説明

車載通信システム及び分配装置

【課題】複数の車載装置と、各車載装置から受信したデータを記憶し、記憶したデータを各車載装置へ分配する分配装置とを備え、分配装置から車載装置へ最新のデータを効率よく分配することができる車載通信システム及び分配装置を提供する。
【解決手段】分配装置2aの制御部20は、送信情報テーブル24に登録してある送信情報に基づいてデータを所定の送信先へ分配する際に、このデータが既に所定の送信先へ分配されたか否かを判断する。制御部20は、所定の送信先へまだ分配されていない場合、このデータを所定の送信先へ送信し、所定の送信先へ既に分配された場合、所定の遅延許容時間待機する。制御部20は、遅延許容時間内にこのデータに対する更新データを外部から受信した場合、受信した更新データを所定の送信先へ分配し、遅延許容時間内に更新データを受信しなかった場合、更新前のデータを所定の送信先へ分配する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車載装置と、各車載装置から受信したデータを記憶し、記憶したデータを各車載装置へ分配する分配装置とを備える車載通信システム及び該車載通信システムに利用できる分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車(車両)に搭載される機器の増加及び運転補助機能の増加に伴い、搭載機器又は運転補助機能を電気的に制御する電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)の数及び種類が増大する傾向にある。また、ECUの数の増大に伴いECUが接続される車内通信回線で送受信されるデータの量も増大する。
【0003】
車内通信回線はCAN(Controller Area Network)等に準拠するシリアルバスにECUがバス型で接続されて構成されることが一般的である。このため、いくつかのECUでしか使用しないデータも同一の車内通信回線に接続される全てのECUに送信される。従って、車内通信回線で送受信されるデータ量の増大はコリジョン(衝突)によるデータの遅延又は欠落を招く。データの著しい遅延又は欠落は、ECUによるブレーキ制御等の運転補助機能に対して致命的な場合がある。
【0004】
そこで、車内通信回線を複数に分け、異なる車内通信回線にECUをそれぞれ接続する構成が一般的である。データを共通に使用するECUをまとめることで車内通信回線の使用の無駄を抑えることができるからである。また、ECUの種類の増大に対して効率的に車内通信回線を利用するために、ECUの群を送受信するデータの種類で分別し、各群毎に通信速度の異なる車内通信回線に接続する構成もある。これらの構成では、異なる車内通信回線間はデータの送受信を制御するゲートウェイ装置により接続される。この場合、ゲートウェイ装置はECUから受信したデータを一旦記憶しておき、記憶したデータをそのデータが必要な車載装置へ分配送信する分配装置として機能する。
【0005】
特許文献1には、ECUを複数の群に分けて群毎に車内通信回線に接続し、車内通信回線を更にゲートウェイ装置で接続する構成とし、送受信されるデータに優先順位を識別するための優先度情報を付加し、ゲートウェイ装置が異なる車内通信回線間でデータを送受信する場合、受信したデータの優先度情報から優先度を判別して優先度が高いデータを優先的に送信し、車内通信回線の通信負荷が増加した場合でも優先度が高いデータの送信が大きく遅れないようにする技術が開示されている。
【特許文献1】特開2005−159568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、通信負荷が高い場合は優先度の高いデータを優先的に送信して大きく遅延させないことを目的としており、車載通信システムで送受信されるデータ量の増大を抑制するものではない。従って、ゲートウェイ装置が所定の周期で一の車内通信回線からデータを受信し、受信したデータを所定の周期で他の車内通信回線へ送信する構成において、一の車内通信回線で送受信されるデータが遅延した場合、ゲートウェイ装置は、一の車内通信回線からデータを受信する前に他の車内通信回線へデータを送信してしまう場合が生じる。この場合、一の車内通信回線から送信されてきたデータが、本来他の車内通信回線へ送信されるタイミングよりも1周期遅延して送信されてしまう。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車載装置及び分配装置間で送受信されるデータに遅延が発生した場合であっても、所定範囲内の遅延時間であれば、分配装置が最新のデータを車載装置へ分配することができる車載通信システム及び分配装置を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、データを分配する際に、各データが既に分配されたデータであるか否かを正確に判断することにより、最新のデータを効率良く分配することができる分配装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車載通信システムは、データを送受信する複数の車載装置と、該車載装置から受信したデータを記憶する記憶手段及び記憶したデータを各車載装置へ分配する手段を有する分配装置とが接続してある車載通信システムであって、前記分配装置は、前記車載装置へデータを分配するに際し、前記データが前記車載装置へ既に分配されたデータであるか否かを判断する判断手段と、該判断手段が前記車載装置へ分配されたデータであると判断した場合、所定時間の計時を開始する手段と、所定時間の計時を終了するまでに前記データに対する更新データを他の車載装置から受信したか否かを判断する手段とを備え、所定時間の計時を終了するまでに前記更新データを前記他の車載装置から受信したと判断した場合、前記他の車載装置から受信した更新データを前記車載装置へ分配するように構成してあることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、車載装置から送信されるデータを受信して記憶手段に記憶し、記憶してあるデータを車載装置へ分配する分配装置が複数備えられ、各分配装置は、車載装置へデータを分配するに際し、車載装置へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。車載装置へ既に分配されたデータであると判断した場合、分配装置は、このデータに対する更新データを他の車載装置から受信するまで所定時間待機し、所定時間内に他の車載装置から更新データを受信した場合、他の車載装置から受信した更新データを車載装置へ分配する。
【0011】
