに属する終了メニュー項目の選択とは異なるやり方で実行される。
【0069】
当然ながら、システムは、所定の短時間内に各ハードキー18を2回操作することによって、終了メニュー項目の自動選択を「却下する」ことが可能である。システムは、このダブル操作を認識し、それを受けて、第1のサブメニューレベルのメニュー項目32をディスプレイ22に表示する。その後ユーザは、従来のやり方で望ましいメニュー項目を選択し起動させることができる。
【0070】
図3では、車載用マルチメディアシステムの機能構造がブロック図の形態で示されている。車載用マルチメディアシステム10は、概して少なくともマイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを備える、メインコントローラ50を備える。メインコントローラ50は、主として、すべての周辺ユニットを制御すること、および、ラジオ、CD、ナビゲーション、電話等のような、車載用マルチメディアシステムの機能を提供するために必要なすべての操作を実行することに関与する。
【0071】
当業者には、メインコントローラ50は、実際には、例えばマイクロプロセッサ、グラフィックドライバ回路、クロック発生器等、2〜3の異なる回路を備えることが明らかである。
【0072】
メインコントローラ50は、すべてのプログラムデータ(ファームウェア)を格納する役割を果たすリードオンリーメモリ回路52と連結されている。当然ながら、リードオンリーメモリは、EPROM、EEPROM等のような消去可能かつ書き換え可能なリードオンリーメモリとして提供され得る。消去可能かつ書き換え可能なリードオンリーメモリ回路52は、車載用マルチメディアシステムを操作するファームウェアを更新できるという利点を有する。
【0073】
リードオンリーメモリ回路52に加えてランダムアクセス回路54(RAM)も提供され、メインコントローラ50と連結される。ランダムアクセスメモリは、特に一時データおよびユーザ固有データを格納する役割を果たす。例えば、図2に関して、ランダムアクセスメモリ54はユーザによってプログラムされた宛先を格納する。これらの格納された宛先データはその後、第2のサブメニューレベルのメニュー項目を形成する。
【0074】
メインコントローラ50は、ディスプレイ22と電気的に連結されている。
【0075】
入力を可能にするために、選択キーユニット56が提供され、メインコントローラ50と電気的に連結される。選択キーユニット56は、例えば、ハードキー58、ソフトキー60、および回転式押しボタンスイッチ62等、2〜3の異なる制御要素を備える。当然ながら、必要に応じてその他の制御要素も提供され得ることを理解すべきである。例えば、回転式押しボタンスイッチは、2方向または4方向スイッチおよびさらなる確認スイッチで代替することができる。ハードキーおよびソフトキー58、60は、押しボタンスイッチとして提供される。しかしながら、機械構造の観点では、ハードキー58とソフトキー60との間に相違点はない。
【0076】
メインコントローラ50は、さらなる機能ユニット、すなわち、CDデバイス、ラジオデバイス(チューナ)、増幅器等を備えるオーディオユニット64と接続されている。CDデバイスは参照番号66で参照され、ラジオデバイスは参照番号68で示される。さらなる機能ユニットは、ナビゲーションユニット70および電気通信ユニット72である。ナビゲーションユニットは、例えばDVD‐ROMにナビゲーションデータを受信するためのDVD‐ROMデバイス、GPS受信機、GPSアンテナ等を備える。電気通信ユニット72は、例えばGMSデバイスおよびGMSアンテナを備える。
【0077】
これらのユニット66〜72の構造は本発明の一部ではないため、それらを詳細に説明することは控える。当業者は、これらユニットの設計の仕方を承知している。
【0078】
既に述べたように、本発明は、車載用マルチメディアシステムの、すなわち終了メニュー項目の選択および起動を簡略化することによる、操作改善を提供する。
【0079】
この操作改善を実装するために、識別デバイス80が提供される。識別デバイス80は、メインコントローラ50と電気的に連結され、それと通信を行っている。さらに、識別デバイスは、データの読み出しおよび書き込み操作を可能にするため、ランダムアクセスメモリ回路54に連結される。
【0080】
識別デバイス80は、データ構造を構築および維持し、上述の終了メニュー項目の自動的な選択および起動を実行するために必要な各データを連続的に更新する。特に、識別デバイス80は、例となるべく図4に示されているように、データ構造を構築する。しかしながら、これはデータ構造の一例にすぎず、その他のデータ構造も考えられることに留意すべきである。
【0081】
データは、好ましくはデータリスト82として構造され、各リスト82は少なくとも1つのデータパケット84を含む。各データリスト82は、例えばナビゲーション、電気通信、およびラジオ等のメインメニュー項目に割り当てられる。
【0082】
ナビゲーションに割り当てられたデータリスト82を参照すると、図2で既に使用したように、「Becker」および「WWP−S」という名で2つのデータパケットが示されている。各データパケット84は、異なる値を格納するためにサブパケットに分割される。これらの値は図4にも示されており、サブメニュー項目、選択の数(使用頻度)、および最終使用である。第1の値「サブメニュー項目」は、好ましくは、ランダムアクセスメモリ54に格納されている各データをポイントするポインタである。第2の値「選択の数」はカウンタであり、この終了メニュー項目の前回の使用の数を定義する。換言すれば、この値は各終了メニュー項目の使用頻度を表す。第3の値「最終使用」は、各終了メニュー項目の最終使用日である。
【0083】
