説明

車載用吸収式ヒートポンプ装置

【課題】システムが運転停止されるときであっても、吸収液の固相化を抑制でき、システムの次回の円滑な駆動を確保できる車載用吸収式ヒートポンプ装置を提供する。
【解決手段】装置は、再生器2内の吸収液を加熱させる車載加熱源3と、気相および液相を分離させて吸収液の濃度を相対的に高める気液分離器4と、吸収液から分離された気相を凝縮させて凝縮液を形成させる凝縮器5と、凝縮液を蒸発させて蒸気を形成する蒸発器6と、蒸気に基づく希釈剤で濃縮吸収液を相対的に希釈化させ、希釈化させた吸収液を再生器2に供給させる吸収器7と、凝縮器5と吸収器7とを連通可能な希釈通路57とを有する。希釈要素58は、凝縮器5の凝縮液を希釈通路57を介して吸収器7に供給させ、吸収器7における吸収液を希釈化させる希釈処理を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濃縮された吸収液を希釈させる吸収器を有する車載用吸収式ヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1はエンジン排熱回収・吸収式冷凍機を開示する。この冷凍機は、吸収液を加熱させるための再生器と、吸収液から分離された気相を凝縮させて凝縮液を形成させる凝縮器と、凝縮器で凝縮された凝縮液を蒸発させて蒸気を形成する蒸発器と、相対的に濃縮された液相状の吸収液と、蒸発器で蒸発された気相とを接触させることにより、吸収液に気相を吸収させて吸収液を相対的に希釈化させる吸収器とを有する。このものによれば、再生器の加熱源としてエンジン冷却水を用いる。
【0003】
特許文献2は、気液分離器を有する吸収式冷凍機を開示する。この冷凍機は、吸収液を加熱させるための再生器と、吸収液から分離された気相を凝縮させて凝縮液を形成させる凝縮器と、凝縮器で凝縮された凝縮液を蒸発させて蒸気を形成する蒸発器と、相対的に濃縮された液相状の吸収液と、蒸発器で蒸発された気相とを接触させることにより、吸収液に気相を吸収させて相対的に希釈化させる吸収器とを有する。この冷凍機によれば、再生器の加熱源としてエンジン排熱やエンジン冷却水を利用し、上記熱量不足時には再生器の出口側に配置した電気ヒータを加熱源として運転させる技術を開示する。
【0004】
特許文献3はヒートポンプ装置の吸収器に適用できる粘性物質希釈装置を開示する。この装置は、水蒸気を回転体により飛散させることにより、粘性物質として機能する吸収液に水蒸気を積極的に吸収させて希釈化させる装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-119742号公報
【特許文献2】特開昭63-302267号公報
【特許文献3】特開2011-033236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1〜3に係る技術によれば、システムが運転停止されるとき、吸収液の温度が低下するため、吸収液が結晶化して固相化されるおそれがある。このように吸収液が固相化すると、システムの次回の円滑な駆動に影響を与えるおそれがある。本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、システムが運転停止されるときであっても、吸収液の固相化を抑制でき、システムの次回の円滑な駆動を確保できる車載用吸収式ヒートポンプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の様相1に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置は、(i)固相化が進行可能な吸収液を加熱させるための再生器と、(ii)再生器内の吸収液を加熱させる車載加熱源と、(iii)車載加熱源により再生器において加熱された吸収液から、気相および液相を分離させて吸収液の濃度を相対的に高める気液分離器と、(iv)吸収液から分離された気相を凝縮させて液相状の凝縮液を形成させる凝縮器と、(v)凝縮器で凝縮された凝縮液を蒸発させて気相状の蒸気を形成する蒸発器と、(vi)気液分離器における気相の分離により相対的に濃縮された液相状の吸収液と、蒸発器で蒸発された気相状の蒸気に基づく希釈剤とを接触させることにより、吸収液に希釈剤を吸収させて相対的に希釈化させ、希釈化させた吸収液を再生器に供給させる吸収器と、(vii)再生器、気液分離器、吸収器を繋ぐ循環通路において吸収液を循環させる吸収液循環源と、(viii)凝縮器と吸収器とを連通可能な希釈通路と、(ix)希釈通路に設けられ、吸収液の少なくとも一部が固化するおそれがあるとき、凝縮器内の液相状の凝縮液を希釈通路を介して吸収器に供給させ、吸収器における吸収液を希釈化させる希釈処理を実施する希釈要素とを具備する。
【0008】
本様相によれば、吸収液循環源は、再生器、気液分離器、吸収器を繋ぐ循環通路において、吸収液を循環させる。吸収液循環源は、吸収液を搬送できるものであれば良く、ポンプ等のアクチュエータを例示できる。アクチュエータの構造、種類は特に限定されない。再生器内の吸収液は車載加熱源により加熱されて気液混合状態となる。車載加熱源は、好ましくは、車載エンジンから排出される排気ガスを流す排気管、エンジン冷却液が流れる冷却液通路、車載モータ、車載モータを制御する車載インバータ、電気エネルギを貯蔵する車載蓄電池のうちの少なくとも1種である。これらの車載加熱源からの放熱を有効利用して再生器の吸収液を加熱させて気液混合状態とすることができる。
【0009】
気液混合状態の吸収液は再生器から気液分離器に流れる。気液分離器は、吸収液の気相および液相を分離させ、吸収液の濃度を相対的に高める。これにより液相状の吸収液は相対的に濃縮される。相対的に濃縮された液相状の吸収液は、吸収器に流れる。これに対して、気液分離器において液相状の吸収液から分離された気相状の蒸気は、気液分離器から凝縮器に流れ、凝縮器おいて凝縮されて凝縮潜熱を発生させつつ液相状の凝縮液を形成させる。凝縮器で凝縮された凝縮液は、凝縮器から蒸発器に流れ、蒸発器において蒸発されて気相状の蒸気を形成する。蒸気に基づく希釈剤は吸収器に流れる。希釈剤としては、気相状の蒸気、場合によっては、気相状の蒸気が液化した液相とすることができる。
【0010】