本発明に係る分配装置は、外部から受信したデータを記憶する記憶手段と、記憶したデータを外部の分配先へ分配する手段とを備える分配装置において、分配先へデータを分配するに際し、前記データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する判断手段と、該判断手段が前記分配先へ分配されたデータであると判断した場合、所定時間の計時を開始する手段と、所定時間の計時を終了するまでに前記データに対する更新データを外部から受信したか否かを判断する手段とを備え、所定時間の計時を終了するまでに前記更新データを外部から受信したと判断した場合、受信した更新データを前記分配先へ分配するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、外部から送信されてくるデータを受信して記憶手段に記憶し、記憶してあるデータを外部の分配先へ分配する分配装置が、外部の分配先へデータを分配するに際し、この分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。既に分配されたデータであると判断した場合、分配装置は、このデータに対する更新データを外部から受信するまで所定時間待機し、所定時間内に更新データを受信した場合、受信した更新データを前記分配先へ分配する。
【0013】
本発明に係る分配装置は、時計手段と、外部からデータを受信した場合、受信したデータ及び該データを受信した時点で前記時計手段が示した時刻を対応付けて前記記憶手段に記憶する手段と、データを識別する情報、該データを分配する際の分配周期及び分配先を示す情報を対応付けて記憶する分配情報記憶手段とを備え、前記判断手段は、前記分配情報記憶手段に記憶してある分配周期で対応するデータを分配するに際し、前記分配周期、前記記憶手段に記憶してある時刻及びこの時点で前記時計手段が示す時刻に基づいて、前記データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断するように構成してあることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、分配装置は、外部からデータを受信した場合に、受信したデータと、この時点での時刻(データの受信時刻)とを対応付けて記憶しておく。また、分配装置は、データを識別する情報、該データを分配する際の分配周期及び分配先を示す情報を対応付けて分配情報記憶手段に記憶しており、分配情報記憶手段に記憶してある分配周期で対応するデータを分配するに際し、この分配周期、データの受信時刻及びこの時点での現在時刻に基づいて、このデータが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。
【0015】
本発明に係る分配装置は、データを外部の分配先へ分配した場合、各データ及び分配先を示す情報に対応付けて分配済みを示す情報を前記記憶手段に記憶させる手段を備え、前記判断手段は、前記記憶手段に記憶してある分配済みを示す情報に基づいて、前記データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断するように構成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、分配装置は、データを外部の分配先へ分配した場合、このデータ及び分配先に対応付けて分配済みを示す情報を記憶しておく。また、分配装置は、データを分配するに際し、このデータ及び分配先に対応して分配済みを示す情報が記憶されているか否かに基づいて、このデータが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。
【0017】
本発明に係る分配装置は、前記記憶手段は、先入れ先出し方式でデータを記憶する構成としてあり、前記判断手段は、前記データの前記記憶手段における記憶位置に基づいて、前記データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断するように構成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、分配装置は、外部から送信されてくるデータを先入れ先出し方式の記憶手段に記憶しており、データを分配するに際し、このデータの記憶手段における記憶位置に基づいて、このデータが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、各分配装置が車載装置へデータを分配するに際し、車載装置へ既に分配されたデータであると判断した場合、このデータに対する更新データを他の車載装置から受信するまで、このデータの車載装置への分配処理を待機する。分配装置は、所定時間内に他の車載装置から更新データを受信した場合、受信した更新データを車載装置へ分配する。よって、他の車載装置から分配装置へ送信されるデータの遅延時間が所定時間内であれば、分配装置から車載装置へのデータの分配処理を遅らせることによって、更新された最新のデータを車載装置へ分配することができる。
【0020】
本発明では、分配装置が外部の分配先へデータを分配するに際し、この分配先へ既に分配されたデータであると判断した場合、このデータに対する更新データを外部から受信するまで、このデータの前記分配先への分配処理を待機する。分配装置は、所定時間内に更新データを受信した場合、受信した更新データを前記分配先へ分配する。よって、分配装置が外部から受信するデータの遅延時間が所定時間内であれば、分配装置から外部の分配先へのデータの分配処理を遅らせることによって、更新された最新のデータを前記分配先へ分配することができる。
【0021】
本発明では、分配装置は、データを外部の分配先へ分配するに際し、このときの現在時刻、このデータを分配する際の分配周期、このデータを外部から受信した受信時刻に基づいて、このデータが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。具体的には、分配装置は、受信時刻から現在時刻までの時間が分配周期よりも長い場合、分配先へ既に分配されたデータであると判断し、受信時刻から現在時刻までの時間が分配周期よりも短い場合、分配先へまだ分配されていないデータであると判断する。よって、分配装置は、受信時刻及び現在時刻に基づいて各データが既に分配されたデータであるか否かを正確に判断することができ、更新された最新のデータを効率良く外部へ分配することができる。
【0022】
本発明では、分配装置は、データを外部の分配先へ分配した場合、このデータ及び分配先に対応付けて分配済みを示す情報を記憶しておき、この情報が記憶されているか否かに基づいて、各データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。よって、分配装置は、データを外部の分配先へ分配した場合に記憶される分配済みを示す情報に基づいて各データが既に分配されたデータであるか否かを正確に判断することができ、更新された最新のデータを効率良く外部へ分配することができる。
【0023】
本発明では、分配装置は、外部から送信されてくるデータを先入れ先出し方式の記憶手段に記憶するので、各データの記憶手段における記憶位置に基づいて、各データの外部からのおおまかな受信時刻が予測できる。よって、分配装置は、各データを分配先へ分配したか否かを判断するための時刻又は情報を記憶しておくことなく、各データの記憶手段における記憶位置に基づいて各データが既に分配されたデータであるか否かをおおまかに判断することができ、更新された最新のデータを効率良く外部へ分配することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施形態1)
