説明

車載警告装置

【課題】後続車両の急接近を自車両の運転者が気付いていないという状況をその運転者に的確に警告できる車載警告装置を提供すること。
【解決手段】リアカメラで自車両後方を撮像する(S11)。後方画像に含まれる後続車両の画像を抽出する(S12)。後続車両の画像の面積を算出する(S13)。その面積の時間変化の度合いAを算出する(S14)。変化度合いAが閾値A0より大きいか否かを判断する(S15)。大きい場合には(S15:YES)、最新の後続車両の画像の面積S1を算出する(S16)。面積S1が閾値S0より大きいか否かを判断する(S17)。大きい場合には(S17:YES)、車間距離が短い状態であるとして、その状態が5秒継続したか否かを判断する(S18、S19)。5秒継続した場合に(S19:YES)、運転者が後続車両の急接近に気付いていないとして、警告を行う(S20)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された状態で使用され、後続車両の接近に関する警告を行う車載警告装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両周囲の警告すべき状況を検出して、自車両の運転者にその状況を警告する技術がある(例えば、特許文献1、2参照)。例えば、特許文献1の技術では、カメラやレーダ装置によって自車両周辺の物体を検出する。そして、自車両がその検出した物体と異常接近するまでの緊急度と、その物体との異常接近による被害の大きさに基づく重大度とを検出する。そして、緊急度が高いほど振動の周波数が大きくなり、重大度が高いほど振動の振幅が大きくなる振動を運転者に与える。このように、特許文献1の技術では、煩わしさを感じさせずに的確に異常接近を運転者に知らせようとしたものである。
【0003】
また、例えば特許文献2の技術では、自車両の後方に向けてマイクロ波を放射し、その反射波に基づいて後方車両の自車両に対する相対速度を求める。そして、その相対速度に基づき、後方車両が自車両に急接近している、自車両を追尾している、自車両から離脱している(遠ざかっている)等を報知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−1285号公報
【特許文献2】特開2005−219712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両走行中に後続車両が自車両に近づいてきた場合に、運転者は、その後続車両の接近に気付かないことがある。特に、高速道路等で高速走行している場合には、後続車両の接近に気付きにくい。また、自車両が追い越し車線を走行している場合には、後続車両が自車両を追い越すことができないことによって、後続車両の運転者が苛立ちを感じたり、自然渋滞したりする可能性がある。
【0006】
この点、特許文献1、2の技術では、後続車両の急接近に運転者が気付かない状況や後続車両が自車両を追い越すことができないという状況を的確に警告するものではない。すなわち、特許文献1、2の技術では、異常接近、急接近した場合には一律に警告するものであるので、運転車が後続車の急接近に気付いていても警告してしまい、その警告が煩わしいという問題がある。また、自車両と後続車両との車間距離が元々短い渋滞の場合にも警告してしまうという問題もある。また、後続車両が急接近するものの、その後、後続車両が車線変更をして自車両を追い越すことができる場合であっても警告をしてしまう。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、後続車両の急接近に運転者が気付かない状況や後続車両が自車両を追い越すことができないという状況を的確に警告できる車載警告装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の車載警告装置は、後続車両が自車両に急接近してきたか否かを判断する急接近判断手段と、
自車両と後続車両との車間距離が短い状態であるとして予め定められた車間短状態とされているか否かを判断する車間短状態判断手段と、
その車間短状態判断手段が前記車間短状態とされていると判断した場合に、その車間短状態が一定時間継続されたか否かを判断する継続判断手段と、
前記急接近検出手段が前記急接近してきたと判断し、かつ、前記継続判断手段が前記車間短状態が前記一定時間継続されたと判断した場合に、自車両の運転者に対し警告を行う警告手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
