説明

車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法

【課題】画像内の注目領域の露出が自動的に最良の状態となるような車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法を提供すること。
【解決手段】運転者の操作情報を検出し、検出結果に基づいて画像内の注目領域の露出を制御することにより、画像中の注目領域の露出が自動的に最良の状態となるような車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法に関し、特に、画像内の注目領域を決定し、注目領域に基づいて画像内の注目領域を含む領域の露出を制御する車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車載用撮像装置においては、例えば走行中に道路上の車両や路側の人物や道路標識をカーナビゲーションシステムのモニタに映し出すために、あるいは、撮像した動画像から道路上の障害物や路側からの人物の飛び出し等を検知して警告を行う安全運転支援システムのために、車載カメラが撮像可能な最大の解像度よりも低い解像度の画像を高フレームレートで撮像することにより、限られた画像信号転送速度の中でフレーム間の画像の変化があまり大きくない滑らかな動画像を得るような工夫が行われている。
【0003】
しかし、この方法では滑らかな動画像が得られるという意味では画質は向上するが、得られる画像の解像度が低いために、例えばモニタに映し出された画像中の物体が何であるか(例えば車両か建物か等)の判別がつきにくく、特に車線変更時の後側方や減速時の後方の車両の有無や、右左折時の進行方向の人物や車両の有無の確認において誤認の可能性があり、それによる事故等の危険が発生したりする。
【0004】
つまり、少なくとも車線変更時の後側方や減速時の後方、あるいは右左折時の進行方向のような、画像中の運転者が注目したいあるいは注目すべき領域の解像度については、可能な限り高解像度にしたいという要求がある。また、画像の露出についても、視認性の向上の意味から、画像中の運転者が注目したいあるいは注目すべき領域が適正な露出となることが望ましい。
【0005】
そこで、例えば、テレビ会議システムにおいて発言者の画像を鮮明に表示するための方法として、ステレオマイクから得られた音声信号により発言者の位置を推定し、推定された位置を中心に所定の範囲の画像領域を他の画像領域より高解像度にする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。あるいは、車載カメラシステムにおいて、自車の運行速度に応じて撮影ズーム率を変更することにより撮影距離を変更して撮影することで、鮮明な画像を取得し、危険障害物の検知を容易にする方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、スチルカメラの露出制御において、主要部測光エリア内に主要部以外の背景を含む率を少なくして主要部の測光精度を向上させるための方法として、測距回路により求められた主要被写体までの距離に基づいて主要被写体の顔サイズを決定し、決定された顔サイズをほぼカバーする主要部測光エリアを求め、主要部測光エリア内に位置する多分割測光素子の出力により露出制御を行う方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
さらに、車載用カメラにおいて、画面の高輝度部分の影響を排除して自車が走行する車線部分の輝度レベルを安定に保つために、画像内の自車が走行する車線部分を検出し、車線部分の輝度が予め定められた目標輝度となるようにアイリスあるいはシャッタを調節して露出制御を行う方法が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−217276号公報
【特許文献2】特開2005−274518号公報
【特許文献3】特開平5−66458号公報
【特許文献4】特開平8−240833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の方法では、音声信号により発言者を特定しているため、テレビ会議システムのような室内の限られた条件下では発言者を特定できても、車載用撮像装置のような屋外で距離も様々で騒音も多いといった条件下では適用は困難である。
【0010】