以下、本発明をその実施形態1を示す図面に基づいて具体的に説明する。図1は本発明に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。本発明の車載通信システムは、電子制御装置(ECU)を用いた複数の車載装置1a,1b,1cと、車載装置1a,1b,1cのそれぞれからデータを受信し、各車載装置1a,1b,1c及び他の車載装置(図示せず)へデータを分配する分配装置2a,2bと、車載装置1a,1b,1c及び分配装置2aを接続する車内通信回線3aと、車載装置1a,1b,1c及び分配装置2bを接続する車内通信回線3bと、分配装置2a,2b間を相互に接続する通信線4とを備える。
【0025】
なお、図1では、車内通信回線3aと車内通信回線3bとを区別するために、車内通信回線3bと、車載装置1a,1b,1c及び分配装置2bとの接続を破線で示している。また、本実施形態1では、図1に示すような構成を例に説明するが、車載装置の数、分配装置の数、車内通信回線の数等はこれらに限定されるものではない。
【0026】
車載装置1a,1b,1cは車内通信回線3aにそれぞれバス型で接続されており、車内通信回線3aに接続されている車載装置1a,1b,1c及び分配装置2aは、車内通信回線3aへ送信されたデータを共通して受信する。また、車載装置1a,1b,1cは車内通信回線3bにそれぞれバス型で接続されており、車内通信回線3bに接続されている車載装置1a,1b,1c及び分配装置2bは、車内通信回線3bへ送信されたデータを共通して受信する。
【0027】
車内通信回線3a,3bは、例えばCANのプロトコルに基づく通信回線であり、車載装置1a,1b,1cは、車内通信回線3a,3bを介してCANに基づく信号を発生又は検知することによりデータの送受信が可能である。なお、本発明の車載通信システムで使用する車内通信回線3a,3bはこれに限らず、例えばLIN(Local Interconnect Network)、FlexRay(登録商標)等のプロトコルに基づくデータの送受信が可能に構成してもよい。さらに、送受信されるデータの種類に応じて送受信のスピードがそれぞれ異なる車内通信回線3a,3bで構成してもよい。
【0028】
車載装置1a,1b,1cは電子制御装置を用い、例えば接続しているセンサ(図示せず)が検知した温度、角度、速度等の測定値、演算により得られた計算値、制御値等の各種物理量の数値情報(データ値)を含むデータの送受信、又はエンジン、ブレーキ等のマイクロコンピュータによる制御が可能である。例えば、一の車載装置1aは車速を検知するセンサに接続され、センサが検知した車速のデータ値を含むデータを、接続してある分配装置2a,2bへ送信する。
【0029】
なお、CANでは、各種物理量毎にID(Identifier)が割り振られる。従って、本実施形態1における車載装置1a,1b,1cと分配装置2a,2bとの間で送受信されるデータは、各種物理量毎に割り振られたデータID及びその物理量の測定値(データ値)を含む。車載装置1a,1b,1c及び分配装置2a,2bは、車載装置1a,1b,1c及び分配装置2a,2bのいずれかから送信されたデータに含まれるデータIDに基づいて、送信されたデータがいずれの物理量に対するデータ値を含むデータであるかを判断することができる。
【0030】
分配装置2a,2bは、データベース(以下、DBという)21a,21bとして使用する記憶領域を備えており、接続されている車載装置1a,1b,1cから送信されたデータを受信してDB(記憶手段)21a,21bに記憶し、DB21a,21bから読み出したデータを車載装置1a,1b,1cへ分配する。
【0031】
分配装置2a,2b間は通信線4で接続されており、分配装置2a,2bは相互にデータを送受信することが可能である。本実施形態1では通信線4はパケット交換網で構成する例を示す。しかし本発明の車載装置通信システムの分配装置2a,2b間を接続する通信線4は、分配装置2a,2b間でデータの送受信が可能であればこれに限らずCANに基づく通信回線等でも構わない。
【0032】
また、車載装置1a,1b,1cと分配装置2a,2bとをそれぞれ接続する車内通信回線3a,3b、及び分配装置2a,2b間を接続する通信線4のトポロジーは、バス型、スター型、ディジーチェーン型等いずれの形態でもよい。
【0033】
分配装置2a,2bは、他の車内通信回線(図示せず)を介して他の車載装置(図示せず)とも接続されており、接続してある車載装置1a,1b,1cから受信したデータを他の車載装置へ送信してもよい。この場合、他の車載装置へ送信するデータは車載装置1a,1b,1cから送信されるデータ全てではなく、当該他の車載装置で必要なデータのみをDB21a,21bから読み出して送信する構成とすることにより、車載通信システムにおける通信負荷を削減する。
【0034】
本実施形態1の車載通信システムでは、各車載装置1a,1b,1cが分配装置2a及び分配装置2bの両者に車内通信回線3a及び3bを介してそれぞれ接続されており、両者にデータを送信する。例えば車載装置1aは分配装置2a及び分配装置2bの両者に車速のデータを送信する。他の車載装置群によって送信されたデータを含め、分配装置2a及び分配装置2bの両者に同一のデータが送信されて記憶される。これにより、車載装置1a,1b,1cは分配装置2aのみならず分配装置2bからもデータを受信することができる。
【0035】
従って、分配装置2aにおいてメモリ等のハードウェアの故障が発生してDB21aからデータを読み出すことができなくなる場合、又は分配装置2aと車内通信回線3aとの接続に障害が発生し、車載装置1a,1b,1cが分配装置2aからデータを送受信することができなくなる場合等、分配装置2aに支障が発生した場合であっても、車載装置1a,1b,1cは分配装置2bとの間でデータを送受信することができる。このように本実施形態1の車載通信システムでは各車載装置1a,1b,1cと分配装置2a,2b、具体的にはDB21a,21bとの接続関係が二重化されることにより車載通信システム全体としてフェールセーフな状態で動作することが可能になり、システムとしての信頼性が向上する。
【0036】
なお、分配装置2a,2bは、通信線4を介してそれぞれのDB21a,21bのデータを交換することにより、DB21a,21bに記憶してあるデータの内容を同期させることもできる。このようにDB21a,21bに一元的に記憶されたデータが車載装置1a,1b,1cへ分配されることにより、車載装置1a,1b,1c及び他の車載装置群で受信するデータの内容の同一性が担保される。さらに、分配装置2a,2bから複数の群に接続している各車載装置へ一括してデータを送信することによりデータの同時性が担保される。
【0037】
図2は、本発明の車載通信システムを構成する車載装置1a及び分配装置2aの内部構成を示すブロック図である。なお、車載装置1b,1cは車載装置1aと同様の内部構成であるので詳細な説明を省略し、分配装置2bは分配装置2aと同様の内部構成であるので詳細な説明を省略する。
【0038】
車載装置1aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部10と、各構成部へ電力を供給する電源回路11と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性のメモリからなる記憶部12と、車内通信回線3aとの通信を制御する第1通信部13と、車内通信回線3bとの通信を制御する第2通信部14とを備える。なお、車載装置によっては1本の車内通信回線を介して1つの分配装置に接続される場合もあり、この場合、第1通信部13及び第2通信部14のいずれか一方のみ備えればよい。また、車載装置によっては3本以上の車内通信回線を介して3つ以上の分配装置に接続される場合もあり、この場合、第1通信部13及び第2通信部14と同様の構成の通信部を、接続される車内通信回線の数だけ備えればよい。