これによれば、急接近判断手段が後続車両が自車両に急接近してきたか否かを判断し、車間短状態判断手段が車間短状態とされているか否かを判断するので、走行中に後続車両が急接近して、それによって車間距離が短くなっている状況を的確に判断することができる。また、継続判断手段が車間短状態が一定時間継続されたか否かを判断するので、後続車両の急接近に運転者が気付かないで、後続車両が自車両を追い越すことができないという状況を的確に判断することができる。そして、急接近検出手段が急接近してきたと判断し、かつ、継続判断手段が車間短状態が一定時間継続されたと判断した場合、つまり、後続車両の急接近に運転者が気付かない状況時に、警告手段が自車両の運転者に対し警告を行うので、その運転者にその状況を気付かせることができる。
【0010】
また、本発明の車載警告装置において、前記急接近判断手段は、
後続車両の速度と自車両の速度の差に相当する値である速度差値を算出する速度差値算出手段と、
その速度差値算出手段が算出した前記速度差値が、後続車両が急接近してきたか否かを区分する所定の第一閾値より大きいか否かを判断する速度差値判断手段と、を含むことを特徴とする。
【0011】
これによれば、後続車両の速度と自車両の速度の差に相当する値である速度差値に基づいて、後続車両が急接近してきたか否かを判断するので、自車両がどの速度で走行していたとしても、的確に後続車両の急接近を判断することができる。
【0012】
また、本発明における前記速度差値算出手段は、
各時点における自車両の後方を撮像する後方撮像手段と、
その後方撮像手段が各時点で撮像した各後方画像中に含まれる後続車両の画像を抽出する画像抽出手段と、
その画像抽出手段が抽出した各後続車両の画像のサイズの変化度合いを前記速度差値として算出する変化度算出手段と、を含むことを特徴とする。
【0013】
これによれば、後方撮像手段が自車両の後方を撮像するので、後続車両がある場合には、その後続車両を撮像することができる。また、自車両に対する後続車両の距離によって、後方画像に含まれる後続車両の画像のサイズが変わってくる。さらに、後方撮像手段は各時点における自車両の後方を撮像するので、後続車両の自車両に対する相対速度によって、各後方画像中に含まれる後続車両の画像のサイズは変化する。つまり、後続車両が急接近する場合には、最新の後続車両の画像になるほどサイズが大きくなる。そして、その画像のサイズの変化度合いは、後続車両の自車両に対する相対速度に相当する。よって、変化度算出手段が各後続車両の画像のサイズの変化度合いを算出するので、その変化度合いを速度差値とすることができる。
【0014】
また、本発明における前記車間短状態判断手段は、前記画像抽出手段が抽出した現時点の前記後続車両の画像のサイズが、前記車間短状態か否かを区分する所定の第二閾値より大きいか否かを判断する画像サイズ判断手段を含むことを特徴とする。
【0015】
上記したように、自車両に対する後続車両の距離によって、後方画像に含まれる後続車両の画像のサイズが変わってくるので、車間短状態判断手段は、後続車両の画像のサイズに基づいて車間短状態か否かを判断することができる。
【0016】
また、本発明における前記車間短状態判断手段は、自車両の後方の自車両周辺に検出範囲が設定され、その検出範囲内の物体を検出する物体検出手段が物体を検出した状態を前記車間短状態として、前記車間短状態とされているか否かを判断するとしてもよい。
【0017】
このように、後続車両との車間距離が短いときには、その物体検出手段が後続車両を検出するので、その検出した状態をもって車間短状態とされたとすることができる。
【0018】
また、本発明において、自車両が走行している道路を撮像する道路撮像手段と、
その道路撮像手段が撮像した道路画像に基づいて、自車両が追い越し車線を走行しているか否かを判断する車線判断手段と、を備え、
前記警告手段は、前記車線判断手段が自車両が追い越し車線を走行していないと判断した場合には、前記警告を中止することを特徴とする。
【0019】
これによれば、警告手段は、自車両が追い越し車線を走行していないと判断した場合には警告を中止するので、頻繁に警告がされることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車載警告装置1の構成を概略的に示した概略図である。
【図2】後続車両警告処理の手順を示したフローチャートである。
【図3】今回の後方画像500を示した図である。
【図4】前回の後方画像501を示した図である。
【図5】変形例1に係る後続車両警告処理の手順を示したフローチャートである。