また、特許文献2の方法では、車速に応じてズームされるために、例えば高速走行時は画角が狭くなって周囲の画像が得られない状態、つまり視野が狭くなった状態となり、自車の側方等から向かって来る障害物を見落とすという問題が発生する。
【0011】
さらに、特許文献3の方法では、主要被写体までの距離情報を得るために測距回路が必須でシステムが複雑で大掛かりとなり、さらに対象を人物に限定しているために、車載用撮像装置のように多様な物体を撮像対象とするシステムにはそぐわない。
【0012】
また、特許文献4の方法では、道路に露出を合わせるようになっており、画像中の運転者が注目したいあるいは注目すべき領域が必ずしも適正な露出となるわけではない。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、画像内の運転者が注目したいあるいは注目すべき領域の露出が自動的に最良の状態となるような車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1.本発明の車載用撮像装置は、撮像される画像の露出を制御する露出制御部を有する撮像部を備えた車載用撮像装置において、前記撮像部で撮像される画像中の注目領域を決定する注目領域決定部と、前記撮像部で撮像される画像の中の前記注目領域を含む領域の露出を前記露出制御部に制御させるための制御信号を出力する撮像制御部とを備え、前記注目領域決定部は、自車の走行速度が速くなるにつれて注目領域のサイズを小さく設定する。
【0015】
2.運転者の操作情報を検出する操作情報検出部を更に備え、前記注目領域決定部は、前記操作情報検出部の出力に基づいて、前記注目領域を決定することが好ましい。
【0016】
3.前記撮像制御部は、前記露出制御部に、前記撮像部で撮像される画像の中の前記注目領域を含む領域の画像の露出が所定の露出となるように制御させるための制御信号を出力することが好ましい。
【0017】
4.前記撮像制御部の制御信号に従って前記露出制御部によって制御された露出で撮像された画像を表示する表示部を備えたことが好ましい。
【0018】
5.本発明の撮像方法は、撮像を行う撮像工程と、前記撮像工程で撮像される画像中の注目領域を決定する注目領域決定工程と、前記撮像工程で撮像される画像の中の前記注目領域決定工程によって決定された注目領域を含む領域の露出を制御する撮像制御工程とを備え、前記注目領域決定工程は、自車の走行速度が速くなるにつれて注目領域のサイズを小さく設定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、画像内の運転者が注目したいあるいは注目すべき領域の露出を制御することにより、画像中の運転者が注目したいあるいは注目すべき領域の露出が自動的に最良の状態となるような車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車載用撮像装置の概要を示す模式図である。
【図2】車載用撮像装置の構成を示すブロック図である。
【図3】撮像部の構成を示すブロック図である。
【図4】撮像素子の間引き撮像を説明する模式図である。
【図5】ステアリング検出部でのステアリングの操舵角の検出と注目領域の位置の設定方法とを説明するための模式図である。
【図6】方向指示器検出部での方向指示器の操作状況の検出と注目領域の位置の設定方法とを説明するためのグラフである。
【図7】速度検出部での自車の走行速度の検出と注目領域の大きさの設定方法とを説明するための模式図である。
【図8】撮像素子の駆動方法を説明するための撮像素子の撮像面上の画像の模式図である。
【図9】画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図10】画像処理部における解像度制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図11】撮像制御部で行われる露出制御について説明するための撮像素子の撮像面上の画像の模式図である。
【図12】本実施の形態における動作の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。なお、図中、同一あるいは同等の部分には同一の番号を付与し、重複する説明は省略する。
【0022】
まず最初に、本発明における車載用撮像装置の一例について、図1を用いて説明する。図1は車載用撮像装置100の概要を示す模式図で、図1(a)は車載用撮像装置100を搭載した車両200が道路上を走行している状態を上空から見た模式図、図1(b)はその時の車載用撮像装置100で撮像された画像の模式図である。