本実施形態において、第1のデータパケットは値「Becker」、10、および29/01/2004を有し、これらの値は、終了メニュー項目「Becker」が選択されて10回起動され、この終了メニュー項目の最終使用は2004年1月29日であったことを示す。第2のデータパケットは、値「WWP−S」、5、および13/01/2004を含む。
【0084】
本実施形態において、「ナビゲーション」に割り当てられた第3のデータリスト82のデータパケットは、値「選択の数」に関連して順序付けられる。すなわち、第3のデータパケット「Becker」は、選択の数の値がその他のデータパケットの各値より大きいため、データリスト内の第1の要素を定義する。
【0085】
既に述べたように、識別デバイス80は、データリストおよびデータパケットを維持する役割を果たす。特に、各終了メニュー項目の選択および起動を受けて、選択の数の値を更新する。当該デバイスは、さらに「最終使用」の値を更新する。
【0086】
任意で、識別デバイス80は、データパケットが所定期間使用されていない場合、データリストからデータパケットを削除することができる。当然ながら、ユーザが選択キーユニットを操作することによって、データリスト内の個別のデータパケットまたはすべてのデータパケットを削除できることも考えられる。
【0087】
データ構造の構築および保守に加えて、識別デバイス80は、コントローラ50に、ハードキー18の操作を受けて、各データリスト82内にある第1のデータパケットを形成する終了メニュー項目を選択および起動させる。ハードキーの操作時、メインコントローラ50はそれを識別デバイス80に通知し、終了メニュー項目を選択し任意で起動するべきであるという情報を識別デバイス80から受信する。同様に、識別デバイス80は、この情報をデータリスト82から得る。同時に、識別デバイス80は、選択されたデータパケットの各値を更新する。
【0088】
既に述べたように、ユーザは、ハードキーを2回押下することによって識別デバイス80を却下することができる。この場合、識別デバイス80は、選択される終了メニュー項目についての情報をメインコントローラ50へ伝送しない。代わりに、メインコントローラ50は、次のサブレベルメニューの格納されたメニュー項目を表示する。その場合でも、識別デバイスは、ユーザが手動で選択し起動させた終了メニュー項目に関連するデータパケットの各値を更新する。
【0089】
図3に示すような車載用マルチメディアシステムの機能構造は単なる一例であり、本発明はこれに限定されるべきではないことを理解すべきである。特に、識別デバイス80は、メインコントローラ50の一部であってもよく、ハードおよび/またはソフトウェアとして実装されてもよい。さらに、車載用マルチメディアシステム10は、ナビゲーションユニット、オーディオユニット、電気通信ユニット、またはそれらの考えられる各組み合わせのみを備えてもよい。
【0090】
さらに、当業者は、その他のデータ構造を使用しても本発明を実装し得ることを承知している。
【0091】
当業者であれば、以上の説明から、本発明の広範な教示は様々な形態で実装され得ることを十分に理解できる。したがって、本発明を特定の例に関連して説明したが、図面、明細書および特許請求の範囲を検証すれば当業者にはその他の修正が明らかとなるため、本発明の真の範囲はそのように限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、本発明による車載用マルチメディアシステムのフロントパネルを示す。
【図2】図2は、階層的構造のメニューの例を示す。
【図3】図3は、車載用マルチメディアシステムの概略ブロック図である。
【図4】図4は、車載用マルチメディアシステムによって使用されるデータ構造の例を示すブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーディオユニットと、
ルートガイダンス用のナビゲーションユニットと、
前記ユニットを制御するためのコントローラデバイスと、
階層的構造のメニュー項目および終了メニュー項目を持つ選択メニューを表示するためのディスプレイであって、前記終了メニュー項目は特定の機能の開始を可能にするディスプレイと、少なくとも押しボタンスイッチ、好ましくはハードキーと、選択するための2方向スイッチ、好ましくは回転つまみと、メニュー項目および終了メニュー項目を起動するための押しボタンスイッチとを備える選択キーユニットと、
を備え、
前記押しボタンスイッチ(18)、好ましくは前記ハードキーの起動を受けて終了メニュー項目(34)を選択するように構成される識別デバイス(80)であって、前記終了メニュー項目(34)は、所定の基準に基づいて前記識別デバイス(80)によって選択される、識別デバイス(80)、
を有することを特徴とする、車載用マルチメディアシステム。
【請求項2】
前記識別デバイスは、前記終了メニュー項目の選択および起動の両方を行うように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項3】
前記基準は、前記ハードキーに割り当てられた前記終了メニュー項目の前回の選択の数であることを特徴とする、請求項1または2に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項4】
前記識別デバイス(80)は、前回の選択の数が最大である前記終了メニュー項目を選択するように構成されることを特徴とする、請求項3に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項5】
それぞれ終了メニュー項目に割り当てられたデータパケットを格納するためのデータメモリによって特徴付けられ、各データパケットは前記割り当てられた終了メニュー項目の選択の数を伝える、請求項3または4に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項6】
各データパケットは、前記割り当てられた終了メニュー項目の最終使用日をさらに伝えることを特徴とする、請求項5に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項7】