【0039】
車載装置1aの制御部10は、車両のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置(図示せず)から電源回路11を介して電力の供給を受け、記憶部12に記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部の動作を制御する。
【0040】
車載装置1aの記憶部12には、車載装置1aを本発明に係る車載通信システムの車載装置として動作させるために必要な種々の制御プログラムが予め記憶されている。また、記憶部12には、制御部10の処理により発生する制御値、計算値等の各種情報が一時的に記憶される。更に、記憶部12には、車載装置1aが車内通信回線3a,3bを介して分配装置2a,2bへ送信する物理量に割り振られ、各物理量を識別するためのデータIDが記憶されている。記憶部12は揮発性メモリであるが図示しない電池を内蔵し、記憶している各種情報を保持するようにしてある。
【0041】
車載装置1aの第1通信部13は、車内通信回線3aを介して接続されている分配装置2aとの間でデータの送受信を実現する。第2通信部14は、車内通信回線3bを介して接続されている分配装置2bとの間でデータの送受信を実現する。車載装置1aの制御部10は、記憶部12に記憶されている制御プログラムを実行することにより各種物理量のデータ値を取得し、取得したデータ値に、記憶部12に記憶してあるデータIDを付与したデータを、例えば10ミリ秒の一定時間毎に第1通信部13及び第2通信部14から分配装置2a,2bへ送信する。
【0042】
分配装置2aは、以下に示す各構成部の動作を制御する制御部20と、各構成部へ電力を供給する電源回路22と、DRAM等の揮発性のメモリからなる記憶部23と、車内通信回線3aとの通信を制御する第1通信部25と、通信線4との通信を制御する第2通信部26とを備える。
【0043】
分配装置2aの制御部20は、車両のオルタネータ、バッテリー等の電力供給装置から電源回路22を介して電力の供給を受け、記憶部23に記憶されている制御プログラムを読み出して実行し、各構成部の動作を制御する。また、制御部20は、絶対時刻(年、月、日、時、分、秒)を示す時計(時計手段)を有しており、時計が示す絶対時間に基づいて各種処理を実行する。具体的には、制御部20は、例えば、車載装置1a,1b,1cから受信したデータに含まれるデータID及びデータ値を対応付けて記憶部23のDB21aに記憶する。
【0044】
分配装置2aの第1通信部25は、車内通信回線3aを介して接続されている車載装置1a,1b,1cとの間でデータの送受信を実現する。第2通信部26は、通信線4を介して接続されている分配装置2bとの間でデータの送受信を実現する。なお、本実施形態1では、分配装置2aの制御部20は、DB21aから読み出したデータを第2通信部26から分配装置2bへ送信する際、DB21aに記憶してあるデータのうちで、分配装置2bのDB21bに記憶してある各データに対して更新されたデータのみを分配装置2bへ送信してもよいし、DB21aに記憶してある全てのデータを分配装置2bへ送信してもよい。
【0045】
分配装置2aの記憶部23には、分配装置2aを本発明に係る車載通信システムの分配装置として動作させるために必要な種々の制御プログラムが予め記憶されている。また、記憶部23には、制御部20の処理により発生する各種情報が一時的に記憶される。更に、記憶部23には、図3(a)に示すようなDB21aのための記憶領域が設けられており、図3(b)に示すような送信情報テーブル24も記憶されている。なお、記憶部23は揮発性メモリであるが図示しない電池を内蔵し、記憶しているデータを保持するようにしてある。
【0046】
図3は、DB21a及び送信情報テーブル24の登録内容を示す模式図である。図3(a)に示すように、DB21aには、制御部20が車載装置1a,1b,1c及び分配装置2bから受信したデータのデータID、各データのデータ値及び各データの最終更新時刻が対応付けて登録されている。なお、最終更新時刻の欄には、各データを車載装置1a,1b,1c及び分配装置2bのいずれかから受信した場合に、その時点で時計が示す現在時刻が逐次更新される。
【0047】
また、図3(b)に示すように、送信情報テーブル(分配情報記憶手段)24には、各データの送信情報として、各データのデータID、各データを分配する際の分配周期及び送信先(分配先)が対応付けて登録されている。なお、図3(b)には、送信先の欄に、各車載装置を識別するための情報として1d,1e,1fが登録された送信情報テーブル24を示したが、送信先としては、車載装置に限られず、車内通信回線を示す情報であってもよい。
【0048】
上述した構成の分配装置2aにおいて、制御部20は、第1通信部25が車載装置1a,1b,1cからデータを受信した場合、受信したデータに含まれるデータID及びデータ値を抽出する。そして、制御部20は、抽出したデータIDを、DB21aのデータIDの欄から検索し、検索できた場合、このデータIDに対応するデータ値の欄に、受信したデータから抽出したデータ値を記憶させ、このデータIDに対応する最終更新時刻の欄に、この時点での現在時刻を記憶させる。これにより、分配装置2aは、車載装置1a,1b,1cから順次送信されてくるデータに基づいて、DB21aに記憶してある各データのデータ値及び最終更新時刻を逐次更新することができる。
【0049】
また、制御部20は、所定の周期毎に、他の分配装置2b間でDB21a,21bに記憶してあるデータを送受信してデータを交換しており、これにより、DB21a,21bのデータ内容が同期される。本実施形態1では、DB21a,21bのデータ内容の同期の手順については限定しない。所定の周期毎に同期処理が実行された後は、分配装置2a,2bのDB21a,21bの内容は全て同期している。
【0050】
このように、車載装置1a,1b,1cから順次送信されてくる最新のデータに基づいて、分配装置2a,2bのDB21a,21bのデータが逐次更新され、また、DB21a,21bのデータは所定の周期で同期されるので、各分配装置2a,2bから各車載装置1a,1b,1cへ分配されるデータの同一性を確保することができる。
【0051】
ここで、本実施形態1における車載装置1a,1b,1c及び分配装置2a,2bは、同期したタイマを有しており、共有の周期に基づき同期して動作する。このため、車載装置1a,1b,1cの制御部10及び分配装置2a,2bの制御部20はそれぞれ、図示しない内臓クロックに従ってタイマとして機能する。
【0052】