【0023】
図1(a)および(b)において、車両の後方を撮像する車載用撮像装置100を搭載した車両200は、白線241と242とで示された車線251上を紙面の右から左に走行している。車両200の後方には、同一車線251上に車両210が、白線242と243とで示された車線252上に車両220がそれぞれ車両200と同方向に走行している。
【0024】
本例においては、上述した画像内の運転者が注目したいあるいは注目すべき領域(以下、注目領域NAと言う)に相当するのは、例えば減速時には自車の後方の領域であり、そこには車両210が存在し、例えば右側の車線252に車線変更する場合には自車の右後側方の領域であり、そこには車両220が存在する。なお、図1(b)に示した画像は例えばカーナビゲーションシステムのモニタやフロントガラス上に画像等を表示するヘッドアップディスプレイ等に表示された表示画像DPで、本例においては、後方の状況を把握しやすくするために、左右がルームミラーで見たと同じ状態となるように、車載用撮像装置100で撮像された画像を左右反転させて表示している。
【0025】
また、ここでは車載用撮像装置100として車両後方を撮像する例を示したが、これに限るものではなく、車両前方、側方を撮像するものであってもよい。また、ステアリングの操舵角に応じて車載用撮像装置100の撮像光軸を可変に制御するものであってもよい。車両後方、前方、側方あるいはステアリングの操舵角に応じて撮像光軸を可変に制御等して撮像する場合の表示画像については、運転者が視認しやすいように適宜左右反転等を行って表示することが望ましい。
【0026】
次に、車載用撮像装置100の実施の形態について、図2を用いて説明する。図2は、車載用撮像装置100の構成を示すブロック図である。
【0027】
図2において、車載用撮像装置100は、撮像部110、操作情報検出部120、注目領域決定部130、撮像制御部140、画像処理部150および表示部160等で構成されている。操作情報検出部120は、ステアリング検出部121、方向指示器検出部122および速度検出部123等で構成されている。
【0028】
撮像部110は、行単位での間引き読出駆動が可能な撮像素子を備えたカメラである。詳細な構成は図3に示す。操作情報検出部120において、ステアリング検出部121はステアリングの操舵角を検出し、方向指示器検出部122は方向指示器の操作状況を検出し、速度検出部123は車両の走行速度を検出し、それぞれの検出結果を注目領域決定部130へ出力する。注目領域決定部130は、操作情報検出部120の各検出部の検出結果に基づいて注目領域NAを決定し、注目領域NAの位置を注目領域情報130aとして撮像制御部140へ出力する。
【0029】
撮像制御部140は、注目領域情報130aに基づいて、注目領域NAの解像度および露出を変更するための制御信号140aを撮像部110および画像処理部150へ出力するとともに、注目領域情報130aを画像処理部150へ出力する。画像処理部150は、撮像制御部140の制御信号140aおよび注目領域情報130aに基づいて撮像部110の画像信号110aに画像として表示するための既定の画像処理を施し、処理信号150aを表示部160に出力する。
【0030】
表示部160は、例えばカーナビゲーションシステムのモニタやフロントガラス上に画像等を表示するヘッドアップディスプレイ等で構成され、処理信号150aを画像として表示する。ここでは、表示部160はVGA(水平640画素×垂直480行)の画像を毎秒60フレーム(以下、60fpsと言う)で表示可能なものとする。
【0031】
以上のような構成で、通常は、撮像部110が持つ最大解像度よりも低い解像度で撮像(所謂間引き撮像)された画像信号110aが、画像処理部150を介して表示部160に表示される。一方、操作情報検出部120で何らかの運転者の操作が検出された(例えば右側の車線に車線変更するために右の方向指示器を操作することで、方向指示器検出部122により右の方向指示器の操作が検出された)場合、注目領域決定部130で注目領域NA(上述した例によれば、画面右下部)が決定され、注目領域情報130aが撮像制御部140に向けて出力される。
【0032】
注目領域情報130aに従って、撮像部110、撮像制御部140および画像処理部150によって、注目領域NAの解像度が高く、露出が適正に制御された画像が撮像され、表示部160に表示され、運転者の操作に応じた画像が自動的に視認できる状態となる。各部の詳細な動作については、図3以降に述べる。