そして、吸収器に流れた濃縮された液相状の吸収液と、蒸発器から吸収器に流れた蒸気に基づく希釈剤とが、吸収器において接触する。このように濃縮された吸収液に希釈剤を吸収させ、吸収器において吸収液を相対的に希釈化させる。希釈化された吸収液は吸収器から再生器に流れ、再生器において車載加熱源により再び加熱されて気液混合状態となり、気液分離器に流れ、気液分離される。吸収式ヒートポンプ装置が駆動している限り、上記したように吸収液は再生器、気液分離器、吸収器を繋ぐ循環通路を循環する。
【0011】
さて、吸収液の少なくとも一部が固化するおそれがあるとき、流路の詰まりを誘発させるおそれがある。そこで本様相によれば、凝縮器と吸収器とを連通可能な希釈通路が設けられている。更に、凝縮器内の液相状の凝縮液を希釈通路を介して吸収器に供給させ、吸収器における吸収液を希釈化させる希釈処理を実施する希釈要素が設けられている。このように吸収液の少なくとも一部が固化するおそれがあるとき、凝縮器内の液相状の凝縮液(例えば凝縮水)を、希釈通路を介して吸収器に供給させ、吸収液を希釈化させる。これにより吸収液の固相化が抑制され、流路の詰まり等が未然に防止される。凝縮液は、吸収液にもともと含有されていた成分であるため、吸収液に悪影響を与えない。
【0012】
『吸収液の少なくとも一部が固化するおそれがあるとき』とは、車両駆動源の起動スイッチがオフとされるとき、あるいは、ヒートポンプ装置の運転スイッチがオフとされるとき、あるいは、ヒートポンプ装置が設置されている雰囲気温度が過剰に低温化されるとき、あるいは、外気温度が過剰に低温化されるとき、あるいは、ヒータポンプ装置が空調装置に適用されている場合には、空調負荷のスイッチがオフとされたとき等が例示される。これらの場合には、吸収液の温度は次第に低下するため、吸収液の結晶化が進行し、吸収液の少なくとも一部が固相化するおそれがある。
【0013】
(2)本発明の様相2に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置によれば、上記様相において、希釈要素は、開放されると凝縮器と吸収器との差圧に基づいて凝縮器の液相状の凝縮液を吸収器に供給させる第1開閉弁、または、凝縮器の液相状の凝縮液を吸収器に供給させるポンプである。第1開放弁が開放すれば、凝縮器と吸収器との差圧に基づいて、凝縮器の液相状の凝縮液(例えば凝縮水)は、吸収器に供給されて濃縮吸収液を希釈化させる。また、ポンプが駆動すれば、凝縮器の液相状の凝縮液は吸収器に供給されて濃縮吸収液を希釈化させる。
【0014】
(3)本発明の様相3に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置によれば、上記様相において、希釈処理では、吸収液循環源を駆動させることにより、吸収器において希釈させた吸収液を循環通路に循環させる。吸収器で希釈化された吸収液は、吸収液循環源の駆動により、循環通路を循環する。これにより循環通路の吸収液の全体が希釈化されて濃度が低下する。これにより吸収液は固相化されにくくなる。
【0015】
(4)本発明の様相4に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置によれば、上記様相において、凝縮器内の液相状の凝縮液の液位を検知する凝縮器液位センサが凝縮器に設けられており、凝縮器液位センサが検知する凝縮器の凝縮液の液位が第1高さ領域以上のときにおいて、希釈要素を作動させて凝縮器の凝縮水を吸収器に供給させ、凝縮器液位センサが検知する凝縮器の凝縮液の液位が第1高さ領域未満のときにおいて、希釈要素に基づく凝縮器への凝縮液の搬送を停止または低速化させる。
【0016】
凝縮器液位センサが検知する凝縮器の凝縮液の液位が第1高さ領域以上のときにおいて、凝縮器は多くの凝縮液を貯留させている。この状態で、希釈要素が作動すると、凝縮器の凝縮水は吸収器に供給される、吸収器における吸収液は希釈化されて濃度が低下する。これに対して、凝縮器液位センサが検知する凝縮器の凝縮液の液位が第1高さ領域未満のときにおいて、凝縮器における凝縮液の流量は低下しているため、凝縮器における液シール性が低下するおそれがある。そこで凝縮器の凝縮液の液位が第1高さ領域未満のときには、希釈要素に基づく凝縮器への凝縮液の搬送を停止または低速化させる。これにより凝縮器における凝縮水の液位が過剰に低下することが抑えられ、凝縮器の液シール性が維持される。第1高さ領域はヒートポンプ装置の事情に応じて適宜設定でき、要するに、凝縮器において貯留させたい凝縮液の最低限以上の貯留量に相当する。
【0017】
(5)本発明の様相5に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置によれば、上記様相において、凝縮器と蒸発器との間において開放に伴い凝縮器内の凝縮液を蒸発器に供給させる第2開閉弁が設けられており、蒸発器内において蒸発させるべき液相状の凝縮液の液位を検知する蒸発器液位センサが蒸発器に設けられており、蒸発器液位センサが検知する蒸発器の凝縮液の液位が第2高さ領域以上のとき、蒸発器の凝縮液の貯留量は充分であり、第2開閉弁は閉鎖され、凝縮器の凝縮液が蒸発器に過剰に流れることが防止される。よって、凝縮器における凝縮液の液量は良好に維持され、凝縮器の液シールが維持される。蒸発器液位センサが検知する蒸発器の凝縮液の液位が第2高さ領域未満のときには、第2開閉弁は開放される。従って蒸発器における凝縮液の必要な液位は維持され、蒸発器の蒸発作用が良好に維持される。第2高さ領域はヒートポンプ装置の事情に応じて適宜設定でき、要するに、蒸発器の蒸発作用を得るために必要とされる凝縮液の貯留量に相当する。
【0018】
(6)本発明の様相6に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置によれば、上記様相において、気液分離器の液相出口と吸収器の液相入口とを連通させると共に気液分離器内の液相状の吸収液を吸収器に供給させる第1供給通路と、吸収器の液相出口と再生器の入口とを連通させると共に吸収器の吸収液を再生器に供給させる第2供給通路と、第1供給通路および第2供給通路に熱交換可能に設けられ、第1供給通路を流れる吸収液を冷却させると共に、第2供給通路を再生器に向けて流れる吸収液を加熱させる熱交換器とを具備する。
【0019】