【図6】変形例2に係る後続車両警告処理の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係る車載警告装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態の車載警告装置1の構成を概略的に示した概略図である。なお、この車載警告装置1は車両101に搭載された状態で使用されるものである。図1に示すように、車載警告装置1は、クリアランスソナー11、リアカメラ12、ディスプレイ13、スピーカ14及びこれらと接続するECU10を備えている。
【0022】
クリアランスソナー11は、車両101の後端部101bに設けられ、車両101後方の車両101の周辺範囲11a(検出範囲)に存在する物体を検出するセンサである。そのクリアランスソナー11は、車両101後方の検出範囲11a内に、超音波等の検出波を送信する。そして、検出範囲11a内に物体がある場合には、その検出波がその物体に当たって反射する。クリアランスソナー11は、その反射した反射波を受信できるようになっている。このように、クリアランスソナー11は、検出波の送信後にその反射波を受信することで、検出範囲11a内に存在する物体を検出することができる。なお、検出波の送信タイミングと反射波の受信タイミングとの間の時間差に基づいて、クリアランスソナー11(車両101)と物体との間の距離も特定することができる。
【0023】
クリアランスソナー11の検出範囲11aは、車両101の幅方向については車両101の車幅程度、車両101の前後方向については車両101の後端部101bからの距離Dが例えば車両一台分の長さ(5m程度)となるように、設定されている。つまり、クリアランスソナー11から送信される検出波は、その検出範囲11aに送信されるようにその強度が調整されている。なお、一つのクリアランスソナー11だけでは上記検出範囲11aをカバーすることができない場合には、複数のクリアランスソナー11が、互いに車両101の後端部101bの異なる位置に設けられ、各クリアランスソナー11の検出範囲を合成することで検出範囲11aをカバーできるようにされる。なお、クリアランスソナー11が本発明の「物体検出手段」に相当する。
【0024】
リアカメラ12は、車両101の後端部101bに設けられ、車両101の後方を撮像するカメラである。より詳細には、リアカメラ12の撮像範囲12aは、車両101が走行している道路の、例えば車両101の後端部101bから後方100mまでを撮像できるように設定されている。そのために、リアカメラ12の撮像画角は例えば150°以上に定められている。リアカメラ12は、車両101の後方を繰り返し(例えば0.1秒間隔)撮像、つまり各時点における車両101の後方を撮像する。
【0025】
ディスプレイ13は、例えば液晶ディスプレイとされ、車両101の走行に有益な各種情報が表示されるものである。具体的には、ディスプレイ13には、ナビゲーション装置(図示外)によって、車両101周辺の地図が表示されたり、目的地までの経路が表示されたりする。そのディスプレイ13は、車両101の運転者が容易にその表示内容を確認できように、車両101の車室内前方領域101a(図1参照)に設置されている。スピーカ14は、車両101の走行に有益な各種音声が出力されるものである。そのスピーカ14は、車両101の運転者が容易にその音声を聞き取れるように、車両101の車室内前方領域101a(図1参照)に設置されている。
【0026】
ECU10は、CPU、ROM、RAM等から構成され、CPUがROMに記憶された制御プログラムにしたがった動作をすることで、各種処理を実行するものである。例えば、駐車時等でシフトポジションがR(リバース)にされた場合には、ECU10は、クリアランスソナー11やリアカメラ12を使用して、駐車支援のための処理を実行する。具体的には、ECU10は、クリアランスソナー11に検出範囲11a内の物体を検出させて、その検出結果(送信波の送信タイミング、反射波の受信タイミング)を取得する。そして、その検出結果に基づいて、車両101と物体との間の距離を特定し、その距離に応じた情報をディスプレイ13やスピーカ14に出力させる。また、ECU10は、リアカメラ12を駆動させて、リアカメラ12が撮像した撮像画像をリアルタイムでディスプレイ13に表示させる。これによって、運転者に、車両101後方の状況を容易に確認させることができるので、車両101を駐車させやすくできる。
【0027】
さらに、ECU10は、車両101の走行中に、後続車両が近づいてきた場合に、一定の条件下で警告を行う後続車両警告処理を実行する。次に、その後続車両警告処理の詳細について説明する。図2は、後続車両警告処理の手順を示したフローチャートである。この図2のフローチャートの処理は、例えば車両101のエンジン始動を契機に開始され、その後、一定間隔で繰り返し実行される。