【0033】
なお、本実施の形態においては処理信号150aを表示部160に出力するとしたが、その代わりに、例えば処理信号150aあるいは処理信号150aの中の注目領域NAの画像信号を、特定の被写体を抽出することで危険を警告したり、自動的に危険回避運転を行ったりする安全運転支援システムに入力することでもよい。
【0034】
次に、図2に示した各部の詳細について、図3乃至図12を用いて説明する。
【0035】
図3は、上述した撮像部110の構成を示すブロック図である。図3において、撮像部110は、撮像レンズ111、絞り112、撮像素子113、アンプ114、アナログデジタル(A/D)変換器115、インターフェース116、タイミングジェネレータ117、絞り制御部118等で構成されている。
【0036】
撮像レンズ111で結像され、絞り制御部118によって制御された絞り112で光量制御された被写体からの光は撮像素子113で光電変換され、アンプ114で増幅され、A/D変換器でデジタルデータに変換され、インターフェース116を介して画像信号110aとして出力される。これらの一連の撮像動作およびアンプ114の増幅率は、タイミングジェネレータ117によって制御される。
【0037】
一方、上述した撮像制御部140からの制御信号140aはインターフェース116を介してタイミングジェネレータ117および絞り制御部118に入力され、制御信号140aに従って、撮像素子113の読出の解像度、露出時間およびアンプ114の増幅率、および絞り112の絞り値等の制御が行われる。ここに、タイミングジェネレータ117は本発明における解像度制御部として機能し、タイミングジェネレータ117および絞り制御部118は本発明における露出制御部として機能する。
【0038】
図4は、撮像素子113の間引き撮像を説明する模式図で、図4(a)は撮像素子113の仕様を例示した模式図、図4(b)は垂直方向を1/2に間引き撮像する場合の駆動方法を例示した模式図、図4(c)は間引き撮像によって生成される間引き画像を例示した模式図である。
【0039】
図4(a)において、撮像素子113は、例えば、画素数がVGA(水平640画素×垂直480行)で、30fpsのフレームレートで撮像可能な撮像素子であるとする。この撮像素子113を、図4(b)に示すように垂直方向に2行読み出し、続く2行を読み出さずに読み飛ばすという垂直1/2間引き撮像駆動すると、図4(c)に示すような水平640画素×垂直240行の垂直1/2間引き画像を得ることができ、この場合のフレームレートは60fpsとなり、高速読出が可能となる。
【0040】
ここで、「垂直方向に2行読み出し、続く2行を読み飛ばす」としているのは、撮像素子113が例えばベイヤ配列の原色(RGB)カラーフィルタを備えている場合を想定しており、その場合に色情報の欠落を起こさずに垂直1/2間引き駆動が可能となる駆動方法を示している。撮像素子113がモノクロームの場合や、所謂ナイトビジョンと呼ばれる遠赤外線カメラの画像等の場合には、「垂直方向に1行読み出し、続く1行を読み飛ばす」ことで垂直1/2間引き駆動が可能となる。ここでは垂直1/2間引き駆動のみを説明したが、例えば垂直2/3間引き駆動や垂直1/4間引き等も、上述した色情報の欠落等に配慮すれば可能である。
【0041】
図5は、ステアリング検出部121でのステアリングの操舵角θの検出と注目領域NAの位置の設定方法とを説明するための模式図であり、図5(a)は表示画像DP上の注目領域NAの位置の移動を示す模式図、図5(b)は操舵角θと注目領域NAの中心点の位置の関係を示す模式的なグラフである。
【0042】
図5(a)において、表示画像DPの水平中央を注目領域NAの中心点の位置Dの基本位置0(ゼロ)とし、右方向へ1.0、左方向に−1.0と中心点の位置Dの左右への移動量を決定する。中心点の位置Dの左右への移動量は任意であり、理論計算や実験等によって決定されればよい。次に、図5(b)に示す関係に従って操舵角θから注目領域NAの中心点の位置Dを決定することで、注目領域NAを操舵角θに合わせて移動させることができる。例えばステアリングが右方向に操舵角θ1だけきられたとすると、図5(a)に破線で示したように、注目領域NAの位置は表示画像DPの水平中央から右にd1だけ移動される。
【0043】