本様相によれば、第1供給通路は、気液分離器内の液相状の吸収液を吸収器に供給させる。第2供給通路は、吸収器の吸収液を再生器に供給させる。熱交換器は、気液分離器から吸収器に向けて第1供給通路を流れる相対的に高温の吸収液を、吸収器に供給させる前に、熱交換により冷却させる。このように気液分離器から吐出された相対的に高温の吸収液を、吸収器に供給させる前に、熱交換器により冷却させることができ、吸収器における吸収効率を高めるのに有利である。また熱交換器は、吸収器から再生器に向けて第2供給通路を流れる相対的に低温の吸収液を、再生器に供給させる前に、熱交換により予め加熱させる。この場合、再生器における吸収液の加熱に有利である。
【0020】
(7)本発明の様相7に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置によれば、上記様相において、熱交換器を迂回するように気液分離器の液相出口側と前記吸収器の液相入口側とを連通させる中間連通路と、中間連通路を開閉可能であり且つ通常の状態では閉鎖されている第3開閉弁と、気液分離器内の吸収液の液位を検知する分離器液位置センサとを具備しており、分離器液位センサが検知する気液分離器内の吸収液の液位が第3高さ領域以上となるとき、分離器液位センサの信号に基づいて第3開閉弁は開放して、気液分離器の吸収液を、熱交換器を迂回させつつ、中間連通路を介して吸収器に供給させ、気液分離器におけるオーバフローを抑える。第3高さ領域はヒートポンプ装置の事情に応じて適宜設定でき、要するに、気液分離器内の吸収液が凝縮器に流出することを防止するために設定されている。第3高さ領域以上の吸収液が貯留されていると、気液分離の吸収液が凝縮器にオーバフローしてしまうおそれが高い。
【0021】
熱交換器は熱交換能を高めるため、多数の流路からなる流路群を有するため、ヒートポンプ装置の運転中といえども、吸収液の固相化等の影響で、熱交換器の流路径が狭くなるおそれがある。この場合、吸収液が気液分離器から熱交換器の流路に流れることが制限されるおそれがある。この場合、気液分離器に供給された吸収液が気液分離器においてオーバフローするおそれがある。この場合、オーバフローした液相状の吸収液が気液分離器から凝縮器へ流れるおそれがある。凝縮器は、気相を凝縮させて凝縮液を生成させるものであるため、化学物質を含む吸収液が凝縮器に流れ込むことは好ましくない。そこで、分離器液位センサが検知する気液分離器内の吸収液の液位が第3高さ領域以上となるとき、分離器液位センサの信号に基づいて第3開閉弁は開放する。これにより気液分離器の吸収液を、オーバフロー前に、熱交換器を迂回させつつ、吸収器に供給させる。これにより気液分離器におけるオーバフローを抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置によれば、ヒートポンプ作用の要求停止に伴い、吸収器の吸収液を希釈化させるため、吸収液の過剰な固相化が抑制される。よってヒートポンプ装置の性能を長期にわたり良好に維持でき、ヒートポンプ装置の次回の円滑な運転も確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1に係り、吸収式ヒートポンプ装置を模式的に示す回路図である。
【図2】実施形態2に係り、吸収式ヒートポンプ装置を模式的に示す回路図である。
【図3】実施形態3に係り、吸収式ヒートポンプ装置を模式的に示す回路図である。
【図4】他の実施形態に係り、再生器を加熱させる形態を模式的に示す図である。
【図5】他の実施形態に係り、再生器を加熱させる形態を模式的に示す図である。
【図6】他の実施形態に係り、再生器を加熱させる形態を模式的に示す図である。
【図7】他の実施形態に係り、再生器を加熱させる形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置によれば、好ましくは、気液分離器はエンジンルームに設けられ、再生器はエンジンルームを仕切る仕切壁よりも下方の車外空間に設けられている。エンジン排気ガスの排気系部品は、エンジンルームを仕切る仕切壁よりも下方の車外空間に設けられていることが多い。このため、再生器を加熱させる車載加熱源が、エンジン排気ガスの排熱を利用するマフラー等の排気系部品である場合に適する。
【0025】
以下、本発明を具体化させた各実施形態に基づいて、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
(実施形態1)
本実施形態に係る車載用吸収式ヒートポンプ装置は、車両に搭載されている。図1に示すように、車両内部の空間であるエンジンルーム10が設けられている。上側のエンジンルーム10と下側の車外空間11とを上下に仕切るための仕切壁1が、車両に設けられている。このヒートポンプ装置は、図1に示すように、再生器2と、車載加熱源3と、気液分離器4と、凝縮器5と、蒸発器6と、吸収器7と、迂回通路8と、迂回搬送源としての迂回ポンプ9を備える。再生器2は、液相状の吸収液を加熱させるための熱交換器である。再生器2は仕切壁1よりも下方の車外空間11に設けられており、従って、気液分離器4、凝縮器5、蒸発器6、吸収器7の下方に位置する。車載加熱源3は、再生器2内の吸収液を加熱させるための熱源であり、エンジン200から排出される高温の排気ガス(例えば400〜900℃の温度)が流れる排気通路301の一部で形成されている。吸収液はハロゲンおよびアルカリ金属の化合物を溶媒に溶解させた液を利用できる。例えば、吸収液は臭化リチウム水溶液、ヨウ化リチウム水溶液が採用される。吸収液の濃縮化または低温化が進行すると、吸収液の結晶化により固相化が進行し易い。
【0027】
図1に示すように、車載加熱源3は仕切壁1よりも下方の車外空間11に配置されている。気液分離器4は、再生器2において加熱された吸収液から、水蒸気(気相)および液相状の吸収液(液相)を分離させて吸収液の濃度を相対的に高める。従って再生器2の再生出口2pから気液分離器4の入口4iを繋ぐ第1通路51が設けられている。第1通路51は基本的には吸収液を上向きに供給させる。気液分離器4は、仕切壁1の上方のエンジンルーム10に配置されている。その関係で、凝縮器5、蒸発器6、吸収器7は、気液分離器4と共にエンジンルーム10に配置されている。気液分離器4では、液相状の吸収液は底側に溜まり、吸収液の液面W1の上方に気相状の水蒸気が溜まる。凝縮器5は、吸収液から分離された水蒸気を凝縮させて凝縮液(液相状の水)を形成させる。従って、気液分離器4の気相出口4hから凝縮器5の入口5iに向かう第2通路52が設けられている。