前記データメモリは、各割り当てられた終了メニュー項目のために少なくとも2つのデータパケットを格納することを特徴とする、請求項5または6に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項8】
前記識別デバイスは、回転式押しボタン(却下モード)を使用することにより、それらの階層的構造によるメニュー項目の選択を可能にするように構成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項9】
前記却下モードは、前記ハードキーのダブル起動によって起動されることを特徴とする、請求項8に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項10】
前記コントローラデバイスは、前記選択キーユニットを介した所定の入力を受けて、前記終了メニュー項目の少なくとも1つに割り当てられたデータパケットを削除するように構成されることを特徴とする、請求項5に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項11】
前記制御デバイスは、前記選択キーユニットを介して、所定の基準リストの中からの基準の選択を可能にするように構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項12】
EメールおよびSMS伝送、WAP、ならびにその他の電気通信サービスを可能にする電話モジュールおよびインターネットモジュールを備える電気通信ユニットによって特徴付けられる、請求項1〜11のいずれか一項に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項13】
前記オーディオユニットは、無線モジュールとCDモジュールとを備えることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項14】
前記回転つまみおよび前記押しボタンスイッチは、回転式押しボタンスイッチとして提供されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項15】
前記ハードキーは、前記ナビゲーションユニットを起動するために提供されることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか一項に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項16】
前記オーディオユニットを起動させるために、さらなるハードキーが提供されることを特徴とする、請求項15に記載の車載用マルチメディアシステム。
【請求項17】
車載用マルチメディアシステムの機能を起動するための方法であって、前記システムは、オーディオユニットと、ルートガイダンス用のナビゲーションユニットと、前記ユニットを制御するためのコントローラデバイスと、階層的構造のメニュー項目および終了メニュー項目を持つ選択メニューを表示するためのディスプレイであって、前記終了メニュー項目は特定の機能の開始を可能にするディスプレイと、少なくともハードキーと、選択のための回転つまみと、メニュー項目を起動するための押しボタンスイッチとを備える選択キーユニットとを備え、前記ハードキーの起動を受けて終了メニュー項目を選択するステップによって特徴付けられ、前記終了メニュー項目は所定の基準に基づいて選択される、車載用マルチメディアシステムの機能を起動するための方法。
【請求項18】
前記終了メニュー項目は、前記ハードキーの前記起動を受けて、選択および起動の両方を行われることを特徴とする、請求項17に記載の前記方法。
【請求項19】
前記基準は、前記ハードキーに割り当てられた前記終了メニュー項目の前回の選択の数であることを特徴とする、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
選択の数が最大である前記終了メニュー項目が選択されることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
終了メニュー項目の各選択により、前記終了メニュー項目に割り当てられたカウンタ値は1ずつ増加することを特徴とする、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
実際の使用日は、終了メニュー項目の各選択により、前記終了メニュー項目に格納されることを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
その階層的構造に従ったメニュー項目の選択および起動は、前記選択キーユニットの所定の動作、好ましくは前記ハードキーのダブル起動を受けて可能になる(却下モード)ことを特徴とする、請求項17から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記カウンタ値は、前記選択キーユニットを介して、単独あるいは共同で削除され得ることを特徴とする、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−535746(P2007−535746A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509980(P2007−509980)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004632
【国際公開番号】WO2005/106394
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(504147933)ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー (165)
【Fターム(参考)】