なお、図5(b)では操舵角θと注目領域NAの中心点の位置Dとは略線形の関係として図示してあるが、これに限るものではなく、理論計算や実験等によって任意の関係に決定すればよい。また、ステアリング検出部121の検出結果が注目領域NAの位置に反映されるのは、図6で説明する方向指示器検出部122による検出で方向指示器が未操作の場合のみである。
【0044】
図6は、方向指示器検出部122での方向指示器の操作状況の検出と注目領域NAの位置の設定方法とを説明するためのグラフである。
【0045】
図6において、方向指示器検出部122での検出の結果、方向指示器が未操作であると判断された場合は、注目領域NAの中心点の位置Dは方向指示器検出部122の検出結果によっては変更されず、図5で説明したステアリング検出部121の検出結果が反映される。
【0046】
方向指示器が右に操作されたと検出された場合には、注目領域NAの中心点の位置Dは図5で予め決定された移動量の右端の位置(1.0の位置)に移動される。逆に、方向指示器が左に操作されたと検出された場合には、注目領域NAの中心点の位置Dは左端の位置(−1.0の位置)に移動される。この場合には、運転者が左右どちらかへ曲がるあるいは車線変更するといった意思を示していると判断し、ステアリング検出部121の検出結果は反映されない。
【0047】
図7は、速度検出部123での自車の走行速度Vの検出と注目領域NAの大きさの設定方法とを説明するための模式図であり、図7(a)は走行速度Vと注目領域NAの大きさの関係を示す模式的なグラフ、図7(b)は表示画像DP上の注目領域NAの大きさの関係を示す模式図である。
【0048】
図7(a)において、注目領域NAの大きさは、速度Aから速度Bの間では速度が速くなるにつれて最大の大きさNAmaxから最少の大きさNAminへと徐々に小さくなる。これを模式的に示したのが図7(b)である。これは、走行速度Vが速くなるほどより遠距離の情報が必要となるが、同じ大きさの物体でも遠距離になるほど画像が小さくなるので、注目領域NAの大きさは小さくて済むからである。また、走行速度Vが早くなるほど高フレームレートでの撮像を維持する必要があるが、上述したように注目領域NAの大きさが小さくて済めば、間引き撮像の範囲が広く設定できるためにフレームレートの低下を防止することができる。
【0049】
また、速度A以下では注目領域NAの大きさは最大の大きさNAmaxで維持され、速度B以上では最少の大きさNAminで維持される。最大の大きさNAmaxは、例えば運転者が視認する必要のある対象物体(例えば後続の車両等)が近接距離にある場合に撮像画面上で視認できる大きさに設定され、最少の大きさNAminは、例えば運転者が視認する必要のある対象物体(例えば後続の車両等)が遠距離にある場合に撮像画面上で視認できる大きさに設定される。
【0050】
なお、図7(a)では、速度Aから速度Bの間では走行速度Vと注目領域NAの大きさとは略反比例の関係として図示したが、これに限るものではなく、理論計算や実験等によって任意の関係に決定すればよい。また、注目領域NAの形状も、図5や図7に示したような正方形に限るものではなく、車両の形状に合わせた横長の長方形であってもよいし、人物に合わせた縦長の長方形であってもよい。さらにこれらの組み合わせであってもよい。
【0051】
図8は、撮像素子113の駆動方法を説明するための撮像素子113の撮像面上の画像の模式図である。ここでは、撮像素子113の撮像面上の右下部に注目領域NAが1つだけ存在する例を示している。上述したような方法で注目領域NAの位置と大きさが決定されると、撮像素子113は、注目領域NAが存在しない領域Aおよび領域Cでは、図4に示したと同様に垂直1/2間引き駆動され、注目領域NAが存在する領域Bでは間引き駆動を行わずに全行を読み出す全行読出駆動が行われる。
【0052】
図9は、画像処理部150の構成を示すブロック図である。図2に示したように、撮像部110の画像信号110aは画像処理部150に入力され、表示するための既定の画像処理が施され、処理信号150aとして表示部160へ出力される。ここでは、画像処理部150で施される解像度制御についてのみ説明し、色変換、ガンマ変換等の一般的な画像処理については、通常の場合の処理と同じであるので説明は省略する。
【0053】
図9において、画像処理部150は、水平間引き部151およびフレームレート制御部153等で構成される。水平間引き部151は、遅延部151aおよびセレクタ151b等で構成され、フレームレート制御部153はフレームメモリ153a等で構成される。