【0028】
蒸発器6は、凝縮器5で凝縮された液相状の水(凝縮液)を蒸発させて水蒸気を形成する。従って、凝縮器5の出口5pから蒸発器6の入口6iに向かう第3通路53が設けられている。蒸発器6の出口6pから吸収器7の気相入口7iに向かう第4通路54が設けられている。吸収器7は、気液分離器4において相対的に濃縮されて高粘性化された液相状の吸収液と、蒸発器6で蒸発された水蒸気(気相)とを接触させる。これにより高粘性化された吸収液に水蒸気(気相)を吸収させて吸収液を相対的に希釈化させて粘性を低下させる。図1に模式的に示すように、エンジンルーム10において、気液分離器4および吸収器7はほぼ同じ高さ領域、または、気液分離器4は吸収器7よりもやや高い位置に設けられている。気液分離器4および吸収器7の差圧に応じて、気液分離器4内の吸収液を吸収器7に供給させるためである。
【0029】
図1に示すように、第1供給通路41は、気液分離器4の液相出口4pと吸収器7の液相入口7mとを連通させると共に、気液分離器4内の液相状の吸収液を液相入口7mから吸収器7に供給させる。図1に示すように、第1供給通路41はU字管形状をなしており、気液分離器4の液相出口4pから熱交換器44の入口44iに向かう下向きの往路41aと、熱交換器44の出口44pから吸収器7の液相入口7mに向かう上向きの復路41cと、復路41cを開閉させる入口開閉弁41xとを有する。往路41aは基本的には吸収液を下向きに搬送させる。復路41cは基本的には吸収液を上向きに搬送させる。ここで、気液分離器4の吸収液の液位W1が吸収器7の吸収液の液位W2よりも高いとき、入口開閉弁41xが開放すれば、基本的には、気液分離器4と吸収器7との差圧に応じて、気液分離器4から高粘性の吸収液が吸収器7に向けて第1供給通路41を介して流れる。
【0030】
吸収器7において希釈化させて低粘性化された吸収液は、吸収器7の底側に設けられている液相出口7pから再生器2に向けて供給される。従って、吸収器7の液相出口7pから再生器2の入口2iに向かう第2供給通路42が設けられている。第2供給通路42には吸収液循環源として機能する循環ポンプ95が設けられている。循環ポンプ95の単位時間あたり回転数は、本実施形態に係るヒートポンプ装置に対するユーザ要求(例えば冷房負荷要求または暖房負荷要求等)に応じて制御される。操作スイッチ等の入力要素510から要求されるユーザ要求が増加すれば、循環ポンプ95の回転数を増加させる。ユーザ要求が減少すれば、循環ポンプ95の回転数を減少させる。第2供給通路42は、基本的には、吸収液を上側の吸収器7から下側の再生器2に向けて下向きに供給させる。
【0031】
本実施形態によれば、図1に示すように、熱交換器44は、第1供給通路41および第2供給通路42の双方に互いに熱交換可能に設けられている。熱交換器44は、第1供給通路41を流れる相対的に高温の吸収液を熱交換により冷却させると共に、第2供給通路42を流れる相対的な低温の吸収液を熱交換により加熱させる。このように本実施形態によれば、熱交換器44は、気液分離器4から吸収器7に向けて第1供給通路41を流れる相対的に高温の吸収液を、吸収器7に供給させる前に、熱交換により冷却させる。また熱交換器44は、吸収器7から再生器2に向けて第2供給通路42を流れる相対的に低温の吸収液を、再生器2に供給させる前に、熱交換により加熱させる。このように気液分離器4から吐出された相対的に高温の吸収液を、吸収器7に供給させる前に、熱交換器44により冷却させることができる。よって、吸収器7において吸収液が水蒸気を吸収させる吸収効率を高めることができる。また、吸収器7から吐出された相対的に低温の吸収液を、再生器2に供給させる前に、熱交換器44により予熱させることができ、再生器2における吸収液の加熱を補充することができる。よって再生器2において吸収液を沸騰状態つまり気液混合状態に加熱させるのに有利となる。
【0032】
再生器2、気液分離器4、吸収器7を繋ぐ循環通路700は、吸収液を循環させる通路であり、第1通路51,第1供給通路41,第2供給通路42を備えている。循環通路700、つまり、第2供給通路42には、吸収液循環源としての循環ポンプ95が設けられている。循環ポンプ95により、再生器2、気液分離器4、吸収器7を繋ぐ循環通路700において吸収液を循環させることができる。ポンプ95,9等を制御する制御装置500が設けられている。
【0033】
なお、循環通路700内は大気圧よりも減圧されている。故に、再生器2において加熱された吸収液は、沸騰して気液混合状態となり、気液分離器4に供給される。例えば、ヒートポンプ装置の運転中においては、吸収器7の圧力P7は約0.5〜2kPa程度、気液分離器4の圧力P4は6〜25kPa程度、凝縮器5の圧力P5は5〜20kPa程度とされている。但し、上記圧力はこれらに限定されるものではなく、適宜調整できる。ヒートポンプ装置の運転中において、または運転停止直後においては、P7<P5<P4の関係とされている。従って、差圧に基づいて気液分離器4の吸収液は吸収器7に流れることができる。差圧に基づいて凝縮器5の凝縮水は吸収器7に流れることができる。
【0034】
本実施形態によれば、図1に示すように、迂回通路8は、気液分離器4のうち液相を収容する底側の迂回出口4mと再生器2の再生入口2i側とを繋ぐ。迂回通路8は、気液分離器4の吸収液を吸収器7に供給させることなく再生入口2iから再生器2に直接的に供給させる通路である。迂回通路8は、上側の気液分離器4から下側の再生器2に向けて吸収液を下向きに供給させる。なお、再生器2は前述したように車外空間11に設けられており、気液分離器4はその上側のエンジンルーム10に設けられている。すなわち、再生器2は気液分離器4の下方に配置されている。このため、迂回通路8の流路径によっては、気液分離器4の高粘性の吸収液を再生器2に搬送させるにあたり、重力によりアシストすることも期待できる。
【0035】