【0028】
先ず、リアカメラ12に車両101の後方を撮像させて、その撮像された後方画像を取得する(S11)。ここで、図3は、後方画像500の内容を模式的に示した図である。リアカメラ12の撮像範囲12a(図1参照)は、上述したように、自車両101の後方の、自車両101が走行している道路を撮像できる範囲に設定されているので、後方画像500には、自車両101が走行している車線の道路の画像51が含まれる。後続車両がある場合には、後方画像500には、その後続車両の画像520も含まれる。また、自車両101が走行している道路が複数車線の道路である場合には、後方画像500には、道路の画像51に右側に、各車線を分離する白線の画像55が含まれ、隣りの車線の画像54も含まれることがある。さらに、自車両101が複数の車線のうちの追い越し車線(一番右側の車線)を走行している場合には、後方画像500には、道路の画像51の左側に、中央分離帯等の道路以外の画像53が含まれることもある。以下、S11で撮像した後方画像が図2の後方画像500であるとして説明する。なお、S11を実行するECU10及びリアカメラ12が本発明の「後方撮像手段」に相当する。
【0029】
次いで、後方画像500に含まれる後続車両の画像520を抽出する(S12)。具体的には、例えば、車両を正面から見たときの代表的な画像を予め記憶しておく。そして、後方画像500中に、その代表的な画像に相似する画像(この場合には画像520)があるか否かを判断することで、その抽出を行う。なお、後続車両が無い場合には、S12において後続車両の画像を抽出することができないので、この場合には、例えばS11の処理に戻るようにする。なお、S12を実行するECU10が本発明の「画像抽出手段」に相当する。
【0030】
次いで、S12で抽出した後続車両の画像520の面積Sを画像520のサイズとして算出する(S13)。具体的には、例えば、画像520を構成する画素数をカウントすることで、その算出を行う。
【0031】
次いで、画像520の面積Sの時間変化の度合いAを算出する(S14)。具体的には、今回の面積Sと前回(一定時間前)のS11〜S13で算出した後続車両の画像の面積との比を、変化度合いAとして算出する。ここで、図4は、前回の後方画像501を模式的に示した図である。なお、図4において、今回の後方画像500(図3参照)と変更がない部分には、同じ符号を付している。自車両101の後方に同じ後続車両が継続して走行している限りにおいて、前回の後方画像501中にもその後続車両の画像521が含まれる。そして、その後続車両が自車両101と異なる速度で走行している場合には、今回の画像520の面積Sは、前回の画像521の面積S‘から変化する。そこで、S14では、S/S’を、画像520の面積Sの時間変化の度合いAとして算出する。なお、S13及びS14を実行するECU10が本発明の「変化度算出手段」に相当する。
【0032】
次いで、S14で算出した変化度合いAが所定の閾値A0(第一閾値)より大きいか否かを判断することで、後続車両が自車両101に急接近してきたか否かを判断する(S15)。すなわち、後続車両が自車両101に対して接近する場合には、変化度合いA(=S/S’)は1以上となる。そして、その接近の度合いが大きくなるほど、変化度合いA(=S/S’)が大きくなる。よって、閾値A0を急接近か否かを区分する値とすることにより、後続車両が急接近してきたか否かを判断することができる。また、変化度合いA(=S/S’)は、後続車両の自車両101に対する相対速度(後続車両の速度と自車両101の速度の差)に相当する値である。そこで、例えば相対速度が20km/hに対応する閾値A0に設定することで、20km/h以上の相対速度で接近してくる後続車両を、急接近の後続車両とすることができる。なお、反対に、後続車両が自車両101から遠ざかる場合には、変化度合いA(=S/S‘)は1より小さくなる。なお、S11〜S15を実行するECU10及びリアカメラ12が本発明の「急接近判断手段」に相当する。また、S15を実行するECU10が本発明の「速度差値判断手段」に相当する。
【0033】
S15において、変化度合いAが閾値A0より小さい場合には(S15:NO)、S11の処理に戻る。この場合には、後続車両が走行しているものの、その後続車両は自車両101に急接近してこないので、以下の警告を行わないようにしたものである。この場合、S11〜S15の処理が再度実行されて、後続車両の監視が継続されることになる。
【0034】