分配装置2aの制御部20は、送信情報テーブル24に登録されている各分配周期を計時しており、それぞれの分配周期が経過する都度、対応するデータID及び送信先を送信情報テーブル24から読み出す。そして、制御部20は、読み出したデータIDが示すデータのデータ値をDB21aから読み出し、データID及びデータ値を含むデータを、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信する。これにより、分配装置2aは、送信情報テーブル24に登録された各送信情報に従って、各データをそれぞれの分配周期で予め設定された送信先へ分配することができる。
【0053】
図4は分配装置2aがデータを受信するタイミング及びデータを送信するタイミングを説明するための説明図である。なお、図4(a)〜(c)のそれぞれには、時間軸である横軸を示しており、それぞれの時間軸の上方に示した実線の矢符j1,j2,j3は、車載装置1aからデータを受信した受信タイミングを、破線の矢符j20は、通常であれば車載装置1aからデータを受信するタイミングであるが、データを受信できなかったタイミングをそれぞれ示している。また、それぞれの時間軸の下方に示した実線の矢符s1,s2,s3は、車載装置1bへデータを送信した送信タイミングを、破線の矢符s20は、通常であれば車載装置1bへデータを送信するタイミングであるが、データの送信を行なわなかったタイミングをそれぞれ示している。
【0054】
本実施形態1の車載通信システムにおいて、車載装置1aは、所定の送信タイミングで所定のデータを分配装置2aへ送信しており、分配装置2aは、図4(a)に示すように、Δt1で示す周期に基づく受信タイミングj1,j2,j3で車載装置1aからデータを受信する。また、分配装置2aは、車載装置1aからのデータの受信タイミングからt0で示す時間が経過した後において、Δt2で示す周期に基づく送信タイミングs1,s2,s3で、車載装置1aから受信してDB21aに記憶したデータを車載装置1bへ送信する。これにより、分配装置2aは、車載装置1aから受信した最新のデータを車載装置1bへ分配することができる。
【0055】
ここで、本実施形態1の車載通信システムでは、車内通信回線3a,3bを介した通信状況によっては送受信されるデータに遅延が生じる場合がある。このようにデータに遅延が生じた場合、分配装置2aが、車載装置1aから送信されたデータを受信してDB21aに記憶する前に、DB21aに記憶してある更新されていないデータを車載装置1bへ分配する状況が発生する。この場合、分配装置2aは、車載装置1aから受信する最新のデータを車載装置1bへ分配することができない。
【0056】
従って、本実施形態1の分配装置2aの制御部(判断手段)20は、送信タイミングs1,s2,s3でデータを車載装置1bへ分配するに際し、このデータが既に車載装置1bへ分配されたデータであるか否かを判断する。そして、まだ車載装置1bへ分配されていないデータである場合、即ち、直前の分配処理によって車載装置1bへ分配された後に更新されたデータである場合、制御部20は、このデータを車載装置1bへ分配する。
【0057】
一方、既に車載装置1bへ分配されたデータである場合、即ち、直前の分配処理によって車載装置1bへ分配されてからまだ更新されていない場合、制御部20は、このデータが更新されるまで分配処理の実行を待機する。図4(b)及び(c)には、分配装置2aが、受信タイミングj20で車載装置1aからデータを受信できなかった場合を示している。なお、受信タイミングJ20で受信できなかったデータは、受信タイミングJ2で受信するものとし、このデータは受信タイミングJ20からJ2までの時間遅延したことになる。
【0058】
分配装置2aの制御部20は、送信タイミングs20で車載装置1bへデータを送信しようとした場合、このデータが、直前の分配処理によって車載装置1bへ分配されてから更新されたか否かを判断する。なお、データが更新されていない場合とは、分配装置2aが受信タイミングj20で車載装置1aからデータを受信しておらず、データが遅延していることを意味する。そこで、制御部20は、データが更新されていないと判断した場合、図4(b)、(c)中にΔt3で示す遅延許容時間、データの車載装置1bへの分配処理を延期し、車載装置1aからこのデータに対する更新データを受信するまで待機する。
【0059】
図4(b)には、分配装置2aが、受信タイミングj20で受信できなかったデータ(更新データ)を、送信タイミングs20から遅延許容時間(Δt3)が経過するまでの間の受信タイミングj2で受信した場合を示している。また、図4(c)には、分配装置2aが、受信タイミングj20で受信できなかったデータ(更新データ)を、送信タイミングs20から遅延許容時間(Δt3)が経過した後の受信タイミングj2で受信した場合を示している。
【0060】
遅延許容時間が経過するまでに分配装置2aが更新データを受信した場合、制御部20は、図4(b)に示すように、受信タイミングj2で車載装置1aから受信してDB21aに記憶させた更新データを、送信タイミングs2で車載装置1bへ分配する。なお、この場合のように車載装置1aから受信するデータに遅延が発生した場合、実際に車載装置1aからデータを受信した受信タイミングj2と、受信したデータを車載装置1bへ送信する送信タイミングs2との間隔は、予め設定してあった時間t0でなくてもよい。
【0061】
なお、車載装置1aの制御部10は、第1通信部13又は第2通信部14から実際にデータを送信した場合に、所定の周期に基づく送信タイミングでデータを分配装置2a,2bへ送信する。従って、図4(b)で示すように、分配装置2aが受信タイミングj20で受信できなかったデータを遅延許容時間内の受信タイミングj2で受信した場合、それ以降は、受信タイミングj2を基準としてΔt1で示す周期に基づく受信タイミングj3で車載装置1aからのデータを順次受信し、送信タイミングS2を基準としてΔt2で示す周期に基づく送信タイミングs3でデータを順次分配する。
【0062】
一方、遅延許容時間が経過するまでに分配装置2aが更新データを受信できなかった場合、制御部20は、図4(c)に示すように、送信タイミングs20から遅延許容時間(Δt3)が経過した時点(図4(c)中の送信タイミングs2)で、DB21aに記憶してある更新されていないデータを車載装置1bへ分配する。この場合、分配装置2aから車載装置1bへ分配されるデータは、直前の分配処理で車載装置1bへ分配されたデータと同じデータである。
【0063】
なお、図4(c)で示すように、分配装置2aが受信タイミングj20で受信できなかったデータを遅延許容時間内に受信できなかった場合、それ以降は、受信タイミングj2を基準としてΔt1で示す周期に基づく受信タイミングj3で車載装置1aからのデータを順次受信し、送信タイミングs20を基準としてΔt2で示す周期に基づく送信タイミングs3でデータを順次分配する。即ち、車載装置1bへデータを分配する送信タイミングは、データが遅延する以前と同じタイミングとする。
【0064】
上述した処理により、分配装置2aが車載装置1bへデータを分配する際に、分配装置2aの制御部20は、このデータが前回の分配処理から更新されているか否かを判断し、更新されていれば、所定の送信タイミングで車載装置1bへ分配する。また、更新されていなければ、分配装置2aの制御部20は、所定の遅延許容時間待機し、遅延許容時間内にデータが更新されれば、更新されたデータを車載装置1bへ分配し、遅延許容時間内にデータが更新されなければ、更新されていないデータを車載装置1bへ分配する。なお、更新されていないデータを車載装置1bへ分配するのは、分配装置2aから車載装置1bへ定期的にデータを送信することにより、分配装置2a及び車載装置1bが通常に動作を行なっていることを把握できる等の効果があるためである。