【0054】
まず水平間引き部151について説明する。画像処理部150に入力された画像信号110aは、セレクタ151bのA入力と遅延部151aとに入力される。遅延部151aは、例えばメモリ等で構成され、入力された画像信号110aを2画素分遅延させて遅延信号151cとしてセレクタ151bのB入力に入力する。セレクタ151bは、撮像制御部140から入力された注目領域情報130aに従って、A入力またはB入力のどちらかの信号を選択してセレクタ出力151dとして出力する。これらの動作はデータクロックD−CLKに同期して行われる。
【0055】
画像信号110aは、注目領域NA以外は垂直方向が間引き駆動により本来の1/2の行数しか存在しないのに対して、水平方向の画素の画像信号は常に全画素(ここでは640画素)分のデータが存在している。そこで、水平方向も、色情報が欠落しないように配慮しながら、1/2の320画素分のデータに間引きする。
【0056】
間引きの方法は、注目領域NA以外の領域では遅延部151aとセレクタ151bを用いて、画像信号110aとそれを2画素分遅延させた遅延信号151cとを2画素毎に切り換えることで水平1/2間引きを行ってセレクタ出力151dとし、注目領域NAではセレクタ151bが常にA入力を選択するようにして、間引きは行わず、画像信号110aをセレクタ出力151dとする。
【0057】
次に、フレームレート制御部153について説明する。セレクタ出力151dは、フレームレート制御部153のフレームメモリ153aに入力され、記憶される。記憶されたセレクタ出力151dは、表示部160の画像表示のフレームレートに合わせて、処理信号150aとして表示部160に向けて出力される。上述した各動作は、データクロックD−CLKに同期して行われる。
【0058】
画像信号110aのフレームレートは最大で60fpsで、注目領域NAの大きさによって変化する。そのため、処理信号150aのフレームレートも変化する。それに対して、表示部160での画像表示は常に60fpsの既定のフレームレートで動作している。従って、処理信号150aの信号の更新が表示部160での表示のフレームレートに追いつけなくなる場合が発生するため、何らかのフレームの挿入を行って、表示がとぎれることを防止する必要がある。
【0059】
ここでは、フレームメモリ153aに複数フレームの処理信号150aを記憶しておき、フレーム挿入が必要となった場合には、直前のフレームの処理信号150aを繰り返し出力することでフレーム挿入とする。
【0060】
また、フレームレート制御部153では垂直補間処理も行われ、注目領域NA以外の領域では、垂直2行の画像信号110aを出力した後、再び同じ垂直2行の画像信号110aを出力することで、垂直補間が行われる。注目領域NAでは各垂直行の画像信号110aがそのまま出力される。
【0061】
図10は、上述した画像処理部150における解像度制御を説明するためのタイミングチャートで、図10(a)は水平間引き部151の動作を説明するためのタイミングチャート、図10(b)はフレームレート制御部153の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【0062】
図10(a)において、撮像制御部140からセレクタ151bに入力される注目領域情報130aが低電位(L)、すなわち注目領域NAでない場合、セレクタ151bでの入力端子の選択は、データクロックD−CLKに同期して、A、A、B、BとA入力とB入力とが2度ずつ交互に選択される。一方、画像信号110aは、0(ゼロ)画素目、1画素目、2画素目と画素順にセレクタ151bのA入力と遅延部151aとに入力される。遅延部では画像信号110aが2画素分遅延されて遅延信号151cとされる。
【0063】
よって、セレクタ出力151dは、0(ゼロ)画素目、1画素目、0画素目、1画素目、4画素目、5画素目、4画素目、5画素目となり、2画素目、3画素目が間引かれた水平1/2間引きが行われたことになる。なお、セレクタ出力151dは、データクロックD−CLKに同期して出力されるために、画像信号110aに対して1D−CLK分遅延される。
【0064】
また、注目領域情報130aが高電位(H)、すなわち注目領域NAの場合、セレクタ151bでの入力端子の選択は、データクロックD−CLKに同期して、A、A、A、AとA入力だけが選択される。よって、セレクタ出力151dは、8画素目、9画素目、10画素目、11画素目となり、水平間引きは行われない。このようにして、注目領域NAについては高解像度の画像が出力され、注目領域NA以外の領域では1/2間引きされた低解像度の画像が出力される。