一方、S15において、変化度合いAが閾値A0より大きい場合には(S15:YES)、S11〜S13と同じ処理を実行して、後続車両の画像の最新の面積S1を算出する(S16)。後続車両の画像の面積は、自車両101と後続車両との車間距離の指標とすることができる。つまり、面積S1が大きいほど、現在の車間距離が短いことになる。
【0035】
そこで、最新の面積S1が所定の閾値S0(第二閾値)より大きいか否かを判断することで、自車両101と後続車両との車間距離が短い状態であるとして予め定められた車間短状態とされているか否かを判断する(S17)。この車間短状態は、具体的には、自車両101の後端部101b(図1参照)を基準として車両一台分(5m程度)の範囲内の車間距離、つまり0〜5mの範囲の車間距離とされている状態とされる。よって、S17の閾値S0は、車間短状態か否かを区分する値、具体的には、車間距離5mに対応する値とされる。なお、S16、S17を実行するECU10及びリアカメラ12が本発明の「車間短状態判断手段」及び「画像サイズ判断手段」に相当する。
【0036】
S17において、最新の面積S1が所定の閾値S0より小さい場合には(S17:NO)、S11の処理に戻る。この場合には、後続車両の相対速度が大きいものの、未だ車間距離が短くされてなく、車間距離が短くされる前に車線変更して自車両101を追い越す場合も想定される。また、車間距離が短くされる前に自車両101の運転者が後続車両の急接近に気付く場合も想定されるので、以下の警告を行わないようにしたものである。この場合には、S11〜S17の処理が再度実行されて、後続車両の監視が継続されることになる。
【0037】
一方、S17において、最新の面積S1が閾値S0より大きい場合には(S17:YES)、車間距離が短い車間短状態とされたとして、S18以降の処理を実行する。S18では、車間短状態の継続時間tの計測を開始する(S18)。この時間計測は、例えばECU10内部に設けられた時計(図示外)によって行う。
【0038】
次いで、その継続時間tが「5秒」以上か否かを判断する(S19)。未だ5秒に達していない場合には(S19:NO)、S16の処理に戻る。この場合には、再度、最新の面積S1を算出して(S16)、その面積S1に基づいて車間短状態が維持されているか否かを判断する(S17)。維持されている場合には(S17:YES)、最新の継続時間tを計測して(S18)、最新の継続時間tが「5秒」以上か否かを判断する(S19)。つまり、S16〜S20の処理によって、車間短状態が「5秒」以上継続されているか否かを判断する。この際、途中で、車間短状態が解消された場合には(S17:NO)、後述するS20の警告は行わない。この場合には、一端、車間距離が短くなったものの、その後、車間距離が長くされたり、後続車両が車線変更して自車両101を追い越したりすることで、車間短状態が解消された場合が想定される。または、自車両101の運転者が後続車両の存在に気付いて、自車両101の速度を上げたり、自車両101を車線変更したりして、車間短状態を解消させた場合も想定される。なお、S18、S19を実行するECU10が本発明の「継続判断手段」に相当する。
【0039】
S19において、継続時間tが「5秒」以上とされた場合には(S19:YES)、後続車両が自車両101を追い越したくても追い越すことができない状況が想定され、さらに自車両101の運転者はその状況に気付いていない場合が想定される。そこで、この場合には(S19:YES)、ディスプレイ13やスピーカ14で例えば「後続車両が急接近しています」等の警告を行う(S20)。これによって、自車両101の運転者は、後続車両の急接近に気付くことができ、自車両101の速度を上げたり、車線変更したりするなどして、後続車両の急接近を解消することができる。その結果、後続車両の苛立ちを解消でき、自然渋滞がされることを防止できる。S20の警告の後、図2のフローチャートの処理が終了される。なお、S20を実行するECU10及びディスプレイ13、スピーカ14が本発明の「警告手段」に相当する。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の車載警告装置1では、不要な警告を抑制しつつ、後続車両の急接近に気付かないという状況で的確に警告を行うことができる。また、駐車支援等に使用される既存のリアカメラ12を使用して、後続車両の急接近及び車間短状態を判断しているので、その判断のための機器を新たに追加しなくてもよい。
【0041】
(変形例1)