【0065】
以下に、分配装置2aの制御部20が、送信情報テーブル24に登録されている送信情報に従ってデータを分配する処理について具体的に説明する。
分配装置2aの制御部20は、送信情報テーブル24に登録されている各分配周期を計時しており、それぞれの分配周期が経過する都度、対応するデータID及び送信先を送信情報テーブル24から読み出す。そして、制御部20は、読み出したデータIDが示すデータのデータ値及び最終更新時刻をDB21aから読み出すと共に、この時点での現在時刻を自身の時計から取得する。
【0066】
制御部20は、このデータの分配周期、DB21aから読み出した最終更新時刻及び現在時刻に基づいて、このデータが送信先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。具体的には、制御部20は、データの最終更新時刻から現在時刻までの時間と、データの分配周期とを比較し、前記時間が分配周期よりも長い場合、送信先へ既に分配されたデータであると判断し、前記時間が分配周期よりも短い場合、送信先へまだ分配されていないデータであると判断する。
【0067】
制御部20は、送信先へまだ分配されていないデータであると判断した場合、DB21aから読み出したデータ値及びデータIDを含むデータを、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信する。これにより、分配装置2aは、送信情報テーブル24に登録された各送信情報に従って、各データが予め登録してある送信先へまだ送信されていない場合には、各データをそれぞれの分配周期で送信先へ分配することができる。
【0068】
制御部20は、送信先へ既に分配されたデータであると判断した場合、予め記憶部23に記憶してある遅延許容時間の計時を開始する。また、制御部20は、遅延許容時間を計時しつつ、上述した処理と同様の処理を行ない、このデータの最終更新時刻をDB21aから読み出すと共に現在時刻を取得し、このデータの分配周期、DB21aから読み出した最終更新時刻及び現在時刻に基づいて、このデータが更新されたか否かを判断する。
【0069】
具体的には、このデータが送信先へ既に分配されたデータであると判断した場合、データはまだ更新されていないデータであると判断でき、このデータが送信先へまだ分配されていないデータであると判断した場合、データは更新されたデータであると判断できる。なお、データが更新されたか否かの判断は、第1通信部25又は第2通信部26を介して前記データを受信したか否かに基づいて行なってもよい。
【0070】
そして、制御部20は、遅延許容時間の計時を終了するまでに、データが更新されたと判断した場合、更新されたデータ、具体的には、外部から受信してDB21aに記憶されたデータID及びデータ値を含むデータを、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信する。これにより、分配装置2aは、送信情報テーブル24に登録された各送信情報に従って各データを分配する際に、各データが前回の分配処理から更新されていない場合には、更新されるまで分配処理を行なわず、データが更新された場合には、更新されたデータを所定の送信先へ効率よく分配することができる。
【0071】
なお、車内通信回線3a,3bを介して送受信されるデータに発生し得る最大の遅延時間は、車内通信回線3a,3bのそれぞれに接続されている車載装置1a,1b,1cの数及び分配装置2a,2bの数等に基づいて算出できるので、この最大の遅延時間に基づいて、遅延許容時間を予め設定しておけばよい。
【0072】
上述したように、本実施形態1の車載通信システムでは、分配装置2aの制御部20は、DB21aに記憶してある各データを外部から受信して更新した時刻と、各データを外部へ分配する際の時刻とに基づいて、各データが既に分配されたデータであるか否かを正確に判断することができ、更新された最新のデータを効率良く外部へ分配することができる。
【0073】
以下に、分配装置2aが送信情報テーブル24の登録内容に基づいて行なうデータの分配処理についてフローチャートに基づいて説明する。図5及び図6は分配装置2aによる分配処理の手順を示すフローチャートである。なお、分配装置2bも同様の処理を行なうので詳細な説明を省略する。
【0074】
分配装置2aの制御部20は、タイマとして機能しており、送信情報テーブル24に登録されている各データの分配周期を経過したか否かを判断する(S1)。制御部20は、いずれの分配周期も経過していないと判断した場合(S1:NO)、ステップS7へ処理を移行し、いずれかの分配周期を経過したと判断した場合(S1:YES)、対応するデータID及び送信先を送信情報テーブル24から読み出す(S2)。そして制御部20は、読み出したデータIDに対応するデータ値及び最終更新時刻をDB21aから読み出し(S3)、この時点での現在時刻を自身の時計から取得する(S4)。
【0075】
制御部20は、このデータの分配周期、ステップS3でDB21aから読み出した最終更新時刻、ステップS4で取得した現在時刻に基づいて、このデータが、ステップS2で送信情報テーブル23から読み出した送信先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する(S5)。送信先へまだ分配されていないデータであると判断した場合(S5:NO)、制御部20は、ステップS3でDB21aから読み出したデータ値及びデータIDを含むデータを、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信する(S6)。
【0076】
送信先へ既に分配されたデータであると判断した場合(S5:YES)、制御部20は、所定の遅延許容時間の計時を開始する(S8)。また、制御部20は、計時している遅延許容時間が経過したか否かを判断し(S9)、経過していない場合(S9:NO)、ステップS2で読み出したデータIDに対応するデータ値及び最終更新時刻をDB21aから読み出し(S10)、この時点での現在時刻を自身の時計から取得する(S11)。
【0077】
制御部20は、このデータの分配周期、ステップS10でDB21aから読み出した最終更新時刻、ステップS11で取得した現在時刻に基づいて、このデータが更新されたか否かを判断する(S12)。具体的には、制御部20は、このデータが、ステップS3で送信情報テーブル23から読み出した送信先へ既に分配されたデータであるか否かを再度判断する。
【0078】
データが更新されていないと判断した場合(S12:NO)、制御部20は、ステップS9へ処理を戻し、遅延許容時間が経過するまで、又はデータが更新されるまでステップS9〜S12の処理を繰り返す。遅延許容時間が経過したと判断した場合(S9:YES)、又はデータが更新されたと判断した場合(S12:YES)、制御部20は、ステップS6へ処理を移行し、ステップS10でDB21aから読み出したデータ値及びデータIDを含むデータを、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信する(S6)。