図1に示すように、迂回搬送源としての迂回ポンプ9は迂回通路8に設けられている。迂回ポンプ9は、気液分離器4の底側に収容されている液相状の吸収液を、迂回出口4mから再生器2の再生入口2iに向けて積極的に搬送させる。このように迂回ポンプ9は、気液分離器4に収容されている液相状の吸収液を、吸収器7に供給させることなく、再生入口2iから再生器2に直接的に帰還させる。再生器2への吸収液の帰還流量を増加させるには、迂回ポンプ9の出力を高めれば良い。再生器2への吸収液の帰還流量を減少させるには、迂回ポンプ9の出力を低下させれば良い。なお、制御部500は、開閉弁49,41x,68,ポンプ95,9を制御する。
【0036】
本実施形態によれば、車載加熱源3は排気ガスの熱交換器を放させるため、再生器2内の吸収液を加熱させることができる。再生器2内の吸収液は、車載加熱源3により加熱されて沸騰し、気液混合状態となる。気液混合状態の吸収液は、再生器2の再生出口2pから第1通路51を介して入口4iから気液分離器4に流れる。気液分離器4において、吸収液の液相および水蒸気(気相)は互いに分離され、吸収液の濃度は相対的に高められる。これにより液相状の吸収液は気液分離器4において濃縮される。濃縮された吸収液は高い粘性を示す。このように気液分離器4において相対的に濃縮された液相状の吸収液は、気液分離器4の液相出口4pから第1供給通路41に流れ、熱交換器44において熱交換されて冷却された後、入口開閉弁41xおよび第2供給通路42を介して気相入口7iから吸収器7に流れる。これに対して、気液分離器4において液相状の吸収液から分離された水蒸気(気相)は、差圧に基づいて、気液分離器4の気相出口4hから第2通路52を介して入口5iから凝縮器5に流れる。水蒸気は、凝縮器5おいて凝縮されて凝縮潜熱を発生させつつ凝縮液(液相状の水)を形成させる。凝縮器5で凝縮された凝縮液は、差圧に基づいて、凝縮器5の出口5pから第2開閉弁68および第3通路53を介して入口6iから蒸発器6に流れて蒸発器6において蒸発され、これにより蒸発潜熱を吸熱させつつ、気相状の水蒸気を形成する。蒸発器6の水蒸気は、差圧に基づいて、出口6pから第4通路54を介して気相入口7iから吸収器7に流れる。
【0037】
本実施形態によれば、第1供給通路41を介して気液分離器4の液相出口4pから吸収器7に流れた濃縮された液相状の吸収液は、蒸発器6から第4通路54および気相入口7iを介して吸収器7に供給された水蒸気と接触する。これにより、濃縮されて高粘性化された吸収液に水蒸気(気相)を吸収器7において吸収させ、吸収液を相対的に希釈化させて粘性を低下させる。吸収器7において希釈化された吸収液は、第2供給通路42および熱交換器44を介して再生入口2iから再生器2に流れ、再生器2において車載加熱源3により再び加熱されて沸騰して気液混合状態となり、再生器2の再生出口2pから第1通路51を介して気液分離器4に供給される。このように吸収液は再生器2、第1通路51、気液分離器4、第1供給通路41、吸収器7、第2供給通路42を循環する。なお、熱交換器44は再生器2と同様に仕切壁1よりも下方の車外空間11に配置されている。
【0038】
さて、ヒートポンプ装置の運転が停止されると、ヒートポンプ作用の要求が停止されるため、吸収液の温度が次第に低下し、環境条件によって、ヒートポンプ装置における吸収液の結晶化が進行し、場合によっては吸収液の一部が固相化するおそれがある。この場合、流路の詰まりを誘発させるおそれがある。そこで本実施形態によれば、図1に示すように、凝縮器5と吸収器7とを連通可能な希釈通路57が設けられている。更に、ヒートポンプ装置のヒートポンプ作用の要求停止に伴い、凝縮器5内の液相状の凝縮水を希釈通路57を介して吸収器7に供給させ、吸収器7における吸収液を希釈化させる希釈処理を実施する希釈要素としての第1開閉弁58が設けられている。第1開閉弁58は制御部500により制御される。
【0039】
そこで、ヒートポンプ作用の要求を停止させる信号が入力要素510から制御部500に入力されると、制御部500は、閉鎖状態の第1開閉弁58を開放させ、凝縮器5内の液相状の凝縮水を、希釈通路57を介して吸収器7に積極的に供給させ、吸収器7の吸収液を凝縮水で希釈化させる。これにより吸収液の結晶化に起因する固相化が抑制され、流路の詰まり等が未然に防止される。ヒートポンプ装置の次回の運転も良好にできる。『ヒートポンプ作用の要求停止』としては、車両駆動源であるエンジンの駆動を停止させたとき、ヒートポンプ装置自体の駆動を停止させたとき、ヒートポンプ作用が空調に使用されている場合には、冷房や暖房等の空調の要請がなくなったとき等が挙げられる。当該要求停止は入力要素510からの信号が制御部500に入力することに基づいて行われる。
【0040】
本実施形態によれば、希釈要素である第1開放弁58が開放すれば、凝縮器5と吸収器7との差圧に基づいて、凝縮器5の液相状の凝縮水は、吸収器7に供給され、吸収器7の吸収液を希釈化させる希釈処理を実行する。希釈処理においては、循環ポンプ95の駆動が継続されているため、吸収器7において希釈された吸収液は、循環通路700(第2供給通路42,第1通路51、第1供給通路41)を順に搬送されて循環され、循環通路700を循環する吸収液の固相化を未然に抑制できる。更に、希釈処理においては迂回ポンプ9も駆動しているため、希釈された吸収液は迂回通路8にも流れる。このように凝縮水で希釈された吸収液は、ヒートポンプ装置のうち吸収液が流れる全体の通路に流れ、吸収液の結晶化に起因する固相化が抑制され、流路の詰まり等が未然に防止される。従ってヒートポンプ装置の次回の運転も良好にでき、ヒータポンプ装置の長寿命化にも貢献できる。
【0041】
本実施形態によれば、凝縮器5内の液相状の凝縮水の液位を検知する凝縮器液位センサ601が凝縮器5に設けられている。凝縮器液位センサ601の信号Skは制御部500に入力される。凝縮器液位センサ601が検知する凝縮器5の凝縮水の液位W5が所定の第1高さ領域以上のとき、凝縮器5に充分に凝縮水が充分に貯留されており、凝縮器5のシール部を凝縮水で液シールする機能が維持されている。このとき、ヒートポンプ作用の要求停止の信号Sstopが制御部500に入力されており、吸収液が固相化するおそれがあるときには、制御部500は第1開閉弁58を開放させる。これにより圧力が相対的に高い凝縮器5と、圧力が相対的に低い吸収器7との差圧に基づいて、凝縮器5の凝縮水を希釈通路57を介して吸収器7に供給させる。この場合、凝縮器5および吸収器7の差圧に基づいて、凝縮水は供給される。しかし凝縮器5の凝縮水の液位W5が第1高さ領域未満になると、凝縮器5の凝縮水が過剰に減少され、凝縮器5の液シールに影響を与えるため、制御部500は第1開閉弁58を閉鎖させて、凝縮器5へ凝縮水の搬送を停止させる。