上記実施形態では、リアカメラ12が撮像した後方画像の面積Sに基づいて、車間短状態か否かを判断していたが(図2のS16、S17)、クリアランスソナー11の検出結果に基づいてその判断を行ってもよい。ここで、図5は、クリアランスソナー11の検出結果に基づいて車間短状態か否かを判断する場合における後続車両警告処理の手順を示したフローチャートである。なお、図5において、図2と変更がない処理には同じ符号を付している。以下、図5の後続車両警告処理について、図2と異なる部分を中心に説明する。
【0042】
図5の後続車両警告処理では、図2のS16、S17の処理に代えて、S31の処理が実行される。すなわち、後続車両が急接近してきたと判断した場合には(S15:YES)、クリアランスソナー11が物体を検出したか否かによって、車間短状態か否かを判断する(S31)。上述したように、クリアランスソナー11の検出範囲11a(図1参照)は、車両101の前後方向について車両101の後端部101bからの距離Dが車両一台分の長さ(5m程度)となるように、設定されている。そこで、後続車両がその検出範囲11a内まで近づいたとき、つまり、クリアランスソナー11が物体を検出した状態を車間短状態とする。この場合、クリアランスソナー11が物体(後続車両)を検出していない場合には(S31:NO)、車間短状態でないとして、S11の処理に戻る。一方、クリアランスソナー11が物体(後続車両)を検出した場合には(S31:YES)、車間短状態であるとして、S18へ進める。なお、S31が本発明の「車間短状態判断手段」に相当する。
【0043】
(変形例2)
上記実施形態では、後続車両が急接近し、かつ、車間短状態が一定時間継続された場合(図2のS19:YES)に警告を行っていたが、警告を行う条件として、さらに、自車両101が追い越し車線を走行しているという条件を付加してもよい。ここで、図6は、変形例2に係る後続車両警告処理の手順を示したフローチャートである。なお、図6において、図2と変更がない処理については同一の符号を付している。図6のフローチャートは、S19とS20の処理の間に、S32の処理が挿入されている点が、図2と異なる。以下、図2と異なる部分を中心に説明する。
【0044】
S32では、自車両101が追い越し車線を走行しているか否かを判断する(S32)。具体的には、リアカメラ12で撮像した後方画像に基づいて、その判断を行う。上述したように、自車両101が追い越し車線を走行している場合には、図3に示すように、後方画像500には、道路の画像51の左側に、中央分離帯等の道路以外の画像53が含まれる。一方、自車両101が追い越し車線ではない一般車線を走行している場合には、道路の画像の左側に、他の車線の道路の画像が表示される。よって、S32では、道路の画像の左側の画像が、他の車線の画像が表示されているか否か、又は、中央分離帯等の道路以外の画像が表示されているか否かを判断することで、自車両101が追い越し車線を走行しているか否かを判断する。なお、S32を実行するECU10が本発明の「車線判断手段」に相当する。また、リアカメラ12が本発明の「道路撮像手段」に相当する。
【0045】
そして、自車両101が追い越し車線を走行している場合には(S32:YES)警告(S20)を行う一方で、追い越し車線を走行していない場合には(S32:NO)、警告を行わない。
【0046】
このように、自車両101が一般車線を走行している場合には、後続車両は追い越し車線に車線変更して、自車両101を追い越すことができるので、追自車両101が追い越し車線を走行しているときに比べて、警告をする必要性は低いと考えられる。よって、このような場合には警告を行わないで、頻繁に警告がなされるのを防止したものである。
【0047】
なお、本発明の車載警告装置は、上記の変形例1、2の他にも、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度において、各種変形することができる。例えば、上記実施形態では、リアカメラ12で後続車両が急接近してきたか否かを判断していたが、車両後方を監視できる他の機器(例えばレーダ装置)でその判断を行ってもよい。例えば、レーダ装置を使用する場合、各時点において、車両後方にレーダーを送信して、その反射波に基づいて後続車両の有無及び距離を算出する。そして、各時点における後続車両の距離に基づいて、後続車両の自車両に対する相対速度を算出する。その相対速度に基づいて、後続車両が急接近してきたか否かを判断できる。
【0048】
また、クリアランスソナー11を使用して、後続車両の急接近を判断してもよい。上述したように、クリアランスソナー11によって、検出範囲内の物体までの距離を特定できるので、レーダ装置と同様に、後続車両が急接近してきたか否かを判断できる。なお、この場合、クリアランスソナー11の検出範囲を適宜広く設定してもよい。