【0079】
制御部20は、電源回路22からの電力の供給が終了した場合等、上述した処理の終了が指示されたか否かを判断しており(S7)、処理の終了が指示された場合(S7:YES)、上述した処理を終了し、処理の終了が指示されていない場合(S7:NO)、ステップS1へ処理を戻し、処理の終了が指示されるまで上述した処理を繰り返す。
【0080】
(実施形態2)
以下に、本発明の車載通信システムを実施形態2の車載通信システムを示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、本実施形態2の車載通信システムは、上述した実施形態1の車載通信システムと同様の構成により実現できるため、構成についての説明を省略する。
【0081】
上述した実施形態1では、分配装置2aの制御部20は、送信情報テーブル24の登録内容に基づいて各データを所定の送信先へ分配する際に、各データの分配周期、各データの最終更新時刻及び現在時刻に基づいて、各データが所定の送信先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する構成であった。これに対して本実施形態2では、分配装置2aの記憶部23のDB21aに、各データに対応して各データが更新されたことを示す更新フラグを記憶させておき、更新フラグの状態に基づいて各データが所定の送信先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する。
【0082】
具体的には、本実施形態2の分配装置2a,2b,2cの記憶部23に記憶してあるDB21aは、図7に示すように構成されている。従って、本実施形態2の分配装置2a,2bの記憶部23には、図7に示すようなDB21aと、図3(b)に示した送信情報テーブル24とが記憶されている。図7はDB21aの登録内容を示す模式図である。本実施形態2のDB21aには、図7に示すように、制御部20が車載装置1a,1b,1c及び分配装置2bから受信したデータのデータID、各データのデータ値及び更新フラグが対応付けて登録されている。
【0083】
なお、更新フラグの欄には、各データを車載装置1a,1b,1c及び分配装置2bのいずれかから受信してDB21aに記憶した場合に、制御部20によって「オン」が登録され、送信情報テーブル24の登録内容に基づいて各データが所定の送信先へ分配された場合に、制御部20によって「オフ」が登録される。即ち、更新フラグがオンである場合、このデータは所定の送信先へ分配されていない更新済みのデータであることを示し、更新フラグがオフである場合、このデータは所定の送信先へ既に分配された分配住みのデータであることを示している。
【0084】
図7に示したDB21aには、1つの更新フラグの情報のみが記憶されており、これは、各データが、図3(b)に示す送信情報テーブル24に登録してある各送信情報に基づいて1つの送信先にのみ送信される場合の構成である。即ち、各データが複数の送信先へ送信(分配)される場合には、DB21aに、それぞれの送信先に対応した複数の更新フラグを設ける必要がある。
【0085】
上述した構成の分配装置2aにおいて、制御部20は、送信情報テーブル24に登録されている各分配周期を計時しており、それぞれの分配周期が経過する都度、対応するデータID及び送信先を送信情報テーブル24から読み出す。そして、制御部20は、読み出したデータIDが示すデータのデータ値及び更新フラグをDB21aから読み出す。
【0086】
制御部20は、DB21aから読み出した更新フラグがオンであるか否かを判断する。更新フラグがオンである場合、即ち、送信先へまだ分配されていないデータである場合、制御部20は、DB21aから読み出したデータ値及びデータIDを含むデータを、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信し、このデータに対応してDB21aに記憶してある更新フラグをオフに変更する。
【0087】
これにより、分配装置2aは、送信情報テーブル24に登録された各送信情報に従って、各データが予め登録してある送信先へまだ送信されていない場合には、各データをそれぞれの分配周期で送信先へ分配することができる。また、各データを分配した場合に更新フラグをオフにすることにより、当該データが既に送信先へ分配されていることを把握することができる。
【0088】
更新フラグがオフである場合、即ち、送信先へ既に分配されたデータである場合、制御部20は、予め記憶部23に記憶してある遅延許容時間の計時を開始する。また、制御部20は、遅延許容時間を計時しつつ、上述した処理と同様の処理を行ない、このデータの更新フラグをDB21aから読み出し、更新フラグがオンであるか否かを判断する。
【0089】
そして、制御部20は、遅延許容時間の計時を終了するまでに、更新フラグがオンになった場合、即ち、データが更新された場合、更新されたデータ(更新データ)を、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信する。これにより、分配装置2aは、送信情報テーブル24に登録された各送信情報に従って各データを分配する際に、各データが前回の分配処理から更新されていない場合には、更新されるまで分配処理を行なわず、更新されたデータを所定の送信先へ効率よく分配することができる。
【0090】
上述したように、本実施形態2の車載通信システムでは、分配装置2aの制御部20は、DB21aに記憶してある各データの更新フラグに基づいて、各データが既に分配されたデータであるか否かを正確に判断することができ、更新された最新のデータを効率良く外部へ分配することができる。
【0091】
以下に、分配装置2aが送信情報テーブル24の登録内容に基づいて行なうデータの分配処理についてフローチャートに基づいて説明する。図8は分配装置2aによる分配処理の手順を示すフローチャートである。なお、分配装置2bも同様の処理を行なうので詳細な説明を省略する。
【0092】
分配装置2aの制御部20は、タイマとして機能しており、送信情報テーブル24に登録されている各データの分配周期を経過したか否かを判断する(S21)。制御部20は、いずれの分配周期も経過していないと判断した場合(S21:NO)、ステップS27へ処理を移行し、いずれかの分配周期を経過したと判断した場合(S21:YES)、対応するデータID及び送信先を送信情報テーブル24から読み出す(S22)。
【0093】
制御部20は、読み出したデータIDに対応するデータ値及び更新フラグをDB21aから読み出し(S23)、読み出した更新フラグがオンであるか否かを判断する(S24)。更新フラグがオンであると判断した場合(S24:YES)、制御部20は、ステップS23でDB21aから読み出したデータ値及びデータIDを含むデータを、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信する(S25)。そして、制御部20は、このデータに対応してDB21aに記憶してある更新フラグをオフに変更する(S26)。
【0094】