【0042】
本実施形態によれば、凝縮器5と蒸発器6とを繋ぐ第3通路53において、開放に伴い凝縮器5内の凝縮水を蒸発器6に供給させる第2開閉弁68が設けられている。蒸発器6内において蒸発させるべき液相状の凝縮水の液位W6を検知する蒸発器液位センサ602が蒸発器6に設けられている。蒸発器液位センサ602の信号Svは制御部500に入力される。蒸発器液位センサ602が検知する蒸発器6の凝縮水の液位W6が第2高さ領域以上のとき、制御部500は第2開閉弁68を閉鎖する。これにより凝縮器5の凝縮水が蒸発器6に流れないようにする。この結果、凝縮器5における凝縮水の液位W5は維持され、凝縮器5の液シール性は維持される。
【0043】
更に本実施形態によれば、熱交換器44を迂回するように気液分離器4の液相出口4pと吸収器7の液相入口7mとを連通させる中間連通路48が設けられている。中間連通路48を開閉可能であり且つ通常の状態では閉鎖されている第3開閉弁49が中間連通路48に設けられている。第3開閉弁49は通常の状態では閉鎖されている。第3開閉弁49および中間連通路48は熱交換器44および再生器2よりも上方に位置する。気液分離器4における吸収液の液位W1を検知する液位センサ47が気液分離器4に設けられている。液位センサ47は、気液分離器4の気相出口4hの下方に配置されている。液位センサ47の検知信号S1は制御部500に入力される。
【0044】
ところで、熱交換器44は熱交換能を高めるため、多数の流路からなる流路群を有する。このため、熱交換器44においては、吸収液に含まれる塵埃、吸収液の固相化等で流路径が狭くなるおそれがある。この場合、気液分離器4に供給された吸収液が熱交換器44に流れることが制限される。ひいては吸収器7に流れることが制限されるおそれがある。この場合、気液分離器4に供給された吸収液が気液分離器4においてオーバフローするおそれがある。オーバフローした液相状の吸収液が気液分離器4の気相出口4hから第2通路52を介して凝縮器5へ流れてしまうおそれがある。凝縮器5は、水蒸気を凝縮させて凝縮液(液相水)を生成させるものであるため、化学組成物を含む吸収液が流れ込むことは好ましくない。
【0045】
そこで本実施形態によれば、気液分離器4において、液位センサ47が検知する吸収液の液位W1が所定の第3高さ領域以上となるとき、液位センサ47からの検知信号S1に基づいて制御部500は第3開閉弁49を開放させる。これにより気液分離器4の液相出口4pから吐出された吸収液を、第1供給通路41の往路41aのうち第3開閉弁49よりも上流の通路41w、中間連通路48、第3開閉弁49、入口開閉弁41xを介して液相入口7mから吸収器7に供給させる。これにより気液分離器4において吸収液が気相出口4hからオーバフローすることが抑えられる。よって、オーバフローした吸収液が気液分離器4の気相出口4hから第2通路52を介して凝縮器5へ流れるおそれが未然に抑えられる。このように気液分離器4においては、何らかの事情により気液分離器4内の吸収液の液面W1が過剰に上昇したとしても、液位センサ47からの検知信号S1に基づいて第3開閉弁49が開放すれば、気液分離器4内の吸収液の液面W1を自動的に下げることができるため、車輌搭載における振動、揺れの影響を受けることなく気液分離器4において気液分離を行うことができる。
【0046】
本実施形態によれば、配置レイアウトにおいては、再生器2、気液分離器4、吸収器7、凝縮器5、蒸発器6等を含む各デバイスを任意の場所に配置することが可能である。このため、車載加熱源3の放熱を利用して吸収液を加熱させる再生器2については、排気ガスの排熱を利用できるように、従来の車輌における床側の車外空間11に配置されている。即ち、再生器2を排気ガスマフラー等の排気系の付近に再生器2を配置している(図1参照)。更に、再生器2以外のデバイス、即ち、気液分離器4、吸収器7、凝縮器5、蒸発器6等の各デバイスをエンジンルーム10内に配置している(図1参照)。
【0047】
前述したように、循環ポンプ95の単位時間あたり回転数(出力)は、本実施形態に係るヒートポンプ装置に対するユーザ要求(例えば冷房負荷要求等)に応じて制御される。しかし循環ポンプ95だけでは、本実施形態に係るヒートポンプ装置の性能を更に向上させるためには、限界がある。例えば、吸収液の濃度はヒートポンプ装置の性能に影響を与えるが、吸収液の濃度を調整させるには、再生器2における熱交換効率を調整させ、再生器2から気液分離器4に送られる吸収液の流量を調整させ、気液分離を調整させることが好ましい。しかし循環ポンプ95の回転数の制御だけでは、再生器2における熱交換効率を調整させるには限界がある。
【0048】
そこで本実施形態によれば、前述したように、気液分離器4のうち液相を収容する底側の迂回出口4mと再生器2とを繋ぐと共に吸収器7を迂回する迂回通路8が設けられている。更に、気液分離器4に収容されている液相状の吸収液を、吸収器7を迂回させた状態で、再生器2に直接的に帰還させる迂回ポンプ9が迂回通路8に設けられている。このため、循環ポンプ95を駆動させて吸収液を循環通路700に循環させているときにおいて、再生器2における熱交換効率を高めたい場合には、循環ポンプ95の駆動により吸収液を循環通路700に循環させつつ、停止されていた迂回ポンプ9を駆動させるか、あるいは、迂回ポンプ9の単位時間あたりの回転数(駆動量)を増加させる。この結果、気液分離器4における吸収液を吸収器4に循環させることなく、気液分離器4から再生器2に直接的に帰還させることができる。従って、再生器2を流れる吸収液の単位時間あたりの流量が増加する。このように単位時間あたりの流量が増加した吸収液を、再生器2において車載加熱源3により熱交換させて加熱させることができる。この結果、熱交換器として機能する再生器2を流れる吸収液を加熱させる熱交換効率が高められ、ひいては再生器2から気液分離器4に送られる吸収液の流量を増加させ、気液分離器4において吸収液の濃度を調整できる。
【0049】