【0049】
また、警告を行う条件として、自車両の速度に関する条件を追加してもよい。運転者が後続車両の存在に気付きにくくなるのは、高速道路等で自車両を高速で走行させている場合が多いと考えられる。そこで、自車両の速度が所定の閾値以上の場合のみ、警告を行うようにする。自車両の速度情報は、速度センサ(図示外)から取得すればよい。
【0050】
また、後続車両が自車両を追い越したい場合、つまり、後続車両が急接近する場合は、自車両の速度が遅い場合が多いと考えられる。そこで、反対に、自車両の速度が所定の閾値以下の場合のみ、警告を行うようにしてもよい。また、この場合、自車両が現在走行している道路の制限速度に基づいて、その閾値を設定してもよい。例えば、制限速度に対して、2割減の速度に対応する閾値を設定する。これによって、制限速度に対して、自車両の速度が遅い場合に、警告を行うことができる。なお、制限速度情報は、例えば、ナビゲーション装置(図示外)の地図データから取得すればよい。
【符号の説明】
【0051】
1 車載警告装置
10 ECU
11 クリアランスソナー(物体検出手段)
11a クリアランスソナー11の検出範囲
12 リアカメラ
12a リアカメラ12の撮像範囲
13 ディスプレイ
14 スピーカ
101 自車両
500、501 後方画像
520、521 後続車両の画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
後続車両が自車両に急接近してきたか否かを判断する急接近判断手段と、
自車両と後続車両との車間距離が短い状態であるとして予め定められた車間短状態とされているか否かを判断する車間短状態判断手段と、
その車間短状態判断手段が前記車間短状態とされていると判断した場合に、その車間短状態が一定時間継続されたか否かを判断する継続判断手段と、
前記急接近検出手段が前記急接近してきたと判断し、かつ、前記継続判断手段が前記車間短状態が前記一定時間継続されたと判断した場合に、自車両の運転者に対し警告を行う警告手段と、を備えることを特徴とする車両に搭載される車載警告装置。
【請求項2】
前記急接近判断手段は、
後続車両の速度と自車両の速度の差に相当する値である速度差値を算出する速度差値算出手段と、
その速度差値算出手段が算出した前記速度差値が、後続車両が急接近してきたか否かを区分する所定の第一閾値より大きいか否かを判断する速度差値判断手段と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の車載警告装置。
【請求項3】
前記速度差値算出手段は、
各時点における自車両の後方を撮像する後方撮像手段と、
その後方撮像手段が各時点で撮像した各後方画像中に含まれる後続車両の画像を抽出する画像抽出手段と、
その画像抽出手段が抽出した各後続車両の画像のサイズの変化度合いを前記速度差値として算出する変化度算出手段と、を含むことを特徴とする請求項2に記載の車載警告装置。
【請求項4】
前記車間短状態判断手段は、前記画像抽出手段が抽出した現時点の前記後続車両の画像のサイズが、前記車間短状態か否かを区分する所定の第二閾値より大きいか否かを判断する画像サイズ判断手段を含むことを特徴とする請求項3に記載の車載警告装置。
【請求項5】
前記車間短状態判断手段は、自車両の後方の自車両周辺に検出範囲が設定され、その検出範囲内の物体を検出する物体検出手段が物体を検出した状態を前記車間短状態として、前記車間短状態とされているか否かを判断することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の車載警告装置。
【請求項6】
自車両が走行している道路を撮像する道路撮像手段と、
その道路撮像手段が撮像した道路画像に基づいて、自車両が追い越し車線を走行しているか否かを判断する車線判断手段と、を備え、
前記警告手段は、前記車線判断手段が自車両が追い越し車線を走行していないと判断した場合には、前記警告を中止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の車載警告装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−48346(P2012−48346A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187916(P2010−187916)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】