【0065】
図10(b)において、セレクタ出力151dは、0(ゼロ)フレーム目FL0、1フレーム目FL1、2フレーム目FL2と、60fps以下の注目領域NAの大きさに依存する可変のフレームレートで順次出力される。フレームレート制御部153では、入力された複数フレーム分のセレクタ出力151dをフレームメモリ153aに記憶し、表示部160のフレームレートに合わせて、セレクタ出力151dにフレーム挿入を行いながら処理信号150aとして出力する。図10(b)の処理信号150aで、破線で示したフレーム(例えば2つ目のFL1)がフレーム挿入されたフレームである。
【0066】
図11は、撮像制御部140で行われる露出制御について説明するための撮像素子113の撮像面上の画像の模式図である。ここでは、図8と同じく、撮像素子113の撮像面上の右下部に注目領域NAが1つだけ存在する例を示している。
【0067】
図11において、撮像制御部140では、注目領域決定部130によって決定された注目領域NA内の画像信号110aの各色信号(RGB)毎の平均値Ra、Ga、Baから、以下の(1式)により注目領域内輝度Ynaが算出される。
Yna=0.2989×Ra+0.5866×Ga+0.1145×Ba・・・(1式)
【0068】
次に、算出された注目領域内輝度Ynaが表示部160での適正な輝度となるように、撮像部110の絞り112の絞り値、撮像素子113の露出時間、アンプ114の増幅率等の制御値が算出され、制御信号140aとして撮像部110に向けて出力される。撮像部110では、制御信号140aの指示する絞り値、露出時間、増幅率等に従って撮像が行われ、注目領域NAが表示部160で適正な明るさに表示される。
【0069】
ここでは、注目領域NA内の画像信号110aのみを用いて撮像部110の露出を決定する例を示したが、これに限るものではなく、注目領域NAとそれ以外の領域とで重み付けを変えて注目領域NA重点の露出とする等、カメラで培われた露出制御技術を適用してもよい。
【0070】
図12は、本実施の形態における動作の流れを説明するためのフローチャートである。図12において、まず最初に、ステップS101で垂直1/2間引き駆動にて1フレーム分の撮像が行われる。ステップS103で方向指示器の操作が行われたか否かが方向指示器検出部122により確認される。方向指示器の操作が行われた場合(ステップS103;Yes)、ステップS111で、検出結果に基づき、図6に示した方法にて注目領域NAの位置が決定され、ステップS141に進む。
【0071】
方向指示器の操作が行われなかった場合(ステップS103;No)、ステップS121でステアリングの操作が行われたか否かがステアリング検出部121により確認される。ステアリングの操作が行われた場合(ステップS121;Yes)、ステップS131で、検出結果に基づき、図5に示した方法にて注目領域NAの位置が決定され、ステップS141に進む。
【0072】
ステアリングの操作が行われなかった場合(ステップS121;No)、ステップS151でステップS101で撮像された画像が表示部160に表示される。ステップS153で撮像動作を終了するか否かが確認され、終了する場合(ステップS153;Yes)はそのまま動作が終了され、終了しない場合(ステップS121;No)はステップS101に戻って上述した撮像動作を繰り返す。
【0073】
ステップS141で、速度検出部123により自車の車速が検出され、検出結果に基づき、図7に示した方法にて、ステップS111またはステップS131で位置が決定された注目領域NAの大きさが決定される。ステップS143で図11に示した方法にて注目領域NA内が所定の露出となるような露出の制御値が決定される。ステップS145で、ステップS143で決定された露出の制御値に従って撮像部110により撮像が行われる。
【0074】
ステップS151でステップS101で撮像された画像が表示部160に表示される。フレーム挿入が必要な場合は、挿入が行われる。ステップS153で撮像動作を終了するか否かが確認され、終了する場合(ステップS153;Yes)はそのまま動作が終了され、終了しない場合(ステップS121;No)はステップS101に戻って上述した撮像動作を繰り返す。
【0075】