更新フラグがオンでないと判断した場合(S24:NO)、制御部20は、所定の遅延許容時間の計時を開始する(S28)。また、制御部20は、計時している遅延許容時間が経過したか否かを判断し(S29)、経過していない場合(S29:NO)、ステップS22で読み出したデータIDに対応するデータ値及び更新フラグをDB21aから読み出し(S30)、読み出した更新フラグがオンであるか否かを判断する(S31)。
【0095】
更新フラグがオンでないと判断した場合(S31:NO)、制御部20は、ステップS29へ処理を戻し、遅延許容時間が経過するまで、又は更新フラグがオンになるまでステップS29〜S31の処理を繰り返す。遅延許容時間が経過したと判断した場合(S29:YES)、又は更新フラグがオンであると判断した場合(S31:YES)、制御部20は、ステップS25へ処理を移行し、ステップS30でDB21aから読み出したデータ値及びデータIDを含むデータを、送信情報テーブル24から読み出した送信先へ第1通信部25から送信する(S25)。
【0096】
制御部20は、このデータに対応してDB21aに記憶してある更新フラグをオフに変更する(S26)。制御部20は、電源回路22からの電力の供給が終了した場合等、上述した処理の終了が指示されたか否かを判断しており(S27)、処理の終了が指示された場合(S27:YES)、上述した処理を終了し、処理の終了が指示されていない場合(S27:NO)、ステップS21へ処理を戻し、処理の終了が指示されるまで上述した処理を繰り返す。
【0097】
上述した実施形態1では、分配装置2aの制御部20は、DB21aに記憶してある各データが所定の送信先へ既に分配されたデータであるか否かを、各データの分配周期、各データの最終更新時刻及び現在時刻に基づいて判断する構成であり、上述した実施形態2では、分配装置2aの制御部20は、各データが所定の送信先へ既に分配されたデータであるか否かを、各データに対応させてDB21aに記憶してある更新フラグの状態に基づいて判断する構成であった。
【0098】
しかし、これらの構成に限られない。例えば、DB21aに記憶させる各データを先入れ先出し方式に従って順次記憶させる構成とした場合、各データのDB21aにおける記憶位置に基づいて、各データをDB21aに記憶させた時刻がおおまかに予測できる。従って、各データが所定の送信先へ既に分配されたデータであるか否かを、各データのDB21aにおける記憶位置に基づいて判断することができる。なお、この場合、実施形態1のように、各データをDB21aに記憶する都度、最終更新時刻をDB21aに記憶する必要がなく、また、実施形態2のように、各データが更新されたデータであるか否かを示す更新フラグをDB21aに設ける必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明に係る車載通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の車載通信システムを構成する車載装置及び分配装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】DB及び送信情報テーブルの登録内容を示す模式図である。
【図4】分配装置がデータを受信するタイミング及びデータを送信するタイミングを説明するための説明図である。
【図5】分配装置による分配処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】分配装置による分配処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】DBの登録内容を示す模式図である。
【図8】分配装置による分配処理の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0100】
1a,1b,1c 車載装置
2a,2b 分配装置
21a,21b DB(記憶手段)
3a,3b 車内通信回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送受信する複数の車載装置と、該車載装置から受信したデータを記憶する記憶手段及び記憶したデータを各車載装置へ分配する手段を有する分配装置とが接続してある車載通信システムであって、
前記分配装置は、
前記車載装置へデータを分配するに際し、前記データが前記車載装置へ既に分配されたデータであるか否かを判断する判断手段と、
該判断手段が前記車載装置へ分配されたデータであると判断した場合、所定時間の計時を開始する手段と、
所定時間の計時を終了するまでに前記データに対する更新データを他の車載装置から受信したか否かを判断する手段とを備え、
所定時間の計時を終了するまでに前記更新データを前記他の車載装置から受信したと判断した場合、前記他の車載装置から受信した更新データを前記車載装置へ分配するように構成してあることを特徴とする車載通信システム。
【請求項2】
外部から受信したデータを記憶する記憶手段と、記憶したデータを外部の分配先へ分配する手段とを備える分配装置において、
分配先へデータを分配するに際し、前記データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断する判断手段と、
該判断手段が前記分配先へ分配されたデータであると判断した場合、所定時間の計時を開始する手段と、
所定時間の計時を終了するまでに前記データに対する更新データを外部から受信したか否かを判断する手段とを備え、
所定時間の計時を終了するまでに前記更新データを外部から受信したと判断した場合、受信した更新データを前記分配先へ分配するように構成してあることを特徴とする分配装置。
【請求項3】
時計手段と、
外部からデータを受信した場合、受信したデータ及び該データを受信した時点で前記時計手段が示した時刻を対応付けて前記記憶手段に記憶する手段と、
データを識別する情報、該データを分配する際の分配周期及び分配先を示す情報を対応付けて記憶する分配情報記憶手段とを備え、
前記判断手段は、
前記分配情報記憶手段に記憶してある分配周期で対応するデータを分配するに際し、前記分配周期、前記記憶手段に記憶してある時刻及びこの時点で前記時計手段が示す時刻に基づいて、前記データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の分配装置。
【請求項4】
データを外部の分配先へ分配した場合、各データ及び分配先を示す情報に対応付けて分配済みを示す情報を前記記憶手段に記憶させる手段を備え、
前記判断手段は、前記記憶手段に記憶してある分配済みを示す情報に基づいて、前記データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の分配装置。
【請求項5】
前記記憶手段は、先入れ先出し方式でデータを記憶する構成としてあり、
前記判断手段は、前記データの前記記憶手段における記憶位置に基づいて、前記データが前記分配先へ既に分配されたデータであるか否かを判断するように構成してあることを特徴とする請求項2に記載の分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−44318(P2009−44318A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205517(P2007−205517)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】