これに対して、再生器2における熱交換効率を低下させたいときには、循環ポンプ95の駆動により吸収液を循環通路700に循環させつつ、迂回ポンプ9の駆動を停止させるか、単位時間あたりの回転数(駆動量)を低下させる。この結果、気液分離器4の迂回出口4mから迂回通路8を介して再生入口2iから再生器2に搬送される吸収液の単位時間あたりの流量が無しになるか、低下する。従って、迂回ポンプ9の単位時間あたりの回転数が大きい場合に比較して、再生器2を流れる吸収液の単位時間あたりの流量が減少する。このように単位時間あたりの流量が減少した吸収液を再生器2において熱交換させて加熱させるため、熱交換器として機能する再生器2における熱交換効率を下げることができる。ひいては、再生器2から気液分離器4に送られる吸収液の流量を減少させ、気液分離器4において吸収液の濃度を調整できる。
【0050】
このように本実施形態によれば、循環ポンプ95を駆動させつつも、迂回ポンプ9の駆動に伴い、再生器2を流れる吸収液の単位時間あたりの流量を調整させることができる。ひいては再生器2を流れる吸収液を車載加熱源3により加熱させる熱交換効率を調整させることができ、吸収液の濃度調整に有利とな、本実施形態に係るヒートポンプ装置の性能を向上させることができる。
【0051】
本実施形態によれば、必要に応じて次の形態を採用することもできる。
・希釈通路57の凝縮水の流れを確保するため、凝縮器5の底部の高さを吸収器7よりも高く設定することができる。この場合、凝縮器5と吸収器7との差圧が無くなったときでも、凝縮器5の凝縮水を吸収器7に供給できる。
・希釈通路57の流路径を第4通路54の流路径よりも増加させることができる。
【0052】
(実施形態2)
図2は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を奏する。図2から理解できるように、熱交換器44,第3開閉弁49および中間連通路48は設けられていない。本実施形態においても、ヒートポンプ装置の運転が停止されてヒートポンプ作用の要求が停止されると、吸収液の結晶化が進行し、吸収液の一部が固相化するおそれがある。そこで、制御部500は、ヒートポンプ作用の要求が停止されると、第1開閉弁58が開放し、凝縮器5と吸収器7との差圧に基づいて、凝縮器5に貯留されている液相状の凝縮水を吸収器7に供給させて吸収器7の吸収液を希釈化させる希釈処理を実行する。これにより吸収液の結晶化に起因する固相化が抑制され、流路の詰まり等が未然に防止される。ヒートポンプ装置の次回の運転も良好にできる。このような希釈処理においては、循環ポンプ95および迂回ポンプ9の駆動が継続されている。このため、吸収器7において希釈された吸収液は、循環通路700(第2供給通路42,第1通路51、第1供給通路41)を順に搬送されて循環され、循環通路700を循環する吸収液の固相化を未然に抑制でき、更に、迂回ポンプ9も駆動しているため、希釈された吸収液は迂回通路8にも流れる。このように凝縮水で希釈された吸収液は、ヒートポンプ装置のうち吸収液が流れる全体の通路に流れ、吸収液の結晶化に起因する固相化が抑制され、流路の詰まり等が未然に防止される。従ってヒートポンプ装置の次回の運転も良好にでき、ヒータポンプ装置の長寿命化にも貢献できる。
【0053】
(実施形態3)
図3は実施形態3を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を奏する。図3から理解できるように、凝縮器5と吸収器7とを連通可能な希釈通路57が設けられている。更に、ヒートポンプ装置のヒートポンプ作用の要求停止に伴い、凝縮器5内の液相状の凝縮水を希釈通路57を介して吸収器7に供給させ、吸収器7における吸収液を希釈化させる希釈処理を実施する希釈要素としての希釈ポンプが設けられている。このようにヒートポンプ作用の要求が停止されると、希釈ポンプ58Mが駆動し、凝縮器5内の液相状の凝縮水を希釈通路57を介して吸収器7に供給させ、吸収器7の吸収液を凝縮水で希釈化させる。これにより吸収液の結晶化に起因する固相化が抑制され、流路の詰まり等が未然に防止される。ヒートポンプ装置の次回の運転も良好にできる。凝縮器5と吸収器7との差圧が小さいときであっても、凝縮器5に溜まっている凝縮水を吸収器7に供給させて希釈できる。
【0054】
(他の実施形態)
図4〜図7は他の実施形態を模式的に示す。図4では、エンジン200を冷却させた熱いエンジン冷却液が流れる冷却液通路201(車載加熱源)と再生器2とが互いに熱的に接触可能に配置されている。図5に示す実施形態では、車載モータ202(車載加熱源)と再生器2とが互いに熱的に接触可能に設けられている。図6に示す実施形態では、車載モータ202を制御する車載インバータ203(車載加熱源)と再生器2とが互いに熱的に接触可能に設けられている。図7に示す実施形態では、電気エネルギを貯蔵する車載蓄電池205(車載加熱源)は使用時に放熱する。車載蓄電池205と再生器2とが互いに熱的に接触可能に設けられている。車載蓄電池205としては、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等の化学的電池でも良いし、あるいは、電気二重層キャパシタやリチウムイオンキャパシタ等の物理的電池でも良い。上記した冷却液通路201,車載蓄電池205,車載モータ202,車載インバータ203等はエンジンルームに配置されていても良いし、エンジンルーム以外に配置されていても良く、要するに車両に搭載されていれば良い。その他、本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【0055】
(その他)
実施形態1では、床側の車外空間11に配置されている排気ガスマフラー付近に再生器2を配置し、再生器2以外のデバイス、即ち、気液分離器4、吸収器7、凝縮器5、蒸発器6等の各デバイスをエンジンルーム10内に配置しているが、これに限られるものではない。従って、再生器2をエンジンルーム10内に配置しても良い。気液分離器4、吸収器7、凝縮器5、蒸発器6等をエンジンルーム10の外部に配置することにしても良い。車両は、乗用車、トラック、ダンプカー、バスに限らず、更に、ガソリン車、ディーゼル車、LPGガスで走行する車両、更には、走行モータおよびエンジンを併有するハイブリッドカー、蓄電デバイスおよび走行モータを併有する電気自動車等でも良く、要するに車輪の回転で走行するものをいう。車載用吸収式ヒートポンプ装置は車両の冷房や暖房等の空調に使用される場合に限らず、冷蔵機能を発揮させる冷凍サイクルとして使用されるものでも良い。図1においてはポンプ9,95.熱交換器44は車外空間11に配置されているが、これに限らず、エンジンルーム10内に配置されていても良い。液位センサ601が凝縮器5に設けられ、液位センサ602が蒸発器6に設けられているが、凝縮器5内の凝縮水の水位が充分に確保できれば、液位センサ601,602が廃止されていても良い。場合によっては、迂回通路8および迂回ポンプ9を廃止することもできる。本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0056】
1は仕切壁、10はエンジンルーム、11は車外空間、2は再生器、3は車載加熱源、4は気液分離器、41は第1供給通路、42は第2供給通路、44は熱交換器、47は液位センサ(分離器液位センサ)、48は中間連通路、49は開閉弁、5は凝縮器、51は第1通路、52は第2通路、53は第3通路、54は第4通路、57は希釈通路、58は第1開閉弁(希釈要素)、6は蒸発器、68は第2開閉弁、7は吸収器、8は迂回通路、9は迂回ポンプ(迂回搬送源)、95は循環ポンプ(吸収液循環源)、200はエンジン、201は冷却液通路(車載加熱源)、202は車載モータ(車載加熱源)、203は車載インバータ(車載加熱源)、205は車載蓄電池(車載加熱源)、500は制御部、601は凝縮器液位センサ、602は蒸発器液位センサ、700は循環通路を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相化が進行可能な吸収液を加熱させるための再生器と、
前記再生器内の吸収液を加熱させる車載加熱源と、
前記車載加熱源により前記再生器において加熱された吸収液から、気相および液相を分離させて吸収液の濃度を相対的に高める気液分離器と、
吸収液から分離された気相を凝縮させて液相状の凝縮液を形成させる凝縮器と、
前記凝縮器で凝縮された凝縮液を蒸発させて蒸気を形成する蒸発器と、
前記気液分離器における気相の分離により相対的に濃縮された液相状の吸収液と、前記蒸発器で蒸発された気相状の蒸気に基づく希釈剤とを接触させることにより、吸収液に希釈剤を吸収させて相対的に希釈化させ、希釈化させた吸収液を前記再生器に供給させる吸収器と、
前記再生器、前記気液分離器、前記吸収器を繋ぐ循環通路において吸収液を循環させる吸収液循環源と、
前記凝縮器と前記吸収器とを連通可能な希釈通路と、
前記希釈通路に設けられ、吸収液の少なくとも一部が固化するおそれがあるとき、前記凝縮器内の液相状の凝縮液を前記希釈通路を介して前記吸収器に供給させ、前記吸収器における吸収液を凝縮液で希釈化させる希釈処理を実施する希釈要素とを具備する車載用吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記希釈要素は、開放されると前記凝縮器と前記吸収器との差圧に基づいて前記凝縮器の液相状の凝縮液を前記吸収器に供給させる第1開閉弁、または、前記凝縮器の液相状の凝縮液を前記吸収器に供給させるポンプである車載用吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記希釈処理では、前記吸収液循環源を駆動させることにより、前記吸収液において希釈させた吸収液を前記循環通路に循環させる車載用吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうちの一項において、前記凝縮器内の液相状の凝縮液の液位を検知する凝縮器液位センサが前記凝縮器に設けられており、前記凝縮器液位センサが検知する前記凝縮器の凝縮液の液位が第1高さ領域以上のときにおいて、前記希釈要素を作動させて前記凝縮器の凝縮水を前記吸収器に供給させ、
前記凝縮器液位センサが検知する前記凝縮器の凝縮液の液位が第1高さ領域未満のときにおいて、前記希釈要素に基づく前記凝縮器への凝縮液の搬送を停止または低速化させる車載用吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のうちの一項において、前記凝縮器と前記蒸発器との間において開放に伴い前記凝縮器内の凝縮液を前記蒸発器に供給させる第2開閉弁が設けられており、前記蒸発器内において蒸発させるべき液相状の凝縮液の液位を検知する蒸発器液位センサが前記蒸発器に設けられており、前記蒸発器液位センサが検知する前記蒸発器の凝縮液の液位が第2高さ領域以上のとき、前記第2開閉弁は閉鎖され、前記凝縮器における凝縮液の液位は維持されて前記凝縮器を液シールさせる車載用吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のうちの一項において、前記気液分離器の液相出口と前記吸収器の液相入口とを連通させると共に前記気液分離器内の液相状の吸収液を前記吸収器に供給させる第1供給通路と、
前記吸収器の出口と前記再生器の入口とを連通させると共に前記吸収器の吸収液を前記再生器に供給させる第2供給通路と、
前記第1供給通路および前記第2供給通路に熱交換可能に設けられ、前記第1供給通路を流れる吸収液を冷却させると共に、前記第2供給通路を前記再生器に向けて流れる吸収液を加熱させる熱交換器とを具備する車載用吸収式ヒートポンプ装置。
【請求項7】
請求項6において、前記熱交換器を迂回するように前記気液分離器の液相出口側と前記吸収器の液相入口側とを連通させる中間連通路と、前記中間連通路を開閉可能であり且つ通常の状態では閉鎖されている第3開閉弁と、前記気液分離器内の吸収液の液位を検知する分離器液位置センサとを具備しており、
前記分離器液位センサが検知する前記気液分離器内の吸収液の液位が第3高さ領域以上となるとき、前記分離器液位センサの信号に基づいて前記第3開閉弁は開放して、前記気液分離器の吸収液を、前記熱交換器を迂回させつつ、前記中間連通路を介して前記吸収器に供給させ前記気液分離器におけるオーバフローを抑える車載用吸収式ヒートポンプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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