ここに、ステップS101およびステップS145は本発明における撮像工程として、ステップS103およびステップS121は本発明における操作情報検出工程として、ステップS111、ステップS131およびステップS141は本発明における注目領域決定工程として、ステップS143は本発明における撮像制御工程として、ステップS151は本発明における表示工程として機能する。
【0076】
以上に述べたように、本実施の形態によれば、方向指示器、ステアリング等の操作状況によって運転者の意思を検知し、運転者の操作情報から運転者が注目したい、あるいは注目すべき領域即ち注目領域を決定し、注目領域の画像を高解像度で所定の露出で表示することにより、運転者にとって重要度の高い領域の画像を高解像度かつ所定の露出で正確に視認できるようになり、重要度の高い物体の誤認や、衝突、人身事故等の危険を回避する安全運転に大きく寄与することができる。
【0077】
以上に述べたように、本発明によれば、運転者の操作情報を検出し、検出結果に基づいて画像内の注目領域の解像度および露出の何れか一方あるいは両方を制御することにより、画像中の注目領域の解像度および露出の何れか一方あるいは両方が自動的に最良の状態となるような車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法を提供することができる。
【0078】
尚、本発明に係る車載用撮像装置および車載用撮像装置の撮像方法を構成する各構成の細部構成および細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0079】
100 車載用撮像装置
110 撮像部
111 撮像レンズ
112 絞り
113 撮像素子
114 アンプ
115 アナログデジタル(A/D)変換器
116 インターフェース
117 タイミングジェネレータ
118 絞り制御部
120 操作情報検出部
130 注目領域決定部
140 撮像制御部
150 画像処理部
160 表示部
200 車両
210 車両
220 車両
241 白線
242 白線
243 白線
251 車線
252 車線
NA 注目領域


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像される画像の露出を制御する露出制御部を有する撮像部を備えた車載用撮像装置において、
前記撮像部で撮像される画像中の注目領域を決定する注目領域決定部と、
前記撮像部で撮像される画像の中の前記注目領域を含む領域の露出を前記露出制御部に制御させるための制御信号を出力する撮像制御部とを備え、
前記注目領域決定部は、自車の走行速度が速くなるにつれて注目領域のサイズを小さく設定することを特徴とする車載用撮像装置。
【請求項2】
運転者の操作情報を検出する操作情報検出部を更に備え、
前記注目領域決定部は、前記操作情報検出部の出力に基づいて、前記注目領域を決定する請求項1記載の車載用撮像装置。
【請求項3】
前記撮像制御部は、前記露出制御部に、前記撮像部で撮像される画像の中の前記注目領域を含む領域の画像の露出が所定の露出となるように制御させるための制御信号を出力することを特徴とする請求項1又は2記載の車載用撮像装置。
【請求項4】
前記撮像制御部の制御信号に従って前記露出制御部によって制御された露出で撮像された画像を表示する表示部を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車載用撮像装置。
【請求項5】
撮像を行う撮像工程と、
前記撮像工程で撮像される画像中の注目領域を決定する注目領域決定工程と、
前記撮像工程で撮像される画像の中の前記注目領域決定工程によって決定された注目領域を含む領域の露出を制御する撮像制御工程とを備え、
前記注目領域決定工程は、自車の走行速度が速くなるにつれて注目領域のサイズを小さく設定することを特徴とする車載用撮像装置の撮像方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−124963(P2012−124963A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−58434(P2012−58434)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【分割の表示】特願2006−231827(P2006−231827)の分割
【